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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141458
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】超音波探触子
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H04R17/00 332A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053131
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】長谷 宇利
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019BB19
5D019BB29
5D019FF04
5D019HH03
(57)【要約】
【課題】複数の分割素子部分間のクロストークを抑制できる超音波探触子を提供する。
【解決手段】複数の圧電素子(2)がバッキング材(1)の上にアジマス方向に沿って配列された超音波探触子であって、複数の圧電素子(2)は、それぞれ、信号電極層(2A)と圧電体部(2B)とグランド電極層(2C)が積層された積層体からなり、それぞれの圧電素子(2)は、エレベーション方向に複数の分割素子部分(A)に分断され、それぞれのグランド電極層(2C)上に配置された音響整合層(3)を有し、複数の分割素子部分(A)の間に充填剤(4)が充填され、それぞれの分割素子部分(A)のエレベーション方向の両端における一対の側面上にそれぞれ導電性部材(5)が配置され、導電性部材(5)が、グランド電極層(2C)に接続されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電素子がバッキング材の上にアジマス方向に沿ってアレイ状に配列された超音波探触子であって、
前記複数の圧電素子は、それぞれ、前記バッキング材の表面上に信号電極層と圧電体部とグランド電極層が順次積層された積層体からなり、
それぞれの前記圧電素子は、エレベーション方向に複数の分割素子部分に分断され、
前記複数の分割素子部分に対応し且つそれぞれ前記分割素子部分の前記グランド電極層の上に配置された複数の音響整合層を有し、
前記アジマス方向に配列された前記複数の圧電素子の間およびそれぞれの前記圧電素子における前記複数の分割素子部分の間に充填剤が充填され、
それぞれの前記分割素子部分の前記エレベーション方向の両端における一対の側面上にそれぞれ導電性部材が配置され、
前記導電性部材が、前記分割素子部分の前記グランド電極層に接続されている超音波探触子。
【請求項2】
前記導電性部材は、それぞれの前記分割素子部分の前記グランド電極層の上に配置された前記音響整合層の前記エレベーション方向の側面にまで延びている請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項3】
それぞれの前記分割素子部分の前記側面上に形成された前記導電性部材は、前記エレベーション方向に隣接する前記分割素子部分との間に充填されている前記充填剤の下部に沿って前記隣接する前記分割素子部分にまで延び、前記隣接する前記分割素子部分の前記側面上に配置された前記導電性部材に接続されている請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記導電性部材は、前記充填剤よりも高い硬度を有している請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項5】
前記導電性部材は、ショア硬度80以上の硬度を有する請求項4に記載の超音波探触子。
【請求項6】
前記導電性部材は、前記圧電素子から発せられる超音波の波長より小さい寸法の厚さを有する請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項7】
前記導電性部材は、前記圧電素子から発せられる超音波の波長の1/10より小さい寸法の厚さを有する請求項6に記載の超音波探触子。
【請求項8】
複数の圧電素子がバッキング材の上にアジマス方向に沿ってアレイ状に配列された超音波探触子の製造方法であって、
前記バッキング材の表面上に第1導電層と圧電体層と第2導電層が順次積層された積層体を形成し、
前記積層体の上に音響整合層を形成し、
前記積層体および前記音響整合層をダイシングすることにより前記アジマス方向に沿って配列された前記複数の圧電素子を形成し、
それぞれの前記圧電素子をダイシングすることによりエレベーション方向に複数の分割素子部分に分断し、
それぞれ前記分割素子部分における前記第2導電層からなるグランド電極層に接続されるように、それぞれの前記分割素子部分の前記エレベーション方向の両端における一対の側面上に導電性部材を配置し、
前記アジマス方向に配列された前記複数の圧電素子の間およびそれぞれの前記圧電素子における前記複数の分割素子部分の間に充填剤を充填する
超音波探触子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高感度の超音波探触子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を用いた超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、超音波探触子から被検体に向けて超音波ビームを送信し、被検体からの超音波エコーを超音波探触子で受信し、その受信信号を電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
超音波探触子は、通常、いわゆるアジマス方向においてアレイ状に配列された複数の圧電素子を有している。一般的に、超音波探触子では、複数の圧電素子間においていわゆるクロストークが生じることにより、超音波画像の画質が低下することがあった。そこで、複数の圧電素子間におけるクロストークを低減するために、特許文献1に開示されるように、複数の圧電素子間の溝が絶縁部材により埋められたいわゆる1次元の振動子アレイを有する超音波探触子が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-285695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アジマス方向の他にいわゆるエレベーション方向においても複数の圧電素子が複数の分割素子部分に分断されたいわゆるマトリックス状の振動子アレイが知られている。マトリックス状の振動子アレイでは、複数の圧電素子に共通するグランド電極層が形成されることが多い。マトリックス状の振動子アレイの分割素子部分間のクロストークを抑制するために特許文献1の技術に基づいてグランド電極層ごと圧電素子を複数の分割素子部分に分断すると、孤立したグランド電極層が形成されてしまい、全ての分割素子部分のグランド電極層から配線を引き出すことが困難になるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、マトリックス状の振動子アレイにおいて、全てのグランド電極層から配線を引き出しつつ複数の分割素子部分間のクロストークを抑制できる超音波探触子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の構成によれば、上記目的を達成できる。
〔1〕 複数の圧電素子がバッキング材の上にアジマス方向に沿ってアレイ状に配列された超音波探触子であって、
複数の圧電素子は、それぞれ、バッキング材の表面上に信号電極層と圧電体部とグランド電極層が順次積層された積層体からなり、
それぞれの圧電素子は、エレベーション方向に複数の分割素子部分に分断され、
複数の分割素子部分に対応し且つそれぞれ分割素子部分のグランド電極層の上に配置された複数の音響整合層を有し、
アジマス方向に配列された複数の圧電素子の間およびそれぞれの圧電素子における複数の分割素子部分の間に充填剤が充填され、
それぞれの分割素子部分のエレベーション方向の両端における一対の側面上にそれぞれ導電性部材が配置され、
導電性部材が、分割素子部分のグランド電極層に接続されている超音波探触子。
〔2〕 導電性部材は、それぞれの分割素子部分のグランド電極層の上に配置された音響整合層のエレベーション方向の側面にまで延びている〔1〕に記載の超音波探触子。
〔3〕 それぞれの分割素子部分の側面上に形成された導電性部材は、エレベーション方向に隣接する分割素子部分との間に充填されている充填剤の下部に沿って隣接する分割素子部分にまで延び、隣接する分割素子部分の側面上に配置された導電性部材に接続されている〔1〕に記載の超音波探触子。
〔4〕 導電性部材は、充填剤よりも高い硬度を有している〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の超音波探触子。
〔5〕 導電性部材は、ショア硬度80以上の硬度を有する〔4〕に記載の超音波探触子。
〔6〕 導電性部材は、圧電素子から発せられる超音波の波長より小さい寸法の厚さを有する〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の超音波探触子。
〔7〕 導電性部材は、圧電素子から発せられる超音波の波長の1/10より小さい寸法の厚さを有する〔6〕に記載の超音波探触子。
〔8〕 複数の圧電素子がバッキング材の上にアジマス方向に沿ってアレイ状に配列された超音波探触子の製造方法であって、
バッキング材の表面上に第1導電層と圧電体層と第2導電層が順次積層された積層体を形成し、
積層体の上に音響整合層を形成し、
積層体および音響整合層をダイシングすることによりアジマス方向に沿って配列された複数の圧電素子を形成し、
それぞれの圧電素子をダイシングすることによりエレベーション方向に複数の分割素子部分に分断し、
それぞれ分割素子部分における第2導電層からなるグランド電極層に接続されるように、それぞれの分割素子部分のエレベーション方向の両端における一対の側面上に導電性部材を配置し、
アジマス方向に配列された複数の圧電素子の間およびそれぞれの圧電素子における複数の分割素子部分の間に充填剤を充填する
超音波探触子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、複数の圧電素子がバッキング材の上にアジマス方向に沿ってアレイ状に配列され、複数の圧電素子は、それぞれ、バッキング材の表面上に信号電極層と圧電体部とグランド電極層が順次積層された積層体からなり、それぞれの圧電素子は、エレベーション方向に複数の分割素子部分に分断され、複数の分割素子部分に対応し且つそれぞれ分割素子部分のグランド電極層の上に配置された複数の音響整合層を有し、アジマス方向に配列された複数の圧電素子の間およびそれぞれの圧電素子における複数の分割素子部分の間に充填剤が充填され、それぞれの分割素子部分のエレベーション方向の両端における一対の側面上にそれぞれ導電性部材が配置され、導電性部材が、分割素子部分のグランド電極層に接続されているため、マトリックス状の振動子アレイにおいて、全てのグランド電極層から配線を引き出しつつ複数の分割素子部分間のクロストークを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る超音波探触子の一部を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る超音波探触子の断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る超音波探触子の製造方法を示すフローチャートである。
図4】バッキング材上に形成された積層体および音響整合層の断面図である。
図5】複数の分割素子部分および音響整合層の断面図である。
図6】複数の分割素子部分間に形成された導電性部材を示す断面図である。
図7】ダイシングされた導電性部材を示す図である。
図8】本発明の実施の形態の第1の変形例に係る超音波探触子の断面図である。
図9】本発明の実施の形態の第2の変形例に係る超音波探触子の断面図である。
図10】本発明の実施の形態の第3の変形例に係る超音波探触子の断面図である。
図11】本発明の実施の形態の第4の変形例に係る超音波探触子の断面図である。
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「同一」、「同じ」は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。
【0011】
実施の形態
図1に、本発明の実施の形態に係る超音波探触子の構成を示す。超音波探触子は、バッキング材1と、バッキング材1上に形成された複数の圧電素子2と、複数の圧電素子2上に形成された音響整合層3を備えている。
【0012】
複数の圧電素子2は、Y方向すなわちアジマス方向に沿ってアレイ状に配列されている。複数の圧電素子2の間にはそれぞれ溝Gが形成され、溝Gに充填剤4が充填されている。また、複数の圧電素子2は、溝GによりX方向すなわちエレベーション方向において複数の分割素子部分Aに分断され、溝Gに充填剤4が充填されている。そのため、複数の分割素子部分AがX方向およびY方向に配列されて、マトリックス状の振動子アレイが構成される。
【0013】
音響整合層3は、複数の圧電素子2の上に、第1音響整合層3A、第2音響整合層3Bおよび第3音響整合層3Cが順次積層された積層体により構成される。X方向およびY方向において圧電素子2を分割する溝Gは、第3音響整合層3Cからバッキング材1の途中にまで至るように形成されている。そのため、音響整合層3も圧電素子2と同様にして、X方向およびY方向において複数の部分に分割されている。
【0014】
なお、以下では、X方向およびY方向に対して直交する超音波探触子の高さ方向をZ方向と呼ぶ。
【0015】
バッキング材1は、複数の圧電素子2を支持すると共に後方へ放出された超音波を吸収するもので、フェライトゴム等のゴム材により形成される。
【0016】
音響整合層3は、圧電素子2と被検体との音響インピーダンスを整合して被検体内に超音波を入射しやすくするための層である。音響整合層3は、圧電素子2の音響インピーダンスより小さく、且つ、被検体の音響インピーダンスより大きい値の音響インピーダンスを有する材料により形成することができる。例えば、第1音響整合層3Aの音響インピーダンスを第2音響整合層3Bの音響インピーダンスよりも小さく、第2音響整合層3Bの音響インピーダンスを第3音響整合層3Cの音響インピーダンスよりも小さくすることにより、圧電素子2から被検体に向かって、段階的に音響インピーダンスが小さくなる層構造が形成される。
【0017】
充填剤4は、X方向において隣り合う分割素子部分Aおよび音響整合層3、Y方向において隣り合う圧電素子2の位置および姿勢を固定するためのもので、例えばエポキシ樹脂等により構成される。充填剤4として、より具体的には、silicone rubber LSR 2630(MOMENTIVE社製、ショアA硬度32)、silicone rubber LSR 2030(MOMENTIVE社製、ショアA硬度31)またはsilicone rubber RTV 615(MOMENTIVE社製、ショアA硬度44)等を用いることができる。
【0018】
図2に示すように、圧電素子2は、バッキング材1の表面上に信号電極層2Aと圧電体部2Bとグランド電極層2Cが順次積層された積層体からなる。
【0019】
圧電体部2Bは、公知の圧電材料により形成され、電圧の印加により伸縮し、且つ、外部からのいわゆる超音波エコーにより伸縮して電気信号を発生する。圧電材料としては、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミクス、または、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の高分子材料等が挙げられる。
【0020】
信号電極層2Aは、圧電体部2Bに対して電圧を印加するため、および、いわゆる超音波エコーが伝搬することにより圧電体部2Bが伸縮して生じた電気信号を取り出すために用いられる。信号電極層2Aから、電圧の印加および電気信号の取り出しのための信号配線W1が引き出されている。信号配線W1は、信号電極層2Aからバッキング材1の中を通って超音波探触子の外部にまで延びる。
【0021】
グランド電極層2Cは、圧電体部2Bの基準電位を定められたグランド電位にするために用いられる。
【0022】
圧電素子2の分割素子部分AのX方向の両端における一対の側面上に、それぞれ導電性部材5が配置されている。導電性部材5は、グランド電極層2Cからバッキング材1の表面まで延びており、グランド電極層2CのX方向の端部に電気的に接続している。また、導電性部材5には、グランド電極層2Cの電位をグランド電位にするためのグランド配線W2が接続されている。グランド配線W2は、導電性部材5からバッキング材1の中を通って超音波探触子の外部にまで延びる。
【0023】
ところで、一般的に、X方向およびY方向において複数の圧電素子2が分断されたマトリックス状の振動子アレイでは、複数の圧電体部2Bの音響整合層3側の面に接着された一続きのグランド電極層2Cが形成され、グランド電極層2C上に、複数の圧電体部2Bに跨るように一続きの音響整合層3が形成されることが多い。この場合に、複数の圧電体部2Bの振動または外部から伝搬する超音波エコーの振動が音響整合層3を伝搬することにより、複数の圧電体部2Bの間でいわゆるクロストークが生じることがあった。
【0024】
そこで、複数の圧電体部2B間のクロストークを抑制するために音響整合層3を複数の圧電素子2と同様に分断しようとすると、グランド電極層2Cも併せて分断されることにより、孤立した複数のグランド電極層2Cが形成され、それぞれのグランド電極層2Cから配線を引き出すことが困難になるという問題があった。
【0025】
本発明の実施の形態の超音波探触子では、複数の圧電素子2がX方向において複数の分割素子部分Aに分断され、複数の分割素子部分Aのそれぞれに対応してグランド電極層2Cの上に音響整合層3が配置され、それぞれの分割素子部分AのX方向の両端における一対の側面上にそれぞれ導電性部材5が配置され、導電性部材5が分割素子部分Aのグランド電極層2Cに接続されているため、導電性部材5を介して全てのグランド電極層2Cからそれぞれグランド配線W2を引き出しつつ、複数の分割素子部分A間におけるクロストークを抑制できる。
【0026】
次に、図3のフローチャートを用いて本発明の実施の形態の超音波探触子の製造方法を説明する。
【0027】
まず、ステップS1において、図4に示すように、バッキング材1の表面上に信号電極層2A、圧電体部2Bおよびグランド電極層2Cが順次積層された積層体Bを接着剤等により接合することにより形成する。
【0028】
ステップS2において、積層体Bの上に、例えば80℃~100℃の温度で第1音響整合層3A、第2音響整合層3Bおよび第3音響整合層3Cを順次接合することにより、音響整合層3を形成する。
【0029】
ステップS3において、積層体Bと音響整合層3をダイシングしてY方向において複数の部分に分断することにより、複数の圧電素子2を形成する。
【0030】
ステップS4において、図5に示すように、複数の圧電素子2をダイシングしてX方向において複数の分割素子部分Aに分断する。この際に、Y方向に配列された複数の音響整合層3もダイシングされて、X方向において複数の部分に分断される。
【0031】
ステップS5において、複数の分割素子部分AのそれぞれのX方向の両側面に導電性部材5を配置する。この際に、まず、図6に示すように、複数の分割素子部分Aの間に導電性部材5を充填する。その後、分割素子部分A間の導電性部材5をダイシングすることにより、図7に示すように導電性部材5を分割素子部分Aの両側面に配置する。
【0032】
最後に、ステップS6において、X方向における複数の分割素子部分Aの間、X方向における複数の音響整合層3の間、Y方向における複数の圧電素子2の間、および、Y方向における複数の音響整合層3の間に充填剤4を充填する。複数の分割素子部分Aの両側面に配置された導電性部材5により、複数の分割素子部分Aの位置が固定されるため、充填剤4を充填する際等に、分割素子部分Aおよび音響整合層3からなる積層体が倒れて超音波探触子が故障してしまうことが防止される。
【0033】
このようにして、ステップS1~ステップS6により、図1および図2に示すような超音波探触子が製造される。
【0034】
なお、導電性部材5の材料は特に限定されないが、例えば、金属または導電性樹脂等を用いることができる。また、超音波探触子の製造途中に分割素子部分Aおよび音響整合層3からなる積層体が倒れて超音波探触子が故障してしまうことを防止するために、導電性部材5は、充填剤4よりも高い高度を有することが好ましく、具体的には、例えばショア硬度65以上の硬度を有することが好ましく、ショア硬度80以上の硬度を有することがさらに好ましい。このような硬度を有する導電性部材5の材料としては、例えば、silver epoxy EPO-TEK E2101(Epoxy Technology社製、ショアD硬度68)、silver epoxy EPO-TEK H37-MP(Epoxy Technology社製、ショアD硬度80)またはsilver epoxy EPO-TEK H35-175MP(Epoxy Technology社製、ショアD硬度83)等が挙げられる。
【0035】
また、導電性部材5の存在が超音波探触子の音響性能に影響を与えないように、導電性部材5は、圧電素子2から発せられる超音波の波長より小さい寸法の厚さを有することが好ましく、具体的には、圧電素子2から発せられる超音波の波長の1/10よりも小さい寸法の厚さを有することが好ましい。
【0036】
また、導電性部材5が分割素子部分AのX方向の両側面に配置され且つグランド電極層2CのX方向端部と電気的に接続されることが説明されているが、導電性部材5を、例えば図8に示すように、分割素子部分Aの一方の側面からグランド電極層2Cの上面を通って分割素子部分Aの他方の側面にまで延びるように配置することもできる。この場合に、導電性部材5は、グランド電極層2CのX方向の両端と、音響整合層3側の面に電気的に接続するため、導電性部材5とグランド電極層2Cの電気的な接続の信頼性が向上する。
【0037】
また、導電性部材5が分割素子部分Aのグランド電極層2Cからバッキング材1の表面にまで延びることが説明されているが、導電性部材5を、例えば図9に示すように、分割素子部分Aのグランド電極層2Cの上に配置された音響整合層3のX方向の側面にまで延びるように、すなわち、第3音響整合層3Cからバッキング材1の表面にまで延びるように配置することもできる。この場合に、分割素子部分Aおよび音響整合層3からなる積層体の全体が導電性部材5により支持されるため、例えば、超音波探触子の製造途中で分割素子部分Aおよび音響整合層3からなる積層体が倒れて損傷することがさらに防止される。
【0038】
また、それぞれの導電性部材5が対応する1つのグランド電極層2Cと電気的に接続されることが説明されているが、導電性部材5を、例えば図10に示すように、X方向に隣接する分割素子部分Aとの間に充填されている充填剤4の下部すなわちバッキング材1の表面に沿って隣接する分割素子部分Aにまで延び、その隣接する分割素子部分Aの側面上に配置された導電性部材5に接続されるように配置することもできる。この場合に、複数の分割素子部分Aのグランド電極層2Cが複数の導電性部材5により電気的に接続されるため、複数の分割素子部分Aのグランド電極層2Cの電位を安定してグランド電位にすることができる。
【0039】
また、圧電素子2がX方向において3つの分割素子部分Aに分割されることが説明されているが、例えば、圧電素子2をX方向において2つの分割素子部分Aに分割することもでき、4つ以上の分割素子部分Aに分断することもできる。例として、図11に、圧電素子2がX方向において5つの分割素子部分Aに分断された超音波探触子を示す。このように、圧電素子2をX方向において多数の分割素子部分Aに分断することより、超音波探触子からいわゆる超音波ビームを送信する際に、いわゆる被写界深度を細かく調整できる。この場合に、分割素子部分AのX方向の寸法に対するZ方向の寸法の比率が大きくなるが、分割素子部分AのX方向の両側面が導電性部材5に支持されているため、超音波探触子の製造途中で分割素子部分Aおよび音響整合層3からなる積層体が倒れて損傷することは防止される。
【0040】
また、音響整合層3が第1音響整合層3A、第2音響整合層3Bおよび第3音響整合層3Cの3つの層により構成されることが説明されているが、音響整合層3は、2つ以下の層により構成されることもでき、4つ以上の層により構成されることもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 バッキング材、2 圧電素子、2A 信号電極層、2B 圧電体部、2C グランド電極層、4 充填剤、5 導電性部材、A 分割素子部分、B 積層体、G 溝、W1 信号配線、W2 グランド配線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11