(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140740
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/38 20060101AFI20241003BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H05K3/38
H05K3/46 B
H05K3/46 T
H05K3/46 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052050
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智生
【テーマコード(参考)】
5E316
5E343
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA32
5E316AA43
5E316CC06
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC13
5E316CC31
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5E343AA02
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5E343BB17
5E343BB23
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5E343BB71
5E343DD33
5E343DD43
5E343FF16
5E343GG02
(57)【要約】
【課題】絶縁層と配線層との密着性を向上できる配線基板を提供する。
【解決手段】配線基板10は、配線層22と、配線層22の側面を被覆し、配線層22の上面の一部を露出するように形成された絶縁層30と、絶縁層30から露出する配線層22上に形成された配線層40とを有する。絶縁層30は、樹脂32とフィラー33とを含有する。絶縁層30の上面30Aは、樹脂32からフィラー33が露出された構造を有する。配線層40は、絶縁層30の上面30Aと絶縁層30から露出する配線層22の上面とを被覆する第1金属膜51と、第1金属膜51の上層に形成された金属層53,54とを有する。第1金属膜51はCuNiTi合金により形成されている。第1金属膜51に含まれるNiの含有率は、5wt%以上30wt%以下である。第1金属膜51に含まれるTiの含有率は、5wt%以上15wt%以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配線層と、
前記第1配線層の側面を被覆するとともに、前記第1配線層の上面の少なくとも一部を露出するように形成された絶縁層と、
前記絶縁層から露出する前記第1配線層上に形成された第2配線層と、を有し、
前記絶縁層は、樹脂とフィラーとを含有し、
前記絶縁層の上面は、前記樹脂から前記フィラーが露出された構造を有し、
前記第2配線層は、前記絶縁層の上面と前記絶縁層から露出する前記第1配線層の上面とを被覆する第1金属膜と、前記第1金属膜の上層に形成された金属層とを有し、
前記第1金属膜は、CuNiTi合金により形成されており、
前記第1金属膜に含まれるNiの含有率は、5wt%以上30wt%以下であり、
前記第1金属膜に含まれるTiの含有率は、5wt%以上15wt%以下である配線基板。
【請求項2】
前記第2配線層は、前記第1金属膜と、前記第1金属膜の表面を被覆する第2金属膜と、前記第2金属膜上に形成された前記金属層とを有し、
前記第2金属膜は、Cuにより形成されている請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記絶縁層の上面は、前記樹脂の上面から前記フィラーの一部が上方に突出した構造を有する請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
前記フィラーは、球状に形成されており、
前記絶縁層の上面は、前記樹脂の上面から前記フィラーの球面の一部が上方に突出した構造を有する請求項3に記載の配線基板。
【請求項5】
前記絶縁層の上面は、前記樹脂の上面と前記フィラーの上面とが面一に形成された構造を有する請求項1に記載の配線基板。
【請求項6】
前記絶縁層は、前記絶縁層を厚さ方向に貫通するとともに、前記第1配線層の上面の一部を露出する貫通孔を有し、
前記第1金属膜は、前記絶縁層の上面と、前記貫通孔の内壁面と、前記貫通孔から露出する前記第1配線層の上面とを連続して被覆している請求項1に記載の配線基板。
【請求項7】
前記樹脂は、エポキシ樹脂であり、
前記フィラーは、シリカフィラーである請求項1に記載の配線基板。
【請求項8】
樹脂とフィラーを含有するとともに、第1配線層の側面を被覆し、前記第1配線層の上面の少なくとも一部を露出する絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の上面に、前記樹脂から前記フィラーが露出された構造を形成する工程と、
前記絶縁層の上面と前記絶縁層から露出する前記第1配線層の上面とを被覆するとともに、CuNiTi合金からなる第1金属膜を形成する工程と、
前記第1金属膜の表面を被覆するとともに、Cuからなる第2金属膜を形成する工程と、
前記第2金属膜上に金属層を形成する工程と、
前記金属層をマスクにして、前記金属層と平面視で重ならない部分の前記第1金属膜と前記第2金属膜とを同時にエッチングで除去する工程と、を有し、
前記第1金属膜に含まれるNiの含有率は、5wt%以上30wt%以下であり、
前記第1金属膜に含まれるTiの含有率は、5wt%以上15wt%以下である配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁層を形成する工程は、レーザ加工法により、前記絶縁層を厚さ方向に貫通するとともに、前記第1配線層の上面の一部を露出する貫通孔を形成する工程を有し、
前記樹脂から前記フィラーが露出された構造を形成する工程では、前記貫通孔が形成された後の前記絶縁層に対してドライデスミア処理が施される請求項8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記絶縁層の上面を研磨することにより、前記樹脂から前記フィラーが露出された構造を形成する請求項8に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子等の電子部品を実装するための配線基板は、様々な形状・構造のものが提案されている。この種の配線基板としては、ビルドアップ法により複数の配線層と複数の絶縁層とを交互に積層した配線基板が知られている(例えば、特許文献1参照)。複数の配線層は、絶縁層を厚さ方向に貫通する貫通孔内に形成されたビア配線を介して互いに電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した配線基板における絶縁層は、樹脂とフィラーとを含有する場合がある。この場合において、絶縁層の表面にフィラーが露出すると、絶縁層と配線層との密着性が低下するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、第1配線層と、前記第1配線層の側面を被覆するとともに、前記第1配線層の上面の少なくとも一部を露出するように形成された絶縁層と、前記絶縁層から露出する前記第1配線層上に形成された第2配線層と、を有し、前記絶縁層は、樹脂とフィラーとを含有し、前記絶縁層の上面は、前記樹脂から前記フィラーが露出された構造を有し、前記第2配線層は、前記絶縁層の上面と前記絶縁層から露出する前記第1配線層の上面とを被覆する第1金属膜と、前記第1金属膜の上層に形成された金属層とを有し、前記第1金属膜は、CuNiTi合金により形成されており、前記第1金属膜に含まれるNiの含有率は、5wt%以上30wt%以下であり、前記第1金属膜に含まれるTiの含有率は、5wt%以上15wt%以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一観点によれば、絶縁層と配線層との密着性を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態の配線基板を示す概略断面図である。
【
図2】
図2(a)は、一実施形態の配線基板の一部を拡大した拡大断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示した配線基板の一部を更に拡大した拡大断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図である。
【
図8】
図8は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図である。
【
図9】
図9は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図である。
【
図10】
図10は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図である。
【
図11】
図11は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図である。
【
図14】
図14(a)は、変更例の配線基板の一部を拡大した拡大断面図であり、
図14(b)は、
図14(a)に示した配線基板の一部を更に拡大した拡大断面図である。
【
図15】
図15は、変更例の配線基板を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態について添付図面を参照して説明する。
なお、添付図面は、便宜上、特徴を分かりやすくするために特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが各図面で同じであるとは限らない。また、断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、一部の部材のハッチングを梨地模様に代えて示し、一部の部材のハッチングを省略している。なお、本明細書において、「平面視」とは、対象物を
図1等の鉛直方向(図中上下方向)から見ることを言い、「平面形状」とは、対象物を
図1等の鉛直方向から見た形状のことを言う。本明細書における「上下方向」及び「左右方向」は、各図面において各部材を示す符号が正しく読める向きを正位置とした場合の方向である。
【0009】
(配線基板10の全体構成)
図1に示すように、配線基板10は、基板本体11を有している。基板本体11の下面には、配線層20と、ソルダーレジスト層21とが順に積層されている。基板本体11の上面には、配線層22と、絶縁層30と、配線層40とが順に積層されている。
【0010】
基板本体11としては、絶縁樹脂層と配線層とが交互に積層された配線構造体を用いることができる。配線構造体は、例えば、コア基板を有してもよいし、コア基板を有していなくてもよい。絶縁樹脂層の材料としては、例えば、熱硬化性の絶縁性樹脂を用いることができる。熱硬化性の絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂やシアネート樹脂などの絶縁性樹脂を用いることができる。また、絶縁樹脂層の材料としては、例えば、フェノール系樹脂やポリイミド系樹脂などの感光性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂を用いることもできる。絶縁樹脂層は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有していてもよい。
【0011】
基板本体11の配線層や配線層20の材料としては、例えば、銅(Cu)や銅合金を用いることができる。ソルダーレジスト層21の材料としては、例えば、フェノール系樹脂やポリイミド系樹脂などの感光性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂を用いることができる。ソルダーレジスト層21は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有していてもよい。
【0012】
(配線層20の構造)
配線層20は、基板本体11の下面に形成されている。配線層20は、配線基板10の最下層の配線層である。
【0013】
(ソルダーレジスト層21の構造)
ソルダーレジスト層21は、配線層20を被覆するように、基板本体11の下面に積層されている。ソルダーレジスト層21は、配線基板10の最外層(ここでは、最下層)の絶縁層である。
【0014】
ソルダーレジスト層21には、配線層20の下面の一部を外部接続用パッドP1として露出させるための複数の開口部21Xが形成されている。外部接続用パッドP1には、配線基板10をマザーボード等の実装基板に実装する際に使用される外部接続端子(図示略)が接続されている。
【0015】
開口部21Xの底部に露出する配線層20の下面には、必要に応じて、表面処理層が形成されている。表面処理層の例としては、金(Au)層、ニッケル(Ni)層/Au層(Ni層とAu層をこの順番で積層した金属層)、Ni層/パラジウム(Pd)層/Au層(Ni層とPd層とAu層をこの順番で積層した金属層)などを挙げることができる。表面処理層の他の例としては、Ni層/Pd層(Ni層とPd層をこの順番で積層した金属層)、Pd層/Au層(Pd層とAu層をこの順番で積層した金属層)などを挙げることができる。ここで、Au層はAu又はAu合金からなる金属層、Ni層はNi又はNi合金からなる金属層、Pd層はPd又はPd合金からなる金属層である。これらAu層、Ni層、Pd層としては、例えば、無電解めっき法により形成された金属層(無電解めっき層)や、電解めっき法により形成された金属層(電解めっき層)を用いることができる。また、表面処理層としては、開口部21Xに露出する配線層20の下面に、OSP(Organic Solderability Preservative)処理などの酸化防止処理を施して形成されるOSP膜を用いることができる。OSP膜としては、アゾール化合物やイミダゾール化合物等の有機被膜を用いることができる。なお、配線層20の下面に表面処理層が形成されている場合には、その表面処理層が外部接続用パッドP1として機能する。
【0016】
本例では、配線層20の下面に外部接続端子を設けるようにしたが、開口部21Xの底部に露出する配線層20自体、又は配線層20の下面に表面処理層が形成されている場合にはその表面処理層自体を、外部接続端子としてもよい。
【0017】
(配線層22の構造)
配線層22は、基板本体11の上面に形成されている。配線層22は、基板本体11内の配線層や貫通電極を介して、配線層20と電気的に接続されている。
【0018】
(絶縁層30の構成)
絶縁層30は、配線層22の側面を被覆するとともに、配線層22の上面の一部を露出するように、基板本体11の上面に積層されている。絶縁層30は、配線基板10の最外層(ここでは、最上層)に設けられた最外絶縁層である。絶縁層30は、例えば、基板本体11で用いた絶縁樹脂層と同じ絶縁樹脂層を用いることができる。絶縁層30としては、例えば、ソルダーレジスト層を用いることもできる。ソルダーレジスト層の材料としては、例えば、ソルダーレジスト層21と同様の材料を用いることができる。なお、配線層22の上面から絶縁層30の上面30Aまでの厚さは、例えば、3μm~30μm程度とすることができる。
【0019】
絶縁層30には、当該絶縁層30を厚さ方向に貫通して配線層22の上面の一部を露出する貫通孔31が形成されている。貫通孔31の平面形状は、任意の形状及び任意の大きさに設定することができる。本例の貫通孔31の平面形状は、円形状に形成されている。貫通孔31の深さは、例えば、3μm~30μm程度とすることができる。
【0020】
図2(a)に示すように、本例の貫通孔31は、
図2(a)において上側(絶縁層30の上面30A側)から下側に向かうに連れて開口幅(開口径)が小さくなるテーパ状に形成されている。貫通孔31の内壁面は、例えば、絶縁層30の上面30Aから配線層22に向かうに連れて貫通孔31の平面中心に近づくように傾斜して形成されている。なお、貫通孔31の内壁面は、平面である必要はなく、貫通孔31の内壁面の一部又は全部が凸状の曲面や凹状の曲面であってもよい。貫通孔31は、例えば、レーザ加工法により形成されたビアホールである。
【0021】
図2(b)に示すように、絶縁層30は、樹脂32と、多数のフィラー33とを含有している。樹脂32は、例えば、フィラー33の表面を被覆するように形成されている。フィラー33は、例えば、樹脂32に埋設されている。樹脂32としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂やシアネート樹脂などの熱硬化性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂を用いることができる。本実施形態の樹脂32は、エポキシ樹脂である。フィラー33としては、例えば、シリカフィラーやアルミナフィラーを用いることができる。本実施形態のフィラー33は、シリカフィラーである。フィラー33は、例えば、球状に形成されている。
【0022】
絶縁層30の表面、ここでは絶縁層30の上面30Aは、樹脂32とフィラー33とが混在した構造を有している。絶縁層30の上面30Aは、樹脂32の上面32Aからフィラー33が露出された構造を有している。本例の絶縁層30の上面30Aは、樹脂32の上面32Aからフィラー33の一部(ここでは、上部)が上方に突出した構造を有している。本例のフィラー33は、球状のまま樹脂32から露出されている。このため、本例の絶縁層30の上面30Aは、樹脂32の上面32Aからフィラー33の球面の一部が上方に突出した構造を有している。絶縁層30の上面30Aに設けられたフィラー33は、その一部(ここでは、下部)が樹脂32に埋め込まれるとともに、残りの一部(ここでは、上部)が樹脂32から露出している。なお、
図2(b)では、絶縁層30の表面のうち絶縁層30の上面30Aの構造を図示したが、絶縁層30の表面のうち貫通孔31(
図2(a)参照)の内壁面も上面30Aと同様の構造を有している。すなわち、
図2(a)に示した貫通孔31の内壁面は、樹脂32の表面からフィラー33が露出された構造を有している。
【0023】
(配線層40の構造)
図1に示すように、配線層40は、貫通孔31から露出する配線層22上に形成されている。配線層40は、例えば、配線基板10の最上層の配線層である。配線層40は、例えば、電子部品と電気的に接続するための電子部品搭載用のパッドとして機能する。配線層40は、例えば、貫通孔31内に形成されたビア配線41と、ビア配線41を介して配線層22と電気的に接続されるとともに絶縁層30の上面30Aに形成された配線パターン42とを有している。配線層40の平面形状は、任意の形状及び任意の大きさに設定することができる。本例の配線層40の平面形状は、円形状に形成されている。
【0024】
ビア配線41は、例えば、貫通孔31を充填するように形成されている。ビア配線41は、貫通孔31と同様の形状に形成されている。配線パターン42は、例えば、絶縁層30の上面30Aから上方に突出するように柱状に形成されている。
【0025】
図2(a)に示すように、配線層40は、貫通孔31の内面と絶縁層30の上面30Aとを被覆する第1金属膜51と、第1金属膜51の表面を覆う第2金属膜52とを有している。配線層40は、第2金属膜52よりも内側の貫通孔31を充填する金属層53と、絶縁層30の上面30Aに形成された第2金属膜52上及び金属層53上に形成された金属層54とを有している。第1金属膜51及び第2金属膜52は、シード層である。第2金属膜52は、例えば、Cuにより形成されている。
【0026】
第1金属膜51は、絶縁層30の上面30Aと、貫通孔31の内壁面全面と、貫通孔31の底部に露出する配線層22の上面全面とを連続して被覆するように形成されている。
図2(b)に示すように、第1金属膜51は、樹脂32からフィラー33が露出する絶縁層30の表面を被覆するように形成されている。第1金属膜51は、例えば、樹脂32から露出するフィラー33の表面全面を被覆するように形成されている。第1金属膜51は、例えば、樹脂32から露出するフィラー33の表面全面を密着状態で被覆するように形成されている。第1金属膜51は、樹脂32の表面(
図2(b)では、上面32A)を密着状態で被覆するように形成されている。
【0027】
第1金属膜51は、Cuとニッケル(Ni)とチタン(Ti)の合金、つまりCuNiTi合金により形成されている。ここで、第1金属膜51に含まれるNiは、Cuに比べて、樹脂32に対する密着性が高い金属である。第1金属膜51に含まれるTiは、Cuに比べて、フィラー33に対する密着性が高い金属である。
【0028】
第1金属膜51に含まれるNiの含有率は、5wt%以上30wt%以下の範囲に設定されている。第1金属膜51に含まれるTiの含有率は、5wt%以上15wt%以下の範囲に設定されている。第1金属膜51に含まれるCuの含有量は、第1金属膜51に含まれるTiとNi以外の残部とする。なお、このCuの含有量には、材料生成上の不純物も含まれる。
【0029】
第1金属膜51に含まれるNi及びTiの含有率を上述した範囲に設定することにより、樹脂32からフィラー33が露出した絶縁層30の表面に対する密着性を高めることができる。さらに、第1金属膜51に含まれるNi及びTiの含有率を上述した範囲に設定することにより、Cu膜である第2金属膜52の不要な部分をエッチング除去する際に、その第2金属膜52と一緒に第1金属膜51の不要な部分を好適にエッチング除去できる。すなわち、第1金属膜51に含まれるNi及びTiの含有率を上述した範囲に設定することにより、Cu用のエッチング液によって第1金属膜51の不要な部分を好適にエッチング除去できる。なお、後述する実験結果にも示すように、第1金属膜51に含まれるTiの含有率が5wt%よりも低くなると、樹脂32からフィラー33が露出した絶縁層30の表面に対する第1金属膜51の密着性が低くなる。また、第1金属膜51に含まれるTiの含有率が15wt%よりも高くなると、Cu膜と一緒に第1金属膜51をエッチング除去した場合に残渣が発生する。また、第1金属膜51に含まれるNiの含有率が5wt%よりも低くなると、樹脂32からフィラー33が露出した絶縁層30の表面に対する第1金属膜51の密着性が低くなる。
【0030】
第1金属膜51は、例えば、スパッタリング法により形成されたスパッタ膜である。第1金属膜51の厚さは、例えば、30nm~100nm程度とすることができる。
図2(a)に示すように、第2金属膜52は、絶縁層30の上面30Aを被覆する部分の第1金属膜51の上面と、貫通孔31の内壁面を被覆する部分の第1金属膜51の側面と、配線層22の上面を被覆する部分の第1金属膜51の上面とを連続して被覆している。第2金属膜52は、絶縁層30の上面30Aを被覆する部分の第1金属膜51の外側面を露出するように形成されている。
【0031】
第2金属膜52は、Cuにより形成されるCu膜である。第2金属膜52は、例えば、スパッタリング法により形成されたスパッタ膜である。第2金属膜52の厚さは、例えば、300nm~500nm程度とすることができる。
【0032】
金属層53は、例えば、第2金属膜52よりも内側の貫通孔31を充填するように形成されている。金属層53の材料としては、例えば、CuやCu合金を用いることができる。金属層53としては、例えば、電解めっき法により形成された電解めっき層を用いることができる。本実施形態の金属層53は、電解Cuめっき法により形成された電解Cuめっき層である。
【0033】
以上説明した貫通孔31内に形成された第1金属膜51と第2金属膜52と金属層53とによって、配線層40のビア配線41が構成されている。
金属層54は、絶縁層30の上面30Aに形成された第2金属膜52上及びビア配線41(金属層53)上に形成されている。金属層54は、金属層53と連続して一体に形成されている。金属層54の材料としては、例えば、CuやCu合金を用いることができる。金属層54としては、例えば、電解めっき法により形成された電解めっき層を用いることができる。本実施形態の金属層54は、電解Cuめっき法により形成された電解Cuめっき層である。
【0034】
金属層54は、例えば、絶縁層30の上面30Aから上方に突出するように柱状に形成されている。金属層54の上面は、例えば、平面に形成されている。金属層54の平面形状は、任意の形状及び任意の大きさに設定することができる。金属層54の平面形状は、例えば、直径が15μm~40μm程度の円形状とすることができる。金属層54の厚さは、例えば、2μm~50μm程度とすることができる。
【0035】
以上説明した金属層54と絶縁層30の上面30Aに形成された第1金属膜51及び第2金属膜52とによって、配線層40の配線パターン42が構成されている。
なお、配線基板10は、天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。
【0036】
(配線基板10の製造方法)
次に、
図3~
図11に従って、配線基板10の製造方法について説明する。ここでは、絶縁層30及び配線層40の製造方法について詳述する。なお、説明の便宜上、最終的に配線基板10の各構成要素となる部分には、最終的な構成要素の符号を付して説明する。
【0037】
まず、
図3に示すように、基板本体11の上面に配線層22が形成された構造体を準備する。配線層22は、例えば、サブトラクティブ法やセミアディティブ法などの各種の配線形成方法を用いて形成することができる。
【0038】
次に、
図4に示す工程では、基板本体11の上面に、配線層22を全体的に覆う絶縁層30を形成する。例えば、絶縁層30として樹脂フィルムを用いる場合には、基板本体11の上面に樹脂フィルムをラミネートする。そして、樹脂フィルムを押圧しながら硬化温度以上の温度(例えば、130℃~200℃程度)で熱処理して硬化させることにより、絶縁層30を形成することができる。なお、樹脂フィルムとしては、例えば、エポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂のフィルムを用いることができる。また、絶縁層30として液状又はペースト状の絶縁性樹脂を用いる場合には、基板本体11の上面に液状又はペースト状の絶縁性樹脂をスピンコート法などにより塗布する。そして、塗布した絶縁性樹脂を硬化温度以上の温度で熱処理して硬化させることにより、絶縁層30を形成することができる。なお、液状又はペースト状の絶縁性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0039】
次に、
図5(a)に示す工程では、絶縁層30に、当該絶縁層30を厚さ方向に貫通して配線層22の上面の一部を露出する貫通孔31を形成する。貫通孔31は、例えば、CO
2レーザやUV-YAGレーザ等によるレーザ加工法によって形成することができる。
【0040】
続いて、ドライデスミア処理により、貫通孔31の底部に露出する配線層22の上面に付着した樹脂スミア(樹脂残渣)を除去する。ドライデスミア処理は、プラズマ処理の一種である。ドライデスミア処理は、例えば、四フッ化炭素(CF
4)と酸素(O
2)の混合ガスを使用するプラズマエッチングにより行うことができる。ドライデスミア処理は、絶縁層30の表面の樹脂32(
図5(b)参照)を微小エッチングするものである。
図5(b)に示すように、絶縁層30に対してドライデスミア処理が施されると、樹脂32とフィラー33のうち樹脂32が支配的にエッチングされる。これにより、絶縁層30の表面では、フィラー33が樹脂32から露出され、樹脂32とフィラー33とが混在した状態になる。本例の絶縁層30の表面では、樹脂32の表面からフィラー33が突出した状態になる。このときの樹脂32の表面は、例えば、絶縁層30に対してウェットデスミア処理を施した場合に比べて、表面粗度が小さくなる。
【0041】
次いで、
図6(a)に示す工程では、絶縁層30の上面30A全面と、貫通孔31の内壁面全面と、貫通孔31の底部に露出する配線層22の上面全面とを連続して被覆するように、CuNiTi合金により第1金属膜51を形成する。ここで、CuNiTi合金におけるNiの含有率を5wt%以上30wt%以下の範囲に設定し、Tiの含有率を5wt%以上15wt%以下の範囲に設定することにより、第1金属膜51と絶縁層30との密着性を向上できる。詳述すると、
図6(b)に示すように、第1金属膜51と樹脂32との密着性を向上できるとともに、第1金属膜51とフィラー33との密着性を向上できる。すなわち、樹脂32とフィラー33の両方に対する第1金属膜51の密着性を向上できる。具体的には、絶縁層30に対する第1金属膜51のピール強度は、0.5kgf/cm以上となる。このため、絶縁層30から第1金属膜51が剥離することを抑制できる。
【0042】
第1金属膜51は、例えば、スパッタリング法により形成することができる。スパッタリング法を用いて第1金属膜51を形成することにより、CuNiTi合金からなる第1金属膜51に含まれるNi及びTiの含有率を、上述した所望の範囲の含有率に精度良く設定することができる。
【0043】
次に、
図7に示す工程では、第1金属膜51の表面全面を覆うように、Cuにより第2金属膜52を形成する。第2金属膜52は、例えば、スパッタリング法により形成することができる。スパッタリング法を用いて第2金属膜52を形成することにより、第1金属膜51を形成する際に使用するスパッタ装置を用いて第2金属膜52を形成することができる。
【0044】
続いて、
図8に示す工程では、絶縁層30の上面30Aに形成された第2金属膜52上に、開口部61を有するレジスト層60を形成する。開口部61は、
図2(a)に示した金属層54の形成領域に対応する部分の第2金属膜52を露出するように形成される。レジスト層60の材料としては、例えば、次工程の電解めっき処理に対して耐めっき性がある材料を用いることができる。例えば、レジスト層60の材料としては、感光性のドライフィルムレジスト又は液状のフォトレジスト(例えば、ノボラック系樹脂やアクリル系樹脂等のドライフィルムレジストや液状レジスト)等を用いることができる。例えば、感光性のドライフィルムレジストを用いる場合には、第2金属膜52の上面にドライフィルムを熱圧着によりラミネートし、そのドライフィルムをフォトリソグラフィ法によりパターニングして開口部61を有するレジスト層60を形成する。なお、液状のフォトレジストを用いる場合にも、同様の工程を経て、レジスト層60を形成することができる。
【0045】
次に、
図9に示す工程では、レジスト層60をめっきマスクとして、第2金属膜52上に、その第2金属膜52をめっき給電層に利用する電解めっき法を施す。すなわち、レジスト層60の開口部61から露出された第2金属膜52の上面に電解めっき法、ここでは電解Cuめっき法を施す。本工程により、第2金属膜52よりも内側の貫通孔31を充填する金属層53が形成されるとともに、開口部61内に金属層54が形成される。このとき、金属層54は、金属層53と連続して一体に形成される。
【0046】
続いて、
図10に示す工程では、
図9に示したレジスト層60をアルカリ性の剥離液(例えば、有機アミン系剥離液、苛性ソーダ、アセトンやエタノールなど)により除去する。
【0047】
次いで、
図11に示す工程では、金属層54をエッチングマスクとして、不要な第2金属膜52と不要な第1金属膜51とをエッチングにより除去する。第1金属膜51がCu膜である場合には、例えば、Cu用エッチング液(例えば、硫酸過水系水溶液)を用いたウェットエッチングにより不要な第2金属膜52を除去することができる。このとき、第1金属膜51に含まれるNiとTiの含有率が上述した所望の範囲に設定されている場合には、Cu用エッチング液(例えば、硫酸過水系水溶液)を用いることにより、第1金属膜51の不要な部分と第2金属膜52の不要な部分とを同時に除去できる。すなわち、第2金属膜52の不要な部分を除去するためのCu用エッチング液によって、第1金属膜51の不要な部分も除去することができる。これにより、第1金属膜51の不要な部分と、第2金属膜52の不要な部分とをそれぞれ別々のエッチング液を用いて除去する必要がないため、配線基板10の製造コストが増加することを抑制できる。
【0048】
以上の製造工程により、貫通孔31内に形成された第1金属膜51及び第2金属膜52と金属層53とからなるビア配線41が形成される。また、絶縁層30の上面30Aに形成された第1金属膜51と第2金属膜52と金属層54とからなる配線パターン42が形成される。そして、貫通孔31の底部に露出する配線層22上に、ビア配線41と配線パターン42とを有する配線層40が形成される。
【0049】
(第1の実験)
次に、第1金属膜51に含まれるNiとTiの含有率を上述した範囲に設定することにより、樹脂32からフィラー33が露出する絶縁層30の表面に対する第1金属膜51の密着性が向上することを裏付ける第1の実験結果について説明する。
【0050】
(実験条件)
まず、評価用のサンプルを30種類作成した。詳述すると、各サンプルでは、エポキシ樹脂である樹脂32からシリカフィラーであるフィラー33が露出した絶縁層30の上面30Aに、スパッタリング法により、厚さ30nmの第1金属膜51と厚さ300nmのCu膜とを順に積層した。さらに、Cu膜上に、厚さ35μmの電解Cuめっき層を積層した。このとき、各サンプルにおいて、第1金属膜51におけるNiの含有率とTiの含有率との組み合わせが互いに異なるように設定した。具体的には、6種類のNiの含有率と5種類のTiの含有率とを組み合わせて30(=6×5)種類のサンプルを作成した。6種類のNiの含有率はそれぞれ、0wt%、5wt%、10wt%、20wt%、30wt%、40wt%である。5種類のTiの含有率はそれぞれ、0wt%、5wt%、10wt%、15wt%、20wt%である。なお、第1金属膜51におけるNiの含有率とTiの含有率以外の条件は、全てのサンプルで同一に設定されている。
【0051】
(クロスカット試験)
上述した30種類の全てのサンプルについて、信頼性試験を行った後に、クロスカット試験を行うことにより、絶縁層30の上面30Aに対する第1金属膜51の密着性を評価した。その結果を
図12に示した。ここで、信頼性試験では、温度が125℃の雰囲気に各サンプルを24時間保持した後、湿度が60%RH、温度が60℃の雰囲気に各サンプルを40時間保持し、その後、各サンプルに対して265℃でのリフローを3回行った。また、クロスカット試験では、電解Cuめっき層に1mm角の切り込みを碁盤状に100マス作成し、その100マス領域における電解Cuめっき層の表面に粘着テープを貼り付けた後に、その粘着テープを剥離した。そして、粘着テープの剥離に伴って第1金属膜51に剥離が生じたか否かを確認することで、絶縁層30の上面30Aに対する第1金属膜51の密着性を評価した。具体的には、粘着テープの剥離に伴って第1金属膜51に剥離が起きなかったサンプルは、絶縁層30の上面30Aに対する第1金属膜51の密着性が良好であると判断し、
図12の実験結果に「〇」と記載した。一方、粘着テープの剥離に伴って第1金属膜51に剥離が起きたサンプルは、絶縁層30の上面30Aに対する第1金属膜51の密着性が良好ではないと判断し、
図12の実験結果に「×」と記載した。
【0052】
(第1の実験結果)
図12から明らかなように、第1金属膜51におけるTiの含有率が低くなると、絶縁層30の上面30Aに対する第1金属膜51の密着性が低くなる。具体的には、第1金属膜51におけるTiの含有率が0wt%の場合、つまりTiが含有されていない場合には、絶縁層30の上面30Aに対する第1金属膜51の密着性が低くなる。詳述すると、第1金属膜51におけるTiの含有率が0wt%の場合には、第1金属膜51におけるNiの含有率に関わらず、絶縁層30の上面30Aに対する第1金属膜51の密着性が低くなる。また、
図12から明らかなように、第1金属膜51におけるNiの含有率が低くなると、絶縁層30の上面30Aに対する第1金属膜51の密着性が低くなる。具体的には、第1金属膜51におけるNiの含有率が0wt%の場合、つまりNiが含有されていない場合には、絶縁層30の上面30Aに対する第1金属膜51の密着性が低くなる場合がある。詳述すると、第1金属膜51におけるNiの含有率が0wt%の場合であって、第1金属膜51におけるTiの含有率が20wt%よりも低い場合には、絶縁層30の上面30Aに対する第1金属膜51の密着性が低くなる。
【0053】
一方、第1金属膜51におけるNiの含有率が5wt%以上30wt%以下であるとともにTiの含有率が5wt%以上15wt%以下の範囲である場合(太線枠内)には、絶縁層30の上面30Aに対する第1金属膜51の密着性が良好である。なお、第1金属膜51におけるTiの含有率が20wt%である場合には、第1金属膜51におけるNiの含有率に関わらず、絶縁層30の上面30Aに対する第1金属膜51の密着性が良好である。また、第1金属膜51におけるNiの含有率が40wt%であるとともにTiの含有率が5wt%以上である場合には、絶縁層30の上面30Aに対する第1金属膜51の密着性が良好である。
【0054】
(第2の実験)
次に、第1金属膜51に含まれるNiとTiの含有率を上述した範囲に設定することにより、Cu用のエッチング液により第1金属膜51を好適に除去できることを裏付ける第2の実験結果について説明する。
【0055】
(エッチング試験)
第1の実験と同様に、第1金属膜51におけるNiの含有率とTiの含有率との組み合わせが互いに異なるように設定した30種類のサンプルを作成した。これら30種類の全てのサンプルについて、Cu用のエッチング液、ここでは硫酸過水系水溶液を用いてエッチング処理を施した。そして、エッチング処理によってCu膜と一緒に第1金属膜51がエッチング除去されたか否かを顕微鏡観察で確認することにより、Cu用エッチング液による第1金属膜51のエッチング除去のし易さを評価した。その結果を
図13に示した。具体的には、顕微鏡観察において第1金属膜51の残渣が検出されなかったサンプルは、Cu用のエッチング液で第1金属膜51をエッチング除去できると判断し、
図13の実験結果に「〇」と記載した。一方、顕微鏡観察において第1金属膜51の残渣が検出されたサンプルは、Cu用のエッチング液で第1金属膜51をエッチング除去し難いと判断し、
図13の実験結果に「×」と記載した。
【0056】
(第2の実験結果)
図13から明らかなように、第1金属膜51におけるTiの含有率が高くなると、Cu用のエッチング液で第1金属膜51をエッチング除去することが難しくなる。具体的には、第1金属膜51におけるTiの含有率が20wt%以上になると、第1金属膜51におけるNiの含有率に関わらず、Cu用のエッチング液で第1金属膜51をエッチング除去し難くなる。また、
図13から明らかなように、第1金属膜51におけるNiの含有率が高くなると、Cu用のエッチング液で第1金属膜51をエッチング除去することが難しくなる。具体的には、第1金属膜51におけるNiの含有率が40wt%以上になると、Cu用のエッチング液で第1金属膜51をエッチング除去し難くなる場合がある。詳述すると、第1金属膜51におけるNiの含有率が40wt%の場合であって、第1金属膜51におけるTiの含有率が5wt%以上の場合には、Cu用のエッチング液で第1金属膜51をエッチング除去し難くなる。
【0057】
一方、第1金属膜51におけるNiの含有率が5wt%以上30wt%以下であるとともにTiの含有率が5wt%以上15wt%以下の範囲である場合(太線枠内)には、Cu用のエッチング液で第1金属膜51を好適にエッチング除去できる。なお、第1金属膜51におけるTiの含有率が0wt%である場合には、第1金属膜51におけるNiの含有率に関わらず、Cu用のエッチング液で第1金属膜51を好適にエッチング除去できる。また、第1金属膜51におけるNiの含有率が0wt%であるとともにTiの含有率が15wt%以下である場合には、Cu用のエッチング液で第1金属膜51を好適にエッチング除去できる。
【0058】
以上説明した第1の実験結果と第2の実験結果から明らかなように、第1金属膜51におけるNiの含有率を5wt%以上30wt%以下に設定するとともにTiの含有率を5wt%以上15wt%以下の範囲に設定することが好適である。すなわち、第1金属膜51におけるNiとTiの含有率を上記範囲(太線枠内)に設定することにより、2つの実験の両方で良好な結果を得ることができる。2つの実験結果から裏付けられるように、第1金属膜51におけるNiとTiの含有率を上記範囲に設定することにより、絶縁層30に対する第1金属膜51の密着性を向上できるとともに、Cu用のエッチング液で第1金属膜51を好適にエッチング除去できる。
【0059】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1)配線基板10は、配線層22と、配線層22の側面を被覆するとともに、配線層22の上面の一部を露出するように形成された絶縁層30と、絶縁層30から露出する配線層22上に形成された配線層40とを有する。絶縁層30は、樹脂32とフィラー33とを含有する。絶縁層30の上面30Aは、樹脂32からフィラー33が露出された構造を有する。配線層40は、絶縁層30の上面30Aと絶縁層30から露出する配線層22の上面とを被覆する第1金属膜51と、第1金属膜51の上層に形成された金属層53,54とを有する。第2金属膜52はCuにより形成され、第1金属膜51はCuNiTi合金により形成されている。
【0060】
この構成によれば、樹脂32からフィラー33が露出された絶縁層30の上面30Aを被覆する第1金属膜51が、フィラー33に対する密着性の高いTiを含有するCuNiTi合金により形成される。このため、樹脂32からフィラー33が露出する場合であっても、その露出したフィラー33に対して第1金属膜51を好適に密着させることができる。これにより、Tiを含有しない合金により第1金属膜51が形成される場合に比べて、樹脂32とフィラー33とが混在する絶縁層30の上面30Aに対する第1金属膜51の密着性を向上させることができる。ひいては、第1金属膜51を含む配線層40と絶縁層30との密着性を向上させることができる。
【0061】
(2)また、第1金属膜51に含まれるNiの含有率が5wt%以上30wt%以下の範囲に設定され、第1金属膜51に含まれるTiの含有率が5wt%以上15wt%以下の範囲に設定される。第1及び第2の実験結果から裏付けられるように、第1金属膜51におけるNiとTiの含有率を上記範囲に設定することにより、絶縁層30に対する第1金属膜51の密着性を向上でき、Cu用のエッチング液で第1金属膜51を好適にエッチング除去できる。これにより、比較的安価に入手可能なCu用のエッチング液で第1金属膜51をエッチング除去できるため、配線基板10の製造コストが増加することを抑制できる。
【0062】
(3)さらに、Cu膜である第2金属膜52をCu用のエッチング液でエッチング除去する際に、そのCu用のエッチング液により第1金属膜51も同時にエッチング除去することができる。したがって、第1金属膜51の不要な部分と、第2金属膜52の不要な部分とをそれぞれ別々のエッチング液を用いて除去する必要がなくなるため、配線基板10の製造コストが増加することを抑制できる。
【0063】
(4)第1金属膜51をスパッタリング法により形成した。これにより、CuNiTi合金からなる第1金属膜51に含まれるNi及びTiの含有率を、上述した所望の範囲の含有率に精度良く設定することができる。
【0064】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0065】
・上記実施形態の配線層40の構造は適宜変更することができる。例えば、第2金属膜52を省略してもよい。この場合には、第1金属膜51上に金属層53,54が形成される。
【0066】
・上記実施形態では、貫通孔31を充填するようにビア配線41を形成するようにした。これに限らず、例えば、ビア配線41をコンフォーマルビアとして形成してもよい。
・上記実施形態の配線層22の構造は適宜変更することができる。
【0067】
・例えば
図14(a)に示すように、配線層22を、絶縁層30を厚さ方向に貫通するビア配線23に具体化してもよい。本変更例の絶縁層30は、ビア配線23の側面を被覆するとともに、ビア配線23の上面全面を露出するように形成されている。本変更例の絶縁層30の上面30Aは、ビア配線23の上面と面一に形成されている。本変更例の配線層40は、絶縁層30の上面30Aと絶縁層30から露出するビア配線23の上面とを連続して被覆する第1金属膜51と、第1金属膜51の上面を被覆する第2金属膜52と、第2金属膜52の上面を被覆する金属層54とを有する。本変更例においても、
図14(b)に示すように、第1金属膜51は、樹脂32からフィラー33が露出する絶縁層30の上面30Aを密着状態で被覆している。
【0068】
・
図14(a)に示した変更例において、絶縁層30を厚さ方向に貫通する貫通孔30Xの内壁面にも、第1金属膜51及び第2金属膜52と同様の機能を持つ金属膜を形成してもよい。
【0069】
・上記実施形態の絶縁層30の上面30Aでは、樹脂32の上面32Aからフィラー33の一部が上方に突出する構造を有するが、これに限定されない。
例えば
図14(b)に示すように、絶縁層30の上面30Aにおいて、樹脂32の上面32Aとフィラー33の上面33Aとを面一に形成してもよい。この場合には、樹脂32から露出されるフィラー33の上面33Aは、球面ではなく、絶縁層30の厚さ方向と直交する平面方向に広がる平面に形成されている。本変更例の絶縁層30の上面30Aは、例えば、絶縁層30の上面30Aが研磨されることによって形成される。絶縁層30の上面30Aの研磨は、例えば、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)や機械研磨等により行うことができる。このような研磨により、樹脂32とフィラー33とが一緒に研磨され、樹脂32の上面32Aが研磨面となるとともにフィラー33の上面33Aが研磨面となる。なお、このような研磨は、第1金属膜51が形成される前に実施される。例えば、
図14(a)に示した例では、絶縁層30の上面30Aとビア配線23の上面とが一緒に研磨される。
【0070】
本変更例における第1金属膜51は、例えば、樹脂32の上面32Aを被覆するとともに、樹脂32の上面32Aから露出されたフィラー33の上面33Aを被覆している。本変更例の第1金属膜51は、例えば、樹脂32の上面32Aを密着状態で被覆するとともに、フィラー33の上面33Aを密着状態で被覆している。
【0071】
・上記実施形態では、絶縁層30が含有する樹脂32をエポキシ樹脂としたが、これに限定されない。例えば、樹脂32を、エポキシ樹脂以外の樹脂に変更してもよい。例えば、樹脂32を、ポリイミド樹脂に変更してもよい。
【0072】
・上記実施形態では、絶縁層30が含有するフィラー33をシリカフィラーとしたが、これに限定されない。例えば、フィラー33を、シリカフィラー以外のフィラーに変更してもよい。例えば、フィラー33を、アルミナフィラーに変更してもよい。
【0073】
・上記実施形態では、第1金属膜51を、CuとNiとTiの合金であるCuNiTi合金より形成したが、これに限定されない。例えば、Tiを、Cuよりもフィラー33に対する密着性が高い金属、例えばクロム(Cr)に代えて、CuとNiとCrの合金により第1金属膜51を形成してもよい。
【0074】
・上記実施形態では、第1金属膜51をスパッタリング法により形成するようにしたが、これに限定されない。例えば、第1金属膜51を、蒸着法や無電解めっき法により形成してもよい。
【0075】
・上記実施形態では、第2金属膜52をスパッタリング法により形成するようにしたが、これに限定されない。例えば、第2金属膜52を、蒸着法や無電解めっき法により形成してもよい。
【0076】
・上記実施形態では、配線層40を、セミアディティブ法により形成したが、これに限定されない。例えば、配線層40を、サブトラクティブ法などの各種の配線形成方法により形成してもよい。
【0077】
・上記実施形態では、配線層40を、配線基板10の最外層の配線層に具体化したが、これに限定されない。
例えば
図15に示すように、配線層40を、最外層の配線層70よりも内層に設けられた配線層に適用してもよい。本変更例では、最外層の配線層70と配線層22との間に設けられた配線層に配線層40が適用されている。
【0078】
本変更例の配線基板10では、配線層40を被覆する絶縁層80が絶縁層30の上面30Aに積層されている。絶縁層80は、絶縁層30と同様に、樹脂32とフィラー33(
図2(b)参照)とを含有していてもよい。最外層の配線層70は、絶縁層80の上面に形成されている。配線層70は、配線層40と同様の構造を有してもよい。すなわち、配線層70は、第1金属膜51と第2金属膜52と金属層53,54(
図2(a)参照)とを有していてもよい。
【0079】
・上記実施形態における配線基板10における配線層20,22,40及び絶縁層30の層数や配線の取り回しなどは適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0080】
10 配線基板
22 配線層(第1配線層)
23 ビア配線(第1配線層)
30 絶縁層
30A 上面
31 貫通孔
32 樹脂
32A 上面
33 フィラー
33A 上面
40 配線層(第2配線層)
51 第1金属膜
52 第2金属膜
53 金属層
54 金属層