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特開2024-140927光学素子および光フィルタリング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140927
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】光学素子および光フィルタリング方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20241003BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B6/02 431
G02B6/036
G02B6/02 461
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052300
(22)【出願日】2023-03-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5G通信インフラを高効率に構成するメトロアクセス光技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】久保田 寛和
(72)【発明者】
【氏名】三好 悠司
【テーマコード(参考)】
2H038
2H250
【Fターム(参考)】
2H038BA23
2H038BA25
2H038BA26
2H250AC19
2H250AC62
2H250AC85
2H250AC86
2H250AC94
2H250AD15
2H250AG03
2H250AG16
2H250AG44
(57)【要約】
【課題】不要なモードの光を適切に減衰させることができる光学素子を実現する。
【解決手段】光学素子(101)は、第1コア(11)と第1コアを取り囲むクラッド(21)とを有する光ファイバ(10)と、第1コアを伝搬する第1伝搬光(L1)をクラッドモードの第2伝搬光(L2)に変換する第1変換部(C1)と、第1伝搬光とはモードが異なり第1コアを伝搬する第3伝搬光(L3)を減衰させる減衰部(50)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コアと、前記第1コアを取り囲むクラッドと、を有する光ファイバと、
前記第1コアを伝搬する第1伝搬光をクラッドモードの第2伝搬光に変換する第1変換部と、
前記第1伝搬光とはモードが異なり前記第1コアを伝搬する第3伝搬光を減衰させる減衰部と、を備える、光学素子。
【請求項2】
前記第2伝搬光を、前記第1コアを伝搬する第4伝搬光に変換する第2変換部を備え、
前記減衰部は、前記第1変換部と前記第2変換部との間に位置する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記第1伝搬光とはモードが異なり前記第1コアを伝搬する第5伝搬光を、前記第2伝搬光とは異なるクラッドモードの第6伝搬光に変換する第3変換部と、
前記第6伝搬光を、前記第4伝搬光とはモードが異なり前記第1コアを伝搬する第7伝搬光に変換する第4変換部と、を備え、
前記減衰部は、前記第3変換部と前記第4変換部との間に位置する、請求項2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記光ファイバは、クラッドとして、前記第1コアを取り囲む第1クラッドと、前記第1クラッドを取り囲む第2クラッドとを有し、
前記第2伝搬光は、前記第1クラッドを伝搬する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
前記光ファイバは、第2コアを有するマルチコア光ファイバであって、
前記第2伝搬光を、前記第2コアを伝搬する第8伝搬光に変換する第5変換部を備える、請求項1に記載の光学素子。
【請求項6】
前記減衰部は、前記第1コアを伝搬する前記第3伝搬光を遮蔽する、請求項1から5のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記減衰部は、前記第1コアにおいて前記第3伝搬光の波長の光を吸収する、請求項1から5のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項8】
第1コアと、前記第1コアを取り囲むクラッドと、を有する光ファイバを用いた光フィルタリング方法であって、
前記第1コアを伝搬する第1伝搬光をクラッドモードの第2伝搬光に変換する第1変換ステップと、
前記第1伝搬光とはモードが異なり前記第1コアを伝搬する第3伝搬光を減衰させる減衰ステップと、を含む、光フィルタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子および光フィルタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モード多重光通信では、モード変換部またはスイッチ部において不要なモードの光が発生し得る。不要なモードの光は通信品質を劣化させる。それゆえ、不要なモードの光をフィルタリングする技術が開発されている。
【0003】
特許文献1には、光ファイバの曲げ損失を利用して、高次モードを減衰させる技術が開示されている。
【0004】
非特許文献1には、長周期ファイバグレーティングを用いた、波長可変モードフィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-040002号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M. Shioji et al.、”Tunable-wavelength mode filter with mechanically induced long period fiber grating”、Asia Communications and Photonics Conference, 2017、M2J.4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術では、所望のモードよりも高次のモードの光しか減衰させることができず、所望のモードよりも低次のモードの光を適切に減衰させることはできない。
【0008】
非特許文献1の技術では、高い減衰比で不要なモードの光を減衰させることはできない。
【0009】
本発明の一態様は、不要なモードの光を適切に減衰させることができる光学素子を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様1に係る光学素子は、第1コアと、前記第1コアを取り囲むクラッドと、を有する光ファイバと、前記第1コアを伝搬する第1伝搬光をクラッドモードの第2伝搬光に変換する第1変換部と、前記第1伝搬光とはモードが異なり前記第1コアを伝搬する第3伝搬光を減衰させる減衰部と、を備える。
【0011】
本発明の態様2に係る光学素子は、上記態様1において、前記第2伝搬光を、前記第1コアを伝搬する第4伝搬光に変換する第2変換部を備え、前記減衰部は、前記第1変換部と前記第2変換部との間に位置する構成であってもよい。
【0012】
本発明の態様3に係る光学素子は、上記態様2において、前記第1伝搬光とはモードが異なり前記第1コアを伝搬する第5伝搬光を、前記第2伝搬光とは異なるクラッドモードの第6伝搬光に変換する第3変換部と、前記第6伝搬光を、前記第4伝搬光とはモードが異なり前記第1コアを伝搬する第7伝搬光に変換する第4変換部と、を備え、前記減衰部は、前記第3変換部と前記第4変換部との間に位置する構成であってもよい。
【0013】
本発明の態様4に係る光学素子は、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記光ファイバは、クラッドとして、前記第1コアを取り囲む第1クラッドと、前記第1クラッドを取り囲む第2クラッドとを有し、前記第2伝搬光は、前記第1クラッドを伝搬する構成であってもよい。
【0014】
本発明の態様5に係る光学素子は、上記態様1において、前記光ファイバは、第2コアを有するマルチコア光ファイバであって、前記第2伝搬光を、前記第2コアを伝搬する第8伝搬光に変換する第5変換部を備える構成であってもよい。
【0015】
本発明の態様6に係る光学素子は、上記態様1から5のいずれかにおいて、前記減衰部は、前記第1コアを伝搬する前記第3伝搬光を遮蔽する構成であってもよい。
【0016】
本発明の態様7に係る光学素子は、上記態様1から6のいずれかにおいて、前記減衰部は、前記第1コアにおいて前記第3伝搬光の波長の光を吸収する構成であってもよい。
【0017】
本発明の態様8に係る光フィルタリング方法は、第1コアと、前記第1コアを取り囲むクラッドと、を有する光ファイバを用いた光フィルタリング方法であって、前記第1コアを伝搬する第1伝搬光をクラッドモードの第2伝搬光に変換する第1変換ステップと、前記第1伝搬光とはモードが異なり前記第1コアを伝搬する第3伝搬光を減衰させる減衰ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、不要なモードの光を適切に減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る光学素子の構成を示す模式断面図である。
図2】一実施形態に係る光学素子の構成を示す模式断面図である。
図3】一実施形態に係る光学素子の構成を示す模式断面図である。
図4】一実施形態に係る光学素子の構成を示す模式断面図である。
図5】一実施形態に係る光学素子の構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、各図における同一部分または相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0021】
(光学素子の構成)
図1は、一実施形態に係る光学素子101の構成を示す模式断面図である。光学素子101は、光ファイバ10、第1変換部C1、第2変換部C2、および減衰部50を備える。光ファイバ10は、第1コア11と、第1コア11を取り囲むクラッド21とを有する。
【0022】
第1変換部C1は、第1コア11を伝搬するコアモードの第1伝搬光L1の少なくとも一部を、クラッドモードの第2伝搬光L2に変換する。第1変換部C1は、第1コア11に形成された長周期ファイバグレーティング(LPFG)31を含む。長周期ファイバグレーティングは、コアに周期的な屈折率の変化を有する。周期的な屈折率の変化を第1コア11に生じさせるため、例えば、第1変換部C1は、光ファイバ10の伝送方向に沿って、第1ピッチΛ1の周期で光ファイバ10の側面に周期的な圧力を加える第1押圧部材41(押圧部)を備える。
【0023】
第2変換部C2は、クラッドモードの第2伝搬光L2の少なくとも一部を、第1コア11を伝搬するコアモードの第4伝搬光L4に変換する。第2変換部C2は、第1コア11に形成された長周期ファイバグレーティング(LPFG)32を含む。例えば、第2変換部C2は、光ファイバ10の伝送方向に沿って、第2ピッチΛ2の周期で光ファイバ10の側面に周期的な圧力を加える第2押圧部材42(押圧部)を備える。
【0024】
ただし、機械的な方法に限らず、他の公知の方法で長周期ファイバグレーティングを形成してもよい。例えば、紫外線によってコアに周期的な屈折率の変化を与える方法、または、炭酸ガスレーザー等によってコアを周期的に局部加熱する方法等がある。
【0025】
押圧部(第1押圧部材41および第2押圧部材42)は、光ファイバ10の一方側に配置される支持板と、光ファイバ10の他方側に押し当てられる凹凸板とからなる部材である。凹凸板には凸部と溝とが周期的に設けられている。凹凸板はネジの締付け、またはピエゾ素子等の機械的な手段により光ファイバ10に所定の圧力を加える。このような構成により、押圧部は、光ファイバ10のコアに周期的な屈折率変化を生じさせる。すなわち、押圧部は、光ファイバ10に長周期ファイバグレーティング(LPFG)を形成する。
【0026】
LPFGが形成された光ファイバ10は、LPFGの共振波長λを有する光信号を異なる伝搬モードの光信号に(例えばコアモードの光信号からクラッドモードの光信号に)変換する。LPFGの共振波長λはλ=│n1-n2│×Λと表される。ここで、n1は変換前の伝搬モードの光信号が感じる実効屈折率、n2は変換後の伝搬モードの光信号が感じる実効屈折率、ΛはLPFGの周期(グレーティングピッチ)である。すなわち、グレーティングピッチΛを調整することにより、波長λを有する光信号について、2つの異なる伝搬モード間の変換が可能となる。また、実効屈折率はコアの屈折率分布によって異なる。そのため、グレーティングピッチΛを調整することにより、ある伝搬定数を有するコアを伝搬する光信号のコアモードと、クラッドモードとの間の変換が可能となる。
【0027】
したがって、第1変換部C1は、グレーティングピッチΛを第1ピッチΛ1に調整することにより、第1コア11を伝搬する伝搬定数K1の第1伝搬光L1のみをクラッドモードの第2伝搬光L2に変換することができる。すなわち、第1変換部C1は、第1コア11を伝搬する他のモードの第3伝搬光L3をクラッドモードの光に変換することはない。また、第2変換部C2は、グレーティングピッチΛを第2ピッチΛ2に調整することにより、クラッドモードの第2伝搬光L2を、第1コア11を伝搬する伝搬定数K2の第4伝搬光L4に変換することができる。すなわち、第2変換部C2は、クラッドモードの第2伝搬光L2の少なくとも一部を、第1コア11に移動させる。
【0028】
減衰部50は、第1コア11を伝搬する第3伝搬光L3を減衰させる。減衰部50は、第1変換部C1と第2変換部C2との間に位置する。例えば、減衰部50は、第1コア11において第3伝搬光L3の波長の光を吸収する。例えば、減衰部50は、第1コア11を伝搬する第3伝搬光L3を遮蔽する。例えば、減衰部50は、第1コア11においてファイバヒューズが生じた部分を含む。例えば、減衰部50は、第1コア11において不純物がドープされた部分を含んでもよい。不純物によって特定の波長の光が吸収、散乱、または反射されることで、減衰部50は、第3伝搬光L3を減衰または遮蔽してもよい。例えば、減衰部50は、第1伝搬光L1および第3伝搬光L3の波長を含む、幅広い範囲の波長の光を吸収、散乱、または反射してもよい。例えば、減衰部50が第1コア11に形成された光ファイバを、通常の光ファイバに接続(機械的に接続または融着)することにより、光ファイバ10を形成することができる。
【0029】
ファイバヒューズは、光ファイバのコアに、伝送方向に沿って周期的に並ぶ複数の空洞が発生する現象である。例えば、光ファイバに大きな強度の光を入射しながら、外部から放電加熱をすることにより、光ファイバにファイバヒューズを生じさせることができる。ファイバヒューズが生じた部分(伝送方向に沿って周期的に並ぶ複数の空洞が形成されたコア)は、伝搬モードに関わらず光をほぼ通過させずに遮蔽する。
【0030】
(光学素子のフィルタリング動作)
光学素子101の第1コア11に、第1伝搬光L1および第3伝搬光L3を含む光が入射される。第1伝搬光L1は、例えば情報を伝達する光信号(伝送が必要な光)である。第3伝搬光L3は、ノイズとなる不要な光である。第3伝搬光L3のモードは、第1伝搬光L1のモードとは異なる。第3伝搬光L3の波長は、第1伝搬光L1の波長と同じであってもよい。
【0031】
第1変換部C1におけるLPFG31によって、第1伝搬光L1は、クラッドモードの第2伝搬光L2に変換される。これにより光信号である第2伝搬光L2は、クラッド21を伝搬する。一方、第3伝搬光L3は、LPFG31を通過して第1コア11中を進む。
【0032】
第1コア11中を進む第3伝搬光L3は、減衰部50によって減衰または遮蔽される。減衰部50は、特定の第3伝搬光L3だけでなく、ノイズとなり得る光を減衰または遮蔽することができる。一方で、第2伝搬光L2は、減衰部50の外側のクラッド21を通過する。
【0033】
第2変換部C2におけるLPFG32によって、第2伝搬光L2は、コアモードの第4伝搬光L4に変換される。これにより光信号である第2伝搬光L2は、第1コア11を伝搬する第4伝搬光L4に変換される。
【0034】
LPFG31は、例えば第1伝搬光L1のみを第2伝搬光L2に変換する。LPFG32は、例えば第2伝搬光L2のみを第4伝搬光L4に変換する。減衰部50は、第1コア11を進み続ける他の光(第3伝搬光L3を含む)を、減衰させることができる。例えば、減衰部50が、ファイバヒューズが生じた部分を含む場合、第1コア11を進み続ける他の光を100%に近い割合で遮蔽することができる。そのため、光学素子101は、除去したい不要なモードの光を適切に減衰させることができる。それゆえ、光学素子101は、光学素子101から出射される第4伝搬光L4に、不要なモードの光がほとんど含まれないようにすることができる。よって、光学素子101は、適切にフィルタリングを行い、S/N比を増加させることができる。
【0035】
なお、第1伝搬光L1のモードは、第4伝搬光L4のモードと同じであってもよいし異なっていてもよい。例えば、第1ピッチΛ1を、第2ピッチΛ2と同じにすれば、同じモードになり、異なるピッチにすれば、異なるモードになる。第1伝搬光L1および第4伝搬光L4のモードは、コアモードの基本モードであってもよいし、コアモードの高次モードであってもよい。また、第2伝搬光L2のモードは、クラッドモードの基本モードであってもよいし、クラッドモードの高次モードであってもよい。光学素子101は、特定のモードの光を選択的に減衰または除去するモードフィルタリング素子として利用することができる。
【0036】
図2は、一実施形態に係る光学素子102の構成を示す模式断面図である。光学素子102は、光ファイバ10、第1変換部C1、第2変換部C2、第3変換部C3、第4変換部C4、および減衰部50を備える。
【0037】
第3変換部C3は、第1コア11を伝搬するコアモードの第5伝搬光L5の少なくとも一部を、クラッドモードの第6伝搬光L6に変換する。第6伝搬光L6のモード(クラッドモード)は、第2伝搬光L2のモード(クラッドモード)とは異なる。第3変換部C3は、第1コア11に形成された長周期ファイバグレーティング(LPFG)33を含む。例えば、第3変換部C3は、光ファイバ10の伝送方向に沿って、第3ピッチΛ3の周期で光ファイバ10の側面に周期的な圧力を加える第3押圧部材43(押圧部)を備える。
【0038】
第4変換部C4は、クラッドモードの第6伝搬光L6の少なくとも一部を、第1コア11を伝搬するコアモードの第7伝搬光L7に変換する。第7伝搬光L7のモードは、第4伝搬光L4のモードとは異なる。第4変換部C4は、第1コア11に形成された長周期ファイバグレーティング(LPFG)34を含む。例えば、第4変換部C4は、光ファイバ10の伝送方向に沿って、第4ピッチΛ4の周期で光ファイバ10の側面に周期的な圧力を加える第4押圧部材44(押圧部)を備える。
【0039】
減衰部50は、第1変換部C1と第2変換部C2との間に位置し、かつ、第3変換部C3と第4変換部C4との間に位置する。第1変換部C1と第3変換部C3とは、光の入射側に位置する。第2変換部C2と第4変換部C4とは、光の出射側に位置する。第1変換部C1および第3変換部C3は、いずれが入射側に位置しても構わない。第2変換部C2および第4変換部C4は、いずれが出射側に位置しても構わない。
【0040】
光学素子102の第1コア11に、第1伝搬光L1、第3伝搬光L3、および第5伝搬光L5を含む光が入射される。第1伝搬光L1および第5伝搬光L5は、例えば情報を伝達する光信号(伝送が必要な光)である。第3伝搬光L3は、ノイズとなる不要な光である。第1伝搬光L1のモード、第5伝搬光L5のモード、および第3伝搬光L3のモードは、互いに異なる。
【0041】
第1変換部C1におけるLPFG31によって、第1伝搬光L1は、クラッドモードの第2伝搬光L2に変換される。第3変換部C3におけるLPFG33によって、残った第5伝搬光L5および第3伝搬光L3のうちの第5伝搬光L5は、クラッドモードの第6伝搬光L6に変換される。これにより光信号である第2伝搬光L2および第6伝搬光L6は、互いに異なるモードでクラッド21を伝搬する。一方、第3伝搬光L3は、LPFG31およびLPFG33を通過して第1コア11中を進む。
【0042】
第1コア11中を進む第3伝搬光L3は、減衰部50によって減衰または遮蔽される。一方で、第2伝搬光L2および第6伝搬光L6は、減衰部50の外側のクラッド21を通過する。
【0043】
第2変換部C2におけるLPFG32によって、第2伝搬光L2は、コアモードの第4伝搬光L4に変換される。第4変換部C4におけるLPFG34によって、第6伝搬光L6は、コアモードの第7伝搬光L7に変換される。
【0044】
これにより、光学素子102は、光学素子102に入射された光のうち、必要な複数の伝搬光(第1伝搬光L1および第5伝搬光L5)以外の光を減衰部50で減衰させることができる。光学素子102は、必要な第1伝搬光L1および第5伝搬光L5にそれぞれ対応する第4伝搬光L4および第7伝搬光L7を出射する。なお、第5伝搬光L5のモードは、第7伝搬光L7のモードと同じであってもよいし異なっていてもよい。第3ピッチΛ3を、第4ピッチΛ4と同じにすれば、第5伝搬光L5のモードは、第7伝搬光L7のモードと同じになり、異なるピッチにすれば、異なるモードになる。なお、第1ピッチΛ1と第3ピッチΛ3とは互いに異なる。第2ピッチΛ2と第4ピッチΛ4とは互いに異なる。
【0045】
なお、ここでは2つの伝搬光をクラッドモードに変換したが、光学素子は、3つ以上の伝搬光をクラッドモードに変換してもよい。変換する伝搬光の数に応じて、光学素子に複数の変換部を設ければよい。
【0046】
図3は、一実施形態に係る光学素子103の構成を示す模式断面図である。光学素子103は、光ファイバ10a、第1変換部C1、第2変換部C2、および減衰部50を備える。光ファイバ10aは、第1コア11と、第1コア11を取り囲む第1クラッド22と、第1クラッド22を取り囲む第2クラッド23とを有する。光ファイバ10aは、クラッドとして2層のクラッドを有するダブルクラッドファイバである。第1クラッド22の屈折率は、第2クラッド23の屈折率より高い。
【0047】
第1変換部C1は、第1コア11を伝搬するコアモードの第1伝搬光L1を、クラッドモードの第2伝搬光L2に変換する。第2伝搬光L2は、第1クラッド22を伝搬する。第2伝搬光L2は、減衰部50の外側の第1クラッド22を通過する。第2変換部C2は、第1クラッド22を伝搬するクラッドモードの第2伝搬光L2の少なくとも一部を、第1コア11を伝搬するコアモードの第4伝搬光L4に変換する。第2伝搬光L2は、内側のクラッドである第1クラッド22を通過する。そのため、光学素子103は、減衰部50を迂回する第2伝搬光L2の損失を、シングルクラッドの光学素子に比べて、低減することができる。
【0048】
なお、光学素子103に、図2に示す第3変換部C3および第4変換部C4等を追加し、複数の伝搬光を、第1クラッド22を伝搬するクラッドモードの光に変換してもよい。
【0049】
図4は、一実施形態に係る光学素子104の構成を示す模式断面図である。光学素子104は、光ファイバ10b、第1変換部C1、第3変換部C3、第4変換部C4、第5変換部C5、第1減衰部51、および第2減衰部52を備える。光ファイバ10bは、第1コア11と、第2コア12と、第1コア11および第2コア12を取り囲むクラッド21とを有する。光ファイバ10bは、複数のコアを有するマルチコア光ファイバである。
【0050】
第1コア11の基本モードの伝搬定数K1は、第2コア12の基本モードの伝搬定数K2と異なる。第1コア11の直径φ1を、第2コア12の直径φ2と異ならせることにより、伝搬定数K1を伝搬定数K2と異ならせてもよい。各コアに添加する不純物の濃度を互いに異ならせることにより、各コアの比屈折率を互いに異ならせてもよい。これにより、各コアの基本モードの伝搬定数を互いに異ならせてもよい。
【0051】
第1減衰部51は、第1コア11に形成されており、第1コア11を伝搬する光を減衰させる。第2減衰部52は、第2コア12に形成されており、第2コア12を伝搬する光を減衰させる。第1減衰部51および第2減衰部52は、第1変換部C1と第5変換部C5との間に位置し、かつ、第3変換部C3と第4変換部C4との間に位置する。
【0052】
第1変換部C1は、第1コア11を伝搬するコアモードの第1伝搬光L1を、クラッドモードの第2伝搬光L2に変換する。第3変換部C3は、第1コア11を伝搬するコアモードの第5伝搬光L5を、クラッドモードの第6伝搬光L6に変換する。第4変換部C4は、クラッドモードの第6伝搬光L6を、第1コア11を伝搬するコアモードの第7伝搬光L7に変換する。
【0053】
第5変換部C5は、クラッドモードの第2伝搬光L2の少なくとも一部を、第2コア12を伝搬するコアモードの第8伝搬光L8に変換する。第5変換部C5は、第2コア12に形成された長周期ファイバグレーティング(LPFG)35を含む。例えば、第5変換部C5は、光ファイバ10の伝送方向に沿って、第5ピッチΛ5の周期で光ファイバ10の側面に周期的な圧力を加える第5押圧部材45(押圧部)を備える。
【0054】
第1ピッチΛ1と第3ピッチΛ3と第4ピッチΛ4と第5ピッチΛ5とは互いに異なる。なお、第1変換部C1、第3変換部C3、および第4変換部C4は、第2コア12にもLPFGを形成する。ただし、第1変換部C1、第3変換部C3、および第4変換部C4によって第2コア12に形成されたLPFGは、クラッド21を伝搬する光を、第2コア12を伝搬する光には変換しない。同様に、第5変換部C5は、第1コア11にもLPFGを形成する。ただし、第5変換部C5によって第1コア11に形成されたLPFGは、クラッド21を伝搬する光を、第1コア11を伝搬する光には変換しない。
【0055】
光学素子104は、ノイズとなる第3伝搬光L3等を含まない第8伝搬光L8を、第2コア12を伝搬させることができる。また、光学素子104は、第1コア11に入力された光信号から、第2伝搬光L2に対応する第8伝搬光L8を第2コア12から出力させ、第5伝搬光L5に対応する第7伝搬光L7を第1コア11から出力させる。よって、光学素子104は、ノイズとなる第3伝搬光L3等を含まない第7伝搬光L7および第8伝搬光L8を、それぞれ異なるコアから出射させることができる。よって、光学素子104は、S/N比の高い第7伝搬光L7および第8伝搬光L8を信号光として出力することができる。
【0056】
なお、光学素子104において、第3変換部C3および第4変換部C4を省略してもよい。また、第1減衰部51および第2減衰部52の一方を省略してもよい。
【0057】
図5は、一実施形態に係る光学素子105の構成を示す模式断面図である。光学素子105は、光ファイバ10、第1変換部C1、第3減衰部53、および出力部60を備える。第1変換部C1は、第1コア11を伝搬するコアモードの第1伝搬光L1を、クラッドモードの第2伝搬光L2に変換する。
【0058】
出力部60は、第2伝搬光L2を透過する導光部材で形成されている。出力部60は、光ファイバ10の出力端に接続されている。出力部60の一端には、光ファイバ10のクラッド21を伝搬してきた第2伝搬光L2が入力される。出力部60の他端から、第2伝搬光L2が出力される。
【0059】
第3減衰部53は、第1コア11を伝搬する第3伝搬光L3を減衰させる。第3減衰部53は、出力部60における第1コア11に対応する位置(第1コア11が接続される位置)に配置されている。第3減衰部53は、例えば、ノイズとなる第3伝搬光L3等を吸収、または反射することにより、減衰または遮蔽してもよい。
【0060】
光学素子105のように、クラッド21を伝搬する第2伝搬光L2を、第1コア11に戻さずに、クラッド21から直接取り出してもよい。
【0061】
なお、光学素子105に、図2に示す第3変換部C3および第4変換部C4等を追加し、複数の伝搬光を、クラッド21を伝搬するクラッドモードの光に変換してもよい。
【0062】
(変形例)
なお、以上では、単一の波長の光が光学素子に入力される場合について説明した。これに限らず、例えば、上述の光学素子において複数の波長の光が入力されてもよい。例えば、光学素子102において、第1変換部C1、および第2変換部C2は、第1波長の光を、第1コア11を伝搬するモードからクラッド21を伝搬するモードへ、またはクラッド21を伝搬するモードから第1コア11を伝搬するモードへ、変換してもよい。例えば、光学素子102、104において、第3変換部C3、および第4変換部C4は、第2波長の光を、第1コア11を伝搬するモードからクラッド21を伝搬するモードへ、またはクラッド21を伝搬するモードから第1コア11を伝搬するモードへ、変換してもよい。例えば、光学素子104において、第1変換部C1、および第5変換部C5は、第1波長の光を、第1コア11を伝搬するモードからクラッド21を伝搬するモードへ、またはクラッド21を伝搬するモードから第2コア12を伝搬するモードへ、変換してもよい。
【0063】
また、1つの変換部は、複数の波長の光を、第1コア11を伝搬するモードからクラッド21を伝搬するモードへ、またはクラッド21を伝搬するモードから第1コア11を伝搬するモードへ、変換してもよい。LPFGにおける共振波長λは、下記式を満たす。
【0064】
λ=Λ(neff1-neff2
ここで、ΛはLPFGのグレーティングピッチ、neff1は第1コア11を伝搬するコアモードの実効屈折率、neff2はクラッド21を伝搬するクラッドモードの実効屈折率である。neff1およびneff2は光の波長λに依存する。例えば、各波長で共振(変換)が起こるΛを計算すると、λの変化によってΛがほとんど変化しない波長範囲および対応するΛを特定することができる。第1変換部C1の第1ピッチΛ1を特定したΛに設定すれば、第1変換部C1は、複数波長を含む広い波長範囲の光を、第1コア11を伝搬するモードからクラッド21を伝搬するモードへ変換することができる。他の変換部についても同様にグレーティングピッチを設定することで、複数波長を含む広い波長範囲の光を、変換することができる。なお、他の公知の方法で、変換部によって変換される波長を広帯域化してもよい。
【0065】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
10、10a、10b 光ファイバ
11 第1コア
12 第2コア
21 クラッド
22 第1クラッド
23 第2クラッド
31、32、33、34 LPFG
50 減衰部
51 第1減衰部
52 第2減衰部
53 第3減衰部
60 出力部
101、102、103、104、105 光学素子
C1 第1変換部
C2 第2変換部
C3 第3変換部
C4 第4変換部
C5 第5変換部
図1
図2
図3
図4
図5