(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141254
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、パターン硬化膜、及び半導体素子
(51)【国際特許分類】
G03F 7/075 20060101AFI20241003BHJP
G03F 7/023 20060101ALI20241003BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20241003BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G03F7/075 501
G03F7/023
G03F7/004 501
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052790
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100221992
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】青木 千佳
(72)【発明者】
【氏名】青木 優
(72)【発明者】
【氏名】橋本 政弘
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H197CA05
2H197CE10
2H197HA03
2H225AE05P
2H225AF05P
2H225AM79P
2H225AN02P
2H225AN33P
2H225AN61P
2H225AN65P
2H225AN69P
2H225AN71P
2H225AN72P
2H225AN82P
2H225AN87P
2H225BA05P
2H225CA12
2H225CB06
2H225CC03
2H225CC21
(57)【要約】
【課題】室温での安定性に優れ、微細加工が可能な高い解像性、基板との高い密着性、及び低硬化収縮性を有するパターン硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】感光性樹脂組成物は、(A)イミド結合及びフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、(B)光により酸を生成する化合物と、(F)シランカップリング剤と、を含有し、シランカップリング剤が、ウレイド基含有シラン化合物、メルカプト基含有シラン化合物、イソシアヌレート基含有シラン化合物、ベンゾトリアゾール基含有シラン化合物、ブロックイソシアネート基含有シラン化合物、酸無水物基含有シラン化合物、チオエーテル結合含有シラン化合物、ウレア結合含有シラン化合物、チオウレア結合含有シラン化合物、及びヒンダードアミン骨格含有シラン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イミド結合及びフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、(B)光により酸を生成する化合物と、(F)シランカップリング剤と、を含有し、
前記シランカップリング剤が、ウレイド基含有シラン化合物、メルカプト基含有シラン化合物、イソシアヌレート基含有シラン化合物、ベンゾトリアゾール基含有シラン化合物、ブロックイソシアネート基含有シラン化合物、酸無水物基含有シラン化合物、チオエーテル結合含有シラン化合物、ウレア結合含有シラン化合物、チオウレア結合含有シラン化合物、及びヒンダードアミン骨格含有シラン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記シランカップリング剤が、ウレイド基含有シラン化合物、メルカプト基含有シラン化合物、ウレア結合含有シラン化合物、又はチオウレア結合含有シラン化合物を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記シランカップリング剤の含有量が、前記アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記アルカリ可溶性樹脂が、ビスフェノールイミド骨格を有する樹脂である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記光により酸を生成する化合物が、o-キノンジアジド化合物である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(C)熱により架橋反応が生じる化合物を更に含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱により架橋反応が生じる化合物が、アルコキシ基又はエポキシ基を有する化合物である、請求項6に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を基板の一部又は全面に塗布及び乾燥し樹脂膜を形成する工程と、
前記樹脂膜の一部又は全面を露光する工程と、
露光後の樹脂膜をアルカリ水溶液により現像してパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱する工程と、を有する、パターン硬化膜の製造方法。
【請求項9】
パターンを有し、前記パターンが請求項1~7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む、パターン硬化膜。
【請求項10】
請求項9に記載のパターン硬化膜を層間絶縁層又は表面保護層として備える、半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、パターン硬化膜、及び半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の高集積化、小型化に伴い、半導体素子の表面保護層及び層間絶縁層は、耐熱性、機械特性、金属銅配線との密着性等を有することが求められている。このような特性を併せ持つ絶縁層を形成するための材料としては、アルカリ可溶性樹脂を含有する感光性樹脂組成物が開発されている(例えば、特許文献1~4参照。)。これらの感光性樹脂組成物を基板上に塗布及び乾燥して樹脂膜を形成し、該樹脂膜を露光及び現像することでパターン樹脂膜(パターン形成された樹脂膜)が得られる。そして、上記パターン樹脂膜を加熱硬化することでパターン硬化膜(パターン形成された硬化膜)を形成でき、該パターン硬化膜は、表面保護層及び層間絶縁層として用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-309885号公報
【特許文献2】特開2007-57595号公報
【特許文献3】特開2016-24306号公報
【特許文献4】国際公開第2010/073948号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表面保護層及び層間絶縁層に用いられる感光性樹脂組成物には、配線の高密度化に伴う微細加工性、多層化に伴う低硬化収縮性、下地となる基板(例えば、シリコン基板、銅基板等)との密着性が必要とされる。また、該感光性樹脂組成物には、感光層を形成する際に室温で使用することから、室温での安定性に優れることが求められる。
【0005】
本開示の一側面は、室温での安定性に優れ、微細加工が可能な高い解像性、基板との高い密着性、及び低硬化収縮性を有するパターン硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、パターン硬化膜、及び半導体素子を提供する。
[1](A)イミド結合及びフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、(B)光により酸を生成する化合物と、(F)シランカップリング剤と、を含有し、シランカップリング剤が、ウレイド基含有シラン化合物、メルカプト基含有シラン化合物、イソシアヌレート基含有シラン化合物、ベンゾトリアゾール基含有シラン化合物、ブロックイソシアネート基含有シラン化合物、酸無水物基含有シラン化合物、チオエーテル結合含有シラン化合物、ウレア結合含有シラン化合物、チオウレア結合含有シラン化合物、及びヒンダードアミン骨格含有シラン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、感光性樹脂組成物。
[2]上記シランカップリング剤が、ウレイド基含有シラン化合物、メルカプト基含有シラン化合物、ウレア結合含有シラン化合物、又はチオウレア結合含有シラン化合物を含む、上記[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]上記シランカップリング剤の含有量が、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下である、上記[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]上記アルカリ可溶性樹脂が、ビスフェノールイミド骨格を有する樹脂である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5]上記光により酸を生成する化合物が、o-キノンジアジド化合物である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[6](C)熱により架橋反応が生じる化合物を更に含有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[7]上記熱により架橋反応が生じる化合物が、アルコキシ基又はエポキシ基を有する化合物である、上記[6]に記載の感光性樹脂組成物。
[8]上記[1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を基板の一部又は全面に塗布及び乾燥し樹脂膜を形成する工程と、樹脂膜の一部又は全面を露光する工程と、露光後の樹脂膜をアルカリ水溶液により現像してパターン樹脂膜を形成する工程と、パターン樹脂膜を加熱する工程と、を有する、パターン硬化膜の製造方法。
[9]パターンを有し、パターンが上記[1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む、パターン硬化膜。
[10]上記[9]に記載のパターン硬化膜を層間絶縁層又は表面保護層として備える、半導体素子。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、室温での安定性に優れ、微細加工が可能な高い解像性、基板との高い密着性、及び低硬化収縮性を有するパターン硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供することができる。また、本開示によれば、該感光性樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法、パターン硬化膜、及び半導体素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書における「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」又は「メタクリル酸」を意味し、(メタ)アクリレート等の他の類似の表現においても同様である。本明細書において、「固形分」とは、感光性樹脂組成物に含まれる水、溶剤等の揮発する物質を除いた不揮発分のことであり、該樹脂組成物を乾燥させた際に、揮発せずに残る成分を示し、また25℃付近の室温で液状、水飴状、及びワックス状のものも含む。
【0009】
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成される限り、他の工程と明確に区別できない工程も含む。「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
[感光性樹脂組成物]
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(A)イミド結合及びフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(以下、「(A)成分」という場合がある。)と、(B)光により酸を生成する化合物(以下、「(B)成分」という場合がある。)と、(F)シランカップリング剤(以下、「(F)成分」という場合がある。)と、を含有し、シランカップリング剤は、ウレイド基含有シラン化合物、メルカプト基含有シラン化合物、イソシアヌレート基含有シラン化合物、ベンゾトリアゾール基含有シラン化合物、ブロックイソシアネート基含有シラン化合物、酸無水物基含有シラン化合物、チオエーテル結合含有シラン化合物、ウレア結合含有シラン化合物、チオウレア結合含有シラン化合物、及びヒンダードアミン骨格含有シラン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成物として好適に用いることができる。以下、ポジ型感光性樹脂組成物の形態について、詳細に説明する。
【0011】
<(A)成分:アルカリ可溶性樹脂>
本明細書において、アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ水溶液(現像液)に対して可溶である樹脂を意味する。なお、アルカリ水溶液とは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液等のアルカリ性の溶液である。一般には、濃度が2.38質量%のTMAH水溶液が現像に用いられる。(A)成分がアルカリ現像液に可溶であることは、例えば、以下のようにして確認することができる。
【0012】
樹脂を任意の溶剤に溶解して得られたワニスを、シリコンウェハ等の基板上にスピン塗布して形成することによって膜厚5μm程度の塗膜とする。これをTMAH水溶液、金属水酸化物水溶液又は有機アミン水溶液のいずれかに20~25℃において、浸漬する。この結果、塗膜が均一に溶解し得るとき、その樹脂はアルカリ現像液に可溶と見なすことができる。
【0013】
(A)成分は、アルカリ水溶液への溶解性、高解像性、低硬化収縮性の観点からフェノール水酸基を有し、機械強度の観点からイミド結合を有する樹脂である。
【0014】
(A)成分が有するフェノール水酸基は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、又はp-クレゾールに由来する構造であってもよい。(A)成分が有するイミド結合は、芳香環に結合していてよい。
【0015】
(A)成分は、ビスフェノールイミド骨格を有する樹脂であってよい。ビスフェノールイミド骨格は、テトラカルボン酸二無水物とアミノフェノール化合物との反応に基づく構造であってよい。
【0016】
(A)成分は、硬化収縮率をより低減し、機械強度をより高めることから、ビスフェノールイミド骨格として、下記式(I)で表される化合物、下記式(II)で表される化合物、及び下記式(III)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構造を有してもよい。
【化1】
【0017】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Ra及びRbは、それぞれ独立にエーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、炭素数1~3のアルキレン基、又は単結合を示す。炭素数1~3のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、プロピレン基、プロピリデン基、及びイソプロピリデン基が挙げられる。
【0018】
式(I)、(II)、又は(III)で表される化合物において、溶解性を高める観点から、OHで表される水酸基の少なくとも一方は、イミド基(イミド結合)のメタ位又はオルト位に結合していることが好ましい。
【0019】
(A)成分は、溶解性と機械強度のバランスに優れることから、ビスフェノールイミド骨格として、下記式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、又は(6)で表される化合物に由来する構造単位を有する樹脂を含んでよい。
【化2】
【0020】
式(4)及び式(5)中のRaは、式(II)中のRaと同義であり、式(6)中のRbは、式(III)中のRbと同義である。溶解性を高める観点から、Raは、エーテル結合又はカルボニル基であることが好ましく、Rbは、イソプロピリデン基であることが好ましい。
【0021】
(A)成分は、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のクレゾール化合物に由来する構造単位を更に有してよく、ホルムアルデヒド、ビス(メトキシメチル)ビフェニル又はジメトキシメチルベンゼンに由来する構造単位を更に有してよい。
【0022】
(A)成分は、例えば、一般的なフェノールノボラック樹脂の合成方法に準じて合成することができる。(A)成分は、ビスフェノールイミド化合物と、クレゾール化合物との反応物であってよく、ビスフェノールイミド化合物と、クレゾール化合物と、ホルムアルデヒド、ビス(メトキシメチル)ビフェニル又はジメトキシメチルベンゼンとの反応物であってもよい。(A)成分は、例えば、下記式で表される構造を有することができる。
【0023】
【0024】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、アルカリ水溶液に対する溶解性、感光特性及び硬化膜の機械強度のバランスを考慮すると、1000~50000、2000~45000、3000~42000、5000~40000、10000~40000、又は15000~38000であってよい。Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得られる値である。
【0025】
<(B)成分:光により酸を生成する化合物>
(B)成分である光により(光を受けることにより)酸を生成する化合物は、感光性樹脂組成物において感光剤として機能する。(B)成分は、光照射を受けて酸を生成させ、光照射を受けた部分のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有する。(B)成分としては、一般に光酸発生剤と称される化合物を用いることができる。(B)成分としては、例えば、o-キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、及びトリアリールスルホニウム塩が挙げられる。(B)成分は、これらの化合物のうちの1種のみからなるものであってもよく、また2種以上を含んで構成されるものであってもよい。これらの中で、感度が高いことから、(B)成分は、o-キノンジアジド化合物であってよい。
【0026】
o-キノンジアジド化合物としては、例えば、o-キノンジアジドスルホニルクロリドと、ヒドロキシ化合物及び/又はアミノ化合物とを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られるものを用いることができる。
【0027】
o-キノンジアジドスルホニルクロリドとしては、例えば、ベンゾキノン-1,2-ジアジド-4-スルホニルクロリド、ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホニルクロリド、及びナフトキノン-1,2-ジアジド-6-スルホニルクロリドが挙げられる。
【0028】
ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10-テトラヒドロ-1,3,6,8-テトラヒドロキシ-5,10-ジメチルインデノ[2,1-a]インデン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、及びトリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが挙げられる。
【0029】
アミノ化合物としては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、及びビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。
【0030】
これらの中でも、o-キノンジアジド化合物を合成する際の反応性の観点と、樹脂膜を露光する際に適度な吸収波長範囲である観点から、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタンと1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリドとの縮合物、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン又はトリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンと1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリドとの縮合物であってもよい。
【0031】
脱塩酸剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、及びピリジンが挙げられる。
【0032】
o-キノンジアジドスルホニルクロリドと、ヒドロキシ化合物及び/又はアミノ化合物との配合は、o-キノンジアジドスルホニルクロリドが1モルに対して、ヒドロキシ基とアミノ基とのモル数の合計が0.5~1モルになるように配合されることが好ましい。脱塩酸剤とo-キノンジアジドスルホニルクロリドの好ましい配合割合は、0.95/1モル~1/0.95モル当量の範囲である。
【0033】
上述の反応の好ましい反応温度は0~40℃、好ましい反応時間は1~10時間である。反応溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、又はN-メチル-2-ピロリドンが用いられる。
【0034】
(B)成分の含有量は、露光部と未露光部の溶解速度差が大きくなり、感度がより良好となる点から、(A)成分100質量部に対して1~50質量部、3~35質量部、又は5~20質量部であってよい。
【0035】
<(F)成分:シランカップリング剤>
(F)成分であるシランカップリング剤は、各種基板に対する密着性付与剤として機能する。(F)成分は、ウレイド基含有シラン化合物、メルカプト基含有シラン化合物、イソシアヌレート基含有シラン化合物、ベンゾトリアゾール基含有シラン化合物、ブロックイソシアネート基含有シラン化合物、酸無水物基含有シラン化合物、チオエーテル結合含有シラン化合物、ウレア結合含有シラン化合物、チオウレア結合含有シラン化合物、及びヒンダードアミン骨格含有シラン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。(F)成分として、特定の構造を有するシラン化合物を用いることで、感光性樹脂組成物の室温での安定性を悪化させることなく、基板に対する密着性を向上することができる。
【0036】
(F)成分は、市販品を入手可能である。ウレイド基含有シラン化合物の市販品としては、AY-43-031(ダウ・東レ株式会社製の商品名)、KBE-585(信越化学工業株式会社製の商品名)等が挙げられる。チオエーテル結合含有シラン化合物の市販品としては、X-12-1056ES(信越化学工業株式会社製の商品名)等が挙げられる。メルカプト基含有シラン化合物の市販品としては、KBM-802、KBM-803、X-12-1154、X-12-1156(信越化学工業株式会社製の商品名)等が挙げられる。イソシアヌレート基含有シラン化合物の市販品としては、KBM-9659、X-12-1290(信越化学工業株式会社製の商品名)等が挙げられる。ベンゾトリアゾール基含有シラン化合物の市販品としては、X-12-1214A(信越化学工業株式会社製の商品名)等が挙げられる。ブロックイソシアネート基含有シラン化合物の市販品としては、X-12-1308ES、X-12-1293(信越化学工業株式会社製の商品名)等が挙げられる。ウレア結合含有シラン化合物の市販品としては、X-12-989MS(信越化学工業株式会社製の商品名)等が挙げられる。チオウレア結合含有シラン化合物の市販品としては、X-12-1116(信越化学工業株式会社製の商品名)等が挙げられる。ヒンダードアミン骨格含有シラン化合物の市販品としては、TMPS-E(信越化学工業株式会社製の商品名)等が挙げられる。
【0037】
ウレイド基含有シラン化合物としては、例えば、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルメチルジメトキシシラン、及び3-ウレイドプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。チオエーテル結合含有シラン化合物としては、例えば、3-トリメトキシシリルチオプロピルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルチオプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリルチオプロピルトリメトキシシラン、及び3-トリエトキシシリルチオプロピルトリエトキシシランが挙げられる。メルカプト基含有シラン化合物としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン及び3-メルカプトプロピルトリエトキシシランが挙げられる。イソシアヌレート基含有シラン化合物としては、例えば、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート及びトリス(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。酸無水物基含有シラン化合物としては、例えば、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物及び3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物が挙げられる。
【0038】
(F)成分は、良好な基板への密着性を与える観点から、ウレイド基含有シラン化合物、メルカプト基含有シラン化合物、ウレア結合含有シラン化合物、又はチオウレア結合含有シラン化合物を含んでもよい。
【0039】
(F)成分の含有量は、良好な基板への密着性を与える観点から、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上、0.2質量部以上、0.3質量部以上、0.5質量部以上、又は0.6質量部以上であってもよく、10質量部以下、8質量部以下、6質量部以下、4質量部以下、又は2質量部以下であってもよい。
【0040】
<(C)成分:熱架橋剤>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(C)成分として、熱架橋剤を更に含有してもよい。(C)成分は、パターン樹脂膜を加熱して硬化する際に、(A)成分と反応して橋架け構造を形成し得る構造を有する化合物である。これにより、膜の脆さ及び膜の溶融を防ぐことができる。(C)成分としては、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物、アルコキシ基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物が挙げられる。
【0041】
ここでいう「フェノール性水酸基を有する化合物」には、(A)成分は包含されない。熱架橋剤としてのフェノール性水酸基を有する化合物は、熱架橋剤としてだけでなく、アルカリ水溶液で現像する際の露光部の溶解速度を増加させ、感度を向上させることができる。このようなフェノール性水酸基を有する化合物のMwは、アルカリ水溶液に対する溶解性、感光特性及び機械強度のバランスを考慮して、3000以下、2000以下、又は1500以下であってよい。
【0042】
アルコキシ基を有する化合物としては、従来公知のものを用いることができる。アルコキシ基を有する化合物は、高い反応性と耐熱性を付与できることから、メトキシ基を有してよく、4つ以上のメトキシ基を有してよい。アルコキシ基を有する化合物は、露光部の溶解促進効果と硬化膜の機械強度のバランスに優れているため、下記式で表される化合物から選ばれる化合物であってよい。
【0043】
【0044】
エポキシ基を有する化合物としては、従来公知のものを用いることができる。エポキシ基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、複素環式エポキシ化合物、ハロゲン化エポキシ化合物、及びポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0045】
(C)成分として、上述した化合物以外に、例えば、ビス[3,4-ビス(ヒドロキシメチル)フェニル]エーテル、1,3,5-トリス(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ベンゼン等のヒドロキシメチル基を有する芳香族化合物、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス[4-(4’-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等のマレイミド基を有する化合物、ノルボルネン骨格を有する化合物、多官能アクリレート化合物、オキセタニル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物、又はブロック化イソシアネート化合物を用いることもできる。
【0046】
(C)成分の含有量は、硬化膜の耐熱性と塗布基板の反りの観点から、(A)成分100質量部に対して1~70質量部、2~50質量部、又は3~40質量部であってよい。
【0047】
<(D)成分:エラストマ>
本実施形態の樹脂組成物は、パターン硬化膜の柔軟性を向上する観点から、(D)成分としてエラストマを更に含有してもよい。(D)成分としては、例えば、スチレン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、アクリル系エラストマ、及びシリコーン系エラストマが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また(A)成分中にエラストマ成分の骨格を導入してもよい。
【0048】
アクリル系エラストマは、下記式(8)で表される構造単位を有していてもよい。アクリル系エラストマは、下記式(8)で表される構造単位を有することにより、(A)成分と(D)成分との相溶性が向上するため感光性樹脂組成物の白濁を充分に抑え、パターン硬化膜のヘーズ値を低くすることができると共に、機械強度をより向上できる。
【化6】
【0049】
式(8)中、R17は水素原子又はメチル基を示し、R18は炭素数2~20のヒドロキシアルキル基を示す。
【0050】
R18で示される炭素数2~20のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシヘプチル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシノニル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシウンデシル基、ヒドロキシドデシル基(ヒドロキシラウリル基という場合もある。)、ヒドロキシトリデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシペンタデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシヘプタデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシノナデシル基、及びヒドロキシエイコシル基が挙げられる。これらの基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0051】
式(8)中、(A)成分との相溶性及び機械強度をより向上できる点から、R18は、炭素数2~15のヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数2~10のヒドロキシアルキル基がより好ましく、炭素数2~8のヒドロキシアルキル基が更に好ましい。
【0052】
式(8)で表される構造単位を与えるモノマとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘプチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシノニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシウンデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシドデシル((メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリルという場合もある。)、(メタ)アクリル酸ヒドロキシトリデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシテトラデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクタデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシノナデシル、及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシエイコシルが挙げられる。これらのモノマは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0053】
これらの中でも、(A)成分との相溶性、硬化膜の破断伸びをより向上する観点から、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘプチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシノニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシウンデシル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシドデシルを用いることが好ましい。
【0054】
(D)成分は、式(8)で表される構造単位のみからなるアクリル系エラストマであってもよく、式(8)で表される構造単位以外の構造単位を有するアクリル系エラストマであってもよい。式(8)で表される構造単位以外の構造単位を有するアクリル樹脂である場合、アクリル樹脂中の式(8)で表される構造単位の割合は、(D)成分の総量に対して、0.1~30モル%、0.3~20モル%、又は0.5~10モル%であってよい。
【0055】
アクリル系エラストマは、下記式(9)で表される構造単位を更に有していてもよい。
【化7】
【0056】
式(9)中、R19は水素原子又はメチル基を示し、R20は1級、2級又は3級アミノ基を有する1価の有機基を示す。(D)成分が式(9)で表される構造単位を有することで、未露光部の現像液に対する溶解阻害性及び金属基板に対する密着性をより向上できる。
【0057】
式(9)で表される構造単位を有するアクリル系エラストマを与えるモノマとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N-メチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N-エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1-メチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、(ピペリジン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、及び2-(ピペリジン-4-イル)エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのモノマは単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0058】
これらの中でも、パターン硬化膜の基板への密着性、(A)成分との相溶性をより向上できる観点から、式(9)中、R
20が下記式(10)で表される1価の有機基であることが好ましい。
【化8】
【0059】
式(10)中、Yは炭素数1~5のアルキレン基を示し、R21、R22、R23、R24、及びR25は各々独立に水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示し、eは0~10の整数を示す。
【0060】
式(9)中、R20が式(10)で表される1価の有機基で表される構造単位を与えるモノマとしては、例えば、ピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1-メチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、(ピペリジン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、及び2-(ピペリジン-4-イル)エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中で、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリレートはFA-711MM(株式会社レゾナック製)として、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イルメタクリレートはFA-712HM(株式会社レゾナック製)として、それぞれ商業的に入手可能であるため好ましい。
【0061】
(D)成分が式(10)で表される構造単位を有する場合、式(9)で表される構造単位の割合は、(A)成分との相溶性と現像液に対する溶解性の点から、(D)成分の総量に対して、0.3~10モル%であることが好ましく、0.4~6モル%であることがより好ましく、0.5~5モル%であることが更に好ましい。
【0062】
アクリル系エラストマは、下記式(11)で表される構造単位を更に有していてもよい。アクリル系エラストマが式(11)で表される構造単位を有することで、硬化膜の耐熱衝撃性をより向上できる。
【化9】
【0063】
式(11)中、R26は水素原子又はメチル基を示し、R27は炭素数4~20のアルキル基を示す。
【0064】
R27で示される炭素数4~20のアルキル基としては、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基という場合もある。)、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、及びエイコシル基が挙げられる。これらの基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0065】
式(11)中、アルカリ溶解性、耐熱衝撃性、(A)成分との相溶性の観点から、R27が炭素数4~16のアルキル基であることが好ましく、炭素数4~12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数4のアルキル基(n-ブチル基)であることが更に好ましい。
【0066】
式(11)で表されるモノマとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリルという場合もある。)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、及び(メタ)アクリル酸エイコシルが挙げられる。これらのモノマは単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0067】
これらの中でも破断伸びをより向上し、弾性率をより低くする観点から、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、又は(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリルともいう。)を用いることが好ましい。
【0068】
(D)成分が式(11)で表される構造単位を有する場合、式(11)で表される構造単位の割合は、(D)成分の総量に対して、50~93モル%であることが好ましく、55~85モル%であることがより好ましく、60~80モル%であることが更に好ましい。上記式(11)で表される構造単位の割合が50~93モル%であることにより、硬化膜の耐熱衝撃性をより向上することができる。
【0069】
アクリル系エラストマは、下記式(12)で表される構造単位を更に有していてもよい。アクリル系エラストマが式(12)で表される構造単位を有することで、樹脂膜の露光部のアルカリ溶解性をより向上することができる。
【0070】
【0071】
式(12)中、R28は水素原子又はメチル基を示す。
【0072】
式(12)で表される構造単位を与えるモノマとしては、アクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。
【0073】
(D)成分が式(12)で表される構造単位を有する場合、式(12)で表される構造単位の割合は、(D)成分の総量に対して、5~35モル%であることが好ましく、10~30モル%であることがより好ましく、15~25モル%であることが更に好ましい。上記式(12)で表される構造単位の組成比が5~35モル%であることにより、(A)成分との相溶性及び露光部のアルカリ溶解性をより向上することができる。
【0074】
アクリル系エラストマは、例えば、上記式(8)で表される構造単位を与えるモノマ、及び必要に応じて添加される式(9)、(11)又は(12)で表される構造単位を与えるモノマを配合し、乳酸エチル、トルエン、イソプロパノール等の溶剤中で攪拌し、必要に応じて加熱することにより得られる。
【0075】
アクリル系エラストマの合成に用いられるモノマは、式(8)、(9)、(11)、及び(12)で表される構造単位を与えるモノマ以外のモノマを更に含んでいてもよい。
【0076】
そのようなモノマとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸4-メチルベンジル、アクリロニトリル、ビニル-n-ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、α-ブロモ(メタ)アクリル酸、α-クロル(メタ)アクリル酸、β-フリル(メタ)アクリル酸、β-スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、及びプロピオール酸が挙げられる。これらのモノマは単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0077】
(D)成分のMwは、2000~100000、3000~60000、5000~50000、又は10000~40000であってよい。Mwが2000以上では硬化膜の熱衝撃性をより向上でき、100000以下であると(A)成分との相溶性及び現像性をより向上できる。ここで、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。
【0078】
(D)成分の含有量は、露光部のアルカリ溶解性、未露光部のアルカリ溶解阻害性、金属基板との密着性、耐熱衝撃性のバランスの観点から、(A)成分100質量部に対して1~50質量部、2~30質量部、又は3~20質量部であってよい。
【0079】
<(E)成分:接着助剤>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(E)成分として接着助剤を含有してもよい。(E)成分を含有することにより、基板との密着性が良好なパターン硬化膜を与える感光性樹脂組成物を提供することができる。(E)成分は、下記式(7)で表される含窒素芳香族化合物を含んでいてよい。
【化11】
【0080】
式(7)中、R51は水素原子又は炭化水素基を示し、R52は水素原子、アミノ基、又はフェニル基を示す。A及びBはそれぞれ独立に窒素原子、又は、炭素原子及びこれに結合した水素原子(C-H)を示す。
【0081】
式(7)で表される含窒素芳香族化合物は、より基板への密着性を向上させる観点から、下記式(7a)で表される含窒素芳香族化合物であってもよい。式(7a)中のR
52は式(7)のR
52と同義である。
【化12】
【0082】
(E)成分としては、例えば、1H-テトラゾール、5-アミノテトラゾール、5-フェニルテトラゾール、及び5-メチルテトラゾールが挙げられる。これらの中でも、より良好な基板への密着性を与える観点から、(E)成分は、1H-テトラゾール又は5-アミノテトラゾールを含んでよい。
【0083】
(E)成分の配合量は、良好な基板への密着性と感度を与える観点から、(A)成分100質量部に対して、0.01~20質量部、0.015~10質量部、又は0.02~7質量部であってよい。
【0084】
<その他の成分>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記(A)~(F)成分以外に、溶剤、加熱により酸を生成する化合物、溶解促進剤、溶解阻害剤、及び、界面活性剤又はレベリング剤等の成分を含有してもよい。
【0085】
(溶剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、溶剤を含有することにより、基板上への塗布を容易にし、均一な厚さの塗膜を形成できるという効果を奏する。溶剤としては、例えば、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n-ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオナート、3-メチルメトキシプロピオナート、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、溶解性と塗布膜の均一性の点から、乳酸エチル又はγ-ブチロラクトンを用いることが好ましい。
【0086】
(加熱により酸を生成する化合物)
加熱により酸を生成する化合物を用いることにより、パターン樹脂膜を加熱する際に酸を発生させることが可能となり、(A)成分と(C)成分との反応、すなわち熱架橋反応が促進され、パターン硬化膜の耐熱性が向上する。また、加熱により酸を生成する化合物は光照射によっても酸を発生するため、露光部のアルカリ水溶液への溶解性が増大する。よって、未露光部と露光部とのアルカリ水溶液に対する溶解性の差が更に大きくなり解像度がより向上する。
【0087】
加熱により酸を生成する化合物は、例えば、50~250℃まで加熱することにより酸を生成するものであることが好ましい。加熱により酸を生成する化合物のとしては、例えば、オニウム塩等の強酸と塩基とから形成される塩、及びイミドスルホナートが挙げられる。加熱により酸を生成する化合物を用いる場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~30質量部、0.2~20質量部、又は0.5~10質量部であってよい。
【0088】
(溶解促進剤)
溶解促進剤を上述のポジ型感光性樹脂組成物に配合することによって、アルカリ水溶液で現像する際の露光部の溶解速度を増加させ、感度及び解像性を向上させることができる。溶解促進剤としては従来公知のものを用いることができる。溶解促進剤としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、又はスルホンアミド基を有する化合物が挙げられる。溶解促進剤を用いる場合の含有量は、アルカリ水溶液に対する溶解速度によって決めることができ、例えば、(A)成分100質量部に対して、0.01~30質量部とすることができる。
【0089】
(溶解阻害剤)
溶解阻害剤を(A)成分のアルカリ水溶液に対する溶解性を阻害する化合物であり、残膜厚、現像時間及びコントラストをコントロールするために用いられる。溶解阻害剤としては、例えば、ジフェニルヨードニウムニトラート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムブロミド、ジフェニルヨードニウムクロリド、及びジフェニルヨードニウムヨージドが挙げられる。溶解阻害剤を用いる場合の含有量は、感度と現像時間の許容幅の点から、(A)成分100質量部に対して0.01~20質量部、0.01~15質量部、又は0.05~10質量部であってよい。
【0090】
(界面活性剤又はレベリング剤)
界面活性剤又はレベリング剤を感光性樹脂組成物に配合することによって、塗布性をより向上することができる。具体的には、例えば、界面活性剤又はレベリング剤を含有することで、ストリエーション(膜厚のムラ)をより防いだり、現像性をより向上させたりすることができる。このような界面活性剤又はレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、及びポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテルが挙げられる。市販品としては、例えば、メガファックF-171、F-565、及びRS-78(DIC株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0091】
界面活性剤又はレベリング剤を用いる場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.001~5質量部又は0.01~3質量部であってよい。
【0092】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のアルカリ水溶液を用いて現像することが可能である。
【0093】
[パターン硬化膜及びパターン硬化膜の製造方法]
本実施形態に係るパターン硬化膜は、パターンを有し、パターンが上述の感光性樹脂組成物の硬化物を含む。パターン硬化膜は、上述の感光性樹脂組成物を加熱することにより得られる。以下、パターン硬化膜の製造方法について説明する。
【0094】
本実施形態に係るパターン硬化膜の製造方法は、上述の感光性樹脂組成物を基板の一部又は全面に塗布及び乾燥し樹脂膜を形成する工程(塗布・乾燥(成膜)工程)と、樹脂膜の一部又は全面を露光する工程(露光工程)と、露光後の樹脂膜をアルカリ水溶液により現像してパターン樹脂膜を形成する工程(現像工程)と、パターン樹脂膜を加熱する工程(加熱処理工程)とを有する。以下、各工程について説明する。
【0095】
(塗布・乾燥(成膜)工程)
まず、本実施形態の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して樹脂膜を形成する。この工程では、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えば、TiO2、SiO2)、窒化ケイ素の基板、シリコン基板、銅基板等の基板上に、本実施形態の感光性樹脂組成物を、スピンナー等を用いて回転塗布し、塗膜を形成する。塗膜の厚さに特に制限されないが、0.1~40μmであってよい。この塗膜が形成された基板をホットプレート、オーブン等を用いて乾燥する。乾燥温度及び乾燥時間に特に制限はないが、80~140℃で1~7分間であってよい。これにより、基板上に樹脂膜が形成される。樹脂膜の厚さに特に制限はないが、0.1~40μmであってよい。
【0096】
(露光工程)
次に、露光工程では、基板上に形成した樹脂膜に、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線等の活性光線を照射する。本実施形態の感光性樹脂組成物において、(A)成分はg、h、i線に対する透明性が高いので、g、h、i線のいずれか又は全てを照射に用いることができる。
【0097】
(現像工程)
現像工程では、露光工程後の樹脂膜の露光部を現像液で除去することによって、樹脂膜がパターン化され、パターン樹脂膜が得られる。現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のアルカリ水溶液が好適に用いられる。これらの水溶液の塩基濃度は、0.1~10質量%であってよい。上記現像液にアルコール類又は界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100質量部に対して、0.01~10質量部又は0.1~5質量部の範囲で配合してよい。現像液を用いて現像を行う場合は、例えば、シャワー現像、スプレー現像、浸漬現像、パドル現像等の方法によって、現像液を樹脂膜上に配し、18~40℃の条件下、30~360秒間放置する。放置後、水洗しスピン乾燥を行うことによってパターン樹脂膜を洗浄する。
【0098】
(加熱処理工程)
次いで、加熱処理工程では、パターン樹脂膜を加熱処理することによって、パターン硬化膜を形成することができる。加熱処理工程における加熱温度は、半導体装置に対する熱によるダメージを充分に防止する点から、300℃以下、270℃以下、又は250℃以下であってよい。
【0099】
加熱処理は、例えば、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、マイクロ波硬化炉等のオーブンを用いて行うことができる。また、大気中又は窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することもできるが、窒素下はパターンの酸化を防ぐことができるので望ましい。上述の加熱温度の範囲は従来の加熱温度よりも低いため、支持基板及び半導体装置へのダメージを小さく抑えることができる。したがって、本実施形態に係るパターン硬化膜の製造方法を用いることによって、電子デバイスを歩留まり良く製造することができる。また、プロセスの省エネルギー化につながる。さらに、本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物によれば、感光性ポリイミド等に見られる加熱処理工程における体積収縮(硬化収縮)が小さいため、寸法精度の低下を防ぐことができる。
【0100】
加熱処理工程における加熱処理時間は、ポジ型感光性樹脂組成物が硬化するのに充分な時間であればよいが、作業効率との兼ね合いから概ね5時間以下が好ましい。
【0101】
加熱処理は、上述のオーブンの他、マイクロ波硬化装置又は周波数可変マイクロ波硬化装置を用いて行うこともできる。これらの装置を用いることによって、基板及び半導体装置の温度を所望の温度(例えば、200℃以下)に保ちつつ、樹脂膜のみを効果的に加熱することが可能である(J.Photopolym.Sci.Technol.,18,327-332(2005)参照)。
【0102】
本実施形態に係るパターン硬化膜は、半導体素子の層間絶縁層又は表面保護層として用いることができる。上述の感光性樹脂組成物の硬化膜から形成された層間絶縁層又は表面保護層を備える半導体素子、該半導体素子を含む電子デバイスを作製することができる。半導体素子は、例えば、多層配線構造、再配線構造等を有する、メモリ、パッケージ等であってよい。電子デバイスとしては、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、パソコン、及びハードディスクサスペンションが挙げられる。本実施形態の感光性樹脂組成物により形成されるパターン硬化膜を備えることで、信頼性に優れた半導体素子及び電子デバイスを提供することができる。
【実施例0103】
以下に、本開示を実施例に基づいて具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0104】
実施例及び比較例で用いた材料について以下に示す。
【0105】
((A)成分)
イミド結合及びフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂として、N,N’-ビス(3-ヒドロキシフェニル)-ピロメリットイミド、o-クレゾール、m-クレゾール、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、及びホルムアルデヒドを10:60:30:30:70のモル比で反応させることで、アルカリ可溶性樹脂(A1)を得た。(A1)のMwは、10000であった。
【0106】
(A1)成分のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。検量線は、標準ポリスチレンの5サンプルセット(東ソー株式会社製、商品名「PStQuick MP-H」、「PStQuick B」)を用い、JIS K 7252-2(2016)に従いユニバーサルキャリブレーション曲線の3次式で近似した。GPCの条件を以下に示す。
(GPC条件)
検出器:L-2490 RI(株式会社日立ハイテク製)
カラム:Gelpack GL-R440+R450+R400M(株式会社日立ハイテク製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:40℃
流速:2.05mL/分
濃度:5mg/mL
【0107】
((B)成分)
B1:1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタンの1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル(エステル化率約90%、東洋合成工業株式会社製、商品名「TPPA-280TF」)
【0108】
((C)成分)
C1:4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(メトキシメチル)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス[2,6-ビス(メトキシメチル)フェノール](本州化学工業株式会社製、商品名「HMOM-TPPA」)
【0109】
((E)成分)
E1:5-アミノテトラゾール(東洋紡株式会社製、商品名「HAT」)
【0110】
((F)成分)
F1:ウレイド基含有シラン化合物(3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ダウ・東レ株式会社製、商品名「AY-43-031」)
F2:チオエーテル結合含有シラン化合物(3-トリエトキキシリルチオプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名「X-12-1056ES」)
F3:メルカプト基含有シラン化合物(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名「KBM-803」)
F4:ベンゾトリアゾール基含有シラン化合物(信越化学工業株式会社製、商品名「X-12-1214A」)
F5:ブロックイソシアネート基含有シラン化合物(信越化学工業株式会社製、商品名「X-12-1308ES」)
F6:酸無水物基含有シラン化合物(3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、信越化学工業株式会社製、商品名「X-12-967C」)
F7:ブロックイソシアネート基含有シラン化合物(信越化学工業株式会社製、商品名「X-12-1293」)
F8:チオウレア結合含有シラン化合物(信越化学工業株式会社製、商品名「X-12-1116」)
F9:エポキシ基含有シラン化合物(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名「KBM-403」)
F10:エポキシ基含有シラン化合物(8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名「KBM-4803」)
F11:イソシアネート基含有シラン化合物(3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名「KBE-9007N」)
【0111】
(実施例1~10)
表1に示した配合量の(A)、(B)、(C)、(E)及び(F)成分と、溶剤として乳酸エチルを配合し、これを0.2μm孔のポリテトラフルオロエチレン製フィルターを用いて加圧ろ過して、感光性樹脂組成物を調製した。
【0112】
(比較例1~4)
表2に示した配合量の(A)、(B)、(C)、(E)及び(F)成分を用いた以外は、実施例と同様にして、感光性樹脂組成物を調製した。
【0113】
[感光性樹脂組成物の評価]
(パターン開口性)
感光性樹脂組成物をシリコン基板上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚6~8μmの塗膜を形成した。次いで、i線ステッパー(株式会社ニコン製、商品名「NES2Wi01」)を用いて、1μm×1μmから100μm×100μmまでの正方形ホールパターンを有するマスクを介してi線(365nm)で縮小投影露光した。露光量は、600mJ/cm2で行った。露光後、2.38%のTMAH水溶液を用いて現像し、水でリンスしてパターン樹脂膜を得た。100μm×100μmの正方形ホールパターンの開口性を下記基準で評価した。
A:パターンが開口しており、パターン剥がれ及び開口部の溶け残りがない。
B:パターンが開口しているが、パターンの剥がれ又は開口部に溶け残りが確認できる。
C:パターン自体が形成できない。
【0114】
(解像度)
上記パターン樹脂膜をイナートガスオーブン(光洋サーモシステム株式会社製、商品名「INH-9CD-S」)を用い、窒素中、温度230℃(昇温1時間)で2時間加熱処理し、パターン硬化膜の解像度を評価した。1μm×1μmから100μm×100μmまでの正方形ホールパターンで開口している最小サイズを微細加工性の指標とした。パターンサイズが小さい程、解像性に優れ微細加工が可能となる。
【0115】
(硬化収縮)
硬化収縮率は、硬化前のパターン樹脂膜の膜厚と硬化後のパターン硬化膜の膜厚とから下記式により算出した。
硬化収縮率(%)=[1-(パターン硬化膜の膜厚/パターン樹脂膜の膜厚)]×100
【0116】
(安定性)
感光性樹脂組成物を30mLのNalgene褐色ボトルに入れ、25℃、湿度50%の環境下で14日保管した。保管前後の感光性樹脂組成物について、以下の評価を行った。
【0117】
(粘度の変化率)
感光性樹脂組成物の粘度を、TV-25型粘度計(東機産業株式会社製)を使用して測定した。感光性樹脂組成物の保管前後の粘度の変化率を下記式から算出した。
粘度の変化率(%)=|1-(保管後の粘度/保管前の粘度)|×100
【0118】
(膜厚の変化率)
感光性樹脂組成物をシリコン基板上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、塗膜を形成した。塗膜の膜厚を光干渉式膜厚測定器(大日本スクリーン製造株式会社製、型式STM-602)を使用して測定した。塗膜の保管前後の膜厚の変化率を下記式から算出した。
膜厚の変化率(%)=|1-(保管後の膜厚/保管前の膜厚)|×100
【0119】
(残膜率の変化率)
感光性樹脂組成物をシリコン基板上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、塗膜を形成した。次いで、2.38%のTMAH水溶液を用いて現像し、水でリンスした。現像前後の塗膜の膜厚を光干渉式膜厚測定器(STM-602)を使用して測定した。下記式から現像前後の塗膜の残膜率と、保管前後の残膜率の変化率を算出した。
残膜率(%)=(現像後の塗膜の膜厚/現像前の塗膜の膜厚)×100
残膜率の変化率(%)=|1-(保管後の残膜率/保管前の残膜率)|×100
【0120】
(最小開口露光量の変化率)
感光性樹脂組成物をシリコン基板にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚6~8μmの塗膜を形成した。次いで、i線ステッパー(NES2Wi01)を用いて、1μm×1μmから100μm×100μmまでの正方形ホールパターンを有するマスクを介してi線(365nm)で縮小投影露光した。露光量は、100mJ/cm2から1320mJ/cm2まで20mJ/cm2刻ずつ変えながら行った。露光後、2.38%のTMAH水溶液を用いて現像し、水でリンスしてパターン樹脂膜を得た。100μm×100μmの正方形ホールパターンが形成できる最小露光量を確認した。下記式から最小露光量(MED)の変化率を算出した。
MEDの変化率(%)=|1-(保管後のMED/保管前のMED)|×100
【0121】
(樹脂膜の密着性)
感光性樹脂組成物をシリコン基板上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚6~8μmの塗膜を形成した。次いで、i線ステッパー(株式会社ニコン製、商品名「NES2Wi01」)を用いて、縦2.4mm、幅1μmから100μmまでの長方形パターンを有するマスクを介してi線(365nm)で縮小投影露光した。露光量は、600mJ/cm2で行った。露光後、2.38%のTMAH水溶液を用いて現像し、水でリンスして、幅1μmから100μmのラインアンドスペースパターンが形成された樹脂膜を得た。シリコン基板に対する現像後の樹脂膜の密着性を下記基準で評価した。
A:全パターンで剥離がない。
B:8μm未満のパターンで剥離がある。
C:8μm未満のパターン及び8μm以上のパターンで剥離がある。
【0122】
(硬化膜の密着性)
感光性樹脂組成物をシリコン基板又は銅基板上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、塗膜を形成した。次いで、イナートガスオーブン(INH-9CD-S)により窒素雰囲気下で230℃、2時間加熱処理し、膜厚約6μmの硬化膜を得た。この硬化膜に以下に示すクロスカット試験を行って、シリコン基板及び銅基板に対する硬化後の硬化膜の密着性を評価した。
【0123】
シリコン基板又は銅基板上の硬化膜表面の中央に、カッターガイドを用いて直交する縦横に11本ずつの平行線を1mmの間隔で引き、1cm2の中に100個の正方形ができるように碁盤目状の切り傷をつけ、傷の状態を評価した。なお、切り傷は、カッターナイフの刃先を感光性フィルムに対して35~45度の範囲で一定の角度に保ち、硬化膜を貫通して銅基板に届くように切り傷1本について0.5秒かけて等速に引いた。きれいにシリコン基板又は銅基板に付着している正方形が多いほど、密着性に優れていることを示している。評価基準は以下に従ってA、B、C、Dの4段階で評価した結果を示している。
A:切り傷の交点、及び正方形の一目一目に剥がれがなく、欠損部の面積が全正方形面積の1%未満である。
B:切り傷の交点にわずかな剥がれがあって、正方形の一目一目に剥がれがなく、欠損部の面積が全正方形面積の5%未満である。
C:切り傷の両側と交点に剥がれがあって、欠損部の面積が全正方形面積の5~50%である。
D:切り傷による剥がれの幅が大きく、欠損部の面積が全正方形面積の50%よりも大きい。
【0124】
感光性樹脂組成物をシリコン基板にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚6~8μmの塗膜を形成した。次いで、イナートガスオーブン(INH-9CD-S)により窒素雰囲気下で230℃、2時間加熱処理し、膜厚約6μmの硬化膜を得た。この硬化膜を121℃、湿度100%の環境下で100時間放置した後(PCT試験後)、上記クロスカット試験を行って、シリコン基板に対するPCT試験後の硬化膜の密着性を評価した。
【0125】
【0126】