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特開2024-141159油脂染み出し抑制打ち粉及び当該打ち粉を用いた乾燥畜肉食品、並びに乾燥畜肉食品からの油脂染み出し抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141159
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】油脂染み出し抑制打ち粉及び当該打ち粉を用いた乾燥畜肉食品、並びに乾燥畜肉食品からの油脂染み出し抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20241003BHJP
   A23L 7/157 20160101ALI20241003BHJP
   A23L 29/212 20160101ALI20241003BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20241003BHJP
   A23L 3/40 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A23L5/00 F
A23L7/157
A23L29/212
A23L13/00 Z
A23L3/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052650
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上野 友央
(72)【発明者】
【氏名】田森 はる香
【テーマコード(参考)】
4B022
4B025
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B022LA06
4B022LB06
4B022LJ01
4B022LR06
4B022LS03
4B022LS06
4B025LB04
4B025LD03
4B025LE05
4B025LG28
4B025LG54
4B025LK07
4B025LP01
4B025LP12
4B025LP15
4B025LP20
4B035LC05
4B035LC16
4B035LE05
4B035LG21
4B035LG42
4B035LK14
4B035LP01
4B035LP24
4B035LP26
4B035LP31
4B035LP43
4B042AC10
4B042AD04
4B042AD08
4B042AE03
4B042AG03
4B042AH01
4B042AK09
4B042AP02
4B042AP17
4B042AP18
(57)【要約】
【課題】調理前の段階において具材から油脂の染み出しを抑制する、または、油脂が染み出した場合であっても染み出した油脂が容器内に同封された他の食材、ソースなどの入った包材、蓋材、容器本体などへの付着を抑制することを目的とする。
【解決手段】多孔質澱粉とデキストリンとからなる、油脂染み出し抑制打ち粉であることを特徴とする。また、上記構成に加えて、油脂染み出し抑制打ち粉を表面に付着させた乾燥畜肉食品であることが好ましい。さらに、乾燥畜肉食品の重量と油脂染み出し抑制打ち粉重量との比率が90:10~99:1となるように、乾燥畜肉食品の表面にのみ油脂染み出し抑制打ち粉を付着させることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質澱粉とデキストリンとからなる、油脂染み出し抑制打ち粉。
【請求項2】
請求項1記載の油脂染み出し抑制打ち粉を表面に付着させた乾燥畜肉食品。
【請求項3】
乾燥畜肉食品からの油脂染み出しを抑制するための方法であって、
乾燥畜肉食品の重量と油脂染み出し抑制打ち粉重量との比率が90:10~99:1となるように、乾燥畜肉食品の表面にのみ油脂染み出し抑制打ち粉を付着させる、乾燥畜肉食品からの油脂染み出し抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂染み出し抑制に関する。具体的には、インスタント食品の具材として使用される乾燥畜肉食品から染み出す油脂の抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な乾燥具材の入った即席麺が市場に流通している。具材の種類としては、肉、野菜、エビ、タコ、膨化卵製品(例えば、スクランブルエッグ等)などがよく知られている。これらの具材は、小袋に入れられて容器本体に封入されているものもあれば、麺塊と一緒に直接容器本体に封入されているものもある。具材が容器本体に直接封入されている即席麺の一例として、即席焼きそばがある。即席焼きそばは熱湯で調理した後に湯切りを行う。そのため、湯切り穴を蓋材に設けている商品も存在する。湯切り穴付き蓋材の構成としては、2層からなる蓋材のうち、外蓋を剥離させることであらかじめハーフカットなどで設けられた湯切り穴が内蓋に現れる構成となっている。
【0003】
ところで、近年輸送費や材料費の高騰などから、製品を梱包する梱包箱にかかるコストの削減に各社取り組んでいる。梱包箱にかかるコストを削減する方法の一つとして、梱包箱サイズの縮小がある。梱包箱サイズを縮小するためには、梱包箱内に商品を収納したときに生じるデッドスペースを減らす必要がある。デッドスペースを減らす方法としては、2つの製品の蓋材同士対面させたセットAと、2つの製品の容器本体の底面部同士を対面させたセットBを用意し、セットA,Bを左右に並べて配置したものを一組のセットCとする。この4つの商品からなる一組のセットCを、セットAとセットBの位置を交互に代えながら前後または左右に配置していくことでデッドスペースを減らすことができる。
【0004】
一方で、セットA,Bのいずれの場合においても、蓋材が鉛直方向下向き状態で梱包される商品が存在する。このような商品は、麺塊や具材が蓋材と接触した状態となる。また、夏場のコンテナ内などの高温環境下に晒されると具材から油脂が染み出してしまうことがある。このとき、何の加工もされていない蓋材であれば麺塊や具材から染み出した油脂が外部に漏れ出すことはない。しかし、前述したような湯切り穴を備えた蓋材の場合、湯切り穴用のハーフカットから油脂が浸み込み、蓋材全体に油染みが広がってしまうという問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開
【特許文献2】特開
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものである。すなわち、調理前の段階において具材から油脂の染み出しを抑制する、または、油脂が染み出した場合であっても染み出した油脂が容器内に同封された他の食材、ソースなどの入った包材、蓋材、容器本体など(以下、まとめて「食材など」という場合がある。)への付着を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題に対して具材の表面に付着させる打ち粉について鋭意検討を重ねた。そして、多孔質澱粉とデキストリンを組み合わせた打ち粉を用いることで、打ち粉自体の吸油量を高め、具材からの油脂の染み出しを大幅に抑制または染み出した油脂が食材などに付着するのを抑制できることを新たに見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、多孔質澱粉とデキストリンとからなる、(乾燥畜肉食品からの)油脂染み出し抑制打ち粉であることを特徴とする。また、上記構成に加えて、油脂染み出し抑制打ち粉を表面に付着させた乾燥畜肉食品であることが好ましい。さらに、乾燥畜肉食品の重量と油脂染み出し抑制打ち粉重量との比率が90:10~99:1となるように、乾燥畜肉食品の表面にのみ油脂染み出し抑制打ち粉を付着させることが好ましい。
【0009】
かかる構成によれば、多孔質澱粉に加えてデキストリンを配合することで、吸油量を上げることができる
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、打ち粉の吸油量を高めることで、食品からの油脂の染み出しを抑制することができる。また、仮に油脂が染み出したとしても、打ち粉が油脂を吸油するため、染み出した油脂による意図しない付着を抑制することができる。これにより、油染みによる商品価値の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について説明する。ここでは、乾燥畜肉食品として豚肉を例に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
<油脂染み出し抑制打ち粉>
本発明に係る油脂染み出し抑制打ち粉は、多孔質澱粉とデキストリンとからなることを特徴とする。多孔質澱粉とデキストリンとの配合比率は、重量比で70:30~20:80であることが好ましい。多孔質澱粉の割合が7割以上になると、打ち粉の吸油力が低くなり、油脂の染み出し抑制効果が十分に得られない。一方、デキストリンの割合が8割以上になると、打ち粉の吸油力自体は問題ないが、当該打ち粉を用いた製品にべたつきが生じてしまう。
【0013】
また、本発明に係る油脂染み出し抑制打ち粉は、次の試験方法に基づいて測定したときの吸油量が0.1~3.0mL/gが好ましく、0.9~1.4mL/gであることがより好ましい。吸油量の測定方法としては、シャーレに打ち粉3gを計量し、植物油(パーム油)を少量ずつ滴下する。油と打ち粉をなじませるように混合した後、パテ状になるまで続ける。滴下した植物油の容量を打ち粉重量当たりに換算したものを吸油量とする。
【0014】
本発明に用いられる多孔質澱粉は、デンプンの粒子の表面に無数の微細孔を形成させたものをいい、通常、デンプンの粒子に酵素を作用させることにより製造することができる。また、本発明に用いられる多孔質澱粉の形状は特に限定されないが、直径5~20μm程度の球状、ダイス状、または直方体状、さらにはこれらの混合形状であることが好ましい。
【0015】
多孔質デンプンの原料となるデンプンの種類としては、食用可能なものであれば特に制限はなく、例えば、とうもろこしデンプン、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、小麦デンプン、甘藷デンプン等が挙げられるほか、これらデンプンを分解したデキストリン、粉末水飴等のデンプン分解物であってもよい。
【0016】
本発明に用いられるデキストリンは、デンプンまたはグリコーゲンの加水分解により得られる低分子量の炭水化物の総称である。本発明においては、天然のデキストリンおよび人工的に合成されたデキストリンのいずれも用いることができる。デキストリンの形状としては特に限定されないが、長辺の長さが2~150μm、短辺の長さが0.1~5μmの鱗片状、小片状またはフレーク形状であることが好ましい。
【0017】
デキストリンの原料としては、各種デンプンを用いることでき、例えば、とうもろこしデンプン、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン等が挙げられる。デキストリンのDEは2~15である。デキストリンは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
<原料肉>
原料肉としては、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉、羊肉、猪肉、猪豚肉、鴨肉、合鴨肉、七面鳥肉、家鴨肉などが使用できる。使用する部位については、特に限定されず、豚肉の場合、バラ、ヒレ、ロース、かた、かたロース、もも、そともも等を使用できる。また、鳥肉においては、もも、むねなどが一例として挙げられる。これらの畜肉は、脂身や、筋膜、筋、骨等をトリミングした後、ジャガードやミートハンマー等を用いてテンダライズを行ってもよいし、ミートチョッパーを用いて細切れあるいはミンチ状にしてもよい。本実施形態では、ミンチ状にした豚肉を例に説明する。
【0019】
本実施形態においては、肉の他に豚脂、牛脂などを混合することもできる。また、復元性に影響しない程度に結着剤を含有することもできる。結着剤としては、公知のものを使用することができるが、一例として、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどのリン酸塩、アルギニン、カゼインナトリウムなどの乳由来のタンパク質、アルブミンなどの卵由来のタンパク質、大豆由来のタンパク質、グルテンなどの小麦由来のタンパク質、アルギン酸塩、キサンタンガム、カラギーナンなどの増粘剤、トランスグルタミナーゼなどの酵素、これらを含有するつなぎなどが挙げられる。結着剤を用いることで、食肉の歩留まりが向上する。
【0020】
さらに、食肉由来の脂身を加工したものを加えてもよい。脂身を加工したものとしては、脂身をペースト状にしたもの、脂身を粒状にしたもの、脂身を細切れにしたもの、これらに赤身肉若しくはそのミンチ又は大豆等のタンパク質高含有素材を配合したもの、ラード及び/又はヘットそのもの、ラード及び/又はヘットに脂身、赤身肉若しくはそのミンチ又は大豆等のタンパク質高含有素材を配合したもの、などが挙げられる。
【0021】
さらに、加水し、又は、ピックル液を含有させることで、復元性を向上させることもできる。ピックル液としては、従来の食塩を含有するものを使用することができる。ピックル液における食塩以外の含有物の一例として、砂糖、水あめ、還元水あめ、醤油、みそ、胡椒、唐辛子、ナツメグ、コリアンダー、にんにく、たまねぎ、生姜、りんご、レモン、バジル、セージ、セロリ、ローリエ、乾燥卵白末、澱粉、酒類、グルタミン酸ナトリウムなどの各種調味料、各種ハーブ、各種香辛料、各種香味野菜・果実などを適宜配合することができる。
【0022】
次に、本発明に用いられる乾燥畜肉食品の製造方法について説明する。ミンチ状にした原料肉に、必要に応じて脂身、結着剤等を添加し、リテーナを用いて成型する。成型方法としては、型枠やケーシングに充填する方法や糸巻き等が挙げられ、目的とする形状となるように成型することができる。成型した原料肉を10℃以下で12~24時間冷置する。続いて、成型した原料肉を蒸気により加熱する。蒸気条件は特に問わないが70℃以上の加熱温度で品温が70℃以上に加熱すればよい。ここでいう加熱温度とは、原料肉がさらされる蒸気庫内の雰囲気温度をいい、品温とは、原料肉の中心部の温度をいう。高い温度で加熱することにより、肉のタンパク変性は進んでしまうが、熱湯等により復元した際には、復元性がよくなり、加熱にかかる時間も短縮できる。蒸気加熱工程にて加熱殺菌した原料肉を冷却または凍結し、スライサーやギロチンカッターにて目的の形状にカットする。カット形状は、特に限定なく、ダイス状や平板状など当業者が適宜設定できる。
【0023】
続いて、着味液を添加する。ここで、着味液について説明する。本実施形態に係る着味液の原料は、調味材料として食塩、醤油、みりん、グルタミン酸ナトリウム等の他、単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコール、水あめなどの糖類、胡椒、シナモン、グローブ、フィンネル、スターアニス、ナットメグなどの香辛料、しょうが、にんにく、ねぎ、たまねぎ等の摩り下ろしや絞り汁や、結着材料として、食塩やピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどのリン酸塩、大豆蛋白や卵白、乳蛋白などの動植物性タンパク質、小麦粉、澱粉、加工澱粉、デキストリン、増粘多糖類、食物繊維、トランスグルタミナーゼなどの酵素、その他の材料として酢酸、ワイン等の醸造酒、パパインなどの蛋白分解酵素、重曹などの炭酸塩、アスコルビン酸ナトリウムやトコフェロールなどの保存料、亜硝酸ナトリウムや硝酸カリウムなどの発色剤、香料等が挙げられる。なお、着味液の添加方法は特に問わない。着味液の添加量としては、原料肉の重量に対して45~80重量%となるように添加する。着味液を添加後、10℃以下で2~12時間冷置し、着味液を全体に浸透させる。その後、着味液を液切りし、カットされた原料肉を水分が14%以下になるように乾燥する。乾燥方法は、熱風乾燥、マイクロウェーブ乾燥、真空凍結乾燥を行うことができる。真空凍結乾燥を行う場合には、カットされた原料肉をトレーに並べて再度凍結する。真空凍結乾燥した原料肉は、水分が3%以下と低く脆いため、湿度を調整した庫内で水分が4~14重量%となるように調湿し、柔軟性を持たせる。
【0024】
最後に、調湿した原料肉に油脂染み出し抑制打ち粉を行う。打ち粉の添加量としては、カット前の成型原料肉の重量と油脂染み出し抑制打ち粉重量との比が90:10~99:1となるように行うことが好ましい。打ち粉が調湿した原料肉の表面にまんべんなく付着するように、適宜撹拌してもよい。打ち粉の添加後は、異物検査、微生物検査等の検査を経て、インスタント食品の製造工場に輸送され、インスタント食品に使用される。
【実施例0025】
(乾燥豚肉チャーシュー)
はじめに、豚バラ肉をトリミングし、ミートチョッパーでミンチ状にし、得られたミンチ状の豚肉に豚脂や結着剤を添加した。さらに、ミンチ状の豚肉の重量に対して45重量%となるようにピックル液を添加し、温度10~14℃、-0.08MPa以下の減圧条件でタンブリング混合した。その後10℃以下で12時間静置した。
【0026】
次に、静置したミンチ状の豚肉を、リテーナに詰めて成型し、10℃以下の環境下で12~24時間冷置した。
【0027】
成型した豚肉を蒸気を用いて、加熱温度が80~100℃、加熱時間が40~60分で、豚肉の中心品温が80℃以上になるまで加熱処理を行った。
【0028】
加熱処理した豚肉を冷却し、-25℃の凍結庫にて10時間凍結した。凍結した豚肉を-5℃程度になるまで解凍し、スライサーを用いて所定の形状にカットした。カットした豚肉を、豚肉重量に対し140重量%の着味液に浸漬し、-20℃の凍結庫で凍結した。凍結した豚肉を真空度60Pa以下、棚温60℃で品温が一定になるまで真空凍結乾燥した。最後に、乾燥させた豚肉の水分が12%以下になるように調湿し、即席乾燥味付肉(乾燥豚肉チャーシュー)を得た。
【0029】
(実験例1)
実験例1では、多孔質澱粉(製品名『ロンフードOWP』:日澱化學社製)とデキストリン(製品名『オイルQ』:日澱化學社製)を重量比1:1で混合したものを油脂染み出し抑制打ち粉として用いた。得られた打ち粉を乾燥豚肉チャーシュー100gに対して3g添加し、乾燥豚肉チャーシューの表面に満遍なく付着するように混合した。
【0030】
(実験例2)
実験例2では、油脂染み出し抑制打ち粉としてデキストリン(製品名『オイルQ』:日澱化學社製)のみを用いたこと以外は、実験例1と同じである。
【0031】
(実験例3)
実験例3では、油脂染み出し抑制打ち粉として多孔質澱粉(製品名『ロンフードOWP』:日澱化學社製)のみを用いたこと以外は、実験例1と同じである。
【0032】
(染み出し確認テスト)
乾燥豚肉チャーシューからの油脂染み出し抑制効果については、次のようにして行った。
実験例1~3の打ち粉を別々に付着させた乾燥豚肉チャーシューから、実験例ごとに2.4gずつサンプルを準備した。次に、各サンプルを自社製品(商品名「日清やきそばU.F.O」)の容器および蓋材を用いて、それぞれ別々に容器本体内に封入した。乾燥豚肉チャーシューが湯切り穴に接触するように乾燥豚肉チャーシューの位置を調整し、蓋材が下になるように静置した。各サンプルが封入された容器を20,40,60℃に設定された恒温槽内に静置し、96時間放置した。96時間経過後、容器をひっくり返し、蓋材に生じた油染みの最大距離を計測した。計測は、湯切り穴形成片のうち蓋材の中心に最も近い位置を基準点として計測を行った。なお、各温度帯における各実験例のサンプル数はn=3とした。
【0033】
(生産性確認テスト)
乾燥豚肉チャーシューの生産性については、次のようにして行った。
実験例1~3で作製した乾燥豚肉チャーシューをそれぞれ100g袋詰めし、15×20cmのエリアに寄せ集めて平らに均す。均した袋の上に15kgの重りを乗せ、22℃の環境下で12~18時間静置した。その後袋から取り出し、チャーシューを6メッシュの篩で10回篩い、1枚1枚に剥がれた片の合計重量が100g中に占める割合を計測した。
【0034】
各温度帯における各実験例の最大油染み距離(mm)の平均値及び各実験例における生産性を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
油脂の染み出しについて着目すると、表1の結果から明らかなように、各温度帯において実験例3よりも実験例1,2の方が油染みの最大距離が短いことが分かる。つまり、実験例1,2は実験例3よりも油脂の染み出しが抑制されていると言える。
【0037】
次に、生産性に着目する。ここで、生産性とは、結着していない乾燥豚肉チャーシューの重量割合を意味する。すなわち、割合が少ないほど結着が多いことを意味することから、結着のしやすさを見る指標をもいえる。乾燥豚肉チャーシューは、結着していると湯戻りしづらかったり、具材として製品に充填する際の取り扱い性が悪かったり、即席めん製品上に充填する際に重量がばらつくなどの問題が生じる。そのため、生産性が高い(結着している乾燥豚肉チャーシューの割合が低い)ことが望ましい。本実施例によれば、表1の結果から、実験例1,3は生産性が高い、すなわち結着が少ないことが分かる。これに対して、実験例2は生産性が低いことがわかる。
【0038】
以上のことから、多孔質澱粉またはデキストリンを単独で用いても、油脂の染み出し及び生産性の両立はできないが、これらを組み合わせることで、油脂の染み出しを防ぎつつ生産性も維持できることが明らかとなった。