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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141478
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】水溶性フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/03 20060101AFI20241003BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08J3/03 CEP
C08J5/18 CEX
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053160
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 晋作
(72)【発明者】
【氏名】大久保 正憲
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
【Fターム(参考)】
4F070AA03
4F070AA26
4F070AC12
4F070AC36
4F070AC55
4F070AE02
4F070AE14
4F070AE28
4F070CA04
4F070CA11
4F070CB01
4F070CB02
4F070CB11
4F070CB12
4F071AA08
4F071AA29
4F071AB17
4F071AC05
4F071AC15
4F071AD02
4F071AE04
4F071AE10
4F071AE11
4F071AE19
4F071AF53
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH04
4F071BA02
4F071BA03
4F071BB02
4F071BC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】澱粉の凝集を十分抑制されており、クラックがなく、耐ブロッキング性に優れる水溶性フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリビニルアルコール系樹脂水溶液(I)を調製する工程、澱粉を含み、可塑剤を含んでもよい水分散液(II)を調製する工程、及び(I)と(II)とを混合する工程とを備え、該工程が下記式(1)を満足する水溶性フィルムの製造方法。
(式){[(D’/S’)AP']×(DT/T)×SR}≦0.50・・・(1)
D’:(I)に含まれる固形分DSと(I)全量との質量比DS/I。S’:(II)に含まれる澱粉Sと(II)全量との質量比S/II。AP’:(II)に含まれる可塑剤中の固形分APSの質量比APS/II。可塑剤を含まない場合は0。SR:(II)に含まれる澱粉と、澱粉を除く水分散液(II)全量II-Sとの質量比S/II-S。DT:(I)の温度[℃]。T:澱粉の糊化温度[℃]。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂を含む水溶液(I)を調製する工程、
澱粉(S)を含み、更に可塑剤(AP)を任意に含んでもよい水分散液(II)を調製する工程、及び、
前記水溶液(I)と前記水分散液(II)とを混合する混合工程とを備え、
前記混合工程が下記式(1)に示す条件を満足することを特徴とする水溶性フィルムの製造方法。
(式){[(D’/S’)AP']×(DT/T)×SR}≦0.50 ・・・(1)
D’:水溶液(I)に含まれる固形分(DS)と、水溶液(I)全量との質量比(DS/I)。
S’:水分散液(II)に含まれる澱粉(S)と、水分散液(II)全量との質量比(S/II)。
AP’:水分散液(II)に含まれる可塑剤(AP)中の固形分(APS)と、水分散液(II)全量との質量比(APS/II)。水分散液(II)が可塑剤(AP)を含まない場合は0。
R:水分散液(II)に含まれる澱粉(S)と、澱粉(S)を除く水分散液(II)全量(II-S)との質量比(S/II-S)。
T:水溶液(I)の温度[℃]。
T:澱粉(S)の糊化温度[℃]。
【請求項2】
前記混合工程が、下記式(1’)に示す条件を満足する請求項1記載の水溶性フィルムの製造方法。
(式){[(D’/S’)AP']×(DT/T)×SR}≦0.35 ・・・(1’)
【請求項3】
前記水分散液(II)を調製する工程が、澱粉(S)及び可塑剤(AP)を含む水分散液(II)を調製する工程である、請求項1又は2記載の水溶性フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記水溶液(I)を調製する工程が、ポリビニルアルコール系樹脂及び界面活性剤を含む水溶液(I)を調製する工程である、請求項1又は2記載の水溶性フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記澱粉(S)の糊化温度(T)が50~95℃であり、前記水溶液(I)の温度(DT)が、15~35℃である、請求項1又は2記載の水溶性フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂及び澱粉を含む水溶性フィルムの製造方法に関する。更に詳しくは、水溶性フィルムの原料に含まれる澱粉の凝集を抑制することにより、クラックが生じず、耐ブロッキング性に優れる水溶性フィルムを得ることができる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水溶性フィルムは幅広い分野で用いられており、なかでもポリビニルアルコール系樹脂を用いた水溶性フィルムは、農薬や洗剤などの薬剤の個包装(ユニット包装)用途や、食品包装用途において広く用いられている。
【0003】
かかる水溶性フィルムの製造方法としては、通常、ポリビニルアルコール系樹脂を水などの溶媒に溶解又は分散させ、混合、脱泡して混合物(製膜原料)を調製した後、口金から製膜原料を吐出し、エンドレスベルトやドラムロールの金属表面や、プラスチック基材表面などのキャスト面に流延し、乾燥することによって水溶性フィルムを製造する方法が知られている。
【0004】
また、かかる水溶性フィルムの製造方法においては、フィルム同士又は個包装同士がブロッキングするのを防止する観点から、製膜原料に各種のフィラーを配合することも知られているが、製膜原料に配合されるフィラーには凝集する傾向があり、フィラーを均一に分散させることが困難な場合がある。フィラーが凝集し、均一に分散していない状態では、優れた耐ブロッキング性をフィルムに付与することは困難である。
また、フィラーの凝集物によりフィルターが詰まったり、製膜時にフィルムが破断したりして生産性が低下したり、得られたフィルムを包装体とした際に凝集物を起点とするクラックにより破袋したり内容物が漏出したりする傾向がある。更に、フィルムに印刷をする場合にインキ抜けが発生したりする傾向がある。
【0005】
かかるフィラーの凝集を抑制する観点から、特許文献1には、ポリビニルアルコール系樹脂を含む水溶液を調製する一方、フィラーを含む水分散液を調製し、90℃以下の温度条件において両者を混合する工程を有する水溶性フィルムの製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-194295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1の製造方法のように、ポリビニルアルコール系樹脂を含む水溶液とフィラーを含む水分散液とを混合する工程の温度条件を特定するだけでは、フィラーの凝集を十分に抑制し難いことが判明した。とりわけ、水の共存下で加熱されることによって糊化する性質を有する生澱粉などのように、特に凝集しやすいフィラーを均一に分散した状態にすることは困難である。
【0008】
本発明は、このような背景下において、澱粉の凝集を十分抑制することができ、クラックが生じず、耐ブロッキング性に優れる水溶性フィルムを得ることができる製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者はかかる事情に鑑み、鋭意研究を重ねる過程において、ポリビニルアルコール系樹脂を含む水溶液と、澱粉を含む水分散液とを混合する工程に着目し、凝集が発生する要因を探求した。本発明者は、その探求の過程において、前記混合工程における温度条件の他にも、ポリビニルアルコール系樹脂を含む水溶液の固形分の含有割合、澱粉の糊化温度、更に、澱粉を含有する水分散液における澱粉と可塑剤などの含有割合などの各条件が所定の関連性を有していることを突き止めた。本発明者は、かかる知見に基づいて、更なる研究を積み重ねた結果、特定の条件を満足する製造方法を採用することによって、澱粉の凝集を効果的に抑制できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、次の通りである。
[1]
ポリビニルアルコール系樹脂を含む水溶液(I)を調製する工程、
澱粉(S)を含み、更に可塑剤(AP)を任意に含んでもよい水分散液(II)を調製する工程、及び、
前記水溶液(I)と前記水分散液(II)とを混合する混合工程とを備え、
前記混合工程が下記式(1)に示す条件を満足することを特徴とする水溶性フィルムの製造方法。
(式){[(D’/S’)AP']×(DT/T)×SR}≦0.50 ・・・(1)
D’:水溶液(I)に含まれる固形分(DS)と、水溶液(I)全量との質量比(DS/I)。
S’:水分散液(II)に含まれる澱粉(S)と、水分散液(II)全量との質量比(S/II)。
AP’:水分散液(II)に含まれる可塑剤(AP)中の固形分(APS)と、水分散液(II)全量との質量比(APS/II)。水分散液(II)が可塑剤(AP)を含まない場合は0。
R:水分散液(II)に含まれる澱粉(S)と、澱粉(S)を除く水分散液(II)全量(II-S)との質量比(S/II-S)。
T:水溶液(I)の温度[℃]。
T:澱粉(S)の糊化温度[℃]。
[2]
前記混合工程が、下記式(1’)に示す条件を満足する[1]記載の水溶性フィルムの製造方法。
(式){[(D’/S’)AP']×(DT/T)×SR}≦0.35 ・・・(1’)
[3]
前記水分散液(II)を調製する工程が、澱粉(S)及び可塑剤(AP)を含む水分散液(II)を調製する工程である、[1]又は[2]記載の水溶性フィルムの製造方法。
[4]
前記水溶液(I)を調製する工程が、ポリビニルアルコール系樹脂及び界面活性剤を含む水溶液(I)を調製する工程である、[1]~[3]のいずれかに記載の水溶性フィルムの製造方法。
[5]
前記澱粉(S)の糊化温度(T)が50~95℃であり、前記水溶液(I)の温度(DT)が、15~35℃である、[1]~[4]のいずれかに記載の水溶性フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る水溶性フィルムの製造方法によれば、澱粉の凝集を効果的に抑制することができるため、クラックが生じず、耐ブロッキング性に優れる水溶性フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
本明細書において「固形分」とは、不揮発分を意味するものであり、水などの揮発分を除いた残部を意味する。例えば、PVA系樹脂における固形分とは、PVA系樹脂の製造過程において生成する反応生成物、或いは、その製造に使用される原料の残存物などの揮発分(例えば、水、メチルアルコール、酢酸メチルなど)を除いた残部を意味するものであり、具体的には、例えば、JIS K 6726に規定する方法により測定される揮発分を除いた残部である。
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」又は「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X及び/又はY(X,Yは任意の構成)」とは、X及びYの少なくとも一方を意味するものであって、Xのみ、Yのみ、X及びY、の3通りを意味するものである。
【0013】
本発明の一実施形態に係る水溶性フィルムの製造方法(以下、「本製造方法」という場合がある)は、ポリビニルアルコール系樹脂を含む水溶液(I)を調製する工程、澱粉(S)を含み、更に可塑剤(AP)を任意に含んでもよい水分散液(II)を調製する工程、及び、前記水溶液(I)と前記水分散液(II)とを混合する混合工程とを備え、前記混合工程が下記式(1)に示す条件を満足することを特徴とする。
(式){[(D’/S’)AP']×(DT/T)×SR}≦0.50 ・・・(1)
D’:水溶液(I)に含まれる固形分(DS)と、水溶液(I)全量との質量比(DS/I)。
S’:水分散液(II)に含まれる澱粉(S)と、水分散液(II)全量との質量比(S/II)。
AP’:水分散液(II)に含まれる可塑剤(AP)中の固形分(APS)と、水分散液(II)全量との質量比(APS/II)。水分散液(II)が可塑剤(AP)を含まない場合は0。
R:水分散液(II)に含まれる澱粉(S)と、澱粉(S)を除く水分散液(II)全量(II-S)との質量比(S/II-S)。
T:水溶液(I)の温度[℃]。
T:澱粉(S)の糊化温度[℃]。
【0014】
本製造方法は、前記式(1)である「{[(D’/S’)AP']×(DT/T)×SR}」から求められる値(以下、当該値を「澱粉凝集指数(SID)」と表記する場合がある)を0.50以下に制御することによって、製膜原料中における澱粉の凝集を効果的に抑制することができるため、本製造方法により得られる水溶性フィルムは、クラックが生じず、耐ブロッキング性に優れたものとなる。
【0015】
本製造方法において、製膜原料中における澱粉の凝集を更に抑制し、耐クラック性、耐ブロッキング性を向上させる観点から、式(1’)のように、澱粉凝集指数(SID)は0.35以下が好ましく、より好ましくは0.30以下である。また、澱粉凝集指数(SID)の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01以上、好ましくは0.02以上である。
(式){[(D’/S’)AP']×(DT/T)×SR}≦0.35 ・・・(1’)
【0016】
なお、本製造方法において、水分散液(II)が可塑剤(AP)を含有しない場合、式(1)のべき乗「(D'/S')AP'」の指数「AP'」は0となり、「(D’/S’)AP'」の値は1となる。
【0017】
以下、本製造方法について更に詳細に説明する。
なお、以下、前記式(1)等における「D’」を「固形分濃度(D’)」といい、「S’」を「澱粉濃度(S’)」といい、「AP’」を「可塑剤濃度(AP’)」といい、「SR」を「澱粉比率(SR)」という場合がある。
【0018】
<<水溶性フィルムの製造方法>>
本製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下「PVA系樹脂」という場合がある)を含む水溶液(I)を調製する工程と、澱粉(S)を含み、更に可塑剤(AP)を任意に含んでもよい水分散液(II)を調製する工程と、水溶液(I)と水分散液(II)とを混合する混合工程とを少なくとも備える。
【0019】
<PVA系樹脂を含む水溶液(I)を調製する工程>
本工程は、PVA系樹脂などを、水などに溶解して、製膜原料の主成分を構成する水溶液(I)を調製する工程である。PVA系樹脂を含む水溶液(I)は、PVA系樹脂及び水を少なくとも含み、必要に応じて、界面活性剤などの任意成分を含むものである。
【0020】
〔PVA系樹脂〕
水溶液(I)に含まれるPVA系樹脂とは、ポリマーを構成する繰り返し単位において、ビニルアルコール単位を主たる単位成分とした樹脂である。主たる単位成分とは、樹脂中で50モル%以上100モル%以下を占める単位成分のことをいう。かかるPVA系樹脂としては、未変性PVAや変性PVA系樹脂が挙げられる。
【0021】
PVA系樹脂の平均ケン化度は、80モル%以上であることが好ましく、特には82~99.9モル%、更には85~98.5モル%、殊には90~97モル%であることが好ましい。
また、PVA系樹脂として、未変性PVAを用いる場合には、その平均ケン化度は、80モル%以上であることが好ましく、特には82~99モル%、更には85~90モル%であることが好ましい。
また、PVA系樹脂として、変性PVA系樹脂を用いる場合には、その平均ケン化度は、80モル%以上であることが好ましく、特には85~99.9モル%、更には90~98モル%であることが好ましい。更に、PVA系樹脂として、アニオン性基変性PVA系樹脂を用いる場合には、その平均ケン化度は、85モル%以上であることが好ましく、特には88~99モル%、更には90~97モル%、殊には91~94モル%であることが好ましい。かかる平均ケン化度が小さすぎると、例えば、包装する薬剤のpHによっては経時的に水溶性フィルムの水への溶解性が低下する傾向がある。なお、平均ケン化度が大きすぎると水への溶解性が大きく低下する傾向がある。
【0022】
PVA系樹脂の重合度は一般的に水溶液粘度で示すことができ、20℃における4質量%水溶液粘度は、5~50mPa・sであることが好ましく、更には13~45mPa・s、特には17~40mPa・sであることが好ましい。
また、PVA系樹脂として、未変性PVAを用いる場合には、未変性PVAの20℃における4質量%水溶液粘度は、5~50mPa・sであることが好ましく、更には13~45mPa・s、特には17~45mPa・sであることが好ましい。
また、PVA系樹脂として、変性PVA系樹脂を用いる場合には、変性PVA系樹脂の20℃における4質量%水溶液粘度は、5~50mPa・sであることが好ましく、更には13~40mPa・s、特には17~35mPa・sであることが好ましい。
かかる粘度が小さすぎると、例えば、包装材料としての水溶性フィルムの機械的強度が低下する傾向があり、一方、大きすぎると製膜原料の粘度が高く生産性が低下する傾向がある。
【0023】
なお、前記の平均ケン化度は、JIS K 6726 3.5に準拠して測定され、4質量%水溶液粘度は、JIS K 6726 3.11.2に準じて測定される。
【0024】
PVA系樹脂として変性PVA系樹脂を用いる場合には、その変性量は1~10モル%であることが好ましく、更に好ましくは1.5~8モル%、特に好ましくは2~6モル%、殊に好ましくは2~5モル%である。かかる変性量が少なすぎると、水に対する溶解性が低下する傾向があり、多すぎるとPVA系樹脂の生産性が低下したり、生分解性が低下したりする傾向があり、また、ブロッキングを引き起こしやすくなる傾向がある。
【0025】
本製造方法において前記のPVA系樹脂はそれぞれ単独で用いることもできるし、また、未変性PVAと変性PVA系樹脂を併用すること、更に、ケン化度、粘度、変性種、変性量などが異なる2種以上を併用することなどもできる。これらのなかでも、薬剤包装用(特には洗濯洗剤包装用)の水溶性フィルムにおいては、溶解性の点で、PVA系樹脂が変性PVA系樹脂を含有することが好ましく、とりわけアニオン性基変性PVA系樹脂を含有することが好ましい。アニオン性基の種類としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられるが、水への溶解性や耐薬剤性の点で、カルボキシ基、スルホン酸基が好ましく、特にはカルボキシ基が好ましい。
【0026】
前記カルボキシ基変性PVAのカルボキシ基としては、カルボキシ基を有する単量体を由来とするものであり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボキシ基含有不飽和化合物、及びこれらのカルボキシ基が、アルカリ化合物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)などの塩基によって、全体的あるいは部分的に中和されたもの、あるいはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、フマル酸モノメチル、マレイン酸モノメチルなどの前記カルボキシ基含有不飽和化合物のモノアルキルエステル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチルなど、前記カルボキシ基含有不飽和化合物のジアルキルエステルが挙げられる。これらのエステルの炭素数は、経済性と実用性の点から通常炭素数1~20、更には炭素数1~10が好ましく、特には炭素数1~4が好ましい。これらの中でもマレイン酸系の化合物が好ましく、更にはマレイン酸モノメチルが好ましい。
【0027】
前記PVA系樹脂の製造方法については従来公知の方法で製造することができ、例えば、特開2017-95679などに記載の方法で製造することができる。
【0028】
〔水〕
水溶液(I)に含まれる水としては、特に限定されないが、イオン交換水や、RO水を用いることが好ましい。
【0029】
〔界面活性剤〕
界面活性剤は、フィルム製造時のキャスト面からの剥離性改善の目的で含有されるものであり、通常、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤が挙げられる。例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ステアリン酸グリセリンエステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なかでも、製造安定性の点でポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルが好適である。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なかでも、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤を併用することも好ましい。
【0030】
なお、水溶液(I)には、本発明の目的を阻害しない範囲で、水以外の溶媒、香料、防錆剤、着色剤、増量剤、消泡剤、紫外線吸収剤、流動パラフィン類、蛍光増白剤、苦味成分(例えば、安息香酸デナトニウムなど)、酸化防止剤(例えば、亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなど)、分散拡展剤、後述する可塑剤などを含有させることもできる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。但し、これらの成分の含有量は、水溶液(I)全量(100質量%)に対して30質量%未満であることが好ましく、より好ましくは25質量%未満、更により好ましくは20質量%未満である。
【0031】
前記溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0032】
[水溶液(I)の調製]
水溶液(I)は、前述のPVA系樹脂などの各成分を水に溶解して得られるものである。未溶解物が少なく、生産性に優れる点から、高温溶解法や加圧溶解法などが適宜採用される。
【0033】
具体的には、以下に限定されないが、例えば、撹拌翼を備えた溶解槽に水を投入し、当該水を撹拌しながらPVA系樹脂などを投入し、常圧下において、槽中に水蒸気を吹き込んで撹拌・加熱することにより、所望濃度の水溶液(I)を調製することができる。
【0034】
溶解温度(溶解槽内の温度)としては、通常80~100℃であり、好ましくは90~100℃であり、より好ましくは92~100℃である。溶解時間としては、溶解温度や溶解時の圧力などにより適宜調整すればよいが、通常1~20時間、好ましくは2~15時間、特に好ましくは3~10時間である。溶解時間が短すぎると未溶解物が残る傾向にあり、長すぎると生産性が低下する傾向にある。
【0035】
前記のようにして水溶液(I)を調製することができるが、本製造方法においては、未溶解物の残留と澱粉の凝集を抑制する観点から、固形分濃度(D’)を調整することが重要である。
前記式(1)(以下、「式(1)」と表記した場合は(1’)も含む)における、固形分濃度(D’)は、未溶解物の残留と澱粉の凝集を抑制する観点から、0.15~0.50が好ましく、より好ましくは0.30~0.45である。
【0036】
例えば、本製造方法の一実施形態において、前記水溶液(I)に含まれる固形分がPVA系樹脂由来の固形分のみである場合、前記式(1)における固形分濃度(D’)は、水溶液(I)全量に対する、PVA系樹脂中の固形分の質量比(PVA系樹脂中の固形分の質量/水溶液(I)の総質量)である。
【0037】
また、例えば、水溶液(I)を構成する成分がPVA系樹脂、水、及び、他の成分である場合、前記式(1)における固形分濃度(D’)は、水溶液(I)全量に対する、PVA系樹脂中の固形分及び他の成分中の固形分の合計量の質量比、すなわち、前記固形分濃度(D’)は、「[PVA系樹脂中の固形分の質量+他の成分中の固形分の質量]/[水溶液(I)の総質量:水の質量+PVA系樹脂の質量+他の成分の質量]」である。
【0038】
前記他の成分の代表的な具体例としては、界面活性剤が挙げられる。この場合、前記式(1)における固形分濃度(D’)は、水溶液(I)全量に対する、PVA系樹脂中の固形分、及び界面活性剤中の固形分の合計量との質量比、すなわち、前記固形分濃度(D’)は、「[PVA系樹脂中の固形分の質量+界面活性剤中の固形分の質量]/[水溶液(I)の総質量:水の質量+PVA系樹脂の質量+界面活性剤の質量]」である。
【0039】
また、他の成分として、界面活性剤と、界面活性剤とは異なる他の成分とを併用する場合においては、前記式(1)における固形分濃度(D’)は、水溶液(I)全量に対する、PVA系樹脂中の固形分、界面活性剤中の固形分、及びその他の成分中の固形分の合計量との質量比、すなわち、前記固形分濃度(D’)は、「[PVA系樹脂中の固形分の質量+界面活性剤中の固形分の質量+その他の成分の固形分の質量]/[水溶液(I)の総質量:水の質量+PVA系樹脂の質量+界面活性剤の質量+その他の成分の質量]」である。
【0040】
本製造方法の好ましい実施形態における一例において、前記水溶液(I)に含まれる固形分全量(100質量%)のうち、PVA系樹脂由来の固形分の含有量は50~100質量%であり、好ましくは55~95質量%、より好ましくは10~90質量%である。
また、本製造方法の好ましい実施形態における一例において、水溶液(I)に含まれるPVA系樹脂由来の固形分100質量部に対する、水溶液(I)に含まれる他の成分由来の固形分の含有量は、0~45質量部であり、好ましくは5~40質量部、より好ましくは10~35質量部である。
【0041】
本製造方法の好ましい実施形態における一例において、水溶液(I)全量(100質量%)に対するPVA系樹脂の含有割合は、15~40質量%であり、好ましくは18~38質量%、より好ましくは20~36質量%である。
【0042】
本製造方法の好ましい実施形態における一例において、水溶液(I)全量(100質量%)に対する水の含有割合は、35~85質量%であり、好ましくは40~70質量%、より好ましくは40~60質量%である。
【0043】
本製造方法の好ましい実施形態における一例において、水溶液(I)全量(100質量%)に対する界面活性剤の含有割合は、3~12質量%であり、好ましくは4~10質量%、より好ましくは5~8質量%である。
【0044】
本製造方法の好ましい実施形態における一例において、水溶液(I)全量(100質量%)に対するPVA系樹脂、水、及び界面活性剤の合計含有量の含有割合は、85質量%以上であり、好ましくは90質量%以上、更により好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98~100質量%である。
【0045】
<澱粉(S)を含む水分散液(II)を調製する工程>
本工程は、澱粉(S)や可塑剤(AP)などを、水などに溶解して、製膜原料の一部を構成する水分散液(II)を調製する工程である。澱粉(S)を含む水分散液(II)は、澱粉(S)及び水を少なくとも含み、必要に応じて、可塑剤(AP)などの他の任意成分を含むものである。
【0046】
〔澱粉(S)〕
本製造方法に用いられる澱粉(S)としては、例えば、生澱粉(トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、コムギ澱粉、キッサバ澱粉、サゴ澱粉、タピオカ澱粉、モロコシ澱粉、コメ澱粉、マメ澱粉、クズ澱粉、ワラビ澱粉、ハス澱粉、ヒシ澱粉など)、物理的変性澱粉(α-澱粉、分別アミロース、湿熱処理澱粉など)、酵素変性澱粉(加水分解デキストリン、酵素分解デキストリン、アミロースなど)、化学分解変性澱粉(酸処理澱粉、次亜塩素酸酸化澱粉、ジアルデヒド澱粉など)、化学変性澱粉誘導体(エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン化澱粉、架橋澱粉など)などが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なかでも、生分解性や入手の容易さや経済性・環境保全性の点から、生澱粉、とりわけトウモロコシ澱粉、コメ澱粉を用いることが好ましい。
【0047】
澱粉(S)の糊化温度(T)は、例えばアミログラフによって測定され、特に限定されないが、澱粉の凝集を抑制する観点から、50~95℃であることが好ましく、更に好ましくは53~93℃、特に好ましくは55~90℃である。なお、糊化温度(T)は、例えば、「澱粉科学の事典」(不破ら編集、株式会社朝倉書店、2003年)の194頁~197頁に記載される方法により測定することができる。
【0048】
澱粉の平均粒子径は、3~50μmであることが好ましく、特に好ましくは5~40μm、更に好ましくは8~35μmである。かかる平均粒子径が小さすぎるとフィルムの耐ブロッキング性が低下する傾向があり、大きすぎると澱粉同士が凝集しやすくなり分散性が低下したり、フィルムを成形加工時に引き伸ばした際にピンホールとなる傾向がある。
なお、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した値であり、得られた累計体積分布のD50値(累積50%の粒子径)より算出したものである。
【0049】
〔可塑剤(AP)〕
可塑剤(AP)としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリンなどのグリセリン類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピリングリコールなどのアルキレングリコール類やトリメチロールプロパン、ソルビトール、キシリトールやマルチトールなどの糖アルコールなどが挙げられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。なかでも、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトールが好ましい。
【0050】
水分散液(II)に対して特定割合の可塑剤(AP)を配合することにより、澱粉の凝集を効果的に抑制することができる傾向がある。水分散液(II)に特定割合の可塑剤(AP)を配合することによって澱粉の凝集を効果的に抑制できる理由は必ずしも明らかではないが、水分散液(II)の粘度を高めることができ、水分散液(II)に含まれる澱粉同士の接触頻度が低減する結果、凝集を抑制する作用を奏するものと推察される。或いは、澱粉は、主に粒子の骨格を形成するアミロペクチンと粒子内に含まれるアミロースで構成されており、糊化開始時に流出し易いアミロースが老化する際に凝集を惹起すると推測されるところ、可塑剤によって離水抑制作用や粒子の会合抑制作用を奏する結果、凝集を抑制する作用を奏するものと推察される。
【0051】
かかる可塑剤(AP)を水分散液(II)に配合する場合、生産性や得られるフィルムの機械物性の点で、融点が50℃以下である多価アルコールを用いることが好ましく、更には室温程度で液体状である化合物が好ましく、融点が30℃以下、特には20℃以下のものが好ましい。なお、融点の下限は通常-95℃であり、好ましくは-60℃、特に好ましくは-40℃、更に好ましくは-15℃、殊に好ましくは-5℃である。具体的には、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどが好ましく用いられる。また、2種以上併用する場合、上記の融点が50℃以下である多価アルコールでと融点が80℃以上である多価アルコールを併用することが好ましい。
【0052】
〔水〕
水分散液(II)に含まれる水としては、特に限定されないが、イオン交換水やRO水を用いることが好ましい。
【0053】
なお、水分散液(II)には、発明の目的を阻害しない範囲で、水以外の溶媒、香料、防錆剤、着色剤、増量剤、消泡剤、紫外線吸収剤、流動パラフィン類、蛍光増白剤、苦味成分(例えば、安息香酸デナトニウムなど)、界面活性剤、澱粉(S)以外のフィラーなどを含有させることもできる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。但し、これらの成分の含有量は、水分散液(II)全量(100質量%)に対して65質量%未満であることが好ましく、より好ましくは60質量%未満、更に好ましくは55質量%未満であり、10質量%未満、5質量%未満、3質量%未満であってもよい。
【0054】
澱粉(S)以外のフィラーとしては、澱粉以外の有機フィラーや、無機フィラーが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。有機フィラーとは、有機化合物で構成された針状・棒状、層状、鱗片状、球状などの任意の形状からなる粒子状物質(1次粒子)、もしくはその粒子状物質の集合体(2次粒子)のことを示す。かかる有機フィラーとしては、主に高分子化合物のなかから選択され、例えば、メラミン系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂の他、ポリ乳酸などの生分解性樹脂などが挙げられる。
【0055】
[水分散液(II)の調製]
水分散液(II)は、前述の澱粉(S)、可塑剤(AP)などの各成分を、水に分散して得られるものである。当該工程においては、以下に制限されないが、所定の分散槽に水及び澱粉などを投入し、常圧下において撹拌することにより、所望濃度の水分散液(II)を調製することができる。
【0056】
攪拌時の温度(槽内温度)としては、特に限定されないが、例えば、15~35℃、好ましくは18~30℃、より好ましくは20~26℃である。攪拌時間としては、適宜調整すればよいが、通常1~12時間、好ましくは2~10時間、特に好ましくは2~8時間である。
【0057】
前記のようにして水分散液(II)を調製することができるが、本製造方法においては、澱粉の凝集を効果的に抑制する観点から、澱粉濃度(S’)、可塑剤濃度(AP’)、澱粉比率(SR)を調整することが重要である。
【0058】
[澱粉濃度(S’)]
水分散液(II)を構成する成分が澱粉(S)、及び水である場合、前記式(1)において、澱粉濃度(S’)は、水分散液(II)全量に対する澱粉の質量比、すなわち、「澱粉(S)の質量/[水分散液(II)の総質量:水の質量+澱粉(S)の質量]」である。
また、水分散液(II)を構成する成分が澱粉(S)、可塑剤(AP)、及び水である場合、前記式(1)において、澱粉濃度(S’)は、水分散液(II)全量に対する、澱粉(S)の質量比、すなわち、「澱粉(S)の質量/[水分散液(II)の総質量:水の質量+澱粉(S)の質量+可塑剤(AP)の質量]」である。
また、本製造方法における水分散液(II)を構成する成分として、澱粉(S)、可塑剤(AP)、水、及びその他の成分を含む場合、前記式(1)において、澱粉濃度(S’)は、水分散液(II)全量に対する、澱粉(S)の質量比、すなわち、「澱粉(S)の質量/[水分散液(II)の総質量:水の質量+澱粉(S)の質量+可塑剤(AP)の質量+その他の成分の質量]」である。
【0059】
本製造方法においては、前記式(1)における澱粉濃度(S’)は、澱粉へ熱伝導を抑制するなどして凝集を抑制する観点から、例えば、0.10~0.80であり、好ましくは0.10~0.60、より好ましくは0.15~0.50である。
【0060】
[可塑剤濃度(AP’)]
水分散液(II)を構成する成分が澱粉(S)、可塑剤(AP)、及び水である場合、前記式(1)において、可塑剤濃度(AP’)は、水分散液(II)全量に対する、可塑剤中の固形分(APS)の質量比、すなわち、「可塑剤中の固形分(APS)の質量/[水分散液(II)の総質量:水の質量+澱粉の質量+可塑剤の質量]」である。
また、本製造方法における水分散液(II)を構成する成分として、澱粉(S)、可塑剤(AP)、水、及びその他の成分を含む場合、前記式(1)において、可塑剤濃度(AP’)は、水分散液(II)全量に対する、可塑剤中の固形分(APS)の質量比、すなわち、「可塑剤中の固形分(APS)の質量/[水分散液(II)の総質量:水の質量+澱粉(S)の質量+可塑剤(AP)の質量+その他の成分の質量]」である。
なお、水分散液(II)が可塑剤(AP)を含有しない場合、可塑剤濃度(AP’)は0であり、式(1)のべき乗「(D’/S’)AP'」(指数=0)の値は「1」となる。
【0061】
本製造方法においては、前記式(1)における可塑剤濃度(AP’)は、澱粉(S)へ熱伝導を抑制するなどして凝集を抑制する観点から、例えば、0~0.85であり、好ましくは0~0.80、より好ましくは0~0.75である。
【0062】
[澱粉比率(SR)]
水分散液(II)を構成する成分が澱粉(S)、及び水である場合、前記式(1)において、澱粉比率(SR)は、澱粉(S)を除く水分散液(II)全量(II-S)に対する、澱粉(S)の質量比、すなわち、「澱粉(S)の質量/[澱粉(S)を除く水分散液(II)の総質量:水の質量]」である。
また、水分散液(II)を構成する成分が澱粉(S)、可塑剤(AP)、及び水である場合、前記式(1)において、澱粉比率(SR)は、澱粉(S)を除く水分散液(II)全量(II-S)に対する、澱粉(S)の質量比、すなわち、「澱粉(S)の質量/[澱粉(S)を除く水分散液(II)の総質量:水の質量+可塑剤の質量]」である。
また、本製造方法における水分散液(II)を構成する成分として、澱粉(S)、可塑剤(AP)、水、その他の成分を含む場合、前記式(1)において、澱粉比率(SR)は、澱粉(S)を除く水分散液(II)全量(II-S)に対する、澱粉(S)の質量比、すなわち、「澱粉(S)の質量/[水分散液(II)の総質量:水の質量+可塑剤(AP)の質量+その他の成分の質量]」である。
【0063】
本製造方法においては、前記式(1)における澱粉比率(SR)は、澱粉へ熱伝導を抑制するなどして凝集を抑制する観点から、例えば、0.05~0.80であり、好ましくは0.10~0.70、より好ましくは0.15~0.60である。
【0064】
本製造方法の好ましい実施形態における一例において、水分散液(II)の全量(100質量%)に対する澱粉(S)の含有割合は、10~35質量%であり、好ましくは15~35質量%、より好ましくは15~30質量%である。
【0065】
本製造方法の好ましい実施形態における一例において、水分散液(II)の全量(100質量%)に対する可塑剤(AP)の含有割合は、0~85質量%であり、好ましくは0~80質量%、より好ましくは0~75質量%である。
【0066】
本製造方法の好ましい実施形態における一例において、水分散液(II)の全量(100質量%)に対する可塑剤中の固形分(APS)の含有割合は、0~65質量%であり、好ましくは0~60質量%、より好ましくは0~55質量%である。
【0067】
本製造方法の好ましい実施形態における一例において、水分散液(II)の全量(100質量%)に対する水の含有割合(質量%)は、15~90質量%であり、好ましくは20~85質量%、より好ましくは25~85質量%である。
【0068】
本製造方法の好ましい実施形態における一例において、水分散液(II)の全量(100質量%)に対する、澱粉及び水の合計含有量、又は、澱粉、可塑剤、及び水の合計含有量の含有割合は、85質量%以上であり、好ましくは90質量%以上、更により好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98~100質量%である。
【0069】
<水溶液(I)と水分散液(II)とを混合する混合工程>
本工程は、水溶液(I)と水分散液(II)とを混合する工程であり、例えば、水溶液(I)を収容した溶解槽に対して水分散液(II)を投入し、常圧下において撹拌することにより、所望濃度の製膜原料(III)を調製することができる。
【0070】
本工程においては、水分散液(II)を投入する前における溶解槽内の温度、すなわち、水溶液(I)の温度(DT)を調温(例えば、低温化)することが重要である。前記式(1)における前記水溶液(I)の温度(DT)は、澱粉の凝集を抑制する観点から、例えば、90℃以下が好ましく、例えば、80~90℃である。
【0071】
また、本工程において、水分散液(II)を投入した後における溶解槽内の温度、すなわち、水溶液(I)と水分散液(II)との混合物の温度は、澱粉の凝集を抑制する観点から、例えば、90℃以下が好ましく、例えば、75~88℃である。
【0072】
本工程において、水溶液(I)と水分散液(II)との混合する時間としては、温度条件などにより適宜調整すればよいが、通常30秒~1時間、好ましくは1~30分、特に好ましくは5~20分である。
【0073】
本工程における水溶液(I)及び水分散液(II)の混合割合は、澱粉の凝集を抑制する観点や水溶液(I)の水温が下がり過ぎない観点から、例えば、水溶液(I)100質量部に対して、水分散液(II)を1~20質量部の割合で混合するのが好ましく、より好ましくは2~15質量部、更により好ましくは3~10質量部である。
【0074】
〔脱泡・濾過工程〕
本工程は、製膜原料(III)の脱泡・濾過処理が行われる工程である。かかる脱泡方法としては、例えば、静置脱泡、真空脱泡、二軸押出脱泡などが挙げられる。なかでも静置脱泡、二軸押出脱泡が好ましい。静置脱泡の温度としては、通常50~100℃、好ましくは70~95℃であり、脱泡時間は、通常2~30時間、好ましくは5~20時間である。濾過方法としては、例えば、ディスクフィルターを用いて濾過する方法が挙げられる。ディスクフィルターとしては、目開き10~100μmのものが好ましく、目開きの異なる複数のディスクフィルターを用いてもよい。
【0075】
前記工程を経て得られた製膜原料(III)の固形分濃度は、10~60質量%であることが好ましく、特に好ましくは15~50質量%、更に好ましくは20~40質量%である。かかる濃度が低すぎるとフィルムの生産性が低下する傾向があり、高すぎると粘度が高くなりすぎ、製膜原料の脱泡に時間を要したり、フィルム製膜時にダイラインが発生したりする傾向がある。
【0076】
〔製膜工程〕
製膜工程では、前記製膜原料(III)を膜状に賦形し、必要に応じて乾燥処理を施すことで、水溶性フィルムを得ることができる。製膜に当たっては、例えば、溶融押出法や流延法等の方法を採用することができ、膜厚の精度の点で流延法が好ましい。
流延法を行うに際しては、例えば、前記製膜原料を、T型スリットダイ等のスリットから吐出させ、エンドレスベルトやドラムロールの金属表面、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンなどのプラスチック基材等のキャスト面に流延し、乾燥することにより水溶性フィルムを製造することができる。
具体的には、T型スリットダイなどの製膜原料の吐出部における製膜原料の温度は、60~98℃であることが好ましく、特に好ましくは70~95℃である。かかる温度が低すぎると製膜原料の粘度が増加して水溶性フィルムの生産性が低下する傾向があり、高すぎると発泡などが生じる傾向がある。
流延後、エンドレスベルトやドラムロールの金属表面などのキャスト面を加熱することにより乾燥を行う。前記キャスト面の表面温度は、50~100℃であることが好ましく、特に好ましくは70~95℃である。かかる表面温度が低すぎると、乾燥不足でフィルムの含水率が高くなり、耐ブロッキング性が低下しやすくなる傾向があり、高すぎると製膜原料が発泡し、製膜不良となる傾向がある。
また、製膜時の乾燥においては、熱ロールによる乾燥、フローティングドライヤーを用いてフィルムに熱風を吹き付ける乾燥や遠赤外線装置、誘電加熱装置による乾燥などを併用することもできる。
【0077】
前記の乾燥処理で製膜原料を含水率15質量%以下になるまで乾燥した後、キャスト面から剥離することにより水溶性フィルムが得られる。キャスト面(又は、乾燥熱ロール)から剥離された水溶性フィルムは、10~35℃の環境下で冷却されながら搬送される。
【0078】
製膜工程で、乾燥後キャスト面などから剥離した水溶性フィルムを搬送して巻き取り、芯管に巻き取ることによりフィルムロールが調製される。得られたフィルムロールは、そのまま製品として供給することもできるが、好ましくは所望サイズのフィルム幅にスリットしたフィルムロールとして供給することもできる。
【0079】
このようにして、水溶性フィルムを製造することができる。
【0080】
<<水溶性フィルム>>
本製造方法によって得られる水溶性フィルムは、PVA系樹脂を主成分とする水溶性フィルムである。ここでPVA系樹脂を主成分とするとは、PVA系樹脂が水溶性フィルム全体に対して、通常、50質量%以上、好ましくは55質量%以上、特に好ましくは60質量%以上含有することを意味する。かかる含有量が少なすぎると、水に対する溶解性やフィルムの機械物性が低下する傾向がある。かかる含有量の上限については、通常、液体洗剤包装体とした場合の経時的な形状安定性の点からは、99質量%以下、好ましくは95質量%以下、特に好ましくは90質量%以下である。
【0081】
なお、「水溶性フィルム」とは、常温(20℃)程度の水に溶解するフィルムを示す。本発明において、フィルムの溶解性は以下のように評価できる。水溶性フィルムを3cm×5cmのサイズにカットし、水(1リットル)を入れた1リットルビーカーに入れ治具で固定し、水温を20℃に保ちつつ、スターラーにより撹拌(回転子長3cm、回転数750rpm)して、該フィルムの直径1mm以上の不溶微粒子の分散が目視で見られない場合を溶解とする。
【0082】
本製造方法により得られる水溶性フィルムの厚みとしては、用途などにより適宜選択されるものであるが、好ましくは10~130μm、特に好ましくは15~110μm、更に好ましくは20~100μmである。かかる厚みが薄すぎるとフィルムの機械強度が低下する傾向があり、厚すぎると水への溶解速度が遅くなる傾向があり、製膜効率も低下する傾向がある。
【0083】
水溶性フィルムの幅としては、用途などにより適宜選択されるものであるが、好ましくは300~5000mm、特に好ましくは500~4000mm、更に好ましくは600~3000mmである。かかる幅が狭すぎると生産効率が低下する傾向があり、広すぎると弛みや膜厚の制御が困難になる傾向がある。
【0084】
水溶性フィルムの長さとしては、用途などにより適宜選択されるものであるが、好ましくは100~20000m、特に好ましくは800~15000m、更に好ましくは1000~10000mである。かかる長さが短すぎるとフィルムの切り替えに手間を要する傾向があり、長すぎると巻き締まりによる外観不良や質量が重くなりすぎる傾向がある。
【0085】
また、水溶性フィルムの表面は平滑であってもよいが、耐ブロッキング性、加工時の滑り性、製品同士の密着性軽減、及び外観の点から、フィルムの片面あるいは両面にエンボス模様や微細凹凸模様、特殊彫刻柄、などの凹凸加工を施しておくことも好ましい。
【0086】
また、水溶性フィルムの含水率は、機械強度やヒートシール性の点で3~15質量%であることが好ましく、特に好ましくは5~10質量%、更に好ましく6~8質量%である。かかる含水率が低すぎるとフィルムが硬くなりすぎて、包装体とする際の成形性や包装体の耐衝撃性が低下したり、シール不良となる傾向があり、高すぎるとブロッキングが生じやすくなる傾向がある。かかる含水率に調整するに際しては、乾燥条件や調湿条件を適宜設定することにより達成することができる。
なお、前記含水率は、JIS K 6726 3.4に準拠して測定され、得られた揮発分の値を含水率とする。
【0087】
(用途)
水溶性フィルムは、農薬や洗剤などの薬剤のユニット包装用途、(水圧)転写用フィルム、ナプキン・紙おむつなどの生理用品、オストミーバッグなどの汚物処理用品、吸血シートなどの医療用品、育苗シート・シードテープ・刺繍用基布などの一時的基材など各種の包装用途などに有用である。特に洗濯用洗剤、食器洗浄用洗剤などの薬剤のユニット包装用途に好適に用いることができる。
【0088】
[薬剤包装体]
薬剤包装体は、水溶性フィルムからなる包装体内に薬剤などが内包されてなるものである。個包装体は、保存の際には薬剤などを内包した形状が保持されている。そして、使用時には、包装体ごと水に投入し、個包装体(水溶性フィルム)が水と接触することにより個包装体(水溶性フィルム)が溶解し、薬剤などが個包装体から水に溶解又は分散して、薬剤の効果を発揮する。
【0089】
内包する薬剤としては、例えば、殺虫剤、殺菌剤、除草剤などの農薬、肥料、洗剤などが挙げられ、特に洗濯用洗剤、食器洗浄用洗剤などの洗剤が好ましい。薬剤の形状は、液体であっても固体であってもゲル状であってもよく、液体の場合は、液状であり、固体の場合は、顆粒状、錠剤状、粉状などが挙げられる。薬剤は、水に溶解又は分散させて用いる薬剤が好ましく、とりわけ液体洗剤を包装することに有用である。また、薬剤のpHは、アルカリ性、中性、酸性のいずれであってもよい。
【0090】
前記の液体洗剤としては、pH値が6~12であることが好ましく、特には6.5~11、更には7~8が好ましい。また、液体洗剤の水分量が15質量%以下であることが好ましく、特に好ましくは0.1~10質量%、更に好ましくは0.1~7質量%である。かかる範囲内であると、水溶性フィルムがゲル化したり不溶化したりすることがなく水溶性に優れることとなる。
なお、前記pH値は、JIS K 3362 8.3に準拠して測定される。また、水分量は、JIS K 3362 7.21.3に準じて測定される。
液体洗剤は、流動性で、容器に合わせて形を変える液状の薬剤であれば、その粘度は特に限定されないが、好ましくは10~200mPa・sである。なお、かかる液体薬剤の粘度は、常温下におけるB型回転粘度計にて測定される。
【0091】
水溶性フィルムを用いて、液体洗剤などの薬剤を包装して薬剤包装体とするに際しては、公知の方法を採用することができる。例えば、2枚以上の水溶性フィルムを用いて薬剤包装体を製造する方法であって、第1の水溶性フィルムを金型で真空成型し、前記真空成型によって成型された第1の水溶性フィルムに薬剤を投入し、前記成型された第1の水溶性フィルムと、他の第2の水溶性フィルムとを貼り合わせることによって薬剤を包装して薬剤包装体を製造方法が挙げられる。
【実施例0092】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、質量基準を意味する。
【0093】
まず、材料成分として、以下のものを用意した。
・PVA系樹脂(1):
20℃における4質量%水溶液粘度22mPa・s、平均ケン化度94モル%、マレイン酸モノメチルエステルによる変性量2.2モル%のカルボキシ基変性PVA系樹脂(揮発分5質量%)
・PVA系樹脂(2):
20℃における4質量%水溶液粘度22mPa・s、平均ケン化度88モル%の未変性PVA樹脂(揮発分5質量%)
・澱粉(S):
コーンスターチ(糊化温度:67℃、平均粒子径20μm)
・可塑剤(AP):
グリセリン(固形分87.5質量%)
・界面活性剤:
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩(固形分91.3質量%)
【0094】
<実施例1>
撹拌翼を備えた溶解槽内に水を投入し、当該水(水温15~20℃)を撹拌しながら、PVA系樹脂(1)、界面活性剤を同槽内に投入し、次いで、常圧条件において、水蒸気を吹き込んで同槽内温度が95℃以上になるまで昇温した後、同温度条件にて2~3時間、撹拌・加熱を行って水溶液(I)を得た。調製された水溶液(I)における固形分濃度(D’)を表1に示す。
他方、撹拌翼を備えた分散槽内に水を投入し、当該水(水温15~20℃)を撹拌しながら、澱粉(S)を同槽内に投入し、同槽内温度が30℃以下の条件にて、1~2時間の撹拌を行って水分散液(II)を得た。調製された水分散液(II)における澱粉濃度(S’)、澱粉比率(SR)、可塑剤濃度(AP’)を表1に示す。
次いで、同溶解槽内の水溶液(I)の温度(DT)を82℃に調温し、水溶液(I)100質量部に対して水分散液(II)10質量部の割合で投入し、水溶液(I)及び水分散液(II)を撹拌して混合することにより、製膜原料(III)を調製した。
【0095】
前記製膜原料(III)を用い、表面温度を80℃に調整したステンレス製のエンドレスベルトを備えたベルト製膜機により、10m/minの速度で流延法に従い製膜し、温度110℃の条件で乾燥させて、含水率9%の水溶性フィルムを得た(フィルム幅:1300mm、フィルム長さ:1000m、フィルム膜厚:90μm)。
【0096】
[凝集性評価]
前記の製膜原料(III)を用いて得られた水溶性フィルムを30cm×30cmに切り出し、デジタルマイクロスコープにより澱粉の凝集物を確認した。その結果を表1に示す。
〔評価基準〕
〇・・・最大長さが200μm以上の凝集物が確認されなかった。
△・・・最大長さが200μm以上、300μm未満の凝集物が確認された。
×・・・最大長さが300μm以上の凝集物が確認された。
【0097】
<実施例2~7、比較例1~2>
前述のPVA系樹脂(1)、澱粉、界面活性剤、可塑剤の配合組成、及び配合量を適宜調整し、実施例1の製造方法に準じて、表1に記載の各製膜原料(III)及び各水溶性フィルムを得た。得られた各水溶性フィルムについて、上記と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0098】
<実施例8、9>
前述のPVA系樹脂(1)をPVA系樹脂(2)に変更し、PVA系樹脂(2)、澱粉、界面活性剤、可塑剤の配合組成、及び配合量を適宜調整し、実施例1の製造方法に準じて、表1に記載の各製膜原料(III)及び各水溶性フィルムを得た。得られた各水溶性フィルムについて、上記と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0099】
なお、比較例1、2、実施例1、4、5、8、9は、水溶液(I)にPVA系樹脂、界面活性剤を含み、水分散液(II)に澱粉を含み、可塑剤を含まない。また、実施例2、3、6、7は、水溶液(I)にPVA系樹脂、界面活性剤を含み、水分散液(II)に澱粉、可塑剤を含む。
【0100】
【表1】
【0101】
表1に示すとおり、本願に規定する澱粉凝集指数(SID)が0.50を超える比較例1、2では、澱粉が均一に分散されておらず、サイズの大きな凝集物が存在することが確認された。
他方、本願に規定する澱粉凝集指数(SID)が0.50以下の本願実施例であれば、澱粉が均一に分散されており、サイズの大きな凝集物が存在しないことが確認された。そのため、クラックがなく、耐ブロッキング性に優れたフィルムが得られるものであり、特に包装体とした際に破袋や内容物の漏出がなく包装用途に適する。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の水溶性フィルムの製膜原料及び水溶性フィルムの製造方法によれば、耐クラック性、耐ブロッキング性に優れる水溶性フィルムを得ることができるため、かかる水溶性フィルムは各種の包装用途に好適に用いることができ、特に薬剤などのユニット包装用途に有用である。