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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140941
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20241003BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052322
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】開 俊啓
(72)【発明者】
【氏名】植田 千晴
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛司
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK01E
4F100AK25B
4F100AK25D
4F100AK41A
4F100AK41J
4F100AK42A
4F100AK74E
4F100AL01A
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100EH462
4F100EH46B
4F100EJ542
4F100GB32
4F100HB31C
4F100JB12B
4F100JN28B
4F100JN30
4F100YY00
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】
適度な硬度と柔軟性を有しながら、実用的な繰返し折曲げ特性及び耐擦過性に優れ、それでいて外部からの刺激により、色調が変化する特性を有する積層フィルムを提案すること。
【解決手段】
基材フィルムの少なくとも片面に樹脂層を備えた構成であり、前記樹脂層がバインダー樹脂(A)およびクロミック化合物(B)を含み、前記樹脂層表面の光線透過率の極小値における波長の光線透過率の変化量が5%以上である積層フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に樹脂層を備えた構成であり、前記樹脂層がバインダー樹脂(A)およびクロミック化合物(B)を含み、前記樹脂層表面の光線透過率の極小値における波長の光線透過率の変化量が5%以上である積層フィルム。
【請求項2】
前記バインダー樹脂(A)がアクリル系樹脂である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記クロミック化合物(B)がフォトクロミック化合物またはサーモクロミック化合物である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記樹脂層中における、クロミック化合物(B)の含有量が0.1質量%~5.0質量%である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記樹脂層がマイクロカプセル中にクロミック化合物(B)を含む、樹脂組成物を硬化させてなる請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記アクリル系樹脂が活性エネルギー線硬化型である、請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記基材フィルムがポリエステルフィルムである、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記基材フィルムがポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記基材フィルムが共重合ポリエステルフィルムである、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項10】
繰り返し折り曲げ性評価(外曲げ、R=1.5の条件下)において、20万回以上折り曲げ可能である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項11】
前記基材フィルムと樹脂層の間に印刷層を備えた、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項12】
前記樹脂層の厚みが20μm以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項13】
基材フィルムの少なくとも片面に樹脂層を備えた構成であり、前記樹脂層がバインダー樹脂(A)およびクロミック化合物(B)を含み、基材フィルムの両面に接着層を介して、他の樹脂フィルムを貼合した積層体。
【請求項14】
樹脂層側に貼合する他の樹脂層がPMMA樹脂である、請求項13に記載の積層体。
【請求項15】
基材フィルム表面に接着層を介して貼合する他の樹脂層がABS樹脂である、請求項13に記載の積層体。
【請求項16】
成型用又は加飾用である、請求項1~12の何れかに記載の積層フィルム。
【請求項17】
成型用又は加飾用である、請求項13~15の何れかに記載の積層体。
【請求項18】
自動車部品の加飾用である、請求項16に記載の積層フィルム。
【請求項19】
自動車部品の加飾用である、請求項17に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関し、詳しくは、耐擦過性、繰返し折曲げ特性、および外部からの刺激により色調が変化する特性に優れた積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
工業化合物、光学化合物、電子部品化合物、電池用包装材など様々な分野で、基材フィルムの少なくとも片面に機能層を設けた積層フィルムが使用されている。積層フィルムの基材フィルムとしては、ポリエステルフィルムとして代表的なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、特に2軸延伸PETフィルムが、透明性、機械強度、耐熱性、柔軟性などに優れることから広く使用されている。
【0003】
近年、コンタクトレンズ、窓ガラス、液晶ディスプレイなどの光学用途を中心にサーモクロミック化合物やフォトクロミック化合物が調光材料として使用されている(例えば、特許文献1)。また、偽造防止対策として使用される例もある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-353801号公報
【特許文献2】特開平3-231394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述のクロミック化合物に関して、加飾用途への適用はほとんどない状況であった。さらに加飾用に適用する場合、活性エネルギー硬化型のハードコート層を備えるのが一般的であるため、ハードコート剤とクロミック化合物とを混ぜて硬化させた場合、クロミック化合物が紫外線照射により破壊される懸念があった。さらに、用途によっては複雑な曲面形状にも追従可能なことが必要とされる場合があった。
【0006】
そこで本発明は、適度な硬度と柔軟性を有しながら、実用的な繰返し折曲げ特性及び耐擦過性に優れ、それでいて外部からの刺激により、色調が変化する特性を有する、新たな積層フィルムを提案せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、特定構成の樹脂層が積層した構成を備えることにより、上記課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]~[19]を提供するものである。
【0008】
[1]基材フィルムの少なくとも片面に樹脂層を備えた構成であり、前記樹脂層がバインダー樹脂(A)およびクロミック化合物(B)を含み、前記樹脂層表面の光線透過率の極小値における波長の光線透過率の変化量が5%以上である積層フィルム。
[2]前記バインダー樹脂(A)がアクリル系樹脂である、上記[1]に記載の積層フィルム。
[3]前記クロミック化合物(B)がフォトクロミック化合物またはサーモクロミック化合物である、上記[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
[4]前記樹脂層中における、クロミック化合物(B)の含有量が0.1質量%~5.0質量%である、上記[1]~[3]の何れかに記載の積層フィルム。
[5]前記樹脂層がマイクロカプセル中にクロミック化合物(B)を含む樹脂組成物を硬化させてなる、上記[1]~[4]の何れかに記載の積層フィルム。
[6]前記アクリル系樹脂が活性エネルギー線硬化型である、上記[1]~[5]の何れかに記載の積層フィルム。
[7]前記基材フィルムがポリエステルフィルムである、上記[1]~[6]の何れかに記載の積層フィルム。
[8]前記基材フィルムがポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、上記[1]~[7]の何れかに記載の積層フィルム。
[9]前記基材フィルムが共重合ポリエステルフィルムである、上記[1]~[8]の何れかに記載の積層フィルム。
[10]繰り返し折り曲げ性評価(外曲げ、R=1.5の条件下)において、20万回以上折り曲げ可能である、上記[1]~[9]の何れかに記載の積層フィルム。
[11]前記基材フィルムと樹脂層の間に印刷層を備えた、上記[1]~[10]の何れかに記載の積層フィルム。
[12]前記樹脂層の厚みが20μm以下である、上記[1]~[11]の何れかに記載の積層フィルム。
[13]基材フィルムの少なくとも片面に樹脂層を備えた構成であり、前記樹脂層がバインダー樹脂(A)およびクロミック化合物(B)を含み、基材フィルムの両面に接着層を介して、他の樹脂フィルムを貼合した積層体。
[14]樹脂層側に貼合する他の樹脂層がPMMA樹脂である、上記[13]に記載の積層体。
[15]基材フィルム表面に接着層を介して貼合する他の樹脂層がABS樹脂である、上記[13]に記載の積層体
[16]成型用又は加飾用である、上記[1]~[12]の何れかに記載の積層フィルム。
[17]成型用又は加飾用である、上記[13]~[15]の何れかに記載の積層体。
[18]自動車部品の加飾用である、上記[1]~[12]の何れかに記載の積層フィルム。
[19]自動車部品の加飾用である、上記[13]~[15]の何れかに記載の積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、適度な硬度と柔軟性を有しながら、実用的な繰返し折曲げ特性及び耐擦過性に優れ、それでいて外部からの刺激により、色調が変化する特性を有する積層フィルムを提案することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明は次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0011】
<<積層フィルム>>
本発明の実施形態の一例に係る積層フィルム(以下、「本積層フィルム」と称することがある。)は、基材フィルム(以下、「本基材フィルム」と称することがある。)の少なくとも片面側表面に、硬化樹脂層を積層した構成を備えた積層フィルムである。
なお、本積層フィルムは上記構成を備えていれば他の層を備えていてもよい。
【0012】
<基材フィルム>
基材フィルムは、必要十分な剛性及び繰り返し折り曲げ性を得ることができるフィルムであれば、材質及び構成を限定するものではないが、適度な硬度と柔軟性を有しながら、実用的な繰返し折曲げ特性および耐擦過性に優れる点から、ポリエステルフィルムが好ましい。
【0013】
基材フィルムは、単層構成であっても、多層構成であってもよい。
基材フィルムが多層構成の場合、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよい。
【0014】
基材フィルムは、単層構成であっても、多層構成であっても、各層の主成分樹脂はポリエステルであるのが好ましい。このようなフィルムを「ポリエステルフィルム」と称する。
この際、「主成分樹脂」とは、基材フィルムを構成する樹脂のうち最も含有割合の多い樹脂を意味し、例えば本基材フィルムを構成する樹脂のうち50質量%以上、特に70質量%以上、中でも80質量%以上(100質量%を含む)を占める樹脂である。
なお、基材フィルムを構成する各層は、その主成分樹脂がポリエステルであれば、ポリエステル以外のその他の樹脂或いは樹脂以外の成分を含有していてもよい。
【0015】
(ポリエステル)
基材フィルムを構成する各層の主成分樹脂としてのポリエステル(以下、「本ポリエステル」と称することがある。)は、ホモポリエステルであっても、共重合ポリエステルであってもよい。
【0016】
本ポリエステルが、ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。
前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などを挙げることができる。
前記脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
【0017】
また、本ポリエステルが、共重合ポリエステルである場合、そのジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、セバシン酸などの1種または2種以上を挙げることができる。他方、グリコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1、4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の1種または2種以上を挙げることができる。
【0018】
ポリエステルの重合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物等公知の触媒を使用することができる。これらのうち、本発明では、アンチモン化合物、チタン化合物を触媒として用いて重合したポリエステルが好ましい。
代表的なポリエステルの具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンフラノエート(PEF)などを例示することができる。中でも、PET、PENが取扱い性の点で好ましく、PETが最も好ましい。
なお、基材フィルムを構成する各層の主成分樹脂が、例えばポリエチレンテレフタレートである場合、そのフィルムを「ポリエチレンテレフタレートフィルム」と称する。他の樹脂が主成分樹脂である場合も同様である。
【0019】
(その他樹脂成分)
基材フィルムを構成する各層が、ポリエステル以外のその他の樹脂を主成分樹脂とするものであってもよい。その場合の主成分樹脂としては、例えば、エポキシ、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステル系液晶ポリマー、トリアセチルセルロース、セルロース誘導体、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリシクロオレフィン類等を例示することができる。
【0020】
(粒子)
基材フィルムは、フィルム表面に易滑性を付与する目的及び各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を含有してもよい。
当該粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではない。例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等を挙げることができる。これらは1種単独で用いても、これらのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0021】
上記粒子の形状は、特に限定されるわけではない。例えば球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれであってもよい。
また、上記粒子の硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0022】
上記粒子の平均粒径は、5μm以下であるのが好ましく、3μm以下であるのがより好ましく、2.5μm以下であるのがさらに好ましい。5μm以下であると、本基材フィルムの表面粗度が粗くなりすぎず、後工程において各種の硬化組成物からなる硬化樹脂層を形成させる場合等に不具合が生じることがない。一方、上記粒子の平均粒径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましい。
【0023】
粒子の含有量は、基材フィルム中に5質量%以下であるのが好ましく、0.0003質量%以上3質量%以下であるのがより好ましく、0.01質量%以上2質量%以下であるのがさらに好ましい。
粒子の平均粒径が上記範囲内であれば、基材フィルムの表面粗度が粗過ぎることがなく、後工程において各種の硬化組成物からなる硬化樹脂層を形成させる場合等に生じる不具合を抑制することができる。
【0024】
基材フィルムに粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、ポリエステル等の原料樹脂を製造する任意の段階において添加することができる。基材フィルムがポリエステルである場合は、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのがよい。
【0025】
(その他の成分)
基材フィルムには、必要に応じて、他の成分として、例えば従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等を含有してもよい。
特に本積層フィルムの耐候性を確保するために紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
【0026】
(基材フィルムの厚み)
本基材フィルムの厚みは、必要十分な剛性と繰り返し折り曲げ性を得ることができる点から、例えば9μm以上125μm以下であるのが好ましく、さらに好ましくは12μm以上100μm以下であることがより好ましく、20μm以上75μm以下であるのがさらに好ましい。
【0027】
(製法)
基材フィルムは、例えば樹脂組成物を溶融製膜方法や溶液製膜方法により形成することができる。多層構造の場合は、共押出してもよい。
また、一軸延伸又は二軸延伸したものであってもよく、剛性の点から、二軸延伸フィルムが好ましい。
【0028】
一般的には、まず、公知の手法により、未乾燥または乾燥ポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0029】
上述のようにして得られたシートを二軸方向に延伸してフィルム化することがフィルムの強度の観点から好ましい。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを、好ましくは縦方向(機械方向)に70~145℃、好ましくは80~120℃で2.0~4.5倍、好ましくは3.0~4.0倍の延伸倍率にて延伸し、一軸延伸フィルムとする。
次いで、縦方向(機械方向)と直交する方向である横方向(幅方向)に、90~160℃で3.0~6.5倍、3.5~6.0倍の延伸倍率にて延伸を行い、二軸延伸フィルムとする。
引き続き、210~260℃で、緊張下又は30%以内の弛緩下にて10~600秒間熱処理(熱固定)を行うことが好ましい。そして、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に1~10%弛緩する方法が好ましい。
なお、フィルムの縦方向(機械方向)とは、フィルムの製造工程でフィルムが進行する方向、すなわちフィルムロールの巻き方向をいう。横方向(幅方向)とは、フィルム面に平行かつ長手方向と直交する方向をいい、すなわち、フィルムロール状としたときロールの中心軸と平行な方向である。
【0030】
(基材フィルムの特性)
基材フィルムの引張弾性率(JIS K 7161)は、必要十分な剛性と繰り返し折り曲げ性を得ることができる点から、2.0GPa以上であるのが好ましく、上限値としては、9.0GPa以下であることが好ましい。また、3.0GPa以上8.0GPa以下であることがより好ましく、3.0GPa以上7.0GPa以下であるのがさらに好ましい。
【0031】
<樹脂層>
本積層フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面側表面に、樹脂層を設ける。樹脂層はバインダー樹脂(A)およびクロミック化合物(B)を含む。樹脂層は樹脂組成物により形成されてもよい。
【0032】
<樹脂組成物>
樹脂層を形成するための樹脂組成物について、以下、説明する。
(A)バインダー樹脂
バインダー樹脂としては、クロミック材料とともに一般に用いられる樹脂であれば特に制限無く使用でき、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂が挙げられる。なかでも透明性等の観点から、アクリル系樹脂が好ましい。
【0033】
(アクリル系樹脂)
アクリル系樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーを含む重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体、さらにはアクリル系、メタアクリル系のモノマー以外の重合性モノマーとの共重合体のいずれでもよい。
上記した中では、アクリル系、メタクリル系のモノマーを含む重合性モノマーを重合してなる重合体が好ましく、重合性モノマーがアルキル(メタ)アクリル酸エステル類を含むことがより好ましい。また、塗布液を水系とした場合に、バインダー樹脂を溶解又は分散しやすくする観点から、重合性モノマーは、水酸基やカルボキシ基等の親水性基を有することが好ましい。したがって、アクリル樹脂は、アルキル(メタ)アクリル酸エステル類と、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー等の親水性基含有モノマーを含む重合性モノマーを重合してなる重合体も好ましい。
また、アクリル系樹脂は、例えば界面活性剤の存在下に重合性モノマーを重合した乳化重合体でもよい。
本発明におけるアクリル樹脂は、活性エネルギー線硬化型であることが好ましい。活性エネルギー線を照射することによって塗膜が硬化し、基材上に硬化塗膜を形成することができる。
【0034】
前記アルキル(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであってもよい。
これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、加熱処理によるオリゴマーの析出防止効果の観点から、好ましくは(メタ)アクリル酸であり、より好ましくはアクリル酸である。すなわち、(メタ)アクリル系重合体のアクリル構造は、(メタ)アクリル酸構造であることが好ましい。
なお、(メタ)アクリル系重合体はラジカル重合可能な二重結合を有するものであってもよい。
【0035】
樹脂層は、硬化性樹脂組成物Cにより形成されることが好ましく、樹脂組成物はウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
樹脂組成物の質量平均分子量は100以上であるのが好ましく、中でも200以上、その中でも400以上であるのがさらに好ましい。一方、上限値に関しては、500,000以下であるのが好ましく、中でも400,000以下、その中でも250,000以下であるのがさらに好ましい。
【0036】
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」という表現を用いた場合、「アクリル」と「メタクリル」の一方又は両方を意味するものとする。「(メタ)アクリレート」「(メタ)アクリロイル」についても同様である。また、「(ポリ)プロピレングリコール」は「プロピレングリコール」と「ポリプロピレングリコール」の一方又は両方を意味するものとする。「(ポリ)エチレングリコール」についても同様の意味をもつこととする。
【0037】
(ウレタン(メタ)アクリレート)
ウレタン(メタ)アクリレートは、イソシアネート系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるもの、乃至、イソシアネート系化合物、ポリオール系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるものである。ウレタン(メタ)アクリレートは単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
【0038】
イソシアネート系化合物としては、例えば、芳香族系ポリイソシアネート、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環式系ポリイソシアネート等のポリイソシアネート系化合物が挙げられ、これらの中ではジイソシアネート化合物が好ましい。また、イソシアネート系化合物としては、ジイソシアネート化合物をイソシアヌレート化したイソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物等が挙げられる。
【0039】
上記芳香族系ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0040】
上記脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられる。
【0041】
上記脂環式系ポリイソシアネートとしては、例えば、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0042】
これらの中でも、耐黄変性に優れる点で脂肪族系ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが好ましい。また、イソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物も好ましく、同様の観点から、脂肪族系ジイソシアネート、又は脂環式ジイソシアネートをイソシアヌレート化したイソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物も好ましく、これらの中でもイソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物がより好ましい。
イソシアネート系化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートは、水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、脂肪酸変性-グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を1個含有する単官能の水酸基含有(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイル-オキシプロピルメタクリレート等のエチレン性不飽和基を2個含有する2官能の水酸基含有(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を3個以上含有する3官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、反応性および汎用性に優れ、硬化塗膜の耐擦傷性とのバランスに優れる点で、エチレン性不飽和基を3個以下含有する(メタ)アクリレート系化合物が好ましく、また、中でもエチレン性不飽和基を2個以上含有する多官能(メタ)アクリレート系化合物がより好ましく、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0044】
上記ポリオール系化合物は、水酸基を2個以上有する化合物(但し、上記水酸基含有(メタ)アクリレートは除く。)であればよい。
上記ポリオール系化合物としては、例えば、脂肪族ポリオール、脂環族ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ポリイソプレン系ポリオール、(メタ)アクリル系ポリオール、ポリシロキサン系ポリオール等が挙げられる。
【0045】
上記脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-テトラメチレンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、ペンタエリスリトールジアクリレート、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の2個の水酸基を含有する脂肪族アルコール類、キシリトールやソルビトール等の糖アルコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の3個以上の水酸基を含有する脂肪族アルコール類等が挙げられる。
【0046】
上記脂環族ポリオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキシルジメタノール等のシクロヘキサンジオール類、水添ビスフェノールA等の水添ビスフェノール類、トリシクロデカンジメタノール等が挙げられる。
【0047】
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のアルキレン構造含有ポリエーテル系ポリオールや、これらポリアルキレングリコールのランダム或いはブロック共重合体が挙げられる。
【0048】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物、環状エステル(ラクトン)の開環重合物、多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物等が挙げられる。
【0049】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-テトラメチレンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4-シクロヘキサンジオール等)、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトール等)等が挙げられる。
【0050】
上記多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0051】
上記環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
【0052】
上記ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物、環状炭酸エステル(アルキレンカーボネート等)の開環重合物等が挙げられる。
【0053】
ポリカーボネート系ポリオールに使用される上記多価アルコールとしては、上記ポリエステル系ポリオールの説明中で例示の多価アルコール等が挙げられ、上記アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネート等が挙げられる。
【0054】
なお、ポリカーボネート系ポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
【0055】
上記ポリオレフィン系ポリオールとしては、飽和炭化水素骨格としてエチレン、プロピレン、ブテン等のホモポリマーまたはコポリマーを有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
【0056】
上記ポリブタジエン系ポリオールとしては、炭化水素骨格としてブタジエンの共重合体を有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
ポリブタジエン系ポリオールは、その構造中に含まれるエチレン性不飽和基の全部または一部が水素化された水添化ポリブタジエンポリオールであってもよい。
【0057】
上記ポリイソプレン系ポリオールとしては、炭化水素骨格としてイソプレンの共重合体を有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
ポリイソプレン系ポリオールは、その構造中に含まれるエチレン性不飽和基の全部または一部が水素化された水添化ポリイソプレンポリオールであってもよい。
【0058】
上記(メタ)アクリル系ポリオールとしては、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体の分子内にヒドロキシル基を少なくとも2つ有しているものが挙げられ、かかる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとの共重合体でもよい。
なお、上記水酸基含有(メタ)アクリレートは除かれる。
【0059】
上記ポリシロキサン系ポリオールとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンポリオールやメチルフェニルポリシロキサンポリオール等が挙げられる。
【0060】
上記ポリオール系化合物は1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0061】
上記イソシアネート系化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との付加反応、または、イソシアネート系化合物、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物、及びポリオールとの付加反応においては、反応系の残存イソシアネート基含有率が0.5質量%以下になる時点で反応を終了させることにより、ウレタン(メタ)アクリレートが得られる。
【0062】
ウレタン(メタ)アクリレートが、イソシアネート系化合物、ポリオール系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるものを含む場合、イソシアネート系化合物とポリオール系化合物を反応させて得られたイソシアネート基を有する反応生成物、又は該反応生成物とイソシアネート系化合物の混合物を、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物と反応させて得るとよい。
このような反応により得られるウレタン(メタ)アクリレートは、イソシアネート系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるものと、イソシアネート系化合物、ポリオール系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるものの混合物となってもよい。
【0063】
イソシアネート系化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との反応においては、反応を促進する目的で触媒を用いることも好ましく、かかる触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、トリメチル錫ヒドロキシド、テトラ-n-ブチル錫、ビスアセチルアセトナート亜鉛、ジルコニウムトリス(アセチルアセトネート)エチルアセトアセテート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等の有機金属化合物、オクテン酸錫、ヘキサン酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト、塩化第1錫、塩化第2錫、酢酸カリウム等の金属塩、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、N,N,N′,N′-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等のアミン系触媒、硝酸ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、硫化ビスマス等の他、ジブチルビスマスジラウレート、ジオクチルビスマスジラウレート等の有機ビスマス化合物や、2-エチルヘキサン酸ビスマス塩、ナフテン酸ビスマス塩、イソデカン酸ビスマス塩、ネオデカン酸ビスマス塩、ラウリル酸ビスマス塩、マレイン酸ビスマス塩、ステアリン酸ビスマス塩、オレイン酸ビスマス塩、リノール酸ビスマス塩、酢酸ビスマス塩、ビスマスリビスネオデカノエート、ジサリチル酸ビスマス塩、ジ没食子酸ビスマス塩等の有機酸ビスマス塩等のビスマス系触媒等が挙げられ、中でも、ジブチル錫ジラウレート、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセンが好適である。これらを単独、あるいは2種以上併せて用いることができる。
【0064】
またイソシアネート系化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との反応においては、イソシアネート基に対して反応する官能基を有しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等の有機溶剤を用いることができる。また、適宜重合禁止剤などを使用してもよい。
【0065】
また、ウレタン(メタ)アクリレートは、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物及びイソシアネート系化合物、または、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物、イソシアネート系化合物及びポリオール系化合物の反応生成物であるが、水酸基を有する(メタ)アクリレート及び水酸基を有さない(メタ)アクリレートの混合物とイソシアネート系化合物とを反応することで生成してもよい。あるいは、水酸基を有する(メタ)アクリレート及び水酸基を有さない(メタ)アクリレートの混合物と、イソシアネート系化合物と、ポリオール系化合物とを反応することで生成してもよい。この際、水酸基を有さない(メタ)アクリレートは、未反応物として残存するが、そのまま硬化性樹脂組成物に含有させて使用するとよい。
また、以上説明したイソシアネート系化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との反応においては、上記のとおりイソシアネート系化合物の一部又は全部が、イソシアネート系化合物とポリオ―ル系化合物の反応生成物であってもよい。
【0066】
ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量は、例えば3,000以上100,000以下であり、5,000以上70,000以下が好ましく、8,000以上30,000以下がより好ましい。前記範囲を満足する硬化樹脂層を積層フィルムなどの積層体構成中に形成することで、良好なフィルム平面性を確保することができる。
【0067】
ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基当量は、例えば120g/eq以上250g/eq以下、好ましくは135g/eq以上220g/eq以下、より好ましくは150g/eq以上200g/eq以下である。ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基当量が上記範囲内であると、架橋点の調整により、適度な架橋密度を有する硬化樹脂層の形成が可能となり、硬化樹脂層を積層フィルムなどの積層体構成中に形成することで高硬度性を付与できる。
【0068】
樹脂組成物におけるウレタン(メタ)アクリレートの比率は、固形分全量に対して、50質量%以上であるとよく、好ましくは60質量%以上である。
【0069】
本発明では、上記ウレタン(メタ)アクリレートを単独で、または2種以上を混合し、重合してベースポリマーを調製することが好ましい。ベースポリマーは後述する溶媒等に溶解又は分散させて形成することが好ましい。
【0070】
(溶媒)
樹脂組成物は、溶媒により希釈されることで塗布液とするとよい。樹脂組成物は、液状の塗布液として溶媒に溶解させてもよいが、溶媒中に分散させてもよい。
溶媒としては有機溶媒が好ましい。有機溶媒の具体例として、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、アニソール、フェネトール等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。これらの有機溶媒のうち、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒が好ましく使用される。
【0071】
有機溶媒の使用量には特に制限はなく、調製される樹脂組成物の塗布性、液の粘度及び表面張力、固形分の相溶性等を考慮して適宜決定される。樹脂組成物は、前述の溶媒を用いて、好ましくは固形分濃度が15~80質量%、より好ましくは20~70質量%の塗布液として調製される。なお、樹脂組成物における「固形分」とは、揮発性成分である溶媒を除いた成分を意味するものであり、固体の成分のみならず、半固形や粘稠な液状物のものをも含むものとする。
【0072】
(その他成分)
樹脂組成物には、上記ウレタン(メタ)アクリレート以外に、(メタ)アクリレート等の光重合性化合物を含有していてもよい。
また、樹脂組成物Cには、必要に応じて、本発明の主旨を損なわない範囲内で適宜、種々の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、光開始剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、レベリング剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、消泡剤などを併用してもよい。
ここで、レベリング剤としては、例えば、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤及びアクリル系レベリング剤等が挙げられる。なかでも、樹脂層の表面に水や油をはじく機能、指紋など汚れの付着を防ぐといった機能も付与できる。その場合、レベリング剤としては、フッ素系レベリング剤が好ましい。
【0073】
(光開始剤)
樹脂組成物が光硬化性樹脂組成物の場合、硬化性を向上させるため、光開始剤を含有することが好ましい。光開始剤は、光重合開始剤であり、公知のものを使用することができる。光重合開始剤としては例えば、光ラジカル発生剤、光酸発生剤等が挙げられる。
【0074】
樹脂組成物に用いることのできる光重合開始剤のうち、光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)651」、IGM RESINS製]、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)184」、IGM RESINS製]、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)1173」、IGM RESINS製]、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)127、IGM RESINS製」]、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)2959」、IGM RESINS製]、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)907」、IGM RESINS製]、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン等のアルキルフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)TPO」、IGM RESINS製]、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)819」、IGM RESINS製]等のホスフィンオキシド類;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン等のアントラキノン類;ベンゾフェノン及びその各種誘導体;ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸エチル等のギ酸誘導体等が挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
これらの光ラジカル発生剤の中でも、硬化物の耐光性の観点から、好ましいのはアルキルフェノン類、ホスフィンオキシド類、ギ酸誘導体であり、更に好ましいのは、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ベンゾイルギ酸メチルであり、特に好ましいのは、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オンである。
【0076】
光酸発生剤としては公知のものが使用可能であるが、中でもジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩が硬化性、酸発生効率等の観点から好ましい。具体例を挙げると、ジ(アルキル置換)フェニルヨードニウムのアニオン塩(具体的にはPF塩、SbF塩、テトラキス(パーフルオロフェニル)ボレート塩等)が例示できる。
(アルキル置換)フェニルヨードニウムのアニオン塩の具体例としては、ジアルキルフェニルヨードニウムのPF塩[商品名「Omniad(登録商標)250」、IGM RESINS製]が特に好ましい。これらの光酸発生剤は1種のみで用いても2種以上を組み合わせてもよい。
【0077】
光開始剤の含有量は、樹脂組成物C中の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の合計100質量部に対して、硬化性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量部以上であり、より好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは1質量部以上である。一方、樹脂組成物を溶液としたときの塗布液の安定性を維持する観点及び硬化塗膜の平面性の観点から、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは7質量部以下であり、特に好ましくは5質量部以下である。
【0078】
(樹脂組成物の粘度)
樹脂層を形成するための樹脂組成物Cは、塗布性を良好とするためにE型粘度計で測定した25℃における粘度が10~60mPa・sであるのが好ましく、中でも30mPa・s以下、その中でも20mPa・s以下、その中でも15mPa・s以下、その中でも12mPa・s以下であるのがさらに好ましい。
【0079】
(B)クロミック化合物
クロミック化合物とは、外部刺激によって光物性(例えば、透過率、色彩、色調、蛍光強度、屈折率、反射率)が可逆的又は不可逆的に変化する化合物である。外部刺激としては、例えば、温度、光、水、pH、圧力、電気による刺激が挙げられる。
【0080】
クロミック化合物としては、例えば、サーモクロミック化合物、フォトクロミック化合物、ハイドロクロミック化合物、pH応答性化合物(例えば、ハロクロミック化合物又はアシディクロミック化合物)、ピエゾクロミック化合物及びエレクトロクロミック化合物を使用することができる。
【0081】
各々の化合物としては、公知の種々の化合物を使用することができる。例えば、サーモクロミック化合物の一例としては、サクラクレパス社のTCカラー(可逆)、松井色素化学工業所のクロミカラー(可逆)、及び、松井色素化学工業所のサーモロック(準不可逆)が挙げられる。
フォトクロミック化合物の一例としては、松井色素化学工業所のフォトピアカラー(可逆)、及び、松井色素化学工業所のフォトロック(不可逆)、記録材総合研究所のサーモカラー(可逆)などが挙げられる。
これらは一例であり、不可逆性タイプ、熱積算タイプ、準可逆性タイプ、可逆性タイプ等の種々のクロミック化合物が目的に応じて選択できる。例えば、サーモクロミック化合物において、不可逆性タイプとしては、例えば、金属塩類を用いた無機系の化合物、及び、感熱記録方式を用いた有機系の化合物が挙げられる。また、可逆性タイプとしては、例えば、金属錯塩類を用いた無機系の化合物、縮合芳香環置換エチレン誘導体を用いた有機系の化合物、液晶(例えば、コレステリック液晶)を用いた有機系の化合物、及び、メタモカラー(登録商標)を用いた有機系の化合物が挙げられる。
【0082】
サーモクロミック化合物の一例として、ロイコ染料を例に挙げて説明する。
ロイコ染料は、顕色剤との酸化還元反応により不可逆的に化学構造が変化して発色する染料のことであり、それ自体は無色又は淡色の染料前駆体である。ロイコ染料は、顕色剤に対して電子供与体として作用して反応するものと電子受容体として作用して反応するものがあり、いずれでも構わないが、電子供与体として作用して反応するものが好ましい。
ロイコ染料としては、トリフェニルメタンフタリド系ロイコ化合物、トリアリルメタン系ロイコ化合物、フルオラン系ロイコ化合物、フェノチジアン系ロイコ化合物、チオフルオラン系ロイコ化合物、キサンテン系ロイコ化合物、インドフタリル系ロイコ化合物、スピロピラン系ロイコ化合物、アザフタリド系ロイコ化合物、クロメノピラゾール系ロイコ化合物、メチン系ロイコ化合物、ローダミンアニリノラクタム系ロイコ化合物、ローダミンラクタム系ロイコ化合物、キナゾリン系ロイコ化合物、ジアザキサンテン系ロイコ化合物、ビスラクトン系ロイコ化合物などが挙げられる。なかでも、発色性の点から、トリフェニルメタンフタリド系ロイコ化合物、フルオラン系ロイコ化合物、又はアザフタリド系ロイコ化合物が好ましい。ロイコ染料は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
フルオランベースのサーモクロミック化合物としては、以下の一般式(I)で示される化合物が挙げられる。
【化1】
【0084】
式(I)中、Xは炭素原子または窒素原子であり、R、Rはそれぞれ、置換または非置換の芳香族基、置換または非置換の複素環を有する基またはフルオラン基を表す。RとRがフルオラン骨格の一部を形成してもよい。Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換のアシル基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、アリール基、またはアミノ基を表す。これらのうち、Rは、水素原子であることが好ましい。
また、Xが窒素の場合は、R及びRは、それぞれ置換基を有していてもよい芳香族基であることが好ましく、Xが炭素の場合は、R及びRはそれぞれ、置換または非置換の複素環を有する基であることが好ましい。R及びRは互いに同一でも異なってもよいが、製造の容易さを考慮すると、RとRは同一であることが好ましい。
また、Xが炭素の場合は、RとRがフルオラン骨格の一部を形成することが好ましい。
例えば、フルオランベースのサーモクロミック化合物としては以下が例示される。
【0085】
【表1】
【0086】
(温度調整剤)
温度調整剤は、融点を有する物質であり、融点より低い温度では固体であるが、融点まで温度が上昇すると融解して液体になる。融解した温度調整剤は、ロイコ染料の溶媒として機能するようになり、ロイコ染料が顕色剤表面まで移動して発色する。
例えば、脂肪族アルコール、脂肪酸アルキルエステルが例示される。
【0087】
脂肪族アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロピルアルコール、1-ブチルアルコール、1-ペンチルアルコール、1-ヘキシルアルコールなどが例示される。
脂肪酸アルキルエステルとしては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸イソプロピル、ギ酸イソプロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸イソプロピル、吉草酸イソプロピル、カプリル酸イソプロピル、ラウリン酸メチル 、ラウリン酸エチル、ラウリン酸プロピルなどが例示される。
【0088】
(顕色剤)
顕色剤は、無機化合物であることが好ましい。顕色剤の具体例としては、シリカ、アルミナ、ゼオライトが挙げられる。
顕色剤の配合量に関しては、ロイコ染料と反応して発色させるのに必要な量であればよく、ロイコ染料1質量部に対して、10~100質量部が好ましく、さらに好ましくは30~200質量部、その中でも特に50~150質量部が好ましい。
【0089】
サーモクロミック化合物は、樹脂層の性能を損なわずに、所望する色に変色させる観点から、通常、樹脂100質量部に対して、0.1~5.0質量部、好ましくは0.5~3.5質量部で添加するのがよい。
【0090】
サーモクロミック化合物としては、-5℃~65℃の範囲で色変化するものが一般的である。本発明においては、1種類でもよいし、変色温度及び色調の異なる2種類以上のサーモクロミック化合物を併用してもよい。
【0091】
(マイクロカプセル)
本発明において、活性エネルギー線照射に伴うクロミック化合物の劣化防止の観点から、クロミック化合物、温度調整剤、顕色剤を内包して、マイクロカプセル化することが好ましい。マイクロカプセル化に関しては従来から公知の手法を用いることができる。
マイクロカプセルの皮膜となる熱硬化性樹脂としては、例えばメラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シクログアナミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などが例示できる。
【0092】
(樹脂層の厚み)
樹脂層の厚みは、20.0μm以下であるのが好ましく、15.0μm以下であるのがより好ましく、10.0μm以下であるのがさらに好ましい。
樹脂層の厚みが上記上限値以下であると積層フィルムなどの樹脂層を有する積層体構成において、カールや熱シワを防止でき、良好な平面性を確保できる。
一方、樹脂層の厚みの下限値については、特に制限はないが、基材フィルムを適切に保護できる点から1.0μm以上であることが好ましい。
【0093】
樹脂層表面の波長380nmの光線透過率が3.0%以下であることが好ましい。光線透過率が3.0%以下であると、貼り合わせる相手方部材が紫外線により劣化することを防止できる点で有利である。以上の観点から、波長380nmの光線透過率は2.8%以下がより好ましい。
【0094】
また、樹脂層表面の波長500~600nmの最大反射率差が1.5%以下であることが好ましい。最大反射率差(光線透過率の振れ幅)が1.5%以下であると干渉縞が見えにくくなる点で有利である。以上の観点から、最大反射率差は1.0%以下がより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましく、その中でも特に0.3%以下がよい。
なお、本発明における最大反射率差とは、波長500~600nmにおける反射率の最大値と最小値の差をいう。
【0095】
<各層の表面状態>
樹脂層の表面は、凹凸であっても平坦であってもよいが、外観(表面光沢)の観点から、平坦であるのが好ましい。一方、防眩性付与の観点からは凹凸であるのがよい。要求特性に応じて、任意に選択することができる。
【0096】
<<積層フィルムの製造方法>>
樹脂層は樹脂組成物を硬化させて形成することができる。すなわち、樹脂層は、例えば質量平均分子量が1,000~500,000の範囲である硬化性樹脂組成物を基材フィルム上に塗布し硬化させて形成する。
より具体的には、基材フィルムの少なくとも片面側表面に樹脂組成物を塗布し硬化させて樹脂層を形成することで、本積層フィルムを製造することができる。なお、積層フィルムの製造方法はかかる方法に何ら限定されるものではない。
【0097】
<樹脂層の形成方法>
上記のとおり、樹脂層は、樹脂組成物を基材フィルム表面に塗布し、乾燥して塗布層を形成し、その塗布層を硬化することで得ることができる。
樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、ナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファロールコート、グラビアコート、キスロールコート、キャストコート、スプレーコート、カーテンコート、カレンダコート、押出コート等従来公知の塗布方法を用いることができる。
乾燥条件は、特に限定されず、室温付近で行ってもよいし、加熱により行ってもよく、例えば25~120℃程度、好ましくは50~100℃、より好ましくは60~90℃である。また、乾燥時間は、溶媒が十分に揮発できる限り特に限定されず、例えば10秒~30分程度、好ましくは15秒~10分程度である。
【0098】
樹脂組成物の硬化方法は、樹脂組成物の硬化メカニズムに応じて適宜選択すればよく、樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物であれば加熱することで硬化させればよい。また、光硬化性樹脂組成物であればエネルギー線を照射して硬化させればよい。
本発明の積層フィルムにおいて、光硬化性樹脂組成物を硬化させる際に用いることのできる活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線及び可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち硬化性と樹脂劣化防止の観点から好ましいのは紫外線及び電子線である。
【0099】
樹脂組成物の硬化方法は、成形時間および生産性の観点、及び加熱による各部材の熱収縮及び熱劣化を防止できる観点などから、エネルギー線照射により硬化することが好ましい。エネルギー線の照射は、いずれの面側から行ってもよく、基材フィルム側から行ってもよいし、基材フィルムの反対側から行ってもよい。
本発明の積層フィルムを製造する際、樹脂組成物を紫外線照射により硬化させる場合には、種々の紫外線照射装置を用いることができ、その光源としてはキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LED-UVランプ等を使用することができる。紫外線の照射量(単位はmJ/cm)は、通常50~3,000mJ/cmであり、硬化性樹脂組成物の硬化性、硬化物(硬化膜)の可撓性等の観点から好ましくは100~1,000mJ/cmであり、積層フィルムの平面性の観点から、より好ましくは100~500mJ/cmの範囲であり、各硬化工程で必要とされる(メタ)アクリロイル基の反応率に応じて適宜決定される。
特に厳しい環境下で使用する場合には、紫外線の照射量を多くして、当該樹脂組成物の硬化物の表面硬度を調整することが好ましい。
【0100】
また、本発明の積層フィルムを製造する際、樹脂組成物を電子線照射で硬化させる場合は、種々の電子線照射装置を使用することができる。電子線の照射量(Mrad)は、通常、0.5~20Mradであり、樹脂組成物の硬化性、硬化物の可撓性、基材の損傷防止等の観点から好ましくは1~15Mradの範囲であるが、各硬化工程で必要とされる(メタ)アクリロイル基の反応率に応じて適宜決定される。
【0101】
<<積層フィルムの物性>>
(鉛筆硬度)
JIS K5600-5-4に準じて、樹脂層の鉛筆硬度はH以上、好ましくは2H以上がよい。
【0102】
(繰り返し折り曲げ性)
上記構成を備えた本積層フィルムは、本基材フィルムの表面に、樹脂層を設け、しかも、樹脂層の構成を特定範囲に設計することにより、実用的な繰り返し折り曲げ特性をさらに高めることができる。具体的には、本積層フィルムは、繰り返し折り曲げ性評価(内曲げ、R=1.5の条件下)において20万回以上折り曲げても、クラックが生じない耐久性を得ることができる。
【0103】
(変色性)
分光光度計(日立ハイテク社製、U-3900H)を用いて、380nm~780nmの波長領域における、室温と35℃まで昇温した際の光線透過率を測定した場合に、最大吸収波長における光線透過率の変化量が5%以上であり、好ましくは10%以上である。
当該範囲を満足することにより、例えば、クロミック化合物入り樹脂層/印刷層/基材フィルムの構成を自動車部品の加飾用途に適用した場合、有色から無色への変色において、下地の印刷層の図柄が認識できるなどの意匠性を付与することが可能となる。
【0104】
<<積層フィルムの特徴及び用途>>
本積層フィルムは、高度なレベルで表面硬度と繰り返し折り曲げ性(屈曲耐久性、内曲げ、R=1.0の条件下、20万回屈曲できること)との両立が可能である。樹脂層の組成を調整することにより、本積層フィルム屈曲時に加わる、樹脂層内への応力伝搬を低減することが可能になるためと推察される。
さらにクロミック化合物を含有することで、所定の温度領域で所望する変色が可能となる。
【0105】
また、上記のような樹脂層を用いることで、使用する基材フィルムの引張弾性率を極端に大きくする必要がない。
従来、表面硬度の高い表面層を有する積層フィルムにおいて、目標とする表面硬度を所望するレベル(鉛筆硬度で2H以上)に設計する際、必要に応じて、使用している基材フィルムを構成する原料の構造設計から見直して、引張弾性率をさらに大きくしなければならなかった。
これに対し、上記のような樹脂層の構成を用いれば、市場に流通している汎用の基材フィルムを適宜選択することも可能であり、基材フィルムの選択の面で自由度が増す利点がある。
【0106】
本積層フィルムは、優れた耐擦過性と、実用的な繰り返し折り曲げ性および変色性を備えており、成型用・加飾用などの用途に用いることができる。例えば、自動車内装の加飾用として好適に用いることができる。但し、本積層フィルムの用途をこれらの用途に限定するものではない。
【0107】
[積層体]
本発明の積層体は、基材フィルムの少なくとも片面に樹脂層を備えた構成であり、前記樹脂層がバインダー樹脂(A)およびクロミック化合物(B)を含み、基材フィルムの両面に接着層を介して、他の樹脂フィルムを貼合した構成をとる。ここで、基材フィルム、および樹脂層に関しては、上述の通りである。
【0108】
(接着層)
本発明の積層体における接着層は、粘着剤、粘着シート、接着剤等により形成されるが、優れた接着性の観点からは、接着剤が好適に用いられる。前記接着剤としては、例えば、ポリオレフィン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤等を用いて形成することができる。
【0109】
(他の樹脂フィルム)
本発明の積層体における他の樹脂フィルムについては、特に制限はなく、用途に応じて、適宜決定される。具体的には、アクリル樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリオレフィン系フィルム等が挙げられる。これらのうち、樹脂層側に貼付される他の樹脂フィルムとしては、アクリル樹脂フィルムが好ましく、中でもポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA樹脂)が射出成型時の金型への追従性の点で好ましい。また、他の樹脂フィルムとしては、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂)も射出成型時の金型への追従性の点で好ましい。
【0110】
(層構成)
本発明の積層体における層構成としては、他の樹脂フィルムが樹脂層側に貼付される態様では、例えば、PMMA樹脂フィルム/接着層/樹脂層/基材フィルムの層構成が挙げられる。また、成型部材であるABS樹脂を基材フィルムの樹脂層とは反対側に設ける積層体も好ましく、具体的には、PMMA樹脂フィルム/接着層/樹脂層/基材フィルム/接着層/ABS樹脂層の層構成が好適に挙げられる。
【0111】
<<語句の説明>>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、本明細書において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例0112】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
本発明で用いた測定法及び評価方法は次のとおりである。
【0113】
(1)樹脂層の膜厚測定方法
各積層フィルムを、ガラス製スライドガラス上に東亜合成社製「アロンアルファシリーズ」を用いて接着し、SAICS(サイカス)用サンプルとした。得られたSAICS用サンプルを、サイカス(ダイプラ・ウィンテス社製DN-01型)にセットして、あらかじめダイヤ刃先で、300μm幅、深さ1μmの切れ込みを入れた。切れ込みには、V角寸法80°、スクイ角5°、ニゲ角5°の単結晶ダイヤモンド刃を用いて行った。測定はあらかじめ300μm幅の切れ込みを入れたサンプルに、幅300μmのボラゾン切刃をセットして、任意の深さ、水平速度1μm/s、垂直速度0.5μm/sで、各硬化樹脂層の膜厚を測定した。測定には、刃幅寸法0.3mm、スクイ角20°、ニゲ角10°の窒化ホウ素製刃を使用した。垂直変位位置および切削力から化合物強度を測定し各層の厚みを確認した。
【0114】
(2)鉛筆硬度
JIS K5600-5-4に準じて、樹脂層の鉛筆硬度を測定した。
【0115】
(3)屈曲耐久性
折り曲げ試験機(ユアサシステム機器社製、DLDMLH-FS)を用いて、積層フィルムの樹脂層が内側表面となるように(表2中ではOut-foldと記載)最小半径R=1.5(3mm)で試験を行い、該内側表面における樹脂層のクラック発生の有無を目視確認した。そして繰り返し折り曲げ回数を測定し、その結果をもとに下記判定基準により判定した。また、積層フィルムの樹脂層が外側表面となるように(表2中ではIn-foldと記載)最小半径R=2.0(4mm)で同様の試験を行った。
(判定基準)
◎:繰り返し折り曲げ回数が20万回可能
○:繰り返し折り曲げ回数が10万回超~20万回未満
△:繰り返し折り曲げ回数が1000回超~10万回
×:繰り返し折り曲げ回数が1000回以下
【0116】
(4)光線透過率(変色前後)
分光光度計(日立ハイテク社製、U-3900H)を用いて、380nm~780nm波長領域における、室温と35℃まで昇温した際の光線透過率を測定し、最大吸収波長における光線透過率の変化量を求めた。
【0117】
実施例及び比較例において使用した各種化合物は、以下のようにして準備したものである。
【0118】
<ポリエステル原料>
<ポリエステル(I)>
ジメチルテレフタレート100モル%、エチレングリコール100モル%、および酢酸カルシウム一水塩0.07質量部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノールを留去させエステル交換反応を行い、反応開始後、約4時間半を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次に燐酸0.04質量部および三酸化アンチモン0.035質量部を添加し、常法に従って重合した。すなわち、反応温度を徐々に上げて、最終的に280℃とし、一方、圧力は徐々に減じて、最終的に0.05mmHgとした。4時間後、反応を終了し、常法に従い、チップ化してポリエステル(I)を得た。得られた極限粘度は0.63であった。
<ポリエステル(B)>
上記ポリエステル(I)に平均粒径2μmのシリカ粒子を加え、シリカ粒子を0.2質量%含有するポリエステル(II)を得た。極限粘度は0.65であった。
【0119】
<基材フィルム>
<基材フィルムPET>
ポリエステル(I)、(II)をそれぞれ90質量%、10質量%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(I)のみを中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1/8/1の吐出量(質量比))の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、テンターに導き、横方向に110℃で4.3倍延伸し、235℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、厚さ50μmのポリエステルフィルム(基材フィルム)を得た。
【0120】
<樹脂組成物>
<製造例1:ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A-1)>
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体を主成分とするイソシアヌレート化合物(商品名:コロネートHX、東ソー(株)製、イソシアネート基含有量:21.0%、(a1-1))を29.3質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(水酸基価120mgKOH/g、(a1-2))を70.7質量部(a1-1/a1-2=0.25/0.75(mol/mol))、重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチルクレゾール0.06質量部、反応触媒としてジブチルスズジラウレート0.02質量部を仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.3%以下となった時点で反応を終了し、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物70質量部と、ペンタエリスリトールテトラアクリレート30質量部の混合物(A-1)(アクリロイル基当量134g/eq、重量平均分子量10,000)を得た。
【0121】
<製造例2:ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A-2)>
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート37.7質量部、ポリテトラメチレングリコールジオール24.5質量部(水酸基価175mgKOH/g;水酸基価から計算される分子量641)、ポリエステルトリオール14.1質量部(水酸基価250mgKOH/g;水酸基価から計算される分子量673)、反応触媒としてジブチルスズジラウレート0.02質量部を仕込み、80℃で反応させた。残存イソシアネート基が11%以下となった時点で、2-ヒドロキシエチルアクリレート23.7質量部、重合禁止剤としてメトキシフェノール0.04質量部をさらに仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.3%以下となった時点で反応を終了し、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A-2)(アクリロイル基当量493g/eq、重量平均分子量は3,400)を得た。
【0122】
<アクリレート(a)>
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A-1)90質量部とウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A-2)10質量部を仕込み、60℃で均一になるまで撹拌した。
【0123】
<アクリレート(b)>
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(b1-1)6.6質量部と水酸基価50mgKOH/gのジペンタエリスリトールペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(b1-2)94質量部(b1-1/b1-2=0.28/0.72(mol/mol))、重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチルクレゾール0.6質量部、反応触媒としてジブチルスズジラウレート0.05質量部を仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.3%となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系組成物(b)(アクリロイル基当量107g/eq;重量平均分子量は1,500)を得た。
【0124】
アクリレート(a)90質量部に、サーモクロミック(thermal color 35℃、青色)10質量部、光重合開始剤(IGM Resins B.V製 Omnirad127)5質量部、メチルエチルケトン233質量部を加えて樹脂組成物を調製した。
【0125】
[実施例1]
上記基材フィルムPETに上記樹脂組成物をバーコーター(♯20)で塗布厚み(乾燥後)が12μmになるように塗布した。90℃で1min加熱して乾燥させ、樹脂層(硬化前)を得た。積算光量で400mJ/cmの紫外線照射を窒素雰囲気下で施して樹脂層を硬化させ、基材フィルムPET/樹脂層の積層構成からなる積層フィルムを得た。上記方法にて評価した結果を表1に示す。
【0126】
[実施例2]
実施例1において、樹脂組成物を三菱ケミカル社製 紫光「UV1700B」に変更する以外は、実施例1と同様にして製造し、積層フィルムを得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0127】
[比較例1]
実施例1において、サーモクロミックを添加しない以外は、実施例1と同様にして製造し、積層フィルムを得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0128】
<評価結果>
上記実施例及び比較例で得られた、各積層フィルムの特性を下記表1に示す。
【0129】
【表2】
【0130】
<考察>
上記実施例及び比較例の結果から、基材フィルムの表面に、樹脂層が積層した構成を備えており、前記樹脂層がバインダー樹脂(A)およびクロミック化合物(B)を含むことにより、柔軟性を有しながらも、高度なレベルで表面硬度(H以上)と、繰り返し折り曲げ性(外曲げ、R=1.5の条件下、20万回屈曲できること)との両立が可能であることが分かった。
これに対し、比較例1に示すように樹脂層を設けるだけでは、所望するハードコート性、繰り返し折り曲げ性およびクロミック特性(変色性)を両立させるのが困難であることも分かった。また、付随的な効果として、使用しているクロミック化合物がマイクロカプセル状であるためか、クロミック化合物を含有しない場合と比較して、表面硬度がより高く、それでいて、より厳しい条件下で折り曲げ可能であることがわかった。
【0131】
なお、樹脂層の構成化合物および厚み比率を特定範囲にすることにより、使用する基材フィルムの引張弾性率を極端に大きくする必要がなく、カスタマイズした基材フィルムを使用する必要がないことも分かった。
従来、表面硬度の高い表面層を有する積層フィルムを設計する際、必要に応じて、使用している基材フィルムを構成する原料の構造設計から見直して、引張弾性率をさらに大きくしなければならなかった。
これに対し、前記硬化樹脂層を特定の構成とすれば、市場に流通している汎用の基材フィルムを適宜選択することも可能であり、基材フィルム選択の面で自由度が増す利点が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の積層フィルムは高度なレベルにおいて、表面硬度(H以上)及び繰り返し折り曲げ性(外曲げ、R=1.5の条件下、20万回屈曲できること)が良好であり、それでいて、クロミック特性(変色性)良好であり、各種基材フィルムに用いることができる。加飾用途、光学用途、包装用途など、様々な用途で使用可能である。
特に自動車部品に用いる加飾用途に好適である。