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特開2024-141571自動焦点制御装置、自動焦点制御装置の作動方法、自動焦点制御装置の作動プログラム、並びに撮像装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141571
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】自動焦点制御装置、自動焦点制御装置の作動方法、自動焦点制御装置の作動プログラム、並びに撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/28 20210101AFI20241003BHJP
   H04N 23/67 20230101ALI20241003BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20241003BHJP
   H04N 23/611 20230101ALI20241003BHJP
   G02B 7/34 20210101ALI20241003BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20241003BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B7/28 N
H04N23/67
H04N23/60 500
H04N23/611
G02B7/34
G03B13/36
G03B15/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053301
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 比奈子
【テーマコード(参考)】
2H011
2H151
5C122
【Fターム(参考)】
2H011BA23
2H151BA06
2H151CB09
2H151DA15
5C122EA37
5C122FD01
5C122FD07
5C122FD13
5C122FH09
5C122FH11
5C122HA13
5C122HA35
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB05
5C122HB09
(57)【要約】
【課題】合焦演算の対象被写体および対象部位に適応した自動焦点制御を行うことが可能な自動焦点制御装置、自動焦点制御装置の作動方法、自動焦点制御装置の作動プログラム、並びに撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置は、撮像素子から読み出した演算用信号に基づいてフォーカスレンズの合焦位置を演算する合焦演算を行う。CPUは、検出部および焦点調整部を備える。焦点調整部は、設定部および合焦演算部を備える。検出部は、合焦演算の対象被写体の対象部位、および対象部位の周辺部位を含む矩形領域を画像生成用信号から検出する。設定部は、対象被写体および対象部位の組み合わせに基づいて、矩形領域のうちで、他の領域よりも合焦演算の寄与度が高い領域である高寄与度領域を設定することが可能である。合焦演算部は、高寄与度領域を設定した場合に、設定に応じた合焦演算を行う。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子から読み出した演算用信号に基づいてフォーカスレンズの合焦位置を演算する合焦演算を行う自動焦点制御装置であって、
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記合焦演算の対象被写体の対象部位、および前記対象部位の周辺部位を含む特定領域を画像から検出し、
前記対象被写体および前記対象部位の組み合わせに基づいて、前記特定領域のうちで、他の領域よりも前記合焦演算の寄与度が高い領域である高寄与度領域を設定することが可能であり、
前記高寄与度領域を設定した場合に、前記設定に応じた前記合焦演算を行う、
自動焦点制御装置。
【請求項2】
前記特定領域は矩形状をしている請求項1に記載の自動焦点制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記合焦演算に用いる領域を前記特定領域から前記高寄与度領域に縮小し、
縮小した前記高寄与度領域を用いて前記合焦演算を行う請求項1に記載の自動焦点制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
縮小した前記高寄与度領域のみを用いて前記合焦演算を行う請求項3に記載の自動焦点制御装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記高寄与度領域の第1方向の縮小倍率と、前記第1方向と交差する第2方向の縮小倍率とを異ならせる請求項3に記載の自動焦点制御装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記特定領域の大きさに応じて、前記高寄与度領域の縮小倍率を変更する請求項3に記載の自動焦点制御装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記特定領域に対する前記対象部位の傾きに応じて、前記縮小を制御する請求項3に記載の自動焦点制御装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記撮像素子に対する前記対象被写体の向きに応じて、前記縮小を制御する請求項3に記載の自動焦点制御装置。
【請求項9】
前記撮像素子は、被写体光の位相差を検出するための前記演算用信号を出力する位相差検出画素を含み、
前記撮像素子の向きに応じて前記位相差の検出に適した方向が異なる場合において、
前記プロセッサは、
前記撮像素子の向きに応じて、前記高寄与度領域の縮小倍率を変更する請求項3に記載の自動焦点制御装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記対象被写体が人物、または動物で、前記対象部位が人物の瞳、人物の胴体、動物の瞳、または動物の胴体であった場合、前記縮小を行う請求項3に記載の自動焦点制御装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、
前記対象被写体が人物、動物、または乗り物で、前記対象部位が人物の顔、動物の顔、または乗り物の運転席であり、
前記特定領域に対して前記対象部位が傾いていなかった場合は前記縮小を行わず、
前記特定領域に対して前記対象部位が傾いていた場合は前記縮小を行う請求項3に記載の自動焦点制御装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、
前記対象被写体が乗り物で、前記対象部位が乗り物の先頭、または乗り物の胴体であり、
前記特定領域に対して前記対象部位が傾いておらず、かつ、前記対象被写体が正面を向いていなかった場合、前記縮小を行わず、
前記特定領域に対して前記対象部位が傾いておらず、かつ、前記対象被写体が正面を向いていた場合、並びに、前記特定領域に対して前記対象部位が傾いていた場合、前記縮小を行う請求項3に記載の自動焦点制御装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、
前記高寄与度領域以外の前記他の領域の寄与度を、0よりも大きく、かつ前記高寄与度領域の寄与度よりも低い値に設定する請求項1に記載の自動焦点制御装置。
【請求項14】
請求項1に記載の自動焦点制御装置を備える撮像装置。
【請求項15】
撮像素子から読み出した演算用信号に基づいてフォーカスレンズの合焦位置を演算する合焦演算を行う自動焦点制御装置の作動方法であって、
前記合焦演算の対象被写体の対象部位、および前記対象部位の周辺部位を含む特定領域を画像から検出すること、
前記対象被写体および前記対象部位の組み合わせに基づいて、前記特定領域のうちで、他の領域よりも前記合焦演算の寄与度が高い領域である高寄与度領域を設定することが可能であること、並びに、
前記高寄与度領域を設定した場合に、前記設定に応じた前記合焦演算を行うこと、
を含む自動焦点制御装置の作動方法。
【請求項16】
撮像素子から読み出した演算用信号に基づいてフォーカスレンズの合焦位置を演算する合焦演算を行う自動焦点制御装置の作動プログラムであって、
前記合焦演算の対象被写体の対象部位、および前記対象部位の周辺部位を含む特定領域を画像から検出すること、
前記対象被写体および前記対象部位の組み合わせに基づいて、前記特定領域のうちで、他の領域よりも前記合焦演算の寄与度が高い領域である高寄与度領域を設定することが可能であること、並びに、
前記高寄与度領域を設定した場合に、前記設定に応じた前記合焦演算を行うこと、
を含む処理をコンピュータに実行させる自動焦点制御装置の作動プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、自動焦点制御装置、自動焦点制御装置の作動方法、自動焦点制御装置の作動プログラム、並びに撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、顔検出手段と、オートフォーカス対象領域決定手段と、合焦状態判定手段と、を備えるオートフォーカス制御回路が記載されている。顔検出手段は、撮影光学系によって結像される被写体像を撮影することで生成される撮影画像データに基づいて、被写体像内において被写体の顔が含まれる顔領域を特定する。オートフォーカス対象領域決定手段は、顔領域の中からオートフォーカス対象領域を決定するとともに、オートフォーカス対象領域の顔領域に対する面積比率を変更する。合焦状態判定手段は、撮影画像データ中のオートフォーカス対象領域に対応する領域のコントラストに基づいて、被写体像の結像状態を判定する。
【0003】
特許文献2には、撮影範囲内において指定された領域である一部領域における焦点検出点の密度が初期状態よりも高くなるように焦点検出点を配置し、さらに、撮影範囲内の一部領域を除いた領域における焦点検出点を初期状態よりも少なくするように焦点検出点を配置する、または、撮影範囲内の一部領域を除いた領域に焦点検出点を配置しないことにより、一部領域における焦点検出点の密度を撮影範囲内の一部領域を除いた領域における焦点検出点の密度よりも高く設定する、焦点検出制御部を備える制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-098317号公報
【特許文献2】特開2021-105734号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の技術に係る1つの実施形態は、合焦演算の対象被写体および対象部位に適応した自動焦点制御を行うことが可能な自動焦点制御装置、自動焦点制御装置の作動方法、自動焦点制御装置の作動プログラム、並びに撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の自動焦点制御装置は、撮像素子から読み出した演算用信号に基づいてフォーカスレンズの合焦位置を演算する合焦演算を行う自動焦点制御装置であって、プロセッサを備え、プロセッサは、合焦演算の対象被写体の対象部位、および対象部位の周辺部位を含む特定領域を画像から検出し、対象被写体および対象部位の組み合わせに基づいて、特定領域のうちで、他の領域よりも合焦演算の寄与度が高い領域である高寄与度領域を設定することが可能であり、高寄与度領域を設定した場合に、設定に応じた合焦演算を行う。
【0007】
特定領域は矩形状をしていることが好ましい。
【0008】
プロセッサは、合焦演算に用いる領域を特定領域から高寄与度領域に縮小し、縮小した高寄与度領域を用いて合焦演算を行うことが好ましい。この場合、プロセッサは、縮小した高寄与度領域のみを用いて合焦演算を行うことがより好ましい。
【0009】
プロセッサは、高寄与度領域の第1方向の縮小倍率と、第1方向と交差する第2方向の縮小倍率とを異ならせることが好ましい。
【0010】
プロセッサは、特定領域の大きさに応じて、高寄与度領域の縮小倍率を変更することが好ましい。
【0011】
プロセッサは、特定領域に対する対象部位の傾きに応じて、縮小を制御することが好ましい。
【0012】
プロセッサは、撮像素子に対する対象被写体の向きに応じて、縮小を制御することが好ましい。
【0013】
撮像素子は、被写体光の位相差を検出するための演算用信号を出力する位相差検出画素を含み、撮像素子の向きに応じて位相差の検出に適した方向が異なる場合において、プロセッサは、撮像素子の向きに応じて、高寄与度領域の縮小倍率を変更することが好ましい。
【0014】
プロセッサは、対象被写体が人物、または動物で、対象部位が人物の瞳、人物の胴体、動物の瞳、または動物の胴体であった場合、縮小を行うことが好ましい。
【0015】
プロセッサは、対象被写体が人物、動物、または乗り物で、対象部位が人物の顔、動物の顔、または乗り物の運転席であり、特定領域に対して対象部位が傾いていなかった場合は縮小を行わず、特定領域に対して対象部位が傾いていた場合は縮小を行うことが好ましい。
【0016】
プロセッサは、対象被写体が乗り物で、対象部位が乗り物の先頭、または乗り物の胴体であり、特定領域に対して対象部位が傾いておらず、かつ、対象被写体が正面を向いていなかった場合、縮小を行わず、特定領域に対して対象部位が傾いておらず、かつ、対象被写体が正面を向いていた場合、並びに、特定領域に対して対象部位が傾いていた場合、縮小を行うことが好ましい。
【0017】
プロセッサは、高寄与度領域以外の他の領域の寄与度を、0よりも大きく、かつ高寄与度領域の寄与度よりも低い値に設定することが好ましい。
【0018】
本開示の撮像装置は、上に記載の自動焦点制御装置を備える。
【0019】
本開示の自動焦点制御装置の作動方法は、撮像素子から読み出した演算用信号に基づいてフォーカスレンズの合焦位置を演算する合焦演算を行う自動焦点制御装置の作動方法であって、合焦演算の対象被写体の対象部位、および対象部位の周辺部位を含む特定領域を画像から検出すること、対象被写体および対象部位の組み合わせに基づいて、特定領域のうちで、他の領域よりも合焦演算の寄与度が高い領域である高寄与度領域を設定することが可能であること、並びに、高寄与度領域を設定した場合に、設定に応じた合焦演算を行うこと、を含む。
【0020】
本開示の自動焦点制御装置の作動プログラムは、撮像素子から読み出した演算用信号に基づいてフォーカスレンズの合焦位置を演算する合焦演算を行う自動焦点制御装置の作動プログラムであって、合焦演算の対象被写体の対象部位、および対象部位の周辺部位を含む特定領域を画像から検出すること、対象被写体および対象部位の組み合わせに基づいて、特定領域のうちで、他の領域よりも合焦演算の寄与度が高い領域である高寄与度領域を設定することが可能であること、並びに、高寄与度領域を設定した場合に、設定に応じた合焦演算を行うこと、
を含む処理をコンピュータに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】撮像装置の構成を示す図である。
図2】撮像素子の画素の配置を示す図である。
図3】通常画素の構成を示す図である。
図4】第1位相差検出画素の構成を示す図である。
図5】第2位相差検出画素の構成を示す図である。
図6】第1演算用信号と第2演算用信号の位相差を示すグラフである。
図7】対象設定情報を示す図である。
図8】制御部の詳細構成を示す図である。
図9】CPUの処理部を示すブロック図である。
図10】検出モデル群を示す図である。
図11】対象被写体が人物、対象部位が瞳の場合に、人物瞳検出モデルを用いて人物の瞳を検出する様子を示す図である。
図12】対象被写体が動物、対象部位が胴体の場合に、動物胴体検出モデルを用いて動物の胴体を検出する様子を示す図である。
図13】対象被写体が乗り物、対象部位が運転席の場合に、乗り物運転席検出モデルを用いて乗り物の運転席を検出する様子を示す図である。
図14】焦点調整部の詳細構成を示す図である。
図15】設定部が高寄与度領域を設定した場合の合焦演算部の処理を示す図である。
図16】対象被写体が人物、対象部位が顔の場合に、傾き判定モデルを用いて矩形領域に対して対象部位が傾いているか否かを判定する様子を示す図である。
図17】対象被写体が乗り物、対象部位が運転席の場合に、傾き判定モデルを用いて矩形領域に対して対象部位が傾いているか否かを判定する様子を示す図である。
図18】対象被写体が乗り物、対象部位が先頭の場合に、向き判定モデルを用いて対象被写体が正面を向いているか否かを判定する様子を示す図である。
図19】対象被写体が乗り物、対象部位が胴体の場合に、向き判定モデルを用いて対象被写体が正面を向いているか否かを判定する様子を示す図である。
図20】設定部により設定される高寄与度領域、および高寄与度領域の設定情報を示す図である。
図21】矩形領域の大きさと縮小倍率との関係を示すグラフである。
図22】矩形領域を高寄与度領域に縮小することを寄与度の設定に置き換えた場合の説明図である。
図23】対象被写体が人物、対象部位が胴体であった場合の矩形領域と高寄与度領域を示す図である。
図24】対象被写体が動物、対象部位が瞳であった場合の矩形領域と高寄与度領域を示す図である。
図25】対象被写体が動物、対象部位が胴体であった場合の矩形領域と高寄与度領域を示す図である。
図26】対象被写体が人物、対象部位が顔で、傾き判定部において、矩形領域に対して対象部位が傾いていないと判定した場合の設定部の処理を示す図である。
図27】対象被写体が人物、対象部位が顔で、傾き判定部において、矩形領域に対して対象部位が傾いていると判定した場合の設定部の処理を示す図である。
図28】対象被写体が乗り物、対象部位が運転席で、傾き判定部において、矩形領域に対して対象部位が傾いていないと判定した場合の設定部の処理を示す図である。
図29】対象被写体が乗り物、対象部位が運転席で、傾き判定部において、矩形領域に対して対象部位が傾いていると判定した場合の設定部の処理を示す図である。
図30】対象被写体が乗り物、対象部位が先頭で、傾き判定部において、矩形領域に対して対象部位が傾いていないと判定し、さらに、向き判定部において、対象被写体が正面を向いていないと判定した場合の設定部の処理を示す図である。
図31】対象被写体が乗り物、対象部位が先頭で、傾き判定部において、矩形領域に対して対象部位が傾いていないと判定し、さらに、向き判定部において、対象被写体が正面を向いていると判定した場合の設定部の処理を示す図である。
図32】対象被写体が乗り物、対象部位が胴体で、傾き判定部において、矩形領域に対して対象部位が傾いていないと判定し、さらに、向き判定部において、対象被写体が正面を向いていないと判定した場合の設定部の処理を示す図である。
図33】対象被写体が乗り物、対象部位が胴体で、傾き判定部において、矩形領域に対して対象部位が傾いていると判定した場合の設定部の処理を示す図である。
図34】CPUの処理手順を示すフローチャートである。
図35】CPUの処理手順を示すフローチャートである。
図36】対象被写体および対象部位の組み合わせに応じた設定部の処理をまとめた表である。
図37】撮像素子の向きが横長であった場合の高寄与度領域を示す図である。
図38】撮像素子の向きが縦長であった場合の高寄与度領域を示す図である。
図39】高寄与度領域以外の他の領域の寄与度を、0よりも大きく、かつ高寄与度領域の寄与度よりも低い値に設定する第3実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
一例として図1に示すように、撮像装置10は、例えばミラーレス一眼デジタルカメラであり、撮像光学系11および撮像素子12を備える。撮像光学系11は、撮像素子12に被写体光を結像させるための複数種のレンズを有する。具体的には、撮像光学系11は、対物レンズ13、フォーカスレンズ14、およびズームレンズ15を有する。これら各レンズ13~15は、この順に、物体側(被写体側)から結像側(撮像素子12側)に向かって配置されている。図1では簡略化しているが、各レンズ13~15は、実際には複数枚のレンズが組み合わされたレンズ群である。撮像光学系11は絞り16も有する。絞り16は撮像光学系11の最も結像側に配置されている。なお、撮像装置10は、撮像光学系11等が内蔵されたレンズ鏡胴と、撮像素子12等が内蔵された本体とが一体のタイプでもよいし、レンズ鏡胴と本体とが別体の、いわゆるレンズ交換タイプでもよい。
【0023】
フォーカスレンズ14にはフォーカスレンズ駆動機構17が設けられ、ズームレンズ15にはズームレンズ駆動機構18が設けられ、絞り16には絞り駆動機構19が設けられている。フォーカスレンズ駆動機構17は、フォーカスレンズ14を保持し、外周にカム溝が形成されたフォーカス用カム環、フォーカス用カム環を光軸OA周りに回転させることで、フォーカス用カム環を光軸OAに沿って移動させるフォーカス用モータ、およびフォーカス用モータのドライバ等を含む。ズームレンズ駆動機構18も同様に、ズームレンズ15を保持し、外周にカム溝が形成されたズーム用カム環、ズーム用カム環を光軸OA周りに回転させることで、ズーム用カム環を光軸OAに沿って移動させるズーム用モータ、およびズーム用モータのドライバ等を含む。絞り駆動機構19は、絞り16の複数枚の絞り羽根を開閉する絞り用モータ、および絞り用モータのドライバ等を含む。
【0024】
フォーカス用モータ、ズーム用モータ、および絞り用モータは、例えばステッピングモータである。この場合、フォーカス用モータ、ズーム用モータ、および絞り用モータの駆動量から、光軸OA上のフォーカスレンズ14の位置とズームレンズ15の位置、並びに絞り16の開度を導き出すことができる。なお、フォーカス用モータおよびズーム用モータの駆動量ではなく、位置センサを設けて、フォーカスレンズ14およびズームレンズ15の位置を検出してもよい。
【0025】
各駆動機構17~19のモータあるいはドライバ等の電気部品は、制御部20に接続されている。各駆動機構17~19の電気部品は、制御部20の制御の下で駆動される。より詳しくは、制御部20は、操作部21を介して入力されたユーザからの指示等に応じた駆動信号を発して、各駆動機構17~19の電気部品を駆動させる。例えば、操作部21の画角変更スイッチを介して画角を望遠側に変更する指示が入力された場合、制御部20は、ズームレンズ駆動機構18のズーム用モータのドライバに駆動信号を発して、ズームレンズ15を望遠側に移動させる。
【0026】
フォーカス用モータ、ズーム用モータ、および絞り用モータは、駆動量を制御部20に出力する。制御部20は、駆動量から光軸OA上のフォーカスレンズ14とズームレンズ15の位置、並びに絞り16の開度を導き出す。
【0027】
撮像素子12は、例えばCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサであり、被写体光を撮像する撮像面42(図2参照)を有している。撮像素子12は、撮像面42の中心が光軸OAと一致し、かつ撮像面42が光軸OAと直交するよう配されている。なお、ここでいう「一致」および「直交」とは、完全な一致および直交の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差を含めた意味合いでの一致および直交を指す。
【0028】
撮像素子12には撮像素子ドライバ22が接続されている。撮像素子ドライバ22は制御部20に接続されている。撮像素子ドライバ22は、制御部20の制御の下、撮像素子12に垂直走査信号および水平走査信号を供給する等して、撮像素子12による被写体光の撮像タイミングを制御する。
【0029】
撮像光学系11と撮像素子12の間にはシャッター23が設けられている。シャッター23は、例えば先幕および後幕を有するフォーカルプレーンシャッターである。シャッター23にはシャッター駆動機構24が接続されている。シャッター駆動機構24は、先幕および後幕を保持し、かつその保持を解除して先幕および後幕を走行させる電磁石、およびそのドライバ等を含む。シャッター駆動機構24は、制御部20の制御の下で駆動し、シャッター23を開閉させる。
【0030】
制御部20は、画像入力コントローラ25、画像メモリ26、および画像処理部27といった各部と、バスライン28を通じて接続されている。バスライン28には他に、VRAM(Video Random Access Memory)29、表示制御部30、メディアコントローラ31、および指示受付部32等が接続されている。なお、図示は省略したが、バスライン28には、ストロボ装置の駆動を制御するストロボ駆動制御部、USB(Universal Serial Bus)端子といった接続端子を介して外部装置と通信する外部通信I/F(Interface)、あるいは無線通信I/F等も接続されている。
【0031】
画像入力コントローラ25には、被写体光を撮像して得られた画像データが撮像素子12から入力される。画像入力コントローラ25は、画像データを画像メモリ26に出力する。画像メモリ26は、例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)であり、画像データを一時的に記憶する。
【0032】
画像処理部27は、画像メモリ26から未処理の画像データを読み出す。画像処理部27は画像データに対して各種画像処理を施す。各種画像処理は、例えば、オフセット補正処理、感度補正処理、画素補間処理、ホワイトバランス補正処理、ガンマ補正処理、デモザイク処理、輝度信号および色差信号生成処理、輪郭強調処理、色補正処理等である。画像処理部27は、各種画像処理後の画像データを画像メモリ26に書き戻す。
【0033】
VRAM29には、各種画像処理後の画像データであって、ライブビュー画像(スルー画像とも呼ばれる)として表示するための画像データが画像メモリ26から入力される。VRAM29は、連続する2フレーム分の画像データを記憶する領域を有する。VRAM29に記憶される画像データは、順次新しい画像データに書き換えられる。VRAM29は、連続する2フレーム分の画像データのうちの新しいほうの画像データを、順次表示制御部30に出力する。
【0034】
表示制御部30は、VRAM29からの画像データをビデオデータに変換し、ファインダモニタ33および背面モニタ34のうちのいずれかに出力する、いわゆるビデオエンコーダの機能を担う。これにより、ファインダモニタ33および背面モニタ34のうちのいずれかを通じて、ユーザはライブビュー画像を視認することができる。ライブビュー画像の表示フレームレートは、例えば60fps(frame per seconds)である。
【0035】
なお、ビデオデータをファインダモニタ33および背面モニタ34のうちのいずれに出力するかは、例えば以下のように決定する。すなわち、ファインダに瞳検出センサを設けておく。そして、瞳検出センサによりユーザがファインダを覗いていると検出した場合は、ファインダモニタ33にビデオデータを出力する。対して、瞳検出センサによりユーザがファインダを覗いていないと検出した場合は、背面モニタ34にビデオデータを出力する。
【0036】
操作部21のレリーズボタンの全押し操作により静止画または動画の撮影開始指示が行われた場合、画像処理部27は、画像メモリ26の画像データに対して圧縮処理を施す。静止画の場合、画像処理部27は、画像データに対して例えばJPEG(Joint Photographic Experts Group)形式の圧縮処理を施す。動画の場合、画像処理部27は、画像データに対して例えばMPEG(Moving Picture Experts Group)形式の圧縮処理を施す。画像処理部27は、圧縮処理後の画像データをメディアコントローラ31に出力する。
【0037】
メディアコントローラ31は、画像処理部27からの圧縮処理後の画像データをメモリカード35に記録する。メモリカード35は、図示省略したメモリカードスロットに着脱可能に装着される。
【0038】
操作部21のモード切替スイッチを介して画像再生モードが選択された場合、メディアコントローラ31は、画像データをメモリカード35から読み出し、画像処理部27に出力する。画像処理部27は、メモリカード35からの画像データに対して伸張処理を施す。伸張処理後の画像データは表示制御部30に出力される。表示制御部30は画像データをビデオデータに変換し、背面モニタ34に出力する。これにより、背面モニタ34を通じて、ユーザは再生画像を視認することができる。
【0039】
指示受付部32は、操作部21、および背面モニタ34と一体的に設けられたタッチパネル36を介してユーザから入力される各種操作指示を受け付ける。指示受付部32は、受け付けた各種操作指示を、バスライン28を通じて制御部20に出力する。
【0040】
操作部21は、前述のように、画角変更スイッチ、レリーズボタン、およびモード切替スイッチを含む。レリーズボタンは、半押し操作および全押し操作が可能な2段階の押しボタンである。レリーズボタンの半押し操作により静止画または動画の撮影準備指示が行われ、全押し操作により静止画または動画の撮影開始指示が行われる。これらの他にも、操作部21は、背面モニタ34に各種設定メニューを表示させるためのメニューボタン、数値設定および選択肢の切替等に用いられる十字キー、設定を確定させる際等に操作される確定ボタンといったものを含む。タッチパネル36は、背面モニタ34の表示面に重畳されている。タッチパネル36は、ユーザの指またはスタイラスペン等の専用の指示器の接触を検知することで、ユーザからの各種操作指示を認識する。
【0041】
モード切替スイッチにより切替可能なモードには、静止画撮影モード、動画撮影モード、画像再生モード、および設定モード等がある。静止画撮影モードには、1枚の静止画を撮影する通常撮影モードはもちろんのこと、所定の撮影間隔(例えば5fps~10fpsのフレームレート)で連続的に静止画を撮影する連写撮影モードも含まれている。連写撮影モードは、例えば、レリーズボタンの全押し状態を所定時間以上(例えば1秒以上)継続した場合に発動する。連写撮影モードは、レリーズボタンの全押し状態が解除された場合に終了する。
【0042】
一例として図2に示すように、撮像素子12には光電変換部40が設けられている。光電変換部40は、X方向およびY方向に沿って2次元状に配列された複数の画素41により構成される。複数の画素41は撮像面42を形成する。画素41は、周知のように、マイクロレンズ45、カラーフィルタ46、およびフォトダイオード等の光電変換素子47により構成される(いずれも図3図5参照)。なお、X方向およびY方向は、撮像装置10の底面を水平面に載置した状態における水平方向および鉛直方向である。このためX方向およびY方向は直交する。X方向は、本開示の技術に係る「第1方向」の一例である。Y方向は、本開示の技術に係る「第2方向」の一例である。
【0043】
画素41の行間には、X方向に平行な走査線が配線されている。また、画素41の列間には、Y方向に平行な信号線が配線されている。画素41(の光電変換素子47)は、増幅器およびスイッチを介して信号線に接続されている。スイッチには走査線も接続されている。被写体光に応じた信号電荷を画素41(の光電変換素子47)に蓄積する蓄積動作の場合には、走査線を通じて垂直走査信号としてオフ信号が供給されてスイッチがオフされる。信号電荷に応じた画像信号(電圧信号)43を画素41(の光電変換素子47)から読み出す読み出し動作の場合には、走査線を通じて垂直走査信号としてオン信号が供給されてスイッチがオンされる。信号線の末端はCDS(Correlated Double Sampling)回路およびADC(Analog to Digital Converter)回路に接続されている。CDS回路は、信号線を通じて入力された画像信号43に対して相関二重サンプリングを施す。ADC回路は、相関二重サンプリング後の画像信号43をデジタルの画像信号43に変換する。
【0044】
画素41は、カラーフィルタ46の種類によって、緑色の波長帯域の光に感度を有する緑色画素(図2においては「G」と表記)、赤色の波長帯域の光に感度を有する赤色画素(図2においては「R」と表記)、および青色の波長帯域の光に感度を有する青色画素(図2においては「B」と表記)の3種に分かれる。3種の画素41は、既定の配列にて規則的に並べられている。既定の配列として、ここでは縦横2×2の画素に緑色画素を2つ、青色画素および赤色画素を1つずつ配置した、いわゆるベイヤー配列を例示している。
【0045】
画素41には、通常画素41Nと位相差検出画素41Pとがある。位相差検出画素41Pにはさらに、第1位相差検出画素411Pと第2位相差検出画素412Pとがある。通常画素41Nは緑色画素、青色画素、赤色画素の3種があるが、位相差検出画素41Pは緑色画素のみである。
【0046】
位相差検出画素41Pは、X方向およびY方向に所定の間隔を空けて配置されている。図2においては、位相差検出画素41Pは、X方向に5画素分の間隔、Y方向に2画素分の間隔を空けて配置されている。また、位相差検出画素41Pは、第1位相差検出画素411Pと第2位相差検出画素412PとがX方向およびY方向で交互に現れるように配置されている。例えば4行目を見た場合、位相差検出画素41Pは、左から右に第2位相差検出画素412P、第1位相差検出画素411P、・・・の順に配置されている。また、例えば10列目を見た場合、位相差検出画素41Pは、上から下に第2位相差検出画素412P、第1位相差検出画素411P、第2位相差検出画素412P、第1位相差検出画素411P、・・・の順に配置されている。X方向およびY方向において隣り合う第1位相差検出画素411Pおよび第2位相差検出画素412Pは、位相差α(図6参照)を検出するための1つの組を構成する。
【0047】
一例として図3図5に示すように、通常画素41N、第1位相差検出画素411P、および第2位相差検出画素412Pは、基本的な構成は同じであり、物体側から順に配置されたマイクロレンズ45、カラーフィルタ46、および光電変換素子47により構成される。
【0048】
図3に示すように、通常画素41Nの光電変換素子47は、マイクロレンズ45で集光されてカラーフィルタ46を透過した被写体光に応じた画像生成用信号43Nを、画像信号43として出力する。画像生成用信号43Nは、画像データの一部として画像メモリ26に記憶される。
【0049】
図4および図5に示すように、第1位相差検出画素411Pおよび第2位相差検出画素412Pのカラーフィルタ46と光電変換素子47との間には、遮光部材49が配置されている。この遮光部材49は、通常画素41Nには配置されていない。第1位相差検出画素411Pの遮光部材49は、物体側から見て光電変換素子47の右半分を遮光する。対して、第2位相差検出画素412Pの遮光部材49は、物体側から見て光電変換素子47の左半分を遮光する。
【0050】
第1位相差検出画素411Pの光電変換素子47は、マイクロレンズ45で集光されてカラーフィルタ46を透過し、かつ遮光部材49で右半分が遮光された被写体光に応じた第1演算用信号431Pを、画像信号43として出力する。対して、第2位相差検出画素412Pの光電変換素子47は、マイクロレンズ45で集光されてカラーフィルタ46を透過し、かつ遮光部材49で左半分が遮光された被写体光に応じた第2演算用信号432Pを、画像信号43として出力する。第1演算用信号431Pおよび第2演算用信号432Pは、画像生成用信号43Nと同じく、画像データの一部として画像メモリ26に記憶される。第1演算用信号431Pおよび第2演算用信号432Pは、本開示の「演算用信号」の一例である。なお、以下では、特に区別する必要がない場合、第1演算用信号431Pおよび第2演算用信号432Pをまとめて演算用信号43Pと表記する。
【0051】
一例として図6に示すように、X方向およびY方向において隣り合う第1位相差検出画素411Pと第2位相差検出画素412Pから出力される第1演算用信号431Pと第2演算用信号432Pとの間には、位相差αが出現する。この位相差αによれば、フォーカスレンズ14をどちらの方向にどれだけ移動させれば合焦位置となるかが分かる。撮像装置10は、位相差αに基づいてフォーカスレンズ14の合焦位置を演算(以下、合焦演算と表記する)し、演算した合焦位置にフォーカスレンズ14を自動的に移動させる自動焦点制御を行う。
【0052】
画像生成用信号43Nは、名の通りライブビュー画像といった画像の生成に用いられる。対して演算用信号43Pは、位相差αを算出するためだけに用いられ、画像の生成には用いられない。このため、画像処理部27は、画素補間処理において、位相差検出画素41Pの周囲の通常画素41Nの画像生成用信号43Nを用いて、位相差検出画素41Pの画素値を補間する。
【0053】
一例として図7に示すように、ユーザは、操作部21を介して、自動焦点制御の対象設定情報50を入力する。対象設定情報50は、自動焦点制御における合焦演算の対象の被写体である対象被写体、および対象被写体に含まれる部位であって、自動焦点制御における合焦演算の対象の部位である対象部位を含む。対象被写体は、ユーザが焦点を合わせたい被写体であり、対象部位は、ユーザが焦点を合わせたい被写体の部位である。対象被写体には、図示の人物の他に、動物、乗り物、花、山、建物等がある。動物は、例えば、犬、猫、および鳥等である。乗り物は、例えば、自動車、鉄道車両、および飛行機等である。対象部位には、図示の人物の瞳の他に、人物の顔、人物の胴体、動物の瞳、動物の顔、動物の胴体、乗り物の運転席、乗り物の先頭、乗り物の胴体等がある。
【0054】
ここで、人物または動物の瞳とは、瞳孔、いわゆる黒目のことである。人物または動物の顔とは、額、頬、顎、目、鼻、口、耳等を有する部分のことである。人物または動物の胴体とは、頭、首、四肢、尾を除く部分のことである。乗り物の運転席とは、自動車であれば、フロントパネル、運転席、助手席等を覆うフロントウィンドウ、鉄道車両であれば先頭車両の運転台および運転席を覆うフロントウィンドウ、飛行機であればコックピットを覆うフロントウィンドウのことである。乗り物の先頭とは、自動車であればフロントボディ、鉄道車両であれば、先頭車両の行先表示器、フロントウィンドウ、前照灯等を有する部分、飛行機であれば、レドーム、フロントウィンドウ等を有する機首部分のことである。乗り物の胴体とは、自動車であれば車輪を除くボディ全体、鉄道車両であれば、先頭車両、中間車両、最後尾車両の如何に関わらず、車輪を除くボディ全体、飛行機であれば、先頭、主翼、尾翼等を除くボディ全体のことである。
【0055】
指示受付部32は対象設定情報50を受け付ける。指示受付部32は、対象設定情報50を制御部20に出力する。制御部20は対象設定情報50の対象部位を含む矩形領域RA(図11等参照)を検出し、検出した矩形領域RAに焦点を合わせるべく自動焦点制御を行う。矩形領域RAは、本開示の技術に係る「特定領域」の一例である。
【0056】
一例として図8に示すように、制御部20は、ストレージ55、CPU(Central Processing Unit)56、およびメモリ57を備える。これらストレージ55、CPU56、およびメモリ57は、バスライン58を介して相互接続されている。制御部20は、本開示の技術に係る「自動焦点制御装置」および「コンピュータ」の一例である。
【0057】
ストレージ55は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)といった不揮発性の記憶装置である。ストレージ55は、各種プログラム、および各種プログラムに付随する各種データ等を記憶する。なお、EEPROMに代えて、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)、あるいはMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)をストレージ55として用いてもよい。
【0058】
メモリ57は、CPU56が処理を実行するためのワークメモリである。CPU56は、ストレージ55に記憶されたプログラムをメモリ57へロードして、プログラムにしたがった処理を実行する。これによりCPU56は撮像装置10の各部を統括的に制御する。CPU56は、本開示の技術に係る「プロセッサ」の一例である。なお、メモリ57は、CPU56に内蔵されていてもよい。
【0059】
一例として図9に示すように、ストレージ55には作動プログラム65が記憶されている。作動プログラム65は、CPU56に自動焦点制御等を行わせるためのプログラムである。すなわち、作動プログラム65は、本開示の技術に係る「自動焦点制御装置の作動プログラム」の一例である。ストレージ55には、作動プログラム65に加えて、検出モデル群66および判定モデル群67も記憶されている。検出モデル群66は、対象部位毎に用意された、対象部位を含む矩形領域RAを検出するための機械学習モデルの集合である(図10参照)。判定モデル群67は、各種判定用の機械学習モデルの集合である(図14参照)。
【0060】
作動プログラム65が起動されると、CPU56は、メモリ57等と協働して、検出部70および焦点調整部71として機能する。検出部70は、画像メモリ26から画像生成用信号43Nを読み出す。画像生成用信号43Nは、2次元の画像データとして扱うことができる。検出部70は、検出モデル群66の複数の機械学習モデルのうち、対象設定情報50の対象部位に対応する機械学習モデルを用いて、画像生成用信号43Nから対象部位を含む矩形領域RAを検出する。検出部70は、矩形領域RAの検出結果72を焦点調整部71に出力する。
【0061】
焦点調整部71は、画像メモリ26から演算用信号43Pを読み出す。演算用信号43Pは、具体的には、第1位相差検出画素411Pから出力された複数の第1演算用信号431Pを、第1位相差検出画素411Pの配置に倣ってX方向およびY方向に2次元状に並べたデータと、第2位相差検出画素412Pから出力された複数の第2演算用信号432Pを、第2位相差検出画素412Pの配置に倣ってX方向およびY方向に2次元状に並べたデータである。このため、演算用信号43Pは、画像生成用信号43Nと同じく、2次元の画像データとして扱うことができる。焦点調整部71は、例えば、レリーズボタンの半押し操作により静止画または動画の撮影準備指示が行われた場合に、演算用信号43Pに基づいて自動焦点制御を行う。自動焦点制御の詳細については後述する。
【0062】
一例として図10に示すように、検出モデル群66は、人物の瞳を含む矩形領域RAを検出する人物瞳検出モデル75、人物の顔を含む矩形領域RAを検出する人物顔検出モデル76、および人物の胴体を含む矩形領域RAを検出する人物胴体検出モデル77を有する。また、検出モデル群66は、動物の瞳を含む矩形領域RAを検出する動物瞳検出モデル78、動物の顔を含む矩形領域RAを検出する動物顔検出モデル79、および動物の胴体を含む矩形領域RAを検出する動物胴体検出モデル80を有する。さらに、検出モデル群66は、乗り物の運転席を含む矩形領域RAを検出する乗り物運転席検出モデル81、乗り物の先頭を含む矩形領域RAを検出する乗り物先頭検出モデル82、および乗り物の胴体を含む矩形領域RAを検出する乗り物胴体検出モデル83を有する。これらの検出モデル75~83は、画像生成用信号43N(で表される2次元の画像データ)が入力された場合に矩形領域RAの検出結果72を出力するよう学習された機械学習モデルであり、例えば畳み込みニューラルネットワークにより構築されている。なお、検出モデル群66は、これらの検出モデル75~83以外にも多数の検出モデルを含んでいる。
【0063】
一例として図11に示すように、対象設定情報50の対象被写体が人物、対象部位が瞳であった場合、検出部70は、人物瞳検出モデル75に画像生成用信号43Nを入力する。この画像生成用信号43Nの入力に応じて、人物瞳検出モデル75は、人物の瞳を含む矩形領域RAの検出結果72を出力する。検出結果72は、例えば、人物の瞳を含む矩形領域RAの2つの対角点P1およびP2のXY座標である。なお、図示は省略したが、対象設定情報50の対象被写体が人物、対象部位が顔または胴体であった場合は、検出部70は、人物顔検出モデル76または人物胴体検出モデル77に画像生成用信号43Nを入力し、人物顔検出モデル76または人物胴体検出モデル77から検出結果72を出力させる。
【0064】
一例として図12に示すように、対象設定情報50の対象被写体が動物、対象部位が胴体であった場合、検出部70は、動物胴体検出モデル80に画像生成用信号43Nを入力する。この画像生成用信号43Nの入力に応じて、動物胴体検出モデル80は、動物の胴体を含む矩形領域RAの検出結果72を出力する。検出結果72は、例えば、動物の胴体を含む矩形領域RAの2つの対角点P1およびP2のXY座標である。なお、図示は省略したが、対象設定情報50の対象被写体が動物、対象部位が瞳または顔であった場合は、検出部70は、動物瞳検出モデル78または動物顔検出モデル79に画像生成用信号43Nを入力し、動物瞳検出モデル78または動物顔検出モデル79から検出結果72を出力させる。
【0065】
一例として図13に示すように、対象設定情報50の対象被写体が乗り物、対象部位が運転席であった場合、検出部70は、乗り物運転席検出モデル81に画像生成用信号43Nを入力する。この画像生成用信号43Nの入力に応じて、乗り物運転席検出モデル81は、乗り物の運転席を含む矩形領域RAの検出結果72を出力する。検出結果72は、例えば、乗り物の運転席を含む矩形領域RAの2つの対角点P1およびP2のXY座標である。なお、図示は省略したが、対象設定情報50の対象被写体が乗り物、対象部位が先頭または胴体であった場合は、検出部70は、乗り物先頭検出モデル82または乗り物胴体検出モデル83に画像生成用信号43Nを入力し、乗り物先頭検出モデル82または乗り物胴体検出モデル83から検出結果72を出力させる。
【0066】
図11図13のいずれの場合も、矩形領域RAは対象部位よりも一回り大きい。このため、矩形領域RAは、対象部位だけでなく、対象部位の周辺部位も含む。例えば対象部位が瞳であった場合、周辺部位は、眼球結膜(いわゆる白目)、上瞼、下瞼、目頭、目尻等を含む(図11参照)。また、対象部位が胴体であった場合、周辺部位は、顔の一部、四肢の一部、尾の一部、および背景等を含む(図12参照)。
【0067】
一例として図14に示すように、焦点調整部71は、傾き判定部90、向き判定部91、設定部92、合焦演算部93、およびフォーカスレンズ駆動制御部94を備える。
【0068】
傾き判定部90および向き判定部91には、画像生成用信号43N、対象設定情報50、および検出結果72が入力される。また、傾き判定部90には判定モデル群67の傾き判定モデル100が入力され、向き判定部91には判定モデル群67の向き判定モデル101が入力される。
【0069】
傾き判定部90は、対象設定情報50の対象被写体が人物または動物、対象部位が顔であった場合に稼働する。また、傾き判定部90は、対象設定情報50の対象被写体が乗り物であった場合に稼働する。傾き判定部90は、検出結果72から画像生成用信号43N内の矩形領域RAを特定する。そして、傾き判定モデル100を用いて、矩形領域RAに対して対象部位が傾いているか否かを判定する。傾き判定部90は、矩形領域RAに対して対象部位が傾いているか否かの判定結果である傾き判定結果102を設定部92に出力する。なお、傾き判定モデル100の代わりに、パターンマッチングにより矩形領域RAに対して対象部位が傾いているか否かを判定してもよい。
【0070】
向き判定部91は、対象設定情報50の対象被写体が乗り物、対象部位が先頭または胴体で、かつ、傾き判定部90において、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていないと判定した場合に稼働する。向き判定部91は、検出結果72から画像生成用信号43N内の矩形領域RAを特定する。そして、向き判定モデル101を用いて、撮像素子12に対する対象被写体の向きを判定する。より詳しくは、対象被写体が正面を向いているか否かを判定する。向き判定部91は、対象被写体が正面を向いているか否かの判定結果である向き判定結果103を設定部92に出力する。なお、向き判定モデル101の代わりに、パターンマッチングにより対象被写体が正面を向いているか否かを判定してもよい。
【0071】
設定部92には対象設定情報50が入力される。設定部92は、対象設定情報50の対象被写体および対象部位の組み合わせに基づいて、矩形領域RAのうちで、他の領域よりも合焦演算の寄与度が高い領域である高寄与度領域HCA(図20等参照)を設定する。設定部92は、高寄与度領域HCAの設定情報104を合焦演算部93に出力する。
【0072】
合焦演算部93には演算用信号43Pが入力される。設定部92が高寄与度領域HCAを設定した場合、合焦演算部93は、設定情報104に応じた合焦演算を行う。具体的には、一例として図15に示すように、合焦演算部93は、設定情報104に基づいて、全ての演算用信号43Pのうちで、高寄与度領域HCA内の位相差検出画素41Pから出力された演算用信号43Pを選定する。合焦演算部93は、選定後演算用信号43PSを用いて合焦演算を行う。つまり、合焦演算部93は、高寄与度領域HCAのみを用いて合焦演算を行う。一方、設定部92が高寄与度領域HCAを設定しなかった場合、合焦演算部93は、全ての演算用信号43Pのうちで、矩形領域RA内の位相差検出画素41Pから出力された演算用信号43Pを選定し、選定した演算用信号43Pを用いて合焦演算を行う。合焦演算部93は、合焦演算の演算結果105をフォーカスレンズ駆動制御部94に出力する。演算結果105は、フォーカスレンズ14の合焦位置を含む。
【0073】
フォーカスレンズ駆動制御部94は、フォーカスレンズ駆動機構17、ひいてはフォーカスレンズ14の駆動を制御する。具体的には、フォーカスレンズ駆動制御部94は、フォーカスレンズ駆動機構17を介して、演算結果105の合焦位置にフォーカスレンズ14を移動させる。なお、フォーカスレンズ14の現在位置と演算結果105の合焦位置とが同じであった場合は、当然ながらフォーカスレンズ駆動制御部94は何もせず、フォーカスレンズ14は移動されない。
【0074】
一例として図16に示すように、対象設定情報50の対象被写体が人物、対象部位が顔であった場合、傾き判定部90は、傾き判定モデル100に画像生成用信号43N(で表される2次元の画像データ)のうちの矩形領域RAの画像生成用信号43Nを入力する。この矩形領域RAの画像生成用信号43Nの入力に応じて、傾き判定モデル100は傾き判定結果102を出力する。なお、図16においては、便宜上、全ての画像生成用信号43Nを傾き判定モデル100に入力している態で描いているが、実際は矩形領域RAの画像生成用信号43Nが傾き判定モデル100に入力される。続く図17も同様である。
【0075】
傾き判定結果102は、図示のように矩形領域RAに対して対象部位である顔が傾いていた場合は「傾いている」、矩形領域RAに対して対象部位である顔が傾いていない場合は「傾いていない」という内容である。ここで、矩形領域RAに対して対象部位が「傾いている」とは、矩形領域RAのX方向の辺またはY方向の辺と対象部位の中心線とのなす角度が、例えば20°以上であった場合と定義する。対象部位が顔の場合、対象部位の中心線は、眉間および鼻等の中心を通る、顔を左右に等分する線である。なお、図示は省略したが、対象設定情報50の対象被写体が動物、対象部位が顔であった場合も同様に、傾き判定部90は、傾き判定モデル100に矩形領域RAの画像生成用信号43Nを入力し、傾き判定モデル100から傾き判定結果102を出力させる。
【0076】
一例として図17に示すように、対象設定情報50の対象被写体が乗り物、対象部位が運転席であった場合も同様に、傾き判定部90は、傾き判定モデル100に矩形領域RAの画像生成用信号43Nを入力し、傾き判定モデル100から傾き判定結果102を出力させる。この場合の対象部位の中心線は、運転席を左右に等分する線である。なお、図示は省略したが、対象設定情報50の対象被写体が乗り物、対象部位が先頭または胴体であった場合も同様に、傾き判定部90は、傾き判定モデル100に矩形領域RAの画像生成用信号43Nを入力し、傾き判定モデル100から傾き判定結果102を出力させる。
【0077】
一例として図18に示すように、対象設定情報50の対象被写体が乗り物、対象部位が先頭で、かつ、傾き判定部90において、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていないと判定した場合、向き判定部91は、向き判定モデル101に画像生成用信号43N(で表される2次元の画像データ)のうちの矩形領域RAの画像生成用信号43Nを入力する。この矩形領域RAの画像生成用信号43Nの入力に応じて、向き判定モデル101は向き判定結果103を出力する。なお、図18においては、便宜上、全ての画像生成用信号43Nを向き判定モデル101に入力している態で描いているが、実際は矩形領域RAの画像生成用信号43Nが向き判定モデル101に入力される。続く図19も同様である。
【0078】
向き判定結果103は、対象被写体が正面を向いていた場合は「正面を向いている」、図示のように対象被写体が正面を向いていない場合は「正面を向いていない」という内容である。ここで、対象被写体が「正面を向いていない」とは、対象被写体が真正面を向いていた場合を0°として、対象被写体が上下左右いずれかに例えば30°以上回転していた場合と定義する。
【0079】
一例として図19に示すように、対象設定情報50の対象被写体が乗り物、対象部位が胴体で、かつ、傾き判定部90において、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていないと判定した場合も同様に、向き判定部91は、向き判定モデル101に矩形領域RAの画像生成用信号43Nを入力し、向き判定モデル101から向き判定結果103を出力させる。
【0080】
一例として図20に示すように、設定部92は、合焦演算部93における合焦演算に用いる領域を、矩形領域RAから高寄与度領域HCAに縮小する。図20においては、対象設定情報50の対象被写体が人物、対象部位が瞳であった場合を例示している。この場合、設定部92は、矩形領域RAの中心点を基準にして、矩形領域RAを高寄与度領域HCAに縮小する。設定部92は、高寄与度領域HCAの2つの対角点P3およびP4のXY座標を、設定情報104として出力する。
【0081】
矩形領域RAから高寄与度領域HCAへのX方向の縮小倍率は、矩形領域RAのX方向の辺の長さをXR、高寄与度領域HCAのX方向の辺の長さをXHCとした場合、XHC/XRと表される。また、矩形領域RAから高寄与度領域HCAへのY方向の縮小倍率は、矩形領域RAのY方向の辺の長さをYR、高寄与度領域HCAのY方向の辺の長さをYHCとした場合、YHC/YRと表される。対象設定情報50の対象被写体が人物、対象部位が瞳であった場合、設定部92は、高寄与度領域HCAのY方向の縮小倍率YHC/YRを、X方向の縮小倍率XHC/XRよりも小さくする(XHC/XR>YHC/YR)。言い換えると、設定部92は、X方向と比べてY方向に矩形領域RAをより縮小して高寄与度領域HCAとする。つまり、設定部92は、高寄与度領域HCAのX方向の縮小倍率とY方向の縮小倍率とを異ならせる。
【0082】
また、設定部92は、一例として図21にグラフで示すように、矩形領域RAの大きさに応じて、高寄与度領域HCAの縮小倍率を変更する。より詳しくは、矩形領域RAの大きさが0以上S1未満であった場合、設定部92は、高寄与度領域HCAの縮小倍率を1に設定する。縮小倍率を1に設定するとは、縮小しないという意味である。矩形領域RAの大きさがS1以上S2未満であった場合、設定部92は、高寄与度領域HCAの縮小倍率を1から漸減させた値に設定する。矩形領域RAの大きさがS2以上であった場合、設定部92は、高寄与度領域HCAの縮小倍率をMCに設定する。
【0083】
ここで、S1は、ライブビュー画像の表示において、対象部位ではなく周辺部位に焦点が合っているとユーザが分かってしまう最小の矩形領域RAの大きさである。このため設定部92は、矩形領域RAの大きさが0以上S1未満であった場合は高寄与度領域HCAの縮小倍率を1に設定し、矩形領域RAを縮小しない。S2は、縮小した高寄与度領域HCAによる合焦演算が非合焦となる確率が予め設定された閾値未満となる中で最大の矩形領域RAの大きさである。MCは、矩形領域RAの大きさが上記のS2であった場合の縮小倍率である。
【0084】
こうした矩形領域RAの大きさと縮小倍率との関係は、X方向およびY方向の方向毎に用意され、ストレージ55に記憶されている。また、矩形領域RAの大きさと縮小倍率との関係は、対象被写体および対象部位の組み合わせ毎に用意され、ストレージ55に記憶されている。方向毎の矩形領域RAの大きさと縮小倍率との関係は、X方向とY方向とで縮小倍率が異なっていたり、S1、S2、MCといった指標値の大きさが異なっていたりする。また、対象被写体および対象部位の組み合わせ毎の矩形領域RAの大きさと縮小倍率との関係は、対象被写体および対象部位の組み合わせによって縮小倍率が異なっていたり、S1、S2、MCといった指標値の大きさが異なっていたりする。
【0085】
このように、設定部92は、図21で示した矩形領域RAの大きさと縮小倍率との関係に応じた縮小倍率を矩形領域RAに適用することで、矩形領域RAを高寄与度領域HCAに縮小するのであるが、これを寄与度の設定に置き換えると、一例として図22に示すようになる。すなわち、設定部92は、高寄与度領域HCAの寄与度を最高値の1に設定する。また、設定部92は、矩形領域RAから高寄与度領域HCAを除いた四角環状の領域SRAの寄与度を最低値の0に設定する。こうして高寄与度領域HCAの寄与度を1、四角環状の領域SRAの寄与度を0に設定することと、矩形領域RAを高寄与度領域HCAに縮小することとは同義である。なお、四角環状の領域SRAは、本開示の技術に係る「他の領域」の一例である。
【0086】
一例として図23図25に、様々な対象被写体および対象部位の組み合わせにおける矩形領域RAと高寄与度領域HCAを示す。図23は、対象設定情報50の対象被写体が人物、対象部位が胴体であった場合を例示している。この場合も図20の場合と同じく、設定部92は、矩形領域RAの中心点を基準にして、矩形領域RAを高寄与度領域HCAに縮小する。ただしこの場合、図20の場合とは逆に、設定部92は、高寄与度領域HCAのX方向の縮小倍率を、Y方向の縮小倍率よりも小さくし、Y方向と比べてX方向に矩形領域RAをより縮小して高寄与度領域HCAとする。
【0087】
図24は、対象設定情報50の対象被写体が動物、対象部位が瞳であった場合を例示している。この場合も図20の場合と同じく、設定部92は、矩形領域RAの中心点を基準にして、矩形領域RAを高寄与度領域HCAに縮小する。また、図20の場合と同じく、設定部92は、高寄与度領域HCAのY方向の縮小倍率を、X方向の縮小倍率よりも小さくし、X方向と比べてY方向に矩形領域RAをより縮小して高寄与度領域HCAとする。
【0088】
図25は、対象設定情報50の対象被写体が動物、対象部位が胴体であった場合を例示している。この場合も図20の場合と同じく、設定部92は、矩形領域RAの中心点を基準にして、矩形領域RAを高寄与度領域HCAに縮小する。また、図20の場合と同じく、設定部92は、高寄与度領域HCAのY方向の縮小倍率を、X方向の縮小倍率よりも小さくし、X方向と比べてY方向に矩形領域RAをより縮小して高寄与度領域HCAとする。
【0089】
一例として図26に示すように、対象設定情報50の対象被写体が人物、対象部位が顔で、傾き判定部90において、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていないと判定した場合、設定部92は、矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小を行わない。一方、一例として図27に示すように、対象設定情報50の対象被写体が人物、対象部位が顔で、傾き判定部90において、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていると判定した場合、設定部92は、矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小を行う。
【0090】
また、一例として図28に示すように、対象設定情報50の対象被写体が乗り物、対象部位が運転席で、傾き判定部90において、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていないと判定した場合、設定部92は、矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小を行わない。一方、一例として図29に示すように、対象設定情報50の対象被写体が乗り物、対象部位が運転席で、傾き判定部90において、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていると判定した場合、設定部92は、矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小を行う。このように、設定部92は、矩形領域RAに対する対象部位の傾きに応じて、矩形領域RAの縮小を制御する。より詳しくは、設定部92は、矩形領域RAに対して対象部位が傾いているか否かに基づいて、矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小を行うか否かを決定する。
【0091】
一例として図30に示すように、対象設定情報50の対象被写体が乗り物、対象部位が先頭で、傾き判定部90において、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていないと判定し、さらに、向き判定部91において、対象被写体が正面を向いていないと判定した場合、設定部92は、矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小を行わない。一方、一例として図31に示すように、対象設定情報50の対象被写体が乗り物、対象部位が先頭で、傾き判定部90において、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていないと判定し、さらに、向き判定部91において、対象被写体が正面を向いていると判定した場合、設定部92は、矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小を行う。
【0092】
一例として図32に示すように、対象設定情報50の対象被写体が乗り物、対象部位が胴体で、傾き判定部90において、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていないと判定し、さらに、向き判定部91において、対象被写体が正面を向いていないと判定した場合、設定部92は、矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小を行わない。このように、設定部92は、撮像素子12に対する対象被写体の向きに応じて、矩形領域RAの縮小を制御する。より詳しくは、設定部92は、対象被写体が正面を向いているか否かに基づいて、矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小を行うか否かを決定する。
【0093】
一例として図33に示すように、対象設定情報50の対象被写体が乗り物、対象部位が胴体で、傾き判定部90において、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていると判定した場合、設定部92は、矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小を行う。
【0094】
次に、上記構成による作用について、一例として図34および図35に示すフローチャートを参照して説明する。CPU56は、図9で示したように、作動プログラム65の起動により、検出部70および焦点調整部71として機能される。図14で示したように、焦点調整部71は、傾き判定部90、向き判定部91、設定部92、合焦演算部93、およびフォーカスレンズ駆動制御部94として機能される。
【0095】
例えば静止画撮影モードまたは動画撮影モードにおいて、レリーズボタンの半押し操作に応じた静止画または動画の撮影準備指示が指示受付部32にて受け付けられた場合、図11図13で示したように、検出部70において、対象設定情報50の対象被写体および対象部位に応じた検出モデル群66のいずれかの検出モデルに画像生成用信号43Nが入力され、検出モデルから矩形領域RAの検出結果72が出力される(図34のステップST100)。検出結果72は、検出部70から焦点調整部71に出力される。
【0096】
対象設定情報50の対象被写体が人物または動物で(ステップST110でYES)、対象部位が瞳または胴体であった場合(ステップST120でYES)、図20、および図23図25で示したように、設定部92において、合焦演算に用いる領域が、矩形領域RAから高寄与度領域HCAに縮小される(ステップST130)。高寄与度領域HCAの設定情報104は、合焦演算部93に出力される。なお、図34のフローチャートでは表現していないが、図21で示したように、矩形領域RAの大きさによっては、矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小が行われない場合がある。
【0097】
対象設定情報50の対象被写体が人物または動物で(ステップST110でYES)、対象部位が瞳または胴体でなかった場合、すなわち対象部位が顔であった場合(ステップST120でNO)、ステップST170に進む。また、対象設定情報50の対象被写体が乗り物で(ステップST110でNO、かつステップST150でYES)、対象部位が運転席であった場合(ステップST160でYES)も、ステップST170に進む。
【0098】
ステップST170においては、傾き判定部90が稼働され、図16および図17で示したように、矩形領域RAに対して対象部位が傾いているか否かが判定される。そして、傾き判定部90において、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていないと判定された場合(ステップST170でNO)、図26および図28で示したように、設定部92において矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小は行われない。この場合は、合焦演算に用いる領域として矩形領域RAがそのまま設定される。対象設定情報50の対象被写体が人物、動物、乗り物のいずれでもない場合(ステップST110でNO、かつステップST150でNO)も、設定部92において矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小は行われず、合焦演算に用いる領域として矩形領域RAがそのまま設定される。
【0099】
一方、傾き判定部90において、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていると判定された場合(ステップST170でYES)、図27および図29で示したように、設定部92において、合焦演算に用いる領域が、矩形領域RAから高寄与度領域HCAに縮小される(ステップST130)。高寄与度領域HCAの設定情報104は、合焦演算部93に出力される。
【0100】
対象設定情報50の対象被写体が乗り物で(ステップST150でYES)、対象部位が運転席でなかった場合、すなわち対象部位が先頭または胴体であった場合(ステップST160でNO)、図35のステップST180に進む。
【0101】
ステップST180においては、ステップST170と同じく、傾き判定部90が稼働され、図30図33で示したように、矩形領域RAに対して対象部位が傾いているか否かが判定される。そして、傾き判定部90において、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていないと判定された場合(ステップST180でNO)、ステップST190に進む。
【0102】
ステップST190においては、向き判定部91が稼働され、図30図32で示したように、対象被写体が正面を向いているか否かが判定される。そして、対象被写体が正面を向いていなかった場合(ステップST190でNO)、図30および図32で示したように、設定部92において矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小は行われず、合焦演算に用いる領域として矩形領域RAがそのまま設定される。一方、対象被写体が正面を向いていた場合(ステップST190でYES)、図31で示したように、設定部92において、合焦演算に用いる領域が、矩形領域RAから高寄与度領域HCAに縮小される(ステップST130)。高寄与度領域HCAの設定情報104は、合焦演算部93に出力される。
【0103】
また、傾き判定部90において、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていると判定された場合(ステップST180でYES)、図33で示したように、設定部92において、合焦演算に用いる領域が、矩形領域RAから高寄与度領域HCAに縮小される(ステップST130)。高寄与度領域HCAの設定情報104は、合焦演算部93に出力される。
【0104】
図15で示したように、高寄与度領域HCAが設定された場合、合焦演算部93では、画像メモリ26からの演算用信号43Pのうちで、高寄与度領域HCA内の位相差検出画素41Pから出力された演算用信号43Pが選定される。そして、選定後演算用信号43PSを用いて合焦演算が行われる(ステップST140)。対して、高寄与度領域HCAが設定されなかった場合、合焦演算部93では、画像メモリ26からの演算用信号43Pのうちで、矩形領域RA内の位相差検出画素41Pから出力された演算用信号43Pが選定される。そして、選定後の演算用信号43Pを用いて合焦演算が行われる(ステップST140)。この合焦演算の演算結果105は、合焦演算部93からフォーカスレンズ駆動制御部94に出力される。そして、フォーカスレンズ駆動制御部94の制御の下、フォーカスレンズ駆動機構17を介して、演算結果105の合焦位置にフォーカスレンズ14が移動される。
【0105】
以上の処理をまとめると、一例として図36に示す表110のようになる。すなわち、対象被写体が人物、または動物で、対象部位が人物の瞳、人物の胴体、動物の瞳、または動物の胴体であった場合、設定部92は矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小を行う。
【0106】
対象被写体が人物、動物、または乗り物で、対象部位が人物の顔、動物の顔、または乗り物の運転席であった場合、設定部92は条件付きで縮小を行う。この場合の条件とは、矩形領域RAに対して対象部位が傾いているか否かである。矩形領域RAに対して対象部位が傾いていた場合、設定部92は縮小を行う。一方、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていなかった場合、設定部92は縮小を行わない。
【0107】
対象被写体が乗り物で、対象部位が乗り物の先頭、または乗り物の胴体であった場合、設定部92は条件付きで縮小を行う。この場合の条件とは、矩形領域RAに対して対象部位が傾いているか否か、並びに対象被写体が正面を向いているか否かである。矩形領域RAに対して対象部位が傾いていた場合、設定部92は縮小を行う。また、矩形領域RAに対して対象部位が傾いておらず、かつ、対象被写体が正面を向いていた場合、設定部92は縮小を行う。一方、矩形領域RAに対して対象部位が傾いておらず、かつ、対象被写体が正面を向いていなかった場合、設定部92は縮小を行わない。
【0108】
以上説明したように、自動焦点制御装置としての制御部20は、撮像素子12から読み出した演算用信号43Pに基づいてフォーカスレンズ14の合焦位置を演算する合焦演算を行う。CPU56は、検出部70および焦点調整部71を備える。焦点調整部71は、設定部92および合焦演算部93を備える。検出部70は、合焦演算の対象被写体の対象部位、および対象部位の周辺部位を含む矩形領域RAを画像生成用信号43Nから検出する。設定部92は、対象被写体および対象部位の組み合わせに基づいて、矩形領域RAのうちで、他の領域よりも合焦演算の寄与度が高い領域である高寄与度領域HCAを設定することが可能である。合焦演算部93は、高寄与度領域HCAを設定した場合に、設定に応じた合焦演算を行う。したがって、合焦演算の対象被写体および対象部位に適応した自動焦点制御を行うことが可能となる。
【0109】
特定領域は矩形領域RAである。このため検出がしやすく、後の処理においても扱いやすい。なお、特定領域は矩形領域RAに限らず、例えば円形状、楕円形状等であってもよい。
【0110】
設定部92は、合焦演算に用いる領域を矩形領域RAから高寄与度領域HCAに縮小する。合焦演算部93は、縮小した高寄与度領域HCAを用いて合焦演算を行う。より詳しくは、合焦演算部93は、縮小した高寄与度領域HCAのみを用いて合焦演算を行う。矩形領域RAのままでは、瞳ではなく下瞼に焦点が合ってしまったり、胴体ではなく背景に焦点が合ってしまったりするおそれがあるが、そうしたおそれを低減することができる。
【0111】
図20等で示したように、設定部92は、高寄与度領域HCAのX方向の縮小倍率とY方向の縮小倍率とを異ならせる。このため、各方向に適応した縮小倍率で、矩形領域RAを高寄与度領域HCAに縮小することができる。経験則的に周辺部位が多く含まれると考えられる方向(対象部位が瞳の場合は上瞼と下瞼が含まれるY方向)の縮小倍率をより小さくする等により、高寄与度領域HCA、ひいては合焦演算に用いる領域から周辺部位をより除くことができる。したがって、対象部位ではなく周辺部位に焦点が合ってしまうおそれをさらに低減することができる。なお、縮小倍率を異ならせる方向(第1方向および第2方向)は、例示のX方向およびY方向のように直交していなくてもよい。
【0112】
図21で示したように、設定部92は、矩形領域RAの大きさに応じて、高寄与度領域HCAの縮小倍率を変更する。このため、矩形領域RAの大きさに適応した縮小倍率で、矩形領域RAを高寄与度領域HCAに縮小することができる。
【0113】
図26図33で示したように、設定部92は、矩形領域RAに対する対象部位の傾きに応じて、矩形領域RAの縮小を制御する。より詳しくは、設定部92は、矩形領域RAに対して対象部位が傾いているか否かに基づいて、矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小を行うか否かを決定する。矩形領域RAに対して対象部位が傾いている場合は、傾いていない場合と比べて、矩形領域RAに周辺部位が多く含まれるようになる。このため、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていた場合に縮小を行うようにすれば、合焦演算に用いる領域から周辺部位をより除くことができる。したがって、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていて、矩形領域RAに周辺部位が多く含まれている場合であっても、対象部位ではなく周辺部位に焦点が合ってしまうおそれを低減することができる。
【0114】
図30図32で示したように、設定部92は、撮像素子12に対する対象被写体の向きに応じて、縮小を制御する。より詳しくは、設定部92は、対象被写体が正面を向いているか否かに基づいて、矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小を行うか否かを決定する。対象被写体が乗り物、対象部位が先頭または胴体で、矩形領域RAに対して対象部位が傾いておらず、さらに、対象被写体が正面を向いていなかった場合は、図30および図32で示したように、矩形領域RAに写るのは乗り物の先頭または胴体の側面のみで、矩形領域RA内に奥行きの異なる部位がほとんど存在しない。つまり、この場合は、高寄与度領域HCAに縮小せずに矩形領域RAのままとしたほうが、合焦に必要な特徴点を多く残すことができ、対象部位に焦点が合う可能性が高い。したがって、対象被写体が乗り物、対象部位が先頭または胴体で、矩形領域RAに対して対象部位が傾いておらず、さらに、対象被写体が正面を向いていなかった場合に縮小を行わないようにすれば、無駄な処理を行わずに済む。
【0115】
図20、および図23図25で示したように、対象被写体が人物、または動物で、対象部位が人物の瞳、人物の胴体、動物の瞳、または動物の胴体であった場合、設定部92は矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小を行う。このため、合焦演算に用いる領域から周辺部位を効果的に除くことができる。
【0116】
図26図29で示したように、対象被写体が人物、動物、または乗り物で、対象部位が人物の顔、動物の顔、または乗り物の運転席であり、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていなかった場合、設定部92は矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小を行わない。このため、無駄な処理を行わずに済む。一方、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていた場合、設定部92は縮小を行う。このため、合焦演算に用いる領域から周辺部位をより除くことができる。矩形領域RAに対して対象部位が傾いていて、矩形領域RAに周辺部位が多く含まれている場合であっても、対象部位ではなく周辺部位に焦点が合ってしまうおそれを低減することができる。
【0117】
図30図33で示したように、対象被写体が乗り物で、対象部位が乗り物の先頭、または乗り物の胴体であり、矩形領域RAに対して対象部位が傾いておらず、かつ、対象被写体が正面を向いていなかった場合、設定部92は矩形領域RAの高寄与度領域HCAへの縮小を行わない。このため、無駄な処理を行わずに済む。一方、矩形領域RAに対して対象部位が傾いておらず、かつ、対象被写体が正面を向いていた場合、並びに、矩形領域RAに対して対象部位が傾いていた場合、設定部92は縮小を行う。このため、合焦演算に用いる領域から周辺部位をより除くことができる。対象部位ではなく周辺部位に焦点が合ってしまうおそれを低減することができる。
【0118】
[第2実施形態]
一例として図37および図38に示すように、第2実施形態の撮像装置120は、撮像素子121の向きに応じて位相差αの検出に適した方向が異なる。より詳しくは、上記第1実施形態の撮像素子12は、X方向およびY方向において隣り合う第1位相差検出画素411Pおよび第2位相差検出画素412Pが、位相差αを検出するための1つの組を構成していたが、撮像素子121は、その長辺方向がX方向と平行な図37に示す横長の向きの場合に、X方向において隣り合う第1位相差検出画素411Pおよび第2位相差検出画素412Pのみが、位相差αを検出するための1つの組を構成する。このため、撮像素子121が図37に示す横長の向きの場合、位相差αの検出に適した方向はY方向となる。対して、撮像素子121が、その長辺方向がY方向と平行な図38に示す縦長の向きの場合、位相差αの検出に適した方向はX方向となる。
【0119】
図37および図38では、対象被写体が動物、対象部位が瞳であった場合を例示している。この例において、撮像素子121の向きが横長の図37の場合、位相差αの検出に適した方向がY方向であるため、設定部92は、縦長の瞳に焦点を合わせるべく、矩形領域RAから高寄与度領域HCAへの縮小倍率を小さく設定し、高寄与度領域HCAから瞳以外の周辺部位を除く。一方、撮像素子121の向きが縦長の図38の場合、位相差αの検出に適した方向がX方向であるため、設定部92は、横長の上瞼または下瞼の縁に焦点を合わせるべく、矩形領域RAから高寄与度領域HCAへの縮小倍率を大きく設定し、高寄与度領域HCAに上瞼または下瞼の縁を含める。
【0120】
このように、第2実施形態では、撮像素子121の向きに応じて位相差αの検出に適した方向が異なる場合において、設定部92は、撮像素子121の向きに応じて、高寄与度領域HCAの縮小倍率を変更する。このため、撮像素子121の向きによって位相差αの検出が困難となり、結果的に非合焦となる事態を避けることができる。
【0121】
[第3実施形態]
上記各実施形態では、矩形領域RAを縮小することで高寄与度領域HCAを設定しているが、これに限らない。一例として図39に示すように、矩形領域RAを複数の分割領域DAに分け、設定部92により各分割領域DAにそれぞれ寄与度を設定することで、高寄与度領域HCAを設定してもよい。
【0122】
図39においては、矩形領域RAを9つの分割領域DAに等分している。そして、中心の分割領域DAの寄与度を1、中心の分割領域DAの上下左右の分割領域DAの寄与度を0.75、中心の分割領域DAの左斜め上、左斜め下、右斜め上、および右斜め下の分割領域DAの寄与度を0.5に設定している。寄与度が最高値の1に設定された中心の分割領域DAが高寄与度領域HCAに相当する。また、中心の分割領域DA以外の分割領域DAが、本開示の技術に係る「他の領域」に相当する。
【0123】
この場合、合焦演算部93は、各分割領域DAから算出された位相差αに各分割領域DAの寄与度を乗算して加算し、その結果を分割領域DAの個数で除算する。つまり、合焦演算部93は、寄与度を重みとする位相差αの重み付き平均を算出する。合焦演算部93は、算出した位相差αの重み付き平均を用いて最終的な合焦演算を行う。
【0124】
このように、第3実施形態では、設定部92は、高寄与度領域HCA以外の他の領域の寄与度を、0よりも大きく、かつ高寄与度領域HCAの寄与度よりも低い値に設定する。このため、高寄与度領域HCAだけでなく、高寄与度領域HCA以外の他の領域も加味した合焦演算を行うことができる。
【0125】
対象被写体が動体で、かつ矩形領域RAの大きさが予め設定された第1閾値以上であった場合は縮小倍率を小さくしてより矩形領域RAを縮小し、対象被写体が動体で、かつ矩形領域RAの大きさが第1閾値よりも小さい第2閾値未満であった場合は縮小倍率を大きくするか、または縮小を行わない制御としてもよい。
【0126】
レリーズボタンの半押し操作により静止画または動画の撮影準備指示が行われた場合に、焦点調整部71にて自動焦点制御を行う場合を例示したが、これに限らない。レリーズボタンの半押し操作の前のライブビュー画像の表示中に、焦点調整部71にて自動焦点制御を行ってもよい。
【0127】
上記各実施形態では、いわゆる位相差検出方式の自動焦点制御を例に説明したが、これに限らない。位相差検出方式の自動焦点制御に代えて、あるいは加えて、コントラスト検出方式の自動焦点制御を採用してもよい。また、2つの光電変換素子47で1つの画素41を構成し、通常画素41Nと位相差検出画素41Pを1つの画素41で兼用する撮像素子を用いてもよい。
【0128】
本開示の技術に係る撮像装置は、コンパクトデジタルカメラ、スマートフォン、あるいはタブレット端末でもよい。
【0129】
上記各実施形態において、例えば、画像処理部27、表示制御部30、指示受付部32、検出部70、焦点調整部71(傾き判定部90、向き判定部91、設定部92、合焦演算部93、およびフォーカスレンズ駆動制御部94)といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。各種のプロセッサには、ソフトウェア(作動プログラム65)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU56に加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、および/またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0130】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、および/または、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0131】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0132】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【0133】
以上の記載から、下記の付記項に記載の技術を把握することができる。
【0134】
[付記項1]
撮像素子から読み出した演算用信号に基づいてフォーカスレンズの合焦位置を演算する合焦演算を行う自動焦点制御装置であって、
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
合焦演算の対象被写体の対象部位、および前記対象部位の周辺部位を含む特定領域を画像から検出し、
前記対象被写体および前記対象部位の組み合わせに基づいて、前記特定領域のうちで、他の領域よりも前記合焦演算の寄与度が高い領域である高寄与度領域を設定することが可能であり、
前記高寄与度領域を設定した場合に、前記設定に応じた前記合焦演算を行う、
自動焦点制御装置。
[付記項2]
前記特定領域は矩形状をしている付記項1に記載の自動焦点制御装置。
[付記項3]
前記プロセッサは、
前記合焦演算に用いる領域を前記特定領域から前記高寄与度領域に縮小し、
縮小した前記高寄与度領域を用いて前記合焦演算を行う付記項1または付記項2に記載の自動焦点制御装置。
[付記項4]
前記プロセッサは、
縮小した前記高寄与度領域のみを用いて前記合焦演算を行う付記項3に記載の自動焦点制御装置。
[付記項5]
前記プロセッサは、
前記高寄与度領域の第1方向の縮小倍率と、前記第1方向と交差する第2方向の縮小倍率とを異ならせる付記項3または付記項4に記載の自動焦点制御装置。
[付記項6]
前記プロセッサは、
前記特定領域の大きさに応じて、前記高寄与度領域の縮小倍率を変更する付記項3から付記項5のいずれか1項に記載の自動焦点制御装置。
[付記項7]
前記プロセッサは、
前記特定領域に対する前記対象部位の傾きに応じて、前記縮小を制御する付記項3から付記項6のいずれか1項に記載の自動焦点制御装置。
[付記項8]
前記プロセッサは、
前記撮像素子に対する前記対象被写体の向きに応じて、前記縮小を制御する付記項3から付記項7のいずれか1項に記載の自動焦点制御装置。
[付記項9]
前記撮像素子は、被写体光の位相差を検出するための前記演算用信号を出力する位相差検出画素を含み、
前記撮像素子の向きに応じて前記位相差の検出に適した方向が異なる場合において、
前記プロセッサは、
前記撮像素子の向きに応じて、前記高寄与度領域の縮小倍率を変更する付記項3から付記項8のいずれか1項に記載の自動焦点制御装置。
[付記項10]
前記プロセッサは、
前記対象被写体が人物、または動物で、前記対象部位が人物の瞳、人物の胴体、動物の瞳、または動物の胴体であった場合、前記縮小を行う付記項3から付記項9のいずれか1項に記載の自動焦点制御装置。
[付記項11]
前記プロセッサは、
前記対象被写体が人物、動物、または乗り物で、前記対象部位が人物の顔、動物の顔、または乗り物の運転席であり、
前記特定領域に対して前記対象部位が傾いていなかった場合は前記縮小を行わず、
前記特定領域に対して前記対象部位が傾いていた場合は前記縮小を行う付記項3から付記項10のいずれか1項に記載の自動焦点制御装置。
[付記項12]
前記プロセッサは、
前記対象被写体が乗り物で、前記対象部位が乗り物の先頭、または乗り物の胴体であり、
前記特定領域に対して前記対象部位が傾いておらず、かつ、前記対象被写体が正面を向いていなかった場合、前記縮小を行わず、
前記特定領域に対して前記対象部位が傾いておらず、かつ、前記対象被写体が正面を向いていた場合、並びに、前記特定領域に対して前記対象部位が傾いていた場合、前記縮小を行う付記項3から付記項11のいずれか1項に記載の自動焦点制御装置。
[付記項13]
前記プロセッサは、
前記高寄与度領域以外の前記他の領域の寄与度を、0よりも大きく、かつ前記高寄与度領域の寄与度よりも低い値に設定する付記項1または付記項2に記載の自動焦点制御装置。
[付記項14]
付記項1から付記項13のいずれか1項に記載の自動焦点制御装置を備える撮像装置。
【0135】
本開示の技術は、上述の種々の実施形態および/または種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、上記各実施形態に限らず、要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。さらに、本開示の技術は、プログラムに加えて、プログラムを非一時的に記憶する記憶媒体にもおよぶ。
【0136】
以上に示した記載内容および図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、および効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、および効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容および図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことはいうまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容および図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0137】
本明細書において、「Aおよび/またはB」は、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「Aおよび/またはB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、AおよびBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「および/または」で結び付けて表現する場合も、「Aおよび/またはB」と同様の考え方が適用される。
【0138】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0139】
10、120 撮像装置
11 撮像光学系
12、121 撮像素子
13 対物レンズ
14 フォーカスレンズ
15 ズームレンズ
16 絞り
17 フォーカスレンズ駆動機構
18 ズームレンズ駆動機構
19 絞り駆動機構
20 制御部
21 操作部
22 撮像素子ドライバ
23 シャッター
24 シャッター駆動機構
25 画像入力コントローラ
26 画像メモリ
27 画像処理部
28、58 バスライン
29 VRAM
30 表示制御部
31 メディアコントローラ
32 指示受付部
33 ファインダモニタ
34 背面モニタ
35 メモリカード
36 タッチパネル
40 光電変換部
41 画素
41N 通常画素
41P 位相差検出画素
42 撮像面
43 画像信号
43N 画像生成用信号
43P 演算用信号
43PS 選定後演算用信号
45 マイクロレンズ
46 カラーフィルタ
47 光電変換素子
49 遮光部材
50 対象設定情報
55 ストレージ
56 CPU
57 メモリ
65 作動プログラム
66 検出モデル群
67 判定モデル群
70 検出部
71 焦点調整部
72 検出結果
75 人物瞳検出モデル
76 人物顔検出モデル
77 人物胴体検出モデル
78 動物瞳検出モデル
79 動物顔検出モデル
80 動物胴体検出モデル
81 乗り物運転席検出モデル
82 乗り物先頭検出モデル
83 乗り物胴体検出モデル
90 傾き判定部
91 向き判定部
92 設定部
93 合焦演算部
94 フォーカスレンズ駆動制御部
100 傾き判定モデル
101 向き判定モデル
102 傾き判定結果
103 向き判定結果
104 設定情報
105 演算結果
110 表
411P 第1位相差検出画素
412P 第2位相差検出画素
431P 第1演算用信号
432P 第2演算用信号
α 位相差
DA 分割領域
HCA 高寄与度領域
MC 縮小倍率
OA 光軸
P1、P2、P3、P4 対角点
RA 矩形領域
S1、S2 矩形領域の大きさ
SRA 四角環状の領域
ST100、ST110、ST120、ST130、ST140、ST150、ST160、ST170、ST180、ST190 ステップ
XHC 高寄与度領域のX方向の辺の長さ
XR 矩形領域のX方向の辺の長さ
YHC 高寄与度領域のY方向の辺の長さ
YR 矩形領域のY方向の辺の長さ
図1
図2
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