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特開2024-141646化合物、組成物、硬化物、光学異方体、反射膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141646
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】化合物、組成物、硬化物、光学異方体、反射膜
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/757 20060101AFI20241003BHJP
   C07C 255/41 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 235/38 20060101ALI20241003BHJP
   C07D 207/12 20060101ALI20241003BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C07C69/757 C
C07C255/41 CSP
C07C235/38
C07D207/12
C08F220/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053411
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】山本 愛子
(72)【発明者】
【氏名】福田 優衣
(72)【発明者】
【氏名】後藤 亮司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 央
【テーマコード(参考)】
4H006
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB92
4J100AL66P
4J100AL66Q
4J100BA02P
4J100BA02Q
4J100BA15P
4J100BA15Q
4J100BA40Q
4J100BC04Q
4J100BC43P
4J100BC43Q
4J100BC49Q
4J100CA04
4J100CA23
4J100JA32
(57)【要約】
【課題】 初期HTPが高く、且つ、露光処理を施された際の異性化感度が高い化合物を提供する。また、組成物、硬化物、光学異方体、及び反射膜を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物。
式(1)中、Xは、式(A-1)~式(A-4)からなる群から選ばれる式で表される2価の構造部位を表す。Rは、式(B-1)で表される1価の置換基を表す。Rは、式(B-2)で表される1価の置換基を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。
【化1】
式(1)中、Xは、式(A-1)~式(A-4)からなる群から選ばれる式で表される2価の構造部位を表す。Rは、式(B-1)で表される1価の置換基を表す。Rは、式(B-2)で表される1価の置換基を表す。
【化2】
式(A-1)中、Qは、2価の連結基を表す。*は、結合位置を表す。
式(A-2)中、*は、結合位置を表す。
式(A-3)中、pは、1~10の整数を表す。*は、結合位置を表す。
式(A-4)中、RC41及びRC42は、各々独立に、炭素数1~6のアルキル基を表す。*は、結合位置を表す。
【化3】
式(B-1)中、L11は、単結合又は2価の連結基を表す。R11は、*S1-CR1X=CH-A1X-(R12で表される1価の基、又は、*S2-A1Y-CH=CR2X-R13で表される1価の基を表す。*S1及び*S2は、結合位置を表す。R1X及びR2Xは、水素原子又はシアノ基を表す。A1Xは、l+1価の芳香環基を表す。R12は、1価の置換基を表す。lは、0以上の整数を表す。A1Yは、2価の芳香環基を表す。R13は、水素原子又は1価の置換基を表す。*は、Xとの結合位置を表す。
なお、lが2以上の整数の場合、複数存在するR12同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【化4】
式(B-2)中、L21及びL22は、各々独立に、単結合、又は、少なくとも1つの-CH-が-CO-、-O-、-S-、若しくは-NR-で置換されていてもよい、炭素数1~6のアルキレン基を表す。Rは、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。A2Xは、2価の芳香環基又は2価の脂環基を表す。A2Yは、n+1価の芳香環基又はn+1価の脂環基を表す。R23は、1価の置換基を表す。m及びnは、各々独立に、0以上の整数を表す。
なお、mが2以上の整数の場合、複数存在するL21同士、及び、複数存在するA2X同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、nが2以上の整数の場合、複数存在するR23同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【請求項2】
前記Rが、式(B-1A)で表される1価の置換基を表す、請求項1に記載の化合物。
【化5】
式(B-1A)中、R11は、*S1-CR1X=CH-A1X-(R12で表される1価の基、又は、*S2-A1Y-CH=CR2X-R13で表される1価の基を表す。*S1及び*S2は、結合位置を表す。R1X及びR2Xは、水素原子又はシアノ基を表す。A1Xは、l+1価の芳香環基を表す。R12は、1価の置換基を表す。lは、0以上の整数を表す。A1Yは、2価の芳香環基を表す。R13は、水素原子又は1価の置換基を表す。L31及びL32は、各々独立に、単結合又は2価の連結基を表す。L3Xは、*S3-CR3X=CH-A3X-*S4で表される連結基を表す。R3Xは、水素原子又はシアノ基を表す。A3Xは2価の芳香環基を表す。*S3及び*S4は、結合位置を表す。vは、0以上の整数を表す。*は、Xとの結合位置を表す。
なお、lが2以上の整数の場合、複数存在するR12同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。vが2以上の整数の場合、複数存在するL31同士、及び、複数存在するL3X同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【請求項3】
前記式(B-1A)中の前記vが、1以上の整数を表し、前記式(B-2)中の前記mが、1以上の整数を表す、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記式(B-1A)中の前記R11において、前記R1X及び前記R2Xが、シアノ基を表す、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
前記式(B-1A)中、前記vが、1以上の整数を表し、前記L3X中における前記R3Xが、水素原子を表す、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
波長365nmにおけるモル吸光係数が、3,000L・mol-1・cm-1以上である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項7】
前記式(1)中、Xが、式(A-1)又は式(A-2)で表される2価の構造部位を表す、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の化合物を含む、組成物。
【請求項9】
更に、液晶性化合物を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記液晶性化合物が、2つの重合性基を有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項9に記載の組成物を硬化してなる、硬化物。
【請求項12】
請求項9に記載の組成物を硬化してなる、光学異方体。
【請求項13】
請求項9に記載の組成物を硬化してなる、反射膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、組成物、硬化物、光学異方体、及び反射膜に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶性を示す化合物(以後、「液晶性化合物」ともいう。)は、種々の用途に適用できる。例えば、液晶性化合物は、位相差膜に代表される光学異方体の製造、及び、コレステリック液晶相を固定してなる反射膜の製造等に適用される。
一般的に、コレステリック液晶相は、ネマチック液晶にキラル化合物を添加することにより形成される。キラル剤の一例としては、比較的大きい螺旋捻じり力(HTP:Helical twisting power)を有するキラル化合物として知られるビナフチル誘導体が挙げられる。
【0003】
ところで、近年、露光によってHTPの強度を変化させるキラル化合物の検討がなされている。例えば、特許文献1では、露光によるHTPの変化率に優れるビナフチル誘導体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/181433号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載されたビナフチル誘導体について検討したところ、露光処理を施される前のHTP(露光処理により異性化される前のHTP。以下「初期HTP」ともいう。)、及び、露光処理を施された際の異性化感度(具体的には、波長365nmの光を照射された際において、露光量10mJ/cm時点での異性化到達率(%))の双方について、更に改善の余地があることを明らかとした。つまり、初期HTPを高め、且つ、露光処理を施された際の異性化感度を高める改善の余地があることを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、初期HTPが高く、且つ、露光処理を施された際の異性化感度が高い化合物を提供することを課題とする。
また、本発明は、組成物、硬化物、光学異方体、及び反射膜を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
〔1〕 後述する式(1)で表される化合物。
〔2〕 上記Rが、後述する式(B-1A)で表される1価の置換基を表す、〔1〕に記載の化合物。
〔3〕 上記式(B-1A)中の上記vが、1以上の整数を表し、上記式(B-2)中の上記mが、1以上の整数を表す、〔2〕に記載の化合物。
〔4〕 上記式(B-1A)中の上記R11において、上記R1X及び上記R2Xが、シアノ基を表す、〔2〕に記載の化合物。
〔5〕 上記式(B-1A)中、上記vが、1以上の整数を表し、上記L3X中における上記R3Xが、水素原子を表す、〔2〕に記載の化合物。
〔6〕 波長365nmにおけるモル吸光係数が、3,000L・mol-1・cm-1以上である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の化合物。
〔7〕 上記式(1)中、Xが、式(A-1)又は式(A-2)で表される2価の構造部位を表す、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の化合物。
〔8〕 〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の化合物を含む、組成物。
〔9〕 更に、液晶性化合物を含む、〔8〕に記載の組成物。
〔10〕 上記液晶性化合物が、2つの重合性基を有する、〔9〕に記載の組成物。
〔11〕 〔9〕又は〔10〕に記載の組成物を硬化してなる、硬化物。
〔12〕 〔9〕又は〔10〕に記載の組成物を硬化してなる、光学異方体。
〔13〕 〔9〕又は〔10〕に記載の組成物を硬化してなる、反射膜。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、初期HTPが高く、且つ、露光処理を施された際の異性化感度が高い化合物を提供できる。
また、本発明によれば、組成物、硬化物、光学異方体、及び反射膜を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に制限されるものではない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート及びメタクリレートのいずれか一方又は双方」の意味で使用される。
本明細書において、固形分とは、組成物層を形成する成分を意図し、溶媒は含まれない。なお、組成物層を形成する成分は、組成物層を形成する成分であれば、その性状が液体状であっても、固形分とみなす。
【0011】
本明細書において表記される2価の基の結合方向は、特に断らない限り制限されない。例えば、「X-Y-Z」なる式で表される化合物中の、Yが-COO-である場合、Yは、-CO-O-であってもよく、-O-CO-であってもよい。また、上記化合物は「X-CO-O-Z」であってもよく「X-O-CO-Z」であってもよい。
【0012】
[式(1)で表される化合物]
式(1)で表される化合物(以下、「特定化合物」ともいう。)の特徴点としては、Xで表される2価の構造部位(以下「キラル母核」ともいう。)に対して、光異性化部位(R11中の-CR1X=CH-A1X-又は-A1Y-CH=CR2X-で表される部位が該当する。)を有する式(B-1)で表される1価の置換基と、上記光異性化部位を有さない後述する式(B-2)で表される1価の置換基とが、各々結合している点が挙げられる。
【0013】
上記特定化合物は、初期HTPが高く、且つ、露光処理を施された際の異性化感度が高い。作用機序については必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
【0014】
本発明者らは、特許文献1に開示されるキラル化合物(後段の実施例欄に示す比較化合物RE-2が該当する。)の如く、キラル母核に光異性化部位を含む置換基が2つ以上結合した化合物は、露光処理を施されると、上記置換基中の各光異性化部位毎に一つずつ順番に異性化(例えば、トランス体からシス体への異性化)反応が進行するため、光異性化部位を異性化させて所望のHTPを発現させるまでに多くの照射量が必要になる(つまり、異性化感度が低い)と推測している。これに対して、特定化合物は、キラル母核に光異性化部位を含む置換基が1つのみ結合する構造に起因して、光異性化部位の異性化の進行性が速く、所望のHTPに到達するまでの照射量が少ない(つまり、特定化合物は優れた異性化感度を示す)と考えている。
また、特定化合物が有する後述する式(B-1)で表される1価の置換基と後述する式(B-2)で表される1価の置換基は、各々環構造を有する(なお、式(B-1)中のA1X及びA1Y並びに式(B-2)中のA2X及びA2Yが環構造に該当する)。このため、特定化合物は、液晶性化合物との相溶性に優れており、この結果として、液晶化合物の配向規制力に優れて高いHTPを発揮し得ると考えている。
【0015】
以下、特定化合物の初期HTPがより高いこと、及び/又は、特定化合物が露光処理を施された際において異性化感度がより高いことを「本発明の効果がより優れる」ともいう。
【0016】
以下、特定化合物(式(1)で表される化合物)について詳述する。
【0017】
〔式(1)で表される化合物〕
【化1】
【0018】
式(1)中、Xは、式(A-1)~式(A-4)からなる群から選ばれる式で表される2価の構造部位(キラル母核)を表す。
【0019】
【化2】
【0020】
式(A-1)~式(A-4)中、*は、結合位置を表す。
*のうちの一方は、Rとの結合位置であり、他方は、Rとの結合位置である。
【0021】
なお、式(A-1)において、*で表される結合位置のうちの一方は、キラル母核を構成するビナフチル構造における一方のナフタレン構造部位の環員炭素のいずれかに置換し、*で表される結合位置のうちの他方は、キラル母核を構成するビナフチル構造における他方のナフタレン構造部位の環員炭素のいずれかに置換している。
式(A-1)で表される2価の構造部位としては、なかでも、下記式(A-1a)で表される2価の構造部位が好ましい。
【0022】
【化3】
【0023】
式中、R、R、及びRのいずれか1つは、上述の*で表される結合位置を表し、他の2つは、水素原子を表す。R、R、及びRのいずれか1つが、上述の*で表される結合位置を表し、それ以外は、水素原子を表す。
式(A-1a)中、R及びR、R及びR、及び、R及びRのいずれかの組み合わせが上述の*で表される結合位置を表し、それ以外が水素原子を表すのが好ましい。
【0024】
また、式(A-2)において、*で表される結合位置のうちの一方は、キラル母核を構成するビナフチル構造における一方のナフタレン構造部位の環員炭素のいずれかに置換し、*で表される結合位置のうちの他方は、キラル母核を構成するビナフチル構造における他方のナフタレン構造部位の環員炭素のいずれかに置換している。
式(A-2)で表される2価の構造部位としては、なかでも、下記式(A-2a)で表される2価の構造部位が好ましい。
【0025】
【化4】
【0026】
式中、R、R、R、及びRのいずれか1つは、上述の*で表される結合位置を表し、それ以外は、水素原子を表す。R、R、R、及びRのいずれか1つが、上述の*で表される結合位置を表し、それ以外は、水素原子を表す。
式(A-2a)中、R及びR、R及びR、R及びR、及び、R及びRのいずれかの組み合わせが上述の*で表される結合位置を表し、それ以外は水素原子を表すのが好ましく、なかでも、R及びRが上述の*で表される結合位置を表し、それ以外は水素原子を表すのがより好ましい。
【0027】
式(A-1)中、Qは、2価の連結基を表す。
で表される2価の連結基としては特に制限されないが、例えば、-O-、-CO-、-NR-、-S-、-SO-、2価の脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。)、2価の芳香環基、及びこれらを2種以上組み合わせた基が挙げられる。
は、水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。)が好ましい。
2価の脂肪族炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基、及びアルキニレン基が挙げられ、アルキレン基が好ましい。
また、2価の脂肪族炭化水素基の炭素数としては、1~20が好ましく、1~10がより好ましい。
なお、上述の2価の脂肪族炭化水素基中の水素原子は、炭素数2~6のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、及びハロゲン原子等の他の置換基で置換されていてもよい。
【0028】
2価の芳香環基としては、2価の芳香族炭化水素環基及び2価の芳香族複素環基のいずれであってもよい。
また、2価の芳香環基は、単環及び多環のいずれであってもよい。
2価の芳香環基としては、炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素環基が好ましく、炭素数6~10の2価の芳香族炭化水素環基がより好ましく、フェニレン基が更に好ましい。
なお、上述の2価の芳香環基中の水素原子は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、及びハロゲン原子等の他の置換基で置換されていてもよい。
【0029】
で表される2価の連結基としては、なかでも、少なくとも1つの-CH-が-O-、-CO-、又は-NRX2-で置換されていてもよいアルキレン基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。)、及び、フェニレン基からなる群から選ばれる基又はこれらを2種以上組み合わせてなる2価の連結基であるのが好ましく、-O-LQ1-O-又は-OCO-LQ2-COO-がより好ましい。LQ1は、炭素数1~10のアルキレン基を表す。LQ2は、炭素数1~8のアルキレン基又はフェニレン基を表す。
で表される2価の連結基の具体例としては、例えば、-O-CH-O-及び-OCO-Ph-COO-等(Phは、フェニレン基を表す。)が挙げられる。
【0030】
式(A-3)中、pは、1~10の整数を表す。
pとしては、なかでも、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。
【0031】
式(A-4)中、RC41及びRC42は、各々独立に、炭素数1~6のアルキル基を表す。
C41及びRC42としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基を表すのがより好ましい。
【0032】
式(1)中、Xとしては、本発明の効果がより優れる点で、式(A-1)又は式(A-2)で表される2価の構造部位が好ましい。
【0033】
式(1)中、Rは、式(B-1)で表される1価の置換基を表す。
【化5】
【0034】
式(B-1)中、L11は、単結合又は2価の連結基を表す。
11で表される2価の連結基としては特に制限されないが、例えば、-O-、-CO-、-NR-、-S-、-SO-、2価の脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。)、2価の芳香環基、2価の脂肪族複素環基、及びこれらを2種以上組み合わせた基が挙げられる。
は、水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。)が好ましい。
【0035】
上記2価の脂肪族炭化水素基の炭素数としては、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。2価の脂肪族炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基、及びアルキニレン基が挙げられる。
なお、上述の2価の脂肪族炭化水素基中の水素原子は、炭素数2~6のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、及びハロゲン原子等の他の置換基で置換されていてもよい。
【0036】
上記2価の芳香環基としては、2価の芳香族炭化水素環基及び2価の芳香族複素環基のいずれであってもよい。
また、2価の芳香環基は、単環及び多環のいずれであってもよい。
上記2価の芳香族炭化水素環基を構成する芳香族炭化水素環の炭素数としては、6~10が好ましい。芳香族炭化水素環の具体例としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられ、ベンゼン環がより好ましい。
上記2価の芳香族複素環基を構成する芳香族複素環の環員数としては、5~10が好ましく、5又は6がより好ましい。芳香族複素環が含むヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子が挙げられる。芳香族複素環の具体例としては、例えば、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、チオフェン環、チアゾール環、及びイミダゾール環等が挙げられる。
【0037】
上記2価の脂肪族複素環基は、単環及び多環のいずれであってもよい。
2価の脂肪族複素環基を構成する脂肪族複素環の環員数としては、5~10が好ましく、5又は6がより好ましい。脂肪族複素環が含むヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子が挙げられる。脂肪族複素環の具体例としては、例えば、オキソラン環、オキサン環、ピぺリジン環、及びピペラジン環が挙げられる。
【0038】
なお、上述の2価の芳香環基及び2価の脂肪族複素環基中の水素原子は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、及びハロゲン原子等の他の置換基で置換されていてもよい。
【0039】
11で表される2価の連結基としては、本発明の効果がより優れる点で、-CR=CH-A3X-で表される基を1つ以上含む2価の連結基が好ましい。
は、水素原子、シアノ基、炭素数1~3のアルキル基、又はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等)を表し、水素原子又はシアノ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0040】
3Xは2価の芳香環基を表す。
3Xで表される2価の芳香環基としては、2価の芳香族炭化水素環基及び2価の芳香族複素環基のいずれであってもよい。
また、A3Xで表される2価の芳香環基は、単環及び多環のいずれであってもよい。
2価の芳香族炭化水素環基を構成する芳香族炭化水素環の炭素数としては、6~10が好ましい。芳香族炭化水素環の具体例としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられ、ベンゼン環がより好ましい。
2価の芳香族複素環基を構成する芳香族複素環の環員数としては、5~10が好ましく、5又は6がより好ましい。芳香族複素環が含むヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子が挙げられる。芳香族複素環の具体例としては、例えば、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、チオフェン環、チアゾール環、及びイミダゾール環等が挙げられる。
【0041】
3Xで表される2価の芳香環基は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、及びハロゲン原子等の他の置換基を有していてもよい。
なお、-CR=CH-A3X-で表される基において、R及びA3Xは、二重結合部位を軸として、互いに同じ側に置換していてもよい(シス型となっていてもよい)し、互いに反対側に置換していてもよい(トランス型となっていてもよい)。
【0042】
式(B-1)中、R11は、*S1-CR1X=CH-A1X-(R12で表される1価の基、又は、*S2-A1Y-CH=CR2X-R13で表される基を表す。
11としては、本発明の効果がより優れる点で、*S1-CR1X=CH-A1X-(R12で表される基を表すのが好ましい。
なお、*S1-CR1X=CH-A1X-(R12で表される1価の基において、R1X及びA1Xは、二重結合部位を軸として、互いに同じ側に置換していてもよい(シス型となっていてもよい)し、互いに反対側に置換していてもよい(トランス型となっていてもよい)。
また、*S2-A1Y-CH=CR2X-R13で表される1価の基において、R2X及びA1Yは、二重結合部位を軸として、互いに同じ側に置換していてもよい(シス型となっていてもよい)し、互いに反対側に置換していてもよい(トランス型となっていてもよい)。
【0043】
式(B-1)中、*S1及び*S2は、結合位置を表す。
1X及びR2Xは、水素原子又はシアノ基を表し、シアノ基が好ましい。
【0044】
式(B-1)中、A1Xは、l+1価の芳香環基を表す。
1Xで表されるl+1価の芳香環基としては、l+1価の芳香族炭化水素環基及びl+1価の芳香族複素環基のいずれであってもよい。
また、A1Xで表されるl+1価の芳香環基は、単環及び多環のいずれであってもよい。
l+1価の芳香族炭化水素環基を構成する芳香族炭化水素環としては、上述した式(B-1)中のA3Xで表される2価の芳香族炭化水素環基を構成する芳香族炭化水素環と同義であり、好適態様も同じである。
l+1価の芳香族複素環基を構成する芳香族複素環としては、上述した式(B-1)中のA3Xで表される2価の芳香族複素環基を構成する芳香族複素環と同義であり、好適態様も同じである。
1Xで表されるl+1価の芳香環基は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、及びハロゲン原子等の他の置換基を有していてもよい。
【0045】
式(B-1)中、R12は、1価の置換基を表す。
12で表される1価の置換基としては特に制限されないが、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アラルキルオキシ基、及び式(PA)で表される基等が挙げられる。
【0046】
上記R12で表されるアルキル基及びアルキルカルボニルオキシ基中のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。また、炭素数としては、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。
上記R12で表されるアルコキシ基及びアルコキシカルボニル基中のアルコキシ基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。また、炭素数としては、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。
上記R12で表されるアリール基、並びに、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、及びアラルキルオキシ基中のアリール基としては、例えば、炭素数6~18のアリール基(例えば、フェニル基)が挙げられる。
上記R12で表されるアラルキルオキシ基中のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。また、炭素数としては、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。
【0047】
上記アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、及びアラルキルオキシ基は、更に置換基を有していてもよい。
置換基としては特に制限されないが、例えば、炭素数1~10のアルコキシ基及びフェノキシ基等が挙げられる。
【0048】
(式(PA)で表される基)
*-L-P (PA)
式(PA)中、Lは、単結合又は2価の連結基を表す。Pは、重合性基を表す。
【0049】
上記Lで表される2価の連結基としては特に制限されず、例えば、少なくとも1つ以上の-CH-が-CO-、-O-、-S-、又は-NR-で置換されていてもよい、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。
は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、水素原子が好ましい。
なお、Lで表される上記アルキレン基において、少なくとも1つの-CH-が-CO-、-O-、-S-、又は-NR-で置換された構造を有する場合、アルキル基の炭素数とは、以下に示す方法により数えられる炭素数を意図している。
で表される上記アルキレン基において、-CH-が-CO-、-O-、-S-、又は-NR-で置換された構造を有する場合、上記アルキレン基の炭素数は、-CH-に代えて導入された-CO-、-O-、-S-、又は-NR-を-CH-とみなして数えられる炭素数を意図している。つまり、Lが、例えば、-CO-O-C-表される基である場合、この基の炭素数は4である。また、Lが、例えば、-CO-N(CH)-C-表される基である場合、この基の炭素数は4である。
で表される2価の連結基としては、少なくとも1つ以上の-CH-が-O-で置換された、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。
【0050】
上記Pで表される重合性基としては、公知の重合性基が挙げられ、反応性の点から、付加重合反応が可能な官能基が好ましく、重合性エチレン性不飽和基又は環重合性基がより好ましい。重合性基の好適な具体例としては、以下の式(P-1)~(P-21)で表される基が挙げられる。なお、式(P-1)~(P-21)中、*は、結合位置を表す。また、Raは、水素原子又はメチル基を表す。また、Meはメチル基、Etはエチル基を表す。
【0051】
【化6】
【0052】
式(PA)で表される基としては、*-O-(CH-P(kは、1~8の整数を表す)で表される基が好ましい。
【0053】
式(B-1)中、lは、0以上の整数を表す。
lとしては、0~5が好ましく、0~3がより好ましい。
lが2以上の整数の場合、複数存在するR12同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0054】
式(B-1)中、A1Yは、2価の芳香環基を表す。
1Yで表される2価の芳香環基としては、上述した式(B-1)中のA3Xで表される2価の芳香環基と同義であり、好適態様も同じである。
【0055】
式(B-1)中、R13は、水素原子又は1価の置換基を表す。
13で表される1価の置換基としては、上述した式(B-1)中のR12で表される1価の置換基と同義であり、好適態様も同じである。
【0056】
式(B-1)中、*は、Xとの結合位置を表す。
【0057】
式(B-1)で表される1価の置換基としては、なかでも、式(B-1A)で表される1価の置換基が好ましい。
【0058】
【化7】
【0059】
式(B-1A)中、L31及びL32は、各々独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
31及びL32で表される2価の連結基としては、上述の式(B-1)中のL11で表される2価の連結基と同様のものが挙げられる。
【0060】
31及びL32としては、なかでも、少なくとも1つの-CH-が-CO-、-O-、-S-、若しくは-NR-で置換されていてもよい、炭素数1~10のアルキレン基を表す。
は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、水素原子が好ましい。
なお、L31及びL32で表される上記アルキレン基において、少なくとも1つの-CH-が-CO-、-O-、-S-、又は-NR-で置換された構造を有する場合、アルキル基の炭素数とは、以下に示す方法により数えられる炭素数を意図している。
31及びL32で表される上記アルキレン基において、-CH-が-CO-、-O-、-S-、又は-NR-で置換された構造を有する場合、上記アルキレン基の炭素数は、-CH-に代えて導入された-CO-、-O-、-S-、又は-NR-を-CH-とみなして数えられる炭素数を意図している。つまり、L31が、例えば、-CO-O-C-表される基である場合、この基の炭素数は4である。また、L31が、例えば、-CO-N(CH)-C-表される基である場合、この基の炭素数は4である。
31及びL32としては、なかでも、少なくとも1つの-CH-が-CO-、-O-、-S-、若しくは-NR-で置換されていてもよい、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、-CO-、-COO-、又は-CONR-がより好ましい。
【0061】
式(B-1A)中、L3Xは、*S3-CR3X=CH-A3X-*S4で表される連結基を表す。
3Xは、水素原子又はシアノ基を表し、水素原子が好ましい。
なお、*S3-CR3X=CH-A3X-*S4で表される1価の基において、R3X及びA3Xは、二重結合部位を軸として、互いに同じ側に置換していてもよい(シス型となっていてもよい)し、互いに反対側に置換していてもよい(トランス型となっていてもよい)。
【0062】
3Xは2価の芳香環基を表す。
3Xは2価の芳香環基としては、上述した式(B-1)中のA3Xで表される2価の芳香環基と同義であり、好適態様も同じである。
【0063】
S3及び*S4は、結合位置を表す。
なお、L3Xは、*S3側及び*S4のいずれの位置でL32と結合してもよいが、*S4側がL32と結合するのが好ましい。
【0064】
式(B-1A)中、vは、0以上の整数を表し、1以上の整数が好ましい。
vの上限値としては特に制限されず、4以下が好ましい。
vとしては、1~4の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
【0065】
式(B-1A)中、*は、Xとの結合位置を表す。
【0066】
式(B-1A)中、R11は、式(B-1)中のR11と同義であり、好適態様も同じである。
【0067】
なお、式(B-1A)中、vが2以上の整数の場合、複数存在するL31同士、及び、複数存在するL3X同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0068】
式(1)中、Rは、式(B-2)で表される1価の置換基を表す。
【0069】
【化8】
【0070】
式(B-2)中、L21及びL22は、各々独立に、単結合、又は、少なくとも1つの-CH-が-CO-、-O-、-S-、若しくは-NR-で置換されていてもよい、炭素数1~6のアルキレン基を表す。
は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、水素原子が好ましい。
なお、L21及びL22で表される上記アルキレン基において、少なくとも1つの-CH-が-CO-、-O-、-S-、又は-NR-で置換された構造を有する場合、アルキル基の炭素数とは、以下に示す方法により数えられる炭素数を意図している。
21及びL22で表される上記アルキレン基において、-CH-が-CO-、-O-、-S-、又は-NR-で置換された構造を有する場合、上記アルキレン基の炭素数は、-CH-に代えて導入された-CO-、-O-、-S-、又は-NR-を-CH-とみなして数えられる炭素数を意図している。つまり、L21が、例えば、-CO-O-C-表される基である場合、この基の炭素数は4である。また、L21が、例えば、-CO-N(CH)-C-表される基である場合、この基の炭素数は4である。
21及びL22としては、なかでも、単結合、-CO-、-COO-、-CONR-、又は、-CH-が好ましい。
【0071】
2Xは、2価の芳香環基又は2価の脂環基を表す。
2Xで表される2価の芳香環基としては、式(B-1A)中のA3Xで表される2価の芳香環基と同義であり、好適態様も同じである。
【0072】
2Xで表される2価の脂環基としては、2価の脂肪族炭化水素環基及び2価の脂肪族複素環基のいずれであってもよい。
また、A2Xで表される2価の脂環基は、単環及び多環のいずれでもよい。
2価の脂肪族炭化水素環基を構成する脂肪族炭化水素環の環員数としては、5~12が好ましく、5~10がより好ましく、5又は6が更に好ましい。脂肪族炭化水素環の具体例としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、ノルボルネン環、及びアダマンタン環が挙げられる。なかでも、シクロペンタン環又はシクロヘキサン環が好ましい。
2価の脂肪族複素環基を構成する脂肪族複素環が含むヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子が挙げられる。脂肪族複素環の環員数は特に制限されないが、5~10が好ましい。脂肪族複素環の具体例としては、例えば、オキソラン環、オキサン環、ピぺリジン環、及びピペラジン環等が挙げられる。なお、脂肪族複素環としては、環を構成する-CH-が-CO-で置換されたものであってもよく、例えば、フタルイミド環等が挙げられる。
2Xで表される2価の脂環基は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、及びハロゲン原子等の他の置換基を有していてもよい。
【0073】
2Yは、n+1価の芳香環基又はn+1価の脂環基を表す。
2Yで表されるn+1価の芳香環基としては、n+1価の芳香族炭化水素環基及びn+1価の芳香族複素環基のいずれであってもよい。
また、A2Yで表されるn+1価の芳香環基は、単環及び多環のいずれであってもよい。
n+1価の芳香族炭化水素環基を構成する芳香族炭化水素環としては、上述した式(B-1)中のA3Xで表される2価の芳香族炭化水素環基を構成する芳香族炭化水素環と同義であり、好適態様も同じである。
n+1価の芳香族複素環基を構成する芳香族複素環としては、上述した式(B-1)中のA3Xで表される2価の芳香族複素環基を構成する芳香族複素環と同義であり、好適態様も同じである。
2Yで表される芳香環基は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、及びハロゲン原子等の他の置換基を有していてもよい。
【0074】
2Yで表されるn+1価の脂環基としては、n+1価の脂肪族炭化水素環基及びn+1価の脂肪族複素環基のいずれであってもよい。
また、A2Yで表される2価の脂環基は、単環及び多環のいずれでもよい。
n+1価の脂肪族炭化水素環基を構成する脂肪族炭化水素環としては、上述した式(B-2)中のA2Xで表される2価の脂肪族炭化水素環基を構成する脂肪族炭化水素環と同義であり、好適態様も同じである。
n+1価の脂肪族複素環基を構成する脂肪族複素環としては、上述した式(B-2)中のA2Xで表される2価の脂肪族複素環基を構成する脂肪族複素環と同義であり、好適態様も同じである。
2Yで表される脂環基は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、及びハロゲン原子等の他の置換基を有していてもよい。
【0075】
23は、1価の置換基を表す。
23で表される1価の置換基としては、上述した式(B-1)中のR12で表される1価の置換基と同様のものが挙げられ、好適態様も同じである。
【0076】
mは、0以上の整数を表し、本発明の効果が優れる点で、1以上の整数が好ましい。
mの上限値としては特に制限されず、4以下が好ましい。
mとしては、1~4の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
【0077】
nは、0以上の整数を表す。
nとしては、0~5の整数が好ましく、0~4の整数がより好ましく、0~3が更に好ましい。
【0078】
なお、mが2以上の整数の場合、複数存在するL21同士、及び、複数存在するA2X同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、nが2以上の整数の場合、複数存在するR23同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0079】
特定化合物の好適態様の一例としては、初期HTPがより優れる点で、Rが、式(B-1A)で表される1価の置換基を表し、式(B-1A)中のvが1以上の整数を表し、且つ、式(B-2)中のmが1以上の整数を表す態様が挙げられる。
【0080】
また、特定化合物の好適態様の他の一例としては、初期HTPがより優れる点で、Rが、式(B-1A)で表される1価の置換基を表し、且つ、式(B-1A)中のキラル母核に最も近い光異性化基がシアノ基を置換基として有さない態様が挙げられる。
上記態様の具体例としては、特定化合物において、Rが、式(B-1A)で表される1価の置換基を表し、且つ、式(B-1A)中のvが0を表し、R11で表される1価の基(*S1-CR1X=CH-A1X-(R12で表される1価の基、又は、*S2-A1Y-CH=CR2X-R13で表される1価の基)中のR1X及びR2Xが水素原子を表す態様、又は、特定化合物において、Rが、式(B-1A)で表される1価の置換基を表し、且つ、式(B-1A)中のvが1以上の整数を表し、L3Xで表される連結基(*S3-CR3X=CH-A3X-*S4)中のR3Xが水素原子を表す態様等が挙げられる。
【0081】
また、特定化合物の好適態様の他の一例としては、異性化感度がより優れる点で、Rが、式(B-1A)で表される1価の置換基を表し、且つ、式(B-1A)中のvが1以上の整数を表し、L3Xで表される連結基(*S3-CR3X=CH-A3X-*S4)中のR3Xが水素原子を表す態様が挙げられる。
【0082】
また、特定化合物の好適態様の他の一例としては、初期HTPがより優れる点で、Xが、式(A-1)又は式(A-2)で表される2価の構造部位を表す態様が挙げられる。
【0083】
また、特定化合物の好適態様の他の一例としては、光異性化基としてシアノシンナモイル基を有する態様が挙げられる。具体的には、特定化合物中、Rが、式(BA-1)で表される1価の置換基を表し、且つ、式(BA-1)におけるR11で表される1価の基(*S1-CR1X=CH-A1X-(R12で表される1価の基、又は、*S2-A1Y-CH=CR2X-R13で表される1価の基)中のR1X及びR2Xがシアノ基を表す態様が挙げられる。
【0084】
特定化合物が式(A-1)又は式(A-2)をキラル母核とする場合、特定化合物は、R体であってもS体であってもよく、R体とS体との混合物であってもよい。
特定化合物が式(A-3)をキラル母核とする場合、特定化合物の2つの不斉中心(ピロリジン環におけるR及びRとの結合位置の環員炭素原子)の立体配置としては、(S、R)、(S,S)、及び(R,R)のいずれであってもよい。
特定化合物が式(A-4)をキラル母核とする場合、特定化合物の2つの不斉中心(シクロヘキサン環における窒素原子との結合位置の環員炭素原子)の立体配置としては、(S、R)、(S,S)、及び(R,R)のいずれであってもよい。
【0085】
以下に、上記特定化合物の具体例を示すがこれに制限されるものではない。なお、以下の化合物において、式(A-1)又は式(A-2)をキラル母核とする構造については、S体及びR体のいずれの光学異方体であってもよい。
【0086】
【化9】
【0087】
【化10】
【0088】
特定化合物の分子量の下限値としては350以上が好ましく、600以上がより好ましい。なお、上限値としては、2500以下が好ましく、2000以下がより好ましい。
【0089】
特定化合物の波長365nmにおけるモル吸光係数は、例えば、1,000L・mol-1・cm-1以上が好ましく、2,000L・mol-1・cm-1以上がより好ましく、3,000L・mol-1・cm-1以上が更に好ましい。上限値としては、例えば、200,000L・mol-1・cm-1以下が好ましく、150,000L・mol-1・cm-1以下がより好ましく、100,000L・mol-1・cm-1以下が更に好ましい。
なお、特定化合物の波長365nmにおけるモル吸光係数は、特定化合物をテトラヒドロフラン(THF)中に溶解して測定する吸光係数である。
【0090】
特定化合物は、公知の手法により合成できる。
【0091】
〔用途〕
特定化合物は、いわゆるキラル剤として、種々の用途に適用できる。例えば、特定化合物と液晶性化合物とを混合して得られる液晶組成物を用いることにより、コレステリック液晶相を形成できる。
特に、特定化合物は、初期HTPが高いことから、少ない添加量で所望の反射波長を有するコレステリック液晶相を形成可能である。また、特定化合物は、異性化感度が高いことから、例えば、光学異方体及び反射膜等の作製の際においてロール製造性にも優れ、生産性の向上に寄与し得る。
【0092】
[組成物]
〔特定化合物〕
本発明の組成物は、特定化合物を含む。特定化合物は、上述したとおりである。
組成物中における特定化合物の含有量は特に制限されないが、組成物中の液晶性化合物の全質量に対して、1~20質量%が好ましく、2~15質量%がより好ましく、2~10質量%が更に好ましい。液晶性化合物については後段で説明する。
組成物は、特定化合物を1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。2種以上使用する場合は、その合計含有量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0093】
〔液晶性化合物〕
本発明の組成物が液晶組成物である場合、本発明の組成物は液晶性化合物を含む。
上記液晶性化合物は、特定化合物以外の化合物である、液晶性を示す化合物を意味する。
なお、化合物が液晶性を示すとは、温度を変化させたときに、結晶相(低温側)と等方相(高温側)の間に中間相を発現する性質を化合物が有することを意図する。具体的な観察方法としては、メトラートレド社製ホットステージシステムFP90等で化合物を加熱又は降温しながら、偏光顕微鏡下で観察することで、液晶相に由来する光学性異方性と流動性を確認できる。
【0094】
液晶性化合物としては、液晶性を有していれば特に制限されず、例えば、棒状ネマチック液晶性化合物等が挙げられる。
棒状ネマチック液晶性化合物としては、例えば、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類等が挙げられる。なお、低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も使用できる。
【0095】
液晶性化合物は、重合性であっても非重合性であってもよく、重合性であるのが好ましい。
液晶性化合物としては、コレステリック液晶相を固定できる点で、1つ以上の重合性基を有する液晶性化合物が好ましく、2つ以上の重合性基を有する液晶性化合物がより好ましく、2つの重合性基を有する液晶性化合物が更に好ましい。
【0096】
重合性基を有しない棒状液晶性化合物については、様々な文献(例えば、Y. Goto et.al., Mol. Cryst. Liq. Cryst. 1995, Vol. 260, pp.23-28)に記載がある。
一方、重合性棒状液晶性化合物は、重合性基を棒状液晶性化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基等が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基がより好ましい。重合性基は種々の方法で、棒状液晶性化合物の分子中に導入できる。重合性棒状液晶性化合物が有する重合性基の個数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、2が更に好ましい。2種類以上の重合性棒状液晶性化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性棒状液晶性化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0097】
液晶性化合物としては、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0098】
【化11】
【0099】
一般式(3)中、P11及びP12は、各々独立に、水素原子又は重合性基を表す。但し、P11及びP12の少なくとも一方が重合性基を表す。L11及びL12は、各々独立に、単結合又は2価の連結基を表す。A11~A15は、各々独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香環基を表す。Z11~Z14は、各々独立に、単結合又は2価の連結基を表す。m及びmは、各々独立に、0又は1の整数を表す。
【0100】
一般式(3)中、P11及びP12で表される重合性基としては特に制限されないが、例えば、上述した一般式(P-1)~(P-21)で表される重合性基が挙げられる。
11及びP12は、少なくともいずれか1つ以上が重合性基を表し、いずれも重合性基を表すことが好ましい。
【0101】
一般式(3)中、L11及びL12で表される2価の連結基としては特に制限されないが、例えば、各々独立に、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基における1つ以上の-CH-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH)-、及び-CO-からなる群から選択される1種以上の基で置換された2価の連結基が挙げられる。
11及びL12で表される2価の連結基としては、各々独立に、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基において1つ以上の-CH-が-O-で置換された基が好ましい。
なお、L11及びL12で表される2価の連結基が、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基における1つ以上の-CH-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH)-、及び-CO-からなる群から選択される1種以上の基で置換された2価の連結基である場合、アルキレン基の炭素数とは、以下に示す方法により数えられる炭素数を意図している。
11及びL12で表される上記アルキレン基において、-CH-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH)-、又は-CO-で置換された構造を有する場合、上記アルキレン基の炭素数は、-CH-に代えて導入された-O-、-S-、-NH-、-N(CH)-、及び-CO-を-CH-とみなして数えられる炭素数を意図している。つまり、Lが、例えば、-CO-O-C-表される基である場合、この基の炭素数は4である。また、Lが、例えば、-CO-N(CH)-C-表される基である場合、この基の炭素数は4である。
【0102】
一般式(3)中、A11~A15は、各々独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香環基を表す。
【0103】
11~A15で表される2価の芳香環基としては、上述の式(B-1A)中のA3Xで表される2価の芳香環基と同義である。
上記2価の芳香環基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基の数は1つでも、複数であってもよい。置換基は、1価の置換基が好ましい。
なかでも、一般式(3)で表される化合物の溶解性がより向上する点で、置換基が、フッ素原子、塩素原子、フルオロアルキル基、アルコキシ基、又はアルキル基が好ましく、フルオロアルキル基、アルコキシ基、又はアルキル基がより好ましい。
上記フルオロアルキル基及びアルキル基中の炭素数、並びに、アルコキシ基中のアルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましく、1が特に好ましい。
なお、フルオロアルキル基とは、アルキル基中の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された基であり、全ての水素原子がフッ素原子で置換されていることが好ましい(いわゆる、パーフルオロアルキル基が好ましい)。
【0104】
11~A15は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素環基が好ましく、1位と4位とで結合するフェニレン基がより好ましい。
【0105】
一般式(3)中、Z11~Z14で表される2価の連結基としては特に制限されないが、例えば、-O-、-S-、-CHO-、-CO-、-COO-、-CO-S-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-CHS-、-CFO-、-CFS-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-OCO-C(CN)=CH-、-COO-CHCH-、-OCO-CHCH-、-COO-CH-、-OCO-CH-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、又は-C≡C-を表す。Z11~Z14としては、なかでも、-COO-又は-CH=CH-が好ましい。
【0106】
一般式(3)中、m及びmは、各々独立に、0又は1の整数を表し、0が好ましい。
【0107】
一般式(3)で表される化合物は、公知の方法で合成できる。
以下に、液晶性化合物の具体例を示す。
【0108】
【化12】
【0109】
【化13】
【0110】
【化14】
【0111】
組成物中における液晶性化合物の含有量は特に制限されないが、組成物中の固形分の全質量に対して、5~99質量%が好ましく、25~98質量%がより好ましく、75~98質量%が更に好ましい。
組成物は、液晶性化合物を1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。2種以上使用する場合は、その合計含有量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0112】
〔重合開始剤〕
組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。
重合開始剤は、光重合開始剤及び熱重合開始剤等が挙げられ、なかでも、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン化合物、α-カルボニル化合物、アシロインエーテル、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物、多核キノン化合物、フェナジン化合物、及びオキサジアゾール化合物等が挙げられる。
組成物が重合開始剤を含む場合、組成物中での重合開始剤の含有量は特に制限されないが、液晶性化合物全質量に対して、0.1~20質量%が好ましく、1~8質量%がより好ましい。
組成物は、重合開始剤を1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。2種以上使用する場合は、その合計含有量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0113】
〔界面活性剤〕
組成物は、安定的または迅速な液晶相(例えば、ネマチック相、コレステリック相)の形成に寄与する界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤としては、例えば、含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、WO2011/162291号公報に記載の一般式(X1)~(X3)で表される化合物、特開2014-119605号公報の段落0082~0090に記載の一般式(I)で表される化合物、及び特開2013-047204号(特許第5774518号)の段落0020~0031に記載の化合物等が挙げられる。これらの化合物は、層の空気界面において、液晶性化合物の分子のチルト角を低減させる、又は、液晶性化合物を実質的に水平配向させることが可能である。
なお、本明細書で「水平配向」とは、液晶性化合物の分子軸(液晶性化合物が棒状液晶性化合物である場合、液晶性化合物の長軸に該当。)と膜面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、膜面とのなす傾斜角が20度未満の配向を意味するものとする。液晶性化合物が空気界面付近で水平配向する場合、配向欠陥が生じ難いため、可視光領域での透明性が高くなる。一方、液晶性化合物の分子が大きなチルト角で配向すると、例えば、コレステリック相とする場合は、その螺旋軸が膜面法線からずれるため、反射率が低下したり、フィンガープリントパターンが発生し、ヘイズの増大または回折性を示したりするため好ましくない。
界面活性剤として利用可能な含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマーとしては、特開2007-272185号公報の段落0018~0043に記載されるポリマーも挙げられる。
組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は特に制限されないが、液晶性化合物全質量に対して、0.001~10質量%が好ましく、0.05~3質量%がより好ましい。
組成物は、界面活性剤を1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。2種以上使用する場合は、その合計含有量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0114】
〔溶剤〕
組成物は溶剤を含んでいてもよい。溶剤は、組成物の各成分を溶解できるのが好ましい。例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、及びこれらの混合溶剤等が挙げられる。
組成物が溶剤を含む場合、組成物中の溶剤の含有量は、組成物の固形分濃度を5~50質量%とする量が好ましく、10~40質量%とする量がより好ましい。
組成物は、溶剤を1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。2種以上使用する場合は、その合計含有量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0115】
上記以外にも、組成物は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、安定剤、可塑剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、消泡剤、レべリング剤、増粘剤、難燃剤、分散剤、重合性モノマー、並びに、染料、及び顔料等の色材等の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0116】
[硬化物]
本発明は、上述したような組成物を硬化してなる硬化物も含む。
【0117】
〔硬化方法及び硬化物〕
上記組成物を硬化(重合硬化)する方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、所定の基板と組成物とを接触させて、基板上に組成物層を形成する工程Xと、組成物層に露光を行う工程Yと、組成物層に硬化処理を施す工程Zとを有する態様が挙げられる。
特に組成物が、液晶性化合物を含む液晶組成物である場合、本態様によれば、液晶性化合物を配向させた状態で固定化することができ、いわゆる光学異方体、又は、コレステリック液晶相を固定化してなる層を形成することができる。
以下、液晶性化合物を含む形態の本発明の組成物(液晶組成物)を用いた場合における、工程X~Zの手順について詳述する。
【0118】
工程Xは、基板と組成物とを接触させて、基板上に組成物層を形成する工程である。使用される基板の種類は特に制限されず、公知の基板(例えば、樹脂基板、ガラス基板、セラミック基板、半導体基板、及び金属基板)が挙げられる。
基板と組成物とを接触させる方法は特に制限されず、例えば、基板上に組成物を塗布する方法、及び、組成物中に基板を浸漬する方法が挙げられる。
なお、基板と組成物とを接触させた後、必要に応じて、基板上の組成物層から溶剤を除去するために、乾燥処理を実施してもよい。また、液晶性化合物の配向を促し液晶相の状態とするために、加熱処理を実施してもよい。
【0119】
工程Yは、組成物層に対して、i線等を用いた露光処理を行う工程である。
露光処理によって特定化合物は光異性化を生じ、HTPに変化が生じるのが好ましい。この露光処理において、露光量及び/又は露光波長等を適宜調整することで、HTPの変化の程度も調整できる。
露光後は、更に、液晶性化合物の配向を促し液晶相の状態とするために、加熱処理を実施してもよい。
ここで得られる液晶相の螺旋ピッチ(ひいては選択反射波長等)は、上述の露光処理において調整されたHTPが反映される。
【0120】
工程Zは、工程Yを経た組成物層(好ましくは、液晶相の状態である組成物層)に硬化処理を施す工程である。
硬化処理の方法は特に制限されず、例えば、光硬化処理及び熱硬化処理が挙げられる。なかでも、光硬化処理が好ましい。
硬化処理として光硬化処理を行う場合は、組成物は、光重合開始剤を含むのが好ましい。光硬化処理における照射される光の波長は、上述の露光処理に用いられた光の波長とは異なるのが好ましく、また、光重合開始剤は、露光処理に用いられた光の波長に感応性を示さないのが好ましい。
【0121】
上記処理により得られる硬化物は、液晶相を固定してなる層であるのが好ましい。特に、本発明の組成物を硬化してなる硬化物においては、典型的には、コレステリック液晶相を固定してなる層が形成される。
なお、これらの層は、もはや液晶性を示す必要はない。より具体的には、例えば、コレステリック液晶相を「固定化した」状態は、コレステリック液晶相となっている液晶性化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ、好ましい態様である。より具体的には、通常0~50℃、より過酷な条件下では-30~70℃の温度範囲において、層に流動性が無く、また、外場又は外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態であることが好ましい。
【0122】
〔光学異方体、反射膜〕
上記のように組成物に硬化処理を施すことにより、硬化物が得られる。
本発明の組成物を硬化してなる硬化物は、種々の用途に適用することができ、例えば、光学異方体及び反射膜が挙げられる。言い換えると、上記組成物を硬化してなる光学異方体又は反射膜が好適態様として挙げられる。
なお、光学異方体とは、光学異方性を有する物質を意図する。
また、反射膜とは、上述したコレステリック液晶相を固定してなる層に相当し、所定の反射帯域の光を反射することができる。
【実施例0123】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により制限的に解釈されるべきものではない。
【0124】
[光異性化キラル剤の合成及び評価]
〔特定化合物の合成〕
<合成例1:化合物CD-2の合成例>
下記スキームに従って化合物CD-2を合成した。
【0125】
【化15】
【0126】
(中間体B-1)
4-ヒドロキシブチルアクリレート60.0g、トリエチルアミン49.3g、ジブチルヒドロキシトルエン460mgを酢酸エチル240mLに溶解し、内温を10℃以下に冷却した。そこへ、メタンスルホニルクロリド50.5gを滴下し、20℃以下で1時間攪拌した。反応液に水240mL、重曹1.0gを添加して攪拌後、水層を除去した。有機層を10%食塩水100mLで2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別し、有機層を減圧濃縮して淡黄色油状の中間体(B-1)を定量的に得た。
【0127】
(中間体B-2)
4-ヒドロキシベンズアルデヒド14.0g、中間体(B-1)29.8g、ジブチルヒドロキシトルエン130mg、炭酸カリウム19.0g、ヨウ化カリウム950mg、ジメチルホルムアミド154mLを混合し、内温75℃で2時間攪拌した。内温を室温まで冷却し、水150mL、酢酸エチル200mL、濃塩酸13mLを添加して攪拌した。水層を除去し、有機層を10%食塩水100mLで2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別し、有機層を減圧濃縮して淡黄色油状の中間体(B-2)を定量的に得た。
【0128】
(中間体B-3)
中間体(B-2)30.3g、シアノ酢酸12.5g、ジブチルヒドロキシトルエン200mg、ニトロベンゼン750mg、アニリン450mgを酢酸エチル150mLに溶解し、2時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却し、メタノール200mL、水300mL、1規定塩酸33mLを添加し、室温で攪拌した。析出した固体をろ取し、メタノール100mL、水50mLの混合溶媒で洗浄し、得られた固体を40℃で送風乾燥した。白色固体の中間体(B-3)を収率84%で得た。
【0129】
(中間体B-4)
メタンスルホニルクロリド2.7g、テトラヒドロフラン20mLを混合し、内温10℃以下に冷却した。そこへ、中間体(B-3)5.0g、ジイソプロピルエチルアミン4.1g、ジブチルヒドロキシトルエン30mg、テトラヒドロフラン10mLを混合した溶液を滴下し、10℃以下で1時間攪拌した。そこへ、4-ヒドロキシベンズアルデヒド2.0gとテトラヒドロフラン3mLを混合した溶液を添加し、次いで1-メチルイミダゾール130μLを添加した。さらに、ジイソプロピルエチルアミン2.5gを滴下し、室温で2時間攪拌した。反応液にメタノール1mLを添加して5分間攪拌し、水70mLとメタノール80mL、1規定塩酸20mLを添加した。内温5℃以下で攪拌し、析出した固体をろ取して、粗体を得た。粗体をメタノール60mLに加熱完溶し、水10mLを添加後内温10℃に冷却し、析出した固体をろ取した。得られた固体を40℃で送風乾燥し、薄橙色固体の中間体(B-4)を収率88%で得た。
【0130】
(中間体B-5)
中間体(B-4)3.5g、マロン酸1.3g、ピリジン350μL、アニリン32μL、ジブチルヒドロキシトルエン100mgを酢酸エチル70mLに溶解させ、4時間加熱還流した。室温まで冷却し、メタノール12mL、水1mL、濃塩酸400μLを添加し、10℃で攪拌した。得られた固体をろ取し、メタノール20mL、水20mLの混合溶媒で洗浄し、結晶を40℃で送風乾燥した。淡黄色固体の中間体(B-5)を収率82%で得た。
【0131】
(中間体B-6)
中間体(B-5)3.0g、ジブチルヒドロキシトルエン10mg、ジメチルホルムアミド80μLをジメチルアセトアミド48mLに溶解させ、内温5℃に冷却した。そこへ、塩化チオニル0.8mLを滴下し、10℃以下で1時間攪拌した。次いで(s)-1,1’-ビ-2-ナフトール3.7g、ピリジン2.6mL、ジメチルアセトアミド4mLの混合溶液を滴下し、10℃で1時間攪拌した。反応液にメタノール5mLを添加し5分間攪拌した後、1規定塩酸200mLを添加して5℃以下で攪拌し析出した固体をろ取して粗体を得た。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、淡黄色油状の中間体(B-6)を収率55%で得た。
【0132】
(中間体A-1)
WO2020/203491記載の方法を参考に合成した。
【0133】
(CD-2)
中間体(A-1)1.0g、中間体(B-6)2.2g、ジブチルヒドロキシトルエン32mg、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン35mgとジクロロメタン10mLを混合し、水冷した。そこへ、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩0.8gを添加し、2時間攪拌した。反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、白色固体の(CD-2)を収率75%で得た。
【0134】
<化合物CD-1、CD-3~CD-8の合成例>
化合物CD-2の合成方法に準じて、化合物CD-1、CD-3~CD-8も合成した。
【0135】
〔特定化合物(化合物CD-1~CD-8)及び比較用化合物(化合物RE-1及び化合物RE-2)の具体的な構造〕
以下、上段部にて合成例を示した化合物CD-1~CD-8、及び、比較用化合物である化合物RE-1~RE-2の具体的な構造を示す。
なお、以下に示す構造中の「Me」は、メチル基を表す。
【0136】
【化16】
【0137】
【化17】
【0138】
【化18】
【0139】
〔光異性化キラル剤の評価〕
特定化合物(化合物CD-1~CD-8)及び比較用化合物(化合物RE-1及び化合物RE-2)に対して、以下の評価を実施した。
【0140】
<螺旋捻じり力(HTP)及び露光によるHTPの変化率の評価>
(評価用組成物の調製)
下記に示す配合で、評価用の組成物を各種調製した。
-------------------------
・化合物CD-1~CD-8、RE-1~RE-2のいずれか:5.0質量部
・下記に示す液晶性化合物LC-1:100質量部
・溶剤(テトラヒドロフラン):組成物の固形分濃度が30質量%となる量
-------------------------
【0141】
(液晶性化合物LC-1(混合物。なお、以下の構造式中、「Me」はメチル基を表す。))
【化19】
【0142】
(螺旋捻じり力(HTP)及び露光によるHTPの変化率の評価)
洗浄したガラス基板上にポリイミド配向膜材料SE-130(日産化学社製)を塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を焼成した後、ラビング処理することにより、配向膜付き基板を作製した。
この配向膜のラビング処理面に、上記組成物40μLを、1000rpm、10秒間の条件でスピンコートしてから90℃で1分間加熱乾燥し、組成物層を形成した。
得られた組成物層について、室温(23℃)で中心反射波長を測定し、下記式に従ってHTP(初期HTP)を算出した。
HTP =(液晶性化合物の平均屈折率)/{(液晶性化合物に対するキラル化合物の濃度(質量%))×(中心反射波長)}[μm-1
【0143】
更に、組成物層に、365nmの波長の光を露光(露光量:10~150mJ/cm)した後、再び中心反射波長を測定し、上記初期HTPを算出するために用いた計算式と同様に計算して、露光後のHTPを算出した。得られた初期HTPと露光後のHTPとから、下記式に従って、露光量10mJ/cmにおける異性化到達率(異性化感度に相当)を算出した。
露光量10mJ/cmにおける異性化到達率=|{(初期HTP)-(10mJ/cm露光後のHTP)}/{(初期HTP)-(150mJ/cm露光後のHTP)}×100|[%]
【0144】
初期HTPと、露光量10mJ/cmにおける異性化到達率とを、それぞれ下記基準に基づいて評価した。いずれも「C」評価以上が好ましく、「A」評価が最も好ましい。結果を表1に示す。
【0145】
(初期HTPの評価基準)
「A」:初期HTPが50μm-1以上。
「B」:初期HTPが40μm-1以上50μm-1未満。
「C」:初期HTPが30μm-1以上40μm-1未満。
「D」:初期HTPが30μm-1未満。
【0146】
(露光量10mJ/cmにおける異性化到達率)
「A」:露光量10mJ/cmにおける異性化到達率が70%以上。
「B」:露光量10mJ/cmにおける異性化到達率が65%以上70%未満。
「C」:露光量10mJ/cmにおける異性化到達率が60%以上65%未満。
「D」:露光量10mJ/cmにおける異性化到達率が50%以上60%未満。
「E」:露光量10mJ/cmにおける異性化到達率が50%未満。
【0147】
<波長365nmにおけるモル吸光係数>
(溶液吸収の測定方法)
測定化合物(化合物CD-1~CD-8及び比較用化合物RE-1~RE-2のいずれか)1mgを精秤し、テトラヒドロフラン(安定剤無し)に溶解して100mLとした。この溶液の365nmにおける吸光度を測定し、得られた吸光度の値からモル吸光係数を算出した。結果を表1に示す。
【0148】
以下、表1を示す。
【0149】
【表1】
【0150】
表1の結果から、実施例の化合物は、初期HTPが高く、且つ、露光処理を施された際の異性化感度が高いことが明らかである。
また、実施例1と実施例2の対比から、式(1)で表される化合物において、Rが、式(B-1A)で表される1価の置換基を表し、式(B-1A)中のvが1以上の整数を表し、且つ、式(B-2)中のmが1以上の整数を表す場合、初期HTPがより優れることが確認された。
また、実施例2と実施例3の対比から、式(1)で表される化合物において、Rが、式(B-1A)で表される1価の置換基を表し、且つ、式(B-1A)中のキラル母核に最も近い光異性化基がシアノ基を置換基として有さない場合(例えば、式(1)で表される化合物において、Rが、式(B-1A)で表される1価の置換基を表し、且つ、式(B-1A)中のvが0を表し、R11で表される1価の基(*S1-CR1X=CH-A1X-(R12で表される1価の基、又は、*S2-A1Y-CH=CR2X-R13で表される1価の基)中のR1X及びR2Xが水素原子を表す場合、又は、式(1)で表される化合物において、Rが、式(B-1A)で表される1価の置換基を表し、且つ、式(B-1A)中のvが1以上の整数を表し、L3Xで表される連結基(*S3-CR3X=CH-A3X-*S4)中のR3Xが水素原子を表す場合が該当)、初期HTPがより優れることが確認された。なお、この理由として、キラル母核に最も近い光異性化基がシアノ基を置換基として有することで立体障害が生じやすく、式(B-1A)で表される1価の置換基の棒状性が低下したためと推測している。
また、実施例2と実施例3の対比から、式(1)で表される化合物において、Rが、式(B-1A)で表される1価の置換基を表し、且つ、式(B-1A)中のvが1以上の整数を表し、L3Xで表される連結基(*S3-CR3X=CH-A3X-*S4)中のR3Xが水素原子を表す場合、異性化感度がより優れることも推測できる。
【0151】
また、実施例1~8の対比から、式(1)で表される化合物において、Xが、式(A-1)又は式(A-2)で表される2価の構造部位を表す場合、初期HTPがより優れることが確認された。
また、実施例2及び4と実施例5及び6の対比から、式(1)で表される化合物が光異性化基としてシアノシンナモイル基を有する場合(例えば、式(1)で表される化合物において、Rが、式(BA-1)で表される1価の置換基を表し、且つ、式(BA-1)におけるR11で表される1価の基(*S1-CR1X=CH-A1X-(R12で表される1価の基、又は、*S2-A1Y-CH=CR2X-R13で表される1価の基)中のR1X及びR2Xがシアノ基を表す場合が該当する。)、異性化感度がより優れることが確認された。
【0152】
一方、比較例の化合物は、所期の効果が得られなかった。
【0153】
[反射膜の作製]
〔液晶組成物の調製〕
下記に示す配合で、液晶組成物を調製した。
-------------------------
・化合物CD-2:5.0質量部
・上記に示した液晶性化合物LC-1:100質量部
・下記に示す界面活性剤S-1:0.1質量部
・下記に示す重合開始剤X:3質量部
・溶剤(テトラヒドロフラン):組成物の固形分濃度が30質量%となる量
-------------------------
【0154】
界面活性剤S-1は特許第5774518号に記載された化合物であり、下記構造を有する。
【0155】
【化20】
【0156】
重合開始剤X:IRGACURE 907(BASF製)
【0157】
〔反射膜の作製〕
洗浄したガラス基板上にポリイミド配向膜材料SE-130(日産化学社製)を塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を焼成した後、ラビング処理することにより、配向膜付き基板を作製した。この配向膜のラビング処理面に、上記液晶組成物40μLを回転数1000rpm、10秒間の条件でスピンコートすることにより、組成物層を形成し、90℃で1分間乾燥(熟成)して、組成物層中の液晶性化合物を配向させた(言い換えると、コレステリック液晶相の状態とした)。
次に、液晶性化合物を配向させた組成物層に対して、開口部を有するマスクを介して、光源(UVP社製、2UV・トランスイルミネーター)より波長365nmの光を0.4mW/cmの照射強度で25秒間照射した(10mJ/cm相当)。マスクの開口部と非開口部との差異によって、組成物層は、波長365nmの光を照射された箇所と、照射されていない箇所とが存在する状態である。
続いて、組成物層に対して、マスクを外した状態で、25℃、窒素雰囲気化で500mJ/cmの照射量で紫外線(310nm)を照射して硬化処理を実施し、反射膜(コレステリック液晶相を固定化してなる層に該当)とした。
得られた反射膜は、波長365nmの光を照射された箇所と、照射されていない箇所とで、選択反射波長が異なること(コレステリック層の螺旋のピッチが異なること)が確認された。