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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141250
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】変位測定器
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/18 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G01B3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052784
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小川 啓太
(72)【発明者】
【氏名】林田 秀二
(72)【発明者】
【氏名】辻本 康裕
【テーマコード(参考)】
2F061
【Fターム(参考)】
2F061AA16
2F061DD11
2F061GG01
2F061HH71
2F061JJ71
2F061JJ76
2F061QQ14
2F061QQ18
2F061QQ25
(57)【要約】
【課題】不適切なアプローチで測定対象に測定子を当接させて得た測定値を排除し、確実に高精度な測定値が得られる変位測定器を提供する。
【解決手段】変位測定器1は、測定対象の表面に測定子2を当接させ、測定子2の移動方向を測定方向とし測定子2の移動変位量を検出するエンコーダEと、少なくとも移動変位量から測定値を演算する演算手段4と、少なくとも測定値を表示する表示手段10と、を備える。演算手段4は、測定値を算出し表示手段10に表示させる測定部5と、測定子2の速度を取得する速度取得部6と、測定子2が停止する直前の所定の期間における速度取得部6が検出した速度の推移に基づき測定子2の測定対象へのアプローチが正常か異常かを分析し判定するアプローチ分析部7と、アプローチ分析部7が測定子2の測定対象へのアプローチが異常と判定した場合、警告を報知する警告部8と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の表面に測定子を当接させ、前記測定子の移動方向を測定方向とし前記測定子の移動変位量を検出するエンコーダと、少なくとも前記移動変位量から測定値を演算する演算手段と、少なくとも前記測定値を表示する表示手段と、を備える変位測定器であって、
前記演算手段は、
前記移動変位量から前記測定値を算出し前記測定値を前記表示手段に表示させる測定部と、
前記測定子の速度を検出する速度取得部と、
前記測定子が停止する直前の所定の期間における前記速度取得部が検出した速度の推移に基づき前記測定子の前記測定対象へのアプローチが正常か異常かを分析し判定するアプローチ分析部と、
前記アプローチ分析部が前記測定子の前記測定対象へのアプローチが異常と判定した場合、警告を報知する警告部と、を備えることを特徴とする変位測定器。
【請求項2】
前記アプローチ分析部は、前記所定の期間の速度について分析し、前記所定の期間における速度の変化が単調ではなく、かつ、前記所定の期間における停止直前の一または複数のタイミングでの速度が前記所定の範囲に収まらない場合は異常と判定することを特徴とする請求項1に記載の変位測定器。
【請求項3】
前記速度取得部は、
前記エンコーダからの前記移動変位量に基く演算により前記測定子が停止するまでの速度を取得することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の変位測定器。
【請求項4】
前記警告部は、
前記表示手段を用い、前記測定部による測定結果を点滅させることで警告を報知することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の変位測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定子の変位量から測定対象について測定する変位測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、測定子を測定対象の表面に当接した状態で停止させ、測定子の位置を算出する変位測定器が知られている。
このような変位測定器の一例として、特許文献1に記載されたマイクロメータは、操作スリーブを回転させることでスピンドル(測定子に相当)を軸方向に変位させ、スピンドルの変位量から測定対象の寸法を測定する。具体的には、マイクロメータは、スピンドルの変位量を検出するエンコーダとデジタル表示の表示部とを備える。表示部は、エンコーダによって検出されたスピンドルの変位量を表示部に表示させ、使用者に変位量を教示する。
【0003】
このようなマイクロメータでは、例えばスピンドルが測定対象に当接した状態で停止しているにも関わらず、さらに操作スリーブを回転させスピンドルを測定対象に押し込む等といった使用者の操作により、得られる測定値にばらつきが生じたり、測定対象にダメージを与えたりすることがある。これらの問題を防ぐため、測定力を一定に管理する方法が採用されている。例えば、スピンドルの外端に操作スリーブを回転可能に設けるとともにスピンドルと操作スリーブとの間に定圧機構(ラチェット機構など)を設ける。この構成により、スピンドルに一定以上の負荷がかかると、定圧機構が作動し操作スリーブが空転するため、マイクロメータは、測定圧を一定に管理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-141402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、通常のマイクロメータは0.5mm/revのリードピッチであるところ、リードピッチが通常の4倍の2mm/revと大きなマイクロメータでは、1回転で大きくスピンドルが進行する。このような測定子が比較的速い速度で進行し易い変位測定器では、使用者が操作に不慣れな場合、高速で測定子を測定対象に向かって進行させてしまい、測定子を測定対象に激突させてしまうことがある。測定子が測定対象に激突するときに生じる衝撃は、ラチェット機構などの定圧機構では防ぎきれず、測定子が測定対象に食い込んだり、測定値にばらつきが生じたりするという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、不適切なアプローチ(近付け方)で測定対象に測定子を当接させて得た測定値を排除し、確実に高精度な測定値が得られる変位測定器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の変位測定器は、測定対象の表面に測定子を当接させ、測定子の移動方向を測定方向とし測定子の移動変位量を検出するエンコーダと、少なくとも移動変位量から測定値を演算する演算手段と、少なくとも測定値を表示する表示手段と、を備える。演算手段は、移動変位量から測定値を算出し測定値を表示手段に表示させる測定部と、測定子の速度を取得する速度取得部と、測定子が停止する直前の所定の期間における速度取得部が取得した速度の推移に基づき測定子の測定対象へのアプローチが正常か異常かを分析し判定するアプローチ分析部と、アプローチ分析部が測定子の測定対象へのアプローチが異常と判定した場合、警告を報知する警告部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、警告部は、アプローチ分析部が測定子の測定対象へのアプローチが異常と判定した場合に警告を報知するため、使用者は、測定子の操作方法が適切ではなかったと認識することができる。また、使用者に適切な操作にて測定をするように促すことができる。したがって、変位測定器は、不適切なアプローチで測定対象に測定子を当接させて得た測定値を排除し、確実に高精度な測定値を得ることができる。また、測定対象への測定子の激突や食い込みを抑制し測定値のばらつきを低減することができる。
【0009】
この際、アプローチ分析部は、所定の期間の速度について分析し、所定の期間における速度の変化が単調ではなく、かつ、所定の期間における停止直前の一または複数のタイミングでの速度が所定の範囲に収まらない場合は異常と判定することが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、アプローチ分析部は、所定の期間の速度について分析し、所定の期間における速度の変化が単調ではなく、かつ、所定の期間における停止直前の一または複数のタイミングでの速度が所定の範囲に収まらない場合は異常と判定するステップを経ない場合と比較して、より正確にアプローチの正常または異常を判定することができる。
【0011】
この際、速度取得部は、エンコーダからの移動変位量に基づいて演算により測定子が停止するまでの速度を取得することが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、速度取得部は、移動変位量に基づく演算により速度を取得するため、速度センサ等を設けることなく速度を取得することができる。したがって、変位測定器は、設けることで生じ得る部品の増加や破損等を抑制し、コスト削減を図ることができる。
【0013】
この際、警告部は、表示手段を用い、測定部による測定結果を点滅させることで警告を報知することが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、警告が報知される場合は測定結果が点滅するため、警告部は、使用者に確実に警告を報知できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る変位測定器を示す概略図である。
図2】変位測定器を示すブロック図である。
図3】速度取得部による速度算出原理を示すグラフである。
図4】変位測定器における正常時のアプローチスピードの推移を示す図である。
図5】変位測定器における図4とは異なる正常時のアプローチスピードの推移を示す図である。
図6】変位測定器における異常時のアプローチスピードの推移を示す図である。
図7】変位測定器における測定対象への測定子のアプローチの正常または異常を判定する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、一実施形態を図1から図6に基づいて説明する。
図1は、一実施形態に係る変位測定器1を示す概略図である。
変位測定器1は、図1に示すように、測定対象の表面(不図示)に当接させた状態で測定子2を停止させ、移動方向を測定方向(X方向)とし測定子2の位置から測定値を算出するマイクロメータである。
なお、以下の説明および各図面において、測定子2の移動方向である測定方向をX方向とし、X方向と直交する変位測定器1の幅方向をY方向とし、X方向およびY方向と直交する変位測定器1の高さ方向をZ方向と記す。
【0017】
変位測定器1は、測定子2と、位置測定手段3と、演算手段4と、を備える。
測定子2は、円柱状のスピンドル21の一端に当接面22が設けられた構造を有する。当接面22は、測定対象の表面と当接させるためのスピンドル21の先端に設けられる面である。
位置測定手段3は、測定方向であるX方向において基準位置に対する測定子2の位置を測定する。位置測定手段3は、シンブル31と、ラチェットつまみ32と、スリーブ33と、エンコーダE(図2参照)と、を備える。シンブル31およびラチェットつまみ32は、回転させることでスピンドル21を測定対象に対して進退させる。スリーブ33は、スピンドル21において当接面22とは反対側に配置される。エンコーダEは、基準位置(例えば当接面22が後述するアンビル13と当接する位置)からの測定子2の移動変位量を検出する。
【0018】
変位測定器1は、スピンドル21を軸としてシンブル31またはラチェットつまみ32を図中矢印方向に回転させることでスピンドル21を測定対象に向かって進退させる。変位測定器1は、シンブル31またはラチェットつまみ32の回転による回転角の変位量から測定対象を測定する。変位測定器1による測定結果である測定値などは、表示手段10に表示される。
【0019】
表示手段10は、少なくとも測定値を表示し、液晶パネルで構成される。表示手段10は、主に7セグメントのデジタル式表示で測定値などを表示する。なお、表示手段10は、液晶パネルに限らず、有機EL(Electro-Luminescence)や電子ペーパーであってもよい。すなわち、表示手段10には、変位測定器1に関する情報や測定値などが表示できればよい。
【0020】
変位測定器1は、スピンドル21を固定するクランプ11と、使用者からの操作を受け付け、変位測定器1を操作するためのボタン式の複数の操作部12a~12cと、アンビル13と、アーム部14をさらに備える。
操作部12aは、ON/OFFボタンである。使用者は、操作部12aを操作することで変位測定器1の電源のON/OFFを操作する。操作部12bは、ZEROボタンである。使用者は、変位測定器1にて測定を開始する際の原点の設定を行う際などに操作部12bを操作する。操作部12cは、HOLDボタンである。使用者は、変位測定器1にて測定した値を保持する際などに操作部12cを操作する。なお、操作部12a~12cは、スライド式でもよく、使用者が操作することができれば、どのような構成であってもよい。また、操作部12a~12cは、使用者が操作することができれば、どのような機能であってもよいし、どのような位置に配置されていてもよい。
【0021】
アンビル13は、測定子2の当接面22に対向して配置されている変位測定器1における基準位置である。アーム部14は、略U字状に形成されている。アーム部14の一端側には、測定子2および位置測定手段3が配置されている。アーム部14の他端側には、アンビル13が配置されている。変位測定器1は、測定子2の当接面22とアンビル13とで測定対象を挟むことで、測定対象における当接面22からアンビル13までの長さを測定する。ここで、測定子2の当接面22とアンビル13とが接した状態を基準位置(ゼロ)とする。そして、測定子2の当接面22とアンビル13とが接した状態から離間する方向を+X方向とし、測定子2の当接面22とアンビル13とが離間した状態から接近する方向を-X方向とする。測定値は、測定子2の当接面22とアンビル13とが+X方向に離間することで増加する。また、測定値は、測定子2の当接面22とアンビル13とが-X方向に接近することで減少する。
【0022】
図2は、変位測定器1を示すブロック図である。図2に示すように変位測定器1は、測定子2と、位置測定手段3と、演算手段4と、表示手段と10を備える。
演算手段4は、測定部5と、速度取得部6と、アプローチ分析部7と、警告部8と、記憶部9と、を備える。
測定部5は、エンコーダEによる移動変位量から測定値を算出し測定値を表示手段10に表示させる。
速度取得部6は、測定子2の移動速度を取得する。具体的には、速度取得部6は、エンコーダEからの移動変位量に基づく演算により測定子2が停止するまでの速度を算出する。なお、本実施形態の速度取得部6は、演算により速度を取得しているが、例えば、速度センサを用いて検出することで速度を取得してもよい。
【0023】
図3は、速度取得部6により速度を算出する原理を示すグラフである。
速度取得部6は、移動変位量に基づく大まかな位置を把握するための指標である計数インデックスの値を使用して速度を求める。計数インデックスは、移動変位量の移動変位量に応じて周期的に変化する数値であり、例えば、0~11の数値を取る。この計数インデックスを得ることで大まかにスピンドル21(測定子2)の位置を把握することができる。速度取得部6は、この計数インデックスの単位時間当たりの変化により速度を算出する。具体的には、図3に示すように、縦軸は位置、横軸は時間とし、計数インデックスに基づき式(1)を用いて速度を算出する。
【数1】
【0024】
速度取得部6は、移動変位量に基づく計数インデックスを所定の時間間隔で(例えば6ミリ秒毎に)取得し、最新のものから所定の数、演算手段4が備える記憶部9に随時古いものに上書きしながら算出した速度を記憶する。
本実施形態では、速度取得部6が取得する速度のうち最新の8つを記憶部9に記憶する。すなわち、記憶部9に記憶された速度のうち最も古いものが新たに取得された速度で上書きされることで、随時、最新の8つの速度が記憶部9に記憶されることになる。
なお、記憶部9は、速度等を記憶できればどのようなものを採用してもよい。例えば、記憶部9は、マイコン等であってもよいし外部接続された記憶装置でもよい。
【0025】
アプローチ分析部7は、図2および後述する図4~6に示すように、所定の閾値と速度取得部6が取得した速度に基づき測定子2の測定対象へのアプローチが正常か異常かを分析し判定する。具体的には、アプローチ分析部7は、測定対象の表面に測定子2が当接して停止する直前の所定の期間の速度を分析する。そして、当該期間における速度の推移について、停止状態(すなわち、速度が0の状態)に向かって速度が単調に変化していた場合は、測定子2が測定対象にぶつかることなく停止したものとみなし、異常とは扱わない。速度の変化が単調ではなく、かつ、所定の閾値以内である場合は、適切な速度の推移により測定子2が測定対象の表面に当接して停止したとみなし、測定対象へのアプローチが正常であったと判定する。速度の変化が単調ではなく、かつ、所定の閾値を超えている場合には、適切でない速度の推移により測定子2が測定対象の表面に当接して停止したとみなし、測定対象へのアプローチが異常(不適切)であったと判定する。
【0026】
警告部8は、図2に示すように、アプローチ分析部7が測定子2の測定対象へのアプローチが異常であったと判定した場合、警告を報知する。具体的には、警告部8は、表示手段10を用い、測定部5による測定結果を点滅させることで警告を報知する。また、警告部8は、変位測定器1の機能を制限する。ここで、機能の制限とは、測定結果を表示手段10に表示させないようにしたり、測定結果を通信にて出力している場合は、出力停止させたりすることである。この機能の制限は、所定の動作をしない限り解除されない。所定の動作とは、測定子2を警告が出るまでの進行方向とは反対の方向に動かす動作とするとよい。測定対象に測定子2が食い込んでいる等の可能性があるため、解除方法として前述の動作を採用することが好ましい。
【0027】
図4は、変位測定器1における正常時のアプローチスピードの推移を示す図であり、図5は、変位測定器1における図4とは異なる正常時のアプローチスピードの推移を示す図である。図6は、変位測定器1における異常時のアプローチスピードの推移を示す図である。図4から図6では、それぞれ、縦軸は速度とし、横軸は時間とする。なお、以下の説明においてアプローチスピードの推移を速度プロファイルと呼ぶことがある。
以下、図4から図6を参照して、速度取得部6が取得した速度を用いてアプローチ分析部7がアプローチスピードの推移に基づきアプローチの異常または正常を分析するプロセスについて説明する。なお、図中において、8つの点(0から7)は速度取得部6が取得した速度を示しており、以下の説明においては、最新のものから順に速度値0~速度値7と表記する。
【0028】
先ず、アプローチ分析部7は、速度取得部6が取得した速度が3回連続で0であった場合、測定子2は停止したものとみなす。図4から図6の例では、図中の速度値0から速度値2において、3回連続で速度が0であるので、速度値2の時刻で停止したと判定する。次に、アプローチ分析部7は、測定子2が停止する直前の所定の期間(図4から図6の例では、速度値3から速度値7まで)を直前とみなし、その間の速度の推移を分析する。
【0029】
図4から図6において、速度取得部6が速度を取得する間隔を6ミリ秒とした場合、30ミリ秒前を直前の所定の期間とし、先ず、この期間における5点(速度値3から速度値7まで)について停止するまでの変化が単調であるか否かを分析する。ここで、停止するまでの速度の変化が単調である場合、測定子2が測定対象の表面とぶつからずに停止したと解釈でき、停止するまでの速度の変化が単調ではない場合、測定子2が測定対象の表面とぶつかる等して振動が生じたと解釈できる。
【0030】
図4に示すように、アプローチ分析部7は、速度値3から速度値7までの速度の変化が単調である場合は、測定対象の表面とぶつからずに停止したと判定する。また、アプローチ分析部7は、速度値3から速度値7までの速度の変化が単調でない場合、停止直前である速度値3と速度値4の速度が、第1閾値と第2閾値の間に収まっている場合は、測定対象へのアプローチは正常であると判定する。具体的には、図5に示すように、速度値3から速度値7までの速度の変化が、振動等を原因として単調ではないものの、特に停止直前である速度値3と速度値4の速度が第1閾値と第2閾値の間に収まっている場合、測定対象へのアプローチは正常であったと判定する。
【0031】
一方、図6に示すように、アプローチ分析部7は、速度値3から速度値7までの速度の変化が単調ではなく、かつ、特に停止直前である速度値3と速度値4の速度が第1閾値と第2閾値の間に収まっていない場合、測定対象へのアプローチは異常であったと判定する。
【0032】
図7は、変位測定器1におけるアプローチの正常または異常の判定のフローチャートである。以下、図7を用いてアプローチの正常または異常の判定のプロセスについて説明する。
先ず、図7に示すように、速度取得部6は、測定子2が停止するまでの速度を取得する速度取得ステップを実行する(ステップST01)。速度取得部6は、所定の時間間隔で速度を取得し、記憶部9に記憶される最新の8つの速度を随時上書きし更新する。次に、アプローチ分析部7は、測定子2が停止したか否かを判定する停止判定ステップを実行する(ステップST02)。アプローチ分析部7は、速度取得部6が取得した速度が3つ連続で速度0であった場合、測定子2が停止したと判定する。アプローチ分析部7が、測定子2が停止していないと判定した場合(ステップST02でNO)、測定部5に変位測定器1による測定結果を表示手段10に表示させる結果表示ステップを実行させ(ステップST04)、速度取得ステップに戻る(ステップST01)。一方、アプローチ分析部7が、測定子2が停止したと判定した場合(ステップST02でYES)、アプローチ分析部7は、測定子2が停止するまでの速度の推移である速度プロファイルに基づき、アプローチが正常であったか否かを判定する(ステップST03)。
【0033】
アプローチ分析部7が、アプローチが正常であったと判定した場合(ステップST03でYES)、測定部5に変位測定器1による測定結果を表示手段10に表示させる結果表示ステップを実行させ(ステップST04)、速度取得ステップ(ステップST01)に戻る。一方、アプローチ分析部7が、アプローチが異常であったと判定した場合(ステップST03でNO)、警告部8を介して表示手段10に警告を報知させ、変位測定器1の機能の制限をする警告ステップを実行する(ステップST05)。使用者は、警告が報知され、その後も測定を続行したい場合、測定子2をそれまでの進行方向とは反対方向に移動させて変位測定器1の機能の制限を解除する解除ステップを実行する(ステップST06)。解除ステップ(ステップST06)が実行されると、測定可能となり、速度取得ステップ(ステップST01)に戻る。
【0034】
このような一実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)不適切なアプローチで測定対象に測定子2を当接させて得た測定値を排除し、確実に高精度な測定値を得ることができる。
(2)警告部8は、アプローチ分析部7が測定子2の測定対象へのアプローチが異常と判定した場合に警告を報知するため、測定対象への測定子2の適切なアプローチのさせかたを使用者に教示することができ、使用者は、測定子2の操作方法が適切ではなかったと認識することができる。また、使用者に適切な操作にて測定をするように促すことができる。したがって、変位測定器1は、測定対象への測定子2の適切なアプローチのさせかたを使用者に教示して測定対象への測定子2の激突や食い込みを抑制するとともに測定値のばらつきを低減し、より高精度な測定をすることができる。
【0035】
(3)アプローチ分析部7は、所定の期間(図4~6における速度値3から速度値7まで)の速度について分析し、所定の期間における速度の変化が単調ではなく、かつ、所定の期間における停止直前の一または複数のタイミング(図4~6における速度値3および速度値4)での速度が所定の範囲(第1閾値と第2閾値の間)に収まらない場合は異常と判定するステップを経ない場合と比較して、より正確にアプローチの正常または異常を判定することができる。
(4)速度取得部6は、移動変位量から演算によって速度を取得することができるので、速度センサ等を別途設ける場合と比較してコストを抑制することができる。
(5)警告が報知される場合は測定結果が点滅するため、警告部8は、使用者に確実に警告を報知できる。
【0036】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、変位測定器1はマイクロメータであったが、変位測定器は、測定対象の表面に測定子を停止させ、測定子の位置から測定値を算出する変位測定器であれば、検出器の形式や検出方式等は特に限定されるものではない。
【0037】
前記実施形態では、アプローチ分析部7は、停止する直前の速度について分析し、直前の速度について、所定の閾値を超えないで単調減少をしている場合は正常と判定し、所定の閾値を超えて単調減少をしている場合は異常と判定し、単調減少ではなく、かつ、所定の閾値以内である場合は正常と判定し、単調減少ではなく、かつ、所定の閾値を超えている場合は異常と判定していた。しかし、アプローチ分析部は、測定子が停止する直前の所定の期間における速度取得部が検出した速度の推移に基づき測定子の測定対象へのアプローチが正常か異常かを分析し判定することができれば、どのような判定方法を採用してもよい。
【0038】
前記実施形態では、速度取得部6は、演算により速度を取得していた。しかし、速度取得部は、測定子の速度を取得することができればどのような取得方法を採用してもよい。例えば、速度センサを採用することも可能である。
前記実施形態では、警告部8は、表示手段10を用い、測定部5による測定結果を点滅させることで警告を報知していた。しかし、警告部は、アプローチ分析部が測定子の測定対象へのアプローチが異常と判定した場合、警告を報知することができればどのような手段を採用してもよい。
【0039】
例えば、表示手段のディスプレイ画面の色や表示する文字の色等を変更して表示させて警告を報知してもよいし、ブザーなどの音を発音することで警告を報知してもよい。また、変位測定器と接触する人体に刺激を与えることで警告を報知してもよいし、振動を発生させることで警告を報知してもよい。さらに、LEDなどの発光部材を設けた点灯や明滅等させたり、ディスプレイ画面のバックライトの光量を調整する等、光を用いて警告を報知してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明は、変位測定器に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 変位測定器
2 測定子
3 位置測定手段
4 演算手段
5 測定部
6 速度取得部
7 アプローチ分析部
8 警告部
9 記憶部
10 表示手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7