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特開2024-140733抗菌フィルム及びそれを用いた衛生用品
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  • 特開-抗菌フィルム及びそれを用いた衛生用品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140733
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】抗菌フィルム及びそれを用いた衛生用品
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C08J9/00 A CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052040
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】喜多 芹奈
(72)【発明者】
【氏名】森 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】角前 洋介
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA18
4F074AA20
4F074AA21A
4F074AA24
4F074AA98A
4F074AC26
4F074AC35
4F074AD11
4F074AD12
4F074AD16
4F074AG02
4F074AG04
4F074AG12
4F074CA02
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA10
4F074DA23
4F074DA24
4F074DA38
4F074DA45
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、透気度と機械的強度のバランスに優れた抗菌フィルムを提供することである。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂、無機充填剤及び抗菌剤を含む延伸多孔フィルムを含む抗菌フィルムであって、前記延伸多孔フィルムは、厚み1μm換算の透気度が8秒/100mL以下であり、かつ、該フィルムの流れ方向(MD方向)の引張伸度が50%以上である、抗菌フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂、無機充填剤及び抗菌粒子を含む延伸多孔フィルムを有する抗菌フィルムであって、
前記延伸多孔フィルムは、厚み1μm換算の透気度が8秒/100mL以下であり、かつ、該フィルムの流れ方向(MD方向)の引張伸度が50%以上である、抗菌フィルム。
【請求項2】
前記抗菌粒子の90%体積粒径(D90)と10%体積粒径(D10)との比(D90/D10)が3.5以上である、請求項1記載の抗菌フィルム。
【請求項3】
前記抗菌粒子の平均粒径が0.5μm~7μmである、請求項2記載の抗菌フィルム。
【請求項4】
前記抗菌粒子は、その形状が不定形な無機系抗菌粒子である、請求項1記載の抗菌フィルム。
【請求項5】
前記無機系抗菌粒子は、銀、銅及び亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種以上の金属成分を含む請求項4記載の抗菌フィルム。
【請求項6】
前記延伸多孔フィルム中における、前記ポリオレフィン系樹脂の含有量が20~69.9質量%であり、前記無機充填剤の含有量が30~79.9質量%であり、前記抗菌粒子の含有量が0.1~10量%であり、請求項1記載の抗菌フィルム。
【請求項7】
前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含む、請求項1記載の抗菌フィルム。
【請求項8】
前記ポリエチレンとポリプロピレンの質量比(ポリエチレン:ポリプロピレン)が、1:0~3:1である、請求項7記載の抗菌フィルム。
【請求項9】
前記無機充填剤が、炭酸カルシウム又は硫酸バリウムである、請求項1記載の抗菌フィルム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項記載の抗菌フィルムを備えた衛生用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌フィルム及びそれを用いた衛生用品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィンと無機充填剤を含有する樹脂組成物を延伸することにより、ポリオレフィンと無機充填剤との間で界面剥離を発生させ、多数のボイド(微多孔)を形成した多孔フィルムが知られている。特に、ポリオレフィンと無機充填剤を含有する樹脂組成物からなる延伸多孔フィルムは、内部の微多孔が連通孔を形成しているため、高い透気度・透湿度を有しながらも、液体の透過を抑制した透湿防水フィルムとして利用されている。該延伸多孔フィルムは、例えば紙おむつや女性用生理用品等の衛生材料、作業服、ジャンパー、ジャケット、医療用衣服、化学防護服等の衣服、マスク、カバー、ドレープ、シーツ及びラップ等の通気性及び透湿性と防水性が求められる用途に幅広く使用されている。
【0003】
上記の用途に用いられる多孔フィルムは、直接、人の肌に触れる用途に用いられることが多いため、柔軟性がよく肌触りが良いことが求められる。
例えば、特許文献1には、密度が0.86~0.90g/cm、メルトインデックスが0.1~50g/10min、重量平均分子量/数平均分子量が3以下であり、炭素数が4~8個のα-オレフィンコモノマーを12重量%以上含有する結晶性低密度ポリエチレン20~100重量部と、密度が0.915~0.950g/cmのポリエチレン80~0重量部とからなる樹脂成分100重量部に対して、無機充填剤50~400重量部を含むポリオレフィン系樹脂組成物をフィルム状成形物となし、少なくも一軸方向に延伸処理されていることを特徴とする透湿フィルムについて開示されており、かかる透湿フィルムは、柔軟性を有し、透湿性及び耐水性にも優れており、更に伸縮性が良好であるとされている。
【0004】
ところで、上記のような用途においては、消臭機能や抗菌機能を付与し、その付加価値を向上させる試みがなされている。
しかしながら、フィルム状物品に抗菌機能を付与させる場合、抗菌剤をフィルム表面に露出させることが難しかった。
そこで、例えば特許文献2には、熱可塑性樹脂100重量部、無機充填剤100~400重量部及び抗菌剤0.05~5重量部を含む樹脂組成物を溶融製膜した後、少なくとも一軸方向に1.5~7倍延伸したことを特徴とする抗菌性多孔質フィルムについて開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、ポリオレフィン樹脂と、抗菌剤と、充填剤を含む樹脂組成物のフィルムまたはシートを延伸してなる抗菌性多孔フィルムについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-1557号公報
【特許文献2】特開平06-049253号公報
【特許文献3】特開平09-48868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2及び3に開示されているように、多孔フィルムに抗菌性を付与する試みがなされてはいるが、いずれの文献に開示の発明においても、抗菌粒子の添加によって生じるフィルム内に形成される多孔形状の変化や、それに起因してフィルムの透気度及び機械特性を兼備できなくなる点については考慮されていない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、透気度と機械特性のバランスに優れた延伸多孔フィルムを含む抗菌フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題について検討したところ、抗菌粒子の添加により、延伸多孔化で形成されるフィルムの多孔形状を制御する際において、一定の透気度を保ちながら機械特性を兼備させるには、とりわけ、フィルムの流れ方向(MD方向)の引張伸度を特定範囲にすることが重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る第1の態様は、ポリオレフィン系樹脂、無機充填剤及び抗菌粒子を含む延伸多孔フィルムを含む抗菌フィルムであって、前記延伸多孔フィルムは、厚み1μm換算の透気度が8秒/100mL以下であり、かつ、該フィルムの流れ方向(MD方向)の引張伸度が50%以上である、抗菌フィルムである。
【0011】
本発明の具体的な態様の例を以下に示す。
[1] ポリオレフィン系樹脂、無機充填剤及び抗菌粒子を含む延伸多孔フィルムを有する抗菌フィルムであって、
前記延伸多孔フィルムは、厚み1μm換算の透気度が8秒/100mL以下であり、かつ、該フィルムの流れ方向(MD方向)の引張伸度が50%以上である、抗菌フィルム。
[2] 前記抗菌粒子の90%体積粒径(D90)と10%体積粒径(D10)との比(D90/D10)が3.5以上である、[1]記載の抗菌フィルム。
[3] 前記抗菌粒子の平均粒径が0.5μm~7μmである、[1]又は[2]記載の抗菌フィルム。
[4] 前記抗菌粒子は、その形状が不定形な無機系抗菌粒子である、[1]~[3]のいずれかに記載の抗菌フィルム。
[5] 前記無機系抗菌粒子は、銀、銅及び亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種以上の金属成分を含む[4]記載の抗菌フィルム。
[6] 前記延伸多孔フィルム中における、前記ポリオレフィン系樹脂の含有量が20~69.9質量%であり、前記無機充填剤の含有量が30~79.9質量%であり、前記抗菌粒子の含有量が0.1~10量%であり、[1]~[5]のいずれかに記載の抗菌フィルム。
[7] 前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含む、[1]~[6]のいずれかに記載の抗菌フィルム。
[8] 前記ポリエチレンとポリプロピレンの質量比(ポリエチレン:ポリプロピレン)が、1:0~3:1である、[7]記載の抗菌フィルム。
[9] 前記無機充填剤が、炭酸カルシウム又は硫酸バリウムである、[1]~[8]のいずれかに記載の抗菌フィルム。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の抗菌フィルムを備えた衛生用品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透気度と機械特性のバランスに優れた延伸多孔フィルムを含む抗菌フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施例3の抗菌フィルム(延伸多孔フィルム)の電子顕微鏡写真による断面図である。矢印は抗菌粒子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の一例としての本発明の抗菌フィルム(以下、「本フィルム」と称す場合がある。)について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0015】
<本明細書での用語について>
「延伸多孔フィルム」とは、少なくとも一軸方向に延伸された多孔フィルムであり、多孔フィルムとは、孔径が0.5μm以下の微細孔が複数形成されたフィルムをいう。
なお、該孔径については、バブルポイント法(JIS K3832又はASTM F316)で測定される最大孔径として評価することができ、より具体的には、パームポロメーターを用いて最大孔径を測定することができる。
【0016】
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。
また、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。
しかし、フィルムとシートの境界は定かでないことから、本明細書においては両者を同一の意味を有する用語として用い、両者を統一して「フィルム」と記す。
【0017】
「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
【0018】
<抗菌フィルム>
本発明の抗菌フィルム(以下、「本フィルム」とも称する。)は、少なくともポリオレフィン系樹脂、無機充填剤及び抗菌粒子を含む樹脂組成物(以下、「本樹脂組成物」とも称する。)から形成された延伸多孔フィルムを含む。また、本フィルムの厚み1μm換算の透気度は8秒/100mL以下であり、かつ、本フィルムの流れ方向(MD方向)の引張伸度は50%以上である。
なお、本フィルムは、延伸多孔フィルムのみからなるものであっても、該延伸多孔フィルムに他の層が積層されたフィルムであってもよく、また、該延伸多孔フィルムは、単層フィルムであっても積層フィルムであってもよい。
【0019】
延伸多孔フィルム中のポリオレフィン系樹脂の含有量(延伸多孔フィルムの全質量(100質量%)に対するポリオレフィン系樹脂の含有割合)は、十分な透気度と機械的強度を保持するという観点より、20質量%~69.9質量%であることが好ましく、25質量%~60質量%であることがより好ましく、30質量%~55質量%であることが最も好ましい。なお、本樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂の含有量も上記範囲内であることが好ましい。
【0020】
また、延伸多孔フィルム中の無機充填剤の含有量(延伸多孔フィルムの全質量(100質量%)に対する無機充填剤の含有割合)は、十分な連通孔の形成と引張伸度の保持を両立させるという観点から、30質量%~79.9質量%であることが好ましく、40質量%~75質量%であることがより好ましく、50質量%~70質量%であることが最も好ましい。なお、本樹脂組成物中の無機充填剤の含有量も上記範囲内であることが好ましい。
【0021】
さらに、延伸多孔フィルム中の抗菌粒子の含有量(延伸多孔フィルムの全質量(100質量%)に対する抗菌粒子の含有割合)は、実用に足る抗菌性及び機械的強度の保持を両立させるという観点から、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~5質量%であることがより好ましく、0.1質量%~3質量%であることが最も好ましい。なお、本樹脂組成物中の抗菌粒子の含有量も上記範囲内であることが好ましい。
【0022】
本発明の抗菌フィルムは、上記構成を有し、特に延伸多孔フィルムの引張伸度が特定の範囲に調整されているため、透気度と機械特性のバランスに優れている。一般的に、フィルムを延伸することで透気度が発現しやすくなるが、延伸により分子配向が強まってフィルムの破断が起こりやすくなることから、機械的強度は損なわれる傾向にある。この点、本発明では、延伸多孔フィルムの延伸倍率を適切にコントロールし、引張伸度を特定の範囲に調整することで、フィルム中の高分子を適切な程度に配向させ、フィルムの伸縮性を損なわずに多孔化を促進することができるため、フィルムは好適な透気度を発現しやすくなる。このため、本発明では、透気度と機械特性のバランスに優れた延伸多孔フィルムが得られる。
【0023】
(他の樹脂)
本樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂以外の他の樹脂を含んでいてもよく、他の樹脂としては、例えばポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン・ビニルアルコール系共重合体、エチレン・酢酸ビニル系共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアセタール系樹脂等が挙げられる。これら他の樹脂は、1種又は2種以上使用することができる。
【0024】
本樹脂組成物中の他の樹脂の含有割合(本樹脂組成物の全質量(100質量%)に対する他の樹脂の含有割合)は、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが最も好ましい。
【0025】
(その他の添加剤)
本樹脂組成物は、その他にも、例えば可塑剤、滑剤、相容化剤、加工助剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、艶消し剤、消臭剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤及び顔料等の各種添加剤を含有してもよい。
【0026】
<ポリオレフィン系樹脂>
前記ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンモノマーを主たるモノマー成分(主たるモノマー成分とは、全モノマー成分中最も含有割合の多いモノマー成分をいい、好ましくは全モノマー成分中50モル%以上100モル%以下を占めるモノマー成分のことをいう。)とする樹脂である。該オレフィンモノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィンや、ジエン、イソプレン、ブチレン、ブタジエン等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂はこれらの単独重合体でもよく、2種以上を共重合した多元共重合体であってもよい。
また、ポリオレフィン系樹脂は、上述したオレフィンモノマーと、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルアルコール、エチレングリコール、無水マレイン酸、スチレン、ジエン、環状オレフィンが共重合されたものでもよい。
【0027】
中でも、抗菌性多孔フィルムの製膜性・延伸加工性を良好に保つという観点から、ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含むことが好ましく、このようなポリオレフィン系樹脂としては、エチレン単独重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、プロピレン単独重合体、エチレン・(α-オレフィン共重合体)、プロピレン・(α-オレフィン共重合体)、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン共重合体等を挙げることができる。
ポリオレフィン系樹脂は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。前記ポリオレフィン系樹脂が2種類以上で構成される場合、その合計が前記ポリオレフィン系樹脂の質量となる。
【0028】
ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含むことが好ましく、この場合、ポリエチレンとポリプロピレンの質量比(ポリエチレン:ポリプロピレン)は、1:0~3:1であることが好ましい。すなわち、ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレンを主成分として含むことが好ましい。
【0029】
なお、上記モノマー成分の含有割合は、H―NMR、13C―NMR等のNMR測定結果から算出することにより測定できる。より具体的には、測定装置としてBruker Advance400Mを用い、以下の条件で測定することができる。
【0030】
<測定条件>
測定温度:130℃
溶媒:ODCB+C
測定法:H、13C、DEPT135
【0031】
<ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート>
190℃、2.16kgにおける、ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、1.0g/10min~4.0g/10minであることが好ましく、1.0g/10min~3.0g/10minであることがより好ましく、1.0g/10min~2.5g/10minであることが最も好ましい。
なお、メルトフローレートは、JIS K 7210-1:2014に準拠して測定され、より具体的には、エチレンモノマーを主たるモノマー成分とした樹脂である場合には、190℃、2.16kg荷重の条件で、プロピレンモノマーを主たるモノマー成分とした樹脂である場合は230℃、2.16kg荷重の条件で測定する。
また、2種以上のポリオレフィン系樹脂を使用する場合には、190℃、2.16kgにおける混合樹脂のメルトフローレートが上記範囲内にあることが好ましい。
【0032】
<ポリオレフィン系樹脂の密度>
ポリオレフィン系樹脂の密度は、0.880~0.950g/cmであることが好ましく、0.890~0.950g/cmであることがより好ましく、0.900~0.945g/cmであることが最も好ましい。密度を上記上限値以下とすることで、延伸多孔フィルムの延伸性が良好となり、高い柔軟性と良好な透気度を有する延伸ムラの無い薄膜の多延伸多孔フィルムを得ることができる。
なお、密度は、JIS K 7112:1999 B法に準拠して、ピクノメーター法の条件で測定され、2種以上のポリオレフィン系樹脂を使用する場合には、各々のポリオレフィン系樹脂の密度が、上記範囲内にあることが好ましい。
【0033】
<無機充填剤>
前記無機充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、タルク、クレイ、カオリナイト、モンモリロナイト等の微粒子や鉱物が挙げられるが、微多孔質化の発現及び製造コスト、機械的強度などの利点から、炭酸カルシウム及び/又は硫酸バリウムを好適に用いることができる。
【0034】
<抗菌粒子>
前記抗菌粒子とは、抗菌機能を有する粒子状の抗菌剤である。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)及び大腸菌(Escherichia coli)に対する抗菌粒子の最小発育阻止濃度(MIC値)は、2.0mg/mL以下であることが好ましい。最小発育阻止濃度とは、菌の発育が認められない抗菌剤の最低濃度のことである。具体的には、抗菌剤の濃度が10~2000μg/mLになるようにCAMHB培地にて希釈し、各種菌液を播種し、36℃にて20時間培養後、各種菌の発育状態を確認し、発育が認められなかったものを最小発育阻止濃度とする。最小発育阻止濃度は、数値が低いほど抗菌活性が高いことを意味する。
【0035】
前記抗菌粒子としては、例えば無機系抗菌粒子が挙げられ、具体的には、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン等の金属イオンを含む金属化合物が挙げられる。すなわち、抗菌粒子は、銀、銅及び亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種以上の金属成分を含むものであることが好ましい。この中でも、銀イオンを含む金属化合物が抗菌効果の観点から好ましい。
【0036】
前記抗菌粒子の形状としては、例えば球体状、楕円体、多面体状、不定形等が挙げられる。これらの中でも延伸多孔化工程時に大きい孔と小さい孔をバランスよく形成することによる、透気度と機械特性の兼備の観点から、不定形な抗菌粒子を用いることが好ましく、中でも不定形な無機系抗菌粒子を用いることが特に好ましい。なお、本明細書において、不定形とは、破砕状、鱗片状、凹凸状等のように一定の形状を有さず、また、一定の粒径を有しないことをいう。不定形な抗菌粒子を用いることで、抗菌粒子の90%体積粒径(D90)と10%体積粒径(D10)との比(D90/D10)や平均粒径が後述する範囲を満たしやすくなり、延伸多孔フィルムの透気度と引張伸度を所定の範囲に調整しやすくなる。
【0037】
また、前記抗菌粒子の90%体積粒径(D90)と10%体積粒径(D10)との比(D90/D10)は、上記と同様の観点から、3.5以上であることが好ましく、4.0以上20以下であることがより好ましく、4.5以上15以下であることが最も好ましい。抗菌粒子の90%体積粒径(D90)と10%体積粒径(D10)との比(D90/D10)が上記範囲であることにより、延伸多孔化工程時に大きい孔と小さい孔がバランスよく形成される。大きい孔が形成されることにより好適な通気性が発現され、また、多数の小さい孔が形成されることにより孔の連通が促進されたり孔・粒子の配置が散らばったりするため、大きい孔と小さい孔がバランスよく形成されることで、透気度と引張伸度を所定の範囲とすることができる。
なお、抗菌粒子の90%体積粒径(D90)及び10%体積粒径(D10)は、JIS Z 8815:2013に準拠して、下記条件で測定された粒度分布より算出される。
【0038】
<測定条件>
原理:レーザー散乱法
・装置:MT3300EX II(マイクロトラック・ベル)
・分散媒:水
・分散剤:中性界面活性剤
・分散法:装置内蔵超音波照射 15min(30W)
【0039】
さらに、前記抗菌粒子の平均粒径は、上記と同様の観点から、0.5~7μmであることが好ましく、0.5~6μmであることがより好ましく、0.5~5μmであることが最も好ましい。前記抗菌粒子の平均粒径が上記範囲であることにより、大きい孔径と小さい孔径の多孔がバランスよく形成され、透気度と引張伸度を所定の範囲とすることができる。
なお、抗菌粒子の平均粒径は、JIS Z 8815:2013に準拠して、上記条件で測定され、測定された粒径について算術平均したものを平均粒径とする。
【0040】
<本フィルムの厚み>
本フィルムの厚みは、好適な透気度の発現及び良好な機械的物性の保持、製造コストの観点などから、5μm~100μmであることがより好ましく、5μm~50μmであることが最も好ましい。また、延伸多孔フィルムの厚みも上記範囲内であることが好ましい。
【0041】
<延伸多孔フィルムの物性(1);空孔率>
延伸多孔フィルムは、少なくとも一軸方向に延伸された多孔フィルムであり、多孔フィルムとは、孔径が0.5μm以下の微細孔が複数形成されたフィルムである。延伸多孔フィルムの空孔率は、延伸多孔フィルムの比重(W1)及び本樹脂組成物(Z)の比重(W0)から、以下の式により算出される。延伸多孔フィルムの空孔率は、20%~85%が好ましく、30%~80%がより好ましく、35%~75%が最も好ましい。
空孔率(%)=[1-(W1/W0)]×100
【0042】
延伸多孔フィルムと本樹脂組成物の比重は以下のようにして測定できる。まず、延伸多孔フィルムを、縦方向(MD):50mm、横方向(TD):50mmの大きさに切り出し、延伸多孔フィルムの比重(W1)の測定を行う。次に、延伸多孔フィルムを構成する本樹脂組成物(Z)の比重(W0)の測定を行う。本樹脂組成物(Z)の比重(W0)の測定においては、延伸多孔フィルムの未延伸フィルムを、縦方向(MD):50mm、横方向(TD):50mmの大きさに切り出し、比重測定を行えばよい。
また、未延伸シートの採取が困難な場合は、延伸多孔フィルムを融点以上に加熱することにより延伸多孔フィルムを融解し、空孔を消失させた後、プレスサンプルを作製し、該プレスサンプルより、縦方向(MD):50mm、横方向(TD):50mmの大きさに切り出し、比重測定を行えばよい。
かくして、得られた延伸多孔フィルムの比重(W1)及び本樹脂組成物(Z)の比重(W0)から、上記の式より空孔率を算出する。
【0043】
<延伸多孔フィルムの物性(2);最大孔径>
延伸多孔フィルムの最大孔径(バブルポイント法で測定される最大孔径)は、延伸多孔化工程時に大きい孔と小さい孔をバランスよく形成することによる、透気度と機械特性の兼備の観点から、0.10μm~0.50μmであることが好ましく、0.13μm~0.45μmであることがより好ましく、0.15~0.40μmであることが最も好ましい。延伸多孔フィルムの最大孔径(バブルポイント細孔径)が上記範囲にあることで、機械的物性を損なうことなく延伸多孔フィルムにおける通気が促進され、透気度と引張伸度を所定の範囲とすることができる。延伸多孔フィルムの最大孔径(バブルポイント細孔径)は、バブルポイント法(JIS K3832又はASTM F316)に準拠し、パームポロメーターを用いて最大孔径を測定する。
延伸多孔フィルムの最大孔径(バブルポイント細孔径)を上記範囲内にするには、例えば(a)不定形な形状の抗菌粒子を用いたり、(b)抗菌粒子の90%体積粒径(D90)と10%体積粒径(D10)との比(D90/D10)を上述した範囲にしたり、(c)上述した範囲の平均粒径を有する抗菌粒子を用いたりしたりすることで調整することができる。
【0044】
<延伸多孔フィルムの物性(3);坪量>
延伸多孔フィルムにおける坪量は、5g/m~40g/mが好ましく、より好ましくは5g/m~35g/mである。坪量が5g/m以上であることにより、実用に足る良好な機械的強度を十分確保しやすい。また、坪量が40g/m以下であることにより、フィルムの延伸性が良好となり、好適な透気度を得られやすい。
なお、坪量は、サンプル(縦方向(MD):500mm、横方向(TD):500mm)の質量(g)を電子天秤で測定し、その数値を400倍した値を坪量とする。
【0045】
<延伸多孔フィルムの物性(4);透気度>
延伸多孔フィルムの厚み1μm換算の透気度は、8.0秒/100mL以下であることが好ましく、0.5秒/100mL~8.0秒/100mLであることがより好ましく、1.0秒/100mL~7.8秒/100mLであることが最も好ましい。透気度が0.5秒/100mL以上であることによって、耐水性及び耐透液性を十分確保しやすく、また、透気度が8.0秒/100mL以下であることによって、十分な連通孔を有することを示唆している。
なお、透気度はJIS P 8117:2009(ガーレー試験機法)に規定される方法に準じて測定される100mLの空気が紙片を通過する秒数であり、例えば透気度測定装置(旭精工製王研式透気度測定機EGO1-55型)を用いて測定することができる。本発明においては、サンプルを無作為に3点測定し、その算術平均値を透気度とする。
【0046】
また、厚み1μm換算の透気度は、以下の式で計算される。
厚み1μm換算の透気度(秒/100mL)=延伸多孔フィルムの透気度(秒/100mL)/延伸多孔フィルムの厚み(μm)
【0047】
<延伸多孔フィルムの物性(5);引張伸度>
延伸多孔フィルムの流れ方向(MD方向)の引張伸度は、50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることが最も好ましい。50%以上であることにより、実用上十分な機械強度と柔軟性が得られやすい。抗菌粒子を添加しフィルム表面に露出させることで抗菌性を付与できる反面、粒径の大きい抗菌粒子がフィルム表面付近において連続的に存在することで粒子が起点となってフィルムの破断が促進され、機械特性の低下が懸念されるが、本発明によれば、粒径の大きい抗菌粒子と粒径の小さい抗菌粒子がバランス良く存在させるなどにより、大きい粒子が好適な透気度の発現に寄与し、小さい粒子が引張伸度を改善させることで解決される。
また、延伸多孔フィルムの引張伸度の改善、すなわち、延伸多孔フィルムの引張伸度を上記範囲内にするには、例えば延伸多孔化工程時に大きい孔と小さい孔をバランスよく形成すればよく、具体的には、(a)不定形な形状の抗菌粒子を用いたり、(b)抗菌粒子の990%体積粒径(D90)と10%体積粒径(D10)との比(D90/D10)を上述した範囲にしたり、(c)上述した範囲の平均粒径を有する抗菌粒子を用いたり、(d)延伸多孔フィルムの最大孔径(バブルポイント細孔径)を上記範囲内にすることで調整することができる。
【0048】
上記流れ方向(MD方向)とは、後述する延伸多孔フィルムの製造工程において、フィルムが搬送される方向(流れ方向)をいう。
なお、引張伸度は、JIS K 7161-1:2014に準拠し、機械流れ方向(MD)100mm×垂直方向(TD)10mmに切り出したサンプルを6点、測定温度23℃、測定相対湿度50%、引張速度200m/min、チャック間距離50mmの条件で測定される。また、引張伸度の上限値は、通常、400%以下であることが好ましい。
【0049】
<延伸多孔フィルムの製造方法>
延伸多孔フィルムは、従来公知の方法によって製造することができるが、本樹脂組成物を用いて樹脂シートを作製し、次いで該樹脂シートを少なくとも一軸方向に延伸する工程を有する方法により製造されることが好ましい。
【0050】
フィルムとしては、平面状、チューブ状のいずれであってもよいが、生産性(原反シートの幅方向に製品として数丁取りが可能)や内面に印刷が可能という観点から、平面状が好ましい。平面状のフィルムの製造方法としては、例えば押出機を用いて本樹脂組成物を溶融し、ダイからフィルム状に押出し、冷却ロールや空冷、水冷にて冷却固化して得られるフィルム(未延伸フィルム)を、少なくとも一軸方向に延伸した後、巻取機にて巻き取ることによりフィルムを得る方法が例示できる。
【0051】
また、前記未延伸フィルムを得る方法としては、延伸多孔フィルムを構成する本樹脂組成物(Z)を混合した後、溶融混練させることが好ましい。具体的には、タンブラーミキサー、ミキシングロール、バンバリーミキサー、リボンブレンダ―、スーパーミキサー等の混合機で適当な時間混合した後、異方向二軸押出機、同方向二軸押出機等の押出機を使用し、本樹脂組成物の均一な分散分配を促す。得られた本樹脂組成物は、押出機の先端にTダイや丸ダイ等の口金を接続し、フィルム状に成型することができる。
また、混練機の先端にストランドダイを接続し、ストランドカット、ダイカット等の方法により一旦ペレット化した後、(場合によっては追加する組成物とともに)得られたペレットを単軸押出機等に導入し、押出機の先端にTダイや丸ダイ等の口金を接続し、フィルム状に成形することもできる。フィルム状に成形するにあたり、インフレーション成形、チューブラー成形、Tダイ成形等のフィルム成形方法が好ましい。押出温度は、180~260℃程度が好ましく、より好ましくは190~250℃である。押出温度やせん断の状態を最適化することにより、材料の分散状態を制御することも、上述したフィルムの種々の物理的特性、機械的特性を所望の値にするのに有効である。
【0052】
延伸多孔フィルムは、前記未延伸フィルムを延伸することによって製造することができる。例えば、押出機を用いて樹脂を溶融し、Tダイや丸ダイから押出し、冷却ロールで冷却固化し、縦方向(フィルムの流れ方向、MD)へのロール延伸や、横方向(フィルムの流れ方向に対して垂直方向、TD)へのテンター延伸等により、少なくとも一軸方向に延伸される。
また、縦方向に延伸した後、横方向に延伸してもよく、横方向に延伸した後、縦方向に延伸してもよい。さらには、同じ方向に2回以上延伸してもよく、縦方向に延伸した後、横方向に延伸し、さらに縦方向に延伸してもよい。
また、同時二軸延伸機により縦方向、横方向に同時に延伸されてもよい。
また、チューブラー成形により内圧によってチューブ状の未延伸フィルムを放射状に延伸されてもよい。さらには、インフレーション成形により得られたチューブ状の未延伸フィルムを折り畳んだ状態で延伸した後、折り畳まれたチューブ状の延伸多孔フィルムの耳を裁断し、2枚に分けてそれぞれ巻取を行ってもよく、折り畳んだ未延伸フィルムの耳を切断し、2枚の未延伸フィルムに分けた後、それぞれ延伸し、それぞれ巻取を行ってもよい。
【0053】
本発明においては、少なくとも縦方向に1回延伸を行うことが好ましく、また、延伸ムラや通気性との兼ね合いにより、縦方向に2回以上延伸を行ってもよい。すなわち、本フィルムは一軸延伸多孔フィルムであることが好ましい。延伸温度は0℃~120℃が好ましく、20℃~90℃がより好ましい。
また、延伸倍率は、合計1.2倍~6.0倍が好ましく、1.5倍~5.0倍がより好ましい。延伸倍率が合計1.5倍以上とすることで、均一に延伸されて優れた外観を有する延伸多孔フィルムが得られる。
一方、延伸倍率が合計6.0倍以下とすることで、フィルムの破断を抑制できる。
【0054】
必要に応じて、諸物性の改良等を目的として、延伸後に50℃以上120℃以下の温度で熱処理や弛緩処理を行うことができる。ロール延伸により延伸を行う場合、延伸工程と巻取工程の間で、延伸後のフィルムを加熱したロール(アニールロール)に接触させることで熱処理を行うことができる。
また、アニールロールにより加熱しながら、次に接触するロールの速度をアニールロール速度よりも遅くすることで、弛緩処理を行うことができる。
また、これらの熱処理や弛緩処理は、未延伸フィルムの延伸を延伸し、延伸多孔フィルムを巻き取った後、別工程にて行うこともできる。熱処理や弛緩処理の温度が低すぎるとフィルムの収縮率が低減されにくく、また、温度が高すぎるとロールに巻き付いたり、形成された微多孔が閉塞したりするおそれがある。そのため、50℃以上120℃以下の温度で熱処理や弛緩処理を行うことが好ましい。これらの熱処理、弛緩処理は複数回分割して実施されてもよい。
【0055】
また、延伸多孔フィルムは、必要に応じて、スリット、コロナ処理、印刷、粘着剤の塗布、コーティング、蒸着等の表面処理や表面加工等を施すことができる。
【0056】
<本フィルムの製造方法>
本フィルムの製造方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の方法によって製造することができ、延伸多孔フィルムをそのまま本フィルムとして使用することもできるし、延伸多孔フィルムに、例えば共押出法、ラミネート法、塗布乾燥法等の手法を用いて他の層を積層させることで製造することもできる。
【0057】
<用途>
本フィルムは、表裏を貫通する微細な多数形成され、優れた通気性を有している。従って、紙おむつ、女性用生理用品等の衛生用品;作業服、ジャンパー、ジャケット、医療用衣服、化学防護服等の衣服;さらには、マスク、カバー、ドレープ、シーツ、ラップ等の通気性や透湿性を求められる用途に好適に利用することができる。
【0058】
上記紙おむつ、女性用生理用品等の衛生用品は、通常、綿状パルプ、吸収紙等からなる、体液を吸収して保持する吸収体が、その下面及び側面に配置されるバックシート材と、その表面(使用時に肌に接する側)に載置されるトップシート材(フェーシング材)とで内包される構造を有する。
【0059】
上記吸収体には、通常、角や突起があるため、上記バックシート材やトップシート材として、本フィルムを使用すれば、薄膜でありながら優れた強度と透気度を有することから、吸収体の角や突起により、本フィルムが破れて体液が漏れる等の虞がない。
【実施例0060】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例に示す測定値及び評価は、以下のようにして行った。
また、実施例及び比較例では、フィルムの流れ方向を「縦」方向(又は、MD)、その直角方向を「横」方向(又は、TD)と記載する。
【0061】
(1)延伸多孔フィルムの空孔率
実施例及び比較例の延伸多孔フィルムの空孔率は、上述した測定方法により測定した。結果は表4に示した。
【0062】
(2)延伸多孔フィルムの最大孔径
バルブポイント法で測定される、実施例及び比較例の延伸多孔フィルムの最大孔径は、上述した測定方法により測定した。結果は表4に示した。
【0063】
(2)延伸多孔フィルムの坪量
実施例及び比較例の延伸多孔フィルムの坪量は、上述した測定方法により測定した。結果は表4に示した。
【0064】
(3)延伸多孔フィルムの透気度
実施例及び比較例の延伸多孔フィルムの透気度は、上述した測定方法により測定した。結果は表4に示した。
【0065】
(5)延伸多孔フィルムの引張伸度(MD方向)
実施例及び比較例の延伸多孔フィルムの引張伸度(MD方向)は、上述した測定方法により測定した。結果は表4に示した。
【0066】
(6)延伸多孔フィルムの抗菌性評価(定性試験)
実施例及び比較例の延伸多孔フィルムの定性的な抗菌性評価は、JIS Z 2801:2012 抗菌評価法を参考にして、試験片に納豆菌を接種し、35℃、相対湿度90%の条件で24時間培養後のコロニー数を数え、下記の評価基準により評価を行った。
【0067】
[評価基準]
A:菌体が見られなかった
B:菌体数が1つ
C:菌体数が2つ以上 (便宜上抗菌剤無添加サンプルもCで表記した)
【0068】
(7)延伸多孔フィルムの抗菌性評価(抗菌活性値)
実施例及び比較例の延伸多孔フィルムの抗菌活性値はJIS Z 2801:2012 抗菌評価法に基づいて、試験片に大腸菌および黄色ブドウ球菌を接種して、下記の式によって抗菌活性値を求めた。
抗菌活性値=Log(N1/N2)
上記式において、N1は、無加工試験片(比較例3)に対する35℃、相対湿度90%の条件で24時間培養した後の細菌の数であり、N2は、各実施例、比較例1,2のフィルムからなる試験片に対する35℃、相対湿度90%の条件で24時間培養した後の細菌の数である。
【0069】
実施例及び比較例で使用したポリオレフィン系樹脂の諸物性は、表1のとおりである。該ポリオレフィン系樹脂の諸物性については、上述した測定方法により測定される値である。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例及び比較例で使用した延伸多孔フィルムの原材料及び原材料の配合割合(表中の数字は質量%を表す。)は、表2のとおりである。
なお、使用した無機充填剤の詳細は、備北粉化工業(株)社製の重質炭酸カルシウム「ライトンBS-0」(平均粒径1.1μm、ステアリン酸表面処理品)である。
【0072】
【表2】
【0073】
また、実施例及び比較例で使用した抗菌粒子の諸物性は、表3のとおりである。抗菌粒子の粒径はJIS Z 8815:2013に準拠してレーザー散乱法で測定し、測定された粒度分布よりD90、D10粒径をそれぞれ算出した。また、測定された粒径について算術平均したものを平均粒径とした。
【0074】
【表3】
【0075】
<実施例1>
原材料を表2に示す組成比率にて計量した後、ヘンシェルミキサーに投入し、5分間混合、分散させて、同方向二軸押出機を用いて、設定温度220℃にて溶融混練した後、同方向二軸押出機の先端に接続したTダイにて、樹脂組成物を押出し、35℃に設定したキャスティングロールにて引き取り、冷却固化させて厚さ32μmの未延伸フィルムを得た。その後、得られた未延伸フィルムを、70℃に設定したロール(S)と75℃に設定したロール(T)間において、(S)-(T)ドロー比250%を掛けてMDに3.5倍延伸を行い、厚さ27μmの延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表4に纏めた。
【0076】
<実施例2>
原材料を表2に示す組成比率に変更し、厚さ35μmの未延伸フィルムを得た以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ24μmの延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表4に纏めた。
【0077】
<実施例3>
原材料を表2に示す組成比率に変更し、厚さ40μmの未延伸フィルムを得た以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ24μmの延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表4に纏めた。
【0078】
<比較例1>
原材料を表2に示す組成比率に変更し、厚さ24μmの未延伸フィルムを得た以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ19μmの延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表4に纏めた。
【0079】
<比較例2>
原材料を表2に示す組成比率に変更し、厚さ33μmの未延伸フィルムを得た以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ16μmの延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表4に纏めた。
【0080】
<比較例3>
原材料を表2に示す組成比率に変更し、厚さ48μmの未延伸フィルムを得た以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ25μmの延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表4に纏めた。
【0081】
【表4】
【0082】
実施例1~3で得られた延伸多孔フィルムは、好適な透気度と機械的強度を兼ねそろえた延伸多孔フィルムであり、透気特性や引張伸度(MD方向)に優れるとともに、抗菌性能を持つフィルムであった。
一方、比較例1~3では、透気度と機械的強度のバランスが損なわれた延伸多孔フィルムが得られ、比較例1では透気度が高い値となり通気性が悪化し、比較例2では引張伸度(MD方向)が低い値となった。
また、比較例3では抗菌粒子が含まれないため、孔径バランスの良い多孔化が促進されず、各実施例に比べて透気度が高い値となり、抗菌性能も得られない延伸多孔フィルムであった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の抗菌フィルムは、透気度と機械的強度のバランスに優れる。従って、紙おむつ、女性用生理用品等の衛生用品;作業服、ジャンパー、ジャケット、医療用衣服、化学防護服等の衣服;さらには、マスク、カバー、ドレープ、シーツ、ラップ等の通気性や透湿性を求められる用途に用いる物品(部材シート)として好適に利用することができる。
図1