(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140871
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】オートフォーカス装置及び光学装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/046 20140101AFI20241003BHJP
【FI】
B23K26/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052228
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】百村 和司
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CA06
4E168CA15
4E168CB07
4E168CB13
4E168CB22
(57)【要約】
【課題】 測定対象物のレーザ光照射面の位置の検出に適したAF特性を得ることが可能なオートフォーカス装置及び光学装置を提供する。
【解決手段】 オートフォーカス装置(50、100)は、測定対象物に対して第1レーザ光を集光する集光レンズよりも上流側に配置されており、集光レンズにより集光される第2レーザ光を第1の方向に沿って遮光するナイフエッジと、第1の方向に垂直な第2の方向に沿う第2レーザ光の開口高さを低く制限する開口制御部と、測定対象物のレーザ光照射面に対して第2レーザ光の集光位置を移動させるためのAF光学系と、第2レーザ光の反射光を受光するディテクタであって、少なくとも第2の方向に沿って配置された2つの受光素子を含むディテクタと、2つの受光素子による受光量に基づいて、第2レーザ光が測定対象物のレーザ光照射面に集光するようにAF光学系を制御するAF制御部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に対して第1レーザ光を集光する集光レンズよりも上流側に配置されており、前記集光レンズにより集光される第2レーザ光を第1の方向に沿って遮光する第1のナイフエッジと、
前記集光レンズよりも上流側に配置されており、前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿う前記第2レーザ光の開口高さを低く制限する開口制御部と、
前記測定対象物のレーザ光照射面に対して前記第2レーザ光の集光位置を移動させるためのAF光学系と、
前記第2レーザ光の集光位置と光学的に共役な位置に配置されており、前記集光レンズにより集光されて前記測定対象物により反射された前記第2レーザ光の反射光を受光するディテクタであって、少なくとも前記第2の方向に沿って配置された2つの受光素子を含むディテクタと、
前記2つの受光素子による受光量に基づいて、前記第2レーザ光が前記測定対象物のレーザ光照射面に集光するように前記AF光学系を制御するAF制御部と、
を備えるオートフォーカス装置。
【請求項2】
前記第2の方向に沿って遮光する第2のナイフエッジを備え、
前記ディテクタは、前記第2の方向に加えて前記第1の方向に沿って配置された4つの受光素子を含んでおり、
前記AF制御部は、前記第1の方向に沿う受光素子の組の受光量を合算して求めた第1のAF特性と、前記第2の方向に沿う受光素子の組の受光量を合算して求めた第2のAF特性に基づいて、前記第2レーザ光が前記測定対象物のレーザ光照射面に集光するように前記AF光学系を制御する、
請求項1に記載のオートフォーカス装置。
【請求項3】
前記開口制御部は、前記第2レーザ光の前記第2の方向に沿う幅を制限する、請求項2に記載のオートフォーカス装置。
【請求項4】
前記開口制御部は、第2レーザ光が通過する開口が形成された平面状の部材を含んでおり、前記第2レーザ光に対して、前記平面状の部材を傾けることにより、前記第2の方向に沿う前記第2レーザ光の開口高さを制限する、請求項1から3のいずれか1項に記載のオートフォーカス装置。
【請求項5】
前記第2レーザ光の開口高さは、前記第1の方向に沿う前記第2レーザ光の開口の幅の0.2倍~0.7倍である、請求項1から3のいずれか1項に記載のオートフォーカス装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載のオートフォーカス装置と、
前記測定対象物に対して前記第1レーザ光を集光する集光レンズと、
前記オートフォーカス装置により前記第2レーザ光が集光された前記測定対象物のレーザ光照射面の位置に基づいて前記集光レンズによる前記第1レーザ光の集光位置を制御する制御部と、
を備える光学装置。
【請求項7】
前記光学装置は、前記測定対象物の内部に前記第1レーザ光を集光させてレーザ加工領域を形成するためのレーザ加工装置、又は前記レーザ加工領域を検出するための亀裂検出装置である、請求項6に記載の光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオートフォーカス装置及び光学装置に係り、特に測定対象物の内部に光を集光させる光学装置(例えば、レーザ加工装置又は亀裂検出装置等)に適用可能なオートフォーカス装置及び光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェーハ等の測定対象物(以下、ウェーハという。)の内部に集光点を合わせてレーザ光を切断予定ラインに沿って照射し、加工ラインに沿ってウェーハ内部に切断の起点となるレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置(レーザーダイシング装置ともいう。)が知られている。レーザ加工領域が形成されたウェーハは、エキスパンド又はブレーキングといった割断プロセスによって分割予定ラインで割断されて個々のチップに分断される。
【0003】
レーザ加工装置では、ウェーハの内部に形成するレーザ加工領域をウェーハのレーザ光照射面から一定の深さに形成するため、ウェーハのレーザ光照射面の高さ位置(厚み方向位置)を検出してレーザ光の集光点のウェーハのレーザ光照射面からの深さを高精度に制御する必要がある。
【0004】
特許文献1では、集光レンズにより加工用レーザ光と測距用(AF(Automatic Focus)用)レーザ光とをウェーハに向けて同時に集光させ、ウェーハのレーザ光照射面で反射されたAF用レーザ光の反射光を検出することにより、ウェーハのレーザ光照射面の位置を演算する。そして、加工用レーザ光の集光点の位置がウェーハのレーザ光照射面から一定の深さとなるように集光レンズの位置を調整するようになっている。
【0005】
上記のようなレーザ加工装置では、開口数が高い集光レンズが用いられるため、ウェーハのレーザ光照射面の変位を検出可能な測定範囲(フォーカス引き込み範囲)が極めて狭くなる。レーザ加工領域のウェーハのレーザ光照射面からの深さを変更するために、加工用レーザ光の集光点の位置を変更すると、それに伴いAF用レーザ光の集光点の位置も変更される。AF用レーザ光の集光点の位置が変更されて、集光点とウェーハのレーザ光照射面との間隔がフォーカス引き込み範囲よりも大きくなると、ウェーハのレーザ光照射面の変位を検出することができなくなってしまう。
【0006】
ウェーハのレーザ光照射面の位置を安定的に検出可能とするためには、フォーカス引き込み範囲を拡大する必要がある。この点について、特許文献2には、集光レンズによるAF用レーザ光の集光像の直径(スポット径)を大きくすることにより、フォーカス引き込み範囲を拡大可能であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-167918号公報
【特許文献2】特開2015-186825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2によれば、スポット径を大きくする、例えば、光源に大きさを持たせることにより、フォーカス引き込み範囲を拡大することができる。
【0009】
しかしながら、レーザ加工装置では、入手性等の実装上の都合により、AF用の光源として、発光部が一定の大きさを有する光源(例えば、面光源)ではなく、発光部が小さく点光源とみなせるレーザ光源が用いられる。このようなレーザ光源をAF用の光源として用いた場合、フォーカス引き込み範囲が極めて狭くなる。
【0010】
一方、なんらかの方法でフォーカス引き込み範囲を拡大した場合、ウェーハのレーザ光照射面の位置は安定的に検出可能となるが、AF特性を示すカーブの傾きが緩やかになってしまい、フォーカス感度が低下する場合がある。フォーカス感度が低下すると、ウェーハのレーザ光照射面の位置の検出精度が低下する場合がある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ウェーハのレーザ光照射面の位置の検出に適したAF特性を得ることが可能なオートフォーカス装置及び光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るオートフォーカス装置は、測定対象物に対して第1レーザ光を集光する集光レンズよりも上流側に配置されており、集光レンズにより集光される第2レーザ光を第1の方向に沿って遮光する第1のナイフエッジと、集光レンズよりも上流側に配置されており、第1の方向に垂直な第2の方向に沿う第2レーザ光の開口高さを低く制限する開口制御部と、測定対象物のレーザ光照射面に対して第2レーザ光の集光位置を移動させるためのAF光学系と、第2レーザ光の集光位置と光学的に共役な位置に配置されており、集光レンズにより集光されて測定対象物により反射された第2レーザ光の反射光を受光するディテクタであって、少なくとも第2の方向に沿って配置された2つの受光素子を含むディテクタと、2つの受光素子による受光量に基づいて、第2レーザ光が測定対象物のレーザ光照射面に集光するようにAF光学系を制御するAF制御部とを備える。
【0013】
本発明の第2の態様に係るオートフォーカス装置は、第1の態様において、第2の方向に沿って遮光する第2のナイフエッジを備え、ディテクタは、第2の方向に加えて第1の方向に沿って配置された4つの受光素子を含んでおり、AF制御部は、第1の方向に沿う受光素子の組の受光量を合算して求めた第1のAF特性と、第2の方向に沿う受光素子の組の受光量を合算して求めた第2のAF特性に基づいて、第2レーザ光が測定対象物のレーザ光照射面に集光するようにAF制御部を制御する。
【0014】
本発明の第3の態様に係るオートフォーカス装置は、第2の態様において、開口制御部は、第2レーザ光の第2の方向に沿う幅を制限する。
【0015】
本発明の第4の態様に係るオートフォーカス装置は、第1又は第2の態様において、開口制御部は、第2レーザ光が通過する開口が形成された平面状の部材を含んでおり、第2レーザ光に対して、平面状の部材を傾けることにより、第2の方向に沿う第2レーザ光の開口高さを制限する。
【0016】
本発明の第5の態様に係るオートフォーカス装置は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、第2レーザ光の開口高さは、第1の方向に沿う第2レーザ光の開口の幅の0.2倍~0.7倍である。
【0017】
本発明の第6の態様に係る光学装置は、第1から第5の態様のいずれかのオートフォーカス装置と、測定対象物に対して第1レーザ光を集光する集光レンズと、オートフォーカス装置により第2レーザ光が集光された測定対象物のレーザ光照射面の位置に基づいて集光レンズによる第1レーザ光の集光位置を制御する制御部とを備える。
【0018】
本発明の第7の態様に係る光学装置は、第6の態様において、測定対象物の内部に第1レーザ光を集光させてレーザ加工領域を形成するためのレーザ加工装置、又はレーザ加工領域を検出するための亀裂検出装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第2レーザ光の開口高さを調整することにより、ウェーハのレーザ光照射面の位置の検出に適したAF特性を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置を示すブロック図である。
【
図3】AF用レーザ光の開口数を調整する方法を示す斜視図である。
【
図4】AF用レーザ光の開口の調整例を示す平面図である。
【
図5】AF用レーザ光の開口の調整例を示す平面図である。
【
図6】実施例1に係るAF用レーザ光の開口の調整例を示す平面図である。
【
図7】実施例1に係るAF特性の例を示すグラフである。
【
図8】実施例2に係るAF特性の例を示すグラフである。
【
図9】実施例3に係るAF用レーザ光の開口の調整例を示す平面図である。
【
図10】4分割された受光面を備えるディテクタの例を示す平面図である。
【
図11】実施例3に係るAF特性の例を示すグラフである。
【
図12】実施例3に係るAF動作の流れを示すフローチャートである。
【
図14】実施例4に係るAF用レーザ光の開口の調整例を示す平面図である。
【
図15】実施例4に係るAF特性の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明に係るオートフォーカス装置及び光学装置の実施の形態について説明する。
【0022】
以下の実施形態では、本発明に係るオートフォーカス装置が適用される光学装置の例として、ウェーハWの内部にレーザ加工領域を形成するためのレーザ加工装置について説明するが、光学装置の種類はこれに限定されない。本発明に係るAF装置は、例えば、ウェーハWに対してレーザアブレーション加工を行うレーザ加工装置、又はウェーハWの内部に形成された亀裂を検出するための亀裂検出装置等に適用可能である。すなわち、本発明に係るAF装置は、AF用レーザ光による検出結果に応じて、加工又は検出用のレーザ光の集光点の位置を調整する任意の光学装置に適用可能である。
【0023】
[レーザ加工装置]
図1は、本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置を示すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、レーザ加工装置10は、ウェーハWを移動させるステージ12と、ウェーハWにレーザ光を照射するレーザ照射装置20と、レーザ加工装置10の各部を制御する制御部100とを備える。なお、レーザ加工装置10は、ウェーハ搬送手段を含んでいてもよい。
【0025】
以下では、ステージ12がXY方向に平行でZ方向に垂直な3次元直交座標系を用いて説明する。
【0026】
ステージ12は、XYZθ方向に移動可能に構成され、ウェーハWを吸着保持する。なお、本実施形態では、レーザ照射装置20に対してステージ12(ウェーハW)を移動可能としたが、本発明はこれに限定されない。レーザ照射装置20とステージ12(ウェーハW)のいずれか又は両方を移動可能としてもよい。すなわち、レーザ照射装置20に対してステージ12(ウェーハW)を相対移動可能な構成であればよい。
【0027】
ウェーハWは、デバイスが形成された表面に粘着材を有するバックグラインドテープ(以下、BGテープ)が貼付され、裏面が図中上向きになるようにステージ12に載置される。以下、ウェーハWの集光レンズ28側の面をレーザ光照射面という。
【0028】
なお、レーザ光照射面は、ウェーハWの表面(デバイスが形成された側の面)でもよい。ウェーハWは、一方の面に粘着材を有するダイシングシートを貼付し、このダイシングシートを介してフレームと一体化された状態でステージ12に載置されるようにしてもよい。
【0029】
レーザ照射装置20は、ウェーハWに対向する位置に配置されており、ウェーハW(例えば、ウェーハWの内部等)にレーザ加工領域を形成するための加工用レーザ光L1をウェーハWに対して照射する。加工用レーザ光L1は、第1レーザ光の一例である。
【0030】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、ストレージデバイス(例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等)及び入出力部を含んでいる。制御部100は、レーザ加工装置10の各部の動作の制御及びレーザ加工に必要なデータの記憶等を行う。
【0031】
入出力部は、例えば、操作盤、モニタ及び表示灯を含んでいる。操作盤には、レーザ加工装置10の各部の動作を操作するスイッチ類や表示装置が取り付けられている。モニタは、図示しないCCD(Charge Coupled Device)カメラで撮像したウェーハWの画像、又はレーザ加工装置10の制御のためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。表示灯は、レーザ加工装置10の加工中、加工終了又は非常停止等の稼働状況を表示する。
【0032】
次に、レーザ照射装置20の構成について説明する。
図1に示すように、レーザ照射装置20は、レーザ光源(第1レーザ光源)22と、照明光学系24と、ダイクロイックミラー26と、対物レンズ(集光レンズ)28と、アクチュエータ30と、AF装置50とを備える。
【0033】
レーザ光源22は、ウェーハWの内部にレーザ加工領域を形成するための加工用レーザ光L1を出射する。例えば、レーザ光源22は、パルス幅が1μs以下であって、集光点におけるピークパワー密度が1×108(W/cm2)以上となるレーザ光を出射する。
【0034】
加工用レーザ光L1の第1光路上には、レーザ光源22側から順に、照明光学系24、ダイクロイックミラー26及び集光レンズ28が配置される。ダイクロイックミラー26は、加工用レーザ光L1を透過し、AF装置50から出射されるAF用レーザ光L2を反射する。なお、AF用レーザ光L2の第2光路は、ダイクロイックミラー26により加工用レーザ光L1の第1光路と一部光路を共有するように屈曲され、その共有光路上に集光レンズ28が配置される。
【0035】
レーザ光源22から出射された加工用レーザ光L1は、照明光学系24及びダイクロイックミラー26を通過した後、集光レンズ28によりウェーハWに集光される。加工用レーザ光L1の集光点のZ方向位置(ウェーハ厚み方向位置)は、アクチュエータ30によって集光レンズ28をZ方向に微小移動させることにより調節される。
【0036】
AF装置50は、ウェーハWに照射されたAF用レーザ光L2の反射光を受光することで、集光レンズ28とウェーハWのレーザ光照射面との距離に関する情報(距離情報)を制御部100に出力する。
【0037】
アクチュエータ30は、集光レンズ28とウェーハWのレーザ光照射面との距離を所定の関係に保つ(距離が一定となる)ように、制御部100によって駆動が制御される。
【0038】
【0039】
図2に示すように、AF装置50は、AF用光源(第2レーザ光源)52、AF開口部54、ナイフエッジ56、ハーフミラー58、AF光学系60、AF結像光学系(結像レンズ)62、ディテクタ64及びAF信号処理部66を含んでいる。
【0040】
AF用光源52は、例えば、LD(Laser Diode)光源又はSLD(Super Luminescent Diode)光源を含んでおり、加工用レーザ光L1とは異なる波長であってウェーハWのレーザ光照射面(被測定面)で反射可能な波長を有するAF用レーザ光L2を出射する。AF用レーザ光L2は、第2レーザ光の一例である。
【0041】
AF用光源52としては、発光部のサイズが小さく、点光源に近似可能なものを用いることができる。AF用レーザ光L2は、回折の影響によりAF用光源52の発光部のサイズよりも拡がる。
図2では、図示の便宜上、AF用レーザ光L2の拡がりを誇張して示している。
【0042】
AF開口部54は、例えば、AF用レーザ光L2が通過する貫通孔(AF開口)54Hが形成された平面状又は板状の部材である。AF開口部54は、AF用光源52から出射されたAF用レーザ光L2の一部を遮光してビーム形状を整形する。
【0043】
ナイフエッジ56は、直線上の辺(以下、先端部という。)を有し、この先端部を境界としてAF用レーザ光L2の一部を遮光する部材である。ナイフエッジ56は、その先端部がビーム径と比較して十分に長く薄い形状を有し、AF用レーザ光L2(平行光)に対して略垂直に配置される。ナイフエッジ56の先端部は、例えば、集光レンズ28の光軸AXと略一致するように配置される。以下の説明では、ナイフエッジ56の先端部が伸びる方向を水平方向(H方向)とする。
【0044】
なお、
図2に示す例では、AF用光源52側(上流側)からAF開口部54とナイフエッジ56の順に配置されているが、配置の順番は逆であってもよい。
【0045】
AF用光源52から出射されたAF用レーザ光L2(平行光)は、AF開口部54によりビーム形状が整形(制限)され、ナイフエッジ56によってその一部が遮光される。そして、AF開口部54及びナイフエッジ56によって遮光されることなく進行した光は、AF光学系60を通過してダイクロイックミラー26により反射されて集光レンズ28に導光され、ウェーハWに導かれる。
【0046】
図2に示すように、AF装置50のAF光学系60は、AF用レーザ光L2の第2光路上であって、加工用レーザ光L1の第1光路との共有光路と重ならない独立した位置に配置される。本実施形態では、AF光学系60は、ダイクロイックミラー26とハーフミラー58との間に配置される。
【0047】
図2に示すように、AF光学系60は、第1レンズ群60Aと第2レンズ群60Bとを備える。ここで、第1レンズ群60A及び第2レンズ群60B並びにアクチュエータ68は、本発明のフォーカス機構として機能する。
【0048】
第1レンズ群(移動群)60Aは、1又は複数のレンズを含んでおり、アクチュエータ68により第2の光路方向に移動可能に配置されている。
【0049】
第2レンズ群(固定群)60Bは、1又は複数のレンズを含んでおり、第2レンズ群60Bの後側焦点位置と集光レンズ28のレンズ瞳位置28Aとが光学的に共役となる位置に固定されている。
【0050】
アクチュエータ68により、第1レンズ群60Aが第2光路に沿って移動すると、加工用レーザ光L1の集光点のZ方向位置が固定された状態で、AF用レーザ光L2の集光点のZ方向位置が変化する。すなわち、第1レンズ群60Aの移動に伴い、加工用レーザ光L1の集光位置とAF用レーザ光L2の集光位置との相対間隔が集光レンズ28の光軸方向に変化する。これにより、加工用レーザ光L1をウェーハWのレーザ光照射面以外の位置に集光させている間(例えば、レーザ加工の実施中)であっても、AF用レーザ光L2をウェーハWのレーザ光照射面に集光することが可能になる。
【0051】
ウェーハWのレーザ光照射面で反射されたAF用レーザ光L2の反射光L3は、集光レンズ28に戻って共有光路に沿って進行し、ダイクロイックミラー26により反射される。このダイクロイックミラー26により反射された反射光L3は、AF光学系60を通過してハーフミラー58によって反射される。そして、反射光L3は、結像レンズ62により集光されて、ディテクタ64の受光面に集光像を形成する。
【0052】
ディテクタ64は、ナイフエッジ56の先端部に平行な水平方向(H方向)と、H方向に垂直な垂直方向(V方向)に沿って4分割された受光素子(光電変換素子)を有する4分割フォトダイオードを含んでいる(
図10参照)。なお、HV方向は、それぞれ第1及び第2の方向の一例である。
【0053】
ディテクタ64は、集光レンズ28によりAF用レーザ光L2が集光される集光点と光学的に共役な位置に配置されており、AF用レーザ光L2の反射光の集光像を分割して受光し、各受光素子の受光量に応じた出力信号(電気信号)をAF信号処理部66に出力する。
【0054】
なお、ディテクタ64としては、V方向に2分割された受光素子を有する2分割フォトダイオードを含むものを用いてもよい(例えば、実施例1、2及び4の場合)。
【0055】
AF信号処理部66は、ディテクタ64の各受光素子から出力された出力信号に基づいて、ウェーハWのレーザ光照射面の基準位置からのZ方向の変位(ウェーハWのレーザ光照射面とAF用レーザ光L2の集光点とのデフォーカス距離)を示すフォーカス誤差信号(AF信号)を生成して制御部100に出力する。AF信号処理部66は、ディテクタ64の各受光素子から出力された出力信号に基づいて、ナイフエッジ法によりAF信号を生成する。なお、AF信号の算出及びAF信号に基づく制御については、例えば、特開2015-186825号公報(特許5743123号)に記載の方法を適用可能である。これにより、ウェーハWのレーザ光照射面の基準位置に対するAF用レーザ光L2の集光点のZ方向の変位(デフォーカス量)に対するAF信号の変化を示すAF特性を得ることができる。
【0056】
上記のようにして得られたAF特性は、例えば、ルックアップテーブル(LUT)として制御部100のストレージに保存される。
【0057】
制御部100は、ディテクタ64の各受光素子から得られるAF信号に基づいて、アクチュエータ68を制御して第1レンズ群60Aの位置を制御して、AF用レーザ光L2をウェーハWのレーザ光照射面に集光させる。
【0058】
制御部100は、AF信号処理部66から出力されるAF信号に基づいて、アクチュエータ30を制御し、加工用レーザ光L1の集光点の位置を調整する。具体的には、制御部100は、AF信号処理部66から出力されるAF信号に基づいて、AF用レーザ光L2により検出したウェーハWのレーザ光照射面からの加工用レーザ光L1の集光点の位置(深さ)を制御する。AF信号処理部66及び制御部100はAF制御部の一例である。AF装置50と制御部100はオートフォーカス装置の一例である。
【0059】
[AF特性の調整の概要]
上記のように、AF用光源52が点光源と見做せるほど小さい場合であっても、回折の影響を考慮すると、AF用レーザ光L2は一定の拡がりを有する。このため、AF用光源52から出射された後にコリメータレンズにより平行光となったAF用レーザ光L2のビーム径rBにもこの拡がりが反映される。本実施形態では、集光レンズ28からウェーハWに照射されるAF用レーザ光L2の開口数(NA:Numerical Aperture)を調整することによりAF特性の調整を行う。具体的には、集光レンズ28からウェーハWに照射されるAF用レーザ光L2の開口数を調整することにより、AF特性を示すカーブの傾きを緩やかにしてフォーカス引き込み範囲を拡大することができる。
【0060】
図3は、AF用レーザ光L2の開口数を調整する方法を示す斜視図であり、
図4は、AF用レーザ光L2の開口の調整例を示す平面図である。
図3及び
図4では、ナイフエッジ56の先端部に平行な方向を水平方向(H方向)とし、H方向に垂直な方向を垂直方向(V方向)とする。
【0061】
図3に示す例では、AF用レーザ光L2の進行方向に対するAF開口部54の傾きを調整することにより、AF開口54Hのナイフエッジ56の先端部(H方向)に対して垂直なV方向の高さを変化させることができる。これにより、
図4に示すように、AF用レーザ光L2のV方向の高さを調整することができ、AF特性の傾きを制御してフォーカス引き込み範囲を拡大することができる(実施例1及び2参照)。ここで、AF開口部54は、開口制御部の一例である。
【0062】
なお、本実施形態では、AF開口部54の傾きを調整することにより、AF用レーザ光L2の開口(スポット形状)のV方向の高さを調整するようにしたが、V方向の高さの調整はこの方法に限定されない。例えば、AF開口部54にスライド板を設けることにより、AF開口54Hの形状を可変可能な構成としてもよい。また、1又は複数のナイフエッジ56とAF開口部54の組み合わせにより、AF用レーザ光L2の開口を調整可能としてもよい。
【0063】
上記のように、AF用レーザ光L2の進行方向に対してAF開口54Hを傾けた場合、
図4に示すように、AF開口54Hの大きさは、H方向とV方向で異なる。ここで、ナイフエッジ56の先端部をH方向に沿うように置いた場合とV方向に置いた場合では得られるAF特性が異なる。したがって、ナイフエッジ56を2つ設けることで、2つの異なるAF信号を同時に得ることができると考えられる。
【0064】
図5は、AF用レーザ光L2の開口の調整例を示す平面図である。なお、
図5の符号B
Refは、AF用レーザ光L2の進行方向に対してAF開口部54を傾けずに垂直に立てて配置した場合のAF開口54Hを示している。
【0065】
AF開口部54をV軸に対して傾けると、
図5の(a)に示すように、AF用レーザ光L2の開口のV方向のサイズが小さくなる。ナイフエッジ56の先端部がH軸に平行になるように設置すると、
図5の(b)に示すように、AF用レーザ光L2の開口にH軸に平行なエッジが形成される。一方、ナイフエッジ56の先端部がV軸に平行になるように設置すると、
図5の(c)に示すように、AF用レーザ光L2の開口にV軸に平行なエッジが形成される。ここで、
図5(b)のH軸に平行なエッジを有するAF用レーザ光L2の方が、
図5(c)のV軸に平行なエッジを有するAF用レーザ光L2よりもAF特性の傾きが緩やかになる傾向がある。
【0066】
ここで、AF用レーザ光L2の開口のH方向の幅に対してV方向の高さは、フォーカス引き込み範囲を確保しつつ、フォーカス感度が低下しすぎない程度、例えば、0.2倍~0.7倍(以下、0.2X~0.7Xと記載する。)とすることが好ましい。
【0067】
2つのナイフエッジ56をそれぞれの先端部がH軸とV軸に平行になるように設置すると、
図5の(d)に示すように、AF用レーザ光L2の開口にH軸とV軸に平行なエッジが形成される。ディテクタ64として4分割フォトダイオードを用いて
図5の(d)に示すAF用レーザ光L2を検出することにより、2つの異なるAF特性を同時に取得することができる。ここで、H軸とV軸にそれぞれ平行になるように設置された2つのナイフエッジ56は、それぞれ第1のナイフエッジ及び第2のナイフエッジの一例である。
【0068】
例えば、AF特性の傾きが緩やかな場合にはフォーカス引き込み範囲が広くなるのに対して、AF特性の傾きが急峻な場合にはフォーカス感度(合焦時の精度)が向上する。このような2種類のAF特性を用いることにより、フォーカス引き込み範囲の拡大によるウェーハWのレーザ光照射面の位置検出の安定化と、フォーカス感度の確保によるAF精度の向上の両方を実現することができる(実施例3参照)。
【0069】
なお、
図5の(b)~(d)に示す例では、AF開口部54をH軸に平行に維持してV軸に対して傾けている。このため、AF開口54HのH方向の幅は、AF開口部54を傾けない場合(全開口の場合)と同じであり、AF特性も変化しない。これに対して、
図5の(e)に示すように、AF開口54HをH方向に制限する絞り(例えば、AF開口54Hに設けられた絞り又は3つ目のナイフエッジ56等)を設けることにより、H方向とV方向の両方のAF特性が制御可能となる。ここで、AF開口54HをH方向に制限する絞りは、開口制御部の一例である。
【0070】
[実施例1]
図6は、実施例1に係るAF用レーザ光L2の開口の調整例を示す平面図である。なお、
図6の(a)~(d)における円は、集光レンズ28のレンズ瞳を示している。
【0071】
AF開口54Hの形状を矩形(例えば、菱形又は正方形)とした場合、H方向に平行にナイフエッジ56を配置すると、
図6の(a)に示すように、AF用レーザ光L2の開口は三角形(二等先端部三角形)になる。この場合にも、AF開口部54のV軸に対する傾きを調整することにより、集光レンズ28のレンズ瞳に対するAF用レーザ光L2の開口のV方向の高さを変更することができる。これにより、AF特性を調整することができる。
【0072】
AF開口54Hの形状を円形又は楕円形とした場合、H方向に平行にナイフエッジ56を配置すると、
図6の(b)に示すように、AF用レーザ光L2の開口は半楕円形になる。この場合、AF開口部54のV軸に対する傾きを調整することにより、AF特性を調整することができる。
【0073】
AF開口54Hの形状を略四芒星形状とした場合、H方向に平行にナイフエッジ56を配置すると、
図6の(c)に示すように、AF用レーザ光L2の開口はナイフエッジ56の位置でH方向の幅が最大で、-V側ほど細い先尖りの塔形状(尖塔形状又は変形三角開口ともいう。)になる。この場合、AF開口部54のV軸に対する傾きを調整することにより、AF特性を調整することができる。
【0074】
AF開口54Hの形状を円形又は楕円形とした場合、H方向に平行にナイフエッジ56を2つ配置すると、
図6の(d)に示すように、AF用レーザ光L2の開口は半楕円の下端を直線状にしたストライプ形状になる。この場合、ナイフエッジ56によりストライプ形状の高さを調整することにより、AF特性を調整することができる。
【0075】
なお、AF用レーザ光L2の開口は半楕円の下端の直線部は、ナイフエッジ56により形成してもよいし、AF開口54Hの上端部を直線形状にすることにより形成してもよい。
【0076】
図7は、AF用レーザ光L2の開口を調整して得られたAF特性の例を示すグラフである。
図7の横軸は、ウェーハWのレーザ光照射面の基準位置に対するAF用レーザ光L2の集光点のZ方向の変位(デフォーカス量(μm))であり、縦軸はAF信号である。
【0077】
なお、以下の実施形態に係るAF特性はいずれも波動光学的な解析(シミュレーション)を行って求めたものである。
【0078】
図7のFullは比較例である。具体的には、比較例(Full)は、AF開口部54を用いず、ナイフエッジ56のみを配置した場合、すなわち、集光レンズ28の開口すべてを用いた場合を示している。
【0079】
実施例1-1(Triangle0.5X)は、AF用レーザ光L2の開口を三角開口(
図6(a)参照)とした場合を示している。実施例1-1では、三角開口のV方向の高さを集光レンズ28のNAの0.5Xとした。
【0080】
実施例1-2(Ellipse0.3X)は、AF用レーザ光L2の開口を楕円開口(
図6(b)参照)とした場合を示している。実施例1-2では、楕円開口のV方向の高さを集光レンズ28のNAの0.3Xとした。
【0081】
実施例1-3(Tower0.6X)は、AF用レーザ光L2の開口を尖塔形状の変形三角開口(
図6(c)参照)とした場合を示している。実施例1-3では、変形三角開口のV方向の高さを集光レンズ28のNAの0.6Xとした。
【0082】
実施例1-4(Stripe0.28X)は、AF用レーザ光L2の開口をストライプ形状(
図6(d)参照)とした場合を示している。実施例1-4では、ストライプ開口のV方向の高さを集光レンズ28のNAの0.28Xとした。
【0083】
図7に示すように、実施例1-1~実施例1-4のいずれの場合も、AF特性(AF LUT)の傾きが比較例と比べて緩やかになっている。この結果から、AF開口部54を用いてAF用レーザ光L2の開口(NA)を制限することにより、フォーカス引き込み範囲を拡大可能となることがわかる。
【0084】
したがって、AF開口部54のAF開口54Hの形状、AF用レーザ光L2に対する傾き角及びナイフエッジ56の配置の少なくとも1つを調整することにより、AF特性の傾きを調整することができ、ウェーハWのレーザ光照射面の位置を安定的に検出することが可能になる。
【0085】
[実施例2]
実施例2では、AF用レーザ光L2の開口を変形三角開口(
図6(c)参照)とした場合に、変形三角開口のV方向の高さを変化させた例について説明する。
【0086】
図8は、実施例2に係るAF特性の例を示すグラフであり、変形三角開口のV方向の高さを変化させた場合のAF特性の例を示すグラフである。
図8の横軸はデフォーカス量(μm)であり、縦軸はAF信号である。
【0087】
図8のRefは比較例であり、AF開口部54を用いず、ナイフエッジ56のみを配置した場合を示している。
【0088】
図8の1.0X、0.8X、0.6X及び0.4Xは、変形三角開口のV方向の高さをそれぞれ集光レンズ28のNAの1.0倍、0.8倍、0.6倍及び0.4倍とした場合を示している。すなわち、
図3に示すように、AF開口部54の傾きによりV方向の高さを調整する場合には、実施例1.0X、0.8X、0.6X及び0.4Xの順に、AF開口部54のV軸に対する傾き角が大きくなる。
【0089】
図8に示すように、実施例1.0X、0.8X、0.6X及び0.4Xのいずれの場合も、AF特性(AF LUT)の傾きが比較例と比べて緩やかになっている。また、変形三角開口のV方向の高さが小さくなるのに伴って、AF特性の傾きがより緩やかになっている。したがって、AF開口部54の傾きによりV方向の高さを低くして、AF用レーザ光L2の開口を小さくするほど、AF特性の傾きをより緩やかにすることができる。
【0090】
さらに、実施例1.0Xの場合も、AF特性の傾きが比較例と比べて緩やかになっている。したがって、AF開口部54をV軸に対して傾けなくても、AF特性の傾きを緩やかにする効果を得ることができる。
【0091】
なお、実施例2では、変形三角開口の例を示したが、変形三角開口以外の開口形状の場合でも上記と同様の効果を得ることができる。
【0092】
[実施例3]
実施例3では、ナイフエッジ56を複数用いることで、AF用レーザ光L2の開口にH方向とV方向の両方のエッジを設けた例について説明する。
【0093】
図9は、実施例3に係るAF用レーザ光L2の開口の調整例を示す平面図である。なお、
図9における円は、集光レンズ28のレンズ瞳を示している。
【0094】
AF開口54Hが楕円形状(
図5(a)参照)の場合において、2つのナイフエッジ56をそれぞれの先端部がH軸とV軸に平行になるように設置すると、
図9に示すように、AF用レーザ光L2の開口にH軸とV軸に平行なエッジが形成される。
【0095】
図10は、4分割された受光面を備えるディテクタ64の例を示す平面図である。
図10では、ディテクタ64の受光面は略円形であり、H方向とV方向に沿って4つの受光素子(又は受光領域)に分割されている。ディテクタ64の受光素子は、第1象限から順にA、B、C及びDとする。
【0096】
ディテクタ64として4分割ディテクタを用いて、
図9に示すAF用レーザ光L2を検出することにより、2つの異なるAF特性を同時に取得することができる。
【0097】
図9に示す例では、2つのナイフエッジ56により、AF用レーザ光L2の開口のH方向とV方向の寸法が、AF開口54Hの略2分の1になっている。また、
図9に示す例では、AF用レーザ光L2の開口のH方向の寸法の方がV方向よりも大きくなっている。したがって、4分割ディテクタ64の受光素子をV方向の組み合わせ、すなわち、(A+B)と(C+D)の組み合わせで使用した場合は、AF用レーザ光L2の開口が相対的に小さい状態となる。一方、4分割ディテクタ64の受光素子をH方向の組み合わせ、すなわち、(A+D)と(B+C)の組み合わせで使用した場合は、AF用レーザ光L2の開口が相対的に大きい状態となる。
【0098】
4分割ディテクタ64の受光素子A~DからのAF信号をそれぞれV方向及びH方向の組み合わせで使用した場合のAF信号AFV及びAFHを下記の式(1)及び式(2)により計算する。
【0099】
【0100】
なお、AFV信号及びAFH信号の算出方法は、上記の式(1)及び式(2)に限定されるものではない。AFV信号及びAFH信号は、例えば、それぞれV方向及びH方向の受光素子の受光量の組み合わせの2乗の差分等、V方向及びH方向の受光素子の受光量の組み合わせが反映されるパラメータであれば特に限定されない。ここで、AFV信号及びAFH信号は、それぞれH方向及びV方向の受光素子の組の受光量を合算(例えば、加算)して求めた第1のAF特性及び第2のAF特性の一例である。
【0101】
図11は、実施例3に係るAF特性(AF
V及びAF
H)の例を示すグラフである。
図11の横軸はデフォーカス量(μm)であり、縦軸はAF信号である。
図11は、
図9に示した4分の1の楕円開口において短軸を長軸の0.3Xとして求めたものである。
【0102】
図11に示す例では、V方向の組み合わせにより求めたAF特性AF
Vの方がH方向の組み合わせにより求めたAF特性AF
Hよりも傾きが緩やかになっている。
【0103】
AFVのような緩やかなAF特性の場合、フォーカス引き込み範囲での傾き変化が小さく、広いデフォーカス範囲においてAF動作を確実に行うことができる。一方、合焦位置付近ではデフォーカス変化に対するAF信号変化が小さいという性質を有する。
【0104】
一方、AFHでは傾き変化が小さくデフォーカス範囲は狭いが、合焦位置付近でのAF信号変化が大きく、フォーカス感度(合焦精度)を高めやすいという性質を有する。
【0105】
この2つのAF特性を組み合わせ、合焦位置付近ではAFHを用いることで、合焦位置付近におけるフォーカス精度を高めることができる。
【0106】
なお、
図11に示す例では、AF
VとAF
Hでゼロクロスする位置が異なっている。これについては適切なパラメータを用いてアルゴリズム的な補正を行うことが可能である。
【0107】
また、実施例3では、楕円開口の例を示したが、楕円開口以外の開口形状の場合でも上記と同様の効果を得ることができる。
【0108】
また、実施例1-3においても、
図5の(e)に示すように、AF開口54HをH方向に制限する絞りを設けることにより、H方向とV方向の両方のAF特性を制御可能である。
【0109】
図12は、実施例3に係るAF動作の流れを示すフローチャートである。
図12に示す例では、まず、フォーカス引き込み範囲が広いAF信号AF
Vを用いた粗調整(ステップS10~S14)を行った後に、フォーカス感度が高いAF信号AF
Hを用いた微調整(ステップS16~S20)を行う。
【0110】
AF動作が開始されると、制御部100は、AF信号処理部66から4分割ディテクタ64の受光素子A~DからのAF信号を読み取って、式(1)によりAFV信号を求め(ステップS10)、基準値1と比較する(ステップS12)。ここで、基準値1は、AFV信号を用いた粗調整からAFH信号を用いた微調整に切り替えるか否かを判定するための閾値である。
【0111】
ステップS12において、AFVが基準値1以上の場合には、制御部100は、アクチュエータ68を制御して、AF光学系60の第1レンズ群60Aを動かして、AF用レーザ光L2の集光点を移動させるフォーカス調整を行う(ステップS14)。具体的には、AF用レーザ光L2の集光点をウェーハWのレーザ光照射面に近づけて、AFV信号の絶対値が小さくなるようにフォーカス調整を行う。
【0112】
ステップS10~S14を繰り返してAFV信号が基準値1未満になると(ステップS12のYes)、AFH信号を用いた微調整に移行する。
【0113】
制御部100は、AF信号処理部66から4分割ディテクタ64の受光素子A~DからのAF信号を読み取って、式(2)によりAFH信号を求め(ステップS16)、基準値2と比較する(ステップS18)。ここで、基準値2は、合焦判断のための閾値である。
【0114】
なお、基準値1と基準値2の決め方には任意性があり、レーザ加工装置10の実装時の状況により異なる。基準値1と基準値2は、レーザ加工装置10及びAF装置50の構成及び実装時の状況等に応じて実験的に決定可能である。また、基準値2は最終的な合焦判断のための閾値であるため、基準値1よりも小さいとも考えられるが、AFV信号とAFH信号の乖離の程度によっては基準値2の絶対値の方が基準値1よりも大きい場合があり得る。
【0115】
ステップS18において、AFHが基準値2以上の場合には、制御部100は、アクチュエータ68を制御して、AF光学系60の第1レンズ群60Aを動かして、AF用レーザ光L2の集光点を移動させるフォーカス調整を行う(ステップS20)。具体的には、AF用レーザ光L2の集光点をウェーハWのレーザ光照射面に近づけて、AFH信号の絶対値が小さくなるようにフォーカス調整を行う。
【0116】
ステップS16~S20を繰り返してAFH信号が基準値2未満になると(ステップS18のYes)、合焦したと判定して処理を終了する(ステップS22)。
【0117】
実施例3によれば、傾きの緩やかなAFV信号と急峻なAFH信号の緩急2種類のAF信号を用いることにより、ウェーハのレーザ光照射面の位置の検出を安定的かつ精度良く行うことが可能になる。
【0118】
[実施例4]
上記の各実施例では、AF開口部54によりAF用レーザ光L2の開口を制御したが、AF用レーザ光L2の開口の制御手段はこれに限定されない。
【0119】
図13は、実施例4に係るAF装置を示す図であり、
図14は、実施例4に係るAF用レーザ光L2の開口の調整例を示す平面図である。なお、
図14における実線の円は、集光レンズ28のレンズ瞳を示しており、
図14における点線の半円は、ビームエキスパンダBEを設けない場合のAF用レーザ光L2の開口を示している。
【0120】
実施例4では、
図13に示すように、AF開口部54の代わりにビームエキスパンダBEを設けて、AF用レーザ光L2の開口を制御する。
【0121】
ビームエキスパンダBEは、AF用レーザ光L2(平行光)のビーム径を拡大するための光学機器である。ビームエキスパンダBEは、ビーム径を拡大する場合にAF用光源52側に配置される対物レンズと、AF用光源52に対して対物レンズと反対側に配置される像側レンズとを備えている。このビームエキスパンダBEの向きを逆にすることにより、
図14に実線の半円で示すように、AF用レーザ光L2(平行光)のビーム径を縮小することができる。
【0122】
図15は、実施例4に係るAF特性の例を示すグラフである。
図15の横軸はデフォーカス量(μm)であり、縦軸はAF信号である。
【0123】
図15の1.0Xは、ビームエキスパンダBEを設けなかった場合のAF特性を示しており、0.2X、0.3X及び0.4Xは、ビームエキスパンダBEを用いてAF用レーザ光L2の開口をそれぞれ1.0Xと比較して0.2X、0.3X及び0.4Xに制限した場合のAF特性である。
【0124】
図15に示すように、AF用レーザ光L2の開口を小さくするほど、AF特性の傾きは緩やかになる。したがって、AF用レーザ光L2の開口を小さくすることにより、フォーカス引き込み範囲を拡大することができる。
【0125】
なお、実施例4においても、ナイフエッジ56を複数用いてAF用レーザ光L2の開口にH軸とV軸に平行なエッジを形成することにより、4分割ディテクタ64を用いて緩急2種類のAFV信号及びAFH信号を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0126】
10…レーザ加工装置、12…ステージ、20…レーザ照射装置、22…レーザ光源、26…ダイクロイックミラー、28…対物レンズ(集光レンズ)、30…アクチュエータ、50…AF装置、52…AF用光源、54…AF開口部、56…ナイフエッジ、58…ハーフミラー、60…AF光学系、62…AF結像光学系、64…ディテクタ、66…AF信号処理部、68…アクチュエータ、100…制御部、BE…ビームエキスパンダ