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特開2024-140917生体音検出装置および生体音検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140917
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】生体音検出装置および生体音検出方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 7/04 20060101AFI20241003BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61B7/04 U
A61B7/04 A
A61B5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052286
(22)【出願日】2023-03-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・公開の事実(1) 開催日 令和4年10月28~29日 集会名、開催場所 第26回日本遠隔医療学会学術大会(埼玉会館 〒330-8518 埼玉県さいたま市浦和区高砂3-1-4) 公開者 島谷 竜俊 ・公開の事実(2) ウェブサイトの掲載日 令和4年10月21日 ウェブサイトのアドレス https://www.asahi.com/articles/ASQBN6WMSQ9YPLZU00H.html 公開者 朝日新聞社(〒104-8011 東京都中央区築地5-3-2) ・公開の事実(3) 発行日 令和4年10月21日 刊行物 朝日新聞 令和4年10月21日付朝刊 公開者 朝日新聞社(〒104-8011 東京都中央区築地5-3-2) ・公開の事実(4) ウェブサイトの掲載日 令和4年10月14日 ウェブサイトのアドレス https://www.yomiuri.co.jp/local/hiroshima/news/20221014-OYTNT50039/ 公開者 読売新聞社(東京都千代田区大手町1-7-1) ・公開の事実(5) 発行日 令和4年10月14日 刊行物 読売新聞 令和4年10月14日付朝刊 公開者 読売新聞社(東京都千代田区大手町1-7-1) ・公開の事実(6) ウェブサイトの掲載日 令和4年10月12日 ウェブサイトのアドレス https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/223590 公開者 中国新聞社(〒730-8677 広島市中区土橋町7-1) ・公開の事実(7) 発行日 令和4年10月12日 刊行物 中国新聞 令和4年10月12日付朝刊 公開者 中国新聞社(〒730-8677 広島市中区土橋町7-1) ・公開の事実(8) ウェブサイトの掲載日 令和4年10月11日 ウェブサイトのアドレス https://www.hiroshima-u.ac.jp/hosp/news/73424 公開者 国立大学法人広島大学
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・公開の事実(9) 会見日 令和4年9月29日 会見場所 国立大学法人広島大学霞キャンパス(〒734-8551 広島県広島市南区霞1-2-3) 公開者 志馬 伸朗 ・公開の事実(10) 放送日 令和4年9月29日 放送番組 日本放送協会(NHK) お好みワイドひろしま 公開者 日本放送協会(NHK)(〒150-8001 東京都渋谷区神南2-2-1) ・公開の事実(11) 放送日 令和4年9月29日 放送番組 日本放送協会(NHK) ひろしまニュース845 公開者 日本放送協会(NHK)(〒150-8001 東京都渋谷区神南2-2-1) ・公開の事実(12) ウェブサイトの掲載日 令和4年9月29日 ウェブサイトのアドレス https://www3.nhk.or.jp/hiroshima-news/20220929/4000019755.html 公開者 日本放送協会(NHK)
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】大下 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】貞森 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】志馬 伸朗
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SS09
4C038SV05
4C038SX08
(57)【要約】
【課題】電子聴診器を使用した遠隔診察における聴診精度の向上(医療従事者の診断支援)、機器操作の利便性向上を図った生体音検出装置を提供する。
【解決手段】電子聴診器を用いて聴診対象の患者の生体音を収音する生体音検出装置は、一定の周期ごとに、所定期間の吸気区間と、所定期間の呼気区間と、当該吸気区間と当該呼気区間との間の所定期間の無呼吸区間とを設定する設定部と、前記呼気区間中は呼気を促し、前記吸気区間中は吸気を促すガイダンスが、前記患者が有する端末から患者に対して提示されるように、当該ガイダンスに関連する信号を提供する第1処理部(1)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子聴診器を用いて聴診対象の患者の生体音を収音する生体音検出装置であって、
一定の周期ごとに、所定期間の吸気区間と、所定期間の呼気区間と、当該吸気区間と当該呼気区間との間の所定期間の無呼吸区間とを設定する設定部と、
前記呼気区間中は呼気を促し、前記吸気区間中は吸気を促すガイダンスが、前記患者が有する端末から患者に対して提示されるように、当該ガイダンスに関連する信号を提供する第1処理部と、
を備える、
ことを特徴とする生体音検出装置。
【請求項2】
前記端末は、画面表示部と音声再生部とを有し、
前記第1処理部が提供する前記ガイダンスに関連する信号は、
前記画面表示部に表示される呼気区間と吸気区間と無呼吸区間とを示す画像情報の信号と、
前記音声再生部から出力される音声による呼気または吸気を促すアナウンスの信号と、
を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体音検出装置。
【請求項3】
前記端末は、振動生成部を有し、
前記第1処理部が提供する前記ガイダンスに関連する信号は、
呼気区間と吸気区間と無呼吸区間とのうちの少なくとも何れかの区間に前記振動生成部から生成される振動の信号を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の生体音検出装置。
【請求項4】
聴診開始からの経過時間を計測するタイマーを更に備え、
前記第1処理部は、前記タイマーの計測結果を、前記画像情報に重畳させて、前記画面表示部に表示させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の生体音検出装置。
【請求項5】
前記画像情報は、1つの円環状の画像を1回の呼吸周期に対応させて、当該1つの円環状の画像を呼気区間と吸気区間と無呼吸区間とに区分した画像情報を含み、
前記第1処理部は、前記タイマーの計測結果を示す矢印の画像が、前記1つの円環状の画像の中心位置を回動中心として、当該1つの円環状の画像に沿って回動する画像情報を、前記画面表示部に表示させる、
ことを特徴とする請求項4に記載の生体音検出装置。
【請求項6】
前記第1処理部は、前記患者から収音された生体音の音量に応じて径の大きさを変化させる円形の画像を、前記画面表示部に表示させる、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の生体音検出装置。
【請求項7】
前記設定部は、前記無呼吸区間を、前記一定の周期ごとに、前記吸気区間の開始前と、当該吸気区間の終了後から呼気区間の開始前までの間とにそれぞれ1回ずつ設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体音検出装置。
【請求項8】
前記電子聴診器から取得される収音データを、前記吸気区間と前記呼気区間と前記無呼吸区間とのそれぞれの区間に対応付けた収音データを生成する第2処理部を、更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体音検出装置。
【請求項9】
電子聴診器を用いて聴診対象の患者の生体音を収音する生体音検出方法であって、
一定の周期ごとに設定された、所定期間の吸気区間と、所定期間の呼気区間と、当該吸気区間と当該呼気区間との間に所定期間の無呼吸区間とに基づき、前記呼気区間中は呼気を促し、前記吸気区間中は吸気を促すガイダンスが、前記患者が有する端末から患者に対して提示されるように、当該ガイダンスに関連する信号を提供する第1処理ステップを含む、
ことを特徴とする生体音検出方法。
【請求項10】
前記患者から収音される生体音を前記吸気区間と前記呼気区間と前記無呼吸区間とのそれぞれの区間に対応付けた収音データを生成する第2処理ステップを更に含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の生体音検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子聴診器を使用して患者側に生体音を収音する際に用いる生体音検出装置および生体音検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔医療における診察では、医師は患者とのビデオ通話による問診が主とされ、問診の内容から診断を下すことが多い。遠隔医療は、通常の対面診察とは異なり、使用デバイスの制限により、主に問診、視診による診断を下す事が多く、聴診や触診、打診を行うことは難しい。遠隔医療では使用するデバイスの制限や診察環境の依存度が高く、遠隔による診断可能な疾病が限られている。
【0003】
また、コロナウィルス(COVID-19)等の感染症の蔓延に伴い、医療従事者と患者の接触を極力減らす感染防止策がとられており、患者へのフィジカルアセスメント(身体検査)を行う機会が減少している。
【0004】
遠隔診察においては、電子聴診器を患者側において使用して生体音を収音し、収音データを医療従事者が確認することによって遠隔で聴診を行うことが可能になる。例えば特許文献1では、患者が、ユーザ入力を介して、呼吸サイクルの開始(すなわち、吸気の開始)を指示し、各呼吸フェーズ内で呼気・吸気としてラベル付けする技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2012-523249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
遠隔診察において患者側に生体音の収音を行わせる場合、ビデオチャット等のカメラ映像などからは、患者の聴診状態(聴診位置)の把握が難しい等の課題があり、遠隔による聴診行為が煩雑になり、医療従事者の負担増加(拘束時間の増加等)につながる。すなわち、電子聴診器を使用した遠隔診察における聴診精度、および機器操作の利便性には、改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は、電子聴診器を使用した遠隔診察における聴診精度の向上(医療従事者の診断支援)、機器操作の利便性向上を図った生体音検出装置および生体音検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る生体音検出装置は、
電子聴診器を用いて聴診対象の患者の生体音を収音する生体音検出装置であって、
一定の周期ごとに、所定期間の吸気区間と、所定期間の呼気区間と、当該吸気区間と当該呼気区間との間の所定期間の無呼吸区間とを設定する設定部と、
前記呼気区間中は呼気を促し、前記吸気区間中は吸気を促すガイダンスが、前記患者が有する端末から患者に対して提示されるように、当該ガイダンスに関連する信号を提供する第1処理部と、
を備える、
ことを特徴としている。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る生体音検出方法は、
電子聴診器を用いて聴診対象の患者の生体音を収音する生体音検出方法であって、
一定の周期ごとに設定された、所定期間の吸気区間と、所定期間の呼気区間と、当該吸気区間と当該呼気区間との間に所定期間の無呼吸区間とに基づき、前記呼気区間中は呼気を促し、前記吸気区間中は吸気を促すガイダンスが、前記患者が有する端末から患者に対して提示されるように、当該ガイダンスに関連する信号を提供する第1処理ステップを含む、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、電子聴診器を使用した遠隔診察における聴診精度の向上(医療従事者の診断支援)、機器操作の利便性向上を図った生体音検出装置および生体音検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る生体音検出装置を具備する生体音検出システムの構成を示すブロック図である。
図2図1に示す患者側の終端端末の演算処理部の詳細を示すブロック図である。
図3図1に示す患者側の終端端末の画面表示部に表示される一態様を示す図である。
図4図1に示す患者側の終端端末の画面表示部に表示される一態様を示す図である。
図5図1に示す患者側の終端端末の演算処理部の詳細を示すブロック図である。
図6図1に示す医療従事者側の終端端末の画面表示部に表示される画像の一態様を示す図である。
図7】本発明に一実施形態に係る生体音検出方法の動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る生体音検出装置を具備する生体音検出システムの構成を示すブロック図である。なお、以下において生体音検出装置をサーバーと称する。
【0013】
生体音検出システム10は、サーバー20と、電子聴診器60を接続可能な患者側の終端端末30(生体音検出装置)と、医療従事者側の終端端末40とが、インターネット網50を介して通信可能に構成されている。なお、インターネット網50がクラウドである場合には、サーバー20が当該クラウドに含まれても良い。
【0014】
(患者側の終端端末30)
患者側の終端端末30は、一例では、患者が保有する情報端末であり、具体的には、スマートフォン、タブレット端末が有り得る。なお、患者が保有する場合に限らず、患者に付き添う付添者(家族、医療従事者)が保有するものであってもよい。以下では、患者側の終端端末30は、患者が保有するスマートフォンを例にとって説明する。
【0015】
患者側の終端端末30には、電子聴診器60と接続可能な接続部(不図示)が設けられている。一例として、接続形態としては有線であるが、無線であってもよい。電子聴診器60は、一例として、一方の側にダイヤフラム面を有し、背側がベル型となっている周知の電子聴診器を使用可能である。電子聴診器60は後述するように、患者の胸部の所定箇所に当てることによって患者の生体音を取得する。生体音とは、肺の音である。当該所定箇所は、後述するように複数あり、1箇所あたり所定の時間聴診を行って、順次、箇所を変更する態様である。好ましくは、患者の肌に直接、電子聴診器60を当てることにより、収音データのノイズを少なくすることができるが、衣服の上から電子聴診器60を当ててもよい。また、電子聴診器60および患者側の終端端末30の操作は、患者自身が行うことが可能なように構成しているが、上述した付添者が操作してもよい。
【0016】
患者側の終端端末30は、信号受信部31、画面表示部32、音声再生部33、演算処理部34、振動生成部35、および通信部36を含む。概要としては、信号受信部31は、接続部(不図示)に接続された電子聴診器60から、患者の生体音を示す生体音信号を受信する。画面表示部32は、後述するガイダンス画面等を表示することができる。音声再生部33は、後述するガイダンス音声を再生(音声出力)することができる。演算処理部34は、信号受信部31が受信した生体音信号に対して演算処理する。振動生成部35は、振動を発生することができる。振動生成部35は主に音声再生部33と同等のタイミングで振動を発生させる。例えば、音声出力が適さない場合などに、音声再生部33からの音声出力に変えて、振動を発生させる。この場合、音声発生のタイミングで、音声および振動の生成を行う態様、あるいは音声発生のタイミングで音声のみの生成(振動の発生無し)を行う態様、あるいは、音声発生のタイミングで振動のみの生成(音声の発生無し)を行う態様が有り得る。通信部36は、インターネット網50を介して、生体音信号を収音した収音データ等をサーバー20に送信することができるとともに、サーバー20から各種情報を受信することができる。以下、演算処理部34について説明する。
【0017】
演算処理部34は、第1処理部1と、第2処理部2と、記憶部3(設定部)とを含む。
【0018】
記憶部3は、信号受信部31に受信された生体音信号が格納される。また、記憶部3は、一定の周期ごとに、所定期間の吸気区間と、所定期間の呼気区間と、当該吸気区間と当該呼気区間との間の所定期間の無呼吸区間とを設定する。ここで、一定の周期とは、1回の呼吸周期のことであり、本実施形態ではこの1周期を7秒間と定めている。7秒間という秒数は、人の安静時における、或る呼気区間の開始から、次の呼気区間の開始直前までの秒数として予め定められている。本実施形態では、この一定の周期を、吸気と呼気とに二分するのではなく、記憶部3は、一定の周期(呼吸周期)ごとに、吸気区間の開始前と、当該吸気区間の終了後から呼気区間の開始前までの間とにそれぞれ1回ずつ、無呼吸区間を設定する。具体的には、記憶部3は、一定の周期(7秒間)ごとに、1秒間の無呼吸区間と、2秒間の吸気区間と、1秒間の無呼吸区間と、3秒間の呼気区間とをこの順で含むように設定する。この区分については、図3の右側に示す1つの円環を1回の呼吸周期(7秒間)と見立てて、1秒間の無呼吸区間と、2秒間の吸気区間と、1秒間の無呼吸区間と、3秒間の呼気区間とを模式的に示している。
【0019】
ここで、本明細書における「吸気」とは、基本的には、鼻あるいは口から空気が吸われている状態を意味する。これは、肺に対して空気が流入しているか否かとは意味合いが異なる。従って、また、本明細書における「呼気」とは、基本的には、鼻あるいは口から空気が外に出ている状態を意味する。これは、肺から空気が流出しているか否かとは意味合いが異なる。
【0020】
呼気吸気と、呼吸に伴う肺への空気の出入りとを比較すると、吸気によって肺に空気が入り始めた場合に、吸気動作が終わってもしばらくは肺に空気が流入し続け、しばらくは肺が膨む。本実施形態では、安静時に呼吸をすると呼気動作と吸気動作との間に吸気も呼気もしていない状態の期間が僅かに存在することに着目して、この期間を「無呼吸区間」と定義して、聴診時に無呼吸区間が設けられるように促す。無呼吸区間には、特定の副雑音が現れることがあり、本実施形態では、この特定の副雑音を捉えて肺に対する高精度な聴診を、患者による聴診によって実現する。無呼吸区間を設けることを促すために、本実施形態では、演算処理部34(特に第1処理部1)を具備している。
【0021】
第1処理部1は、呼気区間中は呼気を促し、前記吸気区間中は吸気を促すガイダンスが、患者側の終端端末30から患者に対して提示されるように、当該ガイダンスに関連する信号を提供する。換言すれば、第1処理部1は、無呼吸区間中は、吸気も呼気も促さない。要するに、吸気も呼気も促さないことによって、無呼吸区間が設けられるようにしている。
【0022】
ここで、図2は、演算処理部34の構成の詳細を示すブロック図である。演算処理部34は、上述した構成に加えて、聴診開始からの経過時間を計測するタイマー4を備える。
【0023】
タイマー4は、聴診開始信号を取得すると、聴診開始からの経過時間を計測する。聴診開始信号は、例えば、患者側の終端端末30の画面表示部32に設けられたタッチセンサ機能を患者がタッチすることによって生成される信号である。タイマー4の計測結果(経過時間)は、第1処理部1および第2処理部2に出力される。
【0024】
第1処理部1は、タイマー4の計測結果(経過時間)に基づき、先述のガイダンスに関連する信号を生成する。具体的には、第1処理部1は、ガイダンスに関連する信号として、画面表示部32に表示される呼気区間と吸気区間と無呼吸区間とを示す画像情報の信号を生成する。なお、第1処理部1が生成する画像情報の信号は、画面表示部32に表示される画像データそのものであってもよいが、記憶部3等に予め格納されている特定の画像が、画面表示部32に表示されるように指示する指示信号であってもよい。
【0025】
また、第1処理部1は、タイマー4の計測結果を、画像情報に重畳させて、画面表示部32に表示させてもよい。この場合には、例えば図3に示すように、1つの円環状の画像を1回の呼吸周期に対応させて、当該1つの円環状の画像を呼気区間と吸気区間と無呼吸区間とに区分した画像情報を画面表示部32に表示させる態様において、第1処理部1は、タイマー4の計測結果を示す矢印の画像が、当該1つの円環状の画像の中心位置を回動中心として、当該1つの円環状の画像に沿って回動する画像情報を、画面表示部32に表示させる態様であってもよい。
【0026】
以上の第1処理部1によって生成される信号に基づいた、画面表示部32に表示される画像の一例を、図3に示す。図3は、スマートフォンである患者側の終端端末30の画面表示部32の画面を示す。なお、図3の画面表示部32に表示されている画像は、生体音の収音(録音)が始まっている状態のものである。図3の画面表示部32に表示されている画像は、患者情報と電子聴診器が接続中であるか否かを表示している第1部分32aと、呼気区間と吸気区間と無呼吸区間とを示す画像情報等が表示されている第2部分32bと、ガイダンス等を文字で示している第3部分32cとを含む。
【0027】
第2部分32bには、人体モデルの上半身の胸の画像を背景にして、電子聴診器を当てる箇所(本実施形態では肺上部の2箇所と肺下部の2箇所との計4箇所)と当てる順番とを、番号で示している。
【0028】
第2部分32bには、1つの円環状の画像300が表示されている。1つの円環状の画像300は、先述したように円環一周を1回の呼吸周期(7秒間)に対応させた画像であり、時計で言う0時の位置を呼吸周期の開始と終了の位置と定め、0時の位置から時計回りに、無呼吸区間(1秒間)、吸気区間(2秒間)、無呼吸区間(1秒間)、呼気区間(3秒間)の順で区分された画像である。
【0029】
第2部分32bの円環状の画像300における、吸気区間に相当する画像領域301では、色覚的に目立つ色調を用いるとともに、ガイダンス内容として「吸って」という吸気を促す文字画像301aを重畳させている。また、円環状の画像300における、呼気区間に相当する画像領域302では、色覚的に目立つ色調で且つ吸気区間に相当する画像領域の色調とは異なる色調を用いるとともに、ガイダンス内容として「吐いて」という呼気を促す文字画像302aを重畳させている。
【0030】
このように円環状の画像300に、吸気区間に相当する画像領域301と、呼気区間に相当する画像領域302とを含んでいる。換言すれば、円環状の画像300のうち、画像領域301でも画像領域302でもない領域が、無呼吸区間(図3の右側に示す)に相当する。
【0031】
また、第1処理部1は、タイマー4の計測結果を、第2部分32bの円環状の画像300に重畳させる。具体的には、タイマー4の計測結果を、矢印の画像303として第2部分32bに表示する。そして、第1処理部1は、この矢印の画像303が、円環状の画像300の中心位置を回動中心として、円環状の画像300に沿って回動する画像情報を、画面表示部32に表示させる。換言すれば、矢印の画像303は、1つの円環状の画像300を7秒間で一周する。
【0032】
このように、第1処理部1によって、円環状の画像300と矢印の画像303が画面表示部32に表示されるように構成されていることにより、患者は、矢印の画像303が吸気区間に相当する画像領域301を指し示す間には吸気の動作を行い、矢印の画像303が呼気区間に相当する画像領域302を指し示す間には空気を吐く動作を行う。また、吸気区間の後に続く無呼吸区間を矢印の画像303が指し示す間は、患者は、吸気動作から呼気動作に動作を切り替えようとする。要するに、吸気も呼気もしていない期間となる。このように、画像によって、患者は呼吸が良好にガイドされる。これにより、先述の3つの区間(吸気区間、呼気区間、無呼吸区間)のそれぞれの生体音を、精度よく取得することができる。
【0033】
更に、第1処理部1は、第2部分32bの円環状の画像300よりも中心側に、患者から収音された生体音の音量に応じて径の大きさを変化させる円形の画像400を、画面表示部32に表示させる。円形の画像400の大きさから、患者は、収音された生体音の音量を把握することができ、音が小さすぎる場合や、外部音(患者の声や周囲の音)が混入することによって過度に音が大きくなっていることを、視覚的に把握することができる。
【0034】
また、第1処理部1は、画面表示部32に、ノイズを示すノイズ画像401を、第2円形の画像400の外周に表示させる。ノイズ画像401は、聴診によって特定したい肺の副雑音(異常音)以外の音(ノイズ)が検出された場合に、表示色が変化(例えば、黄色を赤色に変化)する構成となっている。ノイズ画像401の表示色は、第1処理部1が、第2処理部2におけるノイズ解析結果を受けて制御する。ノイズ解析については、後述する。
【0035】
また、第1処理部1は、円形の画像400の径の大きさを変化させる処理において、大きさが滑らかに変化させる平滑化処理を行う。平滑化処理を適用させることにより、画像のちらつき等の視覚的な違和感を抑制することができる。
【0036】
なお、例えば第2部分32bに表示される各種画像の色は、患者によって選択することも可能である。一例では、吸気区間に相当する画像領域301はオレンジ色、呼気区間に相当する画像領域302は若草色、矢印の画像303は赤色、円形の画像400は水色、ノイズ画像401は基本色が黄色で限界値を超えたことを示す際には赤色で表示される。また、本実施形態では、画面表示部32には、透明色で無呼吸区間に相当する画像領域が表示されているが有色であってもよい。また、第2部分32bに限らず、第1部分32aあるいは第3部分32cについても表示色を選択できるようにしてもよい。
【0037】
図4は、スマートフォンである患者側の終端端末30の画面表示部32において、生体音の収音(録音)が始まる前の状態の画像が示されている。第2部分32bには、人体モデルの上半身の胸の画像を背景にして、電子聴診器を当てる箇所(本実施形態では肺上部の2箇所と肺下部の2箇所との計4箇所)が、当てる順に番号をふった画像で示されている。患者は、画面表示部32を見ながら、自身の胸部における、1番の画像に対応する箇所に電子聴診器60(図1)を当て、第4部分32dに表示されている録音開始ボタンをタッチする。このとき、第3部分32cには患者がすべき動作に関する指示が文字によって表示されている。録音開始ボタンがタッチされたことは、先述の聴音開始信号として演算処理部34が取得する。演算処理部34が聴音開始信号を取得すると、画面表示部32の画像が図3に示す内容になる。
【0038】
本実施形態では、第2部分32bに表示される人体画像は、人体モデルであるが、これに代えて、患者を撮影した撮影画像を用いても良く、先述した電子聴診器を当てる箇所と順番を示す番号画像を、当該撮影画像に重畳させて画面表示部32に表示する態様であってもよい。
【0039】
以上が、第1処理部1によって、ガイダンスに関連する信号として、画面表示部32に表示される呼気区間と吸気区間と無呼吸区間とを示す画像情報の信号が提供される構成である。
【0040】
第1処理部1は、画像情報の信号に加えて、患者側の終端端末30の音声再生部33から出力される音声による呼気または吸気を促すアナウンスの信号を、ガイダンスに関連する信号として、提供する。なお、第1処理部1が生成するアナウンスの信号は、音声再生部33から出力される音声データそのものであってもよいが、記憶部3等に予め格納されている特定の音声データが、音声再生部33にて再生されるように指示する指示信号であってもよい。
【0041】
第1処理部1は、タイマー4の計測結果に基づいて、吸気区間中には、ガイダンス内容として「吸って」等の吸気を促す音声が音声再生部33から出力されるように、また、呼気区間中には、ガイダンス内容として「吐いて」等の呼気を促す音声が音声再生部33から出力されるようにする。アナウンスの文言(吸って、吸う、吸ってください等)、あるいは声の種類(性別、主治医等の特定の人物の声)等については、患者が選択できるようにしてもよい。
【0042】
以上が、第1処理部1によって、ガイダンスに関連する信号として、音声再生部33から出力される音声による呼気または吸気を促すアナウンスの信号が提供される構成である。また、第1処理部1によって、ガイダンスに関連する信号として、振動生成部35(図1)が振動を発生するための信号が提供される。
【0043】
第2処理部2は、電子聴診器60から取得される収音データを、吸気区間と呼気区間と無呼吸区間とのそれぞれの区間に対応付けた収音データを生成する。
【0044】
ここで、図5は、第2処理部2の詳細な構成を示すブロック図である。第2処理部2は、副雑音解析部2aと、ノイズ解析部2bと、生成部2cとを含む。
【0045】
副雑音解析部2aは、電子聴診器60から取得される収音データを、記憶部3から取得し、当該収音データに対して副雑音解析を行う。副雑音解析の方法としては、特定のアルゴリズムを適用して副雑音を特定する。一例として、副雑音解析部2aは、聴診の録音開始から一回の呼吸周期が経過した時点までの一連の収音データに対して、副雑音解析をおこなう。
【0046】
肺の副雑音(異常音)については、捻髪音、水泡音、類鼾音、笛声音の4種類あることが知られている。また、これらの副雑音は、基本的に、発生するタイミングがあり、周期性がある。また、特定の周波数の音として検出することができる。
【0047】
副雑音解析部2aは、収音データに対して副雑音を検出した箇所に時系列に沿ってフラグを立てる。なお、副雑音解析部2aにおいて検出される副雑音には、先述の肺の副雑音(異常音)以外のノイズも含まれ得る。
【0048】
ノイズ解析部2bは、副雑音解析部2aにより副雑音解析が行われた収音データに対してノイズ解析を行う。
【0049】
ここで、呼気期間に発生する可能性がある副雑音は、捻髪音、水泡音であり、吸気期間に発生する可能性がある副雑音は、類鼾音、笛声音である。従前から行われている直接対面式の診察では、医師あるいは他の医療従事者が、直接、患者に対して聴診器を当てて聴診を行っている。この対面式の診察では、聴診箇所が誤ってしまうことや、患者を視診することによって呼吸タイミングと聴診タイミングとを合わせて、特定のタイミングで現れる可能性がある副雑音をリアルタイムで判別することができる。一方、遠隔による診察において、本実施形態のように電子聴診器を患者が扱って聴診を行い、得られた収音データを、遠隔にいる医師あるいは他の医療従事者が受け取って診断する場合には、収音データと呼吸タイミングとの対応付けが重要となる。そこで、本実施形態のように1回の呼吸周期を吸気区間、呼気区間、無呼吸区間の3つの区間に分けて、各区間に合った動作を行うように患者をガイドすることで、吸気区間、呼気区間、無呼吸区間の各区間に対応付けられた収音データを取得することができる。これにより、各区間に対応付けられた収音データに対して、その区間で特有に現れる可能性がある副雑音を精度よく特定することで、聴診精度を高めることができる。また、無呼吸区間を設けることにより、呼気区間で発生する副雑音と、吸気区間で発生する副雑音が混在することがなく、より精度の高い聴診を実現することができる。
【0050】
具体的には、ノイズ解析部2bが、副雑音解析部2aにより解析されてフラグが立てられた副雑音解析済みの収音データを取得し、当該収音データを吸気区間、呼気区間、無呼吸区間の各区間に対応付ける。対応付けにあたって、ノイズ解析部2bは、タイマー4からタイマーの計測結果を取得してもよい。ノイズ解析部2bは、各区間を対応付けた収音データに基づき、フラグが立てられた音が臨床的に有り得る音であるか否かを解析する。この解析には、特定のアルゴリズムが適用されて行われる。例えば、吸気区間に現れ得る肺の副雑音とは異なる音(周波数、発生タイミング)の音を、ノイズとして検出する。
【0051】
ノイズ解析部2bによるノイズ解析結果は、先述のノイズ画像401の表示色を決定するために用いられる。また、円形の画像400の大きさを決定するためにも用いられても良い。
【0052】
ノイズ解析部2bによるノイズ解析結果に基づいて、収音データに対してノイズ除去処理が行われてもよい。
【0053】
生成部2cは、吸気区間と呼気区間と無呼吸区間とのそれぞれの区間に対応付けられた収音データと、患者における聴診部位を示す部位情報と、副雑音解析部2aおよびノイズ解析部2bの解析結果に基づく患者の聴診結果と、患者から収音した日時情報とを関連付けた関連付けデータを生成する。患者における聴診部位を示す部位情報とは、先述した4箇所のうちの電子聴診器60を当てた箇所を示す情報である。生成部2cは、副雑音解析部2aおよびノイズ解析部2bの解析結果に基づき、肺の副雑音として臨床的に認められる音が含まれているか否か、含まれている場合には、先述の4種類のうちの何れの副雑音であるかを判定した結果(患者の聴診結果)を生成する。
【0054】
生成部2cによって生成された関連付けデータは、図1の通信部36から、インターネット網50を介して、サーバー20に送信される。
【0055】
(サーバー20)
サーバー20は、記憶部21と、演算処理部22と、インターフェース部24とを含む。
【0056】
インターフェース部24は、インターネット網50を介して患者側の終端端末30の通信部36から送信された関連付けデータを取得する。記憶部21は、取得された関連付けデータを格納する。演算処理部22は、取得された関連付けデータに対して演算処理を行う。一例として、演算処理部22は、データベースの情報整理と、時系列情報の解析とを行う。データベースの情報整理に関しては、複数台の終端端末30からアップロードおよびダウンロードされる聴診情報等をデータベースの整理、また、複数の医療従事者側の終端端末40にて表示する情報をサーバーのデータベースより抽出する処理等を行う。時系列情報の解析に関しては、データベースに蓄積された聴診情報を活用し、患者ごとにおける、肺の健康状態を予測する解析を行う。
【0057】
また、インターフェース部24は、インターネット網50を介して、医療従事者側の終端端末40に対して、記憶部21に格納している関連付けデータを送信する。
【0058】
(医療従事者側の終端端末40)
医療従事者側の終端端末40は、医者または他の医療従事者が有する情報端末であり、具体的には、スマートフォン、タブレット端末が有り得る。図1に示すように、医療従事者側の終端端末40は、通信部41、記憶部42、演算処理部43、画面表示部44、および音声再生部45を含む。
【0059】
例えば医師が、医療従事者側の終端端末40を用いて、画面表示部44に表示されている患者IDを選択するか、画面表示部44に表示されている入力欄に患者IDを入力する。これにより、インターネット網50を介してサーバー20から、患者IDに関連付けられた関連付けデータが送信され、通信部41において取得できる。取得された関連付けデータは、演算処理部43において演算処理されて、画面表示部44に表示される。演算処理部43では、基本的には表示する情報の制御を行う。一例としては、医療従事者が選択した情報を表示する画面の遷移(構成変更)などを行う。また、必要に応じて、音声波形からスペクトログラムの生成なども行う。
【0060】
また、画面表示部44に表示された関連付けデータに基づいて、医師は、収音データを聴くことができるとともに、先述した副雑音解析部2aの解析結果を見ることによって、対面式の聴診と同等の聴診行為を実現することができる。
【0061】
画面表示部44に表示される一例を、図6に示す。図6に示す画には、患者ID、収音日時が表示されているとともに、吸気区間P1、呼気区間P2、無呼吸区間P0と、収音データQ(音量値)とが対応付けられたグラフGと、収音データのスペクトログラムCと、4種の副雑音を含むレーダーチャートRとが示されている。収音データを聴く場合には、グラフGの左側の操作ボタンEで操作可能である。
【0062】
以上の生体音検出システム10によれば、電子聴診器を使用した遠隔診察における聴診精度の向上(医療従事者の診断支援)、および機器操作の利便性の向上を実現することができる。具体的には、生体音検出システム10によれば、収音データと呼吸タイミングとの対応付けを行う。特に、本実施形態では、1回の呼吸周期を吸気区間、呼気区間、無呼吸区間の3つの区間に分けて、各区間に合った動作を行うように患者をガイドすることで、吸気区間、呼気区間、無呼吸区間の各区間に対応付けられた収音データを取得することができる。これにより、各区間に対応付けられた収音データに対して、その区間で特有に現れる可能性がある副雑音を精度よく特定することで、聴診精度を高めることができる。また、患者の聴診をガイドすることにより、正しく聴診できなかった場合に生じ得る医療従事者(特に医師)による診断の手間、聴診のやり直しを低減することができ、効率的な診断を実現することができる。
【0063】
(生体音検出方法)
上述の生体音検出システムを用い、電子聴診器を用いて患者の生体音を検出する生体音検出方法は、;
一定の周期ごとに設定された、所定期間の吸気区間と、所定期間の呼気区間と、当該吸気区間と当該呼気区間との間に所定期間の無呼吸区間とに基づき、前記呼気区間中は呼気を促し、前記吸気区間中は吸気を促すガイダンスが、聴診対象の患者が有する端末から患者に対して提示されるように、当該ガイダンスに関連する信号を提供する第1処理ステップを含む。このステップを含めて、図7に示す処理フローを用いて、本実施形態の生体音検出方法を説明する。図7に示す生体音検出方法は、上述の生体音検出システムを用いて実現する。
【0064】
図7のステップS1では、患者側の終端端末30によって、電子聴診器60が接続されているか否かの確認が行われる。なお、患者側の終端端末30に対する電子聴診器60の接続が確認されることによって生体音検出システムが自動的に起動してもよいし、患者が手動で生体音検出システムを起動させてもよい。
【0065】
次のステップS2では、先述した図5に示す録音ボタンの患者による操作の有無が検出される。操作されたことが検出されると、聴診開始信号に基づき、電子聴診器60から音データを取得して収音(録音)が開始される(ステップS3)。
【0066】
録音が開始されると、第1処理部1によって、演算処理部34の記憶部3に記憶されている吸気区間と、呼気区間と、無呼吸区間とに基づくガイダンスが開始される(第1処理ステップ:ステップS4)。ガイダンスについては先述した通りであり、ここでの説明は省略する。
【0067】
ステップS4においてガイダンスが行われている間に、次のステップS5以降の処理が行われる。
【0068】
ステップS5では、収音(録音)された収音データ(録音データ)の読み込みが行われる。読み込まれた収音データは、記憶部3に保存される。
【0069】
また、ステップS5で読み込まれた収音データに対して、必要に応じて、演算処理部34によって補正が行われる(ステップS6)。一例として、患者側の終端端末30の機種に応じた周波数の補正が有り得る。補正された場合には、補正後の収音データが記憶部3に保存される。
【0070】
続くステップS7では、ステップS5で読み込まれた収音データ、あるいはステップS6の補正後の収音データに対して、副雑音解析部2aが副雑音解析を行う(ステップS8)。副雑音解析については先述しており、ここでは説明を省略するが、副雑音解析の解析結果は、第1処理部1が生成するガイダンスの内容に反映(フィードバック)される。反映の一例としては、先述した時系列に沿ったフラグの位置に応じて、1回の呼吸周期の長さの変更が有り得る、あるいは、吸気区間、呼気区間および無呼吸区間の各区間のうちの何れかの区間の期間の長さの変更が有り得る。
【0071】
続くステップS8では、ノイズ解析部2bがノイズ解析を行う。ノイズ解析については先述しており、また、ノイズ解析結果に基づくガイダンスの内容への反映(フィードバック)についても先述しているため、ここでは説明を省略する。
【0072】
ここまでの処理ステップが、1つの聴診部位に対して行われる。1つの聴診部位に対して収音(録音)される時間は、1回分の呼吸周期の時間(7秒間)であってもよく、2回分以上の呼吸周期の時間(14秒以上)であってもよい。また、初回の呼吸周期が安定しない可能性があることを考慮するとともに、解析信頼性を高めるために同じ区間(呼気、吸気、無呼吸区間)のデータを取ることを目的として、3回分の呼吸周期の時間(21秒)の収音(録音)が、1つの聴診部位に対して行われてもよい。1つの聴診部位に対して収音(録音)される時間に関わらず、リアルタイムで副雑音解析部2aによる副雑音解析、およびノイズ解析部2bによるノイズ解析が行われる。
【0073】
ステップS9の聴感イコライザー(EQ)は、電子聴診器60のダイヤフラム面側を使用して聴診した場合の臨床の音に近い音になるように収音データを補正する処理と、ベル型の部分を使用して聴診した場合の臨床の音に近い音になるように収音データを補正する処理とを行う。ステップS9は、一例として、第2処理部2のノイズ解析部2bが行うことができる。
【0074】
ステップS10では、ステップS9の補正後の音声データの送信が行われる。
【0075】
音声データの送信が行われると、第1処理部1によるガイダンスが終了するか、患者によって終了ボタンが選択されることによって、収音(録音)が終了する(ステップS11)。
【0076】
続くステップS12では、生成部2cによる関連付けデータの生成が行われる。これについては上述しているため、ここでは説明を省略する。
【0077】
指定回数、指定部位からの聴診が終了している場合には、関連付けデータが、サーバー20へ送信される。指定回数、指定部位からの聴診が終了していない場合には、録音を開始するステップ(ステップS2またはステップS3)に戻ってステップを繰り返す。
【0078】
以上のように、本実施形態の生体音検出方法によれば、生体音検出システム10を用いることにより、上述のように、電子聴診器を使用した遠隔診察における聴診精度の向上(医療従事者の診断支援)、および機器操作の利便性の向上を実現することができる。
【0079】
〔変形例〕
上述の実施形態では、患者側の終端端末30において患者の聴診をガイドする処理と、各種解析を行う処理などを実現する態様について説明している。しかしながら、これらの処理は、サーバー20(図1)において実現することも可能である。サーバー20においてこれらの処理を実現する態様の一例としては、患者側の終端端末30は、電子聴診器60から取得したデータを、インターネット網50を介してサーバー20のインターフェース部24に取得させる。また、上述のガイダンスに関連する信号を演算処理部22において生成し、当該信号を、インターネット網50を介して患者側の終端端末30に提供する。当該信号を取得した患者側の終端端末30は、画面表示部32および音声再生部33においてガイダンスを提示する。また、上述の関連付けデータを演算処理部22において生成し、インターネット網50を介して、医療従事者側の終端端末40に送信する。以上の変形例であっても、本実施形態と同様の効果を奏する。
【0080】
なお、以上の構成によれば、電子聴診器を使用した遠隔診察における聴診精度の向上(医療従事者の診断支援)、機器操作の利便性向上を図ることができる。このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」等の達成にも貢献するものである。
【0081】
〔ソフトウェアによる実現例〕
演算処理部34(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に第1処理部1、第2処理部2)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0082】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0083】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0084】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0085】
〔付記事項1〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0086】
〔付記事項2〕
本発明に態様1における生体音検出装置は、
電子聴診器を用いて聴診対象の患者の生体音を収音する生体音検出装置(患者側の終端端末30)であって、
一定の周期ごとに、所定期間の吸気区間と、所定期間の呼気区間と、当該吸気区間と当該呼気区間との間の所定期間の無呼吸区間とを設定する設定部(記憶部3)と、
前記呼気区間中は呼気を促し、前記吸気区間中は吸気を促すガイダンスが、前記患者が有する端末から患者に対して提示されるように、当該ガイダンスに関連する信号を提供する第1処理部1と、
を備える。
【0087】
前記の構成によれば、電子聴診器を使用した遠隔診察における聴診精度の向上(医療従事者の診断支援)、および機器操作の利便性の向上を実現することができる。具体的には、前記の構成によれば、収音データと呼吸タイミングとの対応付けを行う。特に、一定の周期(1回の呼吸周期)を吸気区間、呼気区間、無呼吸区間の3つの区間に分けて、各区間に合った動作を行うように患者をガイドすることで、吸気区間、呼気区間、無呼吸区間の各区間に対応付けられた収音データを取得することができる。これにより、各区間に対応付けられた収音データに対して、その区間で特有に現れる可能性がある副雑音を精度よく特定することで、聴診精度を高めることができる。また、無呼吸区間を設けることにより、呼気区間で発生する副雑音と、吸気区間で発生する副雑音が混在することがなく、より精度の高い聴診を実現することができる。また、患者の聴診をガイドすることにより、正しく聴診できなかった場合に生じ得る医療従事者(特に医師)による診断の手間、聴診のやり直しを低減することができ、効率的な診断を実現することができる。
【0088】
本発明に態様2における生体音検出装置は、前記態様1において、
前記端末は、画面表示部と音声再生部とを有し、
前記第1処理部が提供する前記ガイダンスに関連する信号は、
前記画面表示部に表示される呼気区間と吸気区間と無呼吸区間とを示す画像情報の信号と、
前記音声再生部から出力される音声による呼気または吸気を促すアナウンスの信号と、
を含む。
【0089】
前記の構成によれば、患者に対して視覚的なガイダンスと、聴覚的なガイダンスとを行って各区間の動作をするよう効果的に促すことができる。
【0090】
本発明に態様3における生体音検出装置は、前記態様2において、
前記端末は、振動生成部とを有し、
前記第1処理部が提供する前記ガイダンスに関連する信号は、
呼気区間と吸気区間と無呼吸区間とのうちの少なくとも何れかの区間に前記振動生成部から生成される振動の信号を含む。
【0091】
前記の構成によれば、患者に対して視覚的なガイダンスと、触覚的なガイダンスとを行って各区間の動作をするよう効果的に促すことができる。
【0092】
本発明に態様4における生体音検出装置は、前記態様1から3の何れかにおいて、
聴診開始からの経過時間を計測するタイマー4を更に備え、
前記第1処理部1は、前記タイマーの計測結果を、前記画像情報に重畳させて、前記画面表示部に表示させる。
【0093】
前記の構成によれば、一定の時間ごとに各区間を区切って、患者に安定した呼吸を促すことができる。
【0094】
本発明に態様5における生体音検出装置は、前記態様4において、
前記画像情報は、1つの円環状の画像を1回の呼吸周期に対応させて、当該1つの円環状の画像を呼気区間と吸気区間と無呼吸区間とに区分した画像情報を含み、
前記第1処理部は、前記タイマーの計測結果を示す矢印の画像303が、前記1つの円環状の画像の中心位置を回動中心として、当該1つの円環状の画像に沿って回動する画像情報を、前記画面表示部に表示させる。
【0095】
前記の構成によれば、患者は画像情報を確認しながら、現状、何処の区間による動作をすべきなのかを把握でき、また、現在行っている動作(呼気動作、吸気動作)が残りどのくらいの秒数あるかを把握することができる。
【0096】
本発明に態様6における生体音検出装置は、前記態様4または5において、
前記第1処理部は、前記患者から収音された生体音の音量に応じて径の大きさを変化させる円形の画像400を、前記画面表示部に表示させる。
【0097】
前記の構成によれば、患者が聴診によって収音される音量の大小を把握することができる。
【0098】
本発明に態様7における生体音検出装置は、前記態様1から6の何れかにおいて、
前記設定部は、前記無呼吸区間を、前記一定の周期ごとに、前記吸気区間の開始前と、当該吸気区間の終了後から呼気区間の開始前までの間とにそれぞれ1回ずつ設定する。
【0099】
呼気動作および吸気動作の各動作が終わっても肺の膨張収縮が続くことから、前記の構成によれば、その膨張収縮を無呼吸区間において捉えて、そのタイミングで現れる可能性がある特定の副雑音を検出することができる。
【0100】
本発明に態様8における生体音検出装置は、前記態様1から7の何れかにおいて、
前記電子聴診器から取得される収音データを、前記吸気区間と前記呼気区間と前記無呼吸区間とのそれぞれの区間に対応付けた収音データを生成する第2処理部2を、更に備える。
【0101】
前記の構成によれば、医療従事者側の終端端末40によって、当該対応付けられた収音データを確認することにより、高精度の聴診診察を行うことが可能となる。
【0102】
本発明の態様9に係る生体音検出方法は、
電子聴診器を用いて聴診対象の患者の生体音を収音する生体音検出方法であって、
一定の周期ごとに設定された、所定期間の吸気区間と、所定期間の呼気区間と、当該吸気区間と当該呼気区間との間に所定期間の無呼吸区間とに基づき、前記呼気区間中は呼気を促し、前記吸気区間中は吸気を促すガイダンスが、前記患者が有する端末から患者に対して提示されるように、当該ガイダンスに関連する信号を提供する第1処理ステップを含む。
【0103】
前記の構成によれば、電子聴診器を使用した遠隔診察における聴診精度の向上(医療従事者の診断支援)、および機器操作の利便性の向上を実現することができる。具体的には、前記の構成によれば、収音データと呼吸タイミングとの対応付けを行う。特に、一定の周期(1回の呼吸周期)を吸気区間、呼気区間、無呼吸区間の3つの区間に分けて、各区間に合った動作を行うように患者をガイドすることで、吸気区間、呼気区間、無呼吸区間の各区間に対応付けられた収音データを取得することができる。これにより、各区間に対応付けられた収音データに対して、その区間で特有に現れる可能性がある副雑音を精度よく特定することで、聴診精度を高めることができる。また、患者の聴診をガイドすることにより、正しく聴診できなかった場合に生じ得る医療従事者(特に医師)による診断の手間、聴診のやり直しを低減することができ、効率的な診断を実現することができる。
【0104】
本発明の態様10に係る生体音検出方法は、前記態様9において、
前記患者から収音される生体音を前記吸気区間と前記呼気区間と前記無呼吸区間とのそれぞれの区間に対応付けた収音データを生成する第2処理ステップを更に含む。
【0105】
前記の構成によれば、医療従事者側の終端端末40によって、当該対応付けられた収音データを確認することにより、高精度の聴診診察を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0106】
1 第1処理部
2 第2処理部
2a 副雑音解析部
2b ノイズ解析部
2c 生成部
3 記憶部
4 タイマー
10 生体音検出システム
20 サーバー
34 演算処理部
30 患者側の終端端末
31 信号受信部
32 画面表示部
32 画面表示部
33 音声再生部
35 振動生成部
36 通信部
40 医療従事者側の終端端末
50 インターネット網
60 電子聴診器
401 ノイズ画像
P1 吸気区間
P2 呼気区間
P0 無呼吸区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7