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特開2024-141107ワークトレイおよび焼結磁石の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141107
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ワークトレイおよび焼結磁石の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20241003BHJP
   B65G 1/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01F41/02 G
B65G1/08 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052576
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(72)【発明者】
【氏名】長濃 健太
【テーマコード(参考)】
3F022
5E062
【Fターム(参考)】
3F022EE01
3F022MM11
3F022NN12
5E062CG01
(57)【要約】
【課題】製造工程のそれぞれの段階におけるワークの形状および寸法に整合した多種のトレイを用意する必要を無くする。
【解決手段】本発明のワークトレイは、二次元的に配列された複数の凹部を上面に有し、前記複数の凹部のそれぞれは、第1深さを有する第1凹部領域と、第1凹部領域の外側に位置して前記第1深さよりも浅い第2深さを有する第2凹部領域とを含む。平面視において、第1凹部領域の外形は、第1方向に沿って延びる一対の第1辺と、第1方向に交差する第2方向に沿って延びる一対の第2辺とを有し、かつ、第2凹部領域の外形は、第1方向に沿って延びる一対の第3辺と、第2方向に沿って延びる一対の第4辺とを有する。第1凹部領域における前記一対の第1辺は、第1のワークの前記第2方向における位置を規制し、第2凹部領域における一対の第3辺は、第1のワークよりも大きな第2のワークの第2方向における位置を規制するように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークを収納するワークトレイであって、
二次元的に配列された複数の凹部を上面に有し、前記複数の凹部のそれぞれは、
第1深さを有する第1凹部領域と、
前記第1凹部領域の外側に位置して前記第1深さよりも浅い第2深さを有する第2凹部領域と
を含み、
前記上面の上方から見た平面視において、前記第1凹部領域の外形は、第1方向に沿って延びる一対の第1辺と、前記第1方向に交差する第2方向に沿って延びる一対の第2辺とを有し、かつ、前記第2凹部領域の外形は、前記第1方向に沿って延びる一対の第3辺と、前記第2方向に沿って延びる一対の第4辺とを有し、
前記第1凹部領域における前記一対の第1辺は、第1のワークの前記第2方向における位置を規制し、
前記第2凹部領域における前記一対の第3辺は、前記第1のワークよりも大きな第2のワークの前記第2方向における位置を規制するように構成されている、ワークトレイ。
【請求項2】
前記第2方向は前記第1方向に直交している、請求項1に記載のワークトレイ。
【請求項3】
前記第2深さは、前記第1深さの40%以上60%以下の範囲にある請求項1に記載のワークトレイ。
【請求項4】
前記一対の第1辺の間隔は、前記一対の第3辺の間隔の90%以上100%以下であり、
前記一対の第2辺の間隔は、前記一対の第4辺の間隔の40%以上90%以下である、請求項1に記載のワークトレイ。
【請求項5】
前記一対の第2辺は、それぞれ、前記一対の第4辺よりも前記凹部の内側に位置している、請求項4に記載のワークトレイ。
【請求項6】
前記第1凹部領域における前記一対の第2辺の一方は、前記第1のワークの前記第1方向における位置を規制するように構成され、かつ、前記第2凹部領域における前記一対の第4辺の一方は、前記第2のワークの前記第1方向における位置を規制するように構成されている、請求項1に記載のワークトレイ。
【請求項7】
前記複数の凹部50は、第1の材料から形成されたインナー部材に設けられており、
前記インナー部材を収容するケースを更に備える、請求項1に記載のワークトレイ。
【請求項8】
前記第1深さは、12mm以上40mm以下の範囲にあり、
前記第2深さは、5mm以上20mm以下の範囲にある、請求項1に記載のワークトレイ。
【請求項9】
焼結磁石の複数のワークであって、第1のワークおよび前記第1のワークよりも大きな第2のワークを含む複数のワークを準備する工程と、
請求項1から8のいずれか1項に記載されたワークトレイの前記第1凹部領域上に前記第1のワークを配置する工程と、
前記ワークトレイの前記第2凹部領域上に前記第2のワークを配置する工程と、
を含む、焼結磁石の製造方法。
【請求項10】
前記複数のワークを準備する工程は、前記第1のワークを前記第2のワークから作製する工程を含む、請求項9に記載の焼結磁石の製造方法。
【請求項11】
前記第1のワークを前記第2のワークから作製する工程は、前記第2のワークを機械的に加工する工程を含む、請求項10に記載の焼結磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ワークトレイおよび焼結磁石の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、サイズが異なる複数の半導体チップを載せる樹脂製のトレイを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-59472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
R-T-B系焼結磁石(Rは希土類元素であり、TはFe又はFeとCoであり、Bはホウ素である)およびフェライト磁石などの焼結磁石の製造分野では、同一品種の製品であっても、製造工程の各段階において、ワークの形状および寸法が機械的な加工などによって多様に変化していく。規格に応じて量産される半導体チップに比べると、R-T-B系焼結磁石では、形状および寸法の自由度が高く、同一の工場で生産されるR-T-B系焼結磁石そのものが品種によって大きく異なり得る。このため、製造工程のそれぞれの段階におけるワークの形状および寸法に整合した多種のトレイを用意することは難しい。
【0005】
そこで、本発明の実施形態は、製造工程の各段階において、ワークの形状および寸法が機械的な加工などによって多様に変化し得るワークの移送を可能にするワークトレイ、および焼結磁石の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の項目の解決手段を提供する。
[項目1]
複数のワークを収納するワークトレイであって、
二次元的に配列された複数の凹部を上面に有し、前記複数の凹部のそれぞれは、
第1深さを有する第1凹部領域と、
前記第1凹部領域の外側に位置して前記第1深さよりも浅い第2深さを有する第2凹部領域と、
を含み、
前記上面の上方から見た平面視において、前記第1凹部領域の外形は、第1方向に沿って延びる一対の第1辺と、前記第1方向に交差する第2方向に沿って延びる一対の第2辺とを有し、かつ、前記第2凹部領域の外形は、前記第1方向に沿って延びる一対の第3辺と、前記第2方向に沿って延びる一対の第4辺とを有し、
前記第1凹部領域における前記一対の第1辺は、第1のワークの前記第2方向における位置を規制し、
前記第2凹部領域における前記一対の第3辺は、前記第1のワークよりも大きな第2のワークの前記第2方向における位置を規制するように構成されている、ワークトレイ。
[項目2]
前記第2方向は前記第1方向に直交している、項目1に記載のワークトレイ。
[項目3]
前記第2深さは、前記第1深さの40%以上60%以下の範囲にある項目1または2に記載のワークトレイ。
[項目4]
前記一対の第1辺の間隔は、前記一対の第3辺の間隔の90%以上100%以下であり、
前記一対の第2辺の間隔は、前記一対の第4辺の間隔の40%以上90%以下である、項目1から3のいずれかに記載のワークトレイ。
[項目5]
前記一対の第2辺は、それぞれ、前記一対の第4辺よりも前記凹部の内側に位置している、項目4に記載のワークトレイ。
[項目6]
前記第1凹部領域における前記一対の第2辺の一方は、前記第1のワークの前記第1方向における位置を規制するように構成され、かつ、前記第2凹部領域における前記一対の第4辺の一方は、前記第2のワークの前記第1方向における位置を規制するように構成されている、項目1から5のいずれかに記載のワークトレイ。
[項目7]
前記複数の凹部は、第1の材料から形成されたインナー部材に設けられており、
前記インナー部材を収容するケースを更に備える、項目1から6のいずれかに記載のワークトレイ。
[項目8]
前記第1深さは、12mm以上40mm以下の範囲にあり、
前記第2深さは、5mm以上20mm以下の範囲にある、項目1から7のいずれかに記載のワークトレイ。
[項目9]
焼結磁石の複数のワークであって、第1のワークおよび前記第1のワークよりも大きな第2のワークを含む複数のワークを準備する工程と、
項目1から項目8のいずれか1項に記載されたワークトレイの前記第1凹部領域上に前記第1のワークを配置する工程と、
前記ワークトレイの前記第2凹部領域上に前記第2のワークを配置する工程と、
を含む、焼結磁石の製造方法。
[項目10]
前記複数のワークを準備する工程は、前記第1のワークを前記第2のワークから作製する工程を含む、項目9に記載の焼結磁石の製造方法。
[項目11]
前記第1のワークを前記第2のワークから作製する工程は、前記第2のワークを機械的に加工する工程を含む、項目10に記載の焼結磁石の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、製造工程の各段階において、ワークの形状および寸法が機械的な加工などによって多様に変化し得るワークの移送を可能にするワークトレイ、および焼結磁石の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態におけるワークトレイを模式的に示す上面図である。
図2図1のワークトレイを模式的に示す斜視図である。
図3】本開示の実施形態における他のワークトレイを模式的に示す上面図である。
図4図1のワークトレイにおける凹部の上面および断面を模式的に示す図である。
図5図3のワークトレイにおける凹部の上面および断面を模式的に示す図である。
図6図5に示されるワークトレイの凹部に収容された第1のワークを模式的に示す図である。
図7図5に示されるワークトレイの凹部に収容された第2のワークを模式的に示す図である。
図8】本開示の実施形態におけるワークトレイが水平に第1のワークを載せている状態を模式的に示す断面図である。
図9】本開示の実施形態におけるワークトレイが第1のワークを載せて移送されるときの傾斜を模式的に示す断面図である。
図10】本開示の実施形態におけるワークトレイが水平に第2のワークを載せている状態を模式的に示す断面図である。
図11】本開示の実施形態におけるワークトレイが第2のワークを載せて移送されるときの傾斜を模式的に示す断面図である。
図12】本開示の実施形態におけるワークトレイの他の例を模式的に示す上面図である。
図13図10のワークトレイを移送するワークトレイ移送装置の構成例を模式的に示す断面図である。
図14】本開示の実施形態における他のワークトレイが第1のワークを載せて移送されるときの傾斜を模式的に示す断面図である。
図15】本開示の実施形態における他のワークトレイが第2のワークを載せて移送されるときの傾斜を模式的に示す断面図である。
図16】ワークトレイ移送装置が図14のワークトレイを移送する様子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書または特許請求の範囲において、三角形、四角形などの多角形は、数学的に厳密な意味の多角形に限定されず、多角形の隅に角丸め、面取り、角取り、丸取り等の加工が施された形状も含むものとする。また、多角形の隅(辺の端)に限らず、辺の中間部分に加工が施された形状も同様に多角形と呼ぶものとする。つまり、多角形をベースに残しつつ、部分的な加工が施された形状は、本明細書及び特許請求の範囲で記載される“多角形”に含まれる。
【0010】
多角形に限らず、台形や円形や凹凸など、特定の形状を表す言葉についても同様である。その形状を形成する各辺を扱う場合も同様である。つまり、ある辺において、隅や中間部分に加工が施されていたとしても、“辺”には加工された部分も含まれる。部分的な加工のない“多角形”や“辺”を、加工された形状と区別する場合は“厳密な”を付して、例えば、“厳密な四角形”などと記載するものとする。
【0011】
本明細書または特許請求の範囲において、ある名称によって特定される要素が複数あり、それぞれの要素を区別して表現する場合に、要素のそれぞれの頭に“第1”、“第2”などの序数詞を付記することがある。例えば、“第1”及び“第2”の序数詞は、単に2個の部材または構成要素を区別するために使用されている。これらの序数詞の順序に特別の意味はない。同一の序数詞が付された要素名が、明細書と特許請求の範囲との間で、同一の要素を指さない場合がある。また、特許請求の範囲に記載された請求項1において、“第1凹部領域”の用語が使用され、“第2凹部領域”の用語が使用されていない場合、請求項1に係る発明は、1個の凹部領域を備えていればよく、その凹部領域は、明細書中の“第1凹部領域”に限定されず、“第2凹部領域発光素子”であり得る。
【0012】
本明細書または特許請求の範囲において、特定の方向または位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。それらの用語は、参照した図面における相対的な方向または位置をわかり易さのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」等の用語による相対的な方向または位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品、製造装置等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。
【0013】
図面に示される要素または部材の寸法、寸法比率、形状、配置間隔等は、わかり易さのために誇張されている場合がある。また、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略することがある。
【0014】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。実施形態は、本発明の技術思想が具体化されたものではあるが、本発明を限定するものではない。実施形態の説明で示される数値、形状、材料、ステップ、そのステップの順序などは、あくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。以下の説明において、同一の名称、符号によって特定される要素は、同一または同種の要素であり、それらの要素について重複した説明を省略することがある。
【0015】
まず、図1および図2を参照しながら、本実施形態におけるワークトレイの構成例を説明する。本開示の実施形態におけるワークトレイ100を模式的に示す上面図である。図2は、ワークトレイ100を模式的に示す斜視図である。図では、参考のため、違いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸が示されている。これらの図に示される例において、Z軸は鉛直方向に平行であり、X軸およびY軸の両方を含む平面(XY面)は、水平面に平行である。図示されるワークトレイ100の向き(姿勢)は、説明のためのものであり、ワークトレイ100の使用時における向き(姿勢)を制限しない。
【0016】
図1および図2に示されるワークトレイ100は、二次元的に配列された複数の凹部50を上面100Aに有する。ワークトレイ100は、上面100Aの反対側に下面100Bを有している(図2参照)。本実施形態における下面100Bは平坦である。複数の凹部50のそれぞれは、第1深さD1を有する第1凹部領域10と、第1凹部領域10の外側に位置して第1深さD1よりも浅い第2深さD2を有する第2凹部領域20とを含む。
【0017】
図1に示されるように、ワークトレイ100の上面100Aの上方から見た平面視において、各凹部50の外形は、第2凹部領域20の外形によって規定されている。第1凹部領域10の外形は、第2凹部領域20の外形よりも外側には広がっていない。
【0018】
図3は、本開示の実施形態におけるワークトレイ100の他の例を模式的に示す上面図である。図3の例において、第1凹部領域10のX軸方向(第1方向)およびY軸方向(第2方向)におけるサイズは、それぞれ、第2凹部領域20のX軸方向およびY軸方向におけるサイズよりも小さい。図3の例において、第2凹部領域20は、第1凹部領域10の周囲に位置している。言い換えると、第2凹部領域20は、第1凹部領域10を取り囲むように配置されている。
【0019】
次に、図4および図5を参照しながら、凹部50の形状の例について説明する。図4は、図1のワークトレイ100における凹部50の上面および断面を模式的に示す図である。図5は、図3のワークトレイ100における凹部50の上面および断面を模式的に示す図である。
【0020】
上面視において、第1凹部領域10の外形は、X軸方向に沿って延びる一対の第1辺11と、Y軸方向に沿って延びる一対の第2辺12とを有する。第1辺11の長さL1と、第2辺12の長さL2とは、同じ大きさであってもよいし、異なっていてもよい。
【0021】
上面視において、第2凹部領域20の外形は、第1方向X軸方向に沿って延びる一対の第3辺13と、Y軸方向に沿って延びる一対の第4辺14とを有する。第3辺13の長さL3は、第1凹部領域10の第1辺11の長さL1よりも長い。図4の例において、第4辺14の長さL4は、第1凹部領域10の第2辺12の長さL2に等しいが、図5の例において、第4辺14の長さL4は、第1凹部領域10の第2辺12の長さL2よりも大きい。
【0022】
第2凹部領域20は、第1凹部領域10の中に収容され得ない大きさのワーク、具体的には、X軸方向のサイズが長さL1よりも大きくて長さL3よりも小さなワークを収容することが可能である。なお、本開示において、「凹部領域がワークを収容する」ことは、ワークの一部(上部)が当該凹部領域からZ軸方向に突き出ることを排除しない。
【0023】
次に図6および図7を参照する。図6および図7は、それぞれ、図5のワークトレイ100の凹部50に収容された第1のワーク30Aおよび第2のワーク30Bを模式的に示す図である。
【0024】
図6に示されるように、第1のワーク30Aは、第1凹部領域10に収容されている。第1のワーク30AのX軸方向におけるサイズは、長さL1よりも小さく、第1のワーク30AのY軸方向におけるサイズは、長さL2よりも小さい。これに対して、図7では、第2のワーク30Bが第2凹部領域20に収容されている。第2のワーク30BのX軸方向におけるサイズは、長さL1よりも大きく長さL3よりも小さい。また、第2のワーク30BのY軸方向におけるサイズは、長さL2よりも大きく長さL4よりも小さい。
【0025】
このようなワークトレイ100を用いて製造途中の焼結磁石をワークとして移送する場合、第2深さD2は、第1深さD1の例えば40%以上60%以下の範囲にあることが好ましい。具体例を挙げると、第1深さD1は、例えば12mm以上40mm以下の範囲にあり、第2深さD2は、例えば5mm以上20mm以下の範囲にある。また、一対の第1辺11の間隔は、一対の第3辺13の間隔の90%以上100%以下であり得る。更に、一対の第2辺12の間隔は、一対の第4辺14の間隔の40%以上90%以下であり得る。図に示される例において、一対の第2辺12は、それぞれ、一対の第4辺14よりも凹部の内側に位置している。このため、例えば図4に示されるように、第2凹部領域20の底面が第1凹部領域10のX軸方向における両側に存在し、第2のワーク30Bを安定して支持することができる。
【0026】
これらの図面に示されるように、第1凹部領域10における一対の第1辺11は、第1のワークのY軸方向における位置30Aを規制している。また、第2凹部領域20における一対の第3辺13は、第1のワーク30Aよりも大きな第2のワーク30BのY軸方向における位置を規制するように構成されている。なお、本開示において、「ワークのY軸方向における位置が規制される」とは、ワークトレイ100の凹部50内にあるワーク30が凹部50内においてY軸の正方向または負方向に移動するとき、ワーク30の側面の一部が凹部50の内壁面に接触することによって自由な移動が制限され、ワーク30がY軸方向に沿って左右に移動可能な距離が3mm未満に制限されることを意味する。
【0027】
このようにして凹部50の内壁面を利用してワーク30の位置を規制すれば、ワークトレイ100上におけるワーク30の位置を目標位置から1.5mm未満の範囲に置くことが可能になる。ワークトレイ100を所定の位置に配置した後、例えば搬送用ロボットハンドによってワーク30を吸着してピックアップするような場合でも、ワーク30の位置ずれが上記の範囲内に抑えられていれば、カメラによる画像認識技術を利用することなく、安定したピックアップが可能になる。
【0028】
図8は、ワークトレイ100が水平に第1のワーク30Aを載せている状態を模式的に示す断面図であり、図9は、角度θで傾斜したワークトレイ100が第1のワーク30Aを載せている状態を模式的に示す断面図である。ここでθは5度以上10度以下である。
ワークトレイ100を傾斜させることにより、第1凹部領域10における一対の第2辺12の一方が第1のワーク30AのX軸方向における位置を規制する。
【0029】
図10は、ワークトレイ100が水平に第2のワーク30Bを載せている状態を模式的に示す断面図であり、図11は、角度θで傾斜したワークトレイ100が第2のワーク30Bを載せている状態を模式的に示す断面図である。ワークトレイ100を傾斜させることにより、第2凹部領域20における一対の第4辺14の一方が、第2のワーク30BのX軸方向における位置を規制する。
【0030】
このようにワークトレイ100を傾斜させることにより、凹部50の内壁面の一部にワーク30の側面を接触させることができ、その結果、ワーク30の側面の位置を凹部50の内壁面の位置に合わせることが可能になる。各凹部50の内壁面をワーク30の位置決め手段として利用することにより、同じワークトレイ100に搭載される複数のワーク30の位置のばらつきを抑制し、ロボットハンドによりピックアップを容易にすることが可能になる。
【0031】
図12は、本開示の実施形態におけるワークトレイ100の他の例を模式的に示す上面図である。
【0032】
図12に示される例において、複数の凹部50は、第1の材料から形成されたインナー部材110に設けられている。インナー部材110は、段差を有する凹部を高い寸法精度で形成することが可能な加工性に優れた材料から形成され得る。この例におけるワークトレイ100は、インナー部材110を収容するケース120を更に備える。ケース120は、例えば箱型の形状を有している。ケース120は、変形しにくい材料から形成され得る。インナー部材110とケース120は、異なる材料から形成され得る。
【0033】
ワークトレイ100が搬送すべきワーク30の品種、形状およびサイズに合わせて、インナー部材110は製造され得る。このため、1個のケース120が収容し得るインナー部材110の種類は複数であり得る。前もって用意された複数のインナー部材110から、ワークトレイ100が搬送すべきワーク30に合ったインナー部材110を選択してケース120の内部に収容すればよい。このため、凹部50の形状、サイズ、個数が異なる複数のインナー部材110の外形は、共通化されていることが好ましい。
【0034】
図13は、図12のワークトレイ100を移送するワークトレイ移送装置200の構成例を模式的に示す断面図である。この移送装置200は、複数のワーク30を収納するワークトレイ100と、ワークトレイ100を搬送するコンベアなどの可動部210とを備える。可動部210は、第1凹部領域10における一対の第2辺12の一方が、第1のワーク30AのX軸方向における位置を規制するように傾斜している。図13では、傾斜の角度θが示されている。この角度θは、5度以上10度以下の範囲にあることが好ましい。このような傾斜は、例えば、通常のコンベアなどの可動部210の一部を上に持ち上げて支持する部材(リフト部)を可動部210の下方に配置することによって実現され得る。
【0035】
図3の例において、可動部210は、ワークトレイ100を載せて移動させる複数の回転部材(ローラ)220を有している。可動部210は、ワークトレイ100の移送中に上下方向の振動を与えるように構成されていることが好ましい。複数の回転部材220が例えば10cm以上の間隔を置いて配置されることにより、ワークトレイ100は、移動中に回転部材220に当たることにより、上下方向に振動を受ける。この振動により、ワークトレイ100の凹部50内において第1のワーク30Aは凹部50の底面を滑り、前述した第2辺12の一方の位置にある側面に当たりやすくなる。
【0036】
上記の実施形態では、ワークトレイ100の凹部50が第1凹部領域10だけではなく、第2凹部領域20を有している。しかしながら、図13に示されるようなワークトレイ移送装置200を用いる場合、ワークトレイ100の凹部50が第1凹部領域10によって構成されていてもよい。
【0037】
図14は、凹部50が第1凹部領域10によって構成されているワークトレイ100が第1のワーク30Aを載せて移送されるときの傾斜を模式的に示す断面図である。図15は、このワークトレイ100が第2のワーク30Bを載せて移送されるときの傾斜を模式的に示す断面図である。
【0038】
これらの図に示されるようにワークトレイ100における凹部50が平坦な底面を有する場合でも、ワークトレイ移送装置200が移送の途中でワークトレイ100を傾斜させるように構成されていれば、凹部50の内壁面を位置決め手段として利用することが可能になる。
【0039】
図16は、図13のワークトレイ移送装置200が図14および図15に示されるワークトレイ100を移送する様子を模式的に示す断面図である。角度θの傾斜によりも、複数の第1のワーク30AのX軸方向における位置が揃っている。
【0040】
本開示における焼結磁石の製造方法の実施形態は、第1のワーク30A、および第1のワーク30Aよりも大きな第2のワークを含む複数の焼結磁石のワーク30を準備する工程と、ワークトレイ100の第1凹部領域10上に第1のワーク30Aを配置する工程と、ワークトレイ100の第2凹部領域20上に第2のワーク30Bを配置する工程とを含む。複数のワーク30を準備する工程は、第1のワーク30Aを第2のワーク30Bから作製する工程を含んでいてもよい。第1のワーク30Aを第2のワーク30Bから作製する工程は、第2のワーク30Bを機械的に加工する工程を含み得る。
【0041】
各凹部50が第1凹部領域10によって構成されるワークトレイ100を用いる場合、焼結磁石の製造方法の実施形態は、焼結磁石の複数のワーク30を準備する工程と、複数のワーク30を、それぞれ、ワークトレイ移送装置におけるワークトレイ100の複数の凹部50に配置する工程と、ワークトレイ移送装置における可動部210によってワークトレイ100を移送しながら、複数のワーク30をそれぞれ複数の凹部50における第1凹部領域10の一対の第1辺11の一方の位置に合わせる工程とを含む。ワークトレイ移送装置200における可動部210によって前記ワークトレイを移送するとき、前記ワークトレイに上下方向の振動を与えることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本開示のワークトレイおよび焼結磁石の製造方法は、例えばR-T-B系焼結磁石の製造分野で広く利用され得る。
【符号の説明】
【0043】
10・・・第1凹部領域
11・・・第1辺
12・・・第2辺
13・・・第3辺
14・・・第4辺
20・・・第2凹部領域
30・・・ワーク
30A・・第1のワーク
30B・・第2のワーク
50・・・凹部
100・・・ワークトレイ
100A・・上面
100B・・下面
200・・・ワークトレイ移送装置
210・・・可動部
220・・・回転部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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図16