(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141297
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】木材積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B27D 1/04 20060101AFI20241003BHJP
B27M 1/08 20060101ALI20241003BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20241003BHJP
B32B 21/04 20060101ALI20241003BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20241003BHJP
【FI】
B27D1/04 F
B27D1/04 G
B27D1/04 K
B27M1/08 B
B32B5/18
B32B21/04
B32B7/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052864
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】306024148
【氏名又は名称】公立大学法人秋田県立大学
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】足立 幸司
(72)【発明者】
【氏名】西原 光一
(72)【発明者】
【氏名】中村 健史
(72)【発明者】
【氏名】辻川 一輝
(72)【発明者】
【氏名】畠山 卓也
【テーマコード(参考)】
2B200
2B250
4F100
【Fターム(参考)】
2B200AA01
2B200BA03
2B200BA11
2B200BB06
2B200BB15
2B200CA11
2B200DA07
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2B200EA03
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2B200EE21
2B200FA07
2B200FA24
2B250AA05
2B250AA06
2B250BA03
2B250BA05
2B250DA03
2B250EA02
2B250EA13
2B250FA21
2B250FA23
2B250FA31
4F100AK25C
4F100AK41B
4F100AP01A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CB05C
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4F100JA13A
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4F100JK07B
4F100JL13C
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】
木材製品としての意匠性に優れ、軽量かつ荷重分散性に優れた柔軟な木質積層体を提供する。
【解決手段】
木製単板(A)層、多孔質体(B)層、および粘接着剤(C)層を有する木材積層体であって、木製単板(A)が、比重0.3以上かつ厚み0.2~3mmの木製単板であり、多孔質体(B)が、比重0.5以下かつ厚み0.2~3mmの弾性体であることを特徴とする、木材積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製単板(A)層、多孔質体(B)層、および粘接着剤(C)層を有する木材積層体であって、木製単板(A)が、比重0.3以上かつ厚み0.2~3mmの木製単板であり、多孔質体(B)が、比重0.5以下かつ厚み0.2~3mmの弾性体であることを特徴とする、木材積層体。
【請求項2】
少なくとも一方の最表面が木製単板(A)層であることを特徴とする、請求項1に記載の木材積層体。
【請求項3】
多孔質体(B)の引張弾性率が1~30MPaであることを特徴とする、請求項1または2に記載の木材積層体。
【請求項4】
前記木材積層体の比重が0.4以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の木材積層体。
【請求項5】
前記木材積層体における木製単板(A)層の総体積(AV)に対する多孔質体(B)層の総体積(BV)の体積比(BV/AV)が、25/100~500/100であることを特徴とする、請求項1または2に記載の木材積層体。
【請求項6】
請求項1または2に記載の木材積層体の製造方法であって、木製単板(A)、多孔質体(B)、および粘接着剤(C)を積層し、圧力をかけて貼り合わせる工程を含み、前記粘接着剤(C)が、シート状であることを特徴とする、木材積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材積層体に関する。特に、木材製品としての意匠性に優れ、軽量かつ積層方向への柔軟性および圧力分散性に優れた木材積層体および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材は、木目などの木材特有の外観を備えており、例えば、「温かい」、「やわらかい」、「高級感」などの印象を与える意匠性に優れた材料である。そのなかでも、木材の単板を積層してなる合板は、小物、家具、建築材料など小型から大型の木質部材として幅広く用いられている。
【0003】
合板は通常、木製単板を積層し、接着剤で接着することによって製造する。このような製法で得られる合板は「やわらかい」印象を有するものの実際には固く、変形しないのが通常である。そのため、例えば、木製の椅子に長時間座ると体に痛みが生じるといった課題があり、このような状況への対策として座面にクッションを設置する方法などが一般に行われているが、当該クッションによって木材製品の意匠性および軽量性そのものが失われるという別の課題が生じている。
【0004】
一方、木製単板に異種材層を積層することで、合板そのものを面方向に柔軟化しようとする試みがなされている。例えば、特許文献1では、木製単板にエラストマーであるアクリルフォームを積層することで、面方向の変形への追従性を持たせる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが種々検討したところ、特許文献1の方法では荷重分散性が不十分であり、いわゆる「固い」材料となることが判明した。そのため、木材製品の意匠性および軽量性、使用時の柔軟性すなわち荷重分散性を両立した材料がない、という課題が未だ存在している。
【0007】
そこで、本発明は、木材製品としての意匠性に優れ、軽量かつ荷重分散性に優れた柔軟な木質積層体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記背景の下、鋭意検討した結果、特定の層を組み合わせることで前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明者らは、特定の木製単板(A)層と多孔質体(B)層を、粘接着剤(C)層で積層することによって、木材製品としての意匠性に優れ、軽量かつ荷重分散性に優れた柔軟な木材積層体を提供し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]
木製単板(A)層、多孔質体(B)層、および粘接着剤(C)層を有する木材積層体であって、木製単板(A)が、比重0.3以上かつ厚み0.2~3mmの木製単板であり、多孔質体(B)が、比重0.5以下かつ厚み0.2~3mmの弾性体であることを特徴とする、木材積層体。
[2]
少なくとも一方の最表面が木製単板(A)層であることを特徴とする、[1]に記載の木材積層体。
[3]
多孔質体(B)の引張弾性率が1~30MPaであることを特徴とする、[1]または[2]に記載の木材積層体。
[4]
前記木材積層体の比重が0.4以下であることを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載の木材積層体。
[5]
前記木材積層体における木製単板(A)層の総体積(AV)に対する多孔質体(B)層の総体積(BV)の体積比(BV/AV)が、25/100~500/100であることを特徴とする、[1]~[4]のいずれかに記載の木材積層体。
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載の木材積層体の製造方法であって、木製単板(A)、多孔質体(B)、および粘接着剤(C)を積層し、圧力をかけて貼り合わせる工程を含み、前記粘接着剤(C)が、シート状であることを特徴とする、木材積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の木材積層体によれば、木材製品としての意匠性に優れ、軽量かつ荷重分散性に優れた柔軟な木質積層体を提供することができる。
【0011】
本発明の木材積層体が前記の優れた効果を奏する原理について、本発明者らは以下のように推察している。すなわち、木製単板(A)層と、特定の物性を有する多孔質体(B)層を積層することで、面方向に荷重がかかった際に多孔質体(B)層が適度に変形し応力を吸収する。その一方、木製単板(A)層を併用することで、木材としての意匠性を持たせると共に、木製単板(A)層の固さによって木材積層体全体としての形状保持性に寄与する。また、多孔質体(B)の比重が小さいため、木材積層体の軽量性を維持する。以上のように、これら特定の異種材料層の組み合わせが、特異的に面方向への荷重分散性に寄与し、結果として軽量かつ柔軟な木材製品とすることができると推察している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。なお、本明細書において、「~」はその前後に記載された数字を含む数字の範囲を表す。
【0013】
本発明の一実施形態にかかる木材積層体(以下、「本木材積層体」という場合がある。)は、木製単板(A)層、多孔質体(B)層、および粘接着剤(C)層を有する木材積層体であって、木製単板(A)が、比重0.3以上かつ厚み0.2~3mmの木製単板であり、多孔質体(B)が、比重0.5以下かつ厚み0.2~3mmの弾性体であることを特徴とする。
【0014】
<木製単板(A)層>
木製単板(A)層は、木製単板(A)から構成される層である。木製単板(A)は、比重0.3以上かつ厚み0.2~3mmであることが必要である。
【0015】
木製単板(A)の比重は、本木材積層体の強度を確保し、形状保持性を向上させる観点から、0.2以上が好ましく、より好ましくは0.3以上である。他方、木製単板(A)の比重は、柔軟性すなわち荷重分散性を向上させると共に軽量化を図る観点から、0.9以下が好ましく、より好ましくは0.8以下である。木製単板(A)の比重は、後記実施例に記載の方法により求めることができる。
【0016】
木製単板(A)の厚みは、柔軟性すなわち荷重分散性を向上させる観点から、0.2~2.8mmが好ましく、より好ましくは0.4~2.4mm、さらにより好ましくは0.5~2.0mmであり、特に好ましくは0.6~1.5mmである。
【0017】
木製単板(A)を構成する木材としては、以下に限定されないが、例えば、スギ、ウェスタンヘムロック、ラジアタパイン、キハダ、シルバーファー、タイヒ、ベイヒ、ホオ、スプルース、ホワイトウッド、エゾマツ、サワグルミ、セコイア、ポプラ、ホワイトパイン、ヒメコマツ、コウヤマキ、ヒノキ、イエローパイン、ウイロー、オベチェ、クロマツ、アカマツ、ファルカタ、レッドシダー、ネズコ、サワラ、ヒバ、モミなどが挙げられる。
【0018】
木製単板(A)は、前記の材料などを用い、公知の方法で製造された木製単板を用いることができる。公知の方法で製造された木製単板としては、例えば、特定の原木や当該原木を所定の大きさに製材したフリッチから切削装置を用いて製造された木製単板が挙げられる。より具体的には、特定の原木を桂剥きして得られるロータリー単板、特定の原木を平角材などにしてスライサーで平削して得られるスライス単板などが挙げられる。
また、木製単板(A)は、木製単板に加工を施したものを用いてもよい。木製単板の前記加工方法としては、以下に限定されないが、例えば、樹脂成分などを木製単板に含浸させる含浸加工などが挙げられる。なお、木製単板に加工を施した場合、その比重は、加工後の比重の値を用いる。
【0019】
<多孔質体(B)層>
多孔質体(B)層は、多孔質体(B)から構成される層である。多孔質体(B)は、比重0.5以下かつ厚み0.2~3mmの弾性体であることが必要である。
【0020】
多孔質体(B)の比重は、柔軟性すなわち荷重分散性を向上させると共に軽量化を図る観点から、0.4以下が好ましく、より好ましくは0.35以下である。また、多孔質体(B)の比重は、本木材積層体の強度を確保し、形状保持性を向上させる観点から、0.05以上が好ましく、より好ましくは0.1以上である。多孔質体(B)の比重は、後記実施例に記載の方法により求めることができる。
【0021】
多孔質体(B)の厚みは、柔軟性すなわち荷重分散性を向上させる観点から、0.3~2.8mmが好ましく、より好ましくは0.4~2.4mm、さらにより好ましくは0.5~2.0mmであり、特に好ましくは0.6~1.5mmである。
【0022】
多孔質体(B)の引張弾性率は、荷重応力を吸収し、荷重分散性を向上させる観点から、1~30MPaが好ましく、より好ましくは1.5~29MPa、さらにより好ましくは2~28MPaである。多孔質体(B)の引張弾性率は、後記の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0023】
なお、多孔質体(B)の引張弾性率は、上記範囲内において任意に設定することができ、下記に限定されないが、例えば、10~30MPa、15~30MPa、20~30MPaであってもよく、また、1~15MPa、1~10MPa、1~8MPaであってもよい。
【0024】
多孔質体(B)の好ましい実施形態としては、繊維体、樹脂発泡体、金属、セラミック、ガラスなどから構成される多孔質体が挙げられるが、これらのうち、弾性体かつ軽量であることから繊維体および樹脂発泡体が好ましい。
【0025】
前記繊維体としては、例えば、その表面および内部に空隙を有する繊維の集合体であれば特に限定されず、織布、または、フェルトなどの不織布のいずれも用いられうる。例えば、繊維体としては、動植物繊維、樹脂繊維などの有機繊維、ガラス繊維などの無機繊維、およびこれらの混合物から構成される繊維体が挙げられる。
より具体的には、例えば、綿、羊毛、木毛などの動植物繊維を主成分として含む繊維体;ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミドなどのポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートなどのポリエステル系繊維などの有機繊維を主成分として含む繊維体;ガラス繊維、ガラスウールなどの無機繊維を主成分として含む繊維体;およびこれらの混合物から構成される繊維体が挙げられる。前記繊維体は、種別や製法などに応じて、適宜バインダー(接合剤)を含んでいてもよい。なお、「主成分」とは、繊維体の全量に対して70質量%以上を占める成分を意味するものであり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
【0026】
前記繊維体のなかでも、柔軟性すなわち荷重分散性を向上させる観点から、有機繊維を主成分として含む繊維体が好ましく、より好ましくはポリエステル系繊維を主成分として含む繊維体であり、特に好ましくはポリエチレンテレフタレートを主成分として含む繊維体である。
【0027】
前記繊維体は、公知の方法により製造されるものであり、例えば、フェルトなどの不織布は、ニードルパンチ法、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、水流交絡法などの各種の方法を用いて適宜製造することができる。
【0028】
前記樹脂発泡体としては、例えば、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体などのポリオレフィン発泡体;ポリスチレン発泡体;ポリアミド発泡体;ポリエチレンテレフタレート(PET)発泡体、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル発泡体;(メタ)アクリル発泡体;フェノール発泡体;ポリ塩化ビニル発泡体;ポリイミド発泡体;シリコーン樹脂発泡体;尿素樹脂発泡体;メラミン樹脂発泡体;エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)発泡体;スチレンブタジエンゴム(SBR)発泡体;ニトリルブタジエンゴム(NBR)発泡体;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)発泡体;エチレン-アクリル酸共重合体発泡体;エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)発泡体;などの樹脂発泡体が用いられる。
なお、前記のように「ポリウレタン発泡体」などと表記した場合、「ポリウレタンを主成分として含有するポリウレタン発泡体」を含意するものであり、「主成分」とは、樹脂発泡体の全量に対して70質量%以上を占める成分を意味するものであり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。ポリウレタン発泡体以外の他の発泡体についても同様の意味である。
【0029】
前記樹脂発泡体のなかでも、柔軟性すなわち荷重分散性を向上させる観点から、ポリオレフィン発泡体が好ましく、より好ましくはポリエチレン発泡体である。
【0030】
前記樹脂発泡体は、常法に従い、各種の発泡剤を混合して製造されるものであり、例えば、常圧発泡法、押出発泡法、プレス発泡法などの各種の方法を用いて適宜製造することができる。
【0031】
また、前記繊維体や樹脂発泡体などの多孔質体(B)は、樹脂成分など各種成分を含浸させる含浸加工を施したものであってもよい。かかる加工を施した場合、その比重や引張弾性率は、加工後の比重や引張弾性率の値を用いる。
【0032】
<粘接着剤(C)層>
粘接着剤(C)層は粘接着剤(C)で構成される層であり、粘接着剤(C)としては、木製単板(A)に対して良好な粘接着性を有するものであれば特に限定されず、粘着剤(C1)、接着剤(C2)、およびこれらの混合物を用いることができる。
【0033】
粘着剤(C1)としては、例えば、アクリル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。
接着剤(C2)としては、例えば、ポリオレフィン系接着剤、エチレン酢酸ビニル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤などの熱可塑性接着剤(ホットメルト接着剤)、アクリルウレタン系接着剤、変性シリコーン系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ユリア系接着剤、フェノール系接着剤、エポキシ系接着剤などの熱硬化性接着剤などが挙げられる。
これらのなかでも、木材積層体自体に柔軟性を付与する観点からは、粘着剤(C1)が好ましい。粘着剤(C1)のなかでも、木製単板(A)との密着性をより向上させる観点から、アクリル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤が好ましく、より好ましくはアクリル系粘着剤である。
【0034】
アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)をベースポリマー(アクリル系粘着剤全体の50質量%以上)とするアクリル系粘着剤などが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」とはアクリルあるいはメタクリルを意味する。
【0035】
粘着剤(C1)のガラス転移温度(Tg)は20℃以下が好ましく、さらに好ましくは10℃以下、特に好ましくは0℃以下である。また、粘着剤のガラス転移温度(Tg)は-100℃以上が好ましく、さらに好ましくは-70℃以上、特に好ましくは-50℃以上である。これらの範囲内であれば、前記密着性がさらに向上する傾向がある。
【0036】
なお、前記ガラス転移温度は、例えばFoxの式より算出されるものである。例えば、アクリル系粘着剤のガラス転移温度は、下記のとおり算出される。
【数1】
【0037】
すなわち、ガラス転移温度(Tg)は、粘着剤を構成するそれぞれの単量体をホモポリマーとした際のガラス転移温度および重量分率を前記Foxの式に当てはめて算出した値である。なお、粘着剤(C1)を構成する単量体のホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものであり、JISK7121-1987や、JISK6240に準拠した方法で測定することができる。
【0038】
粘接着剤(C)層は、木製単板(A)および多孔質体(B)との密着性を損なわない範囲において、粘接着剤(C)以外の添加剤を含むものであってもよい。前記添加剤としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤などが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を用いてもよい。
【0039】
粘接着剤(C)の形態は、ペレット状、粉末状、シート状などが挙げられるが、作業性の観点、および、本発明の効果を顕著に奏する観点から、シート状であることが好ましい。
【0040】
前記シート状の粘接着剤(C)としては、基材の有無は問わないが、基材の両面に粘接着剤が塗布されたものが好ましい。前記基材としては、例えば、不織布、合成樹脂フィルム、発泡体などが挙げられる。具体的には、ポリエステル製基材、不織布、ポリエチレン製基材、紙製基材などが挙げられる。
【0041】
粘接着剤(C)層の厚みは、木材積層体の種類および形状などに応じ種々選択されるが、通常10~400μmであり、20~300μmが好ましく、より好ましくは30~250μm、特に好ましくは40~180μmである。これらの範囲を下回ると、粘接着剤(C)層と、木製単板(A)層および多孔質体(B)層との密着性が低下する傾向がある。一方、これらの範囲を上回ると木材積層体の強度が低下する傾向がある。
【0042】
<その他の層>
本木材積層体は、本発明の効果を損なわない範囲において、木製単板(A)層、多孔質体(B)層および粘接着剤(C)層以外に、その他の層を含んでいてもよい。その他の層としては、例えば、比重0.3未満の木質材料からなる層や、比重0.5を超える多孔質体などが挙げられる。また、その他の層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ナイロン610(PA610)、ナイロン6T(PA6T)、ポリフェニレンスルフィド、エラストマー、ポリスチレンなどの樹脂;鉄、ステンレス、銅、アルミなどの金属;CFRPなどの繊維強化プラスチックなどを単独でもしくは2種以上併せてなる材料により構成された層とすることもできる。
【0043】
本木材積層体は、前記その他の層を含んでいてもよいが、本発明の効果を顕著に奏する観点からは、本木材積層体において、前記その他の層を含まないことが好ましい。但し、本木材積層体において、任意の目的によって、前記その他の層を含む場合には、本木材積層体の総体積(WV)に対するその他の層の総体積(EV)の体積比(EV/WV)は、例えば、10/100未満が好ましく、より好ましくは5/100未満であり、特に好ましくは2/100未満である。
【0044】
<本木材積層体の製造方法>
本木材積層体は、木製単板(A)、多孔質体(B)、および粘接着剤(C)を積層し、圧力をかけて貼り合わせる工程を含む製造方法により製造される。具体的には、本木材積層体は、下記に限定されないが、木製単板(A)と多孔質体(B)の少なくとも一方に粘接着剤(C)を塗布するか、または両層間((A)と(B)の間)にシート状の粘接着剤(C)を配置して、これらを加圧する工程を経て製造することができる。
【0045】
前記加圧する工程における圧力は、通常0.01~10MPaであり、0.1~5MPaが好ましく、0.2~2MPaが特に好ましい。これらの範囲を上回っても下回っても、目的とする木材積層体の形状を十分に担保できない傾向がある。
【0046】
また、本木材積層体の製造方法としては、粘接着剤(C)の種類や目的とする木材積層体の形状に応じて、加圧と共に加熱を行う工程を備えていてもよい。かかる工程における加熱温度は、60~150℃が好ましく、80~140℃がさらに好ましく、90~130℃が特に好ましい。なお、加熱方法としては、例えば、プレス設備からの伝熱で加熱する方法、熱風で加熱する方法、電磁波で加熱する方法など、一般に合板を製造する際に加熱する公知の手法を用いることができる。
【0047】
本木材積層体の製造方法において、木製単板(A)層と多孔質体(B)層の間に粘接着剤(C)層を配置する方法としては、例えば、シート状の粘接着剤(C)を木製単板(A)および多孔質体(B)の間に配置させる方法;粘接着剤(C)を溶液化して木製単板(A)および/または多孔質体(B)に塗工した後に貼り合わせる方法;粒子状の粘接着剤(C)を木製単板(A)および多孔質体(B)の間に配置し加熱しながら溶融させる方法などが挙げられる。これらのなかでも、より簡便に本木材積層体を製造できる観点から、シート状の粘接着剤(C)を木製単板(A)と多孔質体(B)との間に配置させる方法が好ましい。
【0048】
<木材積層体>
本木材積層体は、木製単板(A)層、多孔質体(B)層、および粘接着剤(C)層を各々少なくとも1層有する多層構成であればよく、その用途などに応じて、任意の層構成を採用し得る。
【0049】
本木材積層体の形状や厚みは、その用途などによって種々選択される。本木材積層体の厚みとしては、例えば、0.5~6.0cmが好ましく、0.7~5.0cmがさらに好ましく、0.8~4.0cmが特に好ましい。この範囲内であることによって、軽量性と柔軟性すなわち荷重分散性とを両立させやすい傾向にある。
【0050】
本木材積層体における木製単板(A)層の層数は、木材積層体の厚みおよび形状に応じ種々選択されるが、一例としては、1~20層、3~18層、5~15層などが挙げられる。この範囲内であることによって、軽量性と柔軟性すなわち荷重分散性とを両立させやすい傾向にある。木材積層体に含まれる複数の木製単板(A)層は、その種類および形状(厚みを含む)は、同じでも異なっていてもよい。
【0051】
本木材積層体における多孔質体(B)層の層数は、木材積層体の厚みおよび形状に応じ種々選択されるが、一例としては、1~20層、3~18層、5~15層などが挙げられる。この範囲内であることによって、軽量性と柔軟性すなわち荷重分散性とを両立させやすい傾向にある。木材積層体に含まれる複数の多孔質体(B)層は、その種類および形状(厚みを含む)は、同じでも異なっていてもよい。
【0052】
本木材積層体における粘接着剤(C)層の層数は、木製単板(A)層、多孔質体(B)層、その他の層の数に応じて設定される。木材積層体に含まれる複数の粘接着剤(C)層は、その種類および形状(厚みを含む)は、同じでも異なっていてもよい。
【0053】
本木材積層体としては、軽量かつ荷重分散性に優れた柔軟性を高める観点から、本木材積層体における木製単板(A)層の総体積(AV)に対する多孔質体(B)層の総体積(BV)の体積比(BV/AV)が、25/100~500/100であることが好ましい。本発明の効果を顕著に奏する観点からは、前記体積比(BV/AV)は、50/100以上が好ましく、70/100以上がより好ましい。他方、前記体積比(BV/AV)は、300/100以下が好ましく、200/100以下がより好ましい。
【0054】
本木材積層体としては、軽量かつ荷重分散性に優れた柔軟性を高める観点から、本木材積層体(全層)の総体積(WV)に対する、前記木製単板(A)層および前記多孔質体(B)層の総体積(AV+BV)の体積比((AV+BV)/WV)が、80/100以上であることが好ましい。また、例えば、前記体積比((AV+BV)/WV)は、90/100以上、95/100以上、98/100以上であってもよい。
【0055】
本木材積層体の層構成としては、例えば、2以上の木製単板(A)層を有する木材積層体においては、木製単板(A)同士の繊維方向を平行に配置して積層されていることが好ましい(平行積層)。
【0056】
本木材積層体は、軽量性を向上させる観点から、比重が0.4以下であることが好ましく、より好ましくは0.38以下、さらにより好ましくは0.35以下である。また、本木材積層体の比重は、形状保持性を維持する観点から、0.25以上であることが好ましく、0.30以上であることが特に好ましい。なお、本木材積層体の比重は、後記実施例に記載の方法により測定することができる。
【0057】
本木材積層体は、後記の実施例に記載の方法によって測定される曲げたわみ時の応力(15mm)が、例えば、5.0N未満であり、4.5N以下が好ましく、より好ましくは4.0N以下である。曲げたわみ時の応力が上限値以下であることで、柔軟性を高めることができる傾向にある。
【0058】
本木材積層体は、後記の実施例に記載の方法によって測定される荷重分散率が、例えば、40%以上であり、45%以上が好ましく、より好ましくは50%以上である。荷重分散率が下限値以上であることで、柔軟性を高めることができる傾向にある。
【0059】
本木材積層体は、後記の実施例に記載の方法によって測定される反発弾性が、例えば、25%以上であり、35%以上が好ましく、より好ましくは40%以上である。反発弾性が下限値以上であることで、弾性強度を高めることができる傾向にある。
【0060】
本木材積層体の層構成の具体例としては、木製単板(A)層を「A1、A2、A3・・・」、多孔質体(B)層を「B1、B2、B3・・・」、粘接着剤(C)層を「C1、C2、C3・・・」、その他の層を「D1、D2、D3・・・」と表記した場合、以下に限定されないが、例えば、「A1/C1/B1」、「A1/C1/B1/C2/A2」、「A1/C1/B1/C2/A2/C3/B2/C4/A3/C5/B3」、「A1/C1/B1/C2/A2/C3/B2/C4/A3/C5/B3/C6/A4」、「D1/C1/A1/C2/B1/C3/A2/C4/A3/C5/B2/C6/A4/C7/D2」など任意の層構成を採用し得る。これらのなかでも、本木材積層体の少なくとも一方または両方の最表面が木製単板(A)層であることが好ましい。
【0061】
また、本木材積層体において、本木材積層体の多孔質体(B)層および粘接着剤(C)層として、例えば、粘接着剤(C)層を有する多孔質体(B+C)を用いることもできる。具体的には、例えば、多孔質体(B)の両面に粘接着剤(C)層を有する三層シート状の多孔質体(B+C)を用いることができる。かかるシート状の多孔質体(B+C)を用いて本木材積層体の製造方法としては、シート状の多孔質体(B+C)を木製単板(A)同士の間に配置させる方法により、本木材積層体を得ることができる。
【0062】
なお、粘接着剤(C)層を有する多孔質体(B+C)のうち、粘着剤(C1)層を有する多孔質体(B+C)については、粘着剤(C1)層は十分に薄く、十分に柔軟であるため、粘着剤(C1)層を有する多孔質体(B+C)として測定した「厚み」、「比重」、および「引張弾性率」は、多孔質体(B)の「厚み」、「比重」、および「引張弾性率」と見做すことができる。言い換えると、本発明における「多孔質体(B)が、比重0.5以下かつ厚み0.2~3mmの弾性体である」とは、「粘着剤(C1)層を有する多孔質体(B+C)が、比重0.5以下かつ厚み0.2~3mmの弾性体である」を含意するものである。また、本発明における「多孔質体(B)の引張弾性率が1~30MPa」とは、「粘着剤(C1)層を有する多孔質体(B+C)の引張弾性率が1~30MPa」を含意するものである。
【0063】
すなわち、本木材積層体は、木製単板(A)層、粘着剤(C1)層を有する多孔質体(B+C)層をする木材積層体であって、木製単板(A)が、比重0.3以上かつ厚み0.2~3mmの木製単板であり、粘着剤(C1)層を有する多孔質体(B+C)が、比重0.5以下かつ厚み0.2~3mmの弾性体である木材積層体を含意するものである。
また、本木材積層体は、木製単板(A)層、粘着剤(C1)層を有する多孔質体(B+C)層をする木材積層体であって、木製単板(A)が、比重0.3以上かつ厚み0.2~3mmの木製単板であり、粘着剤(C1)層を有する多孔質体(B+C)が、比重0.5以下かつ厚み0.2~3mmの弾性体であって、引張弾性率が1~30MPaである木材積層体を含意するものである。
【0064】
<用途>
本木材積層体は、文具、小物、玩具、家具、建材、自動車部材などの木質部材ないし木製製品に好適に用いられる。また、本木材積層体は、バネ変形性を有していることから、繰り返し利用も可能である点においても有用である。
【実施例0065】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
まず、下記の材料を準備した。
・木製単板(A):スギ単板(比重0.38、厚み1mm)
・多孔質体(B):サンフェルト社製のポリエステルフェルト(比重0.15、引張弾性率26.4MPa、厚み1mm)
・粘着剤層を両面に有する多孔質体(B+C):寺岡製作所社製の両面テープ,No.7811(ポリエチレン発泡体の両面にアクリル系粘着剤層を有する両面テープ:比重0.25、引張弾性率3.23MPa、厚み1.2mm)
・粘着剤層を両面に有する多孔質体(B+C’):3M社製の両面テープ,VHB,Y-4950(アクリル発泡体の両面にアクリル系粘着剤層を有する両面テープ:比重0.71、引張弾性率0.91MPa、厚み1.14mm)
・粘着剤(C1):Nittо社製の両面テープ,No.5000NS(アクリル系粘着剤、厚み0.16mm)
・接着剤(C2):フランクリン社製の変性酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤
【0067】
なお、前記比重および引張弾性率は下記の方法により測定した。
【0068】
<比重測定試験>
木製単板(A)、多孔質体(B)、粘着剤層を両面に有する多孔質体(B+C、B+C’)から得た試験体(縦15mm×横50mm)を用いて、20℃、65%RHの恒温恒湿環境において恒量に達した状態での気乾重量(g)を、幾何形状の測定から算出した体積(cm3)で除すことで求めた(g/cm3)。
【0069】
<引張弾性率測定試験>
多孔質体(B)、粘着剤層を両面に有する多孔質体(B+C、B+C’)の引張弾性率を以下のように測定した。
多孔質体を裁断して幅15mm×長さ50mmの短冊形状の試験体を作製し、温度23℃±2℃、相対湿度50%±10%の雰囲気下、島津製作所社製の万能試験機AGS-Xを用いて、チャック間距離50mm、5mm/minの条件にて引張試験を実施し、引張弾性率(MPa)を測定した。
【0070】
<実施例1>
木製単板(A)、多孔質体(B)、粘着剤(C1)を用いて、木製単板(A)が表裏の両面で最外層になる下記の層構成とし、圧締圧力0.5MPa、圧締時間30秒間にて冷圧(常温)して、厚み8.5mmの木材積層体を得た。なお、木製単板(A)は平行積層である。
[層構成] A/C1/B/C1/A/C1/B/C1/A/C1/B/C1/A
【0071】
<実施例2>
木製単板(A)、粘着剤層を両面に有する多孔質体(B+C)を用いて、木製単板(A)と多孔質体(B+C)を交互に配置し、木製単板(A)が表裏の両面で最外層になる下記の層構成とし、圧締圧力0.5MPa、圧締時間30秒間にて冷圧(常温)して、厚み7.2mmの木材積層体を得た。なお、木製単板(A)は平行積層である。
[層構成] A/B+C/A/B+C/A/B+C/A
【0072】
<比較例1>
木製単板(A)、接着剤(C2)を用いて、木製単板(A)が表裏の両面で最外層になる下記の層構成とし、圧締圧力0.5MPa、圧締時間6時間にて冷圧(常温)して、厚み7.2mmの木材積層体を得た。なお、接着剤(C2)の塗布量は150g/m2であり、木製単板(A)は平行積層である。
[層構成] A/C2/A/C2/A/C2/A/C2/A/C2/A/C2/A
【0073】
<比較例2>
木製単板(A)、粘着剤層を両面に有する多孔質体(B+C’)を用いて、木製単板(A)と多孔質体(B+C’)を交互に配置し、木製単板(A)が表裏の両面で最外層になる下記の層構成とし、圧締圧力0.5MPa、圧締時間30秒間にて冷圧(常温)して、厚み7.3mmの木材積層体を得た。なお、木製単板(A)は平行積層である。
[層構成] A/B+C’/A/B+C’/A/B+C’/A
【0074】
得られた積層体につき、下記の各試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0075】
<荷重たわみ性試験>
木材積層体の荷重たわみ試験については、以下のように試験した。
木材積層体から厚み8mm×幅12mm×長さ195mmの試験体を作製し、支点間距離180mm、荷重速度3mm/minで三点曲げ試験を実施し、15mm曲げたわみ時の応力(N)を求めた。試験片の長辺は木目方向と平行とした。なお、試験の温湿度環境は、20℃、65%RHである。
(評価基準)
〇:5.0N未満
×:5.0N以上
【0076】
<荷重分散性試験(荷重分散率)>
木材積層体の荷重分散性については、以下のように試験した。
木材積層体から幅100mm×長さ100mm×厚み28mmの試験体を作製し、試験体の上面を分解能22mm角のグリッドを有する住友理工社製 荷重測定センサーSRソフトビジョンで覆い、曲率半径R300のスタイロフォーム(登録商標)製の球面で加圧した。球面の最下点直下にあるグリッドがおよそ180mmHgまで加圧した時点での、グリッド周囲の総荷重を計測し、総荷重に占める最下点直下のグリッドの荷重の割合を荷重分散率(%)として得た。計算式は下記のとおりである。なお、試験の温湿度環境は、20℃、65%RHである。
荷重分散率(%)=最下点直下のグリッドの荷重/総荷重×100
(評価基準)
〇:40%以上
×:40%未満
【0077】
<反発弾性試験>
木材積層体の反発弾性については、以下のように試験した。
木材積層体から幅100mm×長さ100mm×厚み8mmの試験体を作製し、内径30mmの垂直な透明の管の内側に、JIS B1501で規定する直径16mmの鋼球(等級G40、質量16.8g)を規定の高さに保持し、試験体中央部に鋼球を回転させずに落下させた。鋼球の初期落下高さは、試験体表面から鋼球最下部で500mmとする。鋼球を自由落下させ、跳ね返った高さをキーエンス社製 ハイスピードカメラVW-6000にて読み取り、跳ね返った最高の高さと初期落下高さの比から反発弾性(%)を求めた。また、試験後の落球痕の有無を確認した。なお、試験の温湿度環境は、20℃、65%RHである。
(評価基準)
〇:25%以上
×:25%未満
【0078】
<積層体の比重測定試験>
木材積層体から幅100mm×長さ100mmの試験体を作製し、20℃、65%RHの恒温恒湿環境において恒量に達した状態での気乾重量(g)を、幾何形状の測定から算出した体積(cm3)で除すことで求めた(g/cm3)。
【0079】
【0080】
以上の結果から、比較例1、2に対し、実施例1、2では15mm曲げたわみ時の応力が小さく、荷重分散率が明確に増加していることから、面方向に局所的に負荷された場合に、より小さな荷重でも変形分散して広い面積で荷重負担することが可能な柔らかい材料である、と言える。
これは木製単板(A)層と多孔質体(B)層が適切に組み合わされ、木材積層体がめり込み変形や、ずり変形がより容易に生じ、広い範囲で変形が生じたためである。特に、比較例2と実施例1、2を比較すると、同様に多孔質体を積層しているにも関わらず反発弾性に大きな差が出ていることから、本発明の多孔質体(B)層の物性が面方向の柔軟性に大きく影響していることが明白である。
【0081】
また、実施例1、2は、鋼球の落下に伴って木製単板(A)が曲げ変形・復元する挙動を助け、木製単板(A)表面に落球痕が目立たず、バネ変形していることから、繰り返し利用も可能である。一方で、比較例1、2は落球痕が目立ち、木製単板(A)の塑性変形や粘接着剤層の粘塑性挙動に衝撃エネルギーが消費されたことが分かり、下記に示す各用途において、耐久性に課題が生じるものである。
本発明の木材積層体は、小物、家具、建築材料向けのベニヤ合板、コンパネ、構造用合板など、幅広い用途に用いることができる。また、バネ変形していることから、繰り返し利用も可能である。