(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141188
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物、膜シール材及び膜モジュール
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20241003BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20241003BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20241003BHJP
C08G 18/36 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C09K3/10 D
C08G18/10
C08G18/76 057
C08G18/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052694
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】神谷 彩未
【テーマコード(参考)】
4H017
4J034
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AA35
4H017AB05
4H017AD06
4H017AE05
4J034CA03
4J034CA04
4J034CA05
4J034CC03
4J034DA01
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4J034DG03
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4J034HA01
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4J034HB05
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB09
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC34
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034QB11
4J034QC10
4J034RA08
(57)【要約】
【課題】低分子反応物及び溶媒の溶出が抑制された硬化物が形成可能であるとともに、硬化物の成形性に優れる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を提供すること。
【解決手段】ポリイソシアネートプレポリマー(A)と、ポリオール成分(B)と、を含み、前記ポリオール成分(B)が、水酸基の一部が脱水反応によって除去された重合ヒマシ油(b1)を含む、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートプレポリマー(A)と、
ポリオール成分(B)と、を含み、
前記ポリオール成分(B)が、水酸基の一部が脱水反応によって除去された重合ヒマシ油(b1)を含む、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項2】
前記水酸基の一部が脱水反応によって除去された重合ヒマシ油(b1)の数平均分子量が1500以上である、請求項1に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項3】
前記水酸基の一部が脱水反応によって除去された重合ヒマシ油(b1)の含有量が、前記膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の全質量を基準として、70.0質量%以下である、請求項1又は2に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートプレポリマー(A)が、
芳香族ジイソシアネート及びその変性体からなる群より選択される少なくとも1種(a1)と、
活性水素含有化合物(a2)と、の反応生成物を含有する、請求項1又は2に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項5】
前記芳香族ジイソシアネートがジフェニルメタンジイソシアネートである、請求項4に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項6】
前記水酸基の一部が脱水反応によって除去された重合ヒマシ油(b1)の水酸基価が145mgKOH/g以下である、請求項1又は2に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項7】
前記ポリオール成分(B)が、前記水酸基の一部が脱水反応によって除去された重合ヒマシ油(b1)以外のヒマシ油系ポリオール(b2)を更に含む、請求項1又は2に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項8】
前記ポリオール成分(B)が、水酸基含有アミン化合物(b3)を更に含み、
前記水酸基含有アミン化合物(b3)の含有量が、前記ポリオール成分(B)の総量100質量部に対して、30質量部以下である、請求項1又は2に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む、膜シール材。
【請求項10】
本体部、
膜、及び
前記本体部と前記膜との間隙を封止する請求項9に記載の膜シール材を備える、膜モジュール。
【請求項11】
前記膜が、複数本の中空糸膜であり、
前記膜シール材が、
前記本体部と、前記複数本の中空糸膜の少なくとも一部と、の間隙、及び、
前記複数本の中空糸膜相互の間隙の少なくとも一部を封止する、請求項10に記載の膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物、膜シール材及び膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
中空糸膜等の膜を固定及び封止するために、ポリイソシアネートとポリオールとを用いた膜シール材が広く用いられている。
【0003】
グリセリンを含有する膜のシール材として、ポリイソシアネートとポリオールとから形成される硬化物を使用する場合、膜シール材に存在するポリイソシアネートモノマーと、グリセリンとが反応し、その反応物のうちの低分子反応物が膜に接する液中に溶出することがある。
【0004】
低分子反応物の溶出を抑制する等の観点から、これまでにも種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、部分脱水ヒマシ油及び/又は部分アシル化ヒマシ油と有機ポリイソシアネートとからのプレポリマーからなるポリイソシアネート成分(A)と、ポリオール成分(B)からなる、膜モジュールのシール材用ポリウレタン樹脂形成性用組成物が開示されている。特許文献2には、ポリイソシアネートプレポリマー(A)と、ポリオール(B)と、を含有し、ポリオール(B)が、数平均分子量が1500以上のヒマシ油重合物を所定量含む、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-120043号公報
【特許文献2】特開2021-20135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
低分子反応物の溶出を抑制できる膜シール材を得るために、ポリオール含有成分として、部分脱水ヒマシ油を用いると膜シール材からの溶媒溶出が増加する場合があり、ポリオール含有成分として重合ヒマシ油を用いると、硬化物の成形性が低下する場合があった。
【0007】
本開示の一態様は、低分子反応物及び溶媒の溶出が抑制された硬化物が形成可能であるとともに、硬化物の成形性に優れる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を提供することに向けられている。本発明の一側面は、上記ポリウレタン樹脂形成性組成物を用いた膜シール材及び膜モジュールを提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の各態様によれば、以下に示す[1]~[11]の実施形態が提供される。
[1]
ポリイソシアネートプレポリマー(A)と、ポリオール成分(B)と、を含み、前記ポリオール成分(B)が、水酸基の一部が脱水反応によって除去された重合ヒマシ油(b1)を含む、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
[2]
前記水酸基の一部が脱水反応によって除去された重合ヒマシ油(b1)の数平均分子量が1500以上である、[1]に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
[3]
前記水酸基の一部が脱水反応によって除去された重合ヒマシ油(b1)の含有量が、前記膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の全質量を基準として、70.0質量%以下である、[1]又は[2]に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
[4]
前記ポリイソシアネートプレポリマー(A)が、芳香族ジイソシアネート及びその変性体からなる群より選択される少なくとも1種(a1)と、活性水素含有化合物(a2)と、の反応生成物を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
[5]
前記芳香族ジイソシアネートがジフェニルメタンジイソシアネートである、[4]に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
[6]
前記水酸基の一部が脱水反応によって除去された重合ヒマシ油(b1)の水酸基価が145mgKOH/g以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
[7]
前記ポリオール成分(B)が、前記水酸基の一部が脱水反応によって除去された重合ヒマシ油(b1)以外のヒマシ油系ポリオール(b2)を更に含む、[1]~[6]のいずれかに記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
[8]
前記ポリオール成分(B)が、水酸基含有アミン化合物(b3)を更に含み、前記水酸基含有アミン化合物(b3)の含有量が、前記ポリオール成分(B)の総量100質量部に対して、30質量部以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
[9]
[1]~[8]のいずれかに記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む、膜シール材。
[10]
本体部、膜、及び前記本体部と前記膜との間隙を封止する[9]に記載の膜シール材を備える、膜モジュール。
[11]
前記膜が、複数本の中空糸膜であり、前記膜シール材が、前記本体部と、前記複数本の中空糸膜の少なくとも一部と、の間隙、及び、前記複数本の中空糸膜相互の間隙の少なくとも一部を封止する、[10]に記載の膜モジュール。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、低分子反応物及び溶媒の溶出が抑制された硬化物が形成可能であるとともに、硬化物の成形性に優れる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を提供することができる。本発明の一側面によれば、上記ポリウレタン樹脂形成性組成物を用いた膜シール材及び膜モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態にかかる膜モジュールの構成の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のいくつかの実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
【0012】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。特に断らない限り、「~」の前後に記載される数値の単位は同じである。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0013】
<膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物>
本開示の一実施形態に係る膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)と、ポリオール成分(B)と、を含む。ポリオール成分(B)は、水酸基の一部が脱水反応によって除去された重合ヒマシ油(b1)を含む。
【0014】
ポリウレタン樹脂形成性組成物は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)と、ポリオール成分(B)とが1液中に混在する1液型の組成物であってよく、ポリイソシアネートプレポリマー(A)を含む第1液と、ポリオール成分(B)を含む第2液と、を備える2液型の組成物であってもよい。
【0015】
<ポリイソシアネートプレポリマー(A)>
ポリイソシアネートプレポリマー(A)は、2個以上のイソシアネート基を含むプレポリマーである。
【0016】
ポリイソシアネートプレポリマー(A)中のイソシアネート基の含有量は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)の全質量を基準として、5.0質量%以上、7.0質量%以上、8.0質量%以上、9.0質量%以上、10.0質量%以上、13.0質量%以上、13.5質量%以上、14.0質量%以上、15.0質量%以上、16.0質量%以上、17.0質量%以上又は18.0質量%以上であってよい。ポリイソシアネートプレポリマー(A)中のイソシアネート基の含有量は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)の全質量を基準として、35.0質量%以下、30.0質量%以下、28.0質量%以下、26.0質量%以下、24.0質量%以下、22.0質量%以下、21.0質量%以下、20.5質量%以下、又は20.0質量%以下であってよい。ポリイソシアネートプレポリマー(A)中のイソシアネート基の含有量は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)の全質量を基準として、13.0質量%以上21.0質量%以下が好ましく、13.5質量%以上20.5質量%以下がより好ましく、14.0質量%以上20.0質量%以下であることが特に好ましい。ポリイソシアネートプレポリマー(A)中のイソシアネート基の含有量が上述した範囲内であると、ポリウレタン樹脂の成形加工性及び接着強度に更に優れる。
【0017】
ポリイソシアネートプレポリマー(A)中のイソシアネート基の含有量は、JIS K1603-1:2007に準じて測定される。
【0018】
ポリイソシアネートプレポリマー(A)の25℃における粘度は、例えば、1000mPa・s以上、1200mPa・s以上、1400mPa・s以上又は1600mPa・s以上であってよく、2600mPa・s以下、2400mPa・s以下、2200mPa・s以下、2000mPa・s以下、又は1800mPa・s以下であってよい。ポリイソシアネートプレポリマー(A)の25℃における粘度は、回転粘度計(B型、3号ローター)によって測定される粘度である。
【0019】
ポリイソシアネートプレポリマー(A)の架橋基密度は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)の全質量を基準として、0.30mmol/g以上、0.35mmol/g以上、0.40mmol/g以上、又は0.45mmol/g以上であってよく、0.60mmol/g以下、0.55mmol/g以下、又は0.50mmol/g以下であってよい。本明細書における架橋基密度は、架橋を形成し得る基と、架橋をすでに形成している基と、の合計の含有密度を意味する。架橋基密度は後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0020】
ポリイソシアネートプレポリマー(A)の含有量は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)の合計質量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、又は30質量%以上であってよく、60質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下であってよい。
【0021】
ポリイソシアネートプレポリマー(A)は、ポリイソシアネート及びその変性体からなる群より選択される少なくとも1種(a1)と、活性水素含有化合物(a2)と、の反応生成物を含有していてよい。
【0022】
<<ポリイソシアネート及びその変性体(a1)>>
ポリイソシアネートは、2個以上のイソシアネート基を含む化合物である。ポリイソシアネートのイソシアネート基の数は、1分子あたり、2個以上であり、10個以下、8個以下、6個以下、4個以下、又は3個以下であってよく、2個であってよい。
【0023】
ポリイソシアネートは、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環族ポリイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよい。
【0024】
芳香族ポリイソシアネートは、分子内に、芳香環と、当該芳香環に直接結合したイソシアネート基2個以上と、を含む化合物である。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート/2,6-トリレンジイソシアネート混合物、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエ-テルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、分子内に、脂肪族炭化水素基と、当該脂肪族炭化水素基に直接結合したイソシアネート基2個以上と、芳香環とを含む化合物である。芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、及びそれらの混合物;1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、及びそれらの混合物;ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン等が挙げられる。
【0026】
脂肪族ポリイソシアネートは、分子内に、脂肪族炭化水素基と、当該脂肪族炭化水素基に直接結合したイソシアネート基2個以上と、を含み、かつ、芳香環を含まない化合物である。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2’-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアナト-4-(イソシアナトメチル)オクタン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-(イソシアナトメチル)オクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-α,α’-ジイソシアネート、リジンジイソシアナトメチルエステル、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート、2-イソシアナトプロピル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等が挙げられる。
【0027】
脂環族ポリイソシアネートは、分子内に、脂環式炭化水素基と、当該脂環式炭化水素基に直接結合したイソシアネート基2個以上と、を含む化合物である。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナト-n-ブチリデン)ペンタエリスリトール、水添ダイマー酸ジイソシアネート、2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-5-(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)3-(3-イソシアナトプロピル)-6-(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-2-(3-イソシアナトプロピル)-5-(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-2-(3-イソシアナトプロピル)-6-(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-3-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-3-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-2-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-2-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシレンジイソシアネート、水素化テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
ポリイソシアネートの変性体としては、例えば、ウレタン変性体、カルボジイミド変性体、ポリメリック体、ウレア変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体等が挙げられる。
【0029】
ポリイソシアネート及びその変性体からなる群より選択される少なくとも1種(a1)は、ポリイソシアネート及びその変性体の両方を含んでいてよい。
【0030】
ポリイソシアネート及びその変性体からなる群より選択される少なくとも1種(a1)は、膜シール材用途に好適であることから、芳香族ポリイソシアネート及びその変性体からなる群より選択される少なくとも1種であってよく、芳香族ポリイソシアネート及びその変性体を含んでいてよい。
【0031】
ポリイソシアネート及びその変性体からなる群より選択される少なくとも1種(a1)は、膜シール材用途に好適であることから、芳香族ジイソシアネート及びその変性体からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよく、ジフェニルメタンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートの変性体からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよく、ジフェニルメタンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートの変性体を含んでいてよい。
【0032】
ジフェニルメタンジイソシアネートは、一般に入手できるいずれのジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」ともいう。)モノマーであってもよい。MDIモノマーは、2,2’-MDI、2,4’-MDI及び4,4’-MDIからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよい。MDIモノマーにおいて、MDIモノマーの全質量を基準として、2,2’-MDIの含有量は0質量%以上5質量%以下、2,4’-MDIの含有量は0質量%以上95質量%以下、4,4’-MDIの含有量は5質量%以上100質量%以下であってよい。MDIは、4,4’-MDIを主成分として定義し、2,2’-MDI及び2,4’-MDIをアイソマー成分として定義する。
【0033】
ポリイソシアネート及びその変性体からなる群より選択される少なくとも1種(a1)の含有量は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)の総量100質量部に対して、50質量部以上、60質量部以上、又は70質量部以上であってよく、85質量部以下、又は80質量部以下であってよい。
【0034】
ポリイソシアネートプレポリマー(A)中のポリイソシアネートモノマーの含有量は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)の全質量を基準として、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、又は40質量%以上であってよく、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、又は45質量%以下であってよい。ポリイソシアネートプレポリマー(A)中のポリイソシアネートモノマーの含有量は、GPC(Gel Permeation Chromatography;ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定される。測定条件の詳細は、実施例に示されるとおりであってよい。
【0035】
ポリウレタン樹脂形成性組成物中のポリイソシアネートモノマーの含有量は、低分子反応物の溶出抑制効果が更に向上することから、ポリウレタン樹脂形成性組成物の全質量を基準として、30.0質量%以下、25.0質量%以下、20.0質量%以下、又は18.0質量%以下であることが好ましい。ポリウレタン樹脂形成性組成物中のポリイソシアネートモノマーの含有量は、ポリウレタン樹脂形成性組成物の全質量を基準として、5.0質量%以上、7.0質量%以上、9.0質量%以上、11.0質量%以上、又は13.0質量%以上であってよい。ポリイソシアネートモノマーの含有量は、低分子反応物の溶出抑制効果が更に向上することから、ポリウレタン樹脂形成性組成物の全質量を基準として、5.0~30.0質量%、7.0~25.0質量%、9.0~20.0質量%以上、又は11.0~18.0質量%であってよい。ポリウレタン樹脂形成性組成物中のポリイソシアネートモノマーの含有量は、GPCにより測定される。測定条件の詳細は、実施例に示されるとおりであってよい。
【0036】
<<活性水素含有化合物(a2)>>
活性水素含有化合物(a2)は、活性水素基を2個以上有する化合物であってよい。活性水素基としては、例えば、水酸基(ヒドロキシ基)、アミノ基、カルボキシ基、チオール基が挙げられる。
【0037】
活性水素含有化合物(a2)中の活性水素基の数は、1分子あたり、2個以上であってよく、10個以下、8個以下、6個以下、4個以下、又は3個以下であってよい。
【0038】
活性水素含有化合物(a2)は、例えば、ポリオールであってよい。ポリオールは2個以上の水酸基を有する化合物である。ポリオールとしては、例えば、ヒマシ油系ポリオール、低分子ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等が挙げられる。
【0039】
ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油、部分脱水ヒマシ油、重合ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸のジグリセライド及びモノグリセライド、並びに、ヒマシ油又はヒマシ油脂肪酸とその他のポリオールとの反応物等が挙げられる。ヒマシ油は、例えば、精製ヒマシ油であってよい。部分脱水ヒマシ油は、水酸基の一部が脱水反応(分子内脱水反応)によって除去されたヒマシ油である。重合ヒマシ油は、ヒマシ油を単独で重合した重合物である。
【0040】
ヒマシ油系ポリオールは、線状又は分岐状の構造を有していてよい。ヒマシ油の主成分は、リシノール酸のトリグリセライドである。ヒマシ油には水素添加ヒマシ油が含まれる。ヒマシ油脂肪酸の主成分はリシノール酸であり、ヒマシ油脂肪酸には、水素添加ヒマシ油脂肪酸が含まれる。その他のポリオールは、例えば、低分子ポリオール及びポリエーテルポリオールからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。
【0041】
ヒマシ油又はヒマシ油脂肪酸とその他のポリオールとの反応物としては、ヒマシ油脂肪酸とトリメチロールアルカンとのモノ、ジ、及びトリエステル;ヒマシ油脂肪酸とポリプロピレングリコールとのモノ、ジ、及びトリエステル;等が挙げられる。
【0042】
トリメチロールアルカンとしては、例えばトリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールペンタン、トリメチロールヘキサン、トリメチロールヘプタン、トリメチロールオクタン、トリメチロールノナン及びトリメチロールデカン等を挙げることができる。
【0043】
ヒマシ油系ポリオールの数平均分子量は、400以上、500以上、600以上、700以上、800以上、又は900以上であってよく、3000以下、2500以下、2000以下、1500以下、又は1000以下であってよい。ヒマシ油系ポリオールの数平均分子量は400以上3000以下であることが好ましく、500以上2500以下が更に好ましい。ヒマシ油系ポリオールの数平均分子量が400以上3000以下であると、膜シール材に要求される物性、特に機械的特性において更に優れた硬化樹脂を形成することができる。本明細書における数平均分子量は後述する実施例に記載の方法によって測定される数平均分子量である。
【0044】
ヒマシ油系ポリオールの水酸基価は、20mgKOH/g以上、40mgKOH/g以上、60mgKOH/g以上、80mgKOH/g以上、100mgKOH/g以上、120mgKOH/g以上、140mgKOH/g以上、又は150mgKOH/g以上であってよく、300mgKOH/g以下、250mgKOH/g以下、200mgKOH/g以下、又は180mgKOH/g以下であってよい。ヒマシ油系ポリオールの水酸基価は20mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、40mgKOH/g以上250mgKOH/g以下が更に好ましい。水酸基価が20mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であると、膜シール材に要求される物性、特に機械的特性において更に優れた硬化樹脂を形成することができる。水酸基価が20mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であると、さらに、膜シール材の生産性、ひいては、中空糸膜モジュールの生産性の向上も図ることができる。
【0045】
本明細書において、「水酸基価」とは、試料1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのミリグラム(mg)数を意味し、JIS K1557-1に準拠して測定される。
【0046】
低分子ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-、1,3-又は1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA等の2価のポリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース等の3~8価のポリオール等が挙げられる。低分子ポリオールの分子量又は数平均分子量は、50以上200以下であることが好ましい。
【0047】
ポリエーテル系ポリオールとしては、上記低分子ポリオールのアルキレンオキサイド(炭素数2~8個のアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物、及びアルキレンオキサイドの開環重合物等が挙げられる。具体的にはポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、又はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合物等が挙げられる。
【0048】
ポリエーテル系ポリオールの数平均分子量は、膜シール材製造時において成形加工性に更に優れるとの観点から200以上7000以下が好ましく、500以上5000以下であることが更に好ましい。
【0049】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、ポリカルボン酸とポリオールとの縮合重合により得られるポリエステル系ポリオールが挙げられる。ポリエステルポリオールに用いるポリカルボン酸としては、例えばアジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、2量化リノール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の脂肪族飽和、不飽和ポリカルボン酸、及び芳香族ポリカルボン酸等が挙げられる。ポリエステル系ポリオールに用いるポリオールとしては、例えば、上記した低分子ポリオール、ポリエーテル系ポリオール等が挙げられる。
【0050】
ポリエステル系ポリオールの数平均分子量は、200以上5000以下が好ましく、500以上3000以下が更に好ましい。ポリエステル系ポリオールの数平均分子量が200以上5000以下であると、膜シール材形成時の成形加工性に特に優れる。
【0051】
ポリラクトン系ポリオールとしては、ラクトンの付加重合反応物であってよい。ラクトンとしては、例えば、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン、ε-メチル-ε-カプロラクトン、及びβ-メチル-δ-バレロラクトンが挙げられる。付加重合反応は、通常、重合開始剤及び触媒存在下で行われる。重合開始剤としては、例えばグリコール類及びトリオール類が挙げられる。触媒としては、例えば、有機金属化合物、金属キレート化合物、脂肪酸金属アシル化合物等が挙げられる。
【0052】
ポリラクトン系ポリオールの数平均分子量は、200以上5000以下が好ましく、500以上3000以下が更に好ましい。ポリラクトン系ポリオールの数平均分子量が200以上5000以下であると、膜シール材形成時の成形加工性に特に優れる。
【0053】
ポリオレフィン系ポリオールとしては、ポリブタジエン、又はブタジエンとスチレンもしくはアクリロニトリルとの共重合体の末端に水酸基を導入したポリブタジエン系ポリオールが挙げられる。その他、末端にカルボキシル基及び水酸基を有するポリエステルにアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を付加反応させて得られるポリエーテルエステルポリオールも挙げられる。
【0054】
活性水素含有化合物(a2)は、ポリオール成分(B)との相溶性の観点から、ヒマシ油系ポリオールを含むことが好ましく、低分子反応物の溶出抑制効果が更に向上することから、部分脱水ヒマシ油を含むことが更に好ましい。
【0055】
活性水素含有化合物(a2)の含有量は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)の総量100質量部に対して、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、又は25質量部以上であってよく、35質量部以下、30質量部以下、又は27質量部以下であってよい。
【0056】
<<ポリイソシアネートプレポリマー(A)の製造方法>>
ポリイソシアネートプレポリマー(A)は、ポリイソシアネート及びその変性体からなる群より選択される少なくとも1種(a1)と、活性水素含有化合物(a2)とを反応させる工程を含む方法によって得ることができる。反応させる際の条件は、通常のポリイソシアネートプレポリマーを形成する反応において用いられる条件であってよい。ポリイソシアネートプレポリマー(A)は、例えば、ポリイソシアネート及びその変性体からなる群より選択される少なくとも1種(a1)と、活性水素含有化合物(a2)とを含む反応混合物を加熱することによって得ることができる。加熱温度は、例えば、50~90℃又は60~80℃であってよく、加熱時間は1~8時間、又は3~5時間であってよい。反応は撹拌しながら進行させてよい。
【0057】
<ポリオール成分(B)>
ポリオール成分(B)は、水酸基の一部が脱水反応によって除去された重合ヒマシ油(b1)(以下「(b1)成分」)を含む。ポリオール成分(B)は、(b1)成分以外のヒマシ油系ポリオール(b2)(以下「(b2)成分」)及び水酸基含有アミン化合物(b3)(以下「(b3)成分」)並びに、(b1)成分、(b2)成分、及び(b3)成分のいずれに該当しない活性水素含有化合物(b4)(以下「(b4)成分」)からなる群より選択される少なくとも1種を更に含んでいてもよい。
【0058】
ポリオール成分(B)の水酸基価は、50mgKOH/g以上、75mgKOH/g以上、100mgKOH/g以上、又は110mgKOH/g以上であってよく、1000mgKOH/g以下、750mgKOH/g以下、500mgKOH/g以下、250mgKOH/g以下、又は200mgKOH/g以下であってよい。ポリオール成分(B)の水酸基価は、50mgKOH/g以上1000mgKOH/g以下が好ましく、ポリオール成分(B)の取り扱いが容易であるとの観点から、75mgKOH/g以上750mgKOH/g以下がより好ましく、ポリウレタン樹脂の優れた成形加工性及び接着強度の観点から、100mgKOH/g以上500mgKOH/g以下であることが更に好ましい。
【0059】
ポリオール成分(B)の架橋基密度は、ポリオール成分(B)の全質量を基準として、0.80mmol/g以上、0.90mmol/g以上、又は1.00mmol/g以上であってよく、1.70mmol/g以下、1.60mmol/g以下、1.50mmol/g以下、又は1.40mmol/g以下であってよい。
【0060】
ポリオール成分(B)中の活性水素基の総モル数に対する、ポリイソシアネートプレポリマー(A)中のイソシアネート基の総モル数の比(イソシアネート基/活性水素基)は、0.95以上、又は1.00以上であってよく、1.10以下、又は1.05以下であってよい。
【0061】
ポリオール成分(B)は、(b1)成分を含み、かつ、(b2)成分及び(b3)成分からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。ポリオール成分(B)は、低分子反応物の溶出抑制効果がより一層顕著に奏されることから、(b1)成分のみを含んでいてよい。ポリオール成分(B)は、充填性及び/又は硬化性等が更に向上することから、(b1)成分及び(b2)成分のみ、又は、(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分のみを含んでいてよい。
【0062】
<<水酸基の一部が脱水反応によって除去された重合ヒマシ油(b1)>>
(b1)成分は、部分脱水ヒマシ油を重合することによって、又は、重合ヒマシ油を部分的に脱水することによって得られる成分であってよい。(b1)成分を含有することで、低分子反応物及び溶媒の溶出が抑制された膜シール材が形成可能になるとともに、成形性に優れるポリウレタン樹脂形成性組成物を得ることができる。
【0063】
(b1)成分の数平均分子量は、1500以上、1600以上、1700以上、1800以上、1900以上、又は2000以上であってよく、3000以下、2800以下、2600以下、2400以下、又は2200以下であってよい。
【0064】
(b1)成分の水酸基価は、145mgKOH/g以下、140mgKOH/g以下、135mgKOH/g以下、130mgKOH/g以下、125mgKOH/g以下、又は120mgKOH/g以下であることが好ましく、溶媒溶出量抑制効果が更に向上することから、100mgKOH/g以上、105mgKOH/g以上、又は110mgKOH/g以上であることが好ましい。
【0065】
(b1)成分の平均官能基数は、2.0超、2.5以上、3.0以上、3.5以上、又は4.0以上であってよく、5.4未満、5.0以下、又は4.5以下であってよい。(b1)成分の平均官能基数は、(b1)成分の1分子中の水酸基の数の平均を意味し、(b1)成分の数平均分子量及び水酸基価から算出される。
【0066】
(b1)成分の架橋基密度は、(b1)成分の全質量を基準として、0.80mmol/g以上、0.90mmol/g以上、又は1.00mmol/g以上であってよく、1.70mmol/g以下、1.50mmol/g以下、1.30mmol/g以下、又は1.10mmol/g以下であってよい。(b1)成分の架橋基密度は後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0067】
(b1)成分の25℃における粘度は、4500mPa・s以下、4000mPa・s以下、3500mPa・s以下、3000mPa・s以下、2500mPa・s以下、2000mPa・s以下、又は1500mPa・s以下であってよく、800mPa・s以上、1000mPa・s以上、1200mPa・s以上、又は1400mPa・s以上であってよい。(b1)成分の25℃における粘度が上述した範囲内にある場合には、成形物を形成する際、型枠への充填性能が更に向上する。(b1)成分の25℃における粘度は、回転粘度計(B型、3号ローター)によって測定される値を意味する。
【0068】
(b1)成分の含有量は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)の合計質量を基準として、80.0質量%以下、75.0質量%以下、又は70.0質量%以下であってよい。(b1)成分の含有量は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)の合計質量を基準として、1.0質量%以上、5.0質量%以上、10.0質量%以上、15.0質量%以上、20.0質量%以上、25.0質量%以上、又は30.0質量%以上であってよく、低分子反応物の溶出抑制効果が更に向上することから、35.0質量%以上、40.0質量%以上、45.0質量%以上、50,0質量%以上、55.0質量%以上、60.0質量%以上、又は65.0質量%以上であってよい。(b1)成分の含有量は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)の合計質量を基準として、1.0質量%以上70.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以上70.0質量%以下がより好ましく、10.0質量%以上70.0質量%以下であることが特に好ましい。(b1)成分の含有量がこれらの範囲であると、低分子反応物の溶出抑制、溶媒溶出の抑制、成形性の向上等に対して更に優れた効果を奏する。
【0069】
(b1)成分は、例えば、部分脱水ヒマシ油を重合して(b1)成分を得る重合工程を含む方法によって得ることができる。部分脱水ヒマシ油は、ヒマシ油の水酸基の一部を脱水反応によって除去することで得ることができる。部分脱水ヒマシ油は市販されているものをそのまま用いてもよい。脱水反応によって部分脱水ヒマシ油を得るために用いられるヒマシ油は、例えば、精製ヒマシ油であってよい。市販されている精製ヒマシ油をそのまま用いてもよい。(b1)成分は、例えば、有機過酸化物等の存在下で、部分脱水ヒマシ油を重合することによって得ることができる。
【0070】
<<(b1)成分以外のヒマシ油系ポリオール(b2)>>
(b2)成分としては、活性水素含有化合物(a2)で挙げたヒマシ油系ポリオールであることが好ましい。
【0071】
(b2)成分は、ヒマシ油、部分脱水ヒマシ油及び重合ヒマシ油からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよく、ヒマシ油及び部分脱水ヒマシ油からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよい。ポリオール成分(B)がヒマシ油及び部分脱水ヒマシ油からなる群より選択される少なくとも1種を更に含む場合、充填性が更に優れたものとなる。ポリオール成分(B)がヒマシ油を更に含む場合、溶媒の溶出抑制効果が更に向上する。
【0072】
(b2)成分の含有量は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)の合計質量を基準として、10質量%以上、20質量%以上、又は30質量%以上であってよく、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下であってよい。
【0073】
<<水酸基含有アミン化合物(b3)>>
(b3)成分は、水酸基(-OH)と、置換又は無置換のアミノ基とを含む化合物である。ポリオール成分(B)が(b3)成分を含む場合、充填性及び硬化性が更に向上する。置換アミノ基は、例えば、一置換アミノ基又は二置換アミノ基である。
【0074】
水酸基含有アミン化合物1分子あたりの水酸基の数は、例えば、1以上、2以上、又は3以上であってよく、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、又は5以下であってよい。水酸基含有アミン化合物1分子あたりの置換アミノ基及び無置換のアミノ基の合計数は、例えば、1以上、又は2以上であってよく、8以下、6以下、4以下、又は3以下であってよい。
【0075】
(b3)成分としては、例えば、直鎖又は分岐のブチルジエタノールアミン、ヘキシルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、セチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン等のアルキルジエタノールアミン;水酸基を有する低分子ポリアミン;低分子アミノアルコール等を挙げることができる。
【0076】
(b3)成分は、例えば、アミン化合物のオキシアルキル化誘導体、又は、アミノアルコール又はその誘導体であってよい。アミン化合物のオキシアルキル化誘導体は、例えば、アルキレンジアミンのアルキレンオキシドの付加物であってよい。アルキレンジアミンのアルキレンオキシドの付加物としては、エチレンジアミンのプロピレンオキシド又はエチレンオキシドの付加物であるN,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシエチル]エチレンジアミン等が挙げられる。アミノアルコール又はその誘導体としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン並びにN-メチル-N,N’-ジエタノールアミン等が挙げられる。
【0077】
(b3)成分は、好ましくは、エチレンジアミン等のアミノ化合物のプロピレンオキサイドもしくはエチレンオキサイド付加物であり、より好ましくは、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミンである。N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミンを使用することにより、成形時の加工性向上、溶出物の低下等により一層の効果を奏する。
【0078】
(b3)成分の含有量は、ポリオール成分(B)の総量100質量部に対して、30質量部以下、25質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、又は10質量部以下であることが好ましい。(b3)成分の含有量は、ポリオール成分(B)の総量100質量部に対して、1質量部以上、3質量部以上、5質量部以上、又は7質量部以上であることが好ましい。(b3)成分の含有量は、ポリオール成分(B)の総量100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。ポリオール成分(B)の総量100質量部に対する(b3)成分の含有量が5質量部以上であると、(b3)成分がより良好にその機能を発揮し、より一層優れた効果を奏する。ポリオール成分(B)の総量100質量部に対する(b3)成分の含有量が30質量部以下であると、反応性が高くなり過ぎることがより抑制され、作業性が更に良好となって充填性が担保され、また、得られる膜シール材の硬度が高くなり過ぎることが更に抑制される。
【0079】
<<その他の活性水素含有化合物(b4)>>
(b4)成分は、ヒマシ油系ポリオール及び水酸基含有アミン化合物のいずれにも該当しない成分である。(b4)成分としては、活性水素含有化合物(a2)として例示したヒマシ油系ポリオール以外の各種ポリオールを用いることができる。(b4)成分としては、例えば、低分子ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等が挙げられる。
【0080】
(b4)成分の含有量は、ポリオール成分(B)の総量100質量部に対して、15質量部以下、10質量部以下、又は5質量部以下であってよく、1質量部以上、又は3質量部以上であってよい。
【0081】
ポリオール成分(B)の含有量は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)の合計質量を基準として、80.0質量%以下、75.0質量%以下、又は70.0質量%以下であってよく、10.0質量%以上、20.0質量%以上、30.0質量%以上、40.0質量%以上、50.0質量%以上、又は60.0質量%以上であってよい。
【0082】
(b1)成分及び(b2)成分の合計含有量(Mb1+Mb2)に対する、(b3)成分の含有量Mb3の質量比(Mb3)/{(Mb1)+(Mb2)}は、0/100以上30/70以下であることが好ましく、硬化性及び充填性の観点から、5/95以上25/75以下であることが更に好ましい。
【0083】
(b4)成分の含有量Mb4に対する、(b2)成分の含有量Mb2の質量比(Mb2/Mb4)は、50/50以上100/0以下であることが好ましく、100/0が特に好ましい。
【0084】
ポリウレタン樹脂形成性組成物は、触媒を更に含んでいてよい。触媒を含む場合、硬化するまでの時間が更に短縮されるとともに、反応温度を下げ、膜シール材の成形収縮をより抑えることができる。
【0085】
ポリウレタン樹脂形成性組成物の架橋基密度は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)の合計質量を基準として、0.70mmol/g以上、又は0.75mmol/g以上であってよく、1.20mmol/g以下、1.10mmol/g以下、又は1.00mmol/g以下であってよい。ポリウレタン樹脂形成性組成物の架橋基密度は、溶媒の溶出抑制効果が更に向上することから、ポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)の合計質量を基準として、0.70mmol/g以上であることが好ましく、成形加工性の観点から、0.75mmol/g以上1.20mmol/g以下であることがより好ましい。
【0086】
ポリウレタン樹脂形成性組成物は、低分子反応物の溶出が抑制された硬化物を形成可能である。低分子反応物の具体例は、グリセリンと、ポリイソシアネートモノマー(例えば、MDIモノマー)との反応生成物のうちの低分子成分である。低分子反応物の溶出性は、後述する実施例に記載の方法によって測定される低分子溶出物値によって評価される。ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物の低分子溶出物値は、例えば、0.060以下であってよい。
【0087】
ポリウレタン樹脂形成性組成物は、溶媒の溶出が抑制された硬化物を形成可能である。溶媒の具体例は、エタノール及びヘキサンである。溶媒の溶出性は、後述する実施例に記載の方法によって測定されるエタノール抽出率又はヘキサン抽出率によって評価される。ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物のエタノール抽出率及びヘキサン抽出率はそれぞれ2.0%未満であってよい。
【0088】
ポリウレタン樹脂形成性組成物は、脱泡性、硬化性及び充填性に優れているため、硬化物の成形性に優れている。
【0089】
ポリウレタン樹脂形成性組成物の脱泡性は、後述する実施例に記載の方法によって測定される破泡時間によって評価される。ポリウレタン樹脂形成性組成物の破泡時間は1分以内であってよい。
【0090】
ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化性は、後述する実施例に記載の方法によって測定されるポットライフによって評価される。ポリウレタン樹脂形成性組成物のポットライフは1700秒以下、又は1600秒以下であってよい。
【0091】
ポリウレタン樹脂形成性組成物の充填性は、後述する実施例に記載の方法によって測定されるポリウレタン樹脂形成性組成物の混合粘度によって評価される。ポリウレタン樹脂形成性組成物の混合粘度は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)を25℃に温度調整した後に混合して、混合開始した時点から、60秒間経過した時点における粘度を意味する。ポリウレタン樹脂形成性組成物の混合粘度は、2000mPa・s以下、1900mPa・s以下、1800mPa・s以下、又は1700mPa・s以下であってよく、400mPa・s以上、600mPa・s以上、800mPa・s以上、1000mPa・s以上、又は1200mPa・s以上であってよい。ポリウレタン樹脂形成性組成物の混合粘度は、400mPa・s以上2000mPa・s以下であることが好ましく、ポリウレタン樹脂の優れた成形加工性の観点から、600mPa・s以上2000mPa・s以下であることがより好ましい。
【0092】
ポリウレタン樹脂形成性組成物は、適度な硬度を有する硬化物を形成可能である。ポリウレタン樹脂形成性組成の硬化物は、適度な硬度を有しているため、膜シール材として用いる際に切断等が実施しやすい。ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物の硬度は、後述する実施例に記載の方法によって測定される。ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物の硬度は、例えば、10~50、又は12~45であってよい。
【0093】
ポリウレタン樹脂形成性組成物は、濁りの発生が抑制され、外観に優れる硬化物を形成することが可能である。
【0094】
ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物は、ポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)を反応(ウレタン化反応)させる工程を含む方法によって得ることができる。ポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)は、目標のNCO含量となるまで反応させることが好ましい。反応温度は、0℃以上100℃以下、20℃以上80℃以下、30℃以上80℃以下、40℃以上80℃以下、20℃以上60℃以下、30℃以上60℃以下、又は40℃以上60℃以下であってよい。反応温度が40℃以上であると、各成分中に含まれ得る化合物(例えば、MDIモノマー)の結晶析出をより良好に抑制できる。反応温度が80℃以下であると副反応物の生成をより抑制できる。
【0095】
<膜シール材>
本開示の一実施形態に係る膜シール材は、上述したポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む。
【0096】
膜シール材は、型内でポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化させる硬化工程を含む方法によって製造することができる。上述したポリウレタン樹脂形成性組成物は、成形性に優れているため、型内への注入及び型内での成形(例えば、遠心成形)が容易である。更に、上述したポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物は、適度な硬度も有していることから、型から硬化物を取り除いた後に切断等の工程を行いやすい。加えて、上述したポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む膜シール材は、低分子反応物及び溶媒の溶出が抑制されていることから、血漿分離装置、人工肺、人工腎臓、人工肝臓、等において利用される医療用の膜シール材(ポッティング剤)として好適に用いることができる。
【0097】
<膜モジュール>
本開示の一実施形態に係る膜モジュールは、本体部と、膜と、上述した膜シール材とを備える。膜は複数本の中空糸膜であってよい。膜シール材は、本体部と、膜との間隙を封止する。膜シール材は、本体部と、複数本の中空糸膜の少なくとも一部と、の間隙、及び複数本の中空糸膜相互の間隙の少なくとも一部を封止することが好ましい。
【0098】
次いで、本開示の一実施形態にかかる膜モジュールについて図面を参照しながら更に詳細に説明する。
図1は本開示の一実施形態にかかる膜モジュールの構成の一例を示す概念図である。
図1に示す膜モジュール(中空糸膜モジュール)100は、ハウジング(本体部)11を備え、その内部に複数の中空糸膜(膜)13が充填されている。例えば、透析器として用いられる中空糸膜モジュールの場合、数千~数万本の中空糸膜が充填されている。
【0099】
ハウジング11は円筒状の形状を有する。ハウジング11内部の両端(
図1中の左右両端)には膜シール材19がそれぞれ設けられている。膜シール材は、中空糸膜13同士の間隙、及び、中空糸膜13とハウジング11の内壁との間の間隙を埋めて封止するとともに、複数本の中空糸膜13を結束する。
【0100】
ハウジング11の側面には第1の流体入口15および第1の流体出口17が設けられている。第1の流体入口15および第1の流体出口17を介してハウジング11内には第1の流体(気体又は液体)が流出入する。第1の流体入口15から流入した第1の流体は、ハウジング11内に充填された複数の中空糸膜13と接触しながらその間隙(中空糸膜外部)を通過し、第1の流体出口17から排出される。中空糸膜13内部には膜シール材19が存在していないため、中空糸膜13内には不図示のキャップ部材に設けられた第2の流入口(一端側)及び第2の流出口(他端側)を介して第2の流体(気体又は液体)が流出入する。そして、中空糸膜13を介して第1の流体と第2の流体とが接触することで、一方の流体中から他方の流体中への(あるいはさらに他方の流体中から一方への流体中への)物質移動が生じる。例えば、中空糸膜型の透析器の場合、透析液と血液とが接触することで、血液中の老廃物及び過剰な水分が透析液に移動する。
【0101】
図1に示す膜モジュール100は、複数の中空糸膜13を備え、それらの両端において膜シール材19が間隙を封止する構成であるが、本実施形態にかかる膜モジュールはかかる構成に何ら限定されるものではない。例えば、膜は、平膜、スパイラル膜等の種々の形状を有する、複数又は単数の膜であってもよい。膜シール材は膜の両端に設けられた構成に限られるものではなく、膜の一部(中空糸状であれば一端)のみに設けられていてもよく、膜の端部すべて、例えば平膜の外縁部すべてに設けられていてもよい。シール材は、膜の端部以外の一部に設けられて封止する構成であってもよい。
図1に示す膜モジュール100のハウジング11は円筒状の形状を有するが、円筒状以外の任意の形状であってもよい。
【0102】
膜モジュール100は、複数の中空糸膜13の集束体の端部における中空糸膜13相互の隙間を、上述した膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物により封止し、当該組成物を硬化させて上述した膜シール材を形成する(当該膜シール材によって中空糸膜相互の間隙が封止される)ことによって製造することができる。
【0103】
本開示の一実施形態にかかる膜モジュールは、低分子反応物及び溶媒の溶出が抑制されているため、医療用、水処理用モジュールとして好適に使用することができる。膜モジュールとして具体的には、血漿分離装置、人工肺、人工腎臓、人工肝臓、家庭用・工業用水処理装置が挙げられる。
【実施例0104】
以下、本発明について実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。なお、以下において「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0105】
以下の成分を実施例及び比較例で使用した。
【0106】
[ポリイソシアネートプレポリマー(A)]
・a1-1;
4,4’-MDI(東ソー株式会社製、製品名 ミリオネートMT、
イソシアネート基含有量=33.6%、
カルボジイミド・ウレトンイミン変性体含有量=0%、アイソマー=約1%、
架橋基密度=0mmol/g)
・a1-2;
4,4’-MDIのカルボジイミド変性体(東ソー株式会社製、
製品名 ミリオネートMTL-C、イソシアネート基含有量=28.6%、
カルボジイミド・ウレトンイミン変性体含有量=30%、アイソマー=約1%、
架橋基密度=0.45mmol/g)
・a2;ヒマシ油(伊藤製油株式会社製、製品名 URIC H-30、
数平均分子量=938、
水酸基価(OHV)=160mgKOH/g、粘度(25℃)=690mPa・s、
架橋基密度=0.74mmol/g、
平均官能基数=2.7)
【0107】
[ポリオール成分(B)]
・b1-1;
ヒマシ油(伊藤製油株式会社製、製品名 URIC H-30)
・b1-2;
部分脱水ヒマシ油(伊藤製油株式会社製、
数平均分子量950、
水酸基価(OHV)=119mgKOH/g、粘度(25℃)=420mPa・s、
架橋基密度=0mmol/g、
平均官能基数=2)
・b1-3;
重合ヒマシ油(伊藤製油株式会社製、製品名 ポリキャスター♯30、
数平均分子量=1991
水酸基価(OHV)=155mgKOH/g、粘度(25℃)=4800mPa・s、
架橋基密度=1.84mmol/g、
平均官能基数=5.4)
・b1-4;
脱水ヒマシ油重合ポリオール(伊藤製油株式会社製、数平均分子量2000、
水酸基価(OHV)=115mgKOH/g、粘度(25℃)=1460mPa・s、
架橋基密度=1.05mmol/g、
平均官能基数=4.1)
・b2-1;
N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン
(ADEKA社製、製品名 EDP-300、水酸基価(OHV)=760mgKOH/g、
粘度(25℃)=50000mPa・s、架橋基密度=2.63mmol/g)
【0108】
<脱水ヒマシ油重合ポリオール(b1-4)の製造>
攪拌機、温度計、加熱装置及び滴下漏斗を組んだ2リットル容の四つ口フラスコに、ヒマシ油(伊藤製油株式会社製、製品名 URIC H-30)600質量部と酸性亜硫酸ソーダ0.9質量部を仕込み、減圧下で加熱した。230℃で1時間反応させ、150℃で白土を加えてろ過精製することで、部分脱水ヒマシ油を得た。得られた部分脱水ヒマシ油の水酸基価は、119mgKOH/gであった。
【0109】
攪拌機、温度計、加熱装置及び滴下漏斗を組んだ2リットル容の四つ口フラスコに、部分脱水ヒマシ油1000質量部を加え、窒素気流下にて、140℃まで昇温した。窒素ガスを吹き込みながらジ-t-ブチルパーオキサイド160質量部を30分かけて滴下し、150℃に昇温してから4時間反応させた。その後、分解物を減圧1時間で回収し、120℃で白土を加えて濾過精製し、水酸基の一部が脱水反応によって除去された重合ヒマシ油(b1)を得た。得られた脱水ヒマシ油重合ポリオール(b1-4)の水酸基価は115mgKOH/gであった。脱水ヒマシ油重合ポリオールは、水酸基の一部が脱水反応によって除去された重合ヒマシ油(b1)に該当する。
【0110】
<数平均分子量の測定>
数平均分子量は、GPC測定により、下記の条件及び方法により求めた。
【0111】
(数平均分子量の測定条件)
(1)測定装置:「HLC-8120(商品名)」(東ソー株式会社製)
(2)カラム:充填剤として、TSKgel G2000HXL、TSKgel G3000HXL(いずれも商品名、東ソー株式会社製)をそれぞれ2本ずつ充填した4本のカラムを直列に接続した。
(3)カラム温度:40℃
(4)検出器:RI(屈折率)計
(5)溶離液:テトラヒドロフラン(THF)(流量:1mL/min.、40℃)
(6)検量線:以下の商品名(何れも三洋化成工業株式会社製)の3官能のポリプロピレンポリオールを用いて、検量線を得た。
・「サンニックスGP-250」(数平均分子量=250)
・「サンニックスGP-400」(数平均分子量=400)
・「サンニックスGP-600」(数平均分子量=600)
・「サンニックスGP-1000」(数平均分子量=1000)
・「サンニックスGP-3000」(数平均分子量=3000)
・「サンニックスGP-4000」(数平均分子量=4000)
・「サンニックスGP-5000」(数平均分子量=5000)
(7)サンプル溶液:サンプル0.05gのTHF10mL溶液
【0112】
<水酸基価の測定>
水酸基価は、JIS K1557-1に準拠して、アセチル化試薬を用いた方法により測定した値である。
【0113】
<架橋基密度の算出>
表1~5に示す架橋基密度は、各原料メーカー開示の官能基数、水酸基価とともに、GPC測定により得られた数平均分子量から次の式を用いて算出した。
【0114】
(式1) 架橋基密度(mmol/g)={1000×(平均官能基数-2)}/数平均分子量
(式2) 架橋基密度(mmol/g)={水酸基価×(平均官能基数-2)/(56.11×平均官能基数)}
【0115】
<ポリイソシアネートプレポリマー(A)の調製>
表1に示す各原材料を配合比に従って仕込み、70℃で4時間にわたり撹拌混合することで反応させ、ポリイソシアネートプレポリマー(A-1)を得た。
【0116】
【0117】
<ポリオール成分(B)の調製>
表2に示す各原材料を配合比に従って仕込み、撹拌並びに均一混合を行い、ポリオール含有成分(B―1)~(B-8)を得た。
【0118】
【0119】
<ウレタン樹脂形成性組成物の調製及び評価>
表3及び表4に示す組成でウレタン樹脂形成性組成物の調製及び成形を行った。表3及び表4に記載の値は、下記の試験結果から算出した。
【0120】
[NCO含有量測定]
表1に示すポリイソシアネートプレポリマー(A-1)において、NCO含有量は、JIS K1603-1:2007に準じて行った。
【0121】
[ポリイソシアネート(MDI)のモノマー含有量測定]
表1に示すポリイソシアネートプレポリマー(A-1)において、ポリイソシアネート(MDI)のモノマー含有量(質量%)は、GPC測定によって、下記の条件および方法により求めた。
【0122】
(測定条件)
(1)測定装置:「HLC-8120(商品名)」(東ソー株式会社製)
(2)カラム温度:40℃
(3)検出器:RI(屈折率)計
(4)カラム:充填剤として、TSKgel G3000HXL、TSKgel G2000HXL、TSKgel G1000HXL(いずれも商品名、東ソー株式会社製)の3種をそれぞれ充填したカラムを直列に接続して測定。
(5)溶離液:テトラヒドロフラン(THF)(流量:1mL/min、40℃)
(6)検量線:以下のグレードのポリスチレン(TSK standard POLYSTYRENE)を用いて、検量線を得た。
F-2(分子量:1.81×104)
F-1(分子量:1.02×104)
A-5000(分子量:5.97×103)
A-2500(分子量:2.63×103)
A-500(分子量:6.82×102、5.78×102、4.74×102、3.70×102、2.66×102)
トルエン(分子量:92)
(7)サンプル:サンプル0.05gのTHF10mL溶液
【0123】
(測定方法)
ポリスチレンを標準物質として、屈折率差により検出して得られたチャートから作成検量線を得た。次に、各サンプルについて、同じ検量線に基づき屈折率差により検出して得られたチャートから、ポリイソシアネートモノマー(MDI)を示すピークトップ分子量(数平均分子量)230付近のピークの質量%を求めた。
【0124】
[成形性の評価]
成形性は、脱泡性、充填性及び硬化性に基づいて評価した。充填性は、混合粘度の測定によって評価し、硬化性はポットライフ試験によって評価した。成形性は、脱泡性、充填性及び硬化性がいずれも良好である場合に、良好であると評価した。
【0125】
(脱泡性)
実施例1~3、比較例1~5において、ポリウレタン樹脂形成性組成物の脱泡性を、以下の方法により求めた。
予め25℃に温度調整したポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)を、イソシアネート基/活性水素基=1.00~1.05(モル比)になる配合で合計100gとなるように計量し、スパチュラで30秒間混合し、50mmHgで真空脱泡を行った。破泡するまでの時間を測定し、破泡時間が1分以内であれば脱泡性良好と判断した。
【0126】
(混合粘度及びポットライフ試験)
実施例1~3、比較例1~5において、ポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)の25℃における混合粘度及びポットライフを、以下の方法により求めた。
予め25℃に温度調整したポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)を、イソシアネート基/活性水素基=1.00~1.05(モル比)になる配合で合計50gとなるように計量及び混合して混合物を得た。次いで、25℃雰囲気下で回転粘度計(B型、4号ローター)を用いて混合物の粘度を測定した。ポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)の混合を開始した時点から60秒経過した時点の粘度を混合粘度とした。ポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)の混合を開始した時点から混合物の粘度が50000mPa・sに到達するまでの時間をポットライフ(秒)とした。25℃における混合粘度が2000mPa・s以下である場合に、充填性良好と判断した。ポットライフが1700秒以内である場合に硬化性良好と判断した。
【0127】
[低分子溶出物値の測定]
(低分子溶出試験用サンプルの作製)
ポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)を表3及び表4に示す組み合わせで、液温45℃の条件で、イソシアネート基/活性水素基=1.00~1.05(モル比)、合計質量が30gとなるように配合して混合液を得た。ついで、得られた混合液を15秒撹拌した。更にグリセリン10gを添加して15秒間撹拌し、ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を得た。グリセリンは、中空糸に含有するグリセリンを想定したものである。得られた硬化物を1次キュア条件として温度50℃、時間10分間、2次キュア条件として温度45度、時間2日間、恒温槽内で静置した。これにより、低分子溶出試験用サンプルを得た。
【0128】
(低分子溶出試験)
実施例1~3及び比較例1~5のポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物の低分子溶出物値は、以下の方法により測定した。
先ず、各実施例及び比較例で得られた低分子溶出試験用サンプルを扇形に裁断したものをそれぞれ20g秤量し、予め40℃に加温した100mlの精製水に浸漬し、40℃で2時間放置し、精製水中に低分子反応物を抽出した。次いで、得られた抽出液をデカンテーションして50mlのメスフラスコに10ml入れ、精製水にて50mlに調整した液を試験液とした。そして、試験液のUV吸光度測定(島津製作所社製、製品名 UV-1500)を行った。240~245nmにおける吸光度の最大値の10分の1の値を低分子溶出物値とした。低分子溶出物値は0.060以下であれば、低分子反応物(溶出物)は少ないと判断できる。
【0129】
[溶媒抽出率の測定]
(溶媒抽出試験用サンプルの作製)
ポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)を表3及び表4に示す組み合わせで、液温25℃の条件で、イソシアネート基/活性水素基=1.00~1.05(モル比)、合計質量が100gとなるように計量し、スパチュラで30秒間混合した。混合液に対して、50mmHgで60秒間真空脱泡を行った。脱泡後混合液を離型紙上に展開し、厚さ1mmのシート状とし、温度45度、時間2日間、恒温槽内で静置した。これにより溶媒抽出試験用サンプルを得た。
【0130】
(溶媒抽出試験)
実施例1~3及び比較例1~5のポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物の溶媒抽出率は、以下の方法により測定した。
先ず、各実施例及び比較例で得られた溶媒抽出試験用サンプルを10mm角にカットした。次に、200mlサンプル瓶にカットしたサンプル10gとエタノール又はヘキサン100gを入れ密栓し、50℃で48時間振盪した。振盪後、さらに濾過し、抽出液を300mlナスフラスコに回収し、蒸発乾固させた。そして、下式によりエタノール抽出率及びヘキサン抽出率を求めた。
エタノール抽出率(%)又はヘキサン抽出率(%)={蒸発乾固後のナスフラスコ質重量(g)-ナスフラスコ空重質量(g)}/サンプル質重量(g)×100
エタノール抽出率及びヘキサン抽出率それぞれが2.0%未満であることが好ましい。
【0131】
[硬度(10秒値)の評価]
予め25℃に温度調整したポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)を、イソシアネート基/活性水素基=1.00~1.05(モル比)になる配合で合計50gとなるように計量した。スパチュラで30秒間混合し、50mmHgで60秒間真空脱泡を行った。脱泡後の混合物30gを、100mlポリカップに移し、45℃で48時間養生した。ポリカップから硬化物を取り出し、25℃の環境下4時間放置して、デュロメータD硬度計にて硬度を測定した。硬度計を押し当て10秒後の読み取り値を硬度(10秒値)とした。
【0132】
[外観評価]
実施例1~3及び比較例1~5のポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物の外観を以下のように判定した。
予め25℃に温度調整したポリイソシアネートプレポリマー(A)及びポリオール成分(B)を、イソシアネート基/活性水素基=1.00~1.05(モル比)になる配合で合計100gとなるように計量した。スパチュラで30秒間混合し、50mmHgで真空脱泡を行った後、ステンレス製金型に流し込んだ。これを45℃で2日間静置キュアした後に脱型し、硬化物を得た。得られた硬化物について、外観を目視で評価し、濁りのないものを「A」、白濁したものを「C」とした。
【0133】
表3及び表4において「架橋基密度(mmol/g)」、「ポリイソシアネートモノマー含有量(%)」及び「脱水ヒマシ油重合ポリオール含有量(%)」は、ポリウレタン樹脂形成性組成物の全質量を基準とする量である。
【0134】