(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141088
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】燃料燃焼装置を用いた燃焼方法、セメントの製造方法及びセメント焼成設備
(51)【国際特許分類】
F23C 1/12 20060101AFI20241003BHJP
F23D 17/00 20060101ALI20241003BHJP
C04B 7/44 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F23C1/12 ZAB
F23D17/00 103
C04B7/44
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052544
(22)【出願日】2023-03-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 智広
【テーマコード(参考)】
3K065
3K091
4G112
【Fターム(参考)】
3K065QC03
3K065RA01
3K091BB05
3K091CC06
3K091CC14
3K091CC15
3K091CC17
3K091CC23
3K091DD01
3K091DD07
4G112KA02
4G112KA03
(57)【要約】
【課題】セメント焼成設備等の各種設備が備える燃料燃焼装置に供給する燃料として化石燃料の使用量を低減しながら、各種バーナの輻射伝熱量を維持することで、セメントクリンカの粉末原料等の加熱対象物に伝わる熱量を維持して、その焼成に適した状態を保ち、当該各種設備から排出される二酸化炭素の排出量を低減し、かつ各種設備を低コストで稼働し得る、燃料燃焼装置を用いた燃焼方法、セメントの製造方法及び燃料燃焼装置を備えるセメント焼成設備を提供する。
【解決手段】可燃性粉体を供給する可燃性粉体供給機構、燃料ガスを供給する燃料ガス供給機構及び非可燃性粉体を供給する非可燃性粉体供給機構を有する燃料供給機構を備える燃料燃焼装置を用いた燃焼方法、前記燃料燃焼装置を、セメント焼成設備におけるロータリーキルンに備えられるキルンバーナとして用いたセメントの製造方法、並びに前記燃料燃焼装置が、ロータリーキルンに備えられるキルンバーナとして用いられるセメント焼成設備である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性粉体を供給する可燃性粉体供給機構、燃料ガスを供給する燃料ガス供給機構及び非可燃性粉体を供給する非可燃性粉体供給機構を有する燃料供給機構を備える燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
【請求項2】
前記可燃性粉体が、化石燃料、非化石燃料及び可燃性廃棄物から選ばれる少なくとも一種の粉体である請求項1に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
【請求項3】
前記可燃性粉体が、石炭の粉体である請求項2に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
【請求項4】
前記燃料ガスが、可燃性ガス及びカーボンフリーガス燃料から選ばれる少なくとも一種の燃料ガスである請求項1又は2に記載の燃焼燃料装置を用いた燃焼方法。
【請求項5】
前記可燃性ガスが、化石燃料及び非化石燃料から選ばれる少なくとも一種のガスである請求項4に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
【請求項6】
前記カーボンフリーガス燃料が、アンモニア及び水素から選ばれる少なくとも一種のガスである請求項4に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
【請求項7】
前記非可燃性粉体が、脱塩ダスト、バイオマス焼却灰、石炭灰、クリンカクーラ底部のダスト及びごみ焼却灰から選ばれる少なくとも一種の粉体である請求項1又は2に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
【請求項8】
前記非可燃性粉体の体積基準の平均粒子径が、0.1μm以上50μm以下である請求項1又は2に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
【請求項9】
前記非可燃性粉体の含水率が、5質量%以下である請求項1又は2に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
【請求項10】
前記非可燃性粉体の強熱減量が、10%以下である請求項1又は2に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
【請求項11】
前記非可燃性粉体の供給量を、前記燃料ガスの総発熱量と同じ総発熱量に相当する前記可燃性粉体の供給量1質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下とする請求項1又は2に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
【請求項12】
前記燃料燃焼装置が、前記可燃性粉体を噴射する可燃性粉体噴射機構、前記燃料ガスを噴射する燃料ガス噴射機構及び前記非可燃性粉体を噴射する非可燃性粉体噴射機構を有する請求項1又は2に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
【請求項13】
前記可燃性粉体が石炭の粉体を含み、前記非可燃性粉体噴射機構が、前記石炭の粉体と前記非可燃性粉体とを噴射する請求項12に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
【請求項14】
セメント焼成設備におけるロータリーキルンに備えられるキルンバーナの燃焼に用いられる請求項1又は2に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
【請求項15】
可燃性粉体を供給する可燃性粉体供給機構、燃料ガスを供給する燃料ガス供給機構及び非可燃性粉体を供給する非可燃性粉体供給機構を有する燃料供給機構を備える燃料燃焼装置を、セメント焼成設備におけるロータリーキルンに備えられるキルンバーナとして用いた、セメントの製造方法。
【請求項16】
可燃性粉体を供給する可燃性粉体供給機構、燃料ガスを供給する燃料ガス供給機構及び非可燃性粉体を供給する非可燃性粉体供給機構を有する燃料供給機構を備える燃料燃焼装置が、ロータリーキルンに備えられるキルンバーナとして用いられるセメント焼成設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料燃焼装置を用いた燃焼方法及びセメント焼成設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化への関心が高まり、大気中への二酸化炭素の放出量の削減が求められている。発電所、焼却炉、セメント工場、製鉄所、工場設備等の各種設備において、操業により発生する二酸化炭素を含む排ガスを大気の放出量を低減し、回収することが検討されている。とりわけ、セメント工場における二酸化炭素の放出量の削減は、喫緊の課題として捉えられている。
【0003】
セメント焼成設備において、二酸化炭素の排出量の低減については様々な取り組みを行ってきた。例えば、特許文献1には、セメントキルン内に吹き込む主バーナにおいて、主燃料として可燃性ガスを用い、補助燃料として可燃性廃棄物を用いることが開示されている。また、特許文献2には、焼成炉に炭素含有熱エネルギー及びアンモニアを焼成炉に供給してセメントクリンカを焼成することが、特許文献3では、アンモニアを含むアンモニア含有ガスを噴射する噴射部を有する燃料供給部を備える燃料燃焼設備が開示されている。これら特許文献1~3に記載される方法では、可燃性ガス、非化石燃料、カーボンフリーの燃料等が用いられており、中でも非化石燃料、カーボンフリーの燃料等の燃料を使用することで二酸化炭素の排出量を低減しようとする技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-52746号公報
【特許文献2】特開2019-137579号公報
【特許文献3】特開2019-172484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、セメント焼成設備等の各種設備が備える燃料燃焼装置に供給する燃料として化石燃料の使用量を低減しながら、各種バーナの輻射伝熱量を維持することで、セメントクリンカの粉末原料等の加熱対象物に伝わる熱量を維持して、その焼成に適した状態を保ち、当該各種設備から排出される二酸化炭素の排出量を低減し、かつ各種設備を低コストで稼働し得る、燃料燃焼装置を用いた燃焼方法、セメントの製造方法及び燃料燃焼装置を備えるセメント焼成設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の燃料燃焼装置の運転方法を提供する。
1.可燃性粉体を供給する可燃性粉体供給機構、燃料ガスを供給する燃料ガス供給機構及び非可燃性粉体を供給する非可燃性粉体供給機構を有する燃料供給機構を備える燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
【0007】
さらに本発明は、以下の燃料燃焼装置の運転方法を、好ましい実施態様として提供する。
2.前記可燃性粉体が、化石燃料、非化石燃料及び可燃性廃棄物から選ばれる少なくとも一種の粉体である上記1に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
3.前記可燃性粉体が、石炭の粉体である上記2に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
4.前記燃料ガスが、可燃性ガス及びカーボンフリーガス燃料から選ばれる少なくとも一種の燃料ガスである上記1又は2に記載の燃焼燃料装置を用いた燃焼方法。
5.前記可燃性ガスが、化石燃料及び非化石燃料から選ばれる少なくとも一種のガスである上記4に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
6.前記カーボンフリーガス燃料が、アンモニア及び水素から選ばれる少なくとも一種のガスである上記4又は5に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
7.前記非可燃性粉体が、脱塩ダスト、バイオマス焼却灰、石炭灰、クリンカクーラ底部のダスト及びごみ焼却灰から選ばれる少なくとも一種の粉体である上記1又は2に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
8.前記非可燃性粉体の体積基準の平均粒子径が、0.1μm以上50μm以下である上記1又は2に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
9.前記非可燃性粉体の含水率が、5質量%以下である上記1又は2に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
10.前記非可燃性粉体の強熱減量が、10%以下である上記1又は2に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
11.前記非可燃性粉体の供給量を、前記燃料ガスの総発熱量と同じ総発熱量に相当する前記可燃性粉体の供給量1質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下とする上記1又は2に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
12.前記燃料燃焼装置が、前記可燃性粉体を噴射する可燃性粉体噴射機構、前記燃料ガスを噴射する燃料ガス噴射機構及び前記非可燃性粉体を噴射する非可燃性粉体噴射機構を有する上記1又は2に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
13.前記可燃性粉体が石炭の粉体を含み、前記非可燃性粉体噴射機構が、前記石炭の粉体と前記非可燃性粉体とを噴射する上記12に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
14.セメント焼成設備におけるロータリーキルンに備えられるキルンバーナの燃焼に用いられる上記1又は2に記載の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法。
【0008】
また、本発明は、以下のセメントの製造方法を提供する。
15.可燃性粉体を供給する可燃性粉体供給機構、燃料ガスを供給する燃料ガス供給機構及び非可燃性粉体を供給する非可燃性粉体供給機構を有する燃料供給機構を備える燃料燃焼装置を、セメント焼成設備におけるロータリーキルンに備えられるキルンバーナとして用いた、セメントの製造方法。
【0009】
また、本発明は、以下の燃料燃焼装置を備えるセメント焼成設備を提供する。
16.可燃性粉体を供給する可燃性粉体供給機構、燃料ガスを供給する燃料ガス供給機構及び非可燃性粉体を供給する非可燃性粉体供給機構を有する燃料供給機構を備える燃料燃焼装置が、ロータリーキルンに備えられるキルンバーナとして用いられるセメント焼成設備。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セメント焼成設備等の各種設備が備える燃料燃焼装置に供給する燃料として化石燃料の使用量を低減しながら、各種バーナの輻射伝熱量を維持することで、セメントクリンカの粉末原料等の加熱対象物に伝わる熱量を維持して、その焼成に適した状態を保ち、当該各種設備から排出される二酸化炭素の排出量を低減し、かつ各種設備を低コストで稼働することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の燃焼方法で用いられる燃料供給装置の噴射機構の好ましい一態様を示す模式図である。
【
図2】実施例及び比較例における、キルンバーナの先端からの距離に対するロータリーキルン内の温度を示すグラフである。
【
図3】実施例及び比較例における、キルンバーナの先端からの距離に対するロータリーキルン内の温度を示すグラフである。
【
図4】実施例及び比較例における、キルンバーナの先端からの距離に対するロータリーキルン内の輻射伝熱量を示すグラフである。
【
図5】実施例及び比較例における、キルンバーナの先端からの距離に対するロータリーキルン内の輻射伝熱量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されることはなく、発明の効果を阻害しない範囲において任意に変更して実施し得るものである。なお、本明細書中の「AA~BB」との数値範囲の表記は、「AA以上BB以下」であることを意味する。また、本明細書中において、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」及び「~」に係る数値は任意に組み合わせできる数値である。例えば、とある数値範囲について「CC~DD」及び「EE~FF」と記載されている場合、「CC~FF」、「EE~DD」といった数値範囲も含まれる。
【0013】
[燃料燃焼装置を用いた燃焼方法]
本実施形態の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法は、
可燃性粉体を供給する可燃性粉体供給機構、燃料ガスを供給する燃料ガス供給機構及び非可燃性粉体を供給する非可燃性粉体供給機構を有する燃料供給機構を備える、というものである。
【0014】
既述のように、二酸化炭素の排出量の低減については種々の研究が進められており、例えば上記特許文献1~3に記載される方法等が開示されている。二酸化炭素の排出量の低減は重要な課題の一つであるが、上記各種設備が備えるバーナの良好な燃焼状態、さらにはセメントクリンカの粉末原料等の加熱対象物に伝わる熱量を維持して、その焼成に適した状態を維持することは、稼働の安定性、燃料消費量の低減、また製品の品質において極めて重要であり、これらの性能に対して着目されるようになっている。そのため、二酸化炭素の排出量の低減だけでなく、二酸化炭素の排出量の低減と、稼働の安定性、燃料消費量の低減、また製品の品質を優れたものとすることを、高い水準で両立することが求められるようになっている。
【0015】
上記特許文献1~3に記載される方法は、二酸化炭素の排出量の低減に有効な方法である。しかし、稼働の安定性、燃料消費量の低減、また製品の品質に対してより着目されるようになっている中、これらの特許文献に記載される方法には、良好な燃焼状態、さらにはセメントクリンカの粉末原料等の加熱対象物に伝わる熱量を維持して、その焼成に適した状態の維持のための調整のしやすさの点で更なる改善の余地があることが分かってきた。
【0016】
例えば、特許文献1に記載される方法では、主燃料として可燃性ガス及び補助燃料として可燃性廃棄物が使用されており、可燃性廃棄物が輻射による加熱を促進させると記載されている。しかし、可燃性廃棄物が輻射とともに燃焼による加熱を担うため、輻射による加熱を向上させようとすると、燃焼による加熱も促進するため、安定した燃焼状態、さらにはセメントクリンカの粉末原料等の加熱対象物に伝わる熱量を維持して、その焼成に適した状態を維持するための調整がしにくいという課題がある。
【0017】
また特許文献2に記載される方法では、A重油等の化石燃料とアンモニアが使用されており、特許文献3に記載される方法では、アンモニア含有ガスと、アンモニアを含まない他の燃料として化石燃料等が使用されている。しかし、これらの特許文献に記載される方法では、輻射による加熱が十分ではなく、輻射による加熱の向上の点で改善の余地がある。
【0018】
本実施形態の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法では、可燃性粉体と燃料ガスと非可燃性粉体とを供給する。可燃性粉体と燃料ガスとを組み合わせて用いることにより、燃焼効率を向上させることができるため、化石燃料の使用量を低減することが可能となる。また、非可燃性粉体を供給することで、輻射伝熱量を維持することができるため、セメントクリンカの粉末原料等の加熱対象物に伝わる熱量を維持して、その焼成に適した状態を保つことが可能となる。以上の効果をもって、各種設備の全体としての二酸化炭素の排出量を低減することができ、かつ各種設備を低コストで稼働することが可能となった。
【0019】
本実施形態の燃焼方法で用いられる燃料燃焼装置について、使用させる燃料から説明する。
【0020】
(可燃性粉体)
可燃性粉体供給機構により供給される可燃性粉体としては、例えば石炭等の化石燃料;薪、炭、オガライト、オガ炭、ブリケット、木粉等の木質バイオマス燃料、刈草、野草、飼料作物等の各種草本を、炭化、半炭化、ペレット化等の処理をして得られる草本バイオマス燃料、食料廃棄物、家畜ふん尿、下水汚泥等の有機性廃棄物を、RDF化、RPF化等の処理をして得られる廃棄物バイオマス燃料などのバイオマス燃料、また木質チップ等の非化石燃料;廃プラスチック、肉骨粉及び繊維屑等の可燃性廃棄物等が好ましく挙げられる。中でも、安定的に入手しやすいこと等を考慮すると、石炭の粉体が好ましい。
これらの可燃性粉体は、一種単独で、又は複数種を組み合わせて使用することができる。
【0021】
可燃性粉体の形状について、後述するバーナの流路を通過し得る形状であれば特に制限なく、燃焼効率を向上させて化石燃料の使用量を低減し、二酸化炭素の排出量を低減すること、また取り扱いのしやすさ等を考慮すると、通常最大長さ5mm以下とすればよく、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下、更に好ましくは0.5mm以下である。下限としては特に制限はない。
【0022】
(燃料ガス)
燃料ガス供給機構により供給される燃料ガスとしては、ガス状の化石燃料、非化石燃料等の可燃性ガス;水素、アンモニア等のカーボンフリーガス燃料;などが好ましく挙げられる。またガス状の化石燃料としては天然ガス;石炭を乾留して得られるガス、木炭、石炭等の固体燃料の水蒸気改質により得られる水性ガス等の石炭ガス;重油等の石油留分を熱分解して得られるオイルガス;などが代表的に挙げられる。また非化石燃料としては、合成メタン等の合成ガス等が好ましく挙げられる。
【0023】
上記の中でも、二酸化炭素の排出量の低減の観点から、カーボンフリーガス燃料、合成ガスが好ましい。これらの燃料ガスは、一種単独で、又は複数種を組み合わせて使用することが可能である。
【0024】
燃料ガスの使用量としては、上記可燃性粉体の使用量100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは8質量部以上であり、上限として好ましくは20質量部以下、より好ましくは18質量部以下、さらにこの好ましくは15質量部以下である。燃料ガスの使用量を上記範囲内とすると、燃焼効率を向上させて化石燃料の使用量を低減し、二酸化炭素の排出量を低減することができる。
【0025】
(非可燃性粉体)
非可燃性粉体供給機構により供給される非可燃性粉体としては、いわゆるダスト類(煤塵)、燃え殻(灰)と称されるものが好ましく挙げられる。ダスト類(煤塵)、燃え殻(灰)は、いずれも可燃性の物質を燃焼、焼成した後の煤塵、灰等の粉体であるため、可燃性の粉体ではなく、非可燃性の粉体となる。
よって、非可燃性粉体は、本実施形態の燃焼方法において、輻射伝熱量を維持することによりセメントクリンカの粉末原料等の加熱対象物に伝わる熱量を維持して、その焼成に適した状態を保つことに寄与するものの、燃焼性の向上には寄与しないものであるといえる。
【0026】
ダスト類(煤塵)としては、脱塩ダスト、廃砂ダスト、電気炉ダスト、転炉ダスト、鉄鋼ダスト、製紙スラッジ焼却ダスト、サイクロン捕集ダスト、クリンカクーラ底部のダスト(AQCダスト)等の各種工場設備で排出されるダスト等が挙げられる。本実施形態の燃焼方法が採用される各種工場設備から排出されるダストを使用することが、利便性を考慮すると好ましい。例えば、本実施形態の燃焼方法をセメントクリンカ焼成設備で用いる場合は、脱塩ダスト、クリンカクーラ底部のダストを用いることが好ましい。
これらのダスト類(煤塵)は、一種単独で、又は複数種を組み合わせて使用することができる、
【0027】
燃え殻(灰)としては、石炭灰(フライアッシュ)、バイオマス焼却灰、ごみ焼却灰、コークス灰、重油燃焼灰、煙道灰、下水道焼却灰、製紙スラッジ焼却灰等の各種工場設備で排出される燃え殻(灰)が挙げられる。本実施形態の燃焼方法が採用される各種工場設備から排出されるダストを使用することが、利便性を考慮すると好ましい。例えば、本実施形態の燃焼方法をセメントクリンカ焼成設備で用いる場合は、石炭灰、バイオマス焼却灰、ごみ焼却灰を用いることが好ましい。
これらの燃え殻(灰)は、一種単独で、又は複数種を組み合わせて使用することができる。
【0028】
非可燃性粉体の体積基準の平均粒子径は、後述するバーナの流路を通過し得る形状であれば特に制限ない。輻射伝熱量によるセメントクリンカの粉末原料等の加熱対象物の焼成の状態を向上させて、化石燃料の使用量を低減し、二酸化炭素の排出量を低減すること、また取り扱いのしやすさ等を考慮すると、非可燃性粉体の体積基準の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、上限として好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
体積基準の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定方法により測定することができる、累積体積百分率が50%のときの粒子径(D50)である。
【0029】
非可燃性粉体の含水率は、輻射伝熱量によるセメントクリンカの粉末原料等の加熱対象物の焼成の状態を向上させて、化石燃料の使用量を低減し、二酸化炭素の排出量を低減することを考慮すると、少なければ少ないほど好ましく、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0030】
非可燃性粉体の強熱減量は、輻射伝熱量によるセメントクリンカの粉末原料等の加熱対象物の焼成の状態を向上させて、化石燃料の使用量を低減し、二酸化炭素の排出量を低減することを考慮すると、低ければ低いほど好ましく、通常10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下、さらに好ましくは5%以下である。強熱減量は、未燃炭素量の含有の度合いの指標となるものであり、本実施形態の燃焼方法で用いられる非可燃性粉体は、強熱減量が上記のように小さいものであり、燃焼性に寄与することがなく、非可燃性を呈するものであるといえる。
非可燃性粉体の強熱減量は、JIS A6201:2015(コンクリート用フライアッシュ)の「8.3強熱減量」に規定される方法に準拠して測定することができる。
【0031】
非可燃性粉体の供給量は、燃料ガスの総発熱量と同じ総発熱量に相当する可燃性粉体の供給量1質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、上限として好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、よりさらに好ましくは3.5質量部以下である。
【0032】
例えば石炭等の可燃性粉体には通常灰分が含まれている。本発明者は、可燃性粉体のかわりに燃料ガスを用いる場合、灰分が不足することで輻射伝熱量が低減するため、例えばセメントクリンカの粉末原料等の加熱対象物に伝わる熱量の低減により焼成の状態が悪化することに着目し、非可燃性粉体を用いることで灰分を補充することを検討した。本実施形態の燃焼方法では、石炭等の可燃性粉体の使用量を低減するため、燃料ガスを使用し、また可燃性粉体の使用量の低減による灰分の不足に対応するため、非可燃性粉体を供給しているともいえる。
本実施形態の燃焼方法によれば、可燃性粉体及び燃料ガスの種類及び使用量に応じて、上記範囲内で非可燃性粉体を供給することで、灰分の供給量を調整することができるため、輻射伝熱量を維持しやすくなり、例えばセメントクリンカの粉末原料等の加熱対象物に伝わる熱量の向上により焼成の状態を向上させやすくなる。その結果、燃焼効率を向上させることができるため、化石燃料の使用量を低減することができ、結果として二酸化炭素の排出量を低減することが可能となる。また、既述のように燃料ガスとして非化石燃料、カーボンフリーガス燃料等を採用することで、二酸化炭素の排出量のさらなる低減に寄与することができる。
【0033】
(燃料供給機構)
本実施形態の燃焼方法で用いられる燃料燃焼装置は、上記可燃性粉体を供給するための可燃性粉体供給機構、上記燃料ガスを供給する燃料ガス供給機構及び上記非可燃性粉体供給機構を有する非可燃性粉体供給機構の燃料供給機構を備える。燃料供給機構を有することで、可燃性粉体、燃料ガス及び非可燃性粉体を供給することができ、これらの燃料等を燃焼させることができる。
【0034】
燃料供給機構は、可燃性粉体、燃料ガス及び非可燃性粉体を供給できれば、その形式には特に制限はない。例えば、可燃性粉体供給機構であれば、可燃性粉体の供給にあたり、搬送用気体を用いて空送できるような構成を有することが好ましい。より具体的には、空気等の搬送用気体に可燃性粉体を導入するためのエジェクター(又はインラインミキサー)、また可燃性粉体を定量的に搬送用気体に供給するため、定量供給器といった計装品を備えているとよい。また、可燃性粉体の搬送を行うための配管、またブロア等の機器を備えていてもよい。
また、非可燃性粉体供給機構についても、上記可燃性粉体供給機構と同様である。
【0035】
燃料ガス供給機構は、少なくとも燃料ガスを供給するための配管を備えていればよく、必要に応じて空気等の気体に導入するためのエジェクター(又はインラインミキサー)を備えていてもよい。また、燃料ガスの流量を把握し、流量を調整するため、流量計、流量調節弁等の計装品を備えていてもよい。
【0036】
(噴射機構)
本実施形態の燃焼方法で用いられる燃料供給装置は、上記燃料供給機構に加えて、可燃性粉体を噴射する可燃性粉体噴射機構、燃料ガスを噴射する燃料ガス噴射機構及び非可燃性粉体を噴射する非可燃性粉体噴射機構の燃料噴射機構を備えていることが好ましい。燃料噴射機構を有することで、各燃料及び非加熱粉体をより均一に噴射することができる。そのため、燃焼効率を向上させることができるので、化石燃料の使用量を低減することができ、結果として二酸化炭素の排出量を低減することが可能となる。
【0037】
燃料供給装置が好ましく有する噴射機構について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態の燃焼方法で用いられる燃料供給装置が好ましく有する噴射機構の好ましい一態様を示す模式図である。
図1には、噴射機構として、燃料燃焼装置の一つとなるロータリーキルンに備えられるキルンバーナの噴射口が示されている。ロータリーキルンは、セメント焼成設備に備えられる機器であり、セメントクリンカの粉末原料を焼成し、セメントクリンカとする機器である。キルンバーナは、セメントクリンカの粉末原料の焼成に用いられる燃料燃焼装置である。
【0038】
図1に示されるキルンバーナは、円柱であり、その断面形状として円形を呈しており、キルンバーナの噴射口として噴射口11~15の5種の噴射口を有している。また、これらの噴射口11~15は、複数の同心円に沿って設けられており、最も内周側の領域に2つの噴射口、噴射口11及び12を有し、より外周側に向けて、環状である噴射口13、同心円の周上に沿って複数の円形の噴射口14、さらにその外周側に複数の円形の噴射口15を有することが示されている。
【0039】
噴射口13は、主燃料の噴射口として用いることが好ましく、本実施形態の燃焼方法においては、好ましくは可燃性粉体及び燃料ガスの少なくとも一方が噴射される(以下、噴射口13から噴射される可燃性粉体及び燃料ガスは「主燃料」と称することがある。)。この場合、可燃性粉体としては、石炭の粉体であることが好ましい。噴射口13から主燃料を噴射することで、燃焼状態を向上させることができる。また、燃焼効率を向上させることができるので、化石燃料の使用量を低減することができ、結果として二酸化炭素の排出量を低減することが可能となる。また、噴射口13からは、上記主燃料とともに非可燃性粉体を噴射させることが好ましい。
【0040】
噴射口11及び12は、噴射口13から噴射される環状の主燃料の内周側の領域にむけて、燃料供給機構から供給される燃料が噴射される。ここで、噴射口11及び12から噴射される燃料としては、上記可燃性粉体及び燃料ガスの主燃料の他、可燃性液体も採用し得る。
可燃性液体としては、灯油、重油、再生油等の化石燃料;廃油、廃グリセリン等の可燃性廃棄物;廃植物油(例えば植物性廃食用油等)、その他産業廃棄物から製造した再生燃料等の再生燃料;等が代表的に挙げられる。
【0041】
噴射口11~13は、円柱のキルンバーナの中心軸と平行な円形、又は環状の流路となっており、これらの噴射口により主燃料の旋回角度は好ましくは0°に設定される。ここで、本明細書において、旋回角度の数値は設定値であり、実際に主燃料が噴射される場合の旋回角度はずれを生じることになる。ずれが生じる場合、通常±10°以下である。
【0042】
最も内周側に設けられる噴射口11及び12について、
図1では噴射口12の方が噴射口11よりも開口部が大きく示されている。このように、噴射口11及び12の開口部は異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0043】
図1において、噴射口11及び12はいずれも1つ設けられていることが示されているが、いずれの噴射口も複数設けられていてもよい。この場合、例えば噴射口11を1つ設け、より開口部の大きい噴射口12を2つ設けるといったこともできる。より開口部の小さい噴射口11を、より開口部の大きい噴射口12よりも多く設けることが好ましい。開口部の小さい噴射口11をより多く設けることで、主燃料、また可燃性液体の流速を高めることができるため、燃焼状態を向上させることができる。また、燃焼効率を向上させることができるので、化石燃料の使用量を低減することができ、結果として二酸化炭素の排出量を低減することが可能となる。
【0044】
噴射口11の個数としては、噴射機構(
図1の場合はキルンバーナ)の規模、使用する燃料の種類等に応じてかわりえるため一概にはいえないが、1個又は2個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。また噴射口12の個数としては、噴射口11と同様に一概にはいえないが、1個以上であることが好ましく、上限として好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下、さらに好ましくは2個以下である。
【0045】
噴射口13における主燃料の噴射にあたり、主燃料の噴射速度は、好ましくは15m/s以上、より好ましくは20m/s以上、さらに好ましくは25m/s以下であり、上限として好ましくは60m/s以下である。上記範囲内であると、噴射口13から噴射される主燃料が直進流で噴射されることとなり、良好な燃焼状態が得られるため、より高温(ロータリーキルンであれば約1450℃)で燃焼することができる。また、燃焼効率の向上により、化石燃料の使用量を低減することができ、二酸化炭素の排出量を低減しやすくなる。
可燃性粉体は、既述のように通常空気等の搬送用気体とともに噴射されるため、可燃性粉体の噴射速度は搬送用気体の流速となる。
【0046】
噴射口13から可燃性粉体、又は可燃性粉体及び非可燃性粉体を噴射させる場合、搬送用空気の使用量は、主燃料となる可燃性粉体の種類に応じて異なるため一概にはいえないが、可燃性粉体1ton、又は可燃性粉体及び非可燃性粉体の合計量1tonに対して、通常3Nm3以上、好ましくは5Nm3以上、より好ましくは10Nm3以上であり、上限としては通常25Nm3以下、好ましくは20Nm3以下である。
【0047】
また、噴射口13から可燃性粉体及び非可燃性粉体を噴射させる場合、可燃性粉体及び非可燃性粉体の種類に応じて異なるため一概にはいえないが、非可燃性粉体1質量部に対する可燃性粉体の使用量は、通常3質量部以上、好ましくは5質量部以上であり、上限としては通常15質量部以下、好ましくは13質量部以下である。
【0048】
噴射口14は、主燃料の噴射口となる噴射口13の外周側であり、かつ最も近くに設けられる噴射口であり、さらにその外周側に噴射口15が設けられている。
噴射口14は、燃料ガス、非可燃性粉体噴射機構として用いられることが好ましい。主燃料の噴射機構として用いられる噴射口13の近くから非可燃性粉体を噴射させることで、非加熱性粉体による輻射伝熱量をより効果的に利用することができるため、セメントクリンカの粉末原料等の加熱対象物の焼成の状態を向上させることができる。また、燃料ガスを噴射させると、燃焼効率を向上させることができる。よって、いずれとしても、化石燃料の使用量を低減することができ、結果として二酸化炭素の排出量を低減することが可能となる。
【0049】
噴射口14が非可燃性粉体噴射機構として用いられる場合、噴射口14は、非可燃性粉体とともに可燃性粉体として石炭の粉体を噴射することが好ましい。すなわち、非可燃性粉体噴射機構は、石炭の粉体と非可燃性粉体とを噴射するものであることが好ましい。これにより、非可燃性粉体による輻射伝熱量をさらに効果的に利用することが可能となるためセメントクリンカの粉末原料等の加熱対象物の焼成の状態をさらに向上させることができる。また、燃焼効率をさらに向上させることができるので、化石燃料の使用量をさらに低減することができ、結果として二酸化炭素の排出量を低減することが可能となる。
【0050】
噴射口14からは、燃料ガス、空気を単独で噴射してもよいし、燃料ガス及び空気を同時に噴射してもよい。燃料ガス及び空気を同時に噴射する場合、燃料ガス1tonに対する空気の使用量は、燃料ガスの種類に応じて異なるため一概にはいえないが、燃料ガス1tonに対して、通常3Nm3以上、好ましくは5Nm3以上であり、上限としては通常20Nm3以下、好ましくは15Nm3以下である。
【0051】
噴射口15は、通常燃料ガス、空気の噴射機構として用いられる。噴射口15における燃料ガス又は空気の噴射速度としては、好ましくは50m/s以上、より好ましくは70m/s以上、さらに好ましくは100m/s以下であり、上限としては300m/s以下とすればよい。
また、噴射口15から噴射される燃料ガス、空気は、旋回速度0°以上とすることが好ましく、上限として好ましくは30°以下、より好ましくは15°以下である。
【0052】
噴射口15を、燃料ガス、空気の噴射機構として用い、その噴射速度を上記範囲内とすると、燃焼状態を向上させることができる。また、燃焼効率を向上させることができるので、化石燃料の使用量を低減することができ、結果として二酸化炭素の排出量を低減することが可能となる。また、旋回速度を上記範囲内とする場合も、同様である。
【0053】
これらの噴射口14及び15は、複数の円形の流路が、異なる同心円の円周上に等間隔で配置されていることが示されている。噴射口14は、合計26個の円形の流路により構成されており、噴射口15は、合計18個の円形の流路により構成されている。
図1に示される噴射口14及び15の流路の個数は、あくまで好ましい一態様であり、これに限られるものではなく、噴射口14の合計個数は、噴射口15の合計個数と同じであってもよいし、異なっていてもよい。燃焼効率を向上させる観点から、噴射口14の合計個数は、噴射口15の合計個数以上であることが好ましい。
【0054】
噴射口14の個数は、上記噴射口11と同様に一概にはいえないが、好ましくは12個以上、より好ましくは16個以上、さらに好ましくは20個以上であり、上限として好ましくは32個以下、より好ましくは30個以下、さらに好ましくは28個以下である。噴射口15の個数は、噴射口14と同様に一概にはいえないが、好ましくは12個以上、より好ましくは14個以上、さらに好ましくは16個以上であり、上限として好ましくは24個以下、より好ましくは22個以下、さらに好ましくは20個以下である。
噴射口14及び15について、上記の構成を有することで、燃焼状態を向上させることができる。また、燃焼効率を向上させることができるので、化石燃料の使用量を低減することができ、結果として二酸化炭素の排出量を低減することが可能となる。
【0055】
本実施形態の燃焼方法は、従来化石燃料等の可燃性粉体を燃焼させる燃料燃焼装置が備えられる機器において採用することができ、例えばセメント焼成設備に設けられる機器、具体的には粉末原料を予熱及びか焼するサスペンションプレヒータ、予熱及びか焼された粉末原料を焼成し、セメントクリンカとするロータリーキルン等に設けられるバーナの燃焼に好適に採用することができる。
中でも、ロータリーキルンバーナの燃焼に好適に採用することができる。すなわち、本実施形態の燃焼方法において用いられる燃料燃焼装置は、セメント焼成設備に設けられる、サスペンションプレヒータ、ロータリーキルンにおける燃焼を担うバーナとして好適に用いられ、例えば1450℃程度と極めて高温の燃焼が可能であることを考慮すると、ロータリーキルンにおける燃焼を担うバーナ(ロータリーキルンバーナ)として好適に用いられる。
【0056】
[セメントの製造方法]
本実施形態のセメントの製造方法は、
可燃性粉体を供給する可燃性粉体供給機構、燃料ガスを供給する燃料ガス供給機構及び非可燃性粉体を供給する非可燃性粉体供給機構を有する燃料供給機構を備える燃料燃焼装置を、セメント焼成設備におけるロータリーキルンに備えられるキルンバーナとして用いた、セメントの製造方法である。
【0057】
可燃性粉体及びこれを供給する可燃性粉体供給機構、燃料ガス及びこれを供給する燃料ガス供給機構、非可燃性粉体及びこれを供給する非可燃性粉体供給機構、可燃性粉体供給機構、燃料ガス供給機構及び非可燃性粉体供給機構を有する燃料供給機構、またこれらの供給機構を備える燃料燃焼装置は、上記本実施形態の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法で説明したとおりである。
【0058】
本実施形態の製造方法で用いられる燃料供給装置が、可燃性粉体噴射機構、燃料ガス噴射機構及び非可燃性粉体噴射機構の燃料噴射機構を備えることが好ましいことも、上記燃料燃焼装置の燃焼方法で説明したとおりである。
その他、これらの燃料ガス供給機構及び燃料噴射機構における諸条件、セメント焼成設備におけるロータリーキルンに備えられるキルンバーナ等も、上記本実施形態の燃料燃焼装置を用いた燃焼方法で説明したとおりである。
【0059】
[セメント焼成設備]
本実施形態のセメント焼成設備は、
可燃性粉体を供給する可燃性粉体供給機構、燃料ガスを供給する燃料ガス供給機構及び非可燃性粉体を供給する非可燃性粉体供給機構を有する燃料供給機構を備える燃料燃焼装置が、ロータリーキルンに備えられるキルンバーナとして用いられる、
というものである。
【0060】
本実施形態のセメント焼成設備は、公知のセメント焼成設備が備える機器、例えばセメント原料を乾燥及び粉砕して粉末原料とする乾燥及び粉砕装置、粉末原料を予熱及びか焼するサスペンションプレヒータ、予熱及びか焼された粉末原料を焼成し、セメントクリンカとするロータリーキルン、セメントクリンカを冷却するクリンカクーラ、サスペンションプレヒータから排出される排ガスを冷却する排ガス冷却装置等の機器を備えることができる。
【0061】
本実施形態のセメント焼成設備における燃料燃焼装置は、上記予熱及びか焼された粉末原料を焼成し、セメントクリンカとするロータリーキルンに備えられるバーナとして用いられる。すなわち、粉末原料の焼成に用いられる。
【実施例0062】
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら制限されるものではない。
【0063】
シミュレーションソフト(「Ansys Fluent(製品名)」、ANSYS,Inc.製)を用いてロータリーキルン内の内部の燃焼解析を行った。シミュレーションの条件は以下のとおりである。なお、計算負荷軽減のため、ロータリーキルンの長さ30m(キルンバーナ設置側)を燃焼解析の対象とした。
ロータリーキルン:直径:3.1m、長さ:66m
キルンバーナ:
図1に示される噴射口を有するキルンバーナ(直径:1.0m、長さ:6.5m、噴射口11:直径0.2mの円形、噴射口12:直径0.25mの円形、噴射口13:幅0.13m、噴射口14:直径0.13mの円形、噴射口15:直径0.15mの円形)
【0064】
石炭の粉体(可燃性粉体)
低位発熱量:28946kJ/kg
水分:3質量%
揮発分:37質量%
灰分:8質量%
固体炭素分:51質量%
【0065】
天然ガス(燃料ガス)
組成:メタン100%
低位発熱量:35.90MJ/Nm3
【0066】
非可燃性粉体の性状を、以下の第1表に示す。なお、強熱減量及び含水率は0である。
【0067】
【0068】
(実施例1~8及び比較例1~2)
上記可燃性粉体、燃料ガス及び非可燃性粉体、また空気を、以下の第2表に示される流量で各噴射口から噴射した際の、キルン内の温度及び輻射伝熱量をシミュレーションにより算出した。各噴射口から供給される空気は、可燃性粉体及び非可燃性粉体の搬送用として、また燃焼用として使用される。また、二次空気は、クリンカクーラで高温のセメントクリンカを冷却した後の高温の空気であり、第2表に記載される温度でロータリーキルンに導入される空気である。
【0069】
実施例及び比較例におけるシミュレーションに使用した上記シミュレーションソフトは、汎用ソフトであり、セメントクリンカのキルンバーナ、その他類似のバーナのシミュレーションに利用されている。また、従来の操業実績となる比較例1のシミュレーション結果と、従来の操業状況とを比較すると、キルン内の最高温度の位置及びキルン出口の温度が操業状況と概ね一致していることを確認しており、信頼性の高い結果であると考えられる。
【0070】
【0071】
シミュレーションの結果を、
図2~
図5に示す。
図2は、実施例1~5及び比較例1~2の、キルンバーナの先端からの距離に対するロータリーキルン内の温度を示し、
図3は、実施例6~8及び比較例1~2の、キルンバーナの先端からの距離に対するロータリーキルン内の温度を示す。本実施形態の燃焼方法によれば、ロータリーキルン内の温度を高い温度で維持し得ることが確認された。実施例5について、ロータリーキルン内の温度は他の実施例に比べて低くなっているが許容の範囲内であり、また後述するように輻射伝熱量が大きく優れているため、クリンカ生成量の製造の点で何ら問題のない結果である。
非可燃性粉体を使用しなかった比較例1及び2について、比較例1は、実施例の結果と同程度の結果を得るために石炭の使用量を調整した例であるが、実施例に比べて20%程度増量する必要があることが確認された。また、比較例1ではキルンバーナに近い領域で特に温度が低下する傾向を示すことが分かった。
【0072】
図4は、実施例1~5及び比較例2の、キルンバーナの先端からの距離に対するロータリーキルン内における輻射伝熱量について、比較例1の数値を100としたときの割合を示し、
図5は、実施例2、6~8及び比較例2の、キルンバーナの先端からの距離に対するロータリーキルン内における輻射伝熱量について、比較例1の数値を100としたときの割合を示す。
【0073】
実施例の結果によれば、比較例1に対して輻射伝熱量が小さくなる領域(100を下回る領域)があるものの、キルンバーナ先端から8m以上離れた領域では同等か上回っており、セメントクリンカの焼成に適した状態を保てていることが分かる。キルンバーナ先端から、特に8m以上20m付近までの領域における輻射伝熱量を維持することは、セメントクリンカの焼成に適した状態の維持に極めて有効である。なお、上記領域については、ロータリーキルンの大きさ、セメントクリンカ生産能力、バーナの大きさ等の操業条件によりかわり得ることはいうまでもない。
また、実施例のロータリーキルン内の輻射伝熱量は、比較例2に比べて増加傾向を示しており、セメントクリンカの焼成にあたり、良好な輻射伝熱量であると考えられる。