(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141622
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】コンテナ船の需要予測方法、コンテナ船の需要予測プログラム及びコンテナ船の需要予測システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20241003BHJP
G06Q 10/083 20240101ALI20241003BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q10/083
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053368
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 祐次郎
(72)【発明者】
【氏名】濱田 邦裕
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L010AA16
5L049AA04
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】コンテナ船の将来的な需要を高い精度で予測する。
【解決手段】コンテナ港湾取扱量、貨物輸送距離、船速、港湾混雑率、コンテナ船の船腹量を取得する入力値取得ステップと、海上荷動き量を導出可能な海上荷動きモデルを適用して、コンテナ港湾取扱量と貨物輸送距離に基づいて海上荷動き量を導出する海上荷動き量導出ステップと、コンテナ船の発注量を導出可能な発注モデルを適用して、海上荷動き量とコンテナ船の船腹量と船速と港湾混雑率に基づいて輸送効率を導出する輸送効率導出ステップと、発注モデルを適用して、輸送効率とコンテナ船の船腹量に基づいてコンテナ船の発注量を導出する発注量導出ステップとを有するコンテナ船の需要予測方法とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナ船の需要を予測するコンテナ船の需要予測方法であって、
コンテナ港湾取扱量、貨物輸送距離、船速、港湾混雑率、コンテナ船の船腹量を取得する入力値取得ステップと、
海上荷動き量を導出可能な海上荷動きモデルを適用して、前記コンテナ港湾取扱量と前記貨物輸送距離に基づいて前記海上荷動き量を導出する海上荷動き量導出ステップと、
コンテナ船の発注量を導出可能な発注モデルを適用して、前記海上荷動き量と前記コンテナ船の船腹量と前記船速と前記港湾混雑率に基づいて輸送効率を導出する輸送効率導出ステップと、
前記発注モデルを適用して、前記輸送効率と前記コンテナ船の船腹量に基づいて前記コンテナ船の発注量を導出する発注量導出ステップとを有することを特徴とするコンテナ船の需要予測方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコンテナ船の需要予測方法であって、
前記海上荷動きモデルは、
(式1)に基づいて前記コンテナ港湾取扱量から総流動量を求め、
(式2)に基づいて前記総流動量と前記貨物輸送距離を乗算して前記海上荷動き量を求める、
【数1】
ことを特徴とするコンテナ船の需要予測方法。
【請求項3】
請求項1に記載のコンテナ船の需要予測方法であって、
前記発注モデルにおける前記輸送効率は、前記海上荷動き量と前記コンテナ船の船腹量に基づき、前記港湾混雑率に応じ、(式3)又は(式4)を選択して求める、
【数2】
ことを特徴とするコンテナ船の需要予測方法。
【請求項4】
請求項1に記載のコンテナ船の需要予測方法であって、
予め求めた前記輸送効率と、前記コンテナ船の発注量と前記コンテナ船の船腹量の比との関係式に基づいて前記コンテナ船の発注量を導出することを特徴とするコンテナ船の需要予測方法。
【請求項5】
請求項1に記載のコンテナ船の需要予測方法であって、
前記入力値取得ステップにおいて外部要因発注量を取得し、
前記外部要因発注量に応じて、前記発注量導出ステップで導出した前記コンテナ船の発注量を補正する発注量補正ステップを有することを特徴とするコンテナ船の需要予測方法。
【請求項6】
請求項1に記載のコンテナ船の需要予測方法であって、
前記入力値取得ステップにおいて前記コンテナ船のサイズ別発注割合を取得し、
前記サイズ別発注割合と、前記発注量導出ステップで導出した前記コンテナ船の発注量に基づいてサイズ別発注量をさらに導出するサイズ別発注量導出ステップを有することを特徴するコンテナ船の需要予測方法。
【請求項7】
請求項6に記載のコンテナ船の需要予測方法であって、
前記サイズ別発注量に基づいて竣工量を導出可能な建造モデルを適用して、前記入力値取得ステップで取得したサイズ別の手持工事量に基づいてサイズ別竣工量を導出し、さらに前記サイズ別竣工量を合算して前記竣工量を導出する竣工量導出ステップを有することを特徴とするコンテナ船の需要予測方法。
【請求項8】
請求項7に記載のコンテナ船の需要予測方法であって、
前記建造モデルは、造船所の操業状態による前記竣工量、時間遅れによる変化、及び国ごとの前記コンテナ船の建造能力の違いを考慮して、前記手持工事量と前記竣工量の関係を構築したものであることを特徴とするコンテナ船の需要予測方法。
【請求項9】
請求項7に記載のコンテナ船の需要予測方法であって、
予め定めたサイズ別の前記手持工事量と前記竣工量との関係に基づいて前記サイズ別竣工量を導出することを特徴とするコンテナ船の需要予測方法。
【請求項10】
請求項7に記載のコンテナ船の需要予測方法であって、
前記竣工量に基づいて前記コンテナ船の船腹量を修正することを特徴とするコンテナ船の需要予測方法。
【請求項11】
請求項8に記載のコンテナ船の需要予測方法であって、
前記竣工量に基づいて前記手持工事量を修正することを特徴とするコンテナ船の需要予測方法。
【請求項12】
請求項1に記載のコンテナ船の需要予測方法であって、
前記輸送効率に基づいて廃船量を導出可能な廃船モデルを用いて、前記輸送効率、前記廃船量及び前記コンテナ船の船腹量の比の関係に前記輸送効率導出ステップで導出された前記輸送効率を適用し前記廃船量を導出する廃船量導出ステップを有することを特徴とするコンテナ船の需要予測方法。
【請求項13】
コンテナ船の需要を予測するプログラムであって、
コンピュータに、
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の海上荷動きモデルと発注モデルを組み込ませ、入力値取得ステップ、海上荷動き量導出ステップ、輸送効率導出ステップ、及び発注量導出ステップを実行させ、導出結果を出力させることを特徴とするコンテナ船の需要予測プログラム。
【請求項14】
請求項5を引用する請求項13に記載のコンテナ船の需要予測プログラムであって、
前記コンピュータに、外部要因発注量を取得させ、発注量補正ステップを実行させることを特徴とするコンテナ船の需要予測プログラム。
【請求項15】
請求項6を引用する請求項13に記載のコンテナ船の需要予測プログラムであって、
前記コンピュータに、コンテナ船のサイズ別発注割合を取得させ、サイズ別発注量導出ステップを実行させ、導出結果を出力させることを特徴とするコンテナ船の需要予測プログラム。
【請求項16】
請求項7を引用する請求項15に記載のコンテナ船の需要予測プログラムであって、
前記コンピュータに、建造モデル取得ステップと竣工量導出ステップを実行させ、導出結果を出力させることを特徴とするコンテナ船の需要予測プログラム。
【請求項17】
請求項10を引用する請求項13に記載のコンテナ船の需要予測プログラムであって、
前記コンピュータに、廃船モデル取得ステップと廃船量導出ステップを実行させ、導出結果を出力させることを特徴とするコンテナ船の需要予測プログラム。
【請求項18】
コンテナ船の需要を予測するシステムであって、
条件入力手段と、導出結果を出力する結果出力手段と、コンピュータとを備え、
前記条件入力手段で入力された入力値を含む条件にしたがって請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のコンテナ船の需要予測方法を実行し、導出された結果を前記結果出力手段から出力することを特徴とするコンテナ船の需要予測システム。
【請求項19】
請求項18に記載のコンテナ船の需要予測システムであって、
前記コンピュータは、前記条件入力手段及び前記結果出力手段と情報通信網を利用して接続され、前記条件入力手段で入力された入力値を含む条件にしたがって請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のコンテナ船の需要予測方法を実行することを特徴とするコンテナ船の需要予測システム。
【請求項20】
請求項18に記載のコンテナ船の需要予測システムであって、
前記条件入力手段への入力に応じて、前記結果出力手段の前記導出結果の出力内容が選択可能であることを特徴とするコンテナ船の需要予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナ船の需要予測方法、コンテナ船の需要予測プログラム及びコンテナ船の需要予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、船舶による貨物輸送の需要が拡大しており、船舶の需要を予測し、その予測を基に経営戦略を立案することが必要とされている。
【0003】
非特許文献1及び非特許文献2には、種々の要因が相互に影響する複雑システムのモデル化や分析に有効なシステムダイナミクスの手法を用いて船舶の需要予測を行うシミュレーションシステムが開示されている。また、非特許文献3には、システムダイナミクスを使用して、港でのコンテナ量を高い精度で予測するモデルが提供されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】和田祐次郎、「船舶需要予測用SDモデルとその活用に関する研究」、平成29年3月、広島大学大学院工学研究科博士論文
【非特許文献2】Yujiro Wada et.al. “A system dynamics model for shipbuilding demand forecasting”, J Mar Sci Technol, July (2017)
【非特許文献3】Ying Wang et.al. “Application and Improvement of a System Dynamics Model to Forecast the Volume of Containers”, Journal of Applied Science and Engineering, Vol. 16, No. 2, pp. 187-196 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
造船の需要予測に関する従来技術では、バルクキャリア船についての需要予測が主であり、コンテナ船の需要予測についての研究は十分でなかった。
【0006】
本発明は、コンテナ船の需要予測を可能にするコンテナ船の需要予測方法、需要予測プログラム及び需要予測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係るコンテナ船の需要予測運用方法は、コンテナ港湾取扱量、貨物輸送距離、船速、港湾混雑率、コンテナ船の船腹量を取得する入力値取得ステップと、海上荷動き量を導出可能な海上荷動きモデルを適用して、前記コンテナ港湾取扱量と前記貨物輸送距離に基づいて前記海上荷動き量を導出する海上荷動き量導出ステップと、コンテナ船の発注量を導出可能な発注モデルを適用して、前記海上荷動き量と前記コンテナ船の船腹量と前記船速と前記港湾混雑率に基づいて輸送効率を導出する輸送効率導出ステップと、前記発注モデルを適用して、前記輸送効率と前記コンテナ船の船腹量に基づいて前記コンテナ船の発注量を導出する発注量導出ステップとを有することを特徴とするコンテナ船の需要予測方法である。
【0008】
ここで、前記海上荷動きモデルは、(式1)に基づいて前記コンテナ港湾取扱量から総流動量を求め、(式2)に基づいて前記総流動量と前記貨物輸送距離を乗算して前記海上荷動き量を求める、
【数1】
ことが好適である。
【0009】
また、前記発注モデルにおける前記輸送効率は、前記海上荷動き量と前記コンテナ船の船腹量に基づき、前記港湾混雑率に応じ、(式3)又は(式4)を選択して求める、
【数2】
ことが好適である。
【0010】
また、予め求めた前記輸送効率と、前記コンテナ船の発注量と前記コンテナ船の船腹量の比との関係式に基づいて前記コンテナ船の発注量を導出することが好適である。
【0011】
また、前記入力値取得ステップにおいて外部要因発注量を取得し、前記外部要因発注量に応じて、前記発注量導出ステップで導出した前記コンテナ船の発注量を補正する発注量補正ステップを有することが好適である。
【0012】
また、前記入力値取得ステップにおいて前記コンテナ船のサイズ別発注割合を取得し、前記サイズ別発注割合と、前記発注量導出ステップで導出した前記コンテナ船の発注量に基づいてサイズ別発注量をさらに導出するサイズ別発注量導出ステップを有することが好適である。
【0013】
また、前記サイズ別発注量に基づいて竣工量を導出可能な建造モデルを適用して、前記入力値取得ステップで取得したサイズ別の手持工事量に基づいてサイズ別竣工量を導出し、さらに前記サイズ別竣工量を合算して前記竣工量を導出する竣工量導出ステップを有することが好適である。
【0014】
また、前記建造モデルは、造船所の操業状態による前記竣工量、時間遅れによる変化、及び国ごとの前記コンテナ船の建造能力の違いを考慮して、前記手持工事量と前記竣工量の関係を構築したものであることが好適である。
【0015】
また、予め定めたサイズ別の前記手持工事量と前記竣工量との関係に基づいて前記サイズ別竣工量を導出することが好適である。
【0016】
また、前記竣工量に基づいて前記コンテナ船の船腹量を修正することが好適である。
【0017】
また、前記竣工量に基づいて前記手持工事量を修正することが好適である。
【0018】
また、前記輸送効率に基づいて廃船量を導出可能な廃船モデルを用いて、前記輸送効率、前記廃船量及び前記コンテナ船の船腹量の比の関係に前記輸送効率導出ステップで導出された前記輸送効率を適用し前記廃船量を導出する廃船量導出ステップを有することが好適である。
【0019】
本発明の請求項13に係るコンテナ船の需要予測運用プログラムは、コンテナ船の需要を予測するプログラムであって、コンピュータに、上記の海上荷動きモデルと発注モデルを組み込ませ、入力値取得ステップ、海上荷動き量導出ステップ、輸送効率導出ステップ、及び発注量導出ステップを実行させ、導出結果を出力させることを特徴とするコンテナ船の需要予測プログラムである。
【0020】
ここで、前記コンピュータに、外部要因発注量を取得させ、発注量補正ステップを実行させることが好適である。
【0021】
また、前記コンピュータに、コンテナ船のサイズ別発注割合を取得させ、サイズ別発注量導出ステップを実行させ、導出結果を出力させることが好適である。
【0022】
また、前記コンピュータに、建造モデル取得ステップと竣工量導出ステップを実行させ、導出結果を出力させることが好適である。
【0023】
また、前記コンピュータに、廃船モデル取得ステップと廃船量導出ステップを実行させ、導出結果を出力させることが好適である。
【0024】
本発明の請求項18に係るコンテナ船の需要を予測するシステムであって、条件入力手段と、導出結果を出力する結果出力手段と、コンピュータとを備え、前記条件入力手段で入力された入力値を含む条件にしたがって上記のコンテナ船の需要予測方法を実行し、導出された結果を前記結果出力手段から出力することを特徴とするコンテナ船の需要予測システムである。
【0025】
ここで、前記コンピュータは、前記条件入力手段及び前記結果出力手段と情報通信網を利用して接続され、前記条件入力手段で入力された入力値を含む条件にしたがって上記のコンテナ船の需要予測方法を実行することが好適である。
【0026】
また、前記条件入力手段への入力に応じて、前記結果出力手段の前記導出結果の出力内容が選択可能であることが好適である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の請求項1に係るコンテナ船の需要予測運用方法は、コンテナ港湾取扱量、貨物輸送距離、船速、港湾混雑率、コンテナ船の船腹量を取得する入力値取得ステップと、海上荷動き量を導出可能な海上荷動きモデルを適用して、前記コンテナ港湾取扱量と前記貨物輸送距離に基づいて前記海上荷動き量を導出する海上荷動き量導出ステップと、コンテナ船の発注量を導出可能な発注モデルを適用して、前記海上荷動き量と前記コンテナ船の船腹量と前記船速と前記港湾混雑率に基づいて輸送効率を導出する輸送効率導出ステップと、前記発注モデルを適用して、前記輸送効率と前記コンテナ船の船腹量に基づいて前記コンテナ船の発注量を導出する発注量導出ステップとを有することによって、コンテナ船の将来的な需要を高い精度で予測することができる。
【0028】
ここで、前記海上荷動きモデルは、(式1)に基づいて前記コンテナ港湾取扱量から総流動量を求め、(式2)に基づいて前記総流動量と前記貨物輸送距離を乗算して前記海上荷動き量を求める、
【数3】
ことによって、コンテナ船の海上荷動き量を高い精度で導出することができ、コンテナ船の海上荷動き量を用いてコンテナ船の需要予測の精度を向上させることができる。
【0029】
前記発注モデルにおける前記輸送効率は、前記海上荷動き量と前記コンテナ船の船腹量に基づき、前記港湾混雑率に応じ、(式3)又は(式4)を選択して求める、
【数4】
ことによって、コンテナ船の輸送効率を高い精度で導出することができ、コンテナ船の輸送効率を用いてコンテナ船の需要予測の精度を向上させることができる。
【0030】
また、予め求めた前記輸送効率と、前記コンテナ船の発注量と前記コンテナ船の船腹量の比との関係式に基づいて前記コンテナ船の発注量を導出することによって、コンテナ船の輸送効率を用いてコンテナ船の発注量を高い精度で導出することができ、コンテナ船の需要予測の精度を向上させることができる。
【0031】
また、前記入力値取得ステップにおいて外部要因発注量を取得し、前記外部要因発注量に応じて、前記発注量導出ステップで導出した前記コンテナ船の発注量を補正する発注量補正ステップを有することによって、コンテナ船の発注量をより高い精度で導出することができ、コンテナ船の需要予測の精度を向上させることができる。
【0032】
また、前記入力値取得ステップにおいて前記コンテナ船のサイズ別発注割合を取得し、前記サイズ別発注割合と、前記発注量導出ステップで導出した前記コンテナ船の発注量に基づいてサイズ別発注量をさらに導出するサイズ別発注量導出ステップを有することによって、コンテナ船の船舶サイズ毎の発注量を高い精度で導出することができ、コンテナ船の船舶サイズ毎の発注量を用いてコンテナ船の需要予測の精度を向上させることができる。
【0033】
また、前記サイズ別発注量に基づいて竣工量を導出可能な建造モデルを適用して、前記入力値取得ステップで取得したサイズ別の手持工事量に基づいてサイズ別竣工量を導出し、さらに前記サイズ別竣工量を合算して前記竣工量を導出する竣工量導出ステップを有することによって、コンテナ船の船舶サイズ毎の竣工量を高い精度で導出することができ、コンテナ船の竣工量を用いてコンテナ船の需要予測の精度を向上させることができる。
【0034】
また、前記建造モデルは、造船所の操業状態による前記竣工量、時間遅れによる変化、及び国ごとの前記コンテナ船の建造能力の違いを考慮して、前記手持工事量と前記竣工量の関係を構築したものであることによって、コンテナ船の船舶サイズ毎の竣工量をより高い精度で導出することができ、コンテナ船の竣工量を用いてコンテナ船の需要予測の精度を向上させることができる。
【0035】
また、予め定めたサイズ別の前記手持工事量と前記竣工量との関係に基づいて前記サイズ別竣工量を導出することによって、コンテナ船の船舶サイズ毎の竣工量をより高い精度で導出することができ、コンテナ船の竣工量を用いてコンテナ船の需要予測の精度を向上させることができる。
【0036】
また、前記竣工量に基づいて前記コンテナ船の船腹量を修正することによって、コンテナ船の船腹量を高い精度で修正することができ、修正されたコンテナ船の船腹量を用いてコンテナ船の需要予測の精度を向上させることができる。
【0037】
また、前記竣工量に基づいて前記手持工事量を修正することによって、コンテナ船の手持工事量を高い精度で修正することができ、修正されたコンテナ船の手持工事量を用いてコンテナ船の需要予測の精度を向上させることができる。
【0038】
また、前記輸送効率に基づいて廃船量を導出可能な廃船モデルを用いて、前記輸送効率、前記廃船量及び前記コンテナ船の船腹量の比の関係に前記輸送効率導出ステップで導出された前記輸送効率を適用し前記廃船量を導出する廃船量導出ステップを有することによって、コンテナ船の廃船量を高い精度で導出することができ、コンテナ船の廃船量を用いてコンテナ船の需要予測の精度を向上させることができる。
【0039】
本発明の請求項13に係るコンテナ船の需要予測運用プログラムは、コンテナ船の需要を予測するプログラムであって、コンピュータに、上記の海上荷動きモデルと発注モデルを組み込ませ、入力値取得ステップ、海上荷動き量導出ステップ、輸送効率導出ステップ、及び発注量導出ステップを実行させ、導出結果を出力させることによって、コンテナ船の将来的な需要を高い精度で予測することができる。
【0040】
ここで、前記コンピュータに、外部要因発注量を取得させ、発注量補正ステップを実行させることによって、コンテナ船の発注量をより高い精度で導出することができ、コンテナ船の需要予測の精度を向上させることができる。
【0041】
また、前記コンピュータに、コンテナ船のサイズ別発注割合を取得させ、サイズ別発注量導出ステップを実行させ、導出結果を出力させることによって、コンテナ船の船舶サイズ毎の発注量を高い精度で導出することができ、コンテナ船の船舶サイズ毎の発注量を用いてコンテナ船の需要予測の精度を向上させることができる。
【0042】
また、前記コンピュータに、建造モデル取得ステップと竣工量導出ステップを実行させ、導出結果を出力させることによって、コンテナ船の船舶サイズ毎の竣工量を高い精度で導出することができ、コンテナ船の竣工量を用いてコンテナ船の需要予測の精度を向上させることができる。
【0043】
また、前記コンピュータに、廃船モデル取得ステップと廃船量導出ステップを実行させ、導出結果を出力させることによって、コンテナ船の廃船量を高い精度で導出することができ、コンテナ船の廃船量を用いてコンテナ船の需要予測の精度を向上させることができる。
【0044】
本発明の請求項18に係るコンテナ船の需要を予測するシステムであって、条件入力手段と、導出結果を出力する結果出力手段と、コンピュータとを備え、前記条件入力手段で入力された入力値を含む条件にしたがって上記のコンテナ船の需要予測方法を実行し、導出された結果を前記結果出力手段から出力することによって、必要な情報を入力し、当該入力された情報を用いて高い精度で予測されたコンテナ船の需要をユーザに提示することができる。
【0045】
ここで、前記コンピュータは、前記条件入力手段及び前記結果出力手段と情報通信網を利用して接続され、前記条件入力手段で入力された入力値を含む条件にしたがって上記のコンテナ船の需要予測方法を実行することによって、情報通信網を利用して遠隔地から必要な情報を入力し、当該入力された情報を用いて高い精度で予測されたコンテナ船の需要をユーザに提示することができる。
【0046】
また、前記条件入力手段への入力に応じて、前記結果出力手段の前記導出結果の出力内容が選択可能であることによって、ユーザが必要とする情報に応じて出力内容を選択可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の実施の形態におけるコンテナ船の需要予測システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態におけるサーバの構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態におけるコンテナ船の需要予測システムの構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態におけるコンテナ船の需要予測方法を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施の形態における発注モデルに適用される輸送効率と発注量との関係を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態における建造モデルに適用される手持工事量と竣工量との関係を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態における廃船モデルに適用される輸送効率と廃船量との関係を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態における用船料と廃船補正量との関係を示す図である。
【
図9】本発明の実施の形態におけるシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態におけるシミュレーション結果を示す図である。
【
図11】本発明の実施の形態におけるシミュレーション条件を示す図である。
【
図12】本発明の実施の形態におけるシミュレーション結果を示す図である。
【
図13】本発明の実施の形態におけるシミュレーション条件を示す図である。
【
図14】本発明の実施の形態におけるシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の実施の形態におけるコンテナ船の需要予測システム100は、
図1に示すように、サーバ102、データベース104、ユーザ端末106(106a,106b)を含んで構成される。サーバ102、データベース104、ユーザ端末106(106a,106b)は、情報通信網108を介して情報交換が可能となるように接続される。情報通信網108は、有線であっても、無線であってもよく、例えば、インターネット等の公共回線とされる。
【0049】
コンテナ船の需要予測システム100では、ユーザ端末106(106a,106b)の条件入力手段からの条件入力を受けて、データベース104に記憶された各種情報に基づいてサーバ102においてコンテナ船の需要予測処理が実行される。サーバ102において求められた処理結果は、ユーザ端末106(106a,106b)へ送信されて、結果出力手段によって処理結果が出力される。
【0050】
サーバ102は、コンテナ船の需要予測を行うサービスを提供する。サーバ102は、例えば、コンテナ船の需要予測を行うサービス機関に設置される。サーバ102は、コンピュータ200によって実現される。
【0051】
コンピュータ200は、
図2に示すように、処理部30、記憶部32、入力手段34、出力手段36及び通信提供手段38を含んで構成される。処理部30は、CPU等の演算処理を行う手段を含む。処理部30は、記憶部32に記憶されているコンテナ船の需要予測プログラムを実行することによってコンテナ船の需要予測処理を行う。記憶部32は、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶手段を含む。記憶部32は、処理部30とアクセス可能に接続され、コンテナ船の需要予測プログラム、コンテナ船の需要予測処理に必要な各種の情報を記憶する。なお、コンテナ船の需要予測プログラムには、コンテナ船の需要予測に必要な海上荷動きモデルや発注モデル等、各種のモデルを含むこともできる。また、海上荷動きモデルや発注モデル等、各種のモデルを含むプログラムを別のプログラムとして準備し、予めコンピュータ200の記憶部32に記憶させて組み込ませ、必要に応じて読みだしてコンテナ船の発注量や竣工量等の導出に利用することもできる。この場合、別のプログラムであっても、コンテナ船の需要予測プログラムに含むものと解釈する。
入力手段34は、コンピュータ200に情報を入力する手段を含む。入力手段34は、例えば、ユーザからの入力を受けるキーボード等を備える。出力手段36は、コンピュータ200から情報を出力する手段を含む。出力手段36は、例えば、ユーザインターフェース画面(UI)等のコンピュータ200での処理結果を出力する手段を含む。出力手段36は、例えば、ユーザに対して画像を呈示するディスプレイを備える。通信提供手段38は、情報通信網108を介して、データベース104及びユーザ端末106(106a,106b)や他の情報通信機器と情報をやり取りするためのインターフェースを含んで構成される。通信提供手段38による通信は有線及び無線を問わない。
【0052】
コンピュータ200は、コンテナ船の需要予測プログラムを実行することによって後述するコンテナ船の需要予測処理を行う。これによって、コンピュータ200は、入力値取得部10、海上荷動き量導出部12、輸送効率導出部14、発注量導出部16、発注量補正部18、サイズ別発注量導出部20、サイズ別竣工量導出部22、竣工量導出部24及び廃船量導出部26として機能する。
【0053】
データベース104は、コンテナ船の需要予測システム100においてコンテナ船の需要予測を行うために必要な情報を記憶したデータベースである。コンテナ船の需要予測を行うために必要な情報として、コンテナ港湾取扱量、貨物輸送距離、船速、船舶サイズ別発注割合、港湾混雑率、外部要因発注量、用船料、船舶サイズ別手持工事量、船腹量等が含まれる。データベース104は、情報通信網108を介してサーバ102からアクセスされ、必要に応じて記憶されている情報をサーバ102へ送信する。
【0054】
ユーザ端末106(106a,106b)は、サーバ102へコンテナ船の需要予測処理を行うための情報を入力及び送信するための端末である。ユーザ端末106(106a,106b)は、一般的なコンピュータとすることができる。コンテナ船の需要予測を実行しようとするユーザは、ユーザ端末106(106a,106b)に設けられた条件入力手段を用いてコンテナ船の需要予測処理を行うための条件を入力する。ユーザ端末106(106a,106b)は、条件の入力を受け付けると、情報通信網108を介して当該条件をサーバ102へ送信する。サーバ102は、当該条件を受信すると、当該条件に応じてコンテナ船の需要予測処理を行い、情報通信網108を介して処理結果をユーザ端末106(106a,106b)へ送信する。ユーザ端末106(106a,106b)は、処理結果を受信すると、結果出力手段を用いてユーザに処理結果を提示する。条件入力手段への入力に応じて、結果出力手段による導出結果の出力内容を選択可能としてもよい。
【0055】
なお、本実施の形態では、ユーザ端末106aはコンテナ船の需要予測を行うA社に設置され、ユーザ端末106bはコンテナ船の需要予測を行うB機関に設置された例を示している。
【0056】
なお、コンテナ船の需要予測システム100は、
図3に示すように、データベース104及びユーザ端末106(106a,106b)の機能をサーバ102が兼ねる構成としてもよい。当該構成では、入力手段34によってコンピュータ200に条件や情報が直接入力され、出力手段36によって処理結果が直接出力される。この場合、データベース104は、情報通信網108を介して接続することもできる。
【0057】
以下、
図4のフローチャートに沿って、コンテナ船の需要予測システム100におけるコンテナ船の需要予測方法について説明を行う。本実施の形態のコンテナ船の需要予測システム100は、予め構築した海上荷動きモデル、発注モデル、建造モデル及び廃船モデルを利用し、これらのモデルを組み合わせることによってコンテナ船の将来的な需要の予測を行う。具体的には、コンテナ港湾取扱量、貨物輸送距離、船速、船舶サイズ別発注割合、港湾混雑率、外部要因発注量、用船料、船舶サイズ別手持工事量、船腹量等の条件を入力値として海上荷動きモデル、発注モデル、建造モデル及び廃船モデルに適用してコンテナ船に対する発注量、廃船量、竣工量、船腹量、手持工事量等の将来的な需要の予測を行う。
【0058】
ステップS10~ステップS16では、サーバ102において予め構築した海上荷動きモデル、発注モデル、建造モデル及び廃船モデルの取得が行われる。海上荷動きモデルは、コンテナ港湾取扱量、貨物輸送距離等から海上荷動き量を導出するためのモデルである。発注モデルは、海上荷動き量、船腹量、船速及び港湾混雑率から輸送効率を求め、輸送効率からコンテナ船の発注量を導出するモデルである。また、発注モデルは、導出されたコンテナ船の発注量について外部要因発注量に基づいて補正を行う処理に適用される。また、発注モデルは、導出されたコンテナ船の発注量についてサイズ別発注割合に基づいてサイズ別発注量をさらに導出する処理に適用される。建造モデルは、手持工事量及び発注モデルで導出された発注量からコンテナ船の竣工量を導出するモデルである。また、建造モデルは、サイズ別の手持工事量及び発注モデルで導出されたサイズ別発注量に基づいてコンテナ船のサイズ別竣工量を導出する処理に適用される。廃船モデルは、海上荷動き量、船腹量、船速及び港湾混雑率から輸送効率を求め、輸送効率からコンテナ船の廃船量を導出するモデルである。また、廃船モデルは、導出された廃船量についてコンテナ船の用船料に基づいて補正を行う処理に適用される。海上荷動きモデル、発注モデル、建造モデル及び廃船モデルについては、ステップS20~S34において詳細を説明する。
【0059】
なお、海上荷動きモデル、発注モデル、建造モデル及び廃船モデルは、サーバ102を利用して一連のステップとして構築することもできる。
【0060】
取得あるいは構築された海上荷動きモデル、発注モデル、建造モデル及び廃船モデルは、サーバ102を構成するコンピュータ200の記憶部32に記憶される。サーバ102は、コンテナ船の需要予測処理を行う際に、記憶部32からこれらのモデルを読み出して適用することによって海上荷動き量導出部12、輸送効率導出部14、発注量導出部16、発注量補正部18、サイズ別発注量導出部20、サイズ別竣工量導出部22、竣工量導出部24及び廃船量導出部26として機能する。
【0061】
ステップS18では、ステップS20~S34における処理に必要な処理条件の入力値を取得する処理が行われる。当該ステップおける処理によって、サーバ102は入力値取得部10として機能する。サーバ102は、情報通信網108を介して、データベース104又はユーザ端末106に接続され、コンテナ船の需要予測処理に必要な情報を取得する。コンテナ船の需要予測処理に必要な情報は、コンテナ港湾取扱量、貨物輸送距離、船速、船舶サイズ別発注割合、港湾混雑率、外部要因発注量、用船料、船舶サイズ別手持工事量、船腹量等が挙げられる。コンテナ船の需要予測処理に必要な情報は、予めデータベース104に記憶させておいてもよいし、ユーザ端末106の条件入力手段によってユーザが入力するようにしてもよい。
【0062】
ステップS20~S34では、海上荷動きモデル、発注モデル、建造モデル及び廃船モデルを適用してコンテナ船の需要予想処理が行われる。コンテナ船の需要予想処理は、シミュレーションの内部時間tの時間間隔で繰り返し行われる。
【0063】
ステップS20では、海上荷動き量の導出処理が行われる。当該ステップにおける処理によって、サーバ102は海上荷動き量導出部12として機能する。サーバ102は、コンテナ港湾取扱量及び貨物輸送距離に基づいてコンテナ貨物の海上荷動き量を算出する。
【0064】
まず、サーバ102は、(式1)を用いて、コンテナ港湾取扱量CPHV
tに基づいて総流動量TFV
tを算出する。さらに、(式2)を用いて、総流動量TFV
t及び貨物輸送距離TD
tに基づいて海上荷動き量OCV
tを算出する。以下、各量の添字tは、シミュレーションの内部時間tを示す。
【数5】
【0065】
ステップS22では、輸送効率を導出する処理が行われる。当該ステップにおける処理によって、サーバ102は輸送効率導出部14として機能する。サーバ102は、発注モデルに対してステップS18において取得された船速、港湾混雑率、船腹量及びステップS20において導出された海上荷動き量を適用してコンテナ船の輸送効率を導出する。輸送効率は、コンテナ船の市況の逼迫度を示す指標である。
【0066】
サーバ102は、(式3)又は(式4)を用いて、海上荷動き量OCV
t、コンテナ船の船腹量V
t、船速S
t及び港湾混雑率ConR
tに基づいて輸送効率TE
tを導出する。このとき、港湾混雑率ConR
tの値に応じて(式3)又は(式4)のいずれを用いるかを選択する。港湾混雑率ConR
tが100より大きい場合には(式3)を適用し、港湾混雑率ConR
tが100以下であれば(式4)を適用する。なお、港湾混雑率ConR
tは、シミュレーションの内部時間tにおける沖待ちの船腹量を全世界の船腹量で除算して無次元化したものである。また、船腹量V
tは、後述する建造モデルを用いた処理によって導出されるコンテナ船の竣工量に基づいて修正された値を適用することが好適である。
【数6】
【0067】
ステップS24では、コンテナ船の発注量を導出する処理が行われる。当該ステップにおける処理によって、サーバ102は発注量導出部16として機能する。サーバ102は、発注モデルに対してステップS22において導出された輸送効率を適用してコンテナ船の発注量を導出する。コンテナ船の発注量は、輸送効率とコンテナ船の発注量との関係から導出することができる。すなわち、発注モデルには、輸送効率とコンテナ船の発注量との関係が適用される。
【0068】
図5は、2007年から2017年までの期間における輸送効率とコンテナ船の発注量との関係を示す図である。ただし、
図5では、外部要因が大きかった2008年、2012年、2014年及び2015年のデータは除いてある。
図5に示すように、輸送効率とコンテナ船の発注量(
図5では、発注量/船腹量で示す)との関係は、輸送効率の範囲毎に所定の関係式で表される。
【0069】
ステップS26では、コンテナ船の発注量を補正する処理が行われる。当該ステップにおける処理によって、サーバ102は発注量補正部18として機能する。サーバ102は、ステップS18において取得された外部要因発注量に応じてステップS24において導出されたコンテナ船の発注量Otを補正する処理を行う。具体的には、外部要因発注量OoutをステップS24において導出されたコンテナ船の発注量Otに加算してコンテナ船の発注量Otを補正する。ただし、外部要因発注量に応じたコンテナ船の発注量Otの補正処理は、これに限定されるものではなく、輸送効率とコンテナ船の発注量との関係では考慮されていなかった外部要因に基づくコンテナ船の発注量を考慮した補正を行うものであればよい。
【0070】
ステップS28では、コンテナ船のサイズ別発注量を導出する処理が行われる。当該ステップにおける処理によって、サーバ102はサイズ別発注量導出部20として機能する。サーバ102は、ステップS26において補正されたコンテナ船の発注量Otに対してステップS18において取得された船舶サイズ別発注割合を乗算することによってコンテナ船の船舶サイズ毎の発注量を導出する。船舶サイズは、例えば、3000TEU未満、300TEU以上12000TEU未満、12000TEU以上に分類される。そして、それぞれの船舶サイズに対して発注割合を取得し、当該発注割合を補正されたコンテナ船の発注量Otに乗算することで船舶サイズ毎のサイズ別発注量を導出することができる。なお、船舶サイズ別発注割合は、過去におけるコンテナ船の発注割合の統計データから設定してもよいし、ユーザが適宜設定できるようにしてもよい。
【0071】
ステップS30では、コンテナ船のサイズ別竣工量を導出する処理が行われる。当該ステップにおける処理によって、サーバ102はサイズ別竣工量導出部22として機能する。サーバ102は、建造モデルに対してステップS18において取得した船舶サイズ別手持工事量を適用することによってコンテナ船の船舶のサイズ別の竣工量を導出する。建造モデルは、造船所の操業状態による竣工量、時間遅れによる変化、及び国ごとのコンテナ船の建造能力の違いを考慮して手持工事量と竣工量の関係を構築したモデルである。
【0072】
図6は、過去の統計から得られた船舶サイズが3000TEU未満、3000TEU以上12000TEU未満、12000TEU以上のコンテナ船の手持工事量に対する竣工量の関係を示す。船舶サイズが3000TEU未満の場合、竣工量y=2.9×10
-2×手持工事量xで表される。船舶サイズが3000TEU以上12000TEU未満の場合、手持工事量が2000×10
3TEU未満であれば竣工量y=3.3×10
-2×手持工事量xで表され、手持工事量が2000×10
3TEU以上であれば竣工量y=2.4×10
-2×手持工事量xで表される。船舶サイズが12000TEU以上の場合、手持工事量が2000×10
3TEU未満であれば竣工量y=2.6×10
-2×手持工事量xで表され、手持工事量が2000×10
3TEU以上であれば竣工量y=3.0×10
-2×手持工事量xで表される。このような関係式に基づいて、手持工事量に対応する竣工量を算出することができる。なお、コンテナ船の船舶サイズはこれらの分類に限定されるものではない。
【0073】
このとき、コンテナ船のサイズ別の手持工事量に対して時間遅れをもってコンテナ船のサイズ別竣工量は増減するので、当該時間遅れに応じてコンテナ船のサイズ別の手持工事量をコンテナ船のサイズ別竣工量に反映させることが好適である。例えば、時間遅れは9ヶ月とすることが好適である。
【0074】
ステップS32では、コンテナ船の竣工量を導出する処理が行われる。当該ステップにおける処理によって、サーバ102は竣工量導出部24として機能する。サーバ102は、ステップS30において導出された船舶サイズ別竣工量に基づいてコンテナ船の総竣工量を求める。例えば、3000TEU未満、300TEU以上12000TEU未満及び12000TEU以上のそれぞれの船舶サイズに対する竣工量を合算してコンテナ船の総竣工量を導出する。
【0075】
ステップS34では、コンテナ船の廃船量を導出する処理が行われる。当該ステップにおける処理によって、サーバ102は廃船量導出部26として機能する。サーバ102は、廃船モデルに対してステップS22において導出された輸送効率を適用することによってコンテナ船の廃船量を導出する。廃船モデルでは、発注モデルと同様に、輸送効率とコンテナ船の廃船量との関係が適用される。
【0076】
図7は、2007年から2017年までの期間における輸送効率とコンテナ船の廃船量との関係を示す図である。ただし、
図7では、外部要因が大きかった2012年~2014年及び2016年のデータは除いてある。
図7に示す関係から、輸送効率とコンテナ船の廃船量(
図7では、発注量/船腹量で示す)との関係は線形回帰式で表すことができる。すなわち、
図7の例では、輸送効率の範囲毎に、輸送効率TE
tが約11000(mile)未満では廃船量Sc_TE
tはSc
t=(-1.0×10
-6TE
t+1.0×10
-2)×船腹量V
tで算出され、輸送効率TE
tが約11000(mile)以上ではSc_TE
t=(-2.9×10
-7TE
t+3.3×10
-3)×船腹量V
tで算出される。
【0077】
なお、コンテナ船の船腹量Vtは時間遅れをもってコンテナ船の廃船量Sc_TEtに影響する。したがって、当該時間遅れに応じてコンテナ船の船腹量Vtをコンテナ船の廃船量Sc_TEtに反映させることが好適である。
【0078】
また、廃船量は、コンテナ船の用船料に応じて補正することが好適である。すなわち、市況の逼迫度が低く、用船料が低い時期においてコンテナ船の廃船が追加で行われるので、用船料FRに応じた廃船補正量Sc_Tc
tを廃船量Sc_TE
tに加えて廃船量Sc
t=廃船量Sc_TE
t+廃船補正量Sc_Tc
t算出する。
図8は、用船料がindex=48から下回った時点からの用船料の差(index=48との差)の蓄積に対する廃船補正量Sc_Tc
t(廃船量の差分)の関係を示す。当該関係から、廃船補正量Sc_Tc
tを求め、補正された廃船量Sc
tを算出することができる。
【0079】
ステップS36では、コンテナ船の船腹量の修正が行われる。コンテナ船は手持工事量に追加されてから時間遅れをもって竣工され、竣工に伴って船腹量に加算される。そこで、ステップS18において取得された船腹量をコンテナ船の総竣工量に基づいて修正することが好適である。
【0080】
ステップS38では、コンテナ船の手持工事量の修正が行われる。コンテナ船の竣工量に応じてコンテナ船の手持工事量は減少する。したがって、コンテナ船の竣工量に応じてコンテナ船の手持工事量を修正することが好適である。例えば、コンテナ船の船舶サイズ毎の竣工量に応じてコンテナ船の船舶サイズ毎の手持工事量を修正する。なお、コンテナ船の手持工事量はステップS28において導出されたコンテナ船のサイズ別発注量に基づいて修正してもよい。この場合、コンテナ船のサイズ別発注量に対して時間遅れをもってコンテナ船の手持工事量は増減するので、当該時間遅れに応じてコンテナ船のサイズ別発注量をコンテナ船の手持工事量に反映させることが好適である。
【0081】
ステップS40では、コンテナ船の需要予測を行う全期間について需要の予測処理が終了したか否かが判定される。コンテナ船の需要予測を行う全期間について需要の予測処理が終了していれば需要予測処理を終了し、そうでなければシミュレーションの内部時間tを所定のステップ時間だけ進めてステップS20に処理を戻し、次の内部時間tについての需要予測処理を繰り返す。
【0082】
以上の処理によって、コンテナ船の需要予測システム100におけるコンテナ船の需要予測に関してコンテナ船の発注量、手持工事量、竣工量、船腹量、廃船量が導出される。サーバ102は、これらの量の情報を記憶部32に記憶させると共に、情報通信網108を介してデータベース104に送信して記憶させる。また、サーバ102は、情報通信網108を介してこれらの情報をユーザ端末106へ送信する。ユーザ端末106では、結果出力手段を用いて、コンテナ船の需要予測に関するコンテナ船の発注量、手持工事量、竣工量、船腹量、廃船量、海上荷動き量、輸送効率等の情報をユーザに提示する。
【0083】
[実施例]
以下、コンテナ船の需要予測システム100によるコンテナ船の需要を予測するシミュレーションを行った実施例について説明する。
【0084】
シミュレーションでは、まず2007年~2017年のシミュレーション期間について、コンテナ船の港湾取扱量、貨物輸送距離、船速、船舶サイズ別発注割合、港湾混雑率、外部要因発注量、用船料の実績値を入力として、コンテナ船の発注量、廃船量、竣工量、船腹量及び手持工事量を1ヶ月間隔で予測する処理を行った。当該予測処理によって、コンテナ船の需要予測システム100において使用されるモデルの開発を行った。
【0085】
図9は、モデル開発時におけるシミュレーションで導出されたコンテナ船の発注量、竣工量、船腹量及び廃船量の経時的な変化を示す。
図9において、破線は実績値を示し、太実線はシミュレーション結果(用船料による補正あり)、細実線はシミュレーション結果(用船量による補正なし)を示す。
図9に示すように、コンテナ船の発注量、竣工量、船腹量及び廃船量のシミュレーション結果が実績値に一致するようにモデルを構築した。
【0086】
次に、開発モデルの妥当性を確認するために、上記のモデル開発期間外の2018年~2021年をシミュレーション期間としてコンテナ船の港湾取扱量、貨物輸送距離、船速、船舶サイズ別発注割合、港湾混雑率、外部要因発注量、用船料の実績値を入力として、コンテナ船の発注量、廃船量、竣工量、船腹量及び手持工事量を1ヶ月間隔でシミュレーションを行った。
【0087】
図10は、シミュレーションで導出されたコンテナ船の発注量、竣工量、船腹量及び廃船量の経時的な変化を示す。
図10において、点線は実績値を示し、実線はシミュレーション結果(港湾混雑率による補正あり)、破線はシミュレーション結果(港湾混雑率による補正なし)を示す。
図10に示すように、2007年~2017年のモデル開発期間内の実績値を用いて構築したモデルを適用して2018年~2021年のモデル開発期間外にコンテナ船の発注量、竣工量、船腹量及び廃船量のシミュレーションを行った結果は実績値に略一致した。これによって、構築したモデルが妥当であることが確認できた。
【0088】
続いて、コンテナ船の需要予測システム100を用いて将来シミュレーションを実施し、コンテナ船の造船需要の将来の動向を検討した。シミュレーション期間は、2022年~2040年とした。
図11は、シミュレーション条件を示す。ケース1(Case1)では、コンテナ港湾取扱量が年成長率1.99%で増加、貨物輸送距離が毎月1.245mile減少、船速はindex=75、港湾混雑率は2016年を100として2023年に収束、船舶サイズ別発注割合は3000TEU未満が14.4%、3000TEU以上12000TEU未満が12.3%、12000TEU以上が73.3%、用船料は1993年を100として2025年にindex=48を上回るように回復するものとした。ケース2(Case2)では、コンテナ港湾取扱量が年成長率3.28%で増加、それ以外の条件はケース1(Case1)と同じとした。また、EEXI規制に伴う強制廃船が毎月20833TEUだけ行われるものとした。
【0089】
図12は、
図11に示したシミュレーション条件においてコンテナ船の発注量の将来の予測を行った結果を示す。
図12において、実線はケース1(Case1)、破線はケース2(Case2)のシミュレーション結果を示す。
図12に示すように、ケース1(Case1)では2023年~2032年の期間においてコンテナ船の発注量は低迷し、ケース2(Case2)では2023年~2028年の期間においてコンテナ船の発注量は低迷するという予測結果が得られた。
【0090】
また、コンテナ船の需要予測システム100を用いて将来シミュレーションを実施し、コンテナ船の造船需要の将来の動向を検討した。シミュレーション期間は、2022年~2040年とした。
図13は、シミュレーション条件を示す。ケース1(Case1)~ケース3(Case3)では、コンテナ港湾取扱量が年成長率3.28%で増加、貨物輸送距離が毎月1.245mile減少、船速はindex=75、港湾混雑率は2016年を100として2023年に収束、船舶サイズ別発注割合は3000TEU未満が14.4%、3000TEU以上12000TEU未満が12.3%、12000TEU以上が73.3%、用船料は1993年を100として2025年にindex=48を上回るように回復するものとした。また、EEXI規制に伴う強制廃船に加え、国際海運における環境規制等により追加廃船があるケースとして、ケース1(Case1)では追加廃船なし、ケース2(Case2)では毎月20833TEUだけ追加廃船が行われ、ケース3(Case3)では毎月40263TEUだけ追加廃船が行わるものとした。
【0091】
図14は、
図13に示したシミュレーション条件においてコンテナ船の発注量の将来の予測を行った結果を示す。
図14において、実線はケース1(Case1)、破線はケース2(Case2)、一点鎖線はケース3(Case3)のシミュレーション結果を示す。ケース3(Case3)に示すように、追加廃船を進めることによって2025年から発注量の回復が見込めるが、2032年以降に発注量が低迷するという予想結果が得られた。これに対して、ケース2(Case2)では、追加廃船を適量に維持することで、2026年から発注量は回復し、その後の発注量の減少も抑制できるという予想結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、コンテナ船の需要予測に利用することができる。ただし、本発明の適用範囲は、コンテナ船の需要予測に限定されるものではなく、他の種類の船舶の需要予想にも適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
10 入力値取得部、12 海上荷動き量導出部、14 輸送効率導出部、16 発注量導出部、18 発注量補正部、20 サイズ別発注量導出部、22 サイズ別竣工量導出部、24 竣工量導出部、26 廃船量導出部、30 処理部、32 記憶部、34 入力手段、36 出力手段、38 通信提供手段、100 需要予測システム、102 サーバ、104 データベース、106(106a,106b) ユーザ端末、108 情報通信網、200 コンピュータ。