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特開2024-141005ガス吸着システム及びガス吸着システムの管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141005
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ガス吸着システム及びガス吸着システムの管理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B01D53/04 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052422
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】雀部 国男
(72)【発明者】
【氏名】河野 浩幸
【テーマコード(参考)】
4D012
【Fターム(参考)】
4D012BA02
4D012CA13
4D012CB17
4D012CE02
4D012CF08
4D012CF10
4D012CG01
(57)【要約】
【課題】対象ガスを吸着する吸着剤の劣化を簡素且つ正確に検知する。
【解決手段】ガス除害システム12は、対象ガスが流れる容器14と、容器14の内部に配置され対象ガスの吸着成分が吸着される吸着剤16と、容器14の外表面に設けられ吸着剤16の温度を検知する1つ又は複数の熱電対18と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象ガスが流れる容器と、
前記容器の内部に配置され前記対象ガスの吸着成分が吸着される吸着剤と、
前記容器の外表面に設けられ前記吸着剤の温度を検知する1つ又は複数の温度センサと、
を有するガス吸着システム。
【請求項2】
複数の前記温度センサが、前記容器の外表面で前記対象ガスの流れ方向に離隔して配置されている、請求項1に記載のガス吸着システム。
【請求項3】
前記容器よりも前記対象ガスの流れ方向の下流側に配置される第二容器と、
前記第二容器の内部に配置され前記対象ガスの吸着成分が吸着される第二吸着剤と、
を有する請求項1に記載のガス吸着システム。
【請求項4】
前記第二吸着剤を加熱する下流側加熱部材、を有する請求項3に記載のガス吸着システム。
【請求項5】
前記吸着剤を加熱する上流側加熱部材、を有する請求項1に記載のガス吸着システム。
【請求項6】
前記吸着剤は、前記吸着成分としてオゾンガスを吸着する吸着剤である、請求項1に記載のガス吸着システム。
【請求項7】
対象ガスが流れる容器と、
前記容器の内部に配置され前記対象ガスの吸着成分が吸着される吸着剤と、
前記容器の外表面に設けられ前記吸着剤の温度を検知する1つ又は複数の温度センサと、
を有するガス吸着システムに対し、
前記温度センサによる検知温度に基づいて前記吸着剤の劣化の程度を判断する、ガス吸着システムの管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス吸着システム及びガス吸着システムの管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程で排出されるガスにはオゾンガスが含まれているため、この排出ガスからオゾンガスを除去(いわゆる除害)して、外部に排気する必要がある。
【0003】
特許文献1には、有害ガスが導入される第一の除害塔に充填された除害剤の破過を、第二の除害塔に設けられた検知剤の変色をもって検知する、有害ガスの除害方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、シリンダーキャビネットから排出された排ガスの除害処理を行う除害塔内に、除害剤温度を測定する複数の温度計をガス流れ方向に適当な間隔で複数本設けたガス除害装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-253098号公報
【特許文献2】特開2001-353423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、除害剤の破過を、第二の除害塔に設けられた検知剤の変色をもって検知しているが、検知剤の変色の検知により破過を正確に検知することは難しい場合がある。
【0007】
特許文献2に記載の技術では、除害塔内の温度を直接的に温度計によって測定しているため、構成が複雑になる。
【0008】
本開示は、ガス吸着システムにおいて、対象ガスを吸着する吸着剤の劣化を簡素且つ正確に検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のガス吸着システムは、対象ガスが流れる容器と、前記容器の内部に配置され前記対象ガスの吸着成分が吸着される吸着剤と、前記容器の外表面に設けられ前記吸着剤の温度を検知する1つ又は複数の温度センサと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ガス吸着システムにおいて、対象ガスを吸着する吸着剤の劣化を簡素且つ正確に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は第一実施形態のガス除害システムを示す構成図である。
図2図2は第一実施形態のガス除害システムの前段容器を拡大して示す構成図である。
図3図3は第一実施形態のガス除害システムの稼働時間と前段容器の外表面温度の関係を示すグラフである。
図4図4は第二実施形態のガス除害システムを示す構成図である。
図5図5は第三実施形態のガス除害システムを示す構成図である。
図6図6は半導体製造装置の起動からの経過時間と前段容器の外表面温度及びオゾンガス濃度の関係を、吸着剤を加熱しない場合で示すグラフである。
図7図7は半導体製造装置の起動からの経過時間と前段容器の外表面温度及びオゾンガス濃度の関係を、吸着剤を事前加熱した場合で示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示のガス除害システムについて説明する。
【0013】
図1には、第一実施形態のガス除害システム12が示されている。ガス除害システム12は、半導体製造装置10から排出されたガスから、このガスに含まれるオゾンガスを除去すると共に、オゾンガスが除害されたガスを外部に排出する。半導体製造装置10から排出されたガスは、対象ガスの一例である、オゾンガスは除害成分であり、吸着成分の一例である。半導体製造装置10は、オゾンガス発生源の一例である。ガス除害システム12は、ガス吸着システムの一例である。
【0014】
ガス除害システム12は、1つ又は複数の容器14を有している。図1に示す例では、対象ガスの流れ方向(矢印F1方向)に沿って、2つの容器14を有している。以下、必要に応じて、流れ方向の上流側の容器を前段容器14A、下流側の容器を後段容器14Bとして、適宜区別する。後段容器14Bは第二容器の一例である。容器14のそれぞれの内部を、対象ガスが矢印F1で示す向きで通過する。
【0015】
容器14は、たとえば有底の円筒形状である。そして、下底部分から対象ガスが流入し、上底部分から対象ガスが流出するようになっている。
【0016】
容器14のそれぞれには、吸着剤16が封入されている。吸着剤16は、対象ガスから吸着成分であるオゾンガスを吸着する。吸着剤16は、オゾンガスが接触することで反応熱が発生し温度が上昇する。そして、反応が進んで吸着剤16の吸着能力(除害機能)が低下するに従って、温度が低下する。このような吸着剤16としては、たとえば、ゼオライト系の顆粒材を挙げることができるが、これに限定されない。後段容器14B内の吸着剤16は、第二吸着剤の一例である。
【0017】
前段容器14Aには、対象ガスが通過することで、対象ガスからオゾンガスが吸着されて除害されるように吸着剤16が収容されている。後段容器14Bには、前段容器14A内の吸着剤が破過された場合に、対象ガスが通過することで、対象ガスからオゾンガスが吸着されて除害されるように吸着剤16が収容されている。後段容器14B内の吸着剤16は、前段容器14A内の吸着剤16に対し、いわゆるバックアップとして機能する。したがって、前段容器14A内の吸着剤16により、たとえば後述するようにオゾンガスの量が突発的に多い場合でも確実に吸着できるのであれば、後段容器14B及びその内部の吸着剤16は不要としてもよい。
【0018】
図2にも示すように、前段容器14Aの周壁22の外表面には、熱電対18が取り付けられている。図2に示す例では、対象ガスの流れ方向に沿って、3つの熱電対18A、熱電対18B、及び熱電対18Cが取り付けられている。熱電対18は、温度センサの一例である。本開示の技術の温度センサとしては、熱電対18の他、バイメタル温度計や、サーミスタ温度計、赤外線温度計等を用いることも可能である。
【0019】
熱電対18のそれぞれは、前段容器14Aの周壁22を介して、吸着剤16の温度を検知する。特に、3つの熱電対18A、18B、及び18Cを有することで、前段容器14A内で上流側から第一領域20A、第二領域20B及び第三領域20Cにおける吸着剤16の温度を検知できる。本実施形態では、熱電対18で検知された各温度の情報は、図示しない制御装置に送られ、同じく図示しない表示装置、たとえばディスプレイ等にそれぞれ表示されるようになっている。
【0020】
次に、第一実施形態のガス除害システム12の作用、及び管理方法について説明する。
【0021】
第一実施形態のガス除害システム12では、前段容器14Aに設けられた熱電対18A、18B、18Cにより、第一領域20A、第二領域20B及び第三領域20Cにおける吸着剤16の温度が検知される。そして、検知された温度は、たとえばディスプレイ等の表示装置に表示される。
【0022】
図3には、熱電対18A、18B、18Cで検知された温度(前段容器14Aの周壁22の外表面温度)が、ガス除害システム12の稼働時間による推移として示されている。このグラフにおいて、熱電対18Aの検知温度をT1、熱電対18Bの検知温度をT2、熱電対18Cの検知温度をT3としている。熱電対18A、18B、18Cの検知温度は、それぞれ、第一領域20A、第二領域20B及び第三領域20Cにおける吸着剤16の温度に対応する。
【0023】
このグラフから、オゾンガスが最初に接触する第一領域20Aでは、稼働初期に吸着剤16が最も高温となっており、その後は稼働時間の経過に伴って温度が低下している。これに対し、第二領域20Bでは、稼働初期からの時間経過に伴って吸着剤16の温度が上昇し、最大値に達した後は徐々に低下している。第三領域20Cでは、稼働初期からの時間経過に伴って吸着剤16の温度が上昇しており、最大値に達する時間は、第二領域20Bの温度が最大値に達する時間より遅い。このように、前段容器14A内では、第一領域20Aの吸着剤16の温度が低下していても第二領域20B及び第三領域20Cでは温度が上昇する時間があり、さらに、第二領域20Bの吸着剤16の温度が低下する時間になっても、第三領域20Cの吸着剤16の温度が上昇している時間がある。すなわち、前段容器14A内では、吸着剤16によるオゾンガスの吸着反応が、第一領域20Aから、第二領域20Bへ、さらに第二領域20Bから第三領域20Cへ移動していることが分かる。そしてこれから、吸着剤16が吸着能力(除害機能)を低下させていくにつれて反応熱が低下し、また、反応熱が低下している領域、すなわち吸着能力が低下している領域が下流側に移っていくことが分かる。
【0024】
本実施形態では、このように、熱電対18による吸着剤16の検知温度の時間変化に基づいて、吸着剤16の劣化の程度を判断している。そして、この判断により、前段容器14A内の吸着剤16を交換する時期を決めることが可能である。図3に示した例では、第二領域20Bにおいて低下途中の温度と、第三領域20Cにおいて上昇途中の温度とが交差した時点を基準とし、この時点から所定時間経過後に吸着剤16を交換している。これにより、前段容器14A内の吸着剤16が全体的に破過する前段階で吸着剤16を交換するので、十分に除害されていない、すなわちオゾンガスが除去されていない状態の対象ガスが前段容器14Aから排出されることを抑制できる。
【0025】
そして、図3に「吸着剤交換」として示すように吸着剤16を交換した場合、交換後は、第一領域20Aにおいて吸着剤16の温度が高くなっており、第一領域20Aの吸着剤16によりオゾンガスの吸着反応が生じていることが分かる。
【0026】
しかも、本開示の技術において、熱電対18は、前段容器14Aの外表面に設けられている。熱電対18を前段容器14Aの内部に設けないので、構造を簡素化できる。特に本開示の技術では、前段容器14A内の吸着剤16の温度について、その時間変化から劣化の程度を判断している。このように吸着剤16の温度の時間変化を検知するためには、熱電対18を前段容器14Aの外表面に設けても問題ないため、熱電対18を前段容器14Aの外表面に設けることで、構成の簡素化を図っている。
【0027】
なお、後段容器14B内の吸着剤16についても、たとえば前段容器14A内の吸着剤16の交換時に合わせて交換することが可能である。これにより、後段容器14B内の吸着剤16についても、吸着能力が低下する前に交換されるので、オゾンガスが後段容器14Bを通過して外部に排出されるおそれを小さくできる。
【0028】
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態において、第一実施形態と同様の要素、部材等については第一実施形態と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0029】
図4に示すように、第二実施形態のガス除害システム32では、後段容器14Bの外側にヒータ34が設けられている。図4に示す例では、ヒータ34は、円筒状の後段容器14Bの周壁22を取り囲んでいる。そして、ヒータ34により、後段容器14Bの周壁22を介して、内部の吸着剤16を加熱することができる。ヒータ34は下流側加熱部材の一例である。
【0030】
このような構成とされた第二実施形態のガス除害システム32では、第一実施形態のガス除害システム12と同様に、熱電対18による吸着剤16の検知温度に基づいて、吸着剤16の劣化の程度を判断し、前段容器14A内の吸着剤16を交換する時期を決めることが可能である。しかも、熱電対18は、前段容器14Aの外表面に設けられているので、構造を簡素化できる。
【0031】
また、第二実施形態のガス除害システム32では、後段容器14B内の吸着剤16をヒータ34によって加熱することが可能である。吸着剤16は、加熱によって常温よりも高温になることで、オゾンガスの吸着効率が高くなる物性を有している。すなわち、後段容器14B内の吸着剤16をヒータ34によって加熱し高温にすることで、オゾンガスの吸着効率を向上させることができる。
【0032】
たとえば、半導体製造装置10の起動直後や再起動後には、瞬間的に高濃度のオゾンガスが発生することがある。このように突発的に高濃度のオゾンガスが発生し、前段容器14A内の吸着剤16でオゾンガスを吸着しきれなかった場合には、オゾンガスの吸着能力が向上された後段容器14B内の吸着剤16によってオゾンガスを確実に吸着できる。
【0033】
第二実施形態においても、後段容器14B内の吸着剤16の交換時期は、たとえば、前段容器14A内の吸着剤の交換時期と同じに設定できる。すなわち、後段容器14B内の吸着剤16を前段容器14A内の吸着剤16と合わせて適切な交換時期に交換することで、後段容器14B内の吸着剤16についても高い吸着効率を維持でき、オゾンガスが外部に排出されるおそれを小さくできる。
【0034】
第二実施形態において、ヒータ34による吸着剤16の加熱は、たとえば常時行うことが可能である。すなわち、後段容器14B内の吸着剤16を常時加熱することで、この吸着剤16の吸着効率が向上した状態を維持でき、オゾンガスが外部に排出されることを抑制できる。
【0035】
次に、第三実施形態について説明する。第三実施形態において、第一実施形態と同様の要素、部材等については第一実施形態と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0036】
図5に示すように、第三実施形態のガス除害システム42では、前段容器14Aの外側に、ヒータ44が設けられている。図5に示す例では、ヒータ44は、たとえば前段容器14Aの外側から温風を吹き付けるヒートガンである。そして、ヒータ44により、前段容器14Aの周壁22を介して、内部の吸着剤16を加熱することができる。ヒータ44は上流側加熱部材の一例である。
【0037】
このような構成とされた第三実施形態のガス除害システム42では、前段容器14A内の吸着剤16をヒータ44によって加熱することが可能である。特に、図5に示した例では、第三領域20C及びその近傍において、吸着剤16をヒータ44により加熱する構成としている。これにより、前段容器14A内の吸着剤16を、たとえば半導体製造装置10の起動直前まで加熱することが可能である。
【0038】
上記したように、吸着剤16は、加熱によって常温よりも高温になることで、オゾンガスの吸着効率が高くなる物性を有している。しかしながら、前段容器14A内を対象ガスが通過開始した直後は、吸着剤16の温度は低い。また、この一方で、半導体製造装置10の起動直後には、瞬間的に高濃度のオゾンガスが発生することがある。第三実施形態のガス除害システム42では、前段容器14A内の吸着剤16がヒータ44によって加熱されて吸着能力が向上されている。したがって、このように半導体製造装置10の起動直後に瞬間的に高濃度のオゾンガスが発生しても、前段容器14A内の吸着剤16によってオゾンガスを確実に吸着できる。
【0039】
図6及び図7には、半導体製造装置10の起動からの経過時間と、前段容器14Aの外表面(熱電対18を設けた3箇所)の温度及びオゾン検知濃度の関係の一例が示されている。図6は前段容器14A内の吸着剤16を加熱しない場合、図7は、半導体製造装置10の起動まで前段容器14A内の吸着剤16をヒータ44によって加熱した場合である。それぞれのグラフにおいて、熱電対18Aの検知温度をT1、熱電対18Bの検知温度をT2、熱電対18Cの検知温度をT3としている。なお、オゾン検知濃度は、図5に示すように、後段容器14Bのさらに下流側でオゾン濃度検知器46によりオゾン濃度を検出した値である。
【0040】
前段容器14A内の吸着剤16を加熱しない場合には、図6に示すように、検知温度T1は略一定であり、検知温度T3は時間経過に伴って緩やかに上昇している。検知温度T2は時間経過に伴って一時的に低下する場合もあるが、全体として検知温度T3よりも高い状態を維持しつつ上昇している。そして、半導体製造装置10の起動からの経過時間が短い段階(概ね3分後)にオゾン濃度が極大値(破線で囲む部分を参照)となっている。
【0041】
これに対し、前段容器14A内の吸着剤16を加熱した場合には、図7に示すように、検知温度T2は、図6に示す場合よりも初期段階で高くなっており、しかも、時間経過と共に、オゾンガスの吸着反応により上昇している。検知温度T3は、ヒータ44により加熱されていることにより、初期段階で検知温度T2よりも高く(概ね60℃に)なっている。そして、半導体製造装置10の起動後は、ヒータ44による吸着剤16の加熱を停止しているので、検知温度T3は徐々に低下しているが、検知温度T2よりは高く維持されている。
【0042】
そして、前段容器14A内の吸着剤16を加熱した場合には、検出されるオゾン濃度は実質的にゼロになっている。すなわち、実施形態のガス除害システム42では、半導体製造装置10の起動まで前段容器14A内の吸着剤16をヒータ44によって加熱することにより、より確実にオゾンガスを前段容器14A内の吸着剤16によって吸着できる。すなわち、オゾンガスがガス除害システム42の外部に漏出するおそれが小さくなり、より安全性の高いガス除害システム42を構築できる。
【0043】
なお、第三実施形態のガス除害システム42では、たとえば半導体製造装置10の起動後は、ヒータ44による吸着剤16の加熱を停止する。これにより、オゾンガスの吸着反応に伴う温度変化を熱電対18A、18B、18Cにより検知することが可能となる。そして、検知温度に基づいて、吸着剤16の劣化の程度を判断し、前段容器14A内の吸着剤16を交換する時期を決めることが可能である。また、熱電対18は、前段容器14Aの外表面に設けられているので、構造を簡素化できる。
【0044】
第三実施形態のガス除害システム42において、図4に示した第二実施形態のように、後段容器14B内の吸着剤16を加熱するヒータ34をさらに有する構成としてもよい。
【0045】
以上説明したように、各実施形態のガス除害システム12、32、42では、前段容器14A内の吸着剤16の温度変化を検知しており、間接的にオゾンガスと吸着剤16との反応状態の推移を監視することが可能な構成である。このように、前段容器14A内の吸着剤16の温度変化を検知するためであれば、熱電対18は1つであってもよい。
【0046】
特に、上記した各実施形態のガス除害システム12、32、42では、複数の熱電対18を、対象ガスの流れ方向で離隔して設けている。これにより、対象ガスの流れ方向の上流側から前段容器14A内の吸着剤16の温度変化を細かく監視できる。そして、吸着剤16の交換時期を適切に判断できると共に、吸着剤16を交換することで、ガス除害システムを繰り返し利用することが可能となる。
【0047】
また、熱電対18は前段容器14Aの外表面に設けられているので、構造を簡素化できる。以上により、各実施形態のガス除害システムでは、対象ガスに対する除害処理、すなわちオゾンガスの除去を、高い安全性を維持して継続的に、且つ低コストで行うことが可能である。
【0048】
本開示の技術において、ガス除害システム12、32、42は、ガス吸着システムの一例であり、ガス吸着システムによって吸着するガス(吸着成分)としては、上記したオゾンガスに限定されない。すなわち、吸着剤が対象ガスの吸着成分を吸着することで反応熱を生じる種類のガスと吸着剤との組合せであれば、反応に伴う吸着剤の温度変化を用いて、吸着剤の吸着能力の劣化を知ることができる。
【0049】
さらに、以下の付記を開示する。
(付記1)
対象ガスが流れる容器と、
前記容器の内部に配置され前記対象ガスの吸着成分が吸着される吸着剤と、
前記容器の外表面に設けられ前記吸着剤の温度を検知する1つ又は複数の温度センサと、
を有するガス吸着システム。
(付記2)
複数の前記温度センサが、前記容器の外表面で前記対象ガスの流れ方向に離隔して配置されている、付記1に記載のガス吸着システム。
(付記3)
前記容器よりも前記対象ガスの流れ方向の下流側に配置される第二容器と、
前記第二容器の内部に配置され前記対象ガスの吸着成分が吸着される第二吸着剤と、
を有する付記1又は付記2に記載のガス吸着システム。
(付記4)
前記第二吸着剤を加熱する下流側加熱部材、を有する付記3に記載のガス吸着システム。
(付記5)
前記吸着剤を加熱する上流側加熱部材、を有する付記1~付記4の何れか一項に記載のガス吸着システム。
(付記6)
前記吸着剤は、前記吸着成分としてオゾンガスを吸着する吸着剤である、付記1~付記5の何れか一項に記載のガス吸着システム。
(付記7)
対象ガスが流れる容器と、
前記容器の内部に配置され前記対象ガスの吸着成分が吸着される吸着剤と、
前記容器の外表面に設けられ前記吸着剤の温度を検知する1つ又は複数の温度センサと、
を有するガス吸着システムに対し、
前記温度センサによる検知温度に基づいて前記吸着剤の劣化の程度を判断する、ガス吸着システムの管理方法。
【符号の説明】
【0050】
12 ガス除害システム(ガス吸着システムの一例)
14 容器
16 吸着剤
18 熱電対(温度センサの一例)
20A 第一領域
20B 第二領域
20C 第三領域
22 周壁
32 ガス除害システム(ガス吸着システムの一例)
34 ヒータ
42 ガス除害システム(ガス吸着システムの一例)
44 ヒータ
46 オゾン濃度検知器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7