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  • 特開-偏光板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141468
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】偏光板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053144
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 泰紀
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB02
2H149AB17
2H149BA02
2H149CA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA05Z
2H149FA10Z
2H149FA14Z
2H149FA51Z
2H149FB01
2H149FB05
2H149FD44
(57)【要約】
【課題】ブロッキングに因る樹脂フィルムの構造的欠陥を解消し、且つ樹脂フィルムの表面を覆う易滑層の剥離を抑制する偏光板の製造方法を提供すること。
【解決手段】偏光板の製造方法は、易滑フィルム1を用いる。易滑フィルム1は、第一樹脂フィルム2、及び第一樹脂フィルム2の表面を覆う易滑層3からなる。樹脂ロールR1から繰り出された易滑フィルム1は、加熱炉4内の複数のガイドロールを介して搬送される。加熱炉4を通過した易滑フィルム1は、第一接着剤5aを介して、偏光子フィルム6の表面に貼合される。加熱炉4内の雰囲気の温度は、80℃以上120℃以下である。複数のガイドロールのうちガイドロールAは、易滑層3の表面に直接接する。ガイドロールAと易滑フィルム1との抱き角αは、80°以上170°以下である。ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaは、0.06μm以下である。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子フィルム及び易滑フィルムを用いた偏光板の製造方法であって、
前記易滑フィルムは、長尺の樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの表面を覆う易滑層と、からなり、
前記偏光板の前記製造方法は、
巻回された前記易滑フィルムからなる樹脂ロールから繰り出された前記易滑フィルムを、加熱炉内に設置された複数のガイドロールを介して搬送する加熱工程と、
前記加熱炉を通過した前記易滑フィルムの表面に接着剤を塗布する塗布工程と、
前記易滑フィルムを、前記接着剤を介して、前記偏光子フィルムの表面に貼合する貼合工程と、
を備え、
前記加熱炉内の雰囲気の温度は、80℃以上120℃以下であり、
前記複数のガイドロールは、前記易滑層の表面に直接接する少なくとも一つのガイドロールAを含み、
前記ガイドロールAと前記易滑フィルムとの抱き角が、80°以上170°以下であり、
前記ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaは、0.06μm以下である、
偏光板の製造方法。
【請求項2】
前記貼合工程では、前記樹脂フィルムとは別の樹脂フィルムが、接着剤を介して、前記偏光子フィルムの前記表面の裏面に貼合される、
請求項1に記載の偏光板の製造方法。
【請求項3】
前記易滑層は、重合体、及び複数の粒子を含み、
複数の前記粒子は、無機粒子及び有機粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の粒子である、
請求項1に記載の偏光板の製造方法。
【請求項4】
前記易滑層は、ポリウレタンを含む、
請求項1に記載の偏光板の製造方法。
【請求項5】
前記算術平均粗さRaは、0.01μm以上0.06μm以下である、
請求項1に記載の偏光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、テレビ、コンピュータ、モバイルフォン(スマートフォン)、スマートウォッチ、携帯ゲーム機、又は車両の計器パネル等の画像表示装置(液晶ディスプレイ、又は有機ELディスプレイ等)に用いられる。
【0003】
偏光板の製造方法では、樹脂フィルムが接着剤を介して偏光子フィルムの表面に貼合される。樹脂フィルムが偏光子フィルムの表面に貼合される前、樹脂フィルムは、巻回された長尺の樹脂フィルムからなる樹脂ロール(円柱状の巻回体)から繰り出される。樹脂フィルムの表面は平坦であるため、樹脂ロール内において重なり合った樹脂フィルム同士は、互いに密着している。樹脂ロールの自重、樹脂ロールの長時間の保管、及び樹脂ロールの加熱等に因り、樹脂ロール内において密着した樹脂フィルム同士が互い剥離し難くなる現象が起きる。この現象は、ブロッキングと呼ばれる。ブロッキングに因り、樹脂ロールから繰り出される樹脂フィルムにおいて構造的欠陥が生じてしまう。例えば、樹脂フィルムの構造的欠陥は、樹脂フィルムの表面に形成される微細な凹凸、及び樹脂フィルムの皺等である。ブロッキングに因る樹脂フィルムの構造的欠陥は、ブロッキングに因る樹脂フィルムの変形と言い換えられてよい。
【0004】
下記特許文献1は、ブロッキングに因る樹脂フィルムの構造的欠陥を解消するために、樹脂フィルムを偏光子フィルムの表面に貼合する前に、樹脂フィルムを加熱炉において80~120℃で加熱する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-205722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブロッキングは、巻回される前の樹脂フィルムの表面を易滑層で覆うことによって、ある程度抑制される。例えば、易滑層は、ポリウレタン等の重合体、及びシリカ等の多数の粒子を含む層である。易滑層に含まれる多数の粒子に因り、易滑層の表面は樹脂フィルムの表面よりも粗くなる。したがって、樹脂ロール内において樹脂フィルム同士が易滑層を介して重なり合うことに因り、樹脂フィルム同士の直接的な密着が抑制される。以下に記載の「易滑フィルム」とは、長尺の樹脂フィルムと、樹脂フィルムの表面を覆う易滑層と、からなる積層体を意味する。
【0007】
ブロッキングに因る樹脂フィルムの構造的欠陥を易滑層によって完全に防止することは困難である。したがって、ブロッキングに因る樹脂フィルムの構造的欠陥を解消するために、易滑フィルムを偏光子フィルムの表面に貼合する前に、易滑フィルムを加熱炉内で加熱することが望ましい。易滑フィルムは、加熱炉内において複数のガイドロール(自在に回転する円柱)を用いて搬送される。しかしながら、易滑層の一部が、樹脂フィルムの表面から剥離して、加熱炉内のガイドロールの表面に付着してしまう。ガイドロールの表面に付着した易滑層の断片は、その上流から搬送される易滑フィルムの表面に付着してしまう。その結果、易滑層の断片が異物として偏光板中に混入し、偏光板の欠陥になってしまう。
【0008】
本発明の一側面の目的は、偏光板を構成する樹脂フィルムの構造的欠陥(ブロッキングに因る樹脂フィルムの構造的欠陥)を解消し易く、且つ樹脂フィルムの表面を覆う易滑層の剥離を抑制する偏光板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
例えば、下記[1]~[5]の通り、本発明の一側面は、偏光板の製造方法に関する。
【0010】
[1] 偏光子フィルム及び易滑フィルムを用いた偏光板の製造方法であって、
易滑フィルムは、長尺の樹脂フィルムと、樹脂フィルムの表面を覆う易滑層と、からなり、
偏光板の製造方法は、
巻回された易滑フィルムからなる樹脂ロールから繰り出された易滑フィルムを、加熱炉内に設置された複数のガイドロールを介して搬送する加熱工程と、
加熱炉を通過した易滑フィルムの表面に接着剤を塗布する塗布工程と、
易滑フィルムを、接着剤を介して、偏光子フィルムの表面に貼合する貼合工程と、
を含み、
加熱炉内の雰囲気の温度は、80℃以上120℃以下であり、
複数のガイドロールは、易滑層の表面に直接接する少なくとも一つのガイドロールAを含み、
ガイドロールAと易滑フィルムとの抱き角が、80°以上170°以下であり、
ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaは、0.06μm以下である、
偏光板の製造方法。
【0011】
[2] 貼合工程では、樹脂フィルムとは別の樹脂フィルムが、接着剤を介して、偏光子フィルムの表面の裏面に貼合される、
[1]に記載の偏光板の製造方法。
【0012】
[3] 易滑層は、重合体、及び複数の粒子を含み、
複数の粒子は、無機粒子及び有機粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の粒子である、
[1]又は[2]に記載の偏光板の製造方法。
【0013】
[4] 易滑層は、ポリウレタンを含む、
[1]~[3]のいずれか一つに記載の偏光板の製造方法。
【0014】
[5] 算術平均粗さRaは、0.01μm以上0.06μm以下である、
[1]~[4]のいずれか一つに記載の偏光板の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面によれば、偏光板を構成する樹脂フィルムの構造的欠陥(ブロッキングに因る樹脂フィルムの構造的欠陥)を解消し易く、且つ樹脂フィルムの表面を覆う易滑層の剥離を抑制する偏光板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る偏光板の製造方法を示す模式図である。
図2図2は、加熱炉内における易滑フィルム、及び複数のガイドロールそれぞれの模式的な断面を示し、図2中の易滑フィルム及び複数のガイドロールそれぞれの断面は、易滑フィルムの厚み方向に平行であり、各ガイドロールの回転軸線(中心軸線)に垂直である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態が説明される。図面において、同等の構成要素には同等の符号が付される。本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0018】
(偏光板の製造方法の概要)
図1に示されるように、本実施形態に係る偏光板の製造方法は、偏光子フィルム6及び易滑フィルム1を用いる。図2に示されるように、易滑フィルム1は、長尺の樹脂フィルム(第一樹脂フィルム2)と、第一樹脂フィルム2の一方の表面(主面)を覆う易滑層3と、からなる。易滑層3は、第一樹脂フィルム2の表面の一部又は全体を覆ってよい。例えば、易滑層3は、重合体、及び複数の粒子を含んでよい。易滑層3に含まれる複数の粒子は、無機粒子及び有機粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の粒子であってよい。図1に示されるように、本実施形態に係る偏光板の製造方法では、第一樹脂フィルム2とは別の樹脂フィルム(第二樹脂フィルム7)が用いられてよい。易滑フィルム1、偏光子フィルム6、及び第二樹脂フィルム7を重ねることにより、積層体8が形成される。図1及び図2中のMD(Machine Directiоn)は、易滑フィルム1、偏光子フィルム6、第二樹脂フィルム7、又は積層体8が搬送される方向である。
【0019】
偏光板の製造方法は、加熱工程、塗布工程、及び貼合工程を含む。図1に示されるように、加熱工程では、巻回された易滑フィルム1からなる樹脂ロールR1から繰り出された易滑フィルム1が、加熱炉4内に設置された複数のガイドロール(g1、g2、g3、g4、及びg5)を介して搬送される。つまり、易滑フィルム1を構成する第一樹脂フィルム2又は易滑層3の表面が、第一ガイドロールg1、第二ガイドロールg2、第三ガイドロールg3、第四ガイドロールg4、及び第五ガイドロールg5それぞれの表面にこの順序で接しながら、易滑フィルム1が加熱炉4内で搬送される。ただし、加熱炉4内に設置されるガイドロールの数は5本に限定されない。
【0020】
加熱炉4内の雰囲気の温度は、80℃以上120℃以下である。加熱炉4内の雰囲気の温度が80℃以上120℃以下であることに因り、易滑フィルム1が適度に軟化され、ブロッキングに因る易滑フィルム1(第一樹脂フィルム2及び易滑層3)の構造的欠陥が容易に解消される。つまり加熱炉4内において、易滑フィルム1を構成する第一樹脂フィルム2及び易滑層3それぞれの表面が平坦になる。加熱炉4内の雰囲気の温度が80℃よりも低い場合、易滑フィルム1が十分に軟化されず、ブロッキングに因る易滑フィルム1の構造的欠陥が解消され難い。加熱炉4内の雰囲気の温度が120℃よりも高い場合、易滑フィルム1を構成する易滑層3が過度に軟化され、易滑層3が第一樹脂フィルム2の表面から剥離し易い。例えば、加熱炉4内の雰囲気は、大気であってよい。加熱炉4内の雰囲気の温度は、ヒーターによって制御されてよい。80℃以上120℃以下である熱風が、加熱炉4内へ継続的に供給されてもよい。
【0021】
加熱炉4内に設置された複数のガイドロールは、易滑層3の表面に直接接する少なくとも一つのガイドロールAを含む。加熱炉4内に設置された複数のガイドロールは、複数のガイドロールAを含んでもよい。図2に示される加熱炉4においては、第一ガイドロールg1、第三ガイドロールg3、及び第五ガイドロールg5それぞれが、ガイドロールAである。ただし、ガイドロールAの数は3本に限定されない。
加熱炉4内に設置された複数のガイドロールは、易滑層3ではなく第一樹脂フィルム2の表面に直接接する少なくとも一つのガイドロールBを含んでよい。加熱炉4内に設置された複数のガイドロールは、複数のガイドロールBを含んでもよい。図2に示される加熱炉4においては、第二ガイドロールg2、及び第四ガイドロールg4それぞれが、ガイドロールBである。ただし、ガイドロールBの数は2本に限定されない。
【0022】
ガイドロールAと易滑フィルム1(易滑層3)との抱き角αは、80°以上170°以下である。
ガイドロールAの回転軸線ax(中心軸線)に垂直であり、且つガイドロールA及び易滑フィルム1(易滑層3)を含む断面において、易滑層3は、2つの接点(第一接点a1及び第二接点a2)において、ガイドロールAの表面に接する。ガイドロールAの直径(太さ)の1/2の長さを有し、且つ第一接点a1及び回転軸線axを結ぶ線分は、「第一線分La1」と表記される。ガイドロールAの直径(太さ)の1/2の長さを有し、且つ第二接点a2及び回転軸線axを結ぶ線分は、「第二線分La2」と表記される。第一線分La1及び第二線分La2の間の角度が、ガイドロールAと易滑フィルム1(易滑層3)との抱き角αに相当する。
各ガイドロールAと易滑フィルム1(易滑層3)との抱き角αが80°以上170°以下であることに因り、第一樹脂フィルム2の表面からの易滑層3の剥離が容易に抑制される。同様の理由から、ガイドロールAと易滑フィルム1(易滑層3)との抱き角αは、80°以上165°以下であってもよい。
抱き角αが80°よりも小さい場合、ガイドロールAの表面における易滑フィルム1の滑りが発生し易く、易滑層3が剥離し易くなったり、易滑層3の表面に擦り傷が形成されたりする。
抱き角αが170°よりも大きい場合、易滑フィルム1のグリップ力が大きくなり、易滑層3が剥離し易くなる。
【0023】
ガイドロールBの回転軸線ax(中心軸線)に垂直であり、且つガイドロールB及び易滑フィルム1(第一樹脂フィルム2)を含む断面において、第一樹脂フィルム2は、2つの接点(第一接点b1及び第二接点b2)において、ガイドロールBの表面に接してよい。ガイドロールBの直径(太さ)の1/2の長さを有し、且つ第一接点b1及び回転軸線axを結ぶ線分は、「第一線分Lb1」と表記される。ガイドロールBの直径(太さ)の1/2の長さを有し、且つ第二接点b2及び回転軸線axを結ぶ線分は、「第二線分Lb2」と表記される。第一線分Lb1及び第二線分Lb2の間の角度が、ガイドロールBと易滑フィルム1(第一樹脂フィルム2)との抱き角βに相当する。
各ガイドロールBと易滑フィルム1(第一樹脂フィルム2)との抱き角βは、限定されない。例えば、各ガイドロールBと易滑フィルム1(第一樹脂フィルム2)との抱き角βは、0°より大きく180°以下であってよい。
ガイドロールBの回転軸線ax(中心軸線)に垂直であり、且つガイドロールB及び易滑フィルム1(第一樹脂フィルム2)を含む断面において、第一樹脂フィルム2は、一つの接点のみにおいて、ガイドロールBの表面に接してもよい。
【0024】
易滑層3の表面に直接接する少なくとも一つのガイドロールAが加熱炉4内に設置され、且つガイドロールAと易滑フィルム1(易滑層3)との抱き角αが、80°以上170°以下である限り、加熱炉4内におけるガイドロールA及びガイドロールBそれぞれの位置及び数は限定されない。図2に示される加熱炉4内では、易滑フィルム1は最初にガイドロールA(第一ガイドロールg1)に接触するが、他の実施形態においては、易滑フィルム1は最初にガイドロールBに接触してもよい。つまり、ガイドロールA及びガイドロールBそれぞれの配置の順序は限定されない。
【0025】
各ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaは、0.06μm以下である。各ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaが0.06μm以下であることに因り、各ガイドロールAの表面と易滑層3との間の摩擦が抑制され、第一樹脂フィルム2の表面からの易滑層3の剥離が容易に抑制される。各ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaが0.06μmよりも大きい場合、各ガイドロールAの表面と易滑層3との間の摩擦に因り、易滑層3が、第一樹脂フィルム2の表面から剥離し易い。換言すれば、各ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaが0.06μmよりも大きい場合、各ガイドロールAの表面に形成された微細な突起が易滑層3食い込み易く、易滑層3が切削され易い。
【0026】
各ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaは、0.01μm以上0.06μm以下であってよい。各ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaが0.01μm以上である場合、各ガイドロールAの表面と易滑層3との密着が程度に抑制される。その結果、第一樹脂フィルム2の表面からの易滑層3の剥離が抑制され易く、易滑フィルム1が円滑に搬送され易い。同様の理由から、各ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaは、0.02μm以上0.05μm以下、又は0.03μm以上0.04μm以下であってもよい。
【0027】
例えば、ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaの測定方法は、日本産業規格(JIS 1994)に準拠してよい。例えば、ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaは、株式会社ミツトヨ製の小型表面粗さ測定機(SURFTEST SJ-310)によって測定されてよい。測定機に備わる触針は、ガイドロールAの表面に対して垂直に当接される。さらに、ガイドロールAの回転軸線axに平行な方向な直線に沿って、各ガイドロールAの表面を触針で走査することにより、ガイドロールAの表面の測定断面曲線Rが測定される。測定断面曲線R中のノイズは、ガウシアンフィルターによって除去されてよい。つまり、測定断面曲線Rが、ガウシアンフィルターによって平滑化されてよい。長波長のカットオフ値λc(0.8mm)よりも波長が長い波形(うねり曲線)を測定断面曲線Rから除去することにより、ガイドロールAの表面の粗さ曲線が得られる。一方、短波長のカットオフ値λsに基づくノイズ(波長がλsよりも短い波形)を測定断面曲線Rから除去する必要はない。ガイドロールAの表面の粗さ曲線から、ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaが算出されてよい。
【0028】
各ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaは、各ガイドロールAの表面の研磨によって自在に調整されてよい。例えば、各ガイドロールAの表面の研磨に用いられる砥石の材質及び粒度等に基づいて、各ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaが調整されてよい。例えば、各ガイドロールAの表面がバフによって研磨される場合、バフの材質、各ガイドロールAの表面とバフとの間に介在する研磨剤の材質及び粒度等に基づいて、各ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaが調整されてよい。
【0029】
例えば、各ガイドロールAは、高い熱伝導率を有する金属から製造されてよい。つまり、各ガイドロールAの表面は金属からなっていてよい。例えば、各ガイドロールAの表面は、ハードクロムめっきによって処理されていてよい。例えば、MDに垂直なTD(Transverse Direction)における各ガイドロールAの長さは、TDにおける易滑フィルム1の幅以上であってよい。つまり、各ガイドロールAの回転軸線axに平行な方向における各ガイドロールAの長さは、TDにおける易滑フィルム1の幅以上であってよい。例えば、各ガイドロールAの直径(太さ)は、5cm以上30cm以下であってよい。各ガイドロールA自体が加熱機構を有してもよい。
各ガイドロールBの材質は、各ガイドロールAと略同じであってよい。各ガイドロールBの表面の算術平均粗さRaは、各ガイドロールAと略同じであってよい。各ガイドロールBの寸法は、各ガイドロールAと略同じであってよい。各ガイドロールB自体が加熱機構を有してもよい。
【0030】
例えば、樹脂ロールR1を構成する易滑フィルム1(第一樹脂フィルム2)の全長(つまり、MDにおける易滑フィルム1の全長)は、500m以上5000m以下であってよい。例えば、TDにおける易滑フィルム1の幅は、500mm以上3000mm以下であってよい。例えば、加熱炉4内での易滑フィルム1の搬送に要する搬送時間は、10秒以上60秒以下であってよい。例えば、易滑フィルム1に含まれる第一樹脂フィルム2の厚みは、5μm以上200μm以下であってよい。例えば、易滑フィルム1に含まれる易滑層3の厚みは、0.01μm以上3μm以下であってよい。上記の数値的条件それぞれが満たされることにより、ブロッキングに因る易滑フィルム1の構造的欠陥が解消され易く、且つ第一樹脂フィルム2の表面からの易滑層3の剥離が抑制され易い。
【0031】
加熱炉4を通過した易滑フィルム1は、ガイドロールg6等を介して、塗布工程を実施するための設備へ搬送される。
【0032】
塗布工程では、加熱炉4を通過した易滑フィルム1の表面に接着剤が塗布される。例えば、第一接着剤5aが、第一グラビア塗工装置c1によって、易滑フィルム1を構成する易滑層3の表面に直接塗布されてよい。易滑フィルム1を構成する易滑層3の表面は、易滑フィルム1を構成する第一樹脂フィルム2の表面よりも粗いので、第一接着剤5aは、第一樹脂フィルム2の表面よりも易滑層3の表面に付着し易い。ただし、他の実施形態では、第一接着剤5aが、第一グラビア塗工装置c1によって、易滑フィルム1を構成する第一樹脂フィルム2の表面に直接塗布されてもよい。
【0033】
塗布工程を経た易滑フィルム1は、ガイドロールg7等を介して、貼合工程を実施するための設備へ搬送される。
【0034】
貼合工程では、易滑フィルム1が、第一接着剤5aを介して、偏光子フィルム6の表面に貼合され、積層体8が形成される。例えば、易滑フィルム1及び偏光子フィルム6が、一対の貼合ロールr1及びr2の間へ供給され、易滑フィルム1及び偏光子フィルム6が一対の貼合ロールr1及びr2の間に挟まれる。その結果、易滑フィルム1が、第一接着剤5aを介して、偏光子フィルム6の表面(第一主面)に貼合される。貼合工程では、易滑フィルム1を構成する易滑層3の表面が、第一接着剤5aを介して、偏光子フィルム6の表面に貼合されてよい。他の実施形態では、易滑フィルム1を構成する第一樹脂フィルム2の表面が、第一接着剤5aを介して、偏光子フィルム6の表面に貼合されてもよい。MDにおける偏光子フィルム6の全長は、MDにおける易滑フィルム1の全長と略同じであってよい。TDにおける偏光子フィルム6の幅は、TDにおける易滑フィルム1の幅と略同じであってよい。例えば、偏光子フィルム6の厚みは、1μm以上50μm以下であってよい。
【0035】
貼合工程では、易滑フィルム1を構成する第一樹脂フィルム2とは別の樹脂フィルム(第二樹脂フィルム7)が、接着剤を介して、偏光子フィルム6の裏面に貼合されてよい。例えば、貼合工程前に、第二接着剤5bが、第二グラビア塗工装置c2によって、第二樹脂フィルム7の表面に直接塗布されてよい。第二接着剤5bが塗布された第二樹脂フィルム7は、ガイドロールg8等を介して、一対の貼合ロールr1及びr2の間へ供給されてよい。つまり、易滑フィルム1、偏光子フィルム6、及び第二樹脂フィルム7が同時に一対の貼合ロールr1及びr2の間に挟まれてよい。その結果、第二樹脂フィルム7が、第二接着剤5bを介して、偏光子フィルム6の裏面(第二主面)に貼合されてよい。つまり、易滑フィルム1及び第二樹脂フィルム7が同時に偏光子フィルム6へ貼合されてよい。第二樹脂フィルム7が偏光子フィルム6の裏面に貼合される場合、易滑フィルム1、第一接着剤5a、偏光子フィルム6、第二接着剤5b、及び第二樹脂フィルム7がこの順に重なることにより、積層体8が形成されてよい。MDにおける第二樹脂フィルム7の全長は、MDにおける偏光子フィルム6の全長と略同じであってよい。TDにおける第二樹脂フィルム7の幅は、TDにおける偏光子フィルム6の幅と略同じであってよい。例えば、第二樹脂フィルム7の厚みは、5μm以上200μm以下であってよい。
【0036】
第一接着剤5a及び第二接着剤5bうちの少なくとも一つが活性エネルギー線硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂等)である場合、活性エネルギー線(紫外線等)が照射装置Lによって積層体8へ照射されてよい。照射装置Lを経た積層体8は、ガイドロールg9等を経て、後工程を実施するための設備へ搬送されてよい。
【0037】
(第一樹脂フィルム2、及び第二樹脂フィルム7)
例えば、第一樹脂フィルム2及び第二樹脂フィルム7それぞれは、透光性を有する熱可塑性樹脂であってよい。例えば、第一樹脂フィルム2及び第二樹脂フィルム7それぞれは、透明な熱可塑性樹脂であってよい。例えば、第一樹脂フィルム2及び第二樹脂フィルム7それぞれは、環状オレフィンポリマー系樹脂(Cyclo Olefine Polymer系樹脂)、鎖状ポリオレフィン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、又はこれらの混合物若しくは共重合体であってよい。第一樹脂フィルム2が環状オレフィンポリマー系樹脂(COP系樹脂)であり、且つ第一樹脂フィルム2の表面が易滑層3で覆われていない場合、第一樹脂フィルム2のブロッキングが起き易い。しかし、第一樹脂フィルム2が環状オレフィンポリマー系樹脂である場合においても、第一樹脂フィルム2の表面を易滑層3で覆うことに因り、ブロッキングが容易に抑制される。第一樹脂フィルム2の組成は、第二樹脂フィルム7の組成と同じであってよい。第一樹脂フィルム2の組成は、第二樹脂フィルム7の組成と異なっていてもよい。
【0038】
例えば、環状オレフィンポリマー系樹脂は、環状オレフィンの開環(共)重合体、又は環状オレフィンの付加重合体であってよい。例えば、環状オレフィンポリマー系樹脂は、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体(例えば、ランダム共重合体)であってよい。例えば、共重合体を構成する鎖状オレフィンは、エチレン又はプロピレンであってよい。例えば、環状オレフィンポリマー系樹脂は、上記の重合体を不飽和カルボン酸若しくはその誘導体で変性したグラフト重合体、又はそれらの水素化物であってもよい。例えば、環状オレフィンポリマー系樹脂は、ノルボルネン又は多環ノルボルネン系モノマー等のノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂であってよい。
【0039】
例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂のような鎖状オレフィンの単独重合体であってよい。鎖状ポリオレフィン系樹脂は、二種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体であってもよい。
【0040】
例えば、セルロースエステル系樹脂は、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース(TAC))、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネート、又はこれらの共重合物であってよい。例えば、セルロースエステル系樹脂は、水酸基の一部が他の置換基で修飾されたセルロースエステル系樹脂であってもよい。例えば、第二樹脂フィルム7は、鹸化されたセルローストリアセテートであってよい。
【0041】
、第一樹脂フィルム2及び第二樹脂フィルム7それぞれは、セルロースエステル系樹脂以外のポリエステル系樹脂であってもよい。例えば、ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体であってよい。例えば、多価カルボン酸又はその誘導体は、ジカルボン酸又はその誘導体であってよい。例えば、多価カルボン酸又はその誘導体は、テレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、又はナフタレンジカルボン酸ジメチルであってもよい。例えば、多価アルコールは、ジオールであってよい。例えば、多価アルコールは、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、又はシクロヘキサンジメタノールであってよい。
【0042】
例えば、ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、又はポリシクロヘキサンジメチルナフタレートであってよい。
【0043】
例えば、ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介して重合単位(モノマー)が結合された重合体であってよい。例えば、ポリカーボネート系樹脂は、修飾されたポリマー骨格を有する変性ポリカーボネートであってよい。例えば、ポリカーボネート系樹脂は、共重合ポリカーボネートであってもよい。
【0044】
例えば、(メタ)アクリル系樹脂は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)); メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸共重合体; メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体; メタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体; (メタ)アクリル酸メチル-スチレン共重合体(例えば、MS樹脂); 又はメタクリル酸メチルと脂環族炭化水素基を有する化合物との共重合体(例えば、メタクリル酸メチル-メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、若しくはメタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体等)であってよい。
【0045】
(易滑層3)
上述の通り、易滑層3は、重合体、及び複数の粒子を含んでよい。易滑層3に含まれる複数の粒子は、無機粒子及び有機粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の粒子であってよい。複数の粒子を含む易滑層3の表面は、第一樹脂フィルム2の表面よりも粗いので、滑り性に優れている。易滑層3の滑り性に因り、易滑フィルム1のブロッキングが抑制され、ブロッキングに因る易滑フィルム1の構造的欠陥も抑制される。
【0046】
易滑層3は、重合体として、ポリウレタンを含んでよい。ポリウレタンは、環状オレフィンポリマー系樹脂を含む第一樹脂フィルム2の表面に強固に接着され易い。したがって、易滑層3がポリウレタンを含むことに因り、第一樹脂フィルム2の表面からの易滑層3の剥離が抑制され易い。ポリウレタンは80℃以上120℃以下である温度で軟化され易い。したがって、易滑層3がポリウレタンを含むことに因り、易滑フィルム1が加熱炉4内において適度に軟化され易く、ブロッキングに因る易滑フィルム1の構造的欠陥が解消され易い。
【0047】
例えば、ポリウレタンは、1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分(i)と、多価イソシアネート成分(ii)との反応によって合成されてよい。例えば、ポリウレタンの製造では、上記の成分(i)及び成分(ii)からプレポリマーが合成されてよい。プレポリマーの分子鎖が、鎖延長剤を用いて延長されてよい。延長されたポリマーに水を加えて、ポリマーを水中に分散させてよい。つまり、易滑層3の原料として、ポリウレタンが分散した水が用いられてよい。プレポリマーとして、イソシアネート基が過剰である反応条件下での上記の成分(i)及び成分(ii)のウレタン化反応により、イソシアネート基を含有するプレポリマーが合成されてよい。上記の成分(i)及び成分(ii)のウレタン化反応は、水との親和性に優れた有機溶剤中で行われてよい。プレポリマーの分子鎖を延長する前に、ウレタン化反応によって得られたプレポリマーが中和されてもよい。ポリウレタンは、酸構造を含んでいてもよい。ポリウレタンの酸構造の一部又は全部は中和されていてもよい。
【0048】
水に分散したポリウレタンは市販されている。例えば、市販されているポリウレタンは、旭電化工業社製の「アデカボンタイター」シリーズ、三井東圧化学社製の「オレスター」シリーズ、大日本インキ化学工業社製の「ボンディック」シリーズ、「ハイドラン」シリーズ、バイエル社製の「インプラニール」シリーズ、日本ソフラン社製の「ソフラネート」シリーズ、花王社製の「ポイズ」シリーズ、三洋化成工業社製の「サンプレン」シリーズ、保土谷化学工業社製の「アイゼラックス」シリーズ、第一工業製薬社製の「スーパーフレックス」シリーズ、又はゼネカ社製の「ネオレッツ」シリーズである。
【0049】
例えば、易滑層3に含まれる無機粒子は、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、及び燐酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の粒子であってよい。例えば、易滑層3に含まれる有機粒子は、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、及び(メタ)アクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の粒子であってよい。易滑層3は、複数種の粒子を含んでよい。
【0050】
例えば、易滑層3は、重合体としてポリウレタンを含み、複数の粒子としてシリカを含んでよい。シリカ(特に非晶質コロイダルシリカ)は、易滑フィルム1の構造的欠陥(皺等)を抑制し易く、透明性に優れ、ポリウレタン中に安定的に分散し易い。
【0051】
例えば、易滑層3に含まれる複数の粒子の平均粒径D50は、1nm以上、5nm以上、又は10nm以上であり、500nm以下、300nm以下、又は200nm以下であってよい。平均粒径D50は、レーザー回折法によって測定された粒径分布において、原点から累積された体積が50%に達する粒径である。平均粒径D50が上記の下限値以上である場合、易滑層3の滑り性が向上し易い。平均粒径D50が上限値以下である場合、易滑層3からの粒子の脱落が抑制され易い。
【0052】
例えば、易滑層3に含まれる複数の粒子の質量は、易滑層3に含まれる100質量部の重合体に対して、0.5質量部以上、5質量部以上、又は8質量部以上であり、20質量部以下、18質量部以下、又は15質量部以下であってよい。易滑層3に含まれる複数の粒子の質量が上記の下限値以上である場合、易滑層3の滑り性が向上し易い。その結果、樹脂ロールR1内での易滑フィルムの構造的欠陥(皺等)が抑制され易く、易滑フィルム1が加熱炉4内の各ガイドロールに密着し難く、易滑フィルム1が加熱炉4内で容易に搬送される。易滑層3に含まれる複数の粒子の質量が上記の上限値以下である場合、易滑層3及び偏光板の白濁が抑制され易い。
【0053】
易滑層3は、重合体及び複数の粒子以外の任意の成分を更に含んでよい。例えば、任意の成分は、架橋剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、レベリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、及びワックスからなる群より選ばれる少なくとも一種の成分であってよい。
【0054】
例えば、易滑層3形成工程では、重合体、粒子、溶媒(水等)、及び他の任意の成分を含む樹脂組成物が調製されてよい。例えば、樹脂組成物は、エポキシ化合物(エポキシ樹脂)であってよい。樹脂組成物を第一樹脂フィルム2の表面に塗布することより、樹脂組成物からなる樹脂層が形成されてよい。樹脂層の硬化により、易滑層3が形成されてよい。例えば、樹脂層は、紫外線等の光の照射又は加熱によって硬化されてよい。第一樹脂フィルム2の表面処理(活性化処理等)が実施されてよく、易滑層3は、表面処理を経た表面に形成されてよい。
【0055】
(偏光子フィルム6)
偏光子フィルム6は、ポリビニルアルコール系樹脂を含んでよい。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光子フィルム6は、ポリビニルアルコール系樹脂の延伸、染色及び架橋等の工程によって作製されてよい。偏光子フィルム6は、重合性液晶化合物の重合体、及び二色性色素を含んでもよい。重合性液晶化合物の重合体、及び二色性色素を含む偏光子フィルム6は、重合性液晶化合物、二色性色素及び溶媒を含む原料を配向層の表面に塗布して、塗膜を形成する工程と、塗膜中の重合性液晶化合物を重合させる工程によって作製されてよい。例えば、配向層は、高分子化合物を含む膜であり、偏光子フィルム6を構成する重合性液晶化合物を所望の方向に配向させる機能を有すしてよい。例えば、配向層は、配向性ポリマーからなる配向膜、光配向膜及びグルブ(groove)配向膜からなる群より選ばれる一種の配向膜であってよい。
【0056】
(第一接着剤5a、及び第二接着剤5b)
第一接着剤5a及び第二接着剤5bそれぞれは、活性エネルギー線硬型性接着剤(活性エネルギー線硬型性樹脂)、又は水系接着剤であってよい。第一接着剤5aの組成は、第二接着剤5bの組成と同じであってよい。第一接着剤5aの組成は、第二接着剤5bの組成と異なってもよい。
【0057】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、活性エネルギー線の照射によって硬化する樹脂である。例えば、活性エネルギー線は、紫外線、可視光、電子線、又はX線であってよい。例えば、活性エネルギー線硬型性樹脂は、紫外線硬化性樹脂であってよい。
【0058】
活性エネルギー線硬型性樹脂は、一種の樹脂であってよく、複数種の樹脂を含んでもよい。例えば、活性エネルギー線硬型性樹脂は、カチオン重合性の硬化性化合物、又はラジカル重合性の硬化性化合物を含んでよい。活性エネルギー線硬型性樹脂は、上記硬化性化合物の硬化反応を開始させるためのカチオン重合開始剤又はラジカル重合開始剤を含んでよい。
【0059】
カチオン重合性の硬化性化合物は、例えば、エポキシ系化合物(分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物)、又はオキセタン系化合物(分子内に少なくとも一つのオキセタン環を有する化合物)であってよい。ラジカル重合性の硬化性化合物は、例えば、(メタ)アクリル系化合物(分子内に少なくとも一つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物)であってよい。ラジカル重合性の硬化性化合物は、ラジカル重合性の二重結合を有するビニル系化合物であってもよい。
【0060】
活性エネルギー線硬型性樹脂は、必要に応じて、カチオン重合促進剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、レベリング剤、又は溶剤等を含んでよい。
【0061】
例えば、水系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液、及びウレタン系樹脂の水溶液のうち少なくとも一つであってよい。例えば、水系接着剤に含まれるポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂、完全ケン化ポリビニルアルコール系樹脂、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、及びアミノ基変性ポリビニルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の変性ポリビニルアルコール系樹脂であってよい。例えば、ウレタン系樹脂の水溶液は、二液型ウレタン系エマルジョン接着剤であってよい。
【0062】
(その他の工程)
偏光板の製造方法は、一つの以上の他の樹脂フィルム(樹脂層)を、易滑フィルム1又は偏光子フィルム6の表面に直接又は間接的に貼合(積層)する工程を更に含んでよい。例えば、他の樹脂フィルム(樹脂層)は、保護フィルム、光学補償フィルム、位相差フィルム、離型フィルム、反射型偏光フィルム、防眩機能付フィルム、表面反射防止機能付フィルム、反射フィルム、半透過反射フィルム、ウインドウフィルム、粘着剤層、接着剤層、ハードコート層、タッチセンサー層、帯電防止層、及び防汚層からなる群より選ばれる少なくとも一つであってよい。
【0063】
偏光板の製造方法は、上記の諸工程によって形成された積層体を、画像表示装置の寸法及び形状に応じて加工する工程を更に含んでよい。例えば、切断、研削及び研磨によって、積層体が加工されてよい。例えば、積層体の加工手段は、回転刃、エンドミル、及びレーザー等であってよい。
【0064】
例えば、完成された偏光板の厚みは、10μm以上300μm以下であってよい。
【0065】
本発明は必ずしも上述された実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明の種々の変更が可能であり、これ等の変更例も本発明に含まれる。
【実施例0066】
以下の実施例及び比較例により、本発明が詳細に説明される。本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
ポリウレタン(カルボキシル基を含有するエステル系ポリウレタン樹脂)が分散した水、エポキシ化合物(ポリグリセロールポリグリシジルエーテル)、セバシン酸ジヒドラジド、シリカ粉末(シリカからなる多数の粒子)、及び水を混合することにより、液状の水系樹脂組成物が調製された。水系樹脂組成物は、易滑層3の原料である。ポリウレタンの質量の割合は100質量部に調整され、エポキシ化合物の質量の割合は20質量部に調整され、セバシン酸ジヒドラジドの質量の割合は5質量部に調整され、シリカ粉末の質量の割合は8質量部に調整された。水系樹脂組成物中の固形分の含有量は、5質量%に調整された。シリカ粉末の平均粒径D50は、100nmであった。ポリウレタンが分散した水としては、第一工業製薬株式会社製のスーパーフレックス210が用いられた。エポキシ化合物としては、ナガセケムテックス株式会社製のデナコールEX-521が用いられた。
【0068】
コロナ放電処理が、長尺の第一樹脂フィルム2の一方の表面(主面)に施された。第一樹脂フィルム2は、シクロオレフィン系樹脂であった。第一樹脂フィルム2として、日本ゼオン株式会社製のZF14が用いられた。MDにおける第一樹脂フィルム2の全長は、2000mであった。TDにおける第一樹脂フィルム2の幅は、1330mmであった。第一樹脂フィルム2の厚みは、23μmであった。コロナ放電処理の出力は、800Wであった。
【0069】
上記の水系樹脂組成物が、コロナ放電処理を経た第一樹脂フィルム2の一方の表面全体に塗布された。水系樹脂組成物の塗布には、ダイコーターが用いられた。第一樹脂フィルム2に塗布された水系樹脂組成物を140℃で40秒間乾燥することにより、易滑層3が第一樹脂フィルム2の一方の表面全体に形成された。つまり、第一樹脂フィルム2と、第一樹脂フィルム2の表面を覆う易滑層3とからなる易滑フィルム1が作製された。乾燥された易滑層3の厚みは、0.5μmであった。易滑フィルム1をロール芯に巻き取ることにより、樹脂ロールR1が形成された。一つの樹脂ロールR1を構成する易滑フィルム1の全長(MDにおける易滑フィルム1の全長)は、2000mであった。計5つの樹脂ロールR1が準備された。各樹脂ロールR1は1か月保管された。
【0070】
1か月の樹脂ロールR1の保管後、以下の加熱工程が実施された。
【0071】
第一ガイドロールg1、第二ガイドロールg2、第三ガイドロールg3、第四ガイドロールg4、及び第五ガイドロールg5が、図2に示されるように加熱炉4内に設置された。加熱工程では、樹脂ロールR1から繰り出された易滑フィルム1が、加熱炉4内に設置された5本の上記ガイドロールを介して搬送された。5本の上記ガイドロールそれぞれの表面は、金属からなっていた。易滑フィルム1は、第一ガイドロールg1、第二ガイドロールg2、第三ガイドロールg3、第四ガイドロールg4、及び第五ガイドロールg5それぞれの表面にこの順序で接しながら、搬送された。
【0072】
第一ガイドロールg1、第三ガイドロールg3、及び第五ガイドロールg5それぞれは、易滑層3の表面に直接接するガイドロールAであった。各ガイドロールAと易滑フィルム1(易滑層3)との抱き角αは、下記表1に示される値に調整された。各ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaは、下記表1に示される値に調整された。
【0073】
第二ガイドロールg2、及び第四ガイドロールg4それぞれは、第一樹脂フィルム2の表面に直接接するガイドロールBであった。
【0074】
加熱炉4内の大気の温度は、105℃に維持された。加熱炉4内での易滑フィルム1の搬送に要する搬送時間は、20秒に維持された。つまり、易滑フィルム1の任意の部分Xが加熱炉4内へ導入される時点から、任意の部分Xが加熱炉4から出る時点までの時間は、20秒に維持された。
【0075】
加熱炉4内を通過した易滑フィルム1の長さ(MDの長さ)の合計が10000mに達した時点で、加熱工程が終了した。加熱工程の終了後、各ガイドロールAの表面が観察された。仮に易滑層3が第一樹脂フィルム2の表面から剥離した場合、易滑層3の断片が、各ガイドロールAの表面に付着するはずである。しかし、易滑層3の断片は、第一ガイドロールg1、第三ガイドロールg3、及び第五ガイドロールg5のいずれの表面にも付着していなかった。つまり、第一ガイドロールg1、第三ガイドロールg3、及び第五ガイドロールg5それぞれの表面に直接接した易滑層3は、第一樹脂フィルム2の表面から剥離しなかった。
【0076】
加熱工程を経た易滑フィルム1においては、ブロッキングに因る易滑フィルム1の構造的欠陥が解消していた。
【0077】
(実施例2)
実施例2の場合、第一ガイドロールg1、第三ガイドロールg3、及び第五ガイドロールg5それぞれの表面の算術平均粗さRaは、下記表1に示される値に調整された。各ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaを除いて実施例1と同様の方法で、実施例2の加熱工程が実施された。
【0078】
実施例2の加熱工程においても、第一ガイドロールg1、第三ガイドロールg3、及び第五ガイドロールg5それぞれの表面に直接接した易滑層3は、第一樹脂フィルム2の表面から剥離しなかった。実施例2の加熱工程を経た易滑フィルム1においても、ブロッキングに因る易滑フィルム1の構造的欠陥が解消していた。
【0079】
(比較例1)
比較例1の場合、第一ガイドロールg1、第三ガイドロールg3、及び第五ガイドロールg5それぞれの表面の算術平均粗さRaは、下記表1に示される値に調整された。各ガイドロールAの表面の算術平均粗さRaを除いて実施例1と同様の方法で、比較例1の加熱工程が実施された。
【0080】
比較例1の加熱工程においては、第一ガイドロールg1、第三ガイドロールg3、及び第五ガイドロールg5それぞれの表面に直接接した易滑層3の一部は、第一樹脂フィルム2の表面から剥離して、各ガイドロールAの表面に付着していた。
【0081】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0082】
例えば、本発明の一側面に係る偏光板の製造方法によって製造される偏光板は、テレビ、コンピュータ、モバイルフォン(スマートフォン)、スマートウォッチ、携帯ゲーム機、又は車両の計器パネル等の画像表示装置(液晶ディスプレイ、又は有機ELディスプレイ等)に用いられてよい。
【符号の説明】
【0083】
1…易滑フィルム、2…第一樹脂フィルム、3…易滑層、4…加熱炉、5a…第一接着剤、5b…第二接着剤、6…偏光子フィルム、7…第二樹脂フィルム、8…積層体、A…ガイドロールA、ax…ガイドロールの回転軸線、c1…第一グラビア塗工装置、c2…第二グラビア塗工装置、g1…第一ガイドロール、g2…第二ガイドロール、g3…第三ガイドロール、g4…第四ガイドロール、g5…第五ガイドロール、g6,g7,g8,g9…ガイドロール、L…活性エネルギー線の照射装置、R1…樹脂ロール、r1,r2…貼合ロール、α,β…抱き角。
図1
図2