(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140711
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】情報処理装置及び補正方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20241003BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20241003BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20241003BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H05H1/46 A
C23C16/44 B
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052012
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 翔太
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA05
2G084CC04
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC15
2G084CC16
2G084CC33
2G084DD55
2G084FF07
4K030FA01
4K030HA01
4K030KA16
4K030KA41
5F004AA01
5F004BA04
5F004BB18
5F004BB19
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5F045BB03
5F045BB04
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5F045DQ05
5F045EE17
5F045EF03
5F045EF09
5F045EH12
5F045EK06
5F045GB11
5F045GB13
5F045GB17
(57)【要約】
【課題】基板上の複数の測定点における基板処理結果を自動で補正する。
【解決手段】基板上の複数の測定点の位置情報と、前記複数の測定点のそれぞれにおける基板処理の結果を示す複数の測定値と、を入力する入力部と、入力した複数の前記測定点の位置情報から選択された複数の前記測定点のそれぞれの基板処理の結果を推定した複数の推定値を、局所線形回帰法を用いて算出する算出部と、選択された複数の前記測定点のそれぞれの前記測定値と前記推定値との差分の絶対値が予め設定された閾値から外れる測定点の前記測定値を外れ値と判定する判定部と、前記外れ値と判定された測定点の前記測定値を補正する補正部と、を有する情報処理装置が提供される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の複数の測定点の位置情報と、前記複数の測定点のそれぞれにおける基板処理の結果を示す複数の測定値と、を入力する入力部と、
入力した複数の前記測定点の位置情報から選択された複数の前記測定点のそれぞれの基板処理の結果を推定した複数の推定値を、局所線形回帰法を用いて算出する算出部と、
選択された複数の前記測定点のそれぞれの前記測定値と前記推定値との差分の絶対値が予め設定された閾値から外れる測定点の前記測定値を外れ値と判定する判定部と、
前記外れ値と判定された測定点の前記測定値を補正する補正部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記外れ値と判定された測定点の前記測定値を当該測定点の前記推定値に置き換えることにより、前記測定値を補正する、
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記測定値と前記推定値との差分の絶対値が前記閾値から外れる測定点を除き、選択された複数の前記測定点のそれぞれの基板処理の結果を推定した複数の推定値を再計算し、
前記判定部は、前記閾値から外れる測定点を除き、選択された複数の前記測定点のそれぞれの前記測定値と再計算した前記推定値との差分の絶対値を用いて前記外れ値の判定を行う、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記算出部は、予めパラメータに設定された回数、前記推定値の再計算を繰り返し、
前記判定部は、前記パラメータに設定された回数、前記外れ値の判定を繰り返す、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記外れ値と判定される測定点がなくなるまで前記推定値の再計算を繰り返し、
前記判定部は、前記外れ値と判定される測定点がなくなるまで、前記外れ値の判定を繰り返す、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
補正した前記測定値を含む複数の測定点の前記測定値に基づき、前記基板処理の手順を設定したレシピを最適化するレシピ最適化部を有する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記測定値は、前記基板上に成膜された膜厚又は膜の屈折率である、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項8】
情報処理装置が実行する補正方法であって、
基板上の複数の測定点の位置情報と、前記複数の測定点のそれぞれにおける基板処理の結果を示す複数の測定値と、を入力するステップと、
入力した複数の前記測定点の位置情報から選択された複数の前記測定点のそれぞれの基板処理の結果を推定した複数の推定値を、局所線形回帰法を用いて算出するステップと、
選択された複数の前記測定点のそれぞれの前記測定値と前記推定値との差分の絶対値が予め設定された閾値から外れる測定点の前記測定値を外れ値と判定するステップと、
前記外れ値と判定された測定点の前記測定値を補正するステップと、
を有する補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置及び補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置では、基板に対して成膜、エッチングなどの基板処理を施す。基板上に成膜された膜厚等の基板処理の結果は、膜厚計等の測定器によって測定される。その測定値は基板処理時に使用されるプロセス条件を定義したレシピの最適化に使用される。例えば、特許文献1は、基板上に成膜される膜厚の測定結果から特異点を検出し、その特異点の膜厚の測定結果を補正する技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板上の複数の測定点における基板処理結果を自動で補正する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、基板上の複数の測定点の位置情報と、前記複数の測定点のそれぞれにおける基板処理の結果を示す複数の測定値と、を入力する入力部と、入力した複数の前記測定点の位置情報から選択された複数の前記測定点のそれぞれの基板処理の結果を推定した複数の推定値を、局所線形回帰法を用いて算出する算出部と、選択された複数の前記測定点のそれぞれの前記測定値と前記推定値との差分の絶対値が予め設定された閾値から外れる測定点の前記測定値を外れ値と判定する判定部と、前記外れ値と判定された測定点の前記測定値を補正する補正部とを有する情報処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、基板上の複数の測定点における基板処理結果を自動で補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る基板処理装置の一例を示す断面模式図。
【
図2】実施形態に係る情報処理システムの一例を示す構成図。
【
図3】実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図。
【
図4】実施形態に係る情報処理装置の機能構成の一例を示す図。
【
図5】実施形態に係る補正方法の一例を示すフローチャート。
【
図6】実施形態に係る外れ値の判定方法の一例を示すフローチャート。
【
図7】実施形態に係る補正方法の結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[基板処理装置]
まず、実施形態に係る基板処理装置10について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る基板処理装置10を示す図である。基板処理装置10は、複数のウェハ2を処理容器11に収容し、複数のウェハに膜を成膜する。
【0010】
基板処理装置10は、複数枚のウェハ2を処理するバッチ式の縦型熱処理装置である。ただし、基板処理装置10は、バッチ式の熱処理装置に限らない。例えば、基板処理装置10は、ウェハを一枚ずつ処理する枚葉式の装置であってもよい。また、基板処理装置10は、数枚の基板を一括処理するセミバッチ式の装置であってもよい。セミバッチ式の装置は、回転テーブルの回転中心線の周りに配置した複数枚のウェハを、回転テーブルと共に回転させ、異なるガスが供給される複数の領域を順番に通過させる装置でもよい。また、基板処理装置10は、成膜装置に限らず、エッチング装置やスパッタ装置等、基板を処理可能な装置であってよい。
【0011】
基板処理装置10は、ウェハ2を収容し、ウェハ2が処理される空間を内部に形成する処理容器11と、処理容器11の下端の開口を気密に塞ぐ蓋体20と、ウェハ2を保持する基板保持具30とを有する。ウェハ2は、例えば半導体基板(単に基板ともいう。)であって、より詳細には例えばシリコンウェハである。基板保持具30は、ウェハボートとも呼ばれる。
【0012】
処理容器11は、下端が開放された有天井の円筒形状の処理容器の本体12を有する。処理容器の本体12は、例えば石英により形成される。処理容器の本体12の下端には、フランジ部13が形成される。また、処理容器11は、例えば円筒形状のマニホールド14を有する。マニホールド14は、例えばステンレス鋼により形成される。マニホールド14の上端にはフランジ部15が形成され、そのフランジ部15には処理容器の本体12のフランジ部13が設置される。フランジ部15とフランジ部13との間には、Oリング等のシール部材16が配置される。
【0013】
蓋体20は、マニホールド14の下端の開口に、Oリング等のシール部材21を介して気密に取り付けられる。蓋体20は、例えばステンレス鋼により形成される。蓋体20の中央部には、蓋体20を鉛直方向に貫通する貫通穴が形成される。その貫通穴には、回転軸24が配置される。蓋体20と回転軸24の隙間は、磁性流体シール部23によってシールされる。回転軸24の下端部は、昇降部25のアーム26に回転自在に支持される。回転軸24の上端部には、回転プレート27が設けられる。回転プレート27上には、保温台28を介して基板保持具30が設置される。
【0014】
基板保持具30は、複数枚のウェハ2を鉛直方向に間隔をおいて保持する。複数枚のウェハ2は、それぞれ、水平に保持される。基板保持具30は、例えば石英(SiO2)または炭化珪素(SiC)により形成される。昇降部25を上昇させると、蓋体20および基板保持具30が上昇し、基板保持具30が処理容器11の内部に搬入され、処理容器11の下端の開口が蓋体20で密閉される。また、昇降部25を下降させると、蓋体20および基板保持具30が下降し、基板保持具30が処理容器11の外部に搬出される。また、回転軸24を回転させると、回転プレート27と共に基板保持具30が回転する。
【0015】
基板処理装置10は、3本のガス供給管40A、40B、40Cを有する。ガス供給管40A、40B、40Cは、例えば石英(SiO2)により形成される。ガス供給管40A、40B、40Cは、処理容器11の内部にガスを供給する。ガスの種類については後述する。なお、1本のガス供給管が1種類又は複数種類のガスを順番に吐出してもよい。また、複数本のガス供給管が同じ種類のガスを吐出してもよい。
【0016】
ガス供給管40A、40B、40Cは、マニホールド14を水平に貫通する水平管43A、43B、43Cと、処理容器11の内部に鉛直に配置される鉛直管41A、41B、41Cを有する。鉛直管41A、41B、41Cは、鉛直方向に間隔をおいて複数の給気口42A、42B、42Cを有する。水平管43A、43B、43Cに供給された各種ガスは、鉛直管41A、41B、41Cに送られ、複数の給気口42A、42B、42Cから水平に吐出される。鉛直管41Cは、プラズマボックス19内に配置されている。鉛直管41A、41Bは、処理容器11内に配置されている。
【0017】
基板処理装置10は、排気管45を有する。排気管45は、図示しない排気装置に接続される。排気装置は、真空ポンプを含み、処理容器11の内部を排気する。処理容器11の内部を排気すべく、処理容器の本体12には排気口18が形成される。その排気口18は、給気口42A、42B、42Cと対向するように配置される。給気口42A、42B、42Cから水平に吐出されたガスは、排気口18を通った後、排気管45から排気される。排気装置は、処理容器11の内部のガスを吸引して除害装置に送る。除害装置は、排気ガスの有害成分を除去したうえで排気ガスを大気に放出する。
【0018】
基板処理装置10は、更に加熱部60を有する。加熱部60は、処理容器11の外部に配置され、処理容器11の外側から処理容器11の内部を加熱する。例えば、加熱部60は、処理容器の本体12を取り囲むように円筒形状に形成される。加熱部60は、例えば電気ヒータで構成される。加熱部60は、処理容器11の内部を加熱することにより、処理容器11内に供給されるガスの処理能力を向上させる。
【0019】
処理容器の本体12の周方向の一部には開口部17が形成される。その開口部17を囲むように、プラズマボックス19が処理容器11の側面に形成される。プラズマボックス19は、処理容器の本体12から径方向外方に突き出すように形成され、例えば鉛直方向視でU字状に形成される。
【0020】
プラズマボックス19を挟むように一対の電極対が配置される。電極対は、プラズマボックス19の外側に対面して設置した一対の並行電極である。電極対は、鉛直管41Cと同様に、互いに対向して鉛直方向に細長く形成される。電極対は、整合器を介してRF電源に接続され、RF電源から高周波電圧を印加される。
【0021】
図1に示すように、基板処理装置10は、制御装置100を有する。制御装置100は、種々の基板処理工程を基板処理装置10に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御装置100は、種々の基板処理工程を実行するように基板処理装置10の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御装置100の一部又は全てが基板処理装置10に含まれてもよい。制御装置100は、処理部、記憶部及び通信インターフェースを含んでもよい。制御装置100は、例えばコンピュータにより実現される。処理部は、記憶部からレシピ及びプログラムを読み出し、読み出されたレシピ及びプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。レシピ及びプログラムは、予め記憶部に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。媒体は、コンピュータに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェースに接続されている通信回線であってもよい。処理部はCPUであってもよい。記憶部は、RAM、ROM、HDD等であってもよい。通信インターフェースは、LAN等の通信ネットワークを介して基板処理装置10や情報処理装置200(
図2参照)との間で通信してもよい。
【0022】
[情報処理システム]
次に、情報処理システム1について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、実施形態に係る情報処理システム1の一例の構成図である。情報処理システム1は、基板処理装置10、情報処理装置200、測定器220、レシピ最適化装置230及びリモート端末240を有し、これらの機器が、インターネットやLANなどの通信ネットワークNを介してデータ通信可能に接続されている。基板処理装置10は、
図1を用いて説明したように、複数のウェハ2が載置された基板保持具30を処理容器11内に搬入して複数のウェハ2上に成膜を行う。測定器220は、基板処理装置10で成膜されたウェハ2のうち、モニターウェハの測定点の膜厚を測定する。測定器220により測定された、モニターウェハの測定点の膜厚測定値は、自動的に又は作業者の操作に従い情報処理装置200に入力される。モニターウェハの測定点の数及び測定点の座標は、予めパラメータに設定されている。以下では、測定器220が測定する測定値は膜厚であることを前提に説明するが、基板処理結果を示す測定値は膜厚に限らない。
【0023】
情報処理装置200は、入力されたモニターウェハ上の複数の測定点の座標と、複数の測定点のそれぞれにおける複数の膜厚測定値に基づき、各測定点における基板処理結果の膜厚を推定した膜厚推定値を、局所線形回帰法を用いて算出する。そして、情報処理装置200は、膜厚の測定値と推定値との差分の絶対値に基づき、測定値の外れ値を判定し、外れ値と判定された測定点の測定値を補正する。
【0024】
情報処理装置200は、補正した測定値を含む複数の測定点の測定値を出力する。レシピ最適化装置230は、補正した測定値を含む複数の測定点の測定値に基づき、基板処理の手順を設定したレシピを最適化する。最適化されたレシピは、レシピ最適化装置230から制御装置100に送信される。制御装置100は、最適化されたレシピに基づき基板処理装置10を制御する。最適化されたレシピにより、基板処理装置10が実行するウェハ2の成膜処理をより目標の成膜に近づけるように制御できる。
【0025】
使用するレシピの最適化を行う際、情報処理装置200は、例えば膜厚等といった基板処理結果を示す測定値を入力することが多い。レシピ最適化装置230は、測定値を入力し、その測定値が示す基板処理結果を目標値に近づけるために、圧力、温度等のレシピの設定値の最適化を行う。
【0026】
その際、適切なレシピの最適化を行うためには、入力した測定値に含まれる外れ値の除去及び補間が重要である。外れ値とは、基板処理結果の許容値を逸脱した測定値である。従来、膜厚等の測定値が外れ値か否かは、ユーザが測定器220から得られた測定値を目視で確認して判定していた。例えば、ユーザが測定器220から得られたウェハ2内の50点の測定点の膜厚測定値の面内マップを可視化して確認したり、膜厚のGOF(Goodness-of-Fit)が著しく低い測定値がないかを確認したりして外れ値の判定を行っていた。なお、GOFは、膜厚測定器のエリプソメータのモデルにどのくらいフィットしているかの指標である。
【0027】
外れ値の補正(補間)方法としては、ユーザが外れ値となる測定値の周囲の測定点の測定値を使って線形補間を行うことが考えられる。しかしながら、測定値が外れ値であるかの判定及びその補間をユーザの手作業で行うと、確認すべき測定値の数が増えるほどユーザの負荷が増える。また、客観的な外れ値の判定基準がなく、ユーザによってさまざまな判定基準で外れ値の判定を行うため、入力した膜厚等の測定値に含まれる外れ値の除去及び補間の精度が低下する。
【0028】
そこで、本実施形態に係る情報処理装置200は、外れ値の判定及び外れ値と判定された測定値の補間をユーザが介在することなく自動で実施する。情報処理装置200は、外れ値の判定基準を、例えば数値などの客観的な手段で指定し、パラメータの設定値として予め記憶しておく。これにより、ユーザの負荷を低減でき、かつ、客観的な外れ値の判定基準を採用することにより外れ値の除去及び補間の精度を高めることができる。
【0029】
また、情報処理装置200が測定値の外れ値の判定、外れ値の除去及び補間に使用する膜厚等の測定値の入力データは、測定点の位置情報と、測定点における膜厚等の測定値だけでよく、入力データの制約が少ない。また、情報処理装置200は、測定値の外れ値の判定、外れ値の除去及び補間を、基板処理装置10やプロセス種別に依らず実施できる。
【0030】
膜厚測定値、測定点の座標等の入力データは、制御装置100の装置画面から入力してもよいし、リモート端末240や測定器220から情報処理装置200へ送信されるようにしてもよい。
【0031】
なお、
図2の情報処理システムは一例であって、情報処理装置200と制御装置100とは一体化されて基板処理装置10に内蔵されていてもよく、基板処理装置10とは別体に設けられてもよい。また、通信ネットワークNに接続される基板処理装置10、情報処理装置200、測定器220、レシピ最適化装置230、リモート端末240の数は一つに限らず、二つ以上であってよい。
【0032】
[ハードウェア構成]
情報処理装置200は例えば
図3に示すハードウェア構成のコンピュータにより実現される。
図3は実施形態に係る情報処理装置200のハードウェア構成の一例を示す図である。情報処理装置200は、例えばコンピュータから構成され、CPU(Central Processing Unit)211、ROM(Read Only Memory)212、RAM(Random Access Memory)213を有する。また、情報処理装置200は、I/Oポート214、操作パネル215、HDD216(Hard Disk Drive)を有する。各部はバスBによって接続されている。
【0033】
CPU211は、ROM212やHDD216などの記憶装置からプログラムやデータをRAM213上に読み出し、処理を実行することで、情報処理装置200全体の制御や機能を実現する演算装置である。
【0034】
ROM212は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、ハードディスク等により構成され、CPU211が使用するプログラムを記憶する記憶媒体である。RAM213は、CPU211のワークエリア等として機能する。CPU211が使用するプログラムには、外れ値を判定するプログラム、外れ値と判定された測定値を補正するプログラムが含まれる。
【0035】
I/Oポート214は、測定器220が測定した膜厚等の測定値を取得し、CPU211に送信する。また、I/Oポート214には、ユーザが情報処理装置200を操作する操作パネル215が接続されている。
【0036】
HDD216は補助記憶装置であり、プログラム等が格納されてもよい。また、HDD216には、測定器220が計測したデータのログ情報が格納されてもよい。
【0037】
[機能構成]
次に、情報処理装置200の機能構成について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、実施形態に係る情報処理装置200の機能構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置200は、入力部201、算出部202、外れ値判定部203、補正部204及び出力部205を有する。情報処理装置200は、レシピ最適化部210を有してもよい。
【0038】
入力部201は、基板上の複数の測定点の位置情報と、複数の測定点のそれぞれにおける基板処理の結果を示す複数の測定値と、を入力する。パラメータは、例えば、情報処理装置200又は制御装置100の記憶部に記憶されている。パラメータに設定される各種の設定値は、適正値に自動更新され得るが、ユーザが設定してもよい。パラメータに設定される設定値は、局所線形回帰法に用いる測定点の個数、外れ値の判定基準を示す閾値、後述するループ処理の繰り返し回数等が挙げられる。測定点の位置情報は、予め定められ、情報処理装置200又は制御装置100の記憶部に記憶されている。
【0039】
入力部201は、基板上に50個の測定点が設けられている場合、50個の測定点の位置情報と、各測定点に応じた50個の基板処理結果の測定値を入力する。
【0040】
算出部202は、入力した複数の測定点の位置情報から、パラメータに設定された個数の測定点を選択し、選択した測定点のそれぞれの基板処理結果を推定した複数の推定値を、局所線形回帰法を用いて算出する。以下では、局所線形回帰法の一例としてLOESS(locally estimated scatterplot smoothing)を使用する例に挙げて説明する。ただし、局所線形回帰法はLOESSに限定されず、LOWESS(locally weighted scatterplot smoothing)やその他の局所線形回帰法を使用してもよい。LOESSは、対象となる測定点から距離が近い所定個の測定点の測定値を使って、対象となる測定点の測定値を2次曲面でフィッティングして平滑化する。LOWESSは、対象となる測定点から距離が近い所定個の測定点の測定値を使って、対象測定点の測定値を平面でフィッティングして平滑化する。測定点が少ない場合は、LOESSの代わりにLOWESSを使うことができる。
【0041】
外れ値判定部203は、選択された所定個の測定値と推定値とに基づき、所定個の測定点のそれぞれにおける測定値と推定値との差分の絶対値が、予め設定された閾値から外れる測定点の測定値を外れ値と判定する。外れ値判定部203は判定部の一例である。閾値は、予めパラメータに設定されている。
【0042】
補正部204は、外れ値と判定された測定点の測定値を補正する。補正部204は、外れ値と判定された測定点の測定値を当該測定点の推定値に置き換えることにより、測定値を補正してもよい。
【0043】
算出部202は、測定値と推定値との差分の絶対値が前記閾値から外れる測定点を除き、残りの選択された複数の測定点(所定個の測定点)のそれぞれの基板処理の結果を推定した複数の推定値を再計算してもよい。外れ値判定部203は、閾値から外れる測定点を除き、選択された複数の測定点のそれぞれの測定値と再計算した推定値との差分の絶対値を用いて外れ値の判定を行ってもよい。補正部204は、判定の結果、外れ値と判定された測定点の測定値を再補正してもよい。
【0044】
算出部202は、予めパラメータに設定された回数、推定値の再計算を繰り返し、外れ値判定部203は、予めパラメータに設定された回数、外れ値の判定を繰り返し行ってもよい。算出部202は、外れ値と判定される測定点がなくなるまで推定値の再計算を繰り返し、外れ値判定部203は、外れ値と判定される測定点がなくなるまで、外れ値の判定を繰り返し行ってもよい。
【0045】
出力部205は、測定点の位置情報及び補正した測定値を含む複数の測定点の測定値を出力する。出力される複数の測定点の測定値は、外れ値が除去及び補間されている。これらの出力データは、通信ネットワークNを介してレシピ最適化装置230に入力される。
【0046】
レシピ最適化装置230は、補正した測定値を含む複数の測定点の測定値に基づき、基板処理の手順を設定したレシピを最適化する。情報処理装置200は、レシピ最適化部210を有し、レシピ最適化部210が、補正した測定値を含む複数の測定点の測定値に基づきレシピを最適化してもよい。この場合、情報処理システム1は、レシピ最適化装置230を含まなくてもよい。
【0047】
制御装置100が、レシピ最適化装置230の機能を有してもよい。この場合、出力部205から出力された上記出力データは、通信ネットワークNを介して制御装置100に入力され、制御装置100が補正した測定値を含む複数の測定点の測定値に基づきレシピを最適化する。制御装置100は、レシピ最適化装置230、レシピ最適化部210又は制御装置100にて最適化されたレシピに基づき、基板処理装置10の基板処理を制御する。
【0048】
入力部201及び出力部205は、例えば、操作パネル215及びI/Oポート214により実現される。算出部202、外れ値判定部203、補正部204、レシピ最適化部210は、例えば、CPU211により実現される。なお、情報処理装置200は、図示しない記憶部を有し、記憶部は、ROM212、RAM213、HDD216により実現される。
【0049】
[補正方法]
図5及び
図6を参照しながら、実施形態に係る補正方法及び外れ値の判定方法の一例を説明する。
図5は、実施形態に係る補正方法の一例を示すフローチャートである。
図6は、実施形態に係る外れ値の判定方法の一例を示すフローチャートである。実施形態に係る補正方法及び外れ値の判定方法は、情報処理装置200により実行され、測定値の外れ値の判定及び補間を行う。
【0050】
図5の補正方法では、ステップS1において、入力部201は、複数の測定点における基板処理結果である測定値と、複数の測定点の位置情報とを入力する。本例では、入力部201は、複数の測定点における基板処理結果として、50個の測定点における膜厚測定値を入力し、複数の測定点の位置情報として、50個の測定点の座標(X,Y)を入力する。
【0051】
次に、ステップS2において、外れ値判定部203は、局所線形回帰法の平滑化アルゴリズムを用いて、入力した50の測定点の膜厚測定値のうちから外れ値を判定する。なお、外れ値判定の詳細については、
図6を使用して後述する。
【0052】
次に、ステップS3において、補正部204は、外れ値と判定された測定点の膜厚測定値を、当該測定点の膜厚推定値に置き換えることにより、測定値を補正する。なお、各測定点の膜厚推定値の算出については、
図6を使用して後述する。
【0053】
次に、ステップS4において、出力部205は、外れ値の除去及び補間が行われた補正後のデータである、複数の測定点における補正後の測定値を含む複数の測定値と、複数の測定点の位置情報とを出力する。本例では、出力部205は、複数の測定点における補正後の基板処理結果として50の測定点における補正後の膜厚測定値を含む膜厚測定値を出力し、複数の測定点の位置情報として、50個の測定点の座標(X,Y)を出力する。出力データは、レシピの最適化に使用される。
【0054】
[外れ値の判定方法]
外れ値の判定方法について、
図6を参照しながら説明する。
図6は、
図5のステップS2の処理の一例を詳述したフローチャートである。なお、外れ値の判定方法で使用するループ処理の繰り返し回数(設定回数)、外れ値の判定基準を示す閾値、平滑化対象の測定点を含むフィッティング(外れ値の平滑化)に使用する測定点の個数は、パラメータの設定値を使用する。本例では、フィッティング(外れ値の平滑化)に使用する測定点の個数は15とするが、これに限らない。
【0055】
まず、ステップS21において、算出部202は、重み値を初期化する。重み値は、測定点の数だけあり、算出部202は、すべての測定点の重み値を正の値に初期化する。重み値は外れ値の判定に使用される。重み値が0の場合、その測定点の測定値は外れ値であると判定される。重み値が正の値の場合、その測定点の測定値は外れ値ではないと判定される。
【0056】
次に、ステップS22において、算出部202は、平滑化対象の測定点を含むその周囲の15の測定点における膜厚推定値を、局所線形回帰法を用いて算出する。次に、ステップS23において、算出部202は、膜厚測定値と膜厚推定値との差分の絶対値を算出し、外れ値の判定基準である閾値と比較する。膜厚測定値と膜厚推定値との差分の絶対値が閾値以下のとき、その測定点の重み値は正の値になる。膜厚測定値と膜厚推定値との差分の絶対値が閾値よりも大きいとき、その測定点の重み値は0になる。重み値が0の場合、その測定点は、平滑化に使用する15の測定点から除外される。また、後述するステップS25において、重み値が0の測定点の測定値は外れ値として除外される。
【0057】
次に、ステップS24において、算出部202は、ループ処理(ステップS22~S23)を設定回数繰り返したかを判定する。算出部202は、ループ処理を設定回数繰り返していないと判定すると、ステップS22に戻り、ステップS22~S23のループ処理を繰り返す。
【0058】
ステップS22に戻ると、算出部202は、入力した複数の測定点の位置情報から選択された15個の測定点のうち、重み値が0の測定点を除いた測定点の膜厚測定値に基づき、局所線形回帰法を用いて各測定点における膜厚推定値を再計算する。
【0059】
次に、ステップS23において、算出部202は、膜厚測定値と、再計算された膜厚推定値との差分の絶対値が閾値以下のとき、その測定点の重み値を正の値にし、その差分の絶対値が閾値よりも大きいとき、その測定点の重み値を0に設定する。
【0060】
ステップS22~S23のループ処理を繰り返すことにより、重み値が0の測定点が増え、外れ値が除外されて測定値の精度が向上する。また、ループ処理の回数が増えるほど、各測定点の重み値がより適正値に収束する。選択された15の測定点から外れ値を除外して2次曲面でフィッティングすることにより、ループ処理完了時、最も良いフィッティング結果であったときの平滑化対象の測定点の膜厚を膜厚推定値として得ることができる。
【0061】
ステップS24において、算出部202は、ループ処理が予め定められた設定回数繰り返したと判定すると、ループ処理を終了し、ステップS25に進む。なお、ステップS22~S23のループ処理では、入力した複数の測定点のすべての測定点を平滑化対象として、平滑化対象の測定点とその周囲の所定個の測定点の測定値及び推定値を用いて、すべての測定点についての2次曲面フィッティングを行う。
【0062】
ステップS25において、外れ値判定部203は、入力した複数の測定点のすべての測定点の重み値のうち、重み値が0の測定点の測定値を外れ値と判定し、本処理を終了する。
【0063】
以上、情報処理装置200が実行する外れ値判定方法を含む補正方法について説明した。本補正方法は、基板上の複数の測定点の位置情報と、複数の測定点のそれぞれにおける基板処理結果を示す測定値と、を入力するステップと、入力した複数の測定点の位置情報から選択された複数の測定点における基板処理結果を推定した複数の推定値を、局所線形回帰法を用いて算出するステップと、選択された複数の測定点のそれぞれの測定値と推定値との差分の絶対値が予め設定された閾値から外れる測定点の測定値を外れ値と判定するステップと、外れ値と判定された測定点の測定値を補正するステップと、を有する。
【0064】
[画面表示例]
図7は、実施形態に係る補正方法の結果の一例を示す図である。
図7(a)は、実施形態に係る補正方法を行う前の、ウェハ2上の複数の測定点P1、P2、・・・P10・・・で測定された測定値による膜厚分布を示す。
図7(a)の測定点P10の測定値は、外れ値である。
【0065】
図7(b)は、実施形態に係る補正方法を行い、外れ値と判定された測定点P10の測定値の除外及び補間後の、すなわち、外れ値と判定された測定点P10の測定値を推定値に置換した後のウェハ2上の膜厚分布を示す。
【0066】
図7(b)では、測定点P10の外れ値が除外され、測定点P10の膜厚が平滑化されている。実施形態に係る補正方法では、外れ値を外れ値の測定点の周囲の複数の測定点の膜厚測定値によりフィッティングする。これにより、測定点P10の外れ値に対してより実体に合った補間ができている。
【0067】
図7(a)(b)に示す画像は、例えば、基板処理装置10又は制御装置100の画面上に表示され、ユーザが確認することができる。このように、外れ値の除去及び補間前後の結果を示す画像を表示することにより、ユーザは、複数の測定点のうち外れ値が一か所あった場合、他の測定点の結果から明らかに外れていることを画面上の表示から直感的に知ることができる。また、ユーザは、外れ値が補間されたときに平滑化対象が他の測定点の結果(測定値)により近づいていることを画面上の表示から直感的に知ることができる。
【0068】
[効果の例]
以上に説明したように、本実施形態に係る補正方法によれば、基板上の複数の測定点における基板処理結果(測定値)を自動で補正することができる。つまり、ユーザが介在することなく、パラメータに設定された各種の設定値を使用して、基板処理結果の外れ値の除去及び補間を自動で実施できる。
【0069】
本実施形態に係る補正方法は、成膜結果の一例として膜厚を膜厚計で測る、RIを反射率計で測る等、基板処理結果を各種の測定器で測ることができ、測った結果の測定値が分布を持っているものに適用できる。
【0070】
本実施形態に係る補正方法によれば、外れ値の除去及び補間後の出力データを使用して、レシピの最適化を行うことができる。レシピの最適化の一例としては、ヒータの温度設定値、成膜時間、ガス流量、APC開度(圧力制御)等が挙げられる。ただし、これに限定されず、出力データは、基板処理結果に影響を与えるプロセス条件の最適化に使用可能である。なお、レシピの最適化は、基板処理装置10の評価時及び量産時のいずれにおいても基板処理毎に自動で行ってよい。
【0071】
また、本実施形態に係る補正方法では、測定点の配置に制約はなく、例えば、
図7に示すように測定点が同心円状に位置付けられていなくてもよい。また、外れ値の除去及び補間の測定対象は、膜厚に限られず、RI(屈折率)等でもよい。また、測定対象は、基板処理装置10がエッチング装置の場合、エッチング形状の傾き(チルト角度)、又はCD(Critical dimension)等でもよい。
【0072】
本実施形態に係る補正方法では、各測定点の重み値により外れ値の判定を行う。各測定点の重み値はその測定点の膜厚推定値等から決まるため、近傍の測定点との膜厚測定値の差が標準偏差未満の場合でも外れ値の検出が可能である。また、本実施形態に係る補正方法では、基板処理結果が正規分布に従っている等の制約を有しない。
【0073】
以上に説明したように、本実施形態の補正方法によれば、基板上の複数の測定点における基板処理結果を自動で補正することができる。
【0074】
今回開示された実施形態に係る補正方法及び補正方法を実施可能な情報処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0075】
本開示の基板処理装置は、Atomic Layer Deposition(ALD)装置、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【0076】
また、本開示の基板処理装置は、プラズマを用いて基板を処理する装置に限らず、プラズマを用いずに基板を処理する装置であってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 情報処理システム
2 ウェハ
10 基板処理装置
11 処理容器
30 基板保持具
100 制御装置
200 情報処理装置
201 入力部
202 算出部
203 外れ値判定部
204 補正部
205 出力部
230 レシピ最適化装置