(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141172
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】光導波路装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/122 20060101AFI20241003BHJP
G02B 6/13 20060101ALI20241003BHJP
G02B 6/26 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B6/122
G02B6/13
G02B6/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052665
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 和尚
(72)【発明者】
【氏名】兼田 悠
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
【Fターム(参考)】
2H137AB01
2H137BA31
2H137BA36
2H137BA53
2H137BA55
2H137CA12B
2H137CA19B
2H137CA42
2H137CA56
2H137CA73
2H137CA75
2H137CB03
2H137CC03
2H137EA03
2H137EA04
2H137HA00
2H147BB02
2H147BG06
2H147CC07
2H147EA09C
2H147EA13C
2H147EA17A
2H147EA17B
2H147EA19A
2H147EA19B
2H147EA20A
2H147EA20B
2H147EA20C
2H147FC01
2H147FC09
2H147FE02
2H147GA00
(57)【要約】
【課題】シリコン導波路とコア層との位置精度を向上可能な光導波路装置を提供する。
【解決手段】本光導波路装置は、基板と、前記基板の上に形成された第1クラッド層と、前記第1クラッド層の上に形成されたコア層と、前記コア層の長手方向に沿って設けられ、前記コア層の前記第1クラッド層とは反対側に位置する第1面に開口する凹部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に形成された第1クラッド層と、
前記第1クラッド層の上に形成されたコア層と、
前記コア層の長手方向に沿って設けられ、前記コア層の前記第1クラッド層とは反対側に位置する第1面に開口する凹部と、を有する、光導波路装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記第1面に垂直な方向から視て、前記コア層を長手方向に2分する中心線上に設けられる、請求項1に記載の光導波路装置。
【請求項3】
前記コア層は、前記凹部が設けられる第1領域と、前記凹部が設けられない第2領域と、を有する、請求項1に記載の光導波路装置。
【請求項4】
前記第1クラッド層の上に設けられ、前記コア層の前記第1領域を露出し、前記コア層の前記第2領域を被覆する第2クラッド層を有し、
前記第2クラッド層は、硬化した感光性樹脂である、請求項3に記載の光導波路装置。
【請求項5】
前記第1クラッド層の上に形成された第2クラッド層を有し、
前記第2クラッド層は、前記コア層の前記第1領域を被覆する未硬化の感光性樹脂と、前記コア層の前記第2領域を被覆する硬化した感光性樹脂と、を含む、請求項3に記載の光導波路装置。
【請求項6】
前記未硬化の感光性樹脂は、現像液に溶解して除去される特性を有する、請求項5に記載の光導波路装置。
【請求項7】
シリコン基板と、前記シリコン基板の一方の面側に設けられたシリコン導波路と、を備えたシリコンフォトニクスチップを有し、
前記シリコンフォトニクスチップは、前記シリコン導波路を前記コア層の側に向けて、前記第1クラッド層の上に搭載され、
前記シリコン導波路の一部又は全部は、前記凹部の内側に配置される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光導波路装置。
【請求項8】
前記シリコン基板と前記第1クラッド層とが対向する領域に、接着層が設けられている、請求項7に記載の光導波路装置。
【請求項9】
前記接着層は、前記凹部の内側に入り込み、前記シリコン導波路を被覆する、請求項8に記載の光導波路装置。
【請求項10】
基板の上に第1クラッド層を形成する工程と、
前記第1クラッド層の上に、コア層を形成する工程と、
前記コア層の長手方向に沿って、前記コア層の前記第1クラッド層とは反対側に位置する第1面に開口する凹部を、レーザ加工又はエッチングで形成する工程と、を有する、光導波路装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種のコンピュータやデータ通信などの装置が設置されたデータセンター等において、シリコンフォトニクスチップと光導波路とを有する光導波路装置を用いて光信号の送受信が行われている。このような光導波路装置では、光導波路のコア層とシリコンフォトニクスチップのシリコン導波路とが光結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような光導波路装置では、光導波路のコア層と、シリコンフォトニクスチップのシリコン導波路との位置合わせが困難であるため、十分な位置精度が得られない場合があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、シリコン導波路とコア層との位置精度を向上可能な光導波路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本光導波路装置は、基板と、前記基板の上に形成された第1クラッド層と、前記第1クラッド層の上に形成されたコア層と、前記コア層の長手方向に沿って設けられ、前記コア層の前記第1クラッド層とは反対側に位置する第1面に開口する凹部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、シリコン導波路とコア層との位置精度を向上可能な光導波路装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る光導波路装置を例示する図(その1)である。
【
図2】第1実施形態に係る光導波路装置を例示する図(その2)である。
【
図3】第1実施形態に係る光導波路装置の製造工程を例示する図(その1)である。
【
図4】第1実施形態に係る光導波路装置の製造工程を例示する図(その2)である。
【
図5】第1実施形態に係る光導波路装置の製造工程を例示する図(その3)である。
【
図6】第1実施形態に係る光導波路装置の製造工程を例示する図(その4)である。
【
図7】第2実施形態に係る光導波路装置を例示する図である。
【
図8】第2実施形態に係る光導波路装置の製造工程を例示する図(その1)である。
【
図9】第2実施形態に係る光導波路装置の製造工程を例示する図(その2)である。
【
図10】変形例に係る光導波路装置を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
[光導波路装置]
図1は、第1実施形態に係る光導波路装置を例示する図(その1)であり、
図1(a)は、平面図、
図1(b)は
図1(a)のA-A線に沿う断面図である。
【0011】
図2は、第1実施形態に係る光導波路装置を例示する図(その2)であり、
図2(a)は、
図1(a)のB-B線に沿う断面図、
図2(b)は、
図1(a)のC-C線に沿う断面図である。
【0012】
図1を参照すると、光導波路装置1は、基板10と、光導波路20とを有する。光導波路20は、第1クラッド層21と、コア層22と、凹部22xと、第2クラッド層23とを有する。
【0013】
基板10は、第1クラッド層21、コア層22、及び第2クラッド層23を形成するための基体となる部分である。基板10は、例えば、ガラスエポキシ樹脂などの絶縁樹脂材料から形成される。基板10は、剛性の強いリジッド基板であってもよく、あるいは、剛性の弱いフレキシブル基板であってもよい。基板10は、支持体や基材と呼ばれる絶縁物を含む。基板10は、樹脂層を有するビルドアップ基板、シリコン基板、セラミック基板等であってもよい。基板10には、電気回路が形成されていてもよい。
【0014】
第1クラッド層21は、基板10の上に形成されている。第1クラッド層21の厚さは、例えば、10μm~30μm程度とすることができる。第1クラッド層21の屈折率は、例えば、1.5程度とすることができる。第1クラッド層21は、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリノルボルネン樹脂等の感光性樹脂から形成することができる。
【0015】
コア層22は、第1クラッド層21の上に形成されている。コア層22の幅は、例えば、5μm~10μm程度とすることができる。コア層22の厚さは、例えば、5μm~10μm程度とすることができる。コア層22の屈折率は、第1クラッド層21及び第2クラッド層23の屈折率よりも高く、例えば、1.6程度とすることができる。コア層22は、例えば、第1クラッド層21の材料として例示した中から適宜選択した材料により形成することができる。
【0016】
なお、光導波路装置1では4個のコア層22が所定間隔で並置されているが、これには限定されず、コア層22は1個以上の任意の個数として構わない。又、コア層22は直線状に形成しなくてもよく、湾曲する部分を含んでいてもよい。
【0017】
コア層22は、凹部22xが設けられる第1領域Raと、凹部22xが設けられない第2領域Rbとを有する。第1領域Raは、シリコン導波路等との光結合部として使用することができる。第1領域Raにおいて、凹部22xは、コア層22の長手方向に沿って設けられ、コア層22の第1クラッド層21とは反対側に位置する第1面22aに開口している。
【0018】
凹部22xは、例えば、第1面22aに垂直な方向から視て、コア層22を長手方向に2分する中心線上に設けられる。なお、
図1(a)のA-A線は、コア層22を長手方向に2分する中心線上に引かれている。凹部22xの幅は、第1面22aの同一平面上で、例えば、1.5μm~2.5μm程度とすることができる。凹部22xの最大深さは、第1面22aを基準として、例えば、0.5μm~1.5μm程度とすることができる。
【0019】
凹部22xの底面は、第1面22aと平行であってもよいし、平行でなくてもよい。凹部22xの側面は、第1面22aと垂直であってもよいし、垂直でなくてもよい。凹部22xは、例えば、第1面22aから底面に近づくにつれて幅が狭くなる形状であってもよい。凹部22xの底面と側面との境界は、明確でなくてもよい。例えば、凹部22xの底面と側面との境界は、R形状であってもよい。
【0020】
第2クラッド層23は、第1クラッド層21の上に設けられ、コア層22の第1領域Raを露出し、コア層22の第2領域22bを被覆する。すなわち、凹部22xは、第2クラッド層23から露出している。第2クラッド層23の厚さは、例えば、10μm~30μm程度とすることができる。第2クラッド層23の屈折率は、例えば、1.5程度とすることができる。第2クラッド層は、硬化した感光性樹脂である。第2クラッド層23は、例えば、第1クラッド層21の材料として例示した中から適宜選択した材料により形成することができる。
【0021】
[光導波路装置の製造方法]
次に、光導波路装置1の製造方法について説明する。
図3~
図6は、第1実施形態に係る光導波路装置の製造工程を例示する図である。
【0022】
第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法では、
図3に示すように、まず、基板10を準備する。基板10は、例えば、複数の製品領域Rが区画された多面取り用の大型基板であり、最終的に製品領域Rの外周部に沿って切断されて個々の光導波路装置が得られる。基板10は、例えば、ガラスエポキシ樹脂などの絶縁樹脂材料から形成される。基板10は、剛性の強いリジッド基板であってもよく、あるいは、剛性の弱いフレキシブル基板であってもよい。基板10は、支持体や基材と呼ばれる絶縁物を含む。
【0023】
図4は、
図3のD-D線に沿う断面を示している。
図4(a)に示す工程では、基板10の上に第1クラッド層21を形成する。第1クラッド層21は、感光性樹脂に紫外光を照射した後に、150℃~200℃の温度で加熱処理して、感光性樹脂を硬化させることにより得られる。
【0024】
第1クラッド層21は、
図3に示した複数の製品領域Rが区画された基板10の全面に形成される。第1クラッド層21をパターニングして外形を調整する場合は、フォトマスクを介して感光性樹脂に紫外線を照射し、現像することにより第1クラッド層21が得られる。
【0025】
感光性樹脂の形成方法としては、樹脂シートを貼付してもよいし、あるいは、液状樹脂を塗布してもよい。第1クラッド層21の厚さは、例えば、10μm~30μm程度である。
【0026】
次に、
図4(b)に示す工程では、第1クラッド層21の上に、並置された複数の細長状のコア層22を形成する。具体的には、第1クラッド層21の上にコア層22を得るための感光性樹脂を形成し、フォトマスクを介して感光性樹脂に紫外線を照射し、現像した後に、感光性樹脂を150℃~200℃程度の温度で加熱処理することにより硬化させる。
【0027】
これにより、複数のコア層22が第1クラッド層21の上に帯状パターンとして並んで配置される。コア層22の幅は例えば5μm~10μmに設定され、コア層22の厚さは例えば5μm~10μmに設定される。本実施形態では、シングルモードの光導波路を得るために、微小な断面積を有するコア層22が形成される。
【0028】
複数のコア層22は、前述した
図3の複数の製品領域Rの間の領域を跨ぐように各製品領域Rに横方向に延在して配置される。
【0029】
次に、
図4(c)に示す工程では、コア層22の長手方向に沿って、コア層22の第1面22aに開口する凹部22xを形成する。凹部22xは、例えば、レーザ加工又はエッチングで形成することができる。レーザ加工の場合は、例えばエキシマレーザを用いることができる。
【0030】
次に、
図4(d)に示す工程では、第1クラッド層21及びコア層22の上に第2クラッド層23を得るための感光性樹脂23sを形成する。感光性樹脂23sは、コア層22の上面及び側面を被覆し、かつ凹部22xを埋めた状態で上面が平坦になって形成される。
【0031】
感光性樹脂23sとしては、例えば、ネガ型の感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを使用することができる。前述した第1クラッド層21及びコア層22についても、同様な感光性樹脂が使用される。
【0032】
感光性樹脂23sは、光硬化に寄与する反応性官能基と、熱硬化に寄与する反応性官能基とを含み、光硬化及び熱硬化によって硬化する。
【0033】
次に、
図5に示すように、フォトマスク300を準備し、感光性樹脂23s上に配置する。
図5には、前述した
図3の一つの製品領域Rに対応する領域のフォトマスク300が部分的に描かれている。フォトマスク300は遮光部300aと透光部300bとを備えている。
【0034】
フォトマスク300の遮光部300aは、
図3の各製品領域R内の凹部22xが形成されている領域Raに対応して配置され、領域Raに配置された感光性樹脂23sを露光せずに未硬化部とするために使用される。
【0035】
また、フォトマスク300の透光部300bは、
図3の各製品領域Rの凹部22xが形成されていない領域Rbに対応して配置され、領域Rbに配置される感光性樹脂23sを露光して硬化部にするために使用される。
【0036】
次に、
図6(a)及び
図6(b)に示す工程では、フォトマスク300を介して感光性樹脂23sに紫外線Lを照射し、感光性樹脂23sを部分的に硬化させる。
図6(a)では、フォトマスク300の透光部300bを通して、各製品領域Rの領域Rbの感光性樹脂23sに紫外線Lが照射されて露光され、各製品領域Rの領域Rbの感光性樹脂23sが硬化する。このとき、各製品領域Rの領域Raの感光性樹脂23sはフォトマスク300の遮光部300aによって遮光されるため、露光されずに未硬化の状態に維持される。
【0037】
この時点では、露光した感光性樹脂23sを現像液で処理せずに、各製品領域Rの領域Raに配置された感光性樹脂23sの未露光部分を未硬化部として残しておく。
【0038】
その後に、150℃~200℃の温度で加熱処理(ポストベーク)を行う。これにより、第1クラッド層21及びコア層22の上に第2クラッド層23が形成される。第2クラッド層23の厚みは、例えば、10μm~30μm程度である。
【0039】
その後、フォトマスク300を除去することにより、
図6(b)に示すように、各製品領域Rの領域Raに第2クラッド層23の未硬化部23aがそれぞれ配置される。各製品領域Rにおいて、複数のコア層22の凹部22xが第2クラッド層23の未硬化部23aで埋められる。また、各製品領域Rの領域Rbに第2クラッド層23の硬化部23bが配置される。
【0040】
第2クラッド層23の硬化部23bは、感光性樹脂23sが光硬化及び熱硬化によって完全に硬化して得られる。また、第2クラッド層23の未硬化部23aは、感光性樹脂23sが露光されずに150℃~200℃の温度で加熱処理されるだけで得られるため、未硬化の状態で維持される。第2クラッド層23の未硬化部23aと硬化部23bとは一体的に繋がって形成される。
【0041】
これにより、第1クラッド層21と、第1クラッド層21の上に形成されたコア層22と、第1クラッド層21及びコア層22の上に形成された第2クラッド層23とにより、光導波路20が構築される。
【0042】
光導波路20では、コア層22の屈折率が第1クラッド層21及び第2クラッド層23の屈折率よりも高くなるように設定される。
【0043】
本実施形態では、第2クラッド層23の未硬化部23a及び硬化部23bをネガ型の感光性樹脂である感光性樹脂23sをから形成している。
【0044】
この他に、第2クラッド層23の未硬化部23a及び硬化部23bをポジ型の感光性樹脂から形成してもよい。
【0045】
ネガ型は、光照射された露光部分が架橋反応により溶解性から不溶解性に変質し、未露光部分(未硬化部)が現像液で除去され、露光部分が硬化部として残される。
【0046】
逆に、ポジ型は、光照射された露光部分(未硬化部)がアルカリ不溶性から可溶性に化学変化し、現像液で除去され、未露光部分が硬化部として残される。
【0047】
ポジ型の感光性樹脂を使用する場合は、前述した
図5のネガ用のフォトマスクを白黒反転させたポジ用のフォトマスクが使用される。そして、ポジ型の感光性樹脂にポジ用のフォトマスクを介して露光する。
【0048】
これにより、ポジ型の感光性樹脂の露光部分が第2クラッド層23の現像液に溶解する未硬化部23aになる。また、ポジ型の感光性樹脂の未露光部分が熱硬化して第2クラッド層23の硬化部23bになる。
【0049】
以上のように、第2クラッド層23は、ネガ型の感光性樹脂(感光性樹脂23s)から形成してもよいし、ポジ型の感光性樹脂から形成してもよい。そして、第2クラッド層23の未硬化部23aは、ネガ用又はポジ用の現像液に溶解して除去される特性を有する。一方、第2クラッド層23の硬化部23bは、ネガ用又はポジ用の現像液に溶解しない特性を有する。
【0050】
次に、各製品領域Rの外周部に沿って、第2クラッド層23、コア層22、第1クラッド層21及び基板10を切削装置の回転ブレードなどによって切断して個片化する。
【0051】
このとき、コア層22の凹部22xが形成された領域は、第2クラッド層23の未硬化部23aで被覆されて保護されている。このため、コア層22を切断する際に、コア層22の凹部22xが形成された領域が破損するおそれがなく、信頼性よく、コア層22を切断することができる。また、コア層22が削りカスで汚染されるおそれもない。
【0052】
これにより、コア層22の延在方法の第2クラッド層23の、コア層22、第1クラッド層21及び基板10の各端面は、切断面からなり、面一になった面で形成される。
【0053】
その後、第2クラッド層23を現像液で処理することにより、第2クラッド層23の未硬化部23aを除去して、コア層22の凹部22xが形成された領域Raを第2クラッド層23から露出させることができる。これにより、
図1及び
図2に示す光導波路装置1が完成する。
【0054】
第2クラッド層23がネガ型の感光性樹脂から形成される場合は、第2クラッド層23の未硬化部23aはネガ用の現像液に溶解させて除去することができる。また、第2クラッド層23がポジ型の感光性樹脂から形成される場合は、第2クラッド層23の未硬化部23aはポジ用の現像液に溶解させて除去することができる。
【0055】
なお、第2クラッド層23の未硬化部23aを除去せずに製品として出荷してもよい。この場合、光導波路装置1は、第1クラッド層21の上に形成された第2クラッド層23を有する。そして、第2クラッド層23は、コア層22の第1領域Raを被覆する未硬化の感光性樹脂である未硬化部23aと、コア層22の第2領域Rbを被覆する硬化した感光性樹脂である硬化部23bとを含む構造になる。未硬化の感光性樹脂である未硬化部23aは、現像液に溶解して除去される特性を有するため、製品を入手した者が所望の段階で未硬化部23aを現像液で処理することにより、コア層22の凹部22xを第2クラッド層23から露出させることができる。
【0056】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、シリコン導波路と光結合された光導波路装置の例を示す。なお、第2実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
【0057】
図7は、第2実施形態に係る光導波路装置を例示する図であり、
図7(a)は
図1(b)に相当する断面図、
図7(b)は
図7(a)の第1領域Ra近傍の部分平面図、
図7(c)は
図7(a)のE-E線に沿う部分断面図である。なお、
図7(b)では、凹部22xとシリコン導波路42との位置関係を示すため、シリコン基板41の図示を省略している。
【0058】
図7を参照すると、光導波路装置2は、接着層30及びシリコンフォトニクスチップ40を有する点が、光導波路装置1と相違する。
【0059】
シリコンフォトニクスチップ40は、シリコン基板41と、シリコン基板41の一方の面側に設けられたシリコン導波路42とを備えている。シリコン導波路42は、シリコンチップに作り込まれた微細な光導波路であり、シリコンチップに光回路などを集積化するシリコンフォトニクス技術に使用される。
【0060】
シリコン基板41の厚さは、例えば、100μm~800μm程度である。シリコン導波路42は、例えば、シリコン基板41上に設けられた保護膜上に設けることができる。保護膜は、例えば、SiO2やSiOX等から形成することができる。保護膜の厚さは、例えば、2μm~6μm程度である。
【0061】
平面視で、シリコン導波路42の一端側は、テーパー形状になっている。すなわち、平面視で、シリコン導波路42の一端側は、第2クラッド層23に近づくにつれて幅が狭くなっている。このような形状により、シリコン導波路42とコア層22との光結合効率を向上できる。シリコン導波路42の幅は、テーパー形状の部分以外では、例えば、200nm~500nm程度である。テーパー形状の部分の先端の幅は、例えば、一定幅の部分の1/2から1/4程度である。シリコン導波路42の厚さは一定である。シリコン導波路42の厚さは、例えば、20nm~300nm程度である。
【0062】
シリコンフォトニクスチップ40は、シリコン導波路42をコア層22の側に向けて、第1クラッド層21上に搭載されている。シリコン導波路42の一部又は全部は、凹部22xの内側に配置されている。シリコン基板41と第1クラッド層21とが対向する領域に、接着層30が設けられており、両者を接着している。接着層30は、コア層22を被覆している。また、接着層30は、凹部22xの内側に入り込み、シリコン導波路42を被覆している。
【0063】
このような構造により、シリコン導波路42からの染み出し光がコア層22に入射するため、両者が光結合される。染み出し光は、シリコン導波路42の下面から生じるが、側面からも生じるため、シリコン導波路42が凹部22xの内側に配置されることにより、光結合効率を向上することができる。
【0064】
また、光結合効率を向上するには、コア層22とシリコン導波路42との高さ方向の間隔は1μm以下とすることが好ましいが、この構造では、コア層22とシリコン導波路42との高さ方向の間隔を容易に1μm以下とすることができる。
【0065】
図8及び
図9は、第2実施形態に係る光導波路装置の製造工程を例示する図である。光導波路装置2を作製するには、まず、
図8(a)に示す工程では、第1実施形態で示した光導波路装置1を準備する。そして、
図8(b)に示す工程では、第1領域Raにおいて、第1クラッド層21上に、コア層22を被覆するように、接着層30となる未硬化の樹脂30sを配置する。樹脂30sとしては、例えば、第1クラッド層21の材料として例示した中から適宜選択した感光性樹脂を使用できる。
【0066】
次に、
図9(a)に示す工程では、シリコンフォトニクスチップ40を準備し、シリコン導波路42をコア層22の側に向けて、第1クラッド層21上に搭載する。この際、凹部22xとシリコン導波路42が対向するように配置する。シリコン導波路42と凹部22xとの大まかな位置合わせには、半導体チップの実装等に用いられるアライメントマークを使用したアライメント手法を併用することが好ましい。そして、
図9(b)に示す工程では、樹脂30sを紫外線照射等により硬化させて接着層30を形成する。以上の工程で、光導波路装置2が完成する。
【0067】
図9(a)に示す工程では、凹部22xに凸部であるシリコン導波路42をはめ込むことにより、容易に位置合わせすることができる。その結果、コア層22とシリコン導波路42との位置精度に優れた、アディアバティック結合された光導波路装置2を実現することができる。このように、光導波路装置1は、コア層22に凹部22xを設けたことにより、光導波路装置1上にシリコンフォトニクスチップ40を搭載する際に、シリコン導波路42とコア層22との位置精度を向上可能である。
【0068】
〈変形例〉
変形例では、コア層の全体を光結合部として使用可能な光導波路装置の例を示す。なお、変形例において、既に説明した実施形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
【0069】
図10は、変形例に係る光導波路装置を例示する図である。
図10(a)は、第1実施形態の変形例に係る光導波路装置1Aを例示する断面図であり、
図1(b)に相当する断面図である。
【0070】
光導波路装置1Aは、第2クラッド層23を有していなく、コア層22の長手方向の全体に凹部22xが設けられている。すなわち、光導波路装置1Aは、全体が光導波路装置1Aの第1領域Raと同様の構造である。このような構造により、コア層22の全体を光結合部として使用可能となる。
【0071】
図10(b)は、第2実施形態の変形例に係る光導波路装置2Aを例示する断面図であり、
図7(a)に相当する断面図である。
【0072】
光導波路装置2Aは、シリコンフォトニクスチップ40が、シリコン導波路42をコア層22の側に向けて、光導波路装置1Aの第1クラッド層21上に接着層30を介して搭載された構造である。光導波路装置2Aでは、シリコン導波路42からの染み出し光がコア層22の全体に入射して、両者が光結合される。このような構造の場合も、第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0073】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0074】
1,1A,2,2A 光導波路装置
10 基板
20 光導波路
21 第1クラッド層
22 コア層
22a 第1面
22x 凹部
23 第2クラッド層
23a 未硬化部
23b 硬化部
23s 感光性樹脂
30 接着層
30s 樹脂
40 シリコンフォトニクスチップ
41 シリコン基板
42 シリコン導波路