(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141639
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】吸音材及び車両部材
(51)【国際特許分類】
G10K 11/162 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G10K11/162
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053400
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】高安 慧
(72)【発明者】
【氏名】清水 麻理
(72)【発明者】
【氏名】小竹 智彦
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA06
5D061AA22
5D061BB21
(57)【要約】
【課題】薄厚であっても低周波数領域における吸音特性と強度とに優れる吸音材を提供すること。
【解決手段】第一不織布層及び第二不織布層を備え、第一不織布層及び第二不織布層が、各層を構成する繊維の本数を基準として、それぞれ繊維径0.1~10μmφである繊維を30~95%、繊維径20μmφ以上である繊維を1.5~20%含む、吸音材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一不織布層及び第二不織布層を備え、
前記第一不織布層及び前記第二不織布層が、各層を構成する繊維の本数を基準として、それぞれ繊維径が0.1~10μmφである繊維を30~95%、繊維径が20μmφ以上である繊維を1.5~20%含む、吸音材。
【請求項2】
音の入射側を前記第一不織布層側としたとき、前記第一不織布層の厚さが、前記第二不織布層の厚さ以下である、請求項1に記載の吸音材。
【請求項3】
前記繊維が、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維及びアクリロニトリル繊維からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載の吸音材。
【請求項4】
前記第一不織布層及び前記第二不織布層が、各層を構成する繊維の本数を基準として、それぞれさらに繊維径が10μmφ超~20μmφ未満である繊維を1~60%含む、請求項1又は2に記載の吸音材。
【請求項5】
前記第一不織布層の第二不織布層とは反対側に樹脂層を備える、請求項1又は2に記載の吸音材。
【請求項6】
前記樹脂層がポリエステル、ポリオレフィン及びポリウレタンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項5に記載の吸音材。
【請求項7】
前記樹脂層及び前記第一不織布層間、並びに前記第一不織布層及び前記第二不織布層間の少なくともいずれかに接着剤層をさらに備える、請求項5に記載の吸音材。
【請求項8】
前記第一不織布層及び前記第二不織布層間に第三不織布層をさらに備える、請求項1又は2に記載の吸音材。
【請求項9】
厚さが1~30mmである、請求項1又は2に記載の吸音材。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の吸音材を備える、車両部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音材及び車両部材に関する。
【背景技術】
【0002】
低周波数領域における吸音特性に優れる吸音材として、不織布等を2層重ねて形成される吸音材が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低周波領域における吸音特性を向上するためには、一般的に吸音材を厚くする方法が取られることがあるが、例えば設置空間が限られる自動車分野等においては当該方法は取り得ない。一方で、単に薄い吸音材を用いようとすると、十分な吸音特性が得られないだけでなく、吸音材自体の強度の低下も懸念される。
【0005】
自動車分野等で求められる軽量化及び省スペース化を実現しつつ、なおかつ優れた吸音特性及び強度を両立することのできる吸音材の開発が求められている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、薄厚であっても低周波数領域における吸音特性と強度とに優れる吸音材を提供することを目的とする。本発明はまた、当該吸音材を備える車両部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、発明者らは、不織布吸音材において一般に低周波数領域における吸音特性を低下させると考えられる太径の繊維に着目し、これを細径の繊維と共に用いることに着想した。すなわち本発明は、例えば以下の[1]~[10]に関する。
[1]
第一不織布層及び第二不織布層を備え、
前記第一不織布層及び前記第二不織布層が、各層を構成する繊維の本数を基準として、それぞれ繊維径が0.1~10μmφである繊維を30~95%、繊維径が20μmφ以上である繊維を1.5~20%含む、吸音材。
[2]
音の入射側を前記第一不織布層側としたとき、前記第一不織布層の厚さが、前記第二不織布層の厚さ以下である、[1]に記載の吸音材。
[3]
前記繊維が、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維及びアクリロニトリル繊維からなる群より選択される少なくとも一種を含む、[1]又は[2]に記載の吸音材。
[4]
前記第一不織布層及び前記第二不織布層が、各層を構成する繊維の本数を基準として、それぞれさらに繊維径が10μmφ超~20μmφ未満である繊維を1~60%含む、[1]~[3]のいずれか一に記載の吸音材。
[5]
前記第一不織布層の第二不織布層とは反対側に樹脂層を備える、[1]~[4]のいずれか一に記載の吸音材。
[6]
前記樹脂層がポリエステル、ポリオレフィン及びポリウレタンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、[5]に記載の吸音材。
[7]
前記樹脂層及び前記第一不織布層間、並びに前記第一不織布層及び前記第二不織布層間の少なくともいずれかに接着剤層をさらに備える、[5]又は[6]に記載の吸音材。
[8]
前記第一不織布層及び前記第二不織布層間に第三不織布層をさらに備える、[1]~[7]のいずれか一に記載の吸音材。
[9]
厚さが1~30mmである、[1]~[8]のいずれか一に記載の吸音材。
[10]
[1]~[9]のいずれか一に記載の吸音材を備える、車両部材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄厚であっても低周波数領域における吸音特性と強度とに優れる吸音材を提供することができる。また、本発明によれば、当該吸音材を備える車両部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る吸音材の模式断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る吸音材の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
<吸音材>
図1は、一実施形態に係る吸音材の模式断面図である。吸音材10は、基材層として第一不織布層1及び第二不織布層2と、をこの順に備える。第一不織布層1側から入射した音(音響エネルギー)は、吸音材を透過する際に熱エネルギーとして散逸される。これにより音の減衰が観察される。
例えば吸音材10は、第一不織布層1に相当する層状の第一領域と、第二不織布層2に相当する層状の第二領域と、を備えるということもできる。
【0012】
図2は、一実施形態に係る吸音材の模式断面図である。吸音材20は、樹脂層4と、基材層として第一不織布層1、第三不織布層3及び第二不織布層2と、をこの順に備える。樹脂層4側から入射した音(音響エネルギー)は、吸音材を透過する際に熱エネルギーとして散逸される。これにより音の減衰が観察される。
【0013】
吸音材の厚さは、吸音特性の発現、材料の施工性、省スペース化等の観点から、1~30mmとすることができ、2~25mmであってもよく、5~20mmであってもよい。
【0014】
低周波数領域における優れた吸音特性を有する本実施形態の吸音材は、JIS A 1405-1に準拠して測定される500~2000Hzでの平均垂直入射吸音率を、0.45以上、好ましくは0.5以上とすることができる。
より高周波数側の領域においても優れた吸音特性を有する本実施形態の吸音材は、2000~6300Hzでの平均垂直入射吸音率を、0.45以上、好ましくは0.5以上とすることができる。
【0015】
(不織布層)
低周波数領域における吸音特性に優れる観点から、吸音材の基材となる層として不織布層が用いられる。第一不織布層及び第二不織布層は、同じ素材から構成されていてもよく、異なる素材から構成されていてもよい。
【0016】
不織布層を構成する繊維としては、有機繊維が挙げられる。有機繊維としては、例えば、ポリエチレン(低密度又は高密度)、ポリプロピレン(PP)、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル繊維、アクリロニトリル(AN)繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ウール等の天然繊維などが挙げられる。不織布層を構成する繊維は、これらを1種又は2種以上を含むことができる。
【0017】
上記繊維のうち、吸音性能と耐久性の両立の観点からは、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維又はアクリロニトリル繊維を好適に用いることができ、特にPET繊維、PP繊維又はアクリロニトリル繊維を好適に用いることができる。
【0018】
第一不織布層及び第二不織布層は、各層を構成する繊維の本数を基準として、それぞれ繊維径が0.1~10μmφである繊維(以下、「第一繊維」という場合がある)を30~95%含む。第一繊維の含有量が上記下限値以上であることで低周波数領域の吸音性能を得ることができ、上記上限値以下であることで吸音性能を得るための厚みを保持することができる。この観点から、第一繊維の含有量は40%以上であってよく、60%以上であってよく、また92%以下であってよく、85%以下であってよい。
以下、各繊維の含有量とは、不織布層に含まれる繊維の全量(全本数)を基準としたときの各繊維の量(本数)を意味する。
【0019】
第一繊維の繊維径は、吸音性能を得るための厚みを保持する観点から、0.1μmφ以上であるが、1μmφ以上であってよく、また低周波数領域の吸音性能を得る観点から、10μmφ以下であるが、5μmφ以下であってよい。
【0020】
第一繊維の平均繊維径は特に限定されないが、吸音性能を得るための厚みを保持する観点から、1μmφ以上とすることができ、2μmφ以上であってよく、また低周波数領域の吸音性能を得る観点から、8μmφ以下とすることができ、6μmφ以下であってよい。
【0021】
第一不織布層及び第二不織布層は、各層を構成する繊維の本数を基準として、それぞれ繊維径が20μmφ以上である繊維(以下、「第二繊維」という場合がある)を1.5~20%含む。第二繊維の含有量が上記下限値以上であることで吸音性能を得るための厚みを保持しつつ、外部応力に耐えうる強度を不織布層に付与することができ、上記上限値以下であることで第一繊維による低周波数領域の吸音性能を損なうことなく不織布層に強度を付与することができる。この観点から、第二繊維の含有量は2%以上であってよく、また15%以下であってよく、10%以下であってよい。
第二繊維の繊維径の上限は、第一繊維を含めた生産性の観点から、50μmφとすることができる。
【0022】
第二繊維の繊維径は、第一繊維による低周波数領域の吸音性能を損なうことなく不織布層に強度を付与する観点から、20μmφ以上であるが、30μmφ以上であってよく、また第一繊維を含めた生産性の観点から、50μmφ以下とすることができ、40μmφ以下であってよい。
【0023】
第二繊維の平均繊維径は特に限定されないが、第一繊維による低周波数領域の吸音性能を損なうことなく不織布層に強度を付与する観点から、22μmφ以上とすることができ、25μmφ以上であってよく、また第一繊維を含めた生産性の観点から、45μmφ以下とすることができ、40μmφ以下であってよい。
【0024】
第一不織布層及び第二不織布層は、各層を構成する繊維の本数を基準として、それぞれさらに繊維径が10μmφ超~20μmφ未満である繊維(以下、「第三繊維」という場合がある)を1~60%含んでよい。第三繊維の含有量が上記下限値以上であることで低周波数領域の吸音性能が得られ易く、上記上限値以下であることで第一繊維及び第二繊維を含めた生産性が得られ易い。この観点から、第三繊維の含有量は5%以上であってよく、10%以上であってよく、20%以上であってよく、また50%以下であってよく、40%以下であってよい。
【0025】
第三繊維の繊維径は、吸音性能を得るための厚みの保持、強度の付与等の観点から、10μmφ超であるが、12μmφ以上であってよく、また低周波数領域の吸音性能の観点から、20μmφ未満であるが、18μmφ以下であってよい。
【0026】
第三繊維の平均繊維径は特に限定されないが、吸音性能を得るための厚みの保持、強度の付与等の観点から、11μmφ以上とすることができ、12μmφ以上であってよく、また低周波数領域の吸音性能の観点から、19μmφ以下とすることができ、18μmφ以下であってよい。
【0027】
第一不織布層及び第二不織布層は、各層を構成する繊維の本数を基準として、それぞれ第一繊維及び第三繊維を30~99%含んでよい。すなわち第一不織布層及び第二不織布層は、それぞれ繊維径が1μmφ以上20μmφ未満である繊維を30~99%含んでよい。
第一繊維及び第三繊維の含有量が上記下限値以上であることで低周波数領域に吸音性能が得られ易く、上記上限値以下であることで吸音性能を得るための厚みの保持がし易い。この観点から、第一繊維及び第三繊維の含有量は35%以上であってよく、40%以上であってよく、また98.5%以下であってよく、98%以下であってよい。
【0028】
不織布層を構成する第一繊維及び第二繊維、或いは第一繊維~第三繊維の平均繊維径は、強度の観点から、3.0μmφ以上とすることができ、4.0μmφ以上であってよく、また低周波領域の吸音性能の観点から、20μmφ以下とすることができ、15μmφ以下であってよい。
【0029】
第一不織布層及び第二不織布層における、第一繊維及び第二繊維、或いは第一繊維~第三繊維の含有量は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
不織布層を構成する繊維の繊維径、繊維の含有量、繊維の平均繊維径等は、以下のとおり測定される。
電子顕微鏡にて1000倍で撮影した不織布層の10枚の写真から、任意に100本の繊維を選択し、個々の繊維の繊維径を直径0.1μmオーダーまで計測する。そして、計測値に基づき、0.1~10μmφ、10μmφ超~20μmφ未満、20μmφ以上の3種の繊維径領域における繊維本数をカウントする。選択された繊維100本中の各繊維径領域の繊維本数の割合を算出し、各繊維径領域の繊維の含有量(%)とする。また、上記計測値に基づき、選択された繊維100本の繊維径の平均値を算出し(小数点以下第2位を四捨五入)、平均繊維径とする。
【0031】
第一不織布層及び第二不織布層の厚さは、低周波数領域における吸音特性に優れる観点から、それぞれ0.3~25mmとすることができ、1~20mmであってもよく、2~15mmであってもよい。
第一不織布層及び第二不織布層は、同じ厚さを有していてもよく、異なる厚さを有していてもよい。低周波数領域における吸音特性に優れる観点から、音の入射側を第一不織布層側としたとき、第一不織布層の厚さが、第二不織布層の厚さ以下であってよく、第一不織布層の厚さが第二不織布層の厚さ未満であってよい。
【0032】
第一不織布層及び第二不織布層の目付は、低周波数領域における吸音特性に優れる観点から、それぞれ50~2000g/m2とすることができ、100~1000g/m2であってもよい。
【0033】
吸音材は、低周波数領域の吸音性能向上と強度向上の観点から、中間層として第一不織布層及び第二不織布層間に第三不織布層をさらに備えてよい。第三不織布層を構成する繊維としては、第一不織布層及び第二不織布層と同様に有機繊維であってよい。有機繊維としては、耐久性の観点から、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維又はアクリロニトリル繊維を好適に用いることができ、特にPET繊維、PP繊維又はアクリロニトリル繊維を好適に用いることができる。
【0034】
第三不織布の厚さは、積層等の加工性の観点、低周波数領域の吸音性能の向上、並びに、耐久性及び強度の向上を可能とする観点から、0.01mm以上0.5mm未満とすることができ、0.02~0.3mmであってもよく、0.05~0.2mmであってもよい。
【0035】
第三不織布の通気抵抗は、低周波数領域の吸音性能の向上の観点から、0.01kPa・s/m以上とすることができ、0.01~10kPa・s/mであってもよく、0.1~7kPa・s/mであってもよく、0.25~5kPa・s/mであってもよく、0.5~2kPa・s/mであってもよい。通気抵抗はカトーテック株式会社製の通気性試験機(KES-F8)により測定される。
【0036】
第三不織布の目付は、軽量化と低周波数領域の吸音性能の向上の観点から10~300g/m2とすることができ、20~100g/m2であってもよい。
【0037】
(樹脂層)
吸音材は、音の入射側を第一不織布層側としたとき、第一不織布層上に(第一不織布層の第二不織布層とは反対側に)樹脂層を備えることができる。樹脂層側から入射した音は樹脂層にて振動エネルギーに変換されるため、樹脂層を設けない場合に比してより効果的に音を減衰させることができる。なお、樹脂層は不織布層を保護し、吸音材の耐チッピング性を向上する観点から、保護層ということができる。樹脂層は、連通孔を有しない層(フィルム状の層、シート状の層、スキン層等と示される樹脂溶融層等)であってよい。
【0038】
吸音特性と耐久性との両立をより高度に図る観点から、樹脂層はエラストマを含む層であってよい。エラストマとしては、熱可塑性エラストマ及び熱硬化性エラストマが挙げられる。
熱可塑性エラストマとしては、例えばポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアクリル系、ポリアミド系、塩化ビニル、塩素化ポリエチレン系、ポリジエン系、フッ素系、シリコーン系、ポリカーボネート系等の樹脂、あるいはこれらの変性樹脂が挙げられる。
熱硬化性エラストマとしては、例えばフッ素系、シリコーン系、ウレタン系、エポキシ系等の樹脂、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)等の合成ゴム又は天然ゴム、あるいはこれらの変性樹脂が挙げられる。
軽量化のための薄膜化、耐熱性、耐久性等の観点から、ポリウレタン系又はポリエステル系の樹脂が好ましい。
【0039】
エラストマを含む層は、エラストマ以外に他の成分を含んでいてよい。他の成分としては、耐熱性、耐久性、吸音性、制振性、遮音性等の向上の観点から、シリカ、アルミナ、タルク等の無機粒子、金属粒子、有機樹脂粒子等が挙げられ、軽量化の観点から、中空粒子等が挙げられる。軽量化の観点から、エラストマを含む層は、発泡材、発泡成形による気泡部分等を含んでいてもよい。
【0040】
樹脂層の面重量(単位面積当たりの重量)は、吸音特性と耐久性との両立をより高度に図る観点から、10~1000g/m2とすることができ、50~800g/m2であってもよい。
【0041】
樹脂層の密度は、吸音特性と耐久性との両立をより高度に図る観点から、0.1~10.0g/cm3とすることができ、0.2~2.0g/cm3であってもよい。
【0042】
樹脂層の厚さは、低周波数領域における吸音特性に優れる観点から、0.5~500μmとすることができ、5~250μmであってもよく、10~100μmであってもよい。
【0043】
樹脂層は、フィルム特性の調整による吸音効果の向上機能、及び熱線反射機能の付与の観点から、その表面に金属蒸着層を備えていてもよい。すなわち、吸音材は、樹脂層の表面に、金属蒸着層を更に備えてよい。金属蒸着層は、アルミニウム、銅、亜鉛、亜鉛合金、銀等の金属を真空蒸着等の物理蒸着又は化学蒸着により形成できる。金属蒸着層は樹脂層の両面に設けられていてもよく、一方の面に設けられていてもよい。
【0044】
樹脂層は、低周波数領域の吸音効果の向上及び吸音周波数ピークの調整の観点から、有孔フィルムであってもよい。有孔フィルムは格子状や菱形状に配列した孔を有してよい。当該孔は、低周波数領域における吸音特性に優れる観点から、直径が0.1~50.0mmの円形状であってよく、0.2~10.0mmの円形状であってよく、0.3~5.0mmの円形状であってよい。孔の形状は、円形、楕円形、長方形、多角形等であってよい。
【0045】
(接着剤層)
吸音材は、上記の各層間に更に接着剤層を備えていてもよい。吸音材は、例えば樹脂層及び第一不織布層間、第一不織布層及び第二不織布層間、或いは第一不織布層及び第三不織布層間並びに第三不織布層及び第二不織布層間の少なくともいずれかに接着剤層を備えていてもよい。
【0046】
接着剤層としては、酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、イソブテン・無水マレイン酸共重合樹脂、アクリル共重合樹脂、アクリルモノマー、アクリルオリゴマー、スチレン・ブタジエンゴム、塩化ビニル樹脂、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタン樹脂、シリル化ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、アイオノマー樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、水ガラス、シリケート等の接着成分を含む層、あるいは紙、布、樹脂フィルム、金属テープ等から構成される支持体の両面にこれらの接着成分を含む層を備える積層物(例えば両面テープ)などが挙げられる。各接着剤層は、同じ素材から構成されていてもよく、異なる素材から構成されていてもよい。
【0047】
接着剤としては、耐熱性と吸音性能の観点から、上記接着成分(例えばウレタン樹脂)を含むホットメルト接着剤を用いることができる。
【0048】
接着剤層の厚さは特に限定されないが、0.01~500μmとすることができ、1~250μmであってもよい。各接着剤層は、同じ厚さを有していてもよく、異なる厚さを有していてもよい。
【0049】
接着剤層の面重量は特に限定されないが、1~500g/m2とすることができ、5~200g/m2であってもよく、10~150g/m2であってもよい。各接着剤層は、同じ面重量を有していてもよく、異なる面重量を有していてもよい。
【0050】
<吸音材の製造方法>
吸音材は、各層を積層することにより製造することができる。吸音材は、上記のとおり接着剤層を備えることにより各層が接着された状態で用いられてもよいが、各層が接着されずに用いられてもよい。また、一部の層間のみに接着剤層が設けられてもよい。吸音材を構成する積層体は、筐体に収納された状態で用いられてもよい。
【0051】
<吸音材の用途>
上記吸音材は低周波数領域における吸音特性に優れるだけでなく、耐久性にも優れる。そのため、上記吸音材は、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、住宅等の建築物などの用途において好適に用いることができる。ここでいう低周波数領域とは、周波数が2000Hz以下の領域とすることができ、上記吸音材は、500~2000Hzの周波数領域においても優れた吸音特性を有する。
【0052】
<車両部材>
車両部材は上記の吸音材を備える。車両部材としては、例えば以下の態様が挙げられる。車両部材は自動車部材であってよい。吸音材は、吸音性能の調整や構造上の制約の観点から、音の入射側と反対側に空隙(背後空気層)を設けたうえで車両部材に取り付けられてもよい。
外装:車両用外装材の吸音部材である車両部材、車両用外装材。
外装としては、(車両用)アンダーカバー又はアンダープロテクター、防音カバー等が挙げられ、具体的にはエンジンアンダーカバー、フロアアンダーカバー、リアアンダーカバー、ミッションカバー、フェンダライナ/プロテクタ又はマッドガード等が挙げられる。
内装:車両用内装材の吸音部材である車両部材、車両用内装材。
内装としては、車両用サイレンサー、車両用防音体等が挙げられ、具体的には天井材(ルーフサイレンサー)、ダッシュサイレンサー、フロアサイレンサー、フロアカーペット、フードサイレンサー等が挙げられる。
その他:タイヤ用吸音材。
タイヤ用吸音材としては、車両用カバー、ケース等と上記の吸音材を組み合わせた吸音構造体が挙げられる。
【実施例0053】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
(不織布の準備)
第一不織布層及び第二不織布層として、表1及び表2に示す不織布A及びBを準備した。各例における不織布A及びBの詳細は以下のとおりである。
・実施例1~3の混繊不織布:アクリロニトリル(AN)繊維及びポリエチレンテレフタレート(PET)繊維混合不織布。
・実施例4~6の不織布:PET繊維不織布。
・比較例1の混繊不織布(3M社製、商品名:シンサレート):PET繊維及びポリプロピレン(PP)繊維混合不織布。
・比較例2の混繊不織布(前田工繊株式会社製、商品名:P-160):アクリル繊維及びPET繊維混合不織布。
・比較例3の混繊不織布(倉敷繊維加工株式会社製、商品名:SA260PP):PET繊維及びPP繊維混合不織布。
・比較例4の不織布(倉敷繊維加工株式会社製、商品名:TFL300):PET繊維不織布。
【0055】
不織布を構成する繊維の繊維径、繊維の含有量、及び繊維の平均繊維径は、以下の測定により決定した。
電子顕微鏡にて1000倍で撮影した不織布の10枚の写真から、任意に100本の繊維を選択し、個々の繊維の繊維径を直径0.1μmオーダーまで計測した。そして、計測値に基づき、0.1~10μmφ、10μmφ超~20μmφ未満、20μmφ以上の3種の繊維径領域における繊維本数をカウントした。選択された繊維100本中の各繊維径領域の繊維本数の割合を算出し、各繊維径領域の繊維の含有量(%)とした。また、上記計測値に基づき、選択された繊維100本の繊維径の平均値を算出し(小数点以下第2位を四捨五入)、平均繊維径とした。
【0056】
(樹脂層の準備)
樹脂層として以下の樹脂フィルムを準備した。
・ポリウレタン(PU)エラストマフィルム:厚さ100μm、面重量120g/m2、密度1.20g/cm3(大倉工業株式会社製、製品名:シルクロン ES85)
・ポリエステル(PET)エラストマフィルム:厚さ100μm、面重量112g/m2、密度1.12g/cm3(東レ・セラニーズ株式会社製、製品名:ハイトレル 4047N)
【0057】
(中間層の準備)
中間層として以下の不織布(第三不織布)を準備した。
・PET繊維不織布:厚さ150μm、通気抵抗0.6kPa・s/m、目付40g/m2(旭化成株式会社製、製品名:プレシゼ CC5040)
【0058】
(接着剤の準備)
接着剤層形成のため以下の接着剤を準備した。
・ポリウレタン湿気硬化型ホットメルト接着剤(株式会社レゾナック製、ハイボン YR346-1)
【0059】
(吸音材の作製)
表1及び表2に示す構成を有する吸音材を作製した。各層の接着には接着剤(接着層の面重量:60g/m2)を用いた。
【0060】
(吸音材の吸音特性評価)
作製した各吸音材の垂直入射吸音率を、以下に従って測定した。樹脂層側から音を入射した。500~2000Hz及び2000~6300Hzにおける垂直入射吸音率の平均値を平均吸音率として算出した。結果を表1及び表2に示す。
装置名:アコースティックダクト 垂直入射音響計測システム(リオン株式会社製)
測定方法:垂直入射吸音率(JIS A 1405-1に準拠)
測定範囲:50~6500Hz
【0061】
(吸音材の強度測定)
作製した各吸音材の引張強度及び曲げ強度を以下のとおり測定した。結果を表1及び表2に示す。
引張強度:作製した吸音材をダンベル状1号型の大きさに打ち抜き、試験片とした。精密万能試験機(株式会社島津製作所製、製品名:オートグラフ AG-1kNX)を用い、チャック間距離90mm、引張速度200mm/minの条件で測定を行った。3回の測定値の平均値を、試験片の引張強度とした。
曲げ強度:作製した吸音材を50mm×150mmに加工し、試験片とした。精密万能試験機(株式会社島津製作所製、製品名:オートグラフ AG-1kNX)を用い、3点曲げ治具の支点間距離100mm、圧縮速度20mm/minで変位が20mmになるまで圧縮し、最大荷重を測定した。3回の測定値の平均値を、試験片の曲げ強度とした。
【0062】
【0063】