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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141343
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/68 20230101AFI20241003BHJP
【FI】
H04N25/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052934
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】藤島 悠揮
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CX22
5C024GX02
5C024GY31
5C024HX30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】画素の欠陥を精度よく検出する撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置は、第1露光量(絞り値(F値)「F16」)において光電変換部で変換された電荷に基づく第1信号(1枚目の画像の画素の出力)と、第2露光量(絞り値「F8」)において前記光電変換部で変換された電荷に基づく第2信号(2枚目の画像の画素の出力)とを取得する。撮像装置は、条件1(1枚目、2枚目、または両方の画像の対象の画素の出力が第1閾値以上)、かつ、条件2(2枚目の出力と1枚目の出力との比が第2閾値よりも十分に小さい)を満たす場合に、対象の画素は欠陥を有すると判定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を電荷に変換する光電変換部と、
第1露光量において前記光電変換部で変換された電荷に基づく第1信号と、第2露光量において前記光電変換部で変換された電荷に基づく第2信号とに基づいて、前記光電変換部の欠陥を検出する検出部と、
を備える撮像装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記第1信号の値及び前記第2信号の値の少なくとも一方が第1閾値以上であり、且つ前記第1信号の値と前記第2信号の値との相対関係が予め規定された条件を満たす場合、前記光電変換部が欠陥していると判定する、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記規定された条件は、
予め求められた条件であって、欠陥のない前記光電変換部で変換された電荷に基づく第1信号の値と前記第2信号の値との露光量の比を否定する条件である、
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記規定された条件は、
予め求められた条件であって、欠陥のないフローティングディフュージョンに蓄積された電荷に基づく第1信号の値と前記第2信号の値との露光量の比を否定する条件である、
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1露光量は、所定の露光時間および所定の感度において第1の絞り値で得られた露光量であり、
前記第2露光量は、前記所定の露光時間および前記所定の感度において第2の絞り値で得られた露光量である、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第1露光量は、所定の絞り値および所定の感度において第1の露光時間で得られた露光量であり、
前記第2露光量は、前記所定の絞り値および前記所定の感度において第2の露光時間で得られた露光量である、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記検出部は、
画素領域が複数の領域に分割され複数の分割領域であって、前記分割領域ごとに前記分割領域に含まれる画素の出力値の平均値を求め、求めたすべての平均値が所定値以下である場合、前記第1信号と、前記第2信号とに基づいて、前記光電変換部の欠陥とフローティングディフュージョンの欠陥との一方または双方を検出する処理を実行し、
前記求めたすべての平均値が所定値以下である場合、前記第1信号と、前記第2信号とに基づいて、前記光電変換部の欠陥と前記フローティングディフュージョンの欠陥との一方または双方を検出する処理を実行しない、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
撮像素子の前記光電変換部の位置を第1位置から第2位置に移動させる移動部を更に備え、
前記検出部は、前記光電変換部の欠陥とフローティングディフュージョンの欠陥との一方または双方を検出する処理を実行する前または実行した後に、前記第1位置において前記光電変換部で変換された電荷に基づく信号と、前記第2位置において前記光電変換部で変換された電荷に基づく信号とに基づいて、前記光電変換部の欠陥と前記フローティングディフュージョンの欠陥との一方または双方を検出する、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の画素を有する撮像素子を備える撮像装置が知られている(例えば、特許文献1)。従来から、複数の画素のうち一部の画素の欠陥が問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-181221号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様は、光を電荷に変換する光電変換部と、第1露光量において前記光電変換部で変換された電荷に基づく第1信号と、第2露光量において前記光電変換部で変換された電荷に基づく第2信号とに基づいて、前記光電変換部の欠陥を検出する検出部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】第1実施形態に係る撮像装置1の概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る撮像素子30の撮像面31を模式的に示す図である。
図3】第1実施形態に係る撮像素子30の一部の構成例を示す図である。
図4】第1実施形態に係る検出処理の概要について説明するための図である。
図5】第1実施形態に係る検出処理について説明するための図である。
図6】第1実施形態に係る検証結果について説明するための図である。
図7】第1実施形態に係る欠陥画素の出力と通常画素の出力との比とを示す図である。
図8】第1実施形態に係る制御部70により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】第1実施形態に係る出力レベル点検について説明するための図である。
図10】第2実施形態に係る検出処理について説明するための図である。
図11】第2実施形態に係る制御部70により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
<第1実施形態>
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係る撮像素子について説明する。図1は、第1実施形態に係る撮像装置1の概略構成を示す図である。撮像装置1は、例えば、デジタルカメラである。撮像装置1は、例えば、撮像光学系10と、絞り機構20と、撮像素子30と、TG(タイミングジェネレータ)40と、駆動部42と、角速度センサ44と、画像処理部60と、制御部70と、操作部90と、電子ビューファインダ92と、表示部94と、記録インターフェース96と、ストロボ98とを備える。
【0007】
撮像光学系10は、複数のレンズにより構成され、撮像素子30の撮像面に被写体像を結像させる。複数のレンズは、フォーカス調整を行う焦点調節レンズ(フォーカスレンズ)が含まれる。
【0008】
絞り機構20は、撮像素子30に入射する光量を調整する。この調整は、制御部70の指示に応じて絞り駆動部(不図示)により行われる。
【0009】
撮像素子30は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)や等のイメージセンサである。本実施形態では、撮像素子30はCMOSのイメージセンサである。撮像素子30は、行と列とに配列された複数の画素(図2参照)を有する。画素は、入射した光を電荷に変換した結果に基づいて画素信号を生成する。撮像素子30は、画素信号を画像処理部60に出力する。撮像素子30は、TG40によって行(ライン)ごとに設定された露光時間により光電変換するように制御される。
【0010】
図2は、撮像素子30の撮像面31を模式的に示す図である。撮像面31の一部を拡大した拡大領域31aには、撮像素子30が二次元上(行方向および列方向)に多数配列されている。撮像素子30の複数の画素は、例えば、それぞれR(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルタを有する。撮像素子30の撮像面31には、各色フィルタを備えた画素が、いわゆるベイヤー配列に従って配列されている。
【0011】
図3は、撮像素子30の一部の構成例を示す図である。図3は、撮像素子30に含まれる複数の画素32のうちの一部の画素32と、垂直制御部35と、水平制御部36とを示している。図3では、列方向(垂直方向)および列方向に交差する行方向(水平方向)に配置される複数の画素32うち、列方向に配置された複数の画素列の2つの画素列の一部を示している。撮像素子30には、列方向に並んだ複数の画素の列である画素列に対して、垂直信号線38が設けられている。垂直信号線38に対して不図示の電流源が設けられる。他の画素列の構成も、図3の画素列の構成と同様である。
【0012】
画素32は、光電変換部33や、転送部、フローティングディフュージョン(FD)、リセット部、増幅部、選択部などを有する(光電変換部33以外は不図示である)。光電変換部33は、フォトダイオードPDである。光電変換部33は、入射した光を電荷に変換し、光電変換された電荷を蓄積する。転送トランジスタである転送部は、信号TGにより制御され、光電変換部33で光電変換された電荷をFDに転送する。FDは、FDに転送された電荷を蓄積する。
【0013】
増幅部は、FDに蓄積された電荷による信号を増幅して出力する。リセットトランジスタであるリセット部は、信号RSTにより制御され、FDに蓄積された電荷を排出し、FDの電圧(電位)をリセットする。
【0014】
選択トランジスタである選択部は、信号SELにより制御され、増幅部と垂直信号線38とを電気的に接続または切断する。選択部は、オン状態の場合に、増幅部からの信号を垂直信号線38に出力する。増幅部と選択部とは、光電変換部33により生成された電荷に基づく信号を生成し出力する出力部を構成する。
【0015】
上述のように、FDに転送された電荷に応じた画素信号が、垂直信号線38に出力される。画素32から出力される画素信号は、光電変換部33によって光電変換された電荷に基づいて生成されるアナログ信号である。
【0016】
垂直制御部35は、複数の画素列に対して共通に設けられる。垂直制御部35は、TG40の制御に基づいて、信号TG(TG1、TG2)、信号RST(RST1、RST2)、信号SEL(SEL1、SEL2)を各画素に供給して、各画素の動作を制御する。垂直制御部35は、画素32の各トランジスタのゲートに信号を供給して、トランジスタをオン状態またはオフ状態に制御する。
【0017】
水平制御部36は、アンプ部および信号処理部を含んで構成される。アンプ部は、垂直信号線38ごとに設けられ、垂直信号線38を介して入力される画素信号を所定のゲイン(増幅率)で増幅する。アンプ部は、制御部70によって決定されたISO感度に応じてゲインを決定し、決定したゲインを画素信号に適用する。アンプ部は、増幅した画素信号を信号処理部に出力する。
【0018】
信号処理部は、アナログ/デジタル変換部(AD変換部)を有し、アンプ部から出力された画素信号をデジタル信号に変換する。信号処理部は、画素信号に信号処理を行った後に、処理後の画素信号を画像データとして制御部70に出力する。
【0019】
図1の説明に戻る。TG40は、制御部70の指示に基づいて、撮像素子30に対して、画素信号の蓄積を指示したり、画像信号の読出を指示したりする。
【0020】
TG40は、制御部70からの指示に従い撮像素子30に駆動信号を供給し、供給した駆動信号により駆動タイミングを制御する。TG40は、全画素読み出しモードや、間引き読み出しモードなどを実行可能である。全画素読み出しモードは、撮像素子30の全ラインの画素データを画像データとして読み出すモードである。間引き読み出しモードは、撮像素子30の全ラインのうちの所定のラインの画素を間引いた画素データを画像データとして読み出すモードである。
【0021】
駆動部42と、角速度センサ44と、制御部70のシフト部80とは、手ぶれ補正機能を実現する。駆動部42は、シフト部80の制御に基づいて撮像素子30の位置をシフトさせるアクチュエータである。駆動部42は、撮像装置1の揺れを打ち消すように撮像素子30を移動させる。これにより撮像装置1の揺れが撮像される画像に影響することが抑制される。角速度センサ44は、撮像装置1の揺れや、揺れの方向を検出する。
【0022】
画像処理部60は、例えば、水平制御部36の信号処理部が出力した画像データを不図示の記憶部(RAM)に記憶させる。画像処理部60は、記憶された画像データに基づいて、オートフォーカス制御に関するAF評価値、自動露出制御に関するAE評価値、およびオートホワイトバランス制御に関するAWB評価値を算出する。画像処理部60は、AWB評価値に基づいて、ホワイトバランスの調整を行う。画像処理部60は、AF評価値およびAE評価値を制御部70に提供する。また、画像処理部60は、ベイヤー配列において不足する色の信号を補間する色補間処理や、ガンマ補正や階調調整などの処理を行う。
【0023】
制御部70は、CPU(Central processing unit)によって構成され、撮像装置1による全体の動作を制御する。制御部70は、不図示の記憶部(ROM)に予め記憶されている制御プログラムを実行することにより撮像装置1の各部を制御する。制御部70は、例えば、撮像制御部72と、AE制御部74と、AF制御部76と、調光部78と、シフト部80と、処理部82(検出部)とを備える。
【0024】
撮像制御部72は、例えば、操作部90を介して撮像指示を受け付けた際に、撮像素子30を介して得られる画像データを、撮像された画像として、記録インターフェース96に接続されている記憶媒体に記憶させる。AE制御部74は、AE評価値に基づいて、撮像素子30の感度や露光時間(電荷蓄積時間)、絞り機構20の絞りを制御する。AF制御部76は、AF評価値に基づいて、撮像光学系10のフォーカスレンズを制御する。調光部78は、ストロボ98を制御して調光を行う。
【0025】
シフト部80は、角速度センサ44により検出された撮像装置1の揺れや揺れの方向に基づいて、撮像装置1の揺れを打ち消すような撮像素子30の移動方向と移動量とを算出する。シフト部80は、算出した移動方向と移動量とに基づいて駆動部42を制御する。これにより駆動部42が、撮像素子30を駆動させる。
【0026】
処理部82は、第1露光量において光電変換部33で変換された電荷に基づく第1信号と、第2露光量において光電変換部33で変換された電荷に基づく第2信号とに基づいて、光電変換部33の欠陥とFDの欠陥との一方または双方を検出する。第1露光量とは、例えば、第1の絞り値の時の露光量であり、第2露光量とは、第1の絞り値とは異なる値の時の露光量である。検出処理の詳細については後述する。
【0027】
操作部90は、レリーズボタン、録画ボタン、電源ボタンなど各種の操作ボタンを含む。操作部90は、ユーザによる操作に応じた操作信号を制御部70へ出力する。制御部70は、出力された操作信号に応じた制御を実行する。
【0028】
電子ビューファインダ92は、小型の表示部と接眼部とを有し、ユーザが画像を観察するための観察部である。表示部94は、画像信号に基づく画像や、シャッタ速度、絞り値等の撮影に関する情報、メニュー画面等を表示する。
【0029】
記録インターフェース96は、不揮発性のフラッシュメモリなどの記憶媒体が着脱可能なインターフェースである。記録インターフェース96は、画像データを装着された記憶媒体に記憶させる。ストロボ98は、調光部78の制御に基づいて発光を行う。
【0030】
本実施形態に係る撮像装置1は、機械方式のシャッタ機能(メカシャッタ機構)を有さずに、撮像素子30のリセット走査を行う電子方式のシャッタ機能(電子シャッタ機能)を有している。なお、本実施形態の撮像装置1は、機械方式のシャッタ機能および電子方式のシャッタ機能を有していてもよい。本実施形態では、機械方式のシャッタを動作させて撮像素子30に入射する光を遮断せずに、欠陥画素を検出する検出処理を実行する。「欠陥画素」とは、欠陥が生じている画素である。欠陥画素は、例えば、画素の劣化などにより後発的に欠陥が生じる画素である。以下、検出処理について説明する。
【0031】
[検出処理]
図4は、検出処理の概要について説明するための図である。制御部70は、感度および露光時間は同じ条件で、絞り値(F値)「F16」で撮像した場合の画像の各画素の出力(1枚目の画像の画素の出力)と、絞り値「F8」で撮像した場合の画像の各画素の出力(2枚目の画像の画素の出力)とを取得する。「出力」とは、設定された絞りや電荷蓄積時間で画素に蓄積された電荷量である。制御部70は、これらの出力を用いて条件1および条件2を満たすかを判定する。制御部70は、条件1および条件2を満たす場合、対象の画素は欠陥を有し、条件1または条件2を満たさない場合、対象の画素は欠陥を有さないと判定する。第2条件は、「前記第1の信号の値と第2信号の値との相対関係が予め規定された条件」の一例である。
【0032】
条件1は、1枚目、2枚目、または両方の画像の対象の画素の出力が第1閾値以上であることである。閾値とは、欠陥画素を判定するために設定された第1閾値である。条件2は、2枚目の出力と1枚目の出力との比が第2閾値よりも十分に小さい(または所定程度以上小さい)ことである。第2閾値は、絞り値の差分によって生じる出力差よりも十分に(または所定度合以上)小さい値である。例えば、上記の例では、絞り値が2段のため、第2閾値は「4」よりも十分に小さい値である。また、第2条件は、2枚目の出力と1枚目の出力との比が、基準値以下であることであってもよい。基準値とは、絞り値の差分によって生じる出力差よりも十分に小さい値に基づいて設定された値である。
【0033】
図5は、検出処理について説明するための図である。図5では、暗黒、入射光あり(F値大)、入射光あり(F値小)のときの欠陥画素の出力と通常画素の出力とを示している。暗黒では、通常画素の出力はゼロであり、欠陥画素は欠陥画素成分を含む出力がされる。入射光あり(F値大)では、通常画素にはF値に応じた入射光の成分が出力に含まれ、欠陥画素には欠陥画素成分と入射光の成分とを含む出力がされる。入射光あり(F値小)では、通常画素にはF値に応じた入射光の成分が出力に含まれ、欠陥画素には欠陥画素成分と入射光の成分とを含む出力がされる。
【0034】
例えば、F値を変化させて撮像がされた場合、通常画素であれば、1枚目の画像における出力と2枚目の画像における出力との出力差は、F値の変化に応じた出力差となる。しかしながら、欠陥画素の出力では欠陥画素成分が影響するため、絞り値の段差に応じた出力差が生じない。この考え方に基づいて、条件1、条件2が満たされた画素は、欠陥画素と判定される。
【0035】
[検証結果]
図6は、検証結果について説明するための図である。図6は「F8」で撮像した画素の出力と「F16」で撮像した画素の出力とを示している。識別番号「1」の画素および識別番号「2」の画素は欠陥画素であり、識別番号「3」の画素および識別番号「4」の画素は通常の画素(通常画素)である。なお、識別番号「2」は、飽和し、且つ欠陥している。
【0036】
図7は、欠陥画素の出力と通常画素の出力との比とを示す図である。欠陥画素の出力の比は、「1.2」または「1」であり、2段分の理想の出力の比「4」とは異なる。通常画素の出力の比は、「3.9」または「4.7」であり、2段分の理想の出力の比「4」に近い値となる。また、他の通常画素でも、出力の比は「4」または「4」に近い傾向となる。このように、欠陥画素の出力の比は、「4」と乖離する傾向であることが確認された。
【0037】
[フローチャート]
図8は、制御部70により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。例えば、ユーザが検出処理の実行する指示する操作を行った場合、本処理が開始される。
【0038】
まず、制御部70は、F値を変化させた2枚目の画像を取得する(ステップS100)。2枚の画像を撮像する場合の感度および露光時間(撮像素子30の電子シャッタ速度、電荷蓄積時間)は同じである。次に、制御部70は、出力レベル点検を行う(ステップS102)。
【0039】
図9は、出力レベル点検について説明するための図である。出力レベル点検とは、制御部70が、分割領域(図中、B)に含まれる画素の出力値の平均値を分割領域ごとに求め、分割領域ごとに求めた平均値のそれぞれが所定の閾値以下であるか否かを点検する処理である。閾値以下である場合、出力レベル点検の結果が良好であるとみなされる。分割領域とは、撮像面21を所定の領域ごとに分割した領域である。
【0040】
図8の説明に戻り、制御部70は、出力レベル点検を行った結果が良好であるか否かを判定する(ステップS104)。出力レベル点検の結果が良好でない場合、制御部70は、エラーが発生していると判定し(ステップS106)、処理を終了する。出力レベル点検の結果が良好である場合、制御部70は、画素ごとに欠陥画素の有無の判定を行う(ループ処理を開始する)。ループ処理は、ステップS108からステップS112までの処理である。
【0041】
制御部70は、対象の画素(対象画素)の出力が第1閾値以上であるか否を判定する(ステップS108)。対象画素の出力が第1閾値以上でない場合、対象画素に欠陥は存在しないと推定されるため、ループ処理が終了する。
【0042】
対象画素の出力が第1閾値以上である場合、制御部70は、絞り値を変えた撮像における対象画素の出力の比が、絞り値の差分に応じた出力の比であるか否かを判定する(ステップS110)。絞り値を変えた撮像における出力の比が、絞り値の差分に応じた出力の比でない場合、対象画素に欠陥は存在しないと推定されるため、ループ処理が終了する。絞り値を変えた撮像における出力の比が、絞り値の差分に応じた出力の比である場合、制御部70は、対象画素が欠陥画素であることを、撮像装置1に含まれる記憶部に記憶させる(ステップS112)。これにより、ループ処理が終了する。すべての検出対象の画素に対してループ処理が行われた場合、本フローチャートの処理が終了する。
【0043】
上記の例では、2回の撮像において検出処理が実行されるものとして説明したが、3回以上の撮像において検出処理が実行されてもよい。制御部70は、例えば、絞り値をそれぞれ代えて画素の出力を取得し、第1絞り値における画像の出力と第2絞り値における画像の出力との比を用いて第1の判定を行い、第2絞り値(または第1絞り値)における画像の出力と第3絞り値における画像の出力との比を用いて第2の判定を行い、第1の判定および第2の判定(または一方の判定)が肯定的である場合、対象の画素は欠陥であると判定してもよい。
【0044】
上記の検出処理により、制御部70は、欠陥画素を精度よく検出することができる。例えば、レンズキャップに付け替えなくても、レンズを付けた状態で欠陥画素を精度よく検出することができる。また、仮にレンズキャップを利用した場合であっても、以下の利点がある。例えば、メカシャッタを用いずに欠陥画素の検出を行う場合、レンズキャップを装着した状態で撮像された画素の出力と閾値とを比較して欠陥画素を検出する場合がある。レンズキャップを装着した状態でも、遮光が完全でない場合があり、光漏れによる影響によって画素の出力が大きくなり、この画素が、欠陥画素であるか、欠陥画素でなく入射光によって出力が大きくなった画素であるかの判定が困難である。これに対して、本実施形態では、制御部70は、上述した検出処理を実行することにより、対象の画素が欠陥画素であるか否かを簡易且つ精度よく判定することができる。
【0045】
上記の処理において、制御部70は、欠陥画素を検出した後に撮像を行う場合、欠陥画素から出力される信号を用いず、欠陥画素の周辺の画素から出力された信号を用いて欠陥画素の信号を補完してもよい。
【0046】
また、制御部70は、上記の処理において欠陥画素と判定された画素を、以後、検出処理を行うことなく欠陥画素として扱ってもよい。例えば、制御部70は、検出処理で所定の画素が欠陥画素と判定された場合、次の検出処理では所定の画素に対して欠陥画素であるかの判定は行わずに欠陥画素として扱ってもよい。上記の手法に代えて、制御部70は、検出処理ごとにすべての画素に対して判定を行ってもよい。例えば、制御部70は、検出処理において所定の画素が欠陥画素と判定された後、次の検出処理において所定の画素が欠陥画素であるか否かを判定してもよい。例えば、温度など撮像装置1が利用される状況によって画素の状態が変換するため、検出処理ごとに、前回、欠陥画素と判定された画素に対しても検出処理が行われてもよい。
【0047】
また、上述した処理では、制御部70は、絞り値を変更して欠陥を検出するものとして説明したが、これに代えて(または加えて)、露光時間を変えて対象画素の欠陥を判定してもよい。例えば、制御部70は、所定の絞り値および所定の感度において第1の露光時間で得られた露光量(第1露光量)と、前記所定の絞り値および前記所定の感度において第2の露光時間で得られた露光量(第2露光量)とに基づいて、対象画素の欠陥を判定してもよい。例えば、対象画素の出力が第1所定値以上であり、且つ第1の露光時間における出力と第2の露光量における出力との比が第2所定値以上である場合、対象画素は欠陥であると判定する。
【0048】
以上説明した第1実施形態によれば、撮像装置1は、第1露光量において光電変換部33で変換された電荷に基づく第1信号と、第2露光量において光電変換部33で変換された電荷に基づく第2信号とに基づいて、光電変換部33の欠陥を、簡易且つ精度よく検出することができる。
【0049】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、手ぶれ補正機能を用いて欠陥画素が検出される。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0050】
図10は、第2実施形態の検出処理について説明するための図である。制御部70は、例えば、センサシフト式手ぶれ補正機構を用いて欠陥画素を検出する。時刻Tにおいて、制御部70は、撮像を行う。時刻Tにおける撮像素子30は、第1の位置である。時刻T+1において、制御部70は、撮像素子30を第2の位置に移動させて撮像を行う。第2の位置は、第1の位置の撮像素子30をX方向に移動させた位置である。例えば、画素ピッチ「6μ」であり、撮像素子30が移動可能な範囲「1mm」であるとした場合、最大シフトピクセル数は170pix(1mm/6μm)である。例えば、第2の位置は、第1の位置に対して、撮像素子30をX方向に170pix移動させた位置である。
【0051】
上記のように、撮像を行うと、欠陥画素の物理的な位置は変化せず、時刻Tにおける欠陥画素の出力と、時刻T+1における欠陥画素の出力とは閾値以上となる。制御部70は、時刻Tにおける出力と、時刻T+1における出力とが閾値以上となった画素を欠陥画素と判定する。
【0052】
[フローチャート]
図11は、制御部70により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、制御部70は、手ぶれ補正機構を用いて入射光の位置を変化させた撮像を行う(ステップS200)。このとき、感度、秒時、F値は同じ設定である。
【0053】
次に、制御部70は、出力レベル点検を行う(ステップS202)。制御部70は、出力レベル点検を行った結果が良好であるか否かを判定する(ステップS204)。出力レベル点検の結果が良好でない場合、制御部70は、エラーが発生していると判定し(ステップS206)、処理を終了する。出力レベル点検の結果が良好である場合、制御部70は、画素ごとに欠陥画素の有無の判定を行う(ループ処理を開始する)。ループ処理は、ステップS210およびステップS212の処理である。
【0054】
制御部70は、位置をずらす前と後とで対象画素の出力が閾値以上であるか否を判定する(ステップS208)。対象画素の出力が閾値以上でない場合、対象画素に欠陥は存在しないと推定されるため、ループ処理が終了する。
【0055】
対象画素の出力が閾値以上である場合、制御部70は、対象画素が欠陥画素であることを、撮像装置1に含まれる記憶部に記憶させる(ステップS210)。これにより、ループ処理が終了する。すべての検出対象の画素に対してループ処理が行われた場合、本フローチャートの処理が終了する。
【0056】
上記の例では、撮像素子30の位置は1回ずらされるものとして説明したが、2回以上撮像素子30の位置がずらされて、検出処理が実行されてもよい。制御部70は、例えば、2回撮像素子30の位置をずれし、位置ごとに撮像を行い、撮像ごとの画素の出力を取得する。制御部70は、取得した異なるタイミングの撮像の際の画素の出力がすべて閾値以上である場合(所定数の出力が閾値以上である場合)、対象の画素を欠陥画素と判定してもよい。
【0057】
なお、上述したステップS208の処理は、以下の(1)、(2)または(3)ように変更されてもよいし、ステップS208の処理に加え、以下の(1)、(2)または(3)の条件が満たされた場合に、欠陥画素と判定されてもよい。
【0058】
(1)撮像素子30をずらす前の対象画素の出力とずらした後の対象画素の出力とが近い値に収まっていること(出力が所定の範囲に収まっていること)である。
(2)撮像素子30をずらす前の対象画素の出力とずらした後の対象画素の出力との差がゼロまたはゼロから所定範囲内の値であり、撮像素子30をずらす前の対象画素の出力とずらした後の対象画素の出力とが閾値以上であることである。
(3)対象画素値と、対象画素に隣接する画素または対象画素の周辺の画素とのコントラスト(対比)とが所定値以上乖離していることである。例えば、位置をずらす前の対象画素と対象画素の周辺の画素とのコントラストが所定値以上乖離し、且つ位置をずらした後の対象画素と対象画素の周辺の画素とが所定値以上乖離している場合、対象画素は、欠陥画素と判定されてもよい。
【0059】
なお、上記の例では、センサシフト式の手ぶれ補正機能を用いて、欠陥画素を検出するものとして説明したが、これに代えて光学式手ぶれ補正機能を用いて欠陥画素が検出されてもよい。光学式手ぶれ補正機能は、制御部70が、撮像光学系10に含まれる補正光学群を撮像装置1の揺れを打ち消させるように移動させて手ぶれを補正する機能である。この場合、撮像装置1は、シフト部80の制御に基づいて、撮像装置1の揺れをオフセットするように補正光学群を移動させる駆動部を備える。
【0060】
第2実施形態の撮像装置1は、以下のように表すことができる。
光を電荷に変換する光電変換部を備える撮像素子と、
前記撮像素子の位置を第1位置から第2位置に移動させる移動部(駆動部42)と、
前記第1位置において前記光電変換部で変換された電荷に基づく信号と、前記第2位置において前記光電変換部で変換された電荷に基づく信号とに基づいて、前記光電変換部の欠陥を検出する検出部(処理部82)と、
を備える撮像装置。
【0061】
第2実施形態の撮像装置1は、以下のように表すことができる。
光を電荷に変換する光電変換部を備える撮像素子と、
補正光学群の位置を第1の位置から第2の位置に移動させる駆動部と、
前記第1位置において前記光電変換部で変換された電荷に基づく信号と、前記第2位置において前記光電変換部で変換された電荷に基づく信号とに基づいて、前記光電変換部の欠陥を検出する検出部と、
を備える撮像装置。
【0062】
以上説明した第2実施形態によれば、撮像装置1は、手ぶれ補正機能を用いて、簡易且つ精度よく欠陥画素を検出することができる。
【0063】
なお、撮像装置1には、第1実施形態の検出処理を実行する機能と第2実施形態の検出処理を実行する機能とが搭載されてもよいし、いずれかの機能が搭載されてもよい。第1実施形態の検出処理を実行する機能と第2実施形態の検出処理を実行する機能とが搭載される場合、例えば、第1実施形態の検出処理が実行される前または実行された後に第2実施形態の検出処理が実行されてもよい。例えば、飽和による画素の欠陥が生じている場合、第2実施形態の検出処理を行うことで、より精度よく飽和による画素の欠陥が検出される。
【0064】
例えば、メカシャッタなどを用いて撮像素子30へ入射される光を遮断して画素の欠陥を検出する場合がある。例えば、入射する光を遮断して暗黒状態において出力が基準を満たさない画素が欠陥と判定される。メカシャッタを有さない撮像装置1の場合(電子シャッタ機能を有する撮像装置1の場合)、キャップなどを付けることは煩わしいことがある。また、キャップを付けても、キャップと撮像装置1との隙間から入射する光などの影響により、精度よく欠陥画素が検出されないことがある。これに対して、制御部70が、第1実施形態または第2実施形態で説明したように、検出処理を実行することにより簡易且つ精度よく画素の欠陥を検出することができる。
【0065】
また、例えば、撮像した画像において、周辺の画素の出力よりも特異的に出力が高い画素がある場合、特異的に出力が高い画素を欠陥が存在すると推定して、周辺の画素の出力に基づいて特異的に出力が高い画素の出力を補正する処理を行う場合がある。この場合、例えば、夜空などの風景が撮像されて、その風景中に星が含まれている場合、上記処理では、星が撮像された画素は特異的に出力が高くなるため、欠陥画素と推定されることがある。これに対して、本実施形態では、制御部70が、第1実施形態または第2実施形態で説明したように、風景に含まれる輝度が特異的に高い対象を撮像する場合であっても、対象を撮像する画素を欠陥が存在すると判定することなく、実際に欠陥が存在している画素を精度よく検出することができる。
【0066】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0067】
1…撮像装置、10…撮像光学系、30…撮像素子、33…光電変換部、35…垂直制御部、36…水平制御部、40…TG、42…駆動部、44…角速度センサ、60…画像処理部、70…制御部、82…処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11