(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141019
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】肌への匂いの付着を抑えた油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20241003BHJP
A23D 9/013 20060101ALI20241003BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
A23D9/00 504
A23D9/013
A23L5/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052441
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 太一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 孝宏
【テーマコード(参考)】
4B026
4B035
【Fターム(参考)】
4B026DG01
4B026DG04
4B026DK10
4B026DL06
4B026DX01
4B035LC16
4B035LE03
4B035LG09
4B035LG12
4B035LK02
4B035LK12
4B035LK17
4B035LP21
(57)【要約】
【課題】
香味油を含む油脂組成物は、喫食時に香味油の匂いが、口まわりの肌に残るという課題があった。
上記課題のあるところ、本発明は、簡単にふき取ることができ、香味油に由来する匂いが肌へ付着することを抑制した、香味油を含む油脂組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】
香味油と、ポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステルと、ジグリセリン脂肪酸エステルを含み、
前記、香味油を油脂組成物全体に対し少なくとも30.0質量%以上含有し、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び前記ジグリセリン脂肪酸エステルを油脂組成物全体に対し合計0.5~5質量%含有することを特徴とする、油脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
香味油と、ポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステルと、ジグリセリン脂肪酸エステルを含み、
前記、香味油を油脂組成物全体に対し少なくとも30.0質量%以上含有し、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び前記ジグリセリン脂肪酸エステルを油脂組成物全体に対し合計0.5~5質量%含有することを特徴とする、油脂組成物。
【請求項2】
前記ジグリセリン脂肪酸エステルを油脂組成物全体に対し0.2~4.8質量%含有する、請求項1に記載の油脂組成物。
【請求項3】
品温20℃以上で流動性を有する請求項1又は2に記載の油脂組成物。
【請求項4】
ポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステル、及びジグリセリン脂肪酸エステルを有効成分として含み、
香味油を含む油脂組成物全体に対し、前記ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びジグリセリン脂肪酸エステルが合計0.5~5質量%となるように添加して用いられる、香味油を含む油脂組成物の肌への付着抑制剤。
【請求項5】
香味油を油脂組成物全体に対し少なくとも30.0質量%以上含有する油脂組成物中に、ポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステルと、ジグリセリン脂肪酸エステルとを、油脂組成物全体に対し合計0.5~5質量%となるように含有させることを特徴とする、油脂組成物中の該香味油に由来する匂いの肌への付着抑制方法。
【請求項6】
前記ジグリセリン脂肪酸エステルを油脂組成物全体に対して0.2~4.8質量%となるように含有させることを特徴とする、請求項5に記載の抑制方法。
【請求項7】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルと、ジグリセリン脂肪酸エステルとを含んだ前記油脂組成物が、品温20℃以上で流動性を有する請求項5又は6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味油を含む油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
香味油とは、香気を有する植物油や、野菜、畜肉、魚介類、香辛料等が有する風味を食用油脂に付加したものである。香味油を用いた場合、食品に対して良好な風味を簡便に付与することが可能となる。
香味油としては、ネギ、タマネギ、ニンニク、ショウガ等の香味野菜の香味を有するものが広く用いられている。これらは、シーズニングオイル、風味油などとも呼ばれている。
【0003】
香味油を食品に添加すると、食品に風味を付与し、嗜好性を高めることができる。
一方、香味油の匂いが異臭として周囲に拡散し、問題となる場合も存在する。
上記課題に対し、特許文献1には、加熱した場合に放散する匂いを低減化した香味油が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
香味油を含む油脂組成物は、喫食時に香味油の匂いが口まわりの肌に残るという課題があった。
上記課題のあるところ、本発明は、香味油に由来する匂いが肌へ付着することを抑制した、香味油を含む油脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、以下のとおりである。
[1] 香味油と、ポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステルと、ジグリセリン脂肪酸エステルを含み、
前記、香味油を油脂組成物全体に対し少なくとも30.0質量%以上含有し、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び前記ジグリセリン脂肪酸エステルを油脂組成物全体に対し合計0.5~5質量%含有することを特徴とする、油脂組成物。
[2] 前記ジグリセリン脂肪酸エステルを油脂組成物全体に対し0.2~4.8質量%含有する、油脂組成物。
[3] 品温20℃以上で流動性を有する前記油脂組成物。
[4] ポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステル、及びジグリセリン脂肪酸エステルを有効成分として含み、
香味油を含む油脂組成物全体に対し、前記ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びジグリセリン脂肪酸エステルが合計0.5~5質量%となるように添加して用いられる、香味油を含む油脂組成物の肌への付着抑制剤。
[5] 香味油を油脂組成物全体に対し少なくとも30.0質量%以上含有する油脂組成物中に、ポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステルと、ジグリセリン脂肪酸エステルとを、油脂組成物全体に対し合計0.5~5質量%となるように含有させることを特徴とする、油脂組成物中の該香味油に由来する匂いの肌への付着抑制方法。
[6] 前記ジグリセリン脂肪酸エステルを油脂組成物全体に対して0.2~4.8質量%となるように含有させることを特徴とする、油脂組成物中の該香味油に由来する匂いの肌への付着抑制方法。
[7] 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルと、ジグリセリン脂肪酸エステルとを含んだ前記油脂組成物が、品温20℃以上で流動性を有する油脂組成物中の該香味油に由来する匂いの肌への付着抑制方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、肌に付着しても容易にふき取ることができる、香味油を含む油脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、香味油の匂いが肌に付着することを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に例示説明する。なお、本発明の実施の形態において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。また、以下で例示する好ましい態様やより好ましい態様等は、「好ましい」や「より好ましい」等の表現にかかわらず適宜相互に組み合わせて使用することができる。また、数値範囲の記載は例示であって、各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。さらに、「含有する」又は「含む」等の用語は、「本質的になる」や「のみからなる」と読み替えてもよい。
【0009】
<油脂組成物>
以下、本発明の油脂組成物の含有する成分について詳述する。
【0010】
[香味油]
本発明における香味油は、香気を有する植物油、香気野菜の油溶性香気成分を油で抽出した香味油、及び油溶性香気成分を油へ添加した香味油の少なくとも一方を使用するものとする。
前記香気を有する植物油としては、オリーブ油、ハーブ油、焙煎ゴマ油、焙煎大豆油、焙煎菜種油、アーモンド油、クルミ油、ピーナッツ油、ヘーゼルナッツ油、マカダミアナッツ油等からなる群より選ばれる1種以上が好適に挙げられる。
また、香味野菜の油溶性香気成分を油で抽出した香味油としては、香味野菜を食用油中(菜種油等)中で加熱して香りを移したネギ油、ガーリック油、ラー油等からなる群より選ばれる1種以上が好適に挙げられる。
また、油溶性香気成分を油へ添加した香味油としては、フレーバーを植物油に添加したバターフレーバー油、唐辛子フレーバーオイル等が好適に挙げられる。
特に好適には、ガーリック油、オリーブ油、ネギ油、ハーブ油、からなる群より選ばれる1種以上を含有するものとする。
【0011】
本発明において、香味油の含有量は、油脂組成物全体に対し少なくとも、30.0質量%以上である。
好ましくは、35.0質量%以上、特に40.0質量%以上、さらに50.0質量%以上、またさらに60.0質量%以上含有することが好ましい。
また、香味油の含有量の上限値は、油脂組成物全体に対し99.5質量%以下とすることができる。
本発明によれば、香味油の含有量が多い油脂組成物であっても、該香味油の匂いが肌に付着することを抑制できる。
【0012】
[乳化剤]
本発明は乳化剤として、以下で説明する重合度が4~20のポリグリセリン脂肪酸エステル、及びジグリセリン脂肪酸エステルを含有する。前記乳化剤を含んだ油脂組成物は、容易にふき取ることができる。
さらに、香味油を含む油脂組成物に、前記乳化剤を含ませることで、該香味油の匂いが肌へ付着することを抑制することができる。
【0013】
[ポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステル]
本発明のポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸をエステル化して合成されたものである。ポリグリセリン脂肪酸エステルの原料として使用されるポリグリセリンは、一般には、グリセリンを原料として苛性ソーダなどのアルカリ触媒の存在下、高温にて脱水縮合し、必要に応じて蒸留、脱臭、脱色して得られる。これらポリグリセリン脂肪酸エステルの原料であるポリグリセリンは、反応ポリグリセリンとも呼ばれ、重合度の異なるポリグリセリンの混合物であり、重合度分布の広いものである。
【0014】
本発明の、ポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値は、2~8である。より好ましくは、2~7である。
なお、HLBとは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)の略であって、乳化剤が親水性か親油性かを知る指標となるもので、0~20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示す。本発明において、HLB値の算出はアトラス法の算出法を用いる。アトラス法の算出法は、
HLB=20×(1-S/A)
S:ケン化価
A:エステル中の脂肪酸の中和価
からHLB値を算出する方法を言う。
【0015】
本発明のポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステルの、構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。さらに、構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の割合が、70~100質量%であることがより好ましく、80~98質量%であることがさらに好ましい。
構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量を上記範囲とすることで、品温20℃以上において油脂組成物が流動性を保つことができる。
【0016】
また、ポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステルの、不飽和脂肪酸は、例えば炭素数16~22、好ましくは炭素数18~22、より好ましくは炭素数18~20の不飽和脂肪酸を用いることができる。不飽和脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びエルカ酸から選ばれる1種又は2種以上の不飽和脂肪酸が好ましい。酸化安定性の点から、オレイン酸、エルカ酸がより好ましい。
【0017】
また、本発明のポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステルは、モノエステルから、全ての水酸基がエステル化したものが存在する。本発明において、これらの混合物も用いることができる。
【0018】
本発明のポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステルは、通常市販されているものを用いることができる。ポリグリセリン部分の平均重合度は、4~20であれば特に限定されず、好ましくは4~12、さらに好ましくは5~10、より好ましくは6~8である。
本発明に用いるポリグリセリン脂肪酸エステルは、重合度4以上のものは、単離することが困難なため、様々なエステル化度のポリグリセリン脂肪酸エステルの混合物であることを許容する。
【0019】
本発明のポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、油脂組成物(100質量%)に対し0.2質量%以上である。より好ましくは0.25質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.7質量%以上である。
また、本発明のポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステルの、含有量の上限値は、油脂組成物(100質量%)に対し4.8質量%以下である。より好ましくは2.5質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である、特に好ましくは0.8質量%以下である。ポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量の上限及び下限が上記の範囲にあると、本発明の効果をより奏しやすい。
【0020】
[ジグリセリン脂肪酸エステル]
本発明の乳化剤は、ジグリセリン脂肪酸エステルを含有する。
ジグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンの2量体に脂肪酸がエステル結合した構造を有する。ジグリセリン脂肪酸エステルは、油脂組成物の流動性の観点から、構成脂肪酸の50質量%以上が炭素数16~22の不飽和脂肪酸であることが好ましく、不飽和脂肪酸がオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸であることがより好ましい。
酸化安定性の点から、オレイン酸、エルカ酸がより好ましい。
【0021】
ジグリセリン脂肪酸エステルは、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステルが存在する。本発明において、モノエステル、ジエステルの純度が高いものが好ましいが、モノエステル~テトラエステルまでの混合物も用いることができる。
【0022】
ジグリセリン脂肪酸エステルは、蒸留等により高純度にしたものが好ましい。例えば、ジグリセリン脂肪酸エステルとして、70質量%以上の純度にしたものが好ましく、80質量%以上の純度にしたものがより好ましく、90質量%以上の純度にしたものがさらに好ましい。
【0023】
本発明における、ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、油脂組成物(100質量%)に対し0.2質量%以上である。より好ましくは0.25質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.7質量%以上である。
また、ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量の上限値は、油脂組成物(100質量%)に対し4.8質量%以下である。より好ましくは2.5質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である、特に好ましくは0.8質量%以下である。ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量の上限及び下限が上記の範囲にあると、本発明の効果をより奏しやすい。
【0024】
本発明において、ポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステル、及びジグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、油脂組成物全体に対し、合計0.5~5質量%の範囲である。より好ましくは0.5~4質量%、より好ましくは0.75~3質量%、最も好ましくは1.25~1.75質量%の範囲である。
本発明の油脂組成物中の、ポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステル、及びジグリセリン脂肪酸エステルの合計含有量が上記の範囲にあると、本発明の効果をより奏しやすい。
また、本発明において、ポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステルとジグリセリン脂肪酸エステルの含有質量比は、好ましくは5:1~1:5、より好ましくは3:1~1:3、さらに好ましくは2:1~1:2、さらに好ましくは1.5:1~1:1.5である。
本発明の油脂組成物中の、ポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステル、及びジグリセリン脂肪酸エステルの含有質量比が上記の範囲にあると、本発明の効果をより奏しやすい。
【0025】
[香味油以外の油成分]
本発明の油脂組成物に含有される、香味油以外の油成分として、脱臭工程を経た精製油脂が挙げられる。
前記油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、ひまわり油、綿実油、ブドウ種油、エゴマ油、米糠油、ごま油、オリーブオイル、グレープシードオイル、マカデミアナッツ油、小麦胚芽油、パーム油、中鎖脂肪酸油(MCT)等が挙げられる。また、高オレイン酸の大豆油、菜種油、紅花油、ひまわり油、パーム油等のように、品種改良により構成脂肪酸の組成を変えた油脂を用いることもできる。また、これらの油脂の1種又は2種以上をエステル交換したエステル交換油脂、これら油脂の水素添加油脂等も使用できる。上記油脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
[その他]
本発明の油脂組成物には、上記の必須成分以外にも本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて食品に使用が許される成分、例えば着色料、香料、酸化防止剤、消泡剤、ビタミン、などを添加することができる。
これらの成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができる。例えば、油脂組成物中に10質量%以下含有させることができ、好ましくは0~3質量%、より好ましくは0~1質量%含有させることができる。
【0027】
本発明の油脂組成物は、好ましくは液状で、流動性を有する。より好ましくは、品温20℃以上で、液状となり、流動性を有する。
【0028】
<油脂組成物の肌への付着抑制剤>
本発明は、香味油を含む油脂組成物全体に対し合計0.5~5質量%となるように添加して用いられる、ポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステル、及びジグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とする、香味油を含む油脂組成物の肌への付着抑制剤でもある。
本発明によれば、香味油を含む油脂組成物の肌への付着を抑制し、油脂組成物を容易にふき取れるようにすることができる。
本発明の付着抑制剤における好ましい実施の形態(各成分や物性)は、前述した本発明の油脂組成物の説明を援用できる。
【0029】
<付着抑制方法>
本発明は、油脂組成物中の香味油に由来する匂いの肌への付着抑制方法でもある。
本発明は、香味油を油脂組成物全体に対し少なくとも30.0質量%以上含有する油脂組成物中に、ポリグリセリンの重合度が4~20であるポリグリセリン脂肪酸エステルと、ジグリセリン脂肪酸エステルとを、油脂組成物全体に対し合計0.5~5質量%となるように含有させる工程を含む。
本発明によれば、香味油に由来する匂いの肌への付着を抑制することができる。
本発明の抑制方法における好ましい実施の形態(各成分や物性)は、前述した本発明の油脂組成物の説明を援用できる。
【実施例0030】
次に、実施例、比較例及び対照例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。また、以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。なお、以降質量%とは油脂組成物全体に対する含有量を意味する。
【0031】
[油脂組成物の製造]
表1の配合に従い、約60℃で加熱しながら、各原料が溶解し、均一になるまで混合して、各種油脂組成物を得た。使用した原材料は以下の通りである。
・菜種油(精製キャノーラ油 商品名「日清キャノーラ油」、日清オイリオグループ(株)製)
・ガーリックオイル(日清オイリオグループ(株)製)
・オリーブオイル(エキストラバージンオリーブオイル、日清オイリオグループ(株)製)
・ネギオイル(商品名「ユウキ ネギ油」、ユウキ食品(株)製)
・ポリグリセリン脂肪酸エステル(ペンタオレイン酸デカグリセリン 商品名「サンソフトQ-175S」、HLB7.0、太陽化学(株)製)
・ジグリセリン脂肪酸エステル(ジグリセリンモノオレエート 商品名「ポエムDO-100V」、HLB7.3、理研ビタミン(株)製)
・PGPR(縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリン 商品名「SYグリスターCR-500」、阪本薬品工業(株)製)
【0032】
[滑落角の測定]
シリコン製の人工皮膚(商品名「タトゥー スキン プラクティス両面」、PIXESTT社製)の表面に各種油脂組成物を0.10g滴下し、徐々に傾けて油滴が流下し始めたときの角度(滑落角)を測定した。
なお、人工皮膚、油脂組成物、実験室の温度は25.0℃前後に保持した。
また、滑落角が小さいほど、肌(人工皮膚)に対して撥油性が高く、表面に付着しにくいと判断した。
【0033】
[ニオイ付着の抑制評価]
シリコン製の人工皮膚の表面に各種油脂組成物を0.10g滴下し、ティッシュで1回拭った後、皮膚表面に残るニオイを評価した。
評価は5名の専門パネルの全員の同意により決めた。
なお、表1中の結果は下記を意味し、実施例1~5並びに比較例1及び2の評価は、対照例1を対照とし、実施例6及び7の評価は、対照例2を対照とし、実施例8及び9の評価は、対照例3を対照とした。
[評価基準]
×:香味油に由来するニオイが、対照例と同等である。
○:香味油に由来するニオイが、対照例よりも少ない。
◎:香味油に由来するニオイが、○よりもさらに少ない。
【0034】
[粘度の測定]
ブルックフィールド粘度計(BM型粘度計、東機産業株式会社製 商品名「VISCOMETER TVB-15」)を用い、品温20℃、ローターNo.M1、12rpmの条件で、回転開始後から1分後の粘度を測定した。
【0035】
上記試験の結果を表1に示した。
なお、表中の数字は、各成分の油脂組成物全体に対する質量%を示す。
【0036】
【0037】
香味油(ガーリックオイル、オリーブオイル、又はネギオイル)を48.0~99.0質量%、デカグリセリン脂肪酸エステルとジグリセリン脂肪酸エステルとを合計0.5~4質量%含有する油脂組成物は、対照例及び比較例と比べて滑落角が小さくなった。
よって、前記油脂組成物は肌(人工皮膚)に対して撥油性が高く、表面に付着しにくいと考えられた。
また、香味油(ガーリックオイル、オリーブオイル、又はネギオイル)を48.0~99.0質量%、デカグリセリン脂肪酸エステルとジグリセリン脂肪酸エステルとを合計0.5~4質量%含有する油脂組成物は、人工皮膚へのニオイの付着が低減されていた。
したがって、実際の食事の際に、本発明の香味油を含む油脂組成物が、口のまわりに付着しても、拭き取ることでニオイの付着が低減できると考えられた。