(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140725
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】銅張積層板
(51)【国際特許分類】
B32B 15/06 20060101AFI20241003BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20241003BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B15/06 Z
B32B15/08 M
H05K1/03 630H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052029
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100213997
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】村上 康之
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA14A
4F100AB17B
4F100AB33B
4F100AK01A
4F100AK09A
4F100AK28A
4F100AK64A
4F100AK73A
4F100AN02A
4F100BA02
4F100CA02A
4F100CA23A
4F100GB43
4F100JB16A
4F100JG05
4F100JK13
4F100JL11
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】柔軟性及び低熱抵抗性に優れると共に、密着性に優れる、銅張積層板の提供。
【解決手段】本発明は、硫黄系架橋剤と、前記硫黄系架橋剤により架橋可能な熱可塑性樹脂と、フィラーとを含む複合シートと、前記複合シートの主面及び裏面の少なくとも一方の面上に直接設けられた銅箔と、を備える架橋性積層体を架橋してなる、銅張積層板であって、前記複合シート中における前記フィラーの含有割合が、前記熱可塑性樹脂及び前記フィラーの合計を100体積%とした場合に、45体積%以上75体積%以下であり、前記フィラーが、窒化ホウ素を含み、前記複合シートの主面に対する前記窒化ホウ素の配向角度が、60°以上90°以下である、銅張積層板である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄系架橋剤と、前記硫黄系架橋剤により架橋可能な熱可塑性樹脂と、フィラーとを含む複合シートと、
前記複合シートの主面及び裏面の少なくとも一方の面上に直接設けられた銅箔と、
を備える架橋性積層体を架橋してなる、銅張積層板であって、
前記複合シート中における前記フィラーの含有割合が、前記熱可塑性樹脂及び前記フィラーの合計を100体積%とした場合に、45体積%以上75体積%以下であり、
前記フィラーが、窒化ホウ素を含み、
前記複合シートの主面に対する前記窒化ホウ素の配向角度が、60°以上90°以下である、銅張積層板。
【請求項2】
前記窒化ホウ素が鱗片状である、請求項1に記載の銅張積層板。
【請求項3】
前記複合シート中における前記窒化ホウ素の含有割合が、前記熱可塑性樹脂及び前記フィラーの合計を100体積%とした場合に、40体積%以上65体積%以下である、請求項1に記載の銅張積層板。
【請求項4】
前記複合シート中における前記硫黄系架橋剤の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、1.00質量部以上5.00質量部以下である、請求項1に記載の銅張積層板。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、下記条件(1)及び(2):
(1)SP値が18.45(MPa)1/2以下である
(2)ポリブテン、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、及びエチレンプロピレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含む
の少なくとも一方を満たす、請求項1~4の何れかに記載の銅張積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅張積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体素子等の電子部品の回路基板(以下、「プリント基板」と称する場合がある。)の製造には、金属ベース材や金属箔を絶縁層に張り合わせた積層板が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、絶縁性及び熱放散性に優れた金属ベース基板として、金属ベース材上に、絶縁層と、導電層とがこの順に設けられた金属ベース基板であって、絶縁層として、エポキシ樹脂と、硬化剤と、50体積%~85体積%の六方晶窒化ホウ素粒子とを含む樹脂組成物の硬化物からなり、且つ、六方晶窒化ホウ素粒子が厚さ方向に配向した縦配向シートを備える熱伝導性絶縁シートを用いた、金属ベース基板が開示されている。更に特許文献1には、導電層に銅箔を用いることが好ましいことが開示されている。
また、特許文献2には、密着性、屈曲性、耐熱性、回路充填性を良好に維持しながら、成形時における樹脂の流動性が低く、はみ出しを抑制することができる樹脂付き金属箔として、金属箔に第1絶縁層及び第2絶縁層がこの順に形成された樹脂付き金属箔であって、第1絶縁層は、ポリイミド樹脂層、ポリアミドイミド樹脂層、液晶ポリマー樹脂層、フッ素樹脂層又はポリフェニレンエーテル樹脂層で形成され、第2絶縁層は、半硬化状態のポリオレフィン樹脂層で形成されていると共に、ポリオレフィン樹脂層が、成分(A)ポリオレフィン系エラストマーと、成分(B)熱硬化性樹脂とを含み、ポリオレフィン樹脂層全体に占める成分(A)ポリオレフィン系エラストマーの割合が50~95質量%である、樹脂付き金属箔が開示されている。更に特許文献2の実施例では、金属箔として銅箔が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6023474号公報
【特許文献2】特開2022-133347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の、銅箔を用いた金属ベース基板や樹脂付き金属箔等の銅張積層板については、銅張積層板の柔軟性、及び銅張積層板の厚み方向の低熱抵抗性(以下、単に「低熱抵抗性」と称する場合がある。)を向上することと、銅張積層板の絶縁層と銅箔との密着性(以下、単に「密着性」と称する場合がある。)を確保することとのバランスの点において改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、柔軟性及び低熱抵抗性に優れると共に、密着性に優れる、銅張積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、所定の複合シートを絶縁層として用いた銅張積層板、具体的には、硫黄系架橋剤と、該硫黄系架橋剤により架橋可能な熱可塑性樹脂と、所定量のフィラーとを含む複合シートと、該複合シートの主面及び裏面の少なくとも一方の面上に直接設けられた銅箔と、を備える架橋性積層体を架橋してなる、銅張積層板であって、フィラーが窒化ホウ素を含み、複合シートの主面に対する窒化ホウ素の配向角度が60°以上90°以下である、銅張積層板であれば、上記課題を解決できることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、[1]本発明は、硫黄系架橋剤と、前記硫黄系架橋剤により架橋可能な熱可塑性樹脂と、フィラーとを含む複合シートと、前記複合シートの主面及び裏面の少なくとも一方の面上に直接設けられた銅箔と、を備える架橋性積層体を架橋してなる、銅張積層板であって、前記複合シート中における前記フィラーの含有割合が、前記熱可塑性樹脂及び前記フィラーの合計を100体積%とした場合に、45体積%以上75体積%以下であり、前記フィラーが、窒化ホウ素を含み、前記複合シートの主面に対する前記窒化ホウ素の配向角度が、60°以上90°以下である、銅張積層板である。
上記のような銅張積層板は、柔軟性及び低熱抵抗性に優れると共に、密着性に優れる。
本明細書において、複合シートの「主面」は、当該複合シートにおける最大面積を有する面を意味し、複合シートの「裏面」は、主面とは反対側の面を意味する。
本明細書において、複合シートの主面に対する窒化ホウ素の配向角度は、実施例に記載の方法により測定できる。
本明細書において、樹脂にはゴムが含まれる。
本明細書において、「低熱抵抗性に優れる」とは、低加圧(例えば、0.1MPa)下での低熱抵抗性と、高加圧(例えば、0.9MPa)下での低熱抵抗性との両方に優れることを意味する。
【0009】
[2]上記[1]の銅張積層板において、前記窒化ホウ素は鱗片状であることが好ましい。
窒化ホウ素が鱗片状であれば、銅張積層板の柔軟性及び熱伝導性を向上できる。
【0010】
[3]上記[1]又は[2]の銅張積層板において、前記複合シート中における前記窒化ホウ素の含有割合は、前記熱可塑性樹脂及び前記フィラーの合計を100体積%とした場合に、40体積%以上65体積%以下であることが好ましい。
複合シート中における窒化ホウ素の含有割合が上記下限以上であれば、銅張積層板の高加圧下での低熱抵抗性を向上できる。また、銅張積層板の厚み方向の熱伝導性(以下、単に「熱伝導性」と称する場合がある。)を向上できる。
一方、複合シート中における窒化ホウ素の含有割合が上記上限以下であれば、銅張積層板の柔軟性、低加圧下での低熱抵抗性、及び密着性を向上できる。
【0011】
[4]上記[1]~[3]の何れかの銅張積層板において、前記複合シート中における前記硫黄系架橋剤の含有量は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、1.00質量部以上5.00質量部以下であることが好ましい。
複合シート中における硫黄系架橋剤の含有量が上記下限以上であれば、銅張積層板の密着性を向上できる。
一方、複合シート中における硫黄系架橋剤の含有量が上記上限以下であれば、銅張積層板の柔軟性及び低加圧下での低熱抵抗性を向上できる。
【0012】
[5]上記[1]~[4]の何れかの銅張積層板において、前記熱可塑性樹脂は、下記条件(1)及び(2):
(1)SP値が18.45(MPa)1/2以下である
(2)ポリブテン、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、及びエチレンプロピレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含む
の少なくとも一方を満たすことが好ましい。
熱可塑性樹脂が上記条件を満たせば、銅張積層板の柔軟性、熱伝導性、及び低誘電損失性を向上できる。
本明細書において、熱可塑性樹脂のSP値は、実施例に記載の方法により算出できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、柔軟性及び低熱抵抗性に優れると共に、密着性に優れる、銅張積層板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の銅張積層板の一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその実施形態に基づき詳細に例示説明する。
本発明の銅張積層板は、半導体素子等の電子部品のプリント基板の製造に用いることができる。
【0016】
(銅張積層板)
本発明の銅張積層板は、硫黄系架橋剤と、硫黄系架橋剤により架橋可能な熱可塑性樹脂と、フィラーとを含む複合シートと、複合シートの主面及び裏面の少なくとも一方の面上に直接設けられた銅箔と、を備える架橋性積層体を架橋してなるものである。また、複合シート中におけるフィラーの含有割合は、熱可塑性樹脂及びフィラーの合計を100体積%とした場合に、45体積%以上75体積%以下である。更に、フィラーは窒化ホウ素を含み、複合シートの主面に対する窒化ホウ素の配向角度は、60°以上90°以下である。
上記のような銅張積層板は、柔軟性及び低熱抵抗性に優れると共に、複合シートと銅箔とが優れた密着性を示す。これらの理由は定かではないが、複合シートが熱可塑性樹脂を含むことにより、銅張積層板の柔軟性が向上したと推察され、また、複合シートが、所定の割合のフィラーを含み、所定の方向に配向した窒化ホウ素をフィラーとして含むことにより、銅張積層板の低熱抵抗性を向上したと推察され、更に、複合シートが、硫黄系架橋剤と、硫黄系架橋剤により架橋可能な熱可塑性樹脂を含むことにより、複合シート内で架橋反応が良好に起こると共に、銅箔と硫黄系架橋剤との架橋反応が起こり、その結果、複合シートと銅箔との密着性が向上したと推察される。
なお、本明細書において、「架橋性積層体を架橋してなる」とは、架橋性積層体に熱や圧力等を加えて、上記架橋反応等を起こさせることを意味する。
【0017】
図1は、本発明の銅張積層板の一例を示す概略斜視図である。
図1に示す銅張積層板100は、複合シート110と、複合シート110の主面111上に直接設けられた銅箔120と、複合シート110の裏面112上に直接設けられた銅箔120とを備える架橋性積層体を架橋してなるものである。
なお、複合シートの主面及び裏面の両方の面上に設けられた銅箔は、互いに、同一のものでも、組成、物性、厚み及び表面状態の少なくとも1つが異なるものでよい。
また、
図1に示す銅張積層板は、銅箔が、複合シートの主面及び裏面の両方の面上に設けられているが、本発明の銅張積層板はこれに限定されず、例えば、銅箔が複合シートの主面上のみに直接設けられた銅張積層板でも、銅箔が複合シートの裏面上のみに直接設けられた銅張積層板でもよい。
【0018】
<複合シート>
複合シートは、硫黄系架橋剤と、硫黄系架橋剤により架橋可能な熱可塑性樹脂(以下、「架橋性熱可塑性樹脂」と称する場合がある。)と、フィラーとを含み、任意に、硫黄系熱架橋剤、架橋性熱可塑性樹脂及びフィラー以外の成分(以下、「その他の成分」と称する場合がある。)を更に含み得る。
【0019】
<<硫黄系架橋剤>>
硫黄系架橋剤は硫黄を含有する架橋剤であり、例えば、粉末硫黄、オイル処理粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、分散性硫黄等の硫黄;テトラメチルチウラムジスルフィド、N,N-ジチオビスモルホリン等の有機含硫黄化合物;等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、銅張積層板の密着性を向上させる観点から、硫黄が好ましく、粉末硫黄がより好ましい。
【0020】
複合シート中における硫黄系架橋剤の含有量は、架橋性熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.50質量部以上であることが好ましく、1.00質量部以上であることがより好ましく、1.50質量部以上であることが更に好ましく、5.00質量部以下であることが好ましく、3.00質量部以下であることがより好ましく、2.00質量部以下であることが更に好ましい。
複合シート中における硫黄系架橋剤の含有量が上記下限以上であれば、
の密着性を向上できる。
一方、複合シート中における硫黄系架橋剤の含有量が上記上限以下であれば、複合シートの柔軟性が向上し、その結果、銅張積層板の柔軟性を向上できる。また、銅張積層板の低加圧下での低熱抵抗性を向上できる。
【0021】
<<架橋性熱可塑性樹脂>>
架橋性熱可塑性樹脂は、硫黄系架橋剤により架橋可能なものであれば特に限定されない。
【0022】
ここで、架橋性熱可塑性樹脂は、下記条件(1)及び(2):
(1)SP値が18.45(MPa)1/2以下である
(2)ポリブテン、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、及びエチレンプロピレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含む
の少なくとも一方を満たすことが好ましく、条件(1)及び(2)の両方を満たすことがより好ましい。
架橋性熱可塑性樹脂が上記条件を満たせば、複合シートの柔軟性、熱伝導性、及び低誘電損失性が向上し、その結果、銅張積層板の柔軟性、熱伝導性、及び低誘電損失性を向上できる。
【0023】
上記条件(1)である「架橋性熱可塑性樹脂のSP値」は、18.25(MPa)1/2以下であることが好ましく、18.04(MPa)1/2以下であることがより好ましく、12.30(MPa)1/2以上であることが好ましく、16.40(MPa)1/2以上であることがより好ましい。
架橋性熱可塑性樹脂のSP値が上記上限以下であれば、複合シートの柔軟性、熱伝導性、及び低誘電損失性がより向上し、その結果、銅張積層板の柔軟性、熱伝導性、及び低誘電損失性をより向上できる。
一方、架橋性熱可塑性樹脂のSP値が上記下限以上であれば、複合シートの十分な強度を確保することができる。
なお、複合シートが架橋性熱可塑性樹脂として複数種を含有する場合には、含有するすべての樹脂のSP値がそれぞれ条件を満たすことを必要とする。
【0024】
上記条件(2)に列挙した架橋性熱可塑性樹脂としては、具体的に以下のものを用いることができる。
ポリブテンとしては、イソブテンのホモポリマー、イソブテンとn-ブテンとのコポリマー等を用いることができる。
ブチルゴムとしては、イソブチレンとイソプレンとのコポリマーを用いることができる。
スチレンブタジエンゴムとしては、スチレンとブタジエンとのコポリマーを用いることができる。
イソプレンゴムとしては、イソプレンのホモポリマーを用いることができる。
エチレンプロピレンゴムとしては、エチレンとプロピレンとのコポリマーを用いることができる。
上記ポリマーとしては、本発明の目的を阻害しない限りにおいて任意の分子量のもの選択することができる。また、ポリマーは、無置換であっても置換基を有していてもよい。さらに、ポリマーがコポリマーである場合には、本発明の目的を阻害しない限りにおいてその比率は任意に選択することができる。これらのポリマーは1種を単独で使用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
さらに、架橋性熱可塑性樹脂としては、固体の架橋性熱可塑性樹脂及び液体の架橋性熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。このような複合シートは、強度及び柔軟性に一層優れる。架橋性熱可塑性樹脂として固体の架橋性熱可塑性樹脂及び液体の架橋性熱可塑性樹脂を併用する場合、これらの間の質量比は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で調整できる。
【0026】
液体の架橋性熱可塑性樹脂としては、常温常圧下で液体である架橋性熱可塑性樹脂を用いることができる。なお、本明細書において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
他方、固体の架橋性熱可塑性樹脂としては、常温常圧下で固体の架橋性熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0027】
複合シート中における架橋性熱可塑性樹脂の含有割合は、架橋性熱可塑性樹脂及びフィラーの合計を100体積%とした場合に、25体積%以上である必要があり、30体積%以上であることが好ましく、35体積%以上であることがより好ましく、55体積%以下である必要があり、50体積%以下であることが好ましく、45体積%以下であることがより好ましい。
複合シート中における架橋性熱可塑性樹脂の含有割合が上記下限以上であれば、複合シートの柔軟性が向上し、その結果、銅張積層板の柔軟性を向上できる、また、銅張積層板の低加圧下での低熱抵抗性及び密着性を向上できる。
一方、複合シート中における架橋性熱可塑性樹脂の含有割合が上記上限以下であれば、フィラーの含有割合を相対的に多くすることが可能となり、その結果、銅張積層板の高加圧下での低熱抵抗性及び熱伝導性を向上できる。
【0028】
<<フィラー>>
フィラーは、窒化ホウ素を含み、任意に、有機フィラー、窒化ホウ素以外の無機フィラーを更に含み得る。
【0029】
ここで、複合シート中におけるフィラーの含有割合は、架橋性熱可塑性樹脂及びフィラーの合計を100体積%とした場合に、45体積%以上である必要があり、50体積%以上であることが好ましく、55体積%以上であることがより好ましく、75体積%以下である必要があり、70体積%以下であることが好ましく、65体積%以下であることがより好ましい。
複合シート中におけるフィラーの含有割合が上記下限以上であれば、複合シートの熱伝導性が向上し、その結果、銅張積層板の熱伝導性を向上できる。また、銅張積層板の高加圧下での低熱抵抗性を向上できる。
一方、複合シート中におけるフィラーの含有割合が上記上限以下であれば、架橋性熱可塑性樹脂の含有割合を相対的に多くすることが可能となり、その結果、銅張積層板の柔軟性、低加圧下での低熱抵抗性、及び密着性を向上できる。
【0030】
〔窒化ホウ素〕
窒化ホウ素としては、特に限定されず、例えば、鱗片状(板状)窒化ホウ素、及び球状窒化ホウ素等を用いることができる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、複合シートの熱伝導性及び柔軟性(特に、曲げ強度の観点)が向上し、銅張積層板の熱伝導性及び柔軟性を向上でき、更には後述する低誘電性を向上できる観点から、鱗片状窒化ホウ素を用いることが好ましい。
【0031】
ここで、窒化ホウ素は、その結晶構造により、例えば、六方晶窒化ホウ素(h-BN)、立方晶窒化ホウ素(c-BN)、ウルツ鉱窒化ホウ素(w-BN)、菱面体晶窒化ホウ素(r-BN)、乱層構造窒化ホウ素(t-BN)に分類ができる。窒化ホウ素としては、これらを、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、複合シートの熱伝導性及び柔軟性が向上し、銅張積層板の熱伝導性及び柔軟性を向上できることから、六方晶窒化ホウ素(h-BN)が好ましい。なお、六方晶窒化ホウ素は、通常、鱗片状(板状)粒子である。
【0032】
窒化ホウ素の体積平均粒子径は、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることが更に好ましく、25μm以上であることが更により好ましく、70μm以下であることが好ましい。50μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることが更に好ましい。
窒化ホウ素の体積平均粒子径が上記下限以上であれば、複合シート中の窒化ホウ素の間の接触抵抗を低減することが可能となり、結果的に銅張積層板の熱伝導性を向上できる。
一方、窒化ホウ素の体積平均粒子径が上記上限以下であれば、複合シート中に窒化ホウ素を適度に充填することが可能となり、銅張積層板の熱伝導性を向上できる。
なお、本明細書において「体積平均粒子径」は、JISZ8825に準拠して測定でき、レーザー回折法で測定された粒度分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を表す。
【0033】
複合シート中における窒化ホウ素の含有割合は、架橋性熱可塑性樹脂及びフィラーの合計を100体積%とした場合に、40体積%以上であることが好ましく、45体積%以上であることがより好ましく、50体積%以上であることが更に好ましく、65体積%以下であることが好ましく、60体積%以下であることがより好ましく、55体積%以下であることが更により好ましい。
複合シート中における窒化ホウ素の含有割合が上記下限以上であれば、銅張積層板の高加圧下での低熱抵抗性を向上できる。また、複合シートの熱伝導性が向上し、その結果、銅張積層板の熱伝導性を向上できる。
一方、複合シート中における窒化ホウ素の含有割合が上記上限以下であれば、複合シートの柔軟性が向上し、その結果、銅張積層板の柔軟性を向上できる。また、銅張積層板の低加圧下での低熱抵抗性及び密着性を向上できる。
【0034】
〔有機フィラー〕
フィラーに任意に含まれ得る有機フィラーは、複合シートの誘電率及び誘電損失を低減する機能を有し得る。フィラーが有機フィラーを含めば、即ち、複合シートが有機フィラーを含めば、複合シートの低誘電性及び低誘電損失性が向上し、その結果、銅張積層板の低誘電性及び低誘電損失性を向上できる。
【0035】
ここで、有機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレンの共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂フィラー;シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)等の炭化水素系樹脂フィラー等が挙げられる。有機フィラーとしては、これらを、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、複合シートの低誘電性及び低誘電損失性がより向上し、銅張積層板の低誘電性及び低誘電損失性をより向上できることから、フッ素樹脂フィラーが好ましく、PTFEフィラーがより好ましい。
【0036】
なお、有機フィラーは、後述する複合シートの製造方法におけるプレシート成形工程等を経ることでフィブリル化する場合がある。即ち、複合シート中の有機フィラーは、フィブリル化した状態で存在し得る。
【0037】
複合シートが有機フィラーを含む場合、複合シート中における有機フィラーの含有割合は、架橋性熱可塑性樹脂及びフィラーの合計を100体積%とした場合に、5体積%以上であることが好ましく、10体積%以下であることが好ましい。
複合シート中における有機フィラーの含有割合が上記下限以上であれば、複合シートの低誘電性及び低誘電損失性がより向上し、その結果、銅張積層板の低誘電性及び低誘電損失性をより向上できる。
一方、複合シート中における有機フィラーの含有割合が上記上限以下であれば、窒化ホウ素の含有割合を相対的に多くすることが可能となり、その結果、銅張積層板の高加圧下での低熱抵抗性及び熱伝導性を向上できる。
【0038】
〔窒化ホウ素以外の無機フィラー〕
窒化ホウ素以外の無機フィラーとしては、本発明の目的を損なわないものであれば特に限定されず、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム等が挙げられる。これらを、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
複合シート中における窒化ホウ素以外の無機フィラーの含有割合は、架橋性熱可塑性樹脂及びフィラーの合計を100体積%とした場合に、1体積%以下であることが好ましく、0.5体積%以下であることがより好ましく、0.1体積%以下であることが更に好ましく、0体積%であることが特に好ましい。即ち、複合シートは、窒化ホウ素以外の無機フィラーを含まないことが好ましい。
【0040】
<<その他の成分>>
複合シートが含み得るその他の成分としては、特に限定されないが、例えば、非硫黄系架橋剤、反応開始剤、架橋促進剤及び架橋促進助剤、老化防止剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を任意の比率で併用してもよい。
【0041】
非硫黄系架橋剤としては、特に限定されず、例えば、トリアリルイソシアヌレート(例えば、三菱ケミカル株式会社製のTAIC(登録商標))等のイソシアヌレート類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;N,N’-m-フェニレンジマレイミド等のマレイミド類;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルセバケート、トリアリルホスフェート等の多価酸のアリルエステル;ジエチレングリコールビスアリルカーボネート;エチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンのトリアリルエーテル、ペンタエリトリットの部分的アリルエーテル等のアリルエーテル類;アリル化ノボラック、アリル化レゾール樹脂等のアリル変性樹脂;トリメチロールプロパントリメタクリレートやトリメチロールプロパントリアクリレート等の、3~5官能のメタクリレート化合物やアクリレート化合物;等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を任意の比率で併用してもよい。
【0042】
反応開始剤としては、特に限定されず、例えば、ジベンゾイルパーオキサイド(例えば、日本油脂株式会社製のナイパーE)、t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(例えば、日本油脂株式会社製のパーヘキサ(登録商標)25B)、ジ-t-ブチルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキセン-3、t-ブチルヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、ラウロイルパーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、p-メンタンハイドロパーオキサイド等のラジカル反応開始剤として機能する有機過酸化物、等が挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上を任意の比率で併用してもよい。
【0043】
架橋促進剤及び架橋促進助剤としては、特に限定されず、化学構造中に硫黄原子を含有する含硫黄架橋促進剤(以下、「含硫黄架橋促進剤」と称する場合がある。)と、酸化亜鉛、ステアリン酸等が挙げられる。
ここで、含硫黄架橋促進剤としては、例えば、チウラム系架橋促進剤、チアゾール系架橋促進剤、スルフェンアミド系架橋促進剤、ジチオカルバミン酸塩系架橋促進剤等が挙げられる。
【0044】
チウラム系架橋促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
チアゾール系架橋促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、(ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、(N,N-ジエチルジチオカルバモイル)ベンゾチアゾール等が挙げられる。
スルフェンアミド系架橋促進剤としては、例えば、N-エチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(例えば、大内新興化学工業株式会社製のノクセラーCZ-G)、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等が挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩系架橋促進剤としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸鉛、ジアミルジチオカルバミン酸鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジエチルジチオカルバミン酸カドミウム、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸鉄、ジメチルジチオカルバミン酸ビスマス、ジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアンモニウム、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン、メチルペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペコリン等が挙げられる。
上記した含硫黄架橋促進剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を任意の比率で併用してもよい。なお、含硫黄架橋促進剤としては、スルフェンアミド系架橋促進剤が好ましく、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドがより好ましい。
【0045】
老化防止剤としては、特に限定されず、例えば、フェニル-1-ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルフォニルアミド)ジフェニルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N,N-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(例えば、大内新興化学工業株式会社製のノクラック6C)、N-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン等のアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン等のアミンケトン系老化防止剤;2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,2-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-アミルハイドロキノン等のフェノール系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトメチルベンゾイミダゾール、2-メルカプトメチルベンゾイミダゾールの金属塩等のベンゾイミダゾール系老化防止剤等が挙げられる。
上記した老化防止剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を任意の比率で併用してもよい。なお、老化防止剤としては、アミン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミンがより好ましい。
【0046】
<<複合シートの構成>>
複合シートは、特に限定されないが、複合シートの主面内において複数の条片を直接並列接合してなる構造、或いは、複数の条片を間接的に並列接合してなる構造を有することが好ましい。なお、複合シートが、複合シートの主面内において複数の条片を間接的に並列接合してなる構造を有する場合には、互いに隣接する条片の間に位置する接着層を更に備えていてもよい。
上記のような複合シートであれば、複合シートの厚み方向に窒化ホウ素の長軸を配向させやすいので、複合シートの熱伝導性が向上し、その結果、銅張積層板の熱伝導性を向上できる。
【0047】
以下、
図2及び
図3を参照して、複合シートの構成の一例を説明するが、本発明の銅張積層板が備える複合シートはこれらに限定されるものではない。
【0048】
図2に示す複合シート110は、主面111と、主面111とは反対側に裏面112とを有し、複合シート110の主面内において複数の条片113を直接並列接合してなる構造を有する。より詳細には、
図1に示す複合シート110では、複合シート110の主面内において、各条片113と、隣接する他の条片113とが、長手方向(
図2ではY方向)に延びる辺を共有するように(
図2ではX方向に)接合されている。ここで、
図2におけるX方向は、条片113の幅方向に相当し、Y方向は、条片113の長手方向に相当し、Z方向は、複合シート110の厚み方向に相当する。
【0049】
図3に示す複合シート110は、主面111と、主面111とは反対側に裏面112とを有し、複合シート110の主面内において、条片113と、互いに隣接する条片113の間に位置する接着層114とを並列接合してなる構造を有する。即ち、
図3に示す複合シート110は、複合シート110の主面内において、複数の条片113を間接的に並列接合してなる構造を有する。より詳細には、
図3に示す複合シート110では、複合シート110の主面内において、条片113と接着層114とが、長手方向(
図3ではY方向)に延びる辺を共有するように(
図3ではX方向に)接合されている。ここで、
図3におけるX方向は、条片113及び接着層114の幅方向に相当し、Y方向は、条片113及び接着層114の長手方向に相当し、Z方向は、複合シート110の厚み方向に相当する。
なお、
図3では、条片113及び接着層114の幅(条片111及び接着層114のX方向の長さ)が略等しい場合を示しているが、条片113及び接着層114の幅は異なっていてもよい。
【0050】
複合シート110は、条片113及び接着層114以外の層(以下、「任意の層」と称する場合がある。)を更に備えていてもよい。但し、複合シートの生産性の観点から、複合シートは、条片のみからなること、或いは、条片及び接着層のみからなることが好ましい。そして、複合シートは、銅張積層板の熱伝導性の観点から、条片のみからなることがより好ましい。
【0051】
〔条片〕
複合シートが備え得る条片は、硫黄系架橋剤と、架橋性熱可塑性樹脂と、所定の割合のフィラーとを含み、任意に、その他の成分を更に含み得る。
ここで、条片に含まれる硫黄系架橋剤、架橋性熱可塑性樹脂、フィラー、及び任意のその他の成分としては、<<硫黄系架橋剤>>、<<架橋性熱可塑性樹脂>>、<<フィラー>>、<<その他の成分>>の項で上述した硫黄系架橋剤、架橋性熱可塑性樹脂、フィラー、及び任意のその他の成分を、上述した比率で用いることができる。
【0052】
条片の幅は、1mm以上であることが好ましく、1.2mm以上であることがより好ましく、1.5mm以上であることが更に好ましく、3mm以下であることが好ましく、2.8mm以下であることがより好ましく、2.5mm以下であることが更に好ましい。
上記条片の幅は後述する製造方法におけるプレシートの厚みに依存し得る。そのため、条片の幅が上記下限以上の複合シートは、プレシートの積層数、折畳数又は捲回数がより削減されている。その結果、このような複合シートは、後述する積層体形成速度が向上され、生産性が向上されている。
一方、条片の幅が上記上限以下の複合シートは、複合シート中において窒化ホウ素が厚み方向に良好に配向しているため、熱伝導性が向上されている。
【0053】
〔接着層〕
複合シートが備え得る接着層は、条片同士を接合可能であれば特に限定されるものではない。接着層は、市販の接着テープや、接着剤を塗布して形成した膜等の層状の接着材料を用いて形成できる。また、高温(例えば100℃程度)で溶解する樹脂シートも層状の接着材料として用いることできる。
【0054】
接着層の幅は、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが更に好ましい。
接着層の幅が上記範囲内であれば、条片同士の接着強度を効果的に向上できる。
【0055】
複合シートが接着層を備える場合、接着層の幅に対する条片の幅の比(条片の幅/接着層の幅)は、60以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましく、90以上であることが更に好ましい。
接着層の幅に対する条片の幅の比が上記下限以上であれば、複合シートに占める条片の割合を高め、複合シートの熱伝導性が効果的に向上し、その結果、銅張積層板の熱伝導性を効果的に向上できる。
一方、接着層の幅に対する条片の幅の比は、例えば500以下であり、300以下でもよく、100以下でもよい。
【0056】
<<複合シートの性状>>
複合シートにおける窒化ホウ素の配向角度は、複合シートの主面に対して60°以上90°以下である必要がある。
そして、複合シートにおける窒化ホウ素の配向角度は、70°以上であることが好ましく、75°以上であることがより好ましく、80°以上であることが更に好ましい。窒化ホウ素の配向角度が上記下限以上であれば、複合シートの熱伝導性が向上し、その結果、銅張積層板の熱伝導性を向上できる。
【0057】
複合シートの厚みは、0.05mm以上であることが好ましく、0.10mm以上であることがより好ましく、0.50mm以下であることが好ましく、0.40mm以下であることがより好ましく、0.35mm以下であることが更に好ましい。
複合シートの厚みが上記下限以上であれば、複合シートの強度を向上できる。
一方、複合シートの厚みが上記上限以下であれば、複合シートの柔軟性が向上し、その結果、銅張積層板の柔軟性を向上できる。
【0058】
複合シートは、厚み方向の熱伝導率が、15W/m・K以上であることが好ましく、20W/m・K以上であることがより好ましく、25W/m・K以上であることが更に好ましい。
複合シートの厚み方向の熱伝導率が上記下限以上であれば、銅張積層板の熱伝導性を向上できる。
一方、複合シートの厚み方向の熱伝導率は、例えば100W/m・K以下であり、50W/m・K以下でもよく、30W/m・K以下でもよい。
本明細書において、複合シートの厚み方向の熱伝導率は、実施例に記載の方法により測定できる。
なお、複合シートの厚み方向の熱伝導率は、複合シートに含まれる材料及び成分(硫黄系架橋剤、架橋性熱可塑性樹脂、フィラー等)の種類及び割合、並びに、複合シートの製造方法及び製造条件により調整できる。
【0059】
複合シートは、誘電率が、5.0F/m未満であることが好ましく、4.3F/m未満であることがより好ましく、4.0F/m未満であることが更に好ましい。
複合シートの誘電率が上記上限未満であれば、銅張積層板の低誘電性を向上できる。
一方、複合シートの誘電率は、例えば0.5F/m以上であり、1.0F/m以上でもよく、2.0F/m以上でもよく、3.0F/m以上でもよい。
本明細書において、複合シートの誘電率は、実施例に記載の方法により測定できる。
なお、複合シートの誘電率は、複合シートに含まれる材料及び成分(硫黄系架橋剤、架橋性熱可塑性樹脂、フィラー等)の種類及び割合、並びに、複合シートの製造方法及び製造条件により調整できる。
【0060】
複合シートは、誘電損失が、5.5×10-4未満であることが好ましく、5.0×10-4未満であることがより好ましく、4.5×10-4未満であることが更に好ましい。
複合シートの誘電損失が上記上限未満であれば、銅張積層板の低誘電損失性を向上できる。
一方、複合シートの誘電損失は、例えば1.0×10-4以上であり、2.0×10-4以上でもよく、3.5×10-4以上でもよい。
本明細書において、複合シートの誘電損失は、実施例に記載の方法により測定できる。
なお、複合シートの誘電損失は、複合シートに含まれる材料及び成分(硫黄系架橋剤、架橋性熱可塑性樹脂、フィラー等)の種類及び割合、並びに、複合シートの製造方法及び製造条件により調整できる。
【0061】
<<複合シートの製造方法>>
複合シートは、特に限定されず、(A)硫黄系架橋剤、架橋性熱可塑性樹脂及びフィラーを含む組成物をロール成形してシート状に成形し、プレシートを得る、プレシート成形工程と、(B)プレシートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、プレシートを折畳又は捲回して、積層体を得る積層体形成工程と、(C)積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、複合シートを得るスライス工程と、を含む方法等により製造できる。
【0062】
なお、複合シートの製造方法は、任意で、上記(A)~(C)以外の工程を更に含んでいてもよい。
【0063】
〔(A)プレシート成形工程〕
プレシート成形工程では、硫黄系架橋剤、架橋性熱可塑性樹脂及びフィラーを含む組成物をロール成形してシート状に成形し、プレシートを得る。
【0064】
-組成物-
組成物は、硫黄系架橋剤、架橋性熱可塑性樹脂及びフィラーを含む。また、組成物は、任意に、その他の成分を更に含んでいてもよい。組成物に含まれる硫黄系架橋剤、架橋性熱可塑性樹脂、フィラー、及び任意のその他の成分としては、<<硫黄系架橋剤>>、<<架橋性熱可塑性樹脂>>、<<フィラー>>、<<その他の成分>>の項で上述した硫黄系架橋剤、架橋性熱可塑性樹脂、フィラー、及び任意のその他の成分を、上述した比率で用いることができる。
【0065】
-組成物の調製-
組成物は、特に限定されず、上述した成分を混合することにより調製できる。なお、上述した成分の混合は、特に制限されず、ニーダー;ヘンシェルミキサー、ホバートミキサー、ハイスピードミキサー等のミキサー;二軸混練機;ロール;等の既知の混合装置を用いて行うことができる。
【0066】
混合は、酢酸エチル等の溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒に予め架橋性熱可塑性樹脂を溶解又は分散させて樹脂溶液として、硫黄系架橋剤、フィラー、及び任意で添加されるその他の成分と混合してもよい。
【0067】
混合時間は、例えば、5分以上60分以下である。
【0068】
混合温度は、例えば、5℃以上150℃以下である。
【0069】
-組成物の成形-
調製した組成物は、任意に脱泡及び解砕した後に、ロール成形してシート状に成形できる。このように組成物をロール成形したシート状のものを、プレシートとすることができる。
なお、混合時に溶媒を用いている場合には、溶媒を除去してからシート状に成形することが好ましく、例えば、真空脱泡を用いて脱泡を行えば、脱泡時に溶媒の除去も同時に行うことができる。
【0070】
ここで、ロール成形では、組成物を、第一ロールと、第一ロールよりも外周速度が速い第二ロールとの間を通過させることが好ましい。このようなロール成形によれば、高い剪断応力を加えて組成物を成形でき、この結果、プレシート中のフィラー(特に、窒化ホウ素)が良好に配向し、これを用いて得られた複合シートは熱伝導性に優れる。また、このようなロール成形によれば、複合シート中におけるフィラー(特に、窒化ホウ素)の含有割合を増加させることが可能となり、その結果、高い熱伝導性を有する複合シートを得ることができる。
【0071】
第一ロールに対する第二ロールの外周速度比(「第二ロールの外周速度」/「第一ロールの外周速度」)は、1.03/1以上であることが好ましく、1.05/1以上であることがより好ましく、1.1/1以上であることが更に好ましく、2/1以下であることが好ましく、1.3/1以下であることがより好ましく、1.2/1以下であることが更に好ましい。
第一ロールに対する第二ロールの外周速度比が上記下限以上であれば、より高い剪断応力を加えて組成物を成形できるため、複合シートの熱伝導性を向上できる。
一方、第一ロールに対する第二ロールの外周速度比が上記上限以下であれば、複合シートの圧縮性を向上できる。また、第一ロールに対する第二ロールの外周速度比が上記上限以下であれば、プレシートの表面に発生するシワを抑制できる。即ち、プレシートの製品不良の発生を抑制し、これを用いて得られる複合シートの生産性を向上できる。
なお、外周速度比は、ロールの径及び/又は回転速度を変更することで調整できる。
【0072】
第一ロールと第二ロールとの外周速度差(「第二ロールの外周速度」-「第一ロールの外周速度」)は、0.06m/分以上であることが好ましく、0.1m/分以上であることがより好ましく、0.2m/分以上であることが更に好ましく、1m/分以下であることが好ましく、0.7m/分以下であることがより好ましく、0.5m/分以下であることが更に好ましい。
第一ロールと第二ロールとの外周速度差が上記下限以上であれば、より高い剪断応力を加えて組成物を成形できるため、複合シートの熱伝導性を向上できる。
一方、第一ロールと第二ロールとの外周速度差が上記上限以下であれば、複合シートの圧縮性を向上できる。また、第一ロールに対する第二ロールの外周速度比が上記上限以下であれば、プレシートの表面に発生するシワを抑制できる。即ち、プレシートの製品不良の発生を抑制し、これを用いて得られる複合シートの生産性を向上できる。
なお、外周速度比は、ロールの径及び/又は回転速度を変更することで調整できる。
【0073】
第一ロールと第二ロールとの間隔は、1mm以上であることが好ましく、1.2mm以上であることより好ましく、1.5mm以上であることが更に好ましく、3mm以下であることが好ましく、2.8mm以下であることがより好ましく、2.5mm以下であることが更に好ましい。
【0074】
〔(B)積層体形成工程〕
積層体形成工程では、プレシート成形工程で得られたプレシートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、プレシートを折畳又は捲回して、硫黄系架橋剤、架橋性熱可塑性樹脂及びフィラーを含むプレシートが厚み方向に複数形成された積層体を得る。
また、積層体を得るにあたり、プレシートの表面に層状の接着材料を配置して、プレシートの間に接着材料が介在してなる構造を有する積層体を形成してもよい。なお、積層体形成工程で用いられ得る層状の接着材料としては、市販の接着テープ、接着剤を塗布して形成した膜、高温(例えば100℃程度)で溶解する樹脂シート等が挙げられる。
【0075】
ここで、プレシートの折畳による積層体の形成は、特に制限されることなく、折畳機を用いてプレシートを一定幅で折り畳むことにより行うことができる。また、プレシートの捲回による積層体の形成は、特に制限されることなく、プレシートの短手方向又は長手方向に平行な軸の回りにプレシートを捲き回すことにより行うことができる。また、プレシートの積層による積層体の形成は、特に制限されることなく、積層装置を用いて行うことができる。例えば、シート積層装置(日機装社製、製品名「ハイスタッカー」)を用いれば、層間に空気が入り込むことを抑えることができるため、良好な積層体を効率的に得ることができる。
【0076】
なお、積層体形成工程では、得られた積層体を、硫黄系架橋剤と架橋性熱可塑性樹脂とが架橋反応を起こさない温度で加熱しながら、積層方向に加圧しても、全方位から加圧してもよい。ここで、積層体形成工程において、積層体を、積層方向に加圧すること、或いは、全方位から加圧することを二次加圧という。積層体に対して二次加圧を行うことにより、積層されたプレシート相互間の融着を促進することができる。なお、全方位からの加圧は、例えば、オートクレーブを用いて実施できる。
以下では、上記加圧前の積層体を「第一積層体」と称し、上記加圧後の積層体(加圧された積層体)を「第二積層体」と称する場合がある。
【0077】
ここで、第一積層体を、積層方向に加圧する際の圧力、或いは、全方位から加圧する際の圧力は、0.05MPa以上0.90MPa以下とすることができる。また、第一積層体の加熱温度は、特に限定されないが、50℃以上150℃以下であることが好ましい。更に、第一積層体の加熱時間は、例えば、10秒間以上30分間以下とすることができる。
【0078】
なお、プレシートを積層、折畳又は捲回して得られる積層体では窒化ホウ素が積層方向に略直交する方向に配向していると推察される。
【0079】
〔(C)スライス工程〕
スライス工程では、積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスして、積層体のスライス片よりなる複合シートを得る。
【0080】
積層体をスライスする方法としては、特に限定されず、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、複合シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。
【0081】
積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されず、スリットを有する平滑な盤面と、このスリット部より突出した刃部とを有するスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカンナ及びスライサー)を用いることができる。
【0082】
積層体をスライスする角度は、複合シートの熱伝導性を高める観点からは、積層方向に対して30°以下であることが好ましく、積層方向に対して15°以下であることがより好ましく、積層方向に対して略0°である(即ち、積層方向に沿う方向である)ことが好ましい。
【0083】
<銅箔>
銅箔は、銅を含む箔であれば特に限定されず、例えば、銅又は銅合金からなる箔が挙げられる。銅合金としては、例えば、銅と、ニッケル、リン、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム、コバルト、及び亜鉛からなる群から選択される少なくもと1種と、を含む合金等が挙げられる。また、銅箔の表面は、複合シートとの密着性を向上させるために、アルマイト処理、脱脂処理、サンドブラスト、エッチング、各種メッキ処理、カップリング剤等を使用したプライマー処理等の各種表面処理が施されていることが好ましい。
【0084】
銅箔表面の十点平均粗さ(Rz)は、複合シートとの密着性の観点から、3.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。
本明細書において、十点平均粗さ(Rz)は、JIS B0601に準拠して測定できる。
【0085】
銅箔の厚みは、特に限定されず、通常3μm以上、好ましくは8μm以上、より好ましくは15μm以上であり、通常40μm以下、好ましくは35μm以下、より好ましくは20μm以下である。
【0086】
銅箔として市販のものも使用できる。銅箔は、圧延銅箔でも、電解銅箔でもよい。圧延銅箔としては、例えば、JX日鉱日石金属株式会社製のBHY-22B-T(商品名)、同GHY5-93F-T(商品名)等が挙げられる。電解銅箔としては、例えば、古河電気工業株式会社製のF1-WS(商品名)、日本電解株式会社製のHLS(商品名)、同HLS-Type2(商品名)、同HLB(商品名)、JX日鉱日石金属株式会社製のAMFN(商品名)等が挙げられる。
【0087】
<銅張積層板の性状>
銅張積層板は、ピール強度が、0.8N以上であることが好ましく、1.0N以上であることがより好ましく、1.5N以上であることが更に好ましい。
銅張積層板のピール強度が上記下限以上であれば、銅張積層板の密着性を向上できる。
一方、銅張積層板のピール強度は、例えば10N以下であり、5N以下でもよく、3N以下でもよい。
本明細書において、銅張積層板のピール強度は、実施例に記載の方法により測定できる。
なお、銅張積層板のピール強度は、複合シートに含まれる材料及び成分(硫黄系架橋剤、架橋性熱可塑性樹脂、フィラー等)の種類及び割合、複合シートの製造方法及び製造条件、並びに、銅箔の種類等により調整できる。
【0088】
銅張積層板は、0.1MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値が、1.200℃/W以下であることが好ましく、1.000℃/W以下であることがより好ましく、0.900℃/W以下であることが更に好ましい。
銅張積層板における0.1MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値が上記上限以下であれば、銅張積層板の低加圧下での低熱抵抗性を向上できる。
一方、銅張積層板における0.1MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値は、例えば0.100℃/W以上であり、0.300℃/W以上でもよく、0.500℃/W以上でもよい。
【0089】
銅張積層板は、0.9MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値が、1.000℃/W以下であることが好ましく、0.650℃/W以下であることがより好ましく、0.500℃/W以下であることが更に好ましい。
銅張積層板における0.9MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値が上記上限以下であれば、銅張積層板の高加圧下での低熱抵抗性を向上できる。
一方、銅張積層板における0.9MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値は、例えば0.050℃/W以上であり、0.100℃/W以上でもよく、0.300℃/W以上でもよい。
【0090】
本明細書において、銅張積層板の厚み方向の各熱抵抗値は、実施例に記載の方法により測定できる。
なお、銅張積層板の厚み方向の熱抵抗値は、複合シートに含まれる材料及び成分(硫黄系架橋剤、架橋性熱可塑性樹脂、フィラー等)の種類及び割合、複合シートの製造方法及び製造条件、並びに、銅箔の種類により調整できる。
【0091】
銅張積層板の厚みは、0.05mm以上であることが好ましく、0.10mm以上であることがより好ましく、1.00mm以下であることが好ましく、0.40mm以下であることがより好ましく、0.35mm以下であることが更に好ましい。
【0092】
銅張積層板は、銅張積層板の厚みをT0とし、厚み方向に0.9MPaで加圧した状態における銅張積層板の厚みをT0.9として、下記式(1):
C=100×{1-(T0.9/T0)}[%]・・・(1)
により算出される圧縮率Cが、0.5%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましく、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましく、2.5%以下であることが更により好ましい。
なお、銅張積層板の圧縮率Cは、複合シートに含まれる材料及び成分(硫黄系架橋剤、架橋性熱可塑性樹脂、フィラー等)の種類及び割合、並びに、複合シートの製造方法及び製造条件により調整できる。
【0093】
<銅張積層板の製造方法>
銅張積層板は、例えば、複合シートの両面(主面及び裏面)又は片面(主面又は裏面)に銅箔を設置して架橋性積層体を得て、この架橋性積層体を、複合シート内の硫黄系架橋剤と架橋性重合体とが架橋すると共に、銅箔と硫黄系架橋剤との架橋反応が起こる温度で熱圧縮することで得ることができる。
なお、熱圧縮時の温度は、特に限定されないが、通常160℃以上200℃以下である。また、熱圧縮時の圧力は、特に限定されないが、通常0.2MPa以上0.5MPa以下である。熱圧縮の時間は、特に限定されないが、通常0.5時間以上3時間以下である。
【実施例0094】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。また、体積分率等の算出に際して、各配合成分の体積として、各配合成分の質量をそれらの理論比重で除した値を採用した。なお、実施例における各種の測定及び評価は以下の方法に従って行った。
【0095】
<架橋性熱可塑性樹脂のSP値>
実施例及び比較例にて用いた架橋性熱可塑性樹脂のSP値((MPa)1/2)は濁度滴定法により求めた。測定に際して、良溶媒としてはトルエンを用い、貧溶媒としてはヘキサンを用いた。
【0096】
<窒化ホウ素の配向角度>
各実施例及び比較例で得られた複合シート中の窒化ホウ素の配向角度は、複合シートを正八角形に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテクノロジーズ製、「SU-3500」)にて当該シートの上端から下端までが収まる倍率で観察した。なお、このときの倍率は700倍であった。この断面における窒化ホウ素の長軸に50本線を引き、複合シートの表面に対する長軸の角度の平均を算出した。なお、角度が90°以上であった場合には補角を採用した。これを8面に対して実施し、8面の中で最も値の大きなものを複合シート中の窒化ホウ素の配向角度とした。
なお、窒化ホウ素を含む複合シートは絶縁性が高いため、SEM画像が得にくい(所謂、「チャージアップ」する)場合がある。この場合には、適宜白金等の導電被膜を設ける等の処理を実施してもよい。
【0097】
<熱伝導率>
各実施例及び比較例で得られた複合シートについて、それぞれ、厚み方向の熱拡散率α(m2/s)、定圧比熱Cp(J/g・K)及び比重ρ(g/m3)を以下の方法で測定した。
[厚み方向の熱拡散率α(m2/s)]
熱物性測定装置(株式会社ベテル製、製品名「サーモウェーブアナライザTA35」)を使用して、複合シートの厚み方向の熱拡散率を測定した。
[定圧比熱Cp(J/g・K)]
示差走査熱量計(Rigaku製、製品名「DSC8230」)を使用し、10℃/分の昇温条件下における比熱を測定した。
[比重ρ(g/m3)]
自動比重計(東洋精機製、商品名「DENSIMETER-H」)を用いて比重(密度)(g/m3)を測定した。
そして、得られた測定値を用いて下記式(2):
λ=α×Cp×ρ・・・(2)
に代入し、複合シートの厚み方向の熱伝導率λ(W/m・K)を算出した。
【0098】
<誘電率及び誘電損失>
各実施例及び比較例で得られた複合シートの誘電率(F/m)及び誘電損失(無単位量)は、ネットワークアナライザ(キーサイト・テクノロジー製:製品名「N5227A」)を用いて測定した。
具体的には、平衡型円盤共振器法(BCDR法)によって測定を行い、10GHzにおける誘電率及び誘電損失を算出した。
【0099】
<ピール強度>
各実施例及び比較例で得られた銅張積層板における複合シートと銅箔とのピール強度は、剥離解析装置(協和界面科学社製、「VPA-H100」)を用いて測定した。
具体的には、まず、銅張積層板を2cm幅にカットした。次いで、銅張積層板の複合シートの裏面側に位置する銅箔が下になるように、銅張積層板を平面な台の上に固定した。次いで、銅張積層板の一端において、複合シートの主面側に位置する銅箔の一部を剥がした。次いで、剥がした部分の銅箔を持ち、25℃雰囲気下、180°の方向にて200mm/分の速度で銅箔を引き剥がしたときに測定される引張強度の最大値を、引き剥がし強度(ピール強度)とした。
【0100】
<熱抵抗値及び圧縮率>
各実施例及び比較例で製造した銅張積層板の熱抵抗値及び圧縮率は、熱抵抗試験器(株式会社日立テクノロジーアンドサービス製、製品名「樹脂材料熱抵抗測定装置」)を用いて測定した。
具体的には、まず、1cm角の略正方形に切り出した銅張積層板を試料とし、試料温度50℃において、厚み方向に0.1MPa、0.9MPaの圧力を加えた状態における銅張積層板の熱抵抗値及び厚みを測定した。
また、上記試料を加圧する前の厚みをT0とし、0.9MPaの圧力を加えた際の上記試料の厚みをT0.9とし、T0及びT0.9を用いて下記式(1)に従って圧縮率Cを算出した。
C=100×{1-(T0.9/T0)}[%]・・・(1)
【0101】
<柔軟性>
各実施例及び比較例で得られた複合シートの片面を、直径1.0mmのピンゲージに押し付けて20回折り曲げ動作を繰り返した後、複合シートをひっくり返して反対側の面を同じピンゲージに対して押し付けて20回折り曲げ動作を繰り返した。複合シートの両面において、ピンゲージが当たっていた部分のクラック等を目視で評価した。なお、ピンゲージは複合シートを形成する条片に対して垂直方向にセッティングすることで試験を実施した。かかる折り曲げ試験の評価が良好であることは、複合シートを用いた銅張積層板が曲げ強度に優れており、柔軟性に富むことを意味する。
A:クラックが一切なく、良好な状態であった。
B:条片のつなぎ目のところでクラックが発生した。
C:条片以外の部分でもクラックが発生した。
D:容易に曲げることができず、無理に曲げると折れた。
【0102】
<低加圧下での低熱抵抗性>
上記で測定した、0.1MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値を用いて、以下の基準に従って低加圧下での低熱抵抗性を評価した。
A:0.1MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値が0.900℃/W以下である。
B:0.1MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値が0.900℃/W超1.000℃/W以下である。
C:0.1MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値が1.000℃/W超1.200℃/W以下である。
D:0.1MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値が1.200℃/W超である。
【0103】
<高加圧下での低熱抵抗性>
上記で測定した、0.9MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値を用いて、以下の基準に従って高加圧下での低熱抵抗性を評価した。
A:0.9MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値が0.500℃/W以下である。
B:0.9MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値が0.500℃/W超0.650℃/W以下である。
C:0.9MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値が0.650℃/W超1.000℃/W以下である。
D:0.9MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値が1.000℃/W超である。
【0104】
<密着性>
上記で測定したピール強度を用いて、以下の基準に従って密着性を評価した。
A:ピール強度が1.5N以上である。
B:ピール強度が1.0N以上1.5N未満である。
C:ピール強度が0.8N以上1.0N未満である。
D:ピール強度が0.8N未満である。
【0105】
<熱伝導性>
上記で測定した熱伝導率を用いて、以下の基準に従って熱伝導性を評価した。なお、複合シートの熱伝導率が高い程、銅張積層板が熱伝導性に優れることを意味する。
A:熱伝導率が25W/m・K以上である。
B:熱伝導率が20W/m・K以上25W/m・K未満である。
C:熱伝導率が15W/m・K以上20W/m・K未満である。
D:熱伝導率が15W/m・K未満である。
【0106】
<低誘電性>
上記で測定した誘電率を用いて、以下の基準に従って低誘電性を評価した。なお、複合シートの誘電率が低い程、銅張積層板が低誘電性に優れることを意味する。
A:誘電率が4.0F/m未満である。
B:誘電率が4.0F/m以上4.3F/m未満である。
C:誘電率が4.3F/m以上5.0F/m未満である。
D:誘電率が5.0F/m以上である。
【0107】
<低誘電損失性>
上記で測定した誘電損失を用いて、以下の基準に従って低誘電損失性を評価した。なお、複合シートの誘電損失が小さい程、銅張積層板が低誘電損失性に優れることを意味する。
A:誘電損失が4.5×10-4未満である。
B:誘電損失が4.5×10-4以上5.0×10-4未満である。
C:誘電損失が5.0×10-4以上5.5×10-4未満である。
D:誘電損失が5.5×10-4以上である。
【0108】
(実施例1)
<複合シートの製造>
〔組成物の調製〕
架橋性熱可塑性樹脂として、常常温常圧下で固体のスチレンブタジエンゴム(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipole1502」、比重:0.94、SP値:17.84(MPa)1/2))140部を準備した。そして、準備した架橋性熱可塑性樹脂と、フィラーとしての、鱗片状(板状)窒化ホウ素である六方晶窒化ホウ素(h-BN)粒子(Dandong Chemical Engineering製、商品名「HSL」、体積平均粒子径:30μm、アスペクト比:1.25)450部、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)パウダー(3M製、商品名「ダイニオンTM PTFEマイクロパウダー」、有機フィラー)45部と、硫黄系架橋剤としての硫黄(金華印 微粉硫黄325メッシュ:鶴見化学工業株式会社製)2.45部とを加えた加圧ニーダー(日本スピンドル製)を用いて、温度120℃にて20分間撹拌し、組成物を得た。
【0109】
〔プレシート成形工程〕
次いで、得られた組成物500gを、第一ロール及び第二ロールを用いて、第一ロールと第二ロールとの間隔2mm、ロール温度25℃、シート搬出速度(第一ロールの外周速度)2m/分、第一ロールに対する第二ロールの外周速度比(第二ロール/第一ロール):1.15/1の条件にて圧延加工してシート状にした。シートの搬送方向を同一にして、圧延加工を繰り返した。合計で圧延加工を10回行い、厚み2mmのプレシートを得た。
【0110】
〔積層体成形工程〕
次いで、得られたプレシートを縦50mm×横50mmに裁断し、プレシートの厚み方向に25枚積層して第一積層体を得た。更に、得られた第一積層体を、温度120℃、圧力0.1MPaで3分間、積層方向に対してプレス(二次加圧)することにより、高さ約50mmの第二積層体を得た。
【0111】
〔スライス工程〕
次いで、第二積層体の積層面を0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を用いて、積層方向に対して0度の角度で(換言すれば、積層されたプレシートの主面の法線方向に)スライスすることにより、縦約50mm×横50mm×厚み0.30mmの平らな複合シートを得た。得られた複合シートは、複合シートの厚み方向に対して垂直な方向(厚み方向に対する角度が90°の方向)に並列結合された条片により構成されている。言い換えると、複合シートは、複合シートの主面内において、各条片と、隣接する他の条片とが、を並列接合してなる構造を有している。なお、略垂直な方向における条片の幅は、プレシートの厚みとほぼ同じである。
得られた複合シートを用いて、窒化ホウ素の配向角度、熱伝導率、誘電率及び誘電損失、柔軟性、熱伝導性、低誘電性、並びに、低誘電損失性を測定及び評価した。結果を表1に示す。
【0112】
<銅張積層板の製造>
得られた複合シートの両面(主面及び裏面)に銅箔を設置して架橋性積層体を得た後、この架橋性積層体を、170℃の雰囲気下、0.3MPaで1時間加圧し、複合シートの両面に銅箔を貼り付けて、厚み約0.30mmの銅張積層板を得た。
得られた銅張積層板を用いて、ピール強度、熱抵抗値及び圧縮率、低加圧下での低熱抵抗性、高加圧下での低熱抵抗性、並びに、密着性を測定及び評価した。結果を表1に示す。
【0113】
(実施例2)
組成物の調製において、硫黄系架橋剤としての硫黄の使用量を2.45部から1.2部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0114】
(実施例3)
組成物の調製において、フィラーとしての六方晶窒化ホウ素の使用量を450部から280部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0115】
(実施例4)
<複合シートの製造>
〔組成物の調製〕
実施例1と同様にして、組成物を調製した。
【0116】
[プレシート成形工程〕
次いで、得られた組成物を用いて、実施例1と同様にしてプレシートを得た。
【0117】
〔積層体成形工程〕
次いで、得られたプレシートを縦50mm×横50mmに裁断した。また、層状の接着材料としてのアクリル樹脂からなる接着シート(東亜合成製、製品名「アロンマイティAF60」、厚さ:10μm)を縦50mm×横50mmに裁断した。裁断したプレシート上に、裁断した接着シートを載せ、接着シートを介してプレシートを厚み方向に25枚(接着シートは24枚使用)積層して、接着シートがプレシート間に位置する高さ約50mmの第一積層体を得た。
得られた第一積層体を離型PET(polyethylene terephthalate)でキャラメル包装し、テープ止めを行い、PETレトルト包装で真空包装した。これをオートクレーブ(羽生田鉄工所製、小型オートクレーブ「DANDELION」)中にて、150℃の温度で、且つ、全方位から0.8MPaの圧力(絶対圧)で、30分間加熱加圧処理(二次加圧)し、第二積層体を得た。
【0118】
〔スライス工程〕
次いで、第二積層体の積層面を0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を用いて、積層方向に対して0度の角度で(換言すれば、積層されたプレシートの主面の法線方向に)スライスすることにより、縦約50mm×横50mm×厚み0.30mmの平らな複合シートを得た。得られた複合シートは、複合シートの厚み方向に対して垂直な方向(厚み方向に対する角度が90°の方向)に並列接合された条片と接着層とから構成されている。言い換えると、複合シートは、複合シートの主面内において、条片と、互いに隣接する条片の間に位置する接着層とが並列接合してなる構造を有している。なお、略垂直な方向における条片の幅は、プレシートの厚みとほぼ同じである。複合シートにおいて、条片はプレシートに由来し、接着層は接着シートに由来する。
得られた複合シートを用いて、窒化ホウ素の配向角度、熱伝導率、誘電率及び誘電損失、柔軟性、熱伝導性、低誘電性、並びに、低誘電損失性を測定及び評価した。結果を表1に示す。
【0119】
<銅張積層板の製造>
得られた複合シートの両面(主面及び裏面)に銅箔を設置して架橋性積層体を得た後、この架橋性積層体を、170℃の雰囲気下、0.3MPaで1時間加圧し、複合シートの両面に銅箔を貼り付けて、厚み約0.30mmの銅張積層板を得た。
得られた銅張積層板を用いて、ピール強度、熱抵抗値及び圧縮率、低加圧下での低熱抵抗性、高加圧下での低熱抵抗性、並びに、密着性を測定及び評価した。結果を表1に示す。
【0120】
(実施例5)
組成物の調製において、有機フィラーとしてのポリテトラフルオロエチレンパウダーを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0121】
(比較例1)
組成物の調製において、硫黄系架橋剤としての硫黄2.45部に替えて、非硫黄系架橋剤としてのトリアリルイソシアヌレート(三菱ケミカル株式会社製、製品名「TAIC(登録商標)」)3部を添加し、更に、反応開始剤としての2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂株式会社製、商品名「パーヘキサ(登録商標)25B」)4部を添加したこと以外は実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0122】
(比較例2)
組成物の調製において、硫黄系架橋剤としての硫黄を添加しなかったこと、及び、銅張積層板の製造において、複合シートの主面と銅箔との間、及び、複合シートの裏面と銅箔との間に、それぞれ、アクリル樹脂からなる接着シート(東亜合成製、製品名「アロンマイティAF60」、厚さ:10μm)を介在させ、複合シートと銅箔の貼り付けを行ったこと以外は、実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0123】
【0124】
表1からも明らかなように、実施例1~5の銅張積層板は、柔軟性及び低熱抵抗性に優れていると共に、密着性に優れていることが分かる。