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特開2024-141174被膜付き葉茎菜類及び被膜付き葉茎菜類の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141174
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】被膜付き葉茎菜類及び被膜付き葉茎菜類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 7/153 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A23B7/153
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052670
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】高木 厚志
(72)【発明者】
【氏名】西村 大知
(72)【発明者】
【氏名】平 夏樹
【テーマコード(参考)】
4B169
【Fターム(参考)】
4B169AA04
4B169FA02
4B169KA02
4B169KA07
4B169KA08
4B169KB02
4B169KC40
(57)【要約】
【課題】収穫時にもぎる野菜又はカットして提供される野菜等の葉茎菜類に対して、長期間にわたって鮮度が保持でき、消費者の購買意欲を減退させない、被膜付き葉茎菜類、及び被膜付き葉茎菜類の製造方法を提供すること。
【解決手段】切り口のみが被膜で覆われた被膜付き葉茎菜類である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り口のみが被膜で覆われた被膜付き葉茎菜類。
【請求項2】
前記切り口が茎の部分である、請求項1に記載の被膜付き葉茎菜類。
【請求項3】
前記被膜が、界面活性剤を含む被覆剤組成物により形成される、請求項1又は2に記載の被膜付き葉茎菜類。
【請求項4】
前記界面活性剤が糖系界面活性剤である、請求項3に記載の被膜付き葉茎菜類。
【請求項5】
前記糖系界面活性剤が糖脂肪酸エステルである、請求項4に記載の被膜付き葉茎菜類。
【請求項6】
前記糖系界面活性剤がショ糖脂肪酸エステルである、請求項4に記載の被膜付き葉茎菜類。
【請求項7】
前記界面活性剤の親油基が飽和脂肪酸である、請求項3に記載の被膜付き葉茎菜類。
【請求項8】
前記界面活性剤のHLBが5以上である、請求項3に記載の被膜付き葉茎菜類。
【請求項9】
前記被膜の平均膜厚が0.1μm以上10μm以下である、請求項1又は2に記載の被膜付き葉茎菜類。
【請求項10】
切り口のみを被覆剤組成物で覆う工程を有する、被膜付き葉茎菜類の製造方法。
【請求項11】
前記切り口が茎の部分である、請求項10に記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
【請求項12】
前記被覆剤組成物で覆う工程が、切り口に被覆剤組成物を塗布又は噴霧する工程である、請求項10又は11に記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
【請求項13】
前記被覆剤組成物が界面活性剤を含む、請求項10又は11に記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
【請求項14】
前記界面活性剤が糖系界面活性剤である、請求項13に記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
【請求項15】
前記糖系界面活性剤が糖脂肪酸エステルである、請求項14に記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
【請求項16】
前記糖系界面活性剤がショ糖脂肪酸エステルである、請求項14に記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
【請求項17】
前記界面活性剤の親油基が飽和脂肪酸である、請求項13に記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
【請求項18】
前記界面活性剤のHLBが5以上である、請求項13に記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
【請求項19】
前記被覆剤組成物が、水系溶剤を含む、請求項10に記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
【請求項20】
前記水系溶剤が水及び/又はアルコールである、請求項19に記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
【請求項21】
前記被覆剤組成物中の不揮発成分のうち、前記界面活性剤の含有量が60質量%以上である、請求項13に記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被膜付き葉茎菜類及び被膜付き葉茎菜類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MA(Modified Atmosphere)包装に代表されるような、流通又は保管時において食品の鮮度を保持できる包装材が注目されている。
例えば、食品を包装するためのフィルムに鮮度保持効果を有する層を設けて、食品の鮮度を保持する技術が提案されている(特許文献1参照)。
また、品質保持剤を青果物等の食品に直接塗布し、食品の鮮度を保持する技術も提案されている(特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-171058号公報
【特許文献2】特開2018-134115号公報
【特許文献3】特表2005-530502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示される技術では、流通又は保管時において包装フィルムに食品が接触することがあるため、鮮度保持効果を有する層も人体に対して安全性が高いことが好ましい。
また、上記特許文献2及び3に開示される方法は、鮮度保持期間が短く、必ずしも鮮度保持性能を発現させる上では十分ではなかった。また、使用する材料が人体には優しくない組成物であるなどの課題もあった。
【0005】
ところで、キャベツなどの葉物野菜では、通常外葉から劣化が生じるため、店頭において外葉を廃棄して購入することが通常行われる。外葉の劣化の程度によっては、2枚~4枚の外葉が廃棄されることもある。また、外葉の劣化の程度によっては、消費者の購買意欲を低下させることもある。
そこで、本発明は、収穫時にもぎる野菜又はカットして提供される野菜等の葉茎菜類に対して、長期間にわたって鮮度が保持でき、消費者の購買意欲を減退させない、被膜付き葉茎菜類、及び被膜付き葉茎菜類の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、葉物野菜など、もぎって収穫する葉茎菜類において、その切り口の部分からの水分の蒸散が鮮度低下の一要因であると考え、水蒸気バリア性の高い被膜を切り口に塗布することで、効果的に切り口からの水分の蒸散を抑制することができ、上記課題を解決し得ることを見出した。本願発明はこのような知見に基づき完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を有する。
[1]切り口のみが被膜で覆われた被膜付き葉茎菜類。
[2]前記切り口が茎の部分である、上記[1]に記載の被膜付き葉茎菜類。
[3]前記被膜が、界面活性剤を含む被覆剤組成物により形成される、上記[1]又は[2]に記載の被膜付き葉茎菜類。
[4]前記界面活性剤が糖系界面活性剤である、上記[3]に記載の被膜付き葉茎菜類。
[5]前記糖系界面活性剤が糖脂肪酸エステルである、上記[4]に記載の被膜付き葉茎菜類。
[6]前記糖系界面活性剤がショ糖脂肪酸エステルである、上記[4]又は[5]に記載の被膜付き葉茎菜類。
[7]前記界面活性剤の親油基が飽和脂肪酸である、上記[3]~[6]のいずれかに記載の被膜付き葉茎菜類。
[8]前記界面活性剤のHLBが5以上である、上記[3]~[7]のいずれかに記載の被膜付き葉茎菜類。
[9]前記被膜の平均膜厚が0.1μm以上10μm以下である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の被膜付き葉茎菜類。
[10]切り口のみを被覆剤組成物で覆う工程を有する、被膜付き葉茎菜類の製造方法。
[11]前記切り口が茎の部分である、上記[10]に記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
[12]前記被覆剤組成物で覆う工程が、切り口に被覆剤組成物を塗布又は噴霧する工程である、上記[10]又は[11]に記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
[13]前記被覆剤組成物が界面活性剤を含む、上記[10]~[12]のいずれかに記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
[14]前記界面活性剤が糖系界面活性剤である、上記[13]に記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
[15]前記糖系界面活性剤が糖脂肪酸エステルである、上記[14]に記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
[16]前記糖系界面活性剤がショ糖脂肪酸エステルである、上記[14]又は[15]に記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
[17]前記界面活性剤の親油基が飽和脂肪酸である、上記[13]~[16]のいずれかに記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
[18]前記界面活性剤のHLBが5以上である、上記[13]~[17]のいずれかに記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
[19]前記被覆剤組成物が、水系溶剤を含む、上記[10]~[18]のいずれかに記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
[20]前記水系溶剤が水及び/又はアルコールである、上記[19]に記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
[21]前記被覆剤組成物中の不揮発成分のうち、前記界面活性剤の含有量が60質量%以上である、上記[13]~[20]のいずれかに記載の被膜付き葉茎菜類の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、収穫時にもぎる野菜又はカットして提供される野菜等の青果物に対して、長期間にわたって鮮度が保持でき、消費者の購買意欲を減退させない、被膜付き葉茎菜類、及び被膜付き葉茎菜類の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について、詳細に説明するが、本発明は具体的な実施態様のみに限定されるものではない。
【0010】
[被膜付き葉茎菜類]
本発明の被膜付き葉茎菜類は、切り口のみが被膜で覆われていることを特徴とする。切り口のみが被膜で覆われることによって、被膜を形成するための液剤を少量とすることができ、効果的に葉茎菜類の鮮度を維持することができる。
本発明において切り口とは、例えば収穫する際にもぎられたまたは切り取られた部分をいい、また葉茎菜類等の青果物をハーフカットや1/4にカットした場合の切断面等も含まれる。特に、収穫時に切断される切り口が被膜で覆われている態様が好ましい。葉茎菜類の場合、収穫時の切り口は、茎の部分である。収穫時に切断される切り口から水分が蒸散すると考えられるため、これを抑制することで、貯蔵時や流通時に鮮度を維持できると考えられる。また、当該切り口で呼吸することが考えられることから、酸素を遮断して鮮度を維持する効果も有する。
なお、切り口の部分での水分の蒸散を抑制するためには、被膜は水蒸気バリア性を有することが肝要であり、呼吸を抑制するためには、被膜は酸素バリア性を有することが肝要である。
【0011】
<葉茎菜類>
葉茎菜類としては、例えば、アスパラガス、キャベツ、レタス、ホウレンソウ、チンゲン菜、小松菜、ハクサイ、カリフラワー、ブロッコリー、レンコン等の葉茎菜類が挙げられる。
【0012】
<被膜>
本発明に係る被膜は、本発明の効果を奏する被膜であれば、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に示すものとして、水蒸気バリア性及び/または酸素バリア性を有する被膜であることが好ましい。葉茎菜類に適用することから、食用に供する際の安全性を考慮し、可食性であることが好ましい。これらの性能を発揮する材料としては、多糖類、ポリビニルアルコール、クレイ、界面活性剤などが挙げられる。これらの材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。被膜中のこれらの材料の含有量は、100質量%を上限として、60質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がよりさらに好ましい。
なお、該被膜は溶剤のない無溶剤塗布で形成されてもよいし、溶剤を含む組成物により形成されてもよい。本発明では、食用に供する際の安全性の観点で、特に糖系界面活性剤と水系溶剤を含む被覆剤組成物により、形成される被膜を有することが好ましい。このような被覆剤組成物により形成される被膜を有することで、上述の呼吸及び水分の蒸散が抑制され、葉茎菜類の鮮度が保持される。
【0013】
<水蒸気バリア性>
本発明の被膜は、30℃、80%RHにおける1μmあたりの水蒸気透過率が0.1~20cc/(m・day・atm)であることが好ましく、0.5~17cc/(m・day・atm)であることがより好ましく、1~15cc/(m・day・atm)であることがさらに好ましい。水蒸気透過率が上記範囲内であると、葉茎菜類からの蒸散を抑制でき、鮮度保持が可能となる。
なお、水蒸気透過率(WVTR)はJIS K7129-5に基づき水蒸気透過率測定装置 DELTAPERMを用いた差圧法にて測定できる。より具体的には、30℃、80%RHの条件下において、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に被膜した際の水蒸気透過率の測定値を、下記式によって1μmあたりの透過率に換算した値である。
【0014】
【数1】
【0015】
<酸素バリア性>
本発明の被膜は、25℃、50%RHにおける1μmあたりの酸素透過率が0.1~100cc/(m・day・atm)であることが好ましく、0.5~90cc/(m・day・atm)であることがより好ましく、1~50cc/(m・day・atm)であることがさらに好ましい。
酸素透過率が上記範囲内であると、葉茎菜類の呼吸による老化を抑制でき、より鮮度保持が可能となる。
なお、酸素透過率(OTR)はJIS K7126-2に基づき酸素透過率測定装置 OX-TRAN 2/21(MOCON社製)を用いた等圧法にて測定できる。より具体的には、25℃、50%RHの条件下において、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に被膜した際の酸素透過率の測定値を、下記式によって1μmあたりの透過率に換算した値である。
【0016】
【数2】
【0017】
<可食性>
本発明の被膜は、可食性を有していることが好ましい。可食性とは、食用に供することができることを意味する。安全性の観点から、食品添加物として認可されている化合物について、用量を満たすように用いることで、可食性を有するようにすることが好ましい。
【0018】
<平均膜厚>
本発明の被膜の平均膜厚は、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.5μm以上5μm以下がより好ましい。平均膜厚が0.1μm以上であることによって、水蒸気バリア性及び酸素バリア性が良好となる。一方、平均膜厚が10μm以下であることによって、食品の食感を保った状態で被膜を形成できる。
本発明においては、葉茎菜類の切り口のみに被膜を形成するものであり、切り口における被膜の厚みは均一でなくてもよい。
なお、被膜の平均膜厚は、被膜付き食品の表面から被膜を除去して、被膜と剥離部の断面を電子顕微鏡又は金属顕微鏡等で観察して、無作為に10点以上を選択して厚みを測定した平均値から求めることができる。
【0019】
<界面活性剤>
本発明の被膜は、界面活性剤を含んでいてよい。界面活性剤を含むことで、濡れ性が高く、対象とする葉茎菜類への塗布性を高められる。界面活性剤は2種以上を併用してもよい。
界面活性剤は、溶解した溶液の表面張力を下げる界面活性を示し、実用に供される物質である。
【0020】
界面活性剤は、親水基と親油基を有する。
親水基としては、水酸基、カルボン酸基、硫酸基、リン酸基、アミン、4級アンモニウム基などが挙げられる。カルボン酸基、硫酸基、リン酸基、アミノ基、4級アンモニウム基は、塩の状態であってもよい。疎水基としては、炭化水素基、フッ素基、有機ケイ素基などが挙げられる。
界面活性剤を合成する際に、親油基を形成させるための化合物として脂肪酸を用いる場合、当該脂肪酸は、食用油脂であることが好ましい。
脂肪酸の炭素数は特に限定されないが、12以上22以下が好ましく、12以上18以下がより好ましく、14以上18以下がさらに好ましい。炭素数が上記範囲であることによって、得られる被膜のべたつきを抑えられる。
脂肪酸は飽和又は不飽和脂肪酸であってよいが、常温(20~25℃)において固体になりやすく、得られる被膜のべたつきを抑えられる観点から、飽和脂肪酸が好ましい。
より具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられ、中でも炭素数が12以上18以下の飽和脂肪酸である、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましく、炭素数が14以上18以下の飽和脂肪酸である、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸がより好ましい。これら飽和脂肪酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、脂肪酸はすべて同一である必要はなく、界面活性剤を構成する脂肪酸の60質量%以上が上記の好適な構成脂肪酸であればよい。この比率は、得られる被膜のべたつきを抑えられる観点から、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。上限に関しては特に限定されないが、100質量%以下であればよい。
なお、界面活性剤を構成する脂肪酸の組成は、組成物から界面活性剤を単離した後、誘導体化してからガスクロマトグラフィーで分析することによって測定できる。
【0021】
本発明の被膜を形成する組成物に用いられる界面活性剤としては、エステル型、エーテル型が生分解性の観点で好ましい。
エステル型の界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、糖脂肪酸エステルが、食品添加物として認可されている観点で好ましい。
エーテル型の界面活性剤としては、アルキルグリコシドが食品添加物として認可されている観点で好ましい。
これらの中でも、親水性と疎水性を容易に調整できる観点で、グリセリン脂肪酸エステルと糖脂肪酸エステルが好ましく、水溶性が高く、水を主成分とする溶剤に溶解して用いることが可能な点で、糖脂肪酸エステルが好ましい。
以下、糖脂肪酸エステルとアルキルグリコシドを合わせて糖系界面活性剤と総称する。
【0022】
界面活性剤のHLBは特に限定されないが、後述する水系溶剤を用いて被膜を形成できる観点から、5以上が好ましく、7以上がより好ましく、9以上がさらに好ましい。HLBの上限は通常20であり、18以下がより好ましい。
【0023】
(糖系界面活性剤)
糖系界面活性剤は、糖を親水基とする非イオン性界面活性剤であり、例えば、糖と脂肪酸がエステル結合してなる糖脂肪酸エステル、糖と高級アルコールがグリコシド結合してなるアルキルグリコシド等が挙げられ、中でも造膜性の点から糖脂肪酸エステルが好ましい。
【0024】
糖系界面活性剤は、得られる被膜のべたつきを抑え、かつ、水蒸気バリア性及び酸素バリア性を高くできる観点から、結晶性を有することが好ましい。
また、糖系界面活性剤は、得られる被膜のべたつきを抑える観点から、常温(20~25℃)において固体となる成分が60質量%以上含まれることが好ましく、70質量%以上含まれることがより好ましく、80質量%以上含まれることがさらに好ましく、90質量%以上含まれることがよりさらに好ましい。糖系界面活性剤は、常温(20~25℃)において固体となる成分のみで構成されてもよく、したがって、上記比率は、100質量%以下であればよい。
【0025】
糖系界面活性剤のHLBは特に限定されないが、後述する水系溶剤を用いて被膜を形成できる観点から、5以上が好ましく、7以上がより好ましく、9以上がさらに好ましい。HLBの上限は通常20であり、18以下がより好ましい。
【0026】
(糖脂肪酸エステル)
糖脂肪酸エステルは、糖と脂肪酸がエステル結合したものである。
【0027】
糖脂肪酸エステルにおける糖は、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類、多糖類、糖アルコール及びその他のオリゴ糖のいずれであってもよい。
単糖類としては、リブロース、キシルロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、デオキシリボース等のペントース;プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、フコース、フクロース、ラムノース等のヘキソースが挙げられる。
二糖類としては、スクロース(ショ糖)、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース等が挙げられる。
三糖類としては、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース等が挙げられる。
四糖類としては、アカルボース、スタキオース等が挙げられる。
多糖類としては、グリコーゲン、デンプン、セルロース、デキストリン、グルカン、フルクタン、キチン等が挙げられる。
糖アルコールとしては、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、マンニトール、グリセリン等が挙げられ、これら糖アルコールの縮合体であってもよい。
その他のオリゴ糖としては、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、ラクトスクロース等が挙げられる。
【0028】
糖脂肪酸エステルは、葉茎菜類に使用可能なものであれば特に限定されないが、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グルコースエステル等が挙げられ、中でもショ糖脂肪酸エステルが入手容易である観点で好ましい。
なお、糖系界面活性剤は1種のみである必要はなく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせる場合、糖系界面活性剤全量を100質量%としたときに、60質量%以上がショ糖脂肪酸エステルであるのが好ましい。この比率は、得られる被膜のべたつきを抑え、かつ、水蒸気バリア性及び酸素バリア性を高くできる観点から、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がよりさらに好ましい。糖系界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステル単独で使用されてもよく、したがって、上記比率は、100質量%以下であればよい。
【0029】
糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、食用油脂であることが好ましい。
糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸の炭素数は特に限定されないが、12以上22以下が好ましく、12以上18以下がより好ましく、14以上18以下がさらに好ましい。炭素数が上記範囲であることによって、得られる被膜のべたつきを抑えられる。
糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸は飽和又は不飽和脂肪酸であってよいが、常温(20~25℃)において固体になりやすく、得られる被膜のべたつきを抑えられる観点から、飽和脂肪酸が好ましい。
より具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられ、中でも炭素数が12以上18以下の飽和脂肪酸である、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましく、炭素数が14以上18以下の飽和脂肪酸である、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸がより好ましい。これら飽和脂肪酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸はすべて同一である必要はなく、糖脂肪酸エステル中の構成脂肪酸の60質量%以上が上記の好適な構成脂肪酸であればよい。この比率は、得られる被膜のべたつきを抑えられる観点から、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。上限に関しては特に限定されないが、100質量%以下であればよい。
なお、糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸組成は、組成物から糖脂肪酸エステルを単離した後、誘導体化してからガスクロマトグラフィーによって測定できる。
【0030】
糖脂肪酸エステルの脂肪酸エステル基数は、親水基である糖の分子構造内にあるエステル結合可能な水酸基の数によってその範囲が変化し、例えば、ショ糖脂肪酸エステルでは1~8個、ソルビタン脂肪酸エステルでは1~4個である。
水系溶剤を用いて被膜を形成できる観点から、界面活性剤の全量を100質量%としたときに、脂肪酸エステル基数が3個以下である糖脂肪酸エステル(モノエステル、ジエステル又はトリエステル)を50質量%以上含むのが好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。上限に関しては特に限定されないが、100質量%以下であればよい。
また、同様の観点から、界面活性剤の全量を100質量%としたときに、脂肪酸エステル基数が6個以上である糖脂肪酸エステル(ヘキサエステル、ヘプタエステル、オクタエステル又はそれ以上)を30質量%以下含むのが好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がより好ましい。脂肪酸エステル基数が6個以上である糖脂肪酸エステルは、含有しなくてもよく、その含有量は0質量%以上であればよい。
【0031】
なお、脂肪酸エステル基数ごとの含有割合は、組成物から糖脂肪酸エステルを単離した後、Residue Monograph prepared by the meeting of the Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives (JECFA), 84th meeting 2017 “ Sucrose Esters of Fatty Acids”並びにPrepared at the 71st JECFA (2009) and published in FAO JECFA Monographs 7 (2009) “Sucrose Oligoesters Type I”及び“Sucrose Oligoesters Type II” に記載される、METHOD OF ASSAYに従って測定することができる。
【0032】
《モノエステル~トリエステル及びテトラエステル以上の測定》
一定量のテトラヒドロフラン(安定剤含有GPC又は工業用グレード)に試料を溶解させた後、0.5μmのメンブランフィルターで不溶物を取り除いた溶液を測定試料とし、下記条件での高速液体クロマトグラフィーを実施する。組成比は、モノエステル~トリエステルそれぞれのピーク面積及びテトラエステル以上をまとめたピーク面積を個別に算出し、43分までに検出された全てのピークの合計ピーク面積に対する比率を算出する。
ピーク面積は各ピークの開始点(立ち上がり位置)から終了点(立ち下がり位置)までの面積に該当する。
2つ以上のピークが隣接しており、開始点や終了点が不明な場合は、ピークとピークの間のデータが最小となった地点を開始点及び終了点として、面積を算出する。
【0033】
〈測定条件:モノエステル~トリエステル及びテトラエステル以上〉
装置 :HLC-8320GPC 検出器:示差屈折計(東ソー社製)
カラム :TSK-ゲル G1000HXL,G2000HXL,G3000HXL,G4000HXL(東ソー社製)
カラム温度:40℃
検出器温度:40℃
溶離液 :テトラヒドロフラン(安定剤含有GPC又は工業用グレード)
流速 :0.8ml/min
注入量 :80μl
測定時間 :50分(43分までに検出した全てピークをもとに面積比を算出する)
【0034】
《テトラエステル~オクタエステルの測定》
一定量のメタノール(試薬特級)/テトラヒドロフラン(安定剤不含HPLCグレード)=20/80(vоl/vоl)に試料を溶解させた後、0.45μmのメンブランフィルターで不溶物を取り除いた溶液を測定試料とし、下記条件での高速液体クロマトグラフィーを実施する。テトラエステル~オクタエステルの組成比は、テトラエステル~オクタエステルそれぞれのピーク面積を個別に算出し、テトラエステル~オクタエステルの合計ピーク面積に対する比率を算出し、上記《モノエステル~トリエステル及びテトラエステル以上の測定》で求めたテトラエステル以上の面積比率をテトラエステル~オクタエステルの面積比にて案分して算出する。
ピーク面積は各ピークの開始点(立ち上がり位置)から終了点(立ち下がり位置)までの面積に該当する。
2つ以上のピークが隣接しており、開始点や終了点が不明な場合は、ピークとピークの間のデータが最小となった地点を開始点及び終了点として、面積を算出する。
【0035】
〈測定条件:テトラエステル~オクタエステル〉
装置
デガッサー:DGU-20A(島津製作所社製)
ポンプ :LC-20AD(島津製作所社製)
オーブン :CTO-20A(島津製作所社製)
検出器 :RID-20A 示差屈折計(島津製作所社製)
カラム :150mm×4.6mm i.d.;ODS-2(GLサイエンス社製)
カラム温度:40℃
検出器温度:40℃
溶離液 :メタノール(試薬特級)/テトラヒドロフラン(安定剤不含HPLCグレード)=70/30~50/50(vоl/vоl)
流速 :0.8ml/min
注入量 :20μl
測定時間 :16分
【0036】
[被覆剤組成物]
本発明に係る被膜は、被覆剤組成物により形成される。本発明に係る被覆剤組成物は、当該被膜剤組成物を用いて形成された被膜が本発明の効果を示せば、特に限定されない。前述のように、水蒸気バリア性及び/または酸素バリア性を有する被膜を形成できることが好ましい。そのため、多糖類、ポリビニルアルコール、クレイ、界面活性剤のいずれか1種以上を含んでいることが好ましい。この中でも、界面活性剤を含んでいることが、食用に供する際の安全性の観点で好ましい。界面活性剤については、前述の通りである。界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
<水系溶剤>
本発明に係る被覆剤組成物は、塗布効率の観点から、水系溶剤を含むことが好ましい。被覆剤組成物を構成する水系溶剤としては、水;エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコールが挙げられる。葉茎菜類に塗布できる観点から、水を溶媒とする水性組成物とすることが好ましいが、安定性及び塗布性の観点から、溶剤として水に加えて、上記したアルコール等の有機溶剤を少量含有してもよい。
水系溶剤中の有機溶剤の含有量は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下がよりさらに好ましい。
【0038】
(その他成分)
本発明に係る被覆剤組成物は、本発明の被覆剤の機能を損なわない量で、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、pH調整剤が例示される。
pH調整剤としては、例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、アンモニア等を用いることができる。
【0039】
(被覆剤組成物の物性)
<<不揮発成分濃度>>
本発明に係る被覆剤組成物における不揮発成分濃度は、特に限定されないが、0.1質量%以上60質量%以下が好ましく、0.2質量%以上50質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上40質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以上20質量%以下がよりさらに好ましく、1質量%以上10質量%以下がとりわけ好ましい。不揮発成分濃度を0.1質量%以上60質量%以下とすることで、糖系界面活性剤を水系溶剤に適切に溶解させつつ、好適な膜厚を有する被膜を形成しやすくなる。
なお、本発明における「不揮発成分濃度」とは、組成物中に含まれる溶剤を除いた不揮発成分の濃度である。
【0040】
<<界面活性剤の含有量>>
被覆剤組成物における界面活性剤の含有量は、得られる塗膜の水蒸気バリア性及び酸素バリア性を高くできる観点から、被覆剤組成物中の不揮発成分のうち、100質量%を上限として、60質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がよりさらに好ましい。
本発明における被膜は、組成物から溶剤を揮発させたものであるため、被膜における界面活性剤の好適な含有量も上記と同様である。
【0041】
(被覆剤組成物のpH)
被覆剤組成物のpHは、葉茎菜類に安全に適用できる観点から、4以上10以下が好ましく、4以上8以下がより好ましい。
【0042】
[被膜付き葉茎菜類の製造方法]
本発明の被膜付き葉茎菜類の製造方法は、切り口のみを被覆剤組成物で覆う工程を有する。
被覆剤組成物で覆う工程としては、被覆剤組成物を用いて葉茎菜類の切り口を覆う工程であれば特に制限はなく、例えば、刷毛塗り、カーテンコート等の直接塗布する方法;スプレーコート等の噴射法が挙げられる。
これらのうち、切り口に選択的に塗布できる方法として、切り口に被覆剤組成物を塗布又は噴霧(以下「塗布等」と記載することがある。)する工程が好適に挙げられる。このような態様をとることで、切り口にのみ被膜が形成されるため、少量の被覆剤組成物で高い効果を上げることができる。
より具体的には、切り口に刷毛塗り等により直接塗布する方法、切り口に噴射法により被膜を形成する方法が好ましく、特に生産性の点から、噴射法が好ましい。噴射法を用いる場合には、切り口以外の部分にも被膜が形成される場合があるが、後に記載するように、切り口以外に付着する被覆剤組成物は、除去することが好ましい。
なお、被覆剤組成物は葉茎菜類に塗布等することができれば、無溶剤であってもよい。
【0043】
<被覆剤組成物の塗布>
本発明の対象は上述のように、切り口を有する葉茎菜類であり、具体的には、収穫の際にもぎる部分、又はその後ハーフカット、1/4カットした葉茎菜類の切り口に本発明に係る被覆剤組成物を塗布するものである。
【0044】
本発明の対象となる切り口を有する葉茎菜類では、切り口の部分で呼吸をし、水分を蒸散させることから、切り口にのみ本発明に係る被覆剤組成物を塗布等するものである。水分の蒸散が多い部位のみに組成物を塗布することで、被覆剤組成物の使用量を必要最小限とすることができる。また、切り口にのみ本発明に係る被覆剤組成物を塗布等することで、被覆剤組成物の乾燥時間を短くし、被膜形成処理の効率を高めることができる。
【0045】
本方法において、被覆剤組成物を葉茎菜類に塗布した後、切り口以外は、塗布された被覆剤組成物を除去することが好ましい。除去方法は特に限定されないが、エアードライヤーを用いた風圧による除去等が挙げられる。
余分な被覆剤組成物を除去することで、過剰量塗布された部分の乾燥不良を防ぐことができる。
なお、塗布方法に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著1979年発行に記載例がある。
【0046】
<乾燥>
被覆剤組成物を、葉茎菜類の切り口に塗布した後、水系溶媒を除去する等の目的で被膜の乾燥が行われてもよい。乾燥方法としては、例えば、静置乾燥、風乾又は加熱乾燥が挙げられるが、葉茎菜類の鮮度を保持する観点から、室温(20~25℃)で静置して乾燥する方法、又は室温で風乾する方法が好ましい。
【0047】
[界面活性剤の無溶剤塗布]
界面活性剤を無溶剤で葉茎菜類の切り口に塗布する場合は、流動性を示す温度(例えば、界面活性剤の融点~融点+30℃)まで界面活性剤を加熱した後、カーテンコート又はスプレーコート等で葉茎菜類の切り口に塗布する方法が好ましい。無溶剤で塗布する場合には、界面活性剤のみからなるものを葉茎菜類の切り口に塗布してもよいが、界面活性剤には、溶剤以外の他の成分(不揮発成分など)を適宜混合したものを塗布してもよい。
【実施例0048】
次に、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0049】
[評価方法]
<廃棄レベル外葉枚数>
2つのダンボール箱にそれぞれ10個のキャベツを入れ、1℃で1ヶ月間貯蔵した。5人のテスターにより、廃棄レベルの外葉について、判定を行った。判定基準は以下である。
〇:廃棄レベルの外葉枚数が1枚程度
△:廃棄レベルの外葉枚数が2~3枚
×:廃棄レベルの外葉枚数が4枚以上
【0050】
<重量維持率>
2つのダンボール箱にそれぞれ20個のキャベツを入れ、1℃で1ヶ月間貯蔵し、以下の式に示す重量維持率(%)を求めた。20個のキャベツについて、重量維持率の平均値を算出した。
重量維持率(%)=(1℃で1ヶ月間貯蔵した後の重量/貯蔵前の重量)×100
【0051】
<外観判定>
2つのダンボール箱にそれぞれ10個のキャベツを入れ、1℃で1ヶ月間貯蔵した。5人のテスターにより、外観について、判定を行った。判定基準は以下である。
〇:全体にずっしりした感じがあり、表面は光沢があってみずみずしい感じがある。
×:全体にずっしり感がなく、みずみずしさに不足している。
【0052】
<廃棄レベル外葉枚数>
20玉についての判定基準は以下である。
〇:(廃棄レベルの外葉枚数が0~1枚のキャベツの個数/キャベツの全個数)×100
△:(廃棄レベルの外葉枚数が2~3枚のキャベツの個数/キャベツの全個数)×100
×:(廃棄レベルの外葉枚数が4枚以上のキャベツの個数/キャベツの全個数)×100
【0053】
使用した材料は以下の通りである。
S-1670:ショ糖ステアリン酸エステル、三菱ケミカル社製「リョートー(登録商標)シュガーエステル S-1670」、HLB:16、モノ~トリエステル含量:97質量%以上、テトラエステル~オクタエステル含量:3質量%未満
S-570:ショ糖ステアリン酸エステル、三菱ケミカル社製「リョートー(登録商標)シュガーエステル S-570」、HLB:5、モノ~トリエステル含量:86質量%以上
【0054】
実施例1
エタノール及び水からなる水系溶剤にS-1670を73℃で30分間分散させた後に25℃まで冷却した液と、エタノール及び水からなる水系溶剤にS-570を73℃で30分間分散させた後に25℃まで冷却した液とを、重量比で9:1になるように25℃で5時間混合し、被覆剤組成物を作製した。被覆剤組成物の組成は重量比で以下の通りである。
S-1670/S-570/エタノール/水=4.5/0.5/5/90
葉茎菜類としてキャベツを用い、該キャベツの収穫時のもぎ取り部分、すなわち茎(切り口)にのみ上記被覆剤組成物を1回塗布して、1℃で1ヶ月貯蔵し、上記方法により重量維持率及び外観維持率を評価した。結果を表1に示す。
【0055】
比較例1
実施例1において、被覆剤組成物をキャベツの切り口及びその他の部分に塗布しなかったこと以外は実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例1の結果から、本発明に係る被覆剤組成物を切り口に塗布したキャベツは、比較例1との比較において、廃棄レベル外葉枚数、外観判定ともに良好な結果を示すことがわかる。
一方、本発明に係る被覆剤組成物を塗布しなかった比較例1では、1℃での1ヶ月の貯蔵により、外葉の廃棄数が多くなることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、収穫時にもぎる野菜又はカットして提供される野菜等の葉茎菜類等の青果物に対して、長期間にわたって鮮度が保持できる。また、本発明に係る被覆剤組成物は流通又は保管時における包装フィルムを必要としないことなどから、産業上利用価値の高い技術である。