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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141630
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】非接触音響検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/06 20060101AFI20241003BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20241003BHJP
   G01N 29/265 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01N29/06
G01H17/00 Z
G01N29/265
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053385
(22)【出願日】2023-03-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り [公開の事実1] 刊行物: IUS2022SYMPOSIUM PROCEEDINGS 公開日: 2022年10月28日 集会名: International Ultrasonics Symposium 開催日: 2022年10月10日-13日 発表日: 2022年10月12日 [公開の事実2] 刊行物:ISBME2022 ABSTRACT BOOK 公開日: 2022年10月21日 集会名: 17th International Symposium on Biomedical Engineering 2022 開催日: 2022年11月5日 発表日: 2022年11月5日 [公開の事実3] 刊行物: 電子情報通信学会技術研究報告 発行日: 2023年2月21日 集会名: 電子情報通信学会 超音波研究会 開催日: 2023年2月28日 発表日: 2023年2月28日
(71)【出願人】
【識別番号】593232206
【氏名又は名称】学校法人桐蔭学園
(71)【出願人】
【識別番号】000172813
【氏名又は名称】佐藤工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】杉本 恒美
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和子
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕
(72)【発明者】
【氏名】歌川 紀之
(72)【発明者】
【氏名】黒田 千歳
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 靖和
(72)【発明者】
【氏名】笠松 直史
【テーマコード(参考)】
2G047
2G064
【Fターム(参考)】
2G047AA10
2G047BC09
2G047CA04
2G047DB03
2G047DB13
2G047EA12
2G047GD02
2G064AA05
2G064AB02
2G064BA02
2G064CC02
2G064CC47
2G064DD23
(57)【要約】
【課題】光学計測装置が移動しながら対象面の振動を計測可能とする非接触音響検査装置に関する技術を提供する。
【解決手段】非接触音響検査装置は、構造物の対象面に平面波音波を照射して対象面を加振する非集束型の音響発信装置と、対象面の振動による振動波を光学的に計測する光学計測装置と、光学計測装置を移動させる搬送装置と、音響発信装置、光学計測装置、および、搬送装置を制御する制御手段と、光学計測装置によって計測された振動波を解析する解析手段と、解析結果を用いて構造物の状態を検査する検査手段と、を備え、搬送装置は、光学計測装置が移動しながら対象面の振動を計測可能とするように、光学計測装置を移動させることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の対象面に平面波音波を照射して対象面を加振する非集束型の音響発信装置と、
前記対象面の振動による振動波を光学的に計測する光学計測装置と、
前記光学計測装置を移動させる搬送装置と、
前記音響発信装置、前記光学計測装置、および、前記搬送装置を制御する制御手段と、
前記光学計測装置によって計測された前記振動波を解析する解析手段と、
解析結果を用いて前記構造物の状態を検査する検査手段と、を備え、
前記搬送装置は、前記光学計測装置が移動しながら前記対象面の振動を計測可能とするように、前記光学計測装置を移動させることを特徴とする非接触音響検査装置。
【請求項2】
前記搬送装置は、前記音響発信装置を移動させることを特徴とする請求項1に記載の非接触音響検査装置。
【請求項3】
前記音響発信装置は、異なる周波数の複数のバースト波からなるマルチトーンバースト波を所定の送信間隔で前記平面波音波として送出する請求項1または2に記載の非接触音響検査装置。
【請求項4】
前記音響発信装置は、異なる周波数の複数のバースト波からなるマルチトーンバースト波を所定の送信間隔で前記平面波音波として送出し、
前記解析手段は、前記平面波音波に基づき生成した参照波形と前記振動波との相互相関関数を算出する請求項1または2に記載の非接触音響検査装置。
【請求項5】
前記解析手段は、前記マルチトーンバースト波の周波数毎に前記相互相関関数を算出し、
算出した前記相互相関関数に基づき、前記所定の送信間隔毎に前記参照波形と前記振動波との最大相関値を示す周波数の参照波形を特定する請求項4に記載の非接触音響検査装置。
【請求項6】
前記解析手段は、前記対象面の各単位部位を座標位置とする平面画像に、特定した前記参照波形と前記振動波との相関値を前記所定の送信間隔毎に描画し、得られた前記平面画像を解析結果として出力する請求項5に記載の非接触音響検査装置。
【請求項7】
前記解析手段は、前記複数のバースト波に前記所定の送信間隔のN倍(Nは自然数)かつ所定数連続したフィルタ処理を施した参照波形を用いて前記相互相関関数を算出する請求項4に記載の非接触音響検査装置。
【請求項8】
前記解析手段は、前記マルチトーンバースト波の周波数帯域に対し、任意の周波数間隔毎に前記参照波形と前記振動波との相互相関関数を算出する請求項4に記載の非接触音響検査装置。
【請求項9】
前記光学計測装置は、前記対象面にレーザ光を垂直に照射する請求項1または2に記載の非接触音響検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触音響検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を非接触に解析・探査することを目的として、対象物に対して音波を照射する技術が種々提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、橋梁やトンネル等の建築物を検査対象とし、無人航空機(Unmanned aerial vehicle、UAV)に搭載した音響発信源から音波を照射して測定対象の対象面を加振し、加振した対象面の振動速度を計測器(レーザドップラ振動計)によって測定し、測定結果を解析し、検査対象の建築物の内部に生じた欠陥部分の解析を行う非接触音響検査システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-196973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、音響発信源は移動させながら音波を照射しているが、計測器を移動させながら計測することは行っていないため、測定可能な範囲に限りがあり、検査効率に問題があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、光学計測装置が移動しながら構造物の対象面の振動を計測可能とする非接触音響検査装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、構造物の対象面に平面波音波を照射して対象面を加振する非集束型の音響発信装置と、前記対象面の振動による振動波を光学的に計測する光学計測装置と、前記光学計測装置を移動させる搬送装置と、前記音響発信装置、前記光学計測装置、および、前記搬送装置を制御する制御手段と、前記光学計測装置によって計測された前記振動波を解析する解析手段と、解析結果を用いて前記構造物の状態を検査する検査手段と、を備え、前記搬送装置は、前記光学計測装置が移動しながら前記対象面の振動を計測可能とするように、前記光学計測装置を移動させることを特徴とする非接触音響検査装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により提供される非接触音響検査装置によれば、測定可能な範囲を広げることが可能となり、高い検査効率を実現可能な非接触音響検査装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】非接触音響検査装置の構成を示す説明図である。
図2】評価実験1の構造物、光学計測装置、および搬送装置の位置関係を示す模式図である。
図3】構造物の内部に埋め込んだ模擬欠陥の配置を示す断面図である。
図4】評価実験1の計測領域を示す図である。
図5】評価実験1および2に用いた平面波音波(マルチトーンバースト波)の波形図である。
図6】相関相互処理を用いた解析方法の概念図である。
図7】画像化処理方法の概念図である。
図8】(a)は評価実験1の移動速度Slowの場合の相関値のエネルギー表示結果を示す図であり、(b)は評価実験1の移動速度Normalの場合の相関値のエネルギー表示結果を示す図であり、(c)は評価実験1の移動速度Fastの場合の相関値のエネルギー表示結果を示す図である。
図9】評価実験2の構造物、光学計測装置、および搬送装置の位置関係を示す模式図である。
図10】評価実験2の計測領域を示す模式図である。
図11】(a)は評価実験2の移動速度Slowの場合の相関値のエネルギー表示結果を示す図であり、(b)は評価実験2の移動速度Normalの場合の相関値のエネルギー表示結果を示す図であり、(c)は評価実験2の移動速度Fastの場合の相関値のエネルギー表示結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態の例について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態の図面は、いずれも本発明の技術思想、構成及び動作を説明するためのものであり、その構成を具体的に限定するものではない。また、全ての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0011】
<概要>
本実施形態における非接触音響検査装置10の概要について説明する。
本実施形態の非接触音響検査装置10(以下、本装置と記載する場合もある)は、音響発信装置11、光学計測装置13、搬送装置14、解析手段151、制御手段152、および検査手段153を備える。図1に示すように、構造物1の対象面2に音響発信装置11が平面波音波12を照射し、照射したことにより対象面2に生じる振動波を光学計測装置13により光学的に計測し、計測した振動波を解析手段151により解析し、解析結果を用いて構造物1の状態を検査手段153により検査する。非接触音響検査装置10は、光学計測装置13を搬送装置14によって移動しながら構造物1の対象面2の振動を計測することを特徴とする。
【0012】
これまで、橋梁やトンネル等の建築物を検査対象とし、無人航空機に搭載した音響発信源から音波を照射して測定対象の対象面を加振し、加振した対象面の振動速度を計測器によって測定し、測定結果を解析し計測器、検査対象の建築物の内部に生じた欠陥部分の解析を行う技術(例えば、特許文献1)があった。しかし、計測器を移動させながら計測していないため、計測範囲に限りがあり、効率よく検査を行えていなかった。そこで、本発明者らは、光学計測装置13を搬送装置14により移動させ、光学計測装置13を移動させながら対象面2の振動を計測する非接触音響検査装置を提案する。
【0013】
構造物1は、コンクリート構造物、木造構造物、土木構造物が挙げられる。具体的には、橋梁、トンネル、居住建物、堤防などが挙げられる。構造物1の対象面2は、構造物1の外側に面した面であり、橋梁の場合、橋脚の側壁、道路上面、道路下面などであり、トンネルの場合、側壁、上壁、道路上面などであり、居住建物の場合、側壁、屋上、居住建物内の側壁、床、天井などであり、堤防であれば、側壁、上面などである。本実施形態では、構造物1の対象面2は、コンクリート構造物の側壁を模したコンクリート供試体を用いる。また、本実施形態では、詳細は後述するが、構造物1(本実施形態において「コンクリート供試体1」と記載することもある)に空洞または剥離欠損などの欠損部を設け、構造物1の状態、すなわち、どの位置にどのような欠損部があるかを検査する。なお、構造物1と共振周波数が異なる金属などを埋設し、どの位置に埋設物があるかを解析し、構造物1の状態を検査することでもよい。
【0014】
平面波音波12は、伝わる方向に対し波面が垂直で平面の状態で進んでいく非集束音波であり、本実施形態ではバースト波を用いる。
非集束型の音響発信装置11は、平面波音波12を構造物1の対象面2に一様に照射する装置であり、構造物1の対象面2を一様に加振可能な装置である。
ところで、音響発信装置(スピーカ)には、本装置で用いる「非集束型」のほか「集束型」のものもある。「集束型」のスピーカには、ピンポイントに音波を照射可能なパラトリックススピーカや音波を特定の方向に照射可能なフェーズドアレイスピーカなどがあり、光学計測装置を用いた非接触音響検査装置の音響発信装置として用いられている。このような集束型のスピーカを用いて対象物を加振する場合、ピンポイントに音波が照射されるため、音波を照射した位置に光学計測装置からレーザを照射する必要がある。一方、本装置で用いる「非集束型」の音響発信装置11と光学計測装置13の位置関係が変化しないため、移動させながら計測しても、光学計測装置13による計測位置における音響発信装置11による加振音圧は変化しない。また、音響発信装置11を遠方に配置して、光学計測装置13だけを移動する場合には、音響発信装置11は対象面2に音波をほぼ一様に照射し、対象面2をほぼ一様に加振されることになるため、光学計測装置13による計測位置における加振音圧はほぼ一様とみなすことができる。そのため、レーザ131を対象面2の特定位置にピンポイントで照射するより、効率よく計測できる。そこで、本装置は、音響発信装置11を非集束型とすることとする。本装置の音響発信装置11としては計測対象面を大音圧で加振できれば良いので、特に音源の指向特性は重要ではない。すなわち、音響発信装置11としては、集束を必要とせずに大音圧が発生できる音源(非集束型の市販のラウドスピーカや長距離音響発生装置等)であれば良い。本実施形態の音響発信装置11は、長距離音響発生装置(LRAD-300X(登録商標),Gemasys社製)を用いる。音響発信装置11の数やスピーカの角度等は特に限定されない。
音響発信装置11から構造物1へ照射される平面波音波12は、所望の周波数に調整することができ、かつ、構造物1の表面(対象面2)をその振動速度が光学計測装置13によって測定できる程度に、表面に対して平行方向ではない方向(好ましくは、表面に対する垂直方向)へ振動させることができる音波であればよい。平面波音波12は、空気中で振動振幅が減衰し難い可聴帯域の音波(音響波)が好ましい。超音波は空気中で振動振幅の減衰が大きいものの、音響発信装置11が発する平面波音波12としての使用を排除するものではなく、音波には超音波を含む。平面波音波12の強度は、音響発信装置11から構造物1へ当該平面波音波12を照射することで、構造物1の対象面2に90dB以上の音圧を発生させる強度であることが好ましく、120dB程度の音圧を発生させる強度であることがより好ましい。
【0015】
光学計測装置13は、平面波音波12により加振された構造物1の対象面2の振動を光学的に計測する手段である。本実施形態に用いられる光学計測装置13は、構造物1の対象面2の振動速度を非接触で測定できるものであれば特に限定されず、レーザ変位計を用いることができ、レーザドップラ振動計であることが好ましい。光学計測装置13にレーザドップラ振動計を用いる場合、光学計測装置13はレーザ131(本実施形態において「観察波131」と記載することもある)を構造物1に照射する。平面波音波12が照射されて振動する構造物1の表面でレーザ131が反射される際に、振動の影響を受けた振動波を光学計測装置13の受光部(図示せず)で受光することにより、光学計測装置13は構造物1の対象面2の振動速度を計測する。このレーザ131は、構造物1の振動状況を示す目的信号である。光学計測装置13で得られた振動速度の計測データである振動波は、解析手段(解析手段151が相当)で解析に用いられる。
光学計測装置13は、1回の計測で構造物1の表面の1点における振動計測が可能なシングルポイントのレーザ振動計を複数台用いる。本実施形態は、シングルポイントのレーザ振動計としては、具体的には、ポータブルレーザドップラ振動計(VGO-200(登録商標),Polytec GmbH社製)を用いることができる。本実施形態で用いるポータブルレーザドップラ振動計は、制御手段を含むものである。
光学計測装置13は、対象面2に対してレーザ131を垂直または略垂直に入射させるように照射する。これは、構造物1に対するレーザ131の光軸が傾くと計測点の位置ずれか生じることおよび傾いた方向のドップラ効果を計測してしまうからである(ただし、角度が小さければその影響も小さい)。特に、本装置は光学計測装置13を移動させながら計測するため、構造物1に対してレーザ131を垂直または略垂直に照射することにより、対象面2の振動を高感度に計測することが可能となる。
【0016】
搬送装置14は、光学計測装置13を移動させる装置であり、光学計測装置13を移動できればどのようなものでもよい。具体的には、光学計測装置13を台車に搭載し、地表面または床面に設置されたレール上を台車が移動する場合は「台車およびレール」、光学計測装置13を車に搭載し、地表面または床面を車が走行する場合は「車」、光学計測装置13を無人飛行機に搭載し、無人飛行機が移動する場合は「無人飛行機(制御装置を含む)」、光学計測装置13を台車に搭載し、地表面または床面を人が台車に力を加えて移動する場合は「台車」が搬送装置14に相当する。
非接触音響検査装置10は、光学計測装置13が対象面2に対してレーザ131を垂直に入射させることが好ましいため、搬送装置14は光学計測装置13の照射部(図示せず)と対象面2とが垂直の位置関係を維持しながら移動する必要がある。
搬送装置14は光学計測装置13が移動しながら対象面2の振動を計測可能とするように、光学計測装置13を移動させる。「計測可能とするように、光学計測装置13を移動させる」とは、光学計測装置13から対象面2へレーザ131を照射可能な位置に光学計測装置13を設置し移動すること、光学計測装置13と構造物1の間に計測の障害となるものが無いように搬送装置14を移動させること、光学計測装置13と構造物1との距離が適切な距離となるように搬送装置14を移動すること、光学計測装置13によって対象面2に生じる振動波を計測できる速度で移動すること、音響発信装置11からの平面波音波12の送信タイミングおよび光学計測装置13からのレーザ131の照射タイミングを考慮して制御手段152から送信される制御信号に基づき搬送装置14の移動を開始/停止すること、および光学計測装置13によって対象面2に生じる振動波を計測できる速度で移動することである。搬送装置14を実験者の人力で移動する場合は、搬送装置14に対して光学計測装置13を設置する位置、搬送装置14の移動速度や搬送装置の移動方向などをガイドする機能、例えば、制御手段152による音声ガイドや表示装置154へのガイド表示などがあると好ましい。
【0017】
解析手段151は、光学計測装置13によって計測された振動波を解析する手段であり、コンピュータ15が相当する。詳細は後述するが、解析手段151による解析結果を出力する際に、例えば、算出した振動エネルギーなどを数値で出力してもよいが、振動エネルギーを平面画像として出力することが好ましい。この場合、コンピュータ15が備えるモニタ(表示装置154)に出力することが好ましい。
検査手段153は、出力された解析結果を用いて、構造物1の状態を検査する手段であり、コンピュータ15が相当する。検査結果はコンピュータ15が備えるモニタ(表示装置154)に出力することが好ましい。
【0018】
コンピュータ15には、解析手段151、検査手段153、および表示装置154の他、制御手段152が含まれる。制御手段152は、音響発信装置11、光学計測装置13、および搬送装置14を制御する。制御手段152は、音響発信装置11から送出される平面波音波12の周波数を制御することができる。また、制御手段152は、光学計測装置13に対して、構造物1の対象面2の振動速度の計測を開始させる制御信号を出力する。また、制御手段152は、搬送装置14の移動を開始/停止させる制御信号や搬送装置14の移動速度を指示する制御信号を出力する。また、制御手段152は、表示装置154に解析結果として、例えば、振動エネルギーを示した平面画像表示させる。
【0019】
本実施形態における非接触音響検査装置10は、上述の構成に加えて、任意波形発生装置17及びアンプ19を更に有している。なお、任意波形発生装置17及びアンプ19は、上述した音響発信装置11ともに設置されるものとする。しかしながら、ここで述べた構成は一具体例であり、任意波形発生装置17又はアンプ19については、本発明の実施において必須の構成ではない。
任意波形発生装置17は、制御手段152の制御によって所望の周波数の音波を音響発信装置11から発生させる装置である。言い換えると、制御手段152は、音響発信装置11から平面波音波12が出力される時間関係を制御する手段である。任意波形発生装置17に用いられる機器は特に限定されず、例えばバースト波を発生可能な市販の任意波形発生器等を用いることができる。
アンプ19に用いられる機器は特に限定されず、例えば、市販のオーディオアンプを用いることができる。
【0020】
<非接触音響検査装置10を用いた評価実験1について>
以下、非接触音響検査装置10を用いた評価実験1について説明する。
図2は、構造物1、音響発信装置11、光学計測装置13の設置位置関係、および搬送装置14の動きを示す模式図である。
図2に示すように、評価実験1は、光学計測装置13とともに音響発信装置11も移動させる。本実施形態では、光学計測装置13と音響発信装置11とを同一の搬送装置14に搭載し、移動した。なお、図2には、コンピュータ15は図示していないが、搬送装置14に搭載し、光学計測装置13および音響発信装置11とともに移動してもよいし、搬送装置14には搭載せず、他の位置に設置してもよい。
・光学計測装置13は、ポータブルレーザドップラ振動計(VGO-200(登録商標),Polytec GmbH社製)を4台用いた。ポータブルレーザドップラ振動計4台は、4台それぞれのコンクリート供試体1までの距離が一定(図2のlが相当)となるように、かつ、鉛直方向に所定間隔空けて設置した。
・音響発信装置11は長距離音響発生装置(LRAD-300X(登録商標),Gemasys社製)を用いた。
・光学計測装置13と音響発信装置11を搬送装置14(台車)に搭載し、搬送装置14を実験者が人力で移動させた。
・光学計測装置13からコンクリート供試体1の対象面2までの距離(図2のlが相当)は約1.43メートル、音響発信装置11からコンクリート供試体1の対象面2までの距離(図2のlが相当)は約1.45メートルとした。
・コンクリート供試体1の対象面2の音圧は120dB(Z特性最大値)とした。
・搬送装置14の移動速度はslow(0.28m/s=1.01km/h)、normal(0.44m/s=1.59km/h)、fast(0.58m/s=2.08km/h)の3段階とした。
このように、評価実験1では、搬送装置14は、光学計測装置13と音響発信装置11を移動させ、非接触音響検査装置10は移動させながら送信した平面波音波12および受信した振動波を用いて解析を行う。
【0021】
図3は、構造物1の内部に埋め込んだ模擬欠陥の配置を示す図である。
評価実験1において検査対象となるコンクリート供試体1は、その内部に25mm厚の発泡スチロールで作られた模擬円形空洞欠陥が埋設されている。コンクリート供試体1は、幅200センチメートル×高さ150センチメートル×奥行き30センチメートルである。
ここで模擬円形空洞欠陥とは人為的に作成した欠陥部であり、具体的には、直径50mm×深さ60mm、直径50mm×深さ40mm、直径50mm×深さ20mm、直径50mm×深さ10mm、直径100mm×深さ80mm、直径100mm×深さ60mm、直径100mm×深さ40mm、直径100mm×深さ20mm、直径150mm×深さ100mm、直径150mm×深さ80mm、直径150mm×深さ60mm、直径150mm×深さ40mm、直径200mm×深さ100mm、直径200mm×深さ80mm、直径200mm×深さ60mm、直径200mm×深さ40mm、直径300mm×深さ100mm、直径300mm×深さ80mm、直径300mm×深さ60mm、直径300mm×深さ40mmの欠陥部が他の欠陥部と重ならない一定の間隔でコンクリート供試体1に埋設されている。
【0022】
図3に示した構造物1に対し、評価実験1での計測領域を図4に示す。
評価実験1は、構造物1に対し光学計測装置13は約1.43メートル、音響発信装置11は約1,45メートル離れた位置から図4に示す範囲を搬送装置14で移動しながら計測を行った。具体的には、図3に示す直径300mm×深さ80mm、直径300mm×深さ60mm、直径300mm×深さ40mmの模擬円形空洞欠陥が埋設された領域を計測した。搬送装置14(台車)には、光学計測装置13のポータブルレーザドップラ振動計4台を構造物1と所定距離の位置に、鉛直方向に所定間隔空けて設置する。また、搬送装置14(台車)には、音響発信装置11も設置し、当該搬送装置14(台車)を図4に示した計測領域を計測可能とするように移動した。
【0023】
次に、評価実験1の解析方法について説明する。
評価実験1では、平面波音波12と光学計測装置13で受信した受信信号である振動波との相互相関関数を算出している。
振動波は、平面波音波12によって加振された対象面2に対し、光学計測装置13によってレーザ131(観察波131)を照射した際に当該観察波131が対象面2で反射し光学計測装置13で受信可能な波形である。
平面波音波12による振動が発生した周波数帯域を検出するために、本発明者らは送信した周波数毎のバースト波形と光学計測装置13により得られた振動波の相互相関処理を行い、周波数毎に得られた相関値の最大値を計測点の値として表示する解析方法をこれまで行った。しかし、本発明は、光学計測装置13を移動させながら計測するため、光学計測装置13の共振周波数のノイズが大きく、また、計測位置が移動することにより複数の計測点の情報が含まれるため、上記方法により算出した相関値を用いるのでは構造物1の状態を正確に解析できないという問題があった。
そこで、本発明者らは研究を重ねた結果、送信した周波数毎のバースト波形と光学計測装置13により得られた振動波の相互相関処理を行い、バースト波形の送信間隔毎に最大の相関値を示す周波数の相関波形を採用することで計測点毎の相関値の最大値を算出する解析方法を見出した。
【0024】
評価実験1に用いた平面波音波12を図5に示す。
評価実験1では、図5に示すような周波数範囲500~4100Hzのマルチトーンバースト波(パルス幅3ms、周波数インターバル200Hz、波形全体の時間長さ60ms)を平面波音波12として用いた。
このように、評価実験1では、音響発信装置11は、異なる周波数(周波数範囲500~4100Hzが相当)の複数のバースト波からなるマルチトーンバースト波を所定の送信間隔(60ms毎等に設定できるがここでは120msを使用)で平面波音波12として送出する。
【0025】
図6を用いて、本装置の解析方法の相互相関処理について説明する。
図6(1)は、光学計測装置13が搬送装置14によって移動しながら受信した信号(振動波)の取得波形例である。取得波形には、複数の周波数成分が含まれており、また、複数の計測点の情報が含まれている。
【0026】
図6(2)は、相互相関処理用の参照波形例である。
参照波形は平面波音波12の周波数範囲に対応したバースト波を用いる。本実施形態では、平面波音波12の周波数範囲は500~4100Hzであるため、当該範囲で、かつ、任意の周波数間隔毎に参照波形を設ける。本実施形態では、任意の周波数間隔を10Hz毎に、参照波形f、参照波形f、・・・、参照波形fとする。周波数間隔は計算時間を考慮して設定した間隔であり、10Hzより大きい間隔でも小さい間隔でもよい。ただし、間隔が大きすぎると、相関値の大きい周波数が特定できず、また、間隔が小さすぎると計算時間(解析時間)を要してしまうため、コンピュータ15のスペック等を考慮して決定することが好ましい。
各参照波形のパルス幅は、平面波音波12のパルス幅を考慮して決定する。参照波形のパルス幅が平面波音波12のパルス幅と同一であると相関値は高まる。一方、参照波形との相関処理を行う取得波形(振動波)は、構造物1の欠損部などによって共振した振動波であるため、振動が減衰する時間は平面波音波12のパルス幅より長くなることが考えられる。そこで、平面波音波12のパルス幅より長いパルス幅を参照波形のパルス幅とする。本実施形態では、平面波音波12のパルス幅は3msであることを考慮し検証を重ねた結果、パルス幅を20msとすれば減衰する時間をカバーできることが分かったため、参照波形のパルス幅は20msとした。
また、本装置は光学計測装置13を移動させながら計測するため、参照波形の全ての時間を用いず、平面波音波12の送信間隔毎に最大の相関値を示す周波数の相関波形を採用するようにする。このため、各参照波形は、平面波音波12と同様のバースト波形に対し、送信間隔と同一または整数倍の間隔で、かつ、所定数連続したタイミングの波形とする。具体的には、図6(2)に示すように、参照波形は周波数毎に、3か所ずつ波形が示されている。図6(2)に示された波形と波形との間隔は、送信間隔と同一または整数倍の間隔であり、3連続したタイミングの波形である。送信間隔と同一または整数倍の間隔とすることで、加振された周期で振動した計測点の情報を抽出することが可能となる。送信間隔の整数倍の間隔が好ましく、1倍の間隔がより好ましい。連続数は、構造物1の欠陥部の大きさおよび光学計測装置13の移動速度に依存するため、これらを考慮して決定する必要があり、また、連続数が多すぎるとノイズを含むことになる虞があるため、検出したい最大の欠陥部に合わせて調整するのが望ましい。本実施形態では、模擬円形空洞欠陥の直径が300mmであり、光学計測装置13の移動速度のうち最も早いfastは0.48m/sであることを考慮し、検証を重ねた結果、参照波形は、送信間隔の1倍(120ms)、かつ、3連続の波形とすると相関値の高い信号を高感度に抽出できたため、この値を採用した。
このように解析手段151は、マルチトーンバースト波の周波数帯域(例えば、500~4100Hzが相当)に対し任意の周波数間隔毎(例えば、10Hz毎が相当)に参照波形と振動波との相互相関関数を算出する。
また、このように解析手段151は、複数のバースト波に所定の送信間隔(例えば、120ms)のN倍(Nは自然数)かつ所定数連続(例えば、3連続)したフィルタ処理を施した参照波形(例えば、図6(2)参照)を用いて相互相関関数を算出することで、S/N比の低い信号から、平面波音波12の送信波形と相関値の高い信号を高感度に抽出することが可能となる。
【0027】
図6(3)は、図6(1)に示した取得波形(振動波)と図6(2)に示した参照波形との相互相関処理を行うイメージを示している。図6(3)に示すように、周波数毎に相互相関処理を行う。
図6(4)は、図6(3)に示した相互相関処理に基づき、送信間隔毎(本実施形態では、120ms毎)に最大の相関値を示す周波数を特定し、特定した相関波形をその送信タイミングの相関波形とすることを示している。例えば、5[s]では、最大の相関値(0,03)を示す周波数fを採用し、6[s]では、最大の相関値(0,02)を示す周波数fを採用する。特定した相関波形を用いて、振動エネルギーを示した平面画像を表示させるようにした。
このように、解析手段151は、平面波音波12として送信するマルチトーンバーストと同様の参照波形と振動波との相互相関関数を算出するようにする(図6参照)。また、解析手段151は、マルチトーンバースト波の周波数毎に相互相関関数を算出し、算出した相互相関関数に基づき、所定の送信間隔毎(例えば、120ms毎)に参照波形と振動波との最大相関値を示す周波数の参照波形を特定するようにする(図6参照)。
【0028】
図7は、図6で算出した相関波形を用いた画像化処理方法について示す。
図7に示すように、光学計測装置13で受信した受信信号(振動波)に対し、平面波音波12の送信間隔である120ms毎を1画素(測定点)として画像処理を行う。
本実施形態では、光学計測装置13で受信した受信信号に対し、図6に示した相互相関処理を行い、所定間隔毎に最大の相関値を示す周波数との相関波形を算出するため、算出した相関波形を用いて画像化処理を行った。
【0029】
評価実験1の解析結果を図8に示す。
図8は、光学計測装置13によって構造物1を移動計測し、上述した解析方法により算出した相関値のエネルギー表示を示している。
図8(a)は、搬送装置14の移動速度がslowの場合、図8(b)は、搬送装置14の移動速度がnormalの場合、図8(c)は搬送装置14の移動速度がfastの場合である。上述したように、参照波形の送信間隔(120msが相当)毎を1画素としていることより、例えば、図8(a)の場合、上述した計測領域の計測に要する時間が約3.9秒であるため、ポータブルレーザドップラ振動計1台で受信した振動波に対し、65画素分のデータを算出できる。そして、算出した各画素のデータを平面画像として表示している。
このように、解析手段151は、対象面の各単位部位(例えば、ポータブルレーザドップラ振動計毎の振動波に対し、送信間隔(120ms)毎)を座標位置とする平面画像に、特定した参照波形と振動波との相関値を所定の送信間隔毎(例えば、120ms毎)に描画し、得られた平面画像(例えば、図8参照)解析結果として出力するようにする。
そして、図8から明らかなように、評価実験1では、深さ40mmの模擬円形空洞欠陥および深さ60mm模擬円形空洞欠陥について検出できた。
【0030】
<非接触音響検査装置10を用いた評価実験2について>
以下、非接触音響検査装置10を用いた評価実験2について説明する。
評価実験2は、評価実験1では光学計測装置13と音響発信装置11を搬送装置14で移動させながら計測したのに対し、光学計測装置13は評価実験1と同様、搬送装置14で移動させながら計測するが、音響発信装置11は所定位置に固定した状態で平面波音波12を出力する点が評価実験1と異なる。非接触音響検査装置10を構成する装置および手段は、音響発信装置11は固定設置されること、これに伴い、搬送装置14(台車)は音響発信装置11を移動しないことおよび送信間隔が60msであることを除き、評価実験1と同様である。
【0031】
図9は、構造物1、音響発信装置11、光学計測装置13の設置位置関係、および搬送装置14の動きを示す模式図である。図9に示すように、音響発信装置11は光学計測装置13を移動させる搬送装置14の後方、すなわち、構造物1の対象面2に対して光学計測装置13よりも離れた位置に設置する。
・光学計測装置13は、ポータブルレーザドップラ振動計(VGO-200(登録商標),Polytec GmbH社製)を5台用いた。ポータブルレーザドップラ振動計5台は、5台それぞれのコンクリート供試体1までの距離が一定(図9のlが相当)となるように、かつ、鉛直方向に所定間隔空けて設置した。
・音響発信装置11は長距離音響発生装置(LRAD-300X(登録商標),Gemasys社製)を用いた。
・光学計測装置13を搬送装置14(台車)に搭載し、台車を実験者が人力で移動させた。
・音響発信装置11は構造物1の対象面2に対して光学計測装置13よりも離れた位置に設置した。音響発信装置11からコンクリート供試体1の対象面2までの距離(図9のlが相当)は約5メートルとした。
・光学計測装置13からコンクリート供試体1の対象面2までの距離(図9のlが相当)は約1メートルとした。
・コンクリート供試体1の対象面2の音圧は120dB(Z特性最大値)とした。
・搬送装置14の移動速度はslow(0.17m/s=0.61km/h)、normal(0.24m/s=0.87km/h)、fast(0.48m/s=1.74km/h)の3段階とした。
【0032】
次に、構造物1について説明する。構造物1は評価実験1と同一のものを用いる。したがって、図3に示した通りである。
図3に示した構造物1に対し、評価実験2での計測領域を図10に示す。
評価実験2は、構造物1に対し音響発信装置11は約5メートル離れた位置に設置し、光学計測装置13は約1メートル離れた位置から図10に示す範囲を搬送装置14で移動しながら計測を行った。具体的には、図3に示す直径300mm×深さ40mmの模擬円形空洞欠陥が埋設された領域を計測した。搬送装置14(台車)には、光学計測装置13のポータブルレーザドップラ振動計5台を構造物1と所定距離の位置に、鉛直方向に所定間隔空けて設置し、当該搬送装置14(台車)を図10に示した計測領域を計測可能とするように移動した。
【0033】
評価実験2でも、評価実験1で説明した解析方法で平面波音波12と振動波との相互相関関数を算出する。
評価実験2の解析結果を図11に示す。
図7に示すように、光学計測装置13で受信した受信信号(振動波)に対し、平面波音波12の送信間隔毎を1画素(測定点)として画像処理を行う。評価実験2は、送信間隔は60msであるから、60ms毎を1画素として画像処理を行う。
図11は光学計測装置13によって構造物1を移動計測した際の相関値のエネルギー表示を示している。
図11(a)は、搬送装置14の移動速度がslowの場合、図11(b)は、搬送装置14の移動速度がnormalの場合、図11(c)は搬送装置14の移動速度がfastの場合である。
図11から明らかなように、評価実験2では、直径300mm×深さ40mm程度の大きさの模擬円形空洞欠陥について検出できた。
【0034】
以上のように、具体的な実施形態を示して本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
<変形例>
本実施形態では、音響発信装置11を移動させながら光学計測装置13で計測する場合(評価実験1の場合)、光学計測装置13と音響発信装置11を同一の台車に搭載し移動したがこれに限らない。
例えば、光学計測装置13と音響発信装置11を異なる搬送装置14に搭載させて、個々に移動させてもよい。
【0035】
本実施形態では、光学計測装置13は地表面を搬送装置14によって移動するようにしたが、これに限らない。例えば、搬送装置14として無人航空機を用いて光学計測装置13を移動するようにしてもよい。搬送装置14として無人航空機を用いれば、無人航空機に搭載した光学計測装置13からのレーザ131を例えば、ビルの側壁だけでなく、ビルの屋上や高速道路に対し上空から垂直に照射させられるため、効率のよい検査を行うことが可能となる。
【0036】
本実施形態では、レーザドップラ計の台数を評価実験1では4台、評価実験2では5台としたが、これに限らない。レーザドップラ計の台数は、計測領域の面積や構造物1との距離などを考慮し、決定することが好ましい。
【0037】
本実施形態では、相互相関処理に用いる参照波形は、バースト波に送信間隔毎の3連続のフィルタ処理を施した波形としたがこれに限らない。光学計測装置13の移動速度等を考慮して連続数を決定することが好ましい。
【0038】
本実施形態では、搬送装置14によって光学計測装置13を移動する際に生じる発生する振動について特に記載していないが、アクティブおよび/またはパッシブの制振対策を施すことが好ましい。制振対策を施すことにより、より精度の高い解析を行うことが可能となる。
【0039】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含する。
<1>
構造物の対象面に平面波音波を照射して対象面を加振する非集束型の音響発信装置と、前記対象面の振動による振動波を光学的に計測する光学計測装置と、前記光学計測装置を移動させる搬送装置と、前記音響発信装置、前記光学計測装置、および、前記搬送装置を制御する制御手段と、前記光学計測装置によって計測された前記振動波を解析する解析手段と、解析結果を用いて前記構造物の状態を検査する検査手段と、を備え、前記搬送装置は、前記光学計測装置が移動しながら前記対象面の振動を計測可能とするように、前記光学計測装置を移動させることを特徴とする非接触音響検査装置。
<2>
前記搬送装置は、前記音響発信装置を移動させることを特徴とする<1>に記載の非接触音響検査装置。
<3>
前記音響発信装置は、異なる周波数の複数のバースト波からなるマルチトーンバースト波を所定の送信間隔で前記平面波音波として送出する<1>または<2>に記載の非接触音響検査装置。
<4>
前記音響発信装置は、異なる周波数の複数のバースト波からなるマルチトーンバースト波を所定の送信間隔で前記平面波音波として送出し、前記解析手段は、前記平面波音波に基づき生成した参照波形と前記振動波との相互相関関数を算出する<1>または<2>に記載の非接触音響検査装置。
<5>
前記解析手段は、前記マルチトーンバースト波の周波数毎に前記相互相関関数を算出し、算出した前記相互相関関数に基づき、前記所定の送信間隔毎に前記参照波形と前記振動波との最大相関値を示す周波数の参照波形を特定する<4>に記載の非接触音響検査装置。
<6>
前記解析手段は、前記対象面の各単位部位を座標位置とする平面画像に、特定した前記参照波形と前記振動波との相関値を前記所定の送信間隔毎に描画し、得られた前記平面画像を解析結果として出力する<5>に記載の非接触音響検査装置。
<7>
前記解析手段は、前記複数のバースト波に前記所定の送信間隔のN倍(Nは自然数)かつ所定数連続したフィルタ処理を施した参照波形を用いて前記相互相関関数を算出する<4>に記載の非接触音響検査装置。
<8>
前記解析手段は、前記マルチトーンバースト波の周波数帯域に対し、任意の周波数間隔毎に前記参照波形と前記振動波との相互相関関数を算出する<4>に記載の非接触音響検査装置。
<9>
前記光学計測装置は、前記対象面にレーザ光を垂直に照射する<1>または<2>に記載の非接触音響検査装置。
【符号の説明】
【0040】
1 構造物(コンクリート供試体)
2 対象面
10 非接触音響検査装置
11 音響発信装置
12 平面波音波
13 光学計測装置
14 搬送装置
15 コンピュータ
17 任意波形発生装置
19 アンプ
131 レーザ(観察波)
151 解析手段
152 制御手段
153 検査手段
154 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11