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特開2024-141771検証方法、検証装置、及び検証プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141771
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】検証方法、検証装置、及び検証プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20241003BHJP
   G06F 30/18 20200101ALI20241003BHJP
   G06F 113/16 20200101ALN20241003BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/18
G06F113:16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053594
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】滑川 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 克樹
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA14
5B146DJ15
(57)【要約】
【課題】ワイヤハーネスの配線エラーを抑制する。
【解決手段】検証方法は、移動体への電線の配線に用いられる設計情報を検証するための方法であり、検出工程と報知工程とを備える。設計情報は、各電線の電線IDと、該電線を束ねてなるワイヤハーネスのハーネスIDとの対応関係を示す配線表に基づき作成され、該対応関係を示す。検出工程では、配線表が示す対応関係と、設計情報が示す対応関係とに基づき、設計情報におけるエラーを検出する(S110、S115)。報知工程では、検出されたエラーを報知する(S125)。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に配線される各電線の識別情報である電線IDと、該電線IDを有する前記電線を束ねてなるワイヤハーネスの識別情報であるハーネスIDとの対応関係を示す配線表に基づき作成された情報であって、前記対応関係を示し、前記移動体への前記電線の配線に用いられる情報である設計情報を検証するための検証方法であって、
前記配線表が示す前記対応関係と、前記設計情報が示す前記対応関係とに基づき、前記設計情報におけるエラーを検出する検出工程と、
検出された前記エラーを報知する報知工程と、を備え、
前記エラーとは、前記配線表と前記設計情報とのうちの一方では、いずれかの前記ハーネスIDに対応付けられているが、これらのうちの他方では、いずれの前記ハーネスIDにも対応付けられていない前記電線IDを有する前記電線が存在することを示す第1エラーと、前記配線表と前記設計情報とにおいて、異なる前記ハーネスIDに対応付けられている前記電線IDを有する前記電線が存在することを示す第2エラーと、のうちの少なくとも一方である
検証方法。
【請求項2】
請求項1に記載の検証方法であって、
前記検出工程では、前記配線表ではいずれかの前記ハーネスIDに対応付けられているが、前記設計情報ではいずれの前記ハーネスIDにも対応付けられていない前記電線IDを有する前記電線が存在することを、前記第1エラーとして検出する
検証方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の検証方法であって、
前記検出工程では、前記配線表と前記設計情報とにおいて、異なる前記ハーネスIDに対応付けられている前記電線IDを有する前記電線であって、前記設計情報において、前記電線IDが複数の前記ハーネスIDに対応付けられている前記電線が存在することを、前記第2エラーとして検出する
検証方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の検証方法であって、
検証の対象となる前記ワイヤハーネスの前記ハーネスIDの選択を受け付ける選択工程を、更に備え、
前記選択工程にて選択された前記ハーネスIDを有する前記ワイヤハーネスにて束ねられる前記電線の配線に関する前記エラーを検出する
検証方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の検証方法であって、
前記検出工程では、前記第1エラーと前記第2エラーとが検出され、前記検出工程には、第1ステップと第2ステップとが設けられており、
前記第1ステップでは、前記第1及び第2エラーのうちの一方が検出され、
前記第2ステップでは、前記第1ステップで前記エラーが検出された前記電線とは異なる前記電線の中から、前記第1及び第2エラーのうちの他方が検出される
検証方法。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の検証方法であって、
前記検出工程には、算出ステップと、検出ステップとが設けられており、
前記算出ステップでは、前記配線表において前記ハーネスIDに対応付けられている前記電線IDに基づき、該ハーネスIDについての評価値を算出すると共に、前記設計情報において前記ハーネスIDに対応付けられている前記電線IDに基づき、該ハーネスIDについての前記評価値を算出し、
前記検出ステップでは、前記配線表における前記評価値と前記設計情報における前記評価値とが異なる前記ハーネスIDを有する前記ワイヤハーネスにて束ねられる前記電線の前記エラーを検出する
検証方法。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の検証方法であって、
前記移動体とは、列車である
検証方法。
【請求項8】
移動体に配線される各電線の識別情報である電線IDと、該電線IDを有する前記電線を束ねてなるワイヤハーネスの識別情報であるハーネスIDとの対応関係を示す配線表に基づき作成された情報であって、前記対応関係を示し、前記移動体への前記電線の配線に用いられる情報である設計情報を検証するよう構成される検証装置であって、
前記配線表が示す前記対応関係と、前記設計情報が示す前記対応関係とに基づき、前記設計情報におけるエラーを検出するよう構成された検出部と、
検出された前記エラーを報知するよう構成される報知部と、を備え、
前記エラーとは、前記配線表と前記設計情報とのうちの一方では、いずれかの前記ハーネスIDに対応付けられているが、これらのうちの他方では、いずれの前記ハーネスIDにも対応付けられていない前記電線IDを有する前記電線が存在することを示す第1エラーと、前記配線表と前記設計情報とにおいて、異なる前記ハーネスIDに対応付けられている前記電線IDを有する前記電線が存在することを示す第2エラーと、のうちの少なくとも一方である
検証装置。
【請求項9】
移動体に配線される各電線の識別情報である電線IDと、該電線IDを有する前記電線を束ねてなるワイヤハーネスの識別情報であるハーネスIDとの対応関係を示す配線表に基づき作成された情報であって、前記対応関係を示し、前記移動体への前記電線の配線に用いられる情報である設計情報を検証するよう構成される検証プログラムであって、
前記配線表が示す前記対応関係と、前記設計情報が示す前記対応関係とに基づき、前記設計情報におけるエラーを検出するよう構成された検出部と、
検出された前記エラーを報知するよう構成される報知部として、コンピュータを動作させるよう構成され、
前記エラーとは、前記配線表と前記設計情報とのうちの一方では、いずれかの前記ハーネスIDに対応付けられているが、これらのうちの他方では、いずれの前記ハーネスIDにも対応付けられていない前記電線IDを有する前記電線が存在することを示す第1エラーと、前記配線表と前記設計情報とにおいて、異なる前記ハーネスIDに対応付けられている前記電線IDを有する前記電線が存在することを示す第2エラーと、のうちの少なくとも一方である
検証プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体におけるワイヤハーネスの配線を検証するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉄道車両、航空機、自動車、及び船舶等の移動体には、電力又は電気信号等を伝達するためのワイヤハーネスが搭載される。近年では、このような移動体に搭載されるワイヤハーネスの数は数千にも及ぶ場合があり、さらに、これらのワイヤハーネスにより束ねられる電線は数万本に及ぶ場合もある。そして、移動体に新たにワイヤハーネスを配線した後や、設計変更による配線の変更後には、配線エラーの有無を確認する必要があるが、ワイヤハーネスや電線の数が膨大である場合には、このような確認作業の負荷は非常に大きくなる。
【0003】
これに対し、特許文献1には、CAD図面上の端子台関連図書とシーケンス図面とに重複する端子台ケーブル情報を、自動照合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-21674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術を用いても、移動体における多数の電線の配線エラーについての確認作業の負荷を軽減するのは困難である。
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、電線の配線エラーについての確認作業の負荷を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、移動体に配線される各電線の識別情報である電線IDと、該電線IDを有する電線を束ねてなるワイヤハーネスの識別情報であるハーネスIDとの対応関係を示す配線表に基づき作成された情報であって、対応関係を示し、移動体への電線の配線に用いられる情報である設計情報を検証するための検証方法ある。検証方法は、配線表が示す対応関係と、設計情報が示す対応関係とに基づき、設計情報におけるエラーを検出する検出工程と、検出されたエラーを報知する報知工程と、を備える。エラーとは、配線表と設計情報とのうちの一方では、いずれかのハーネスIDに対応付けられているが、これらのうちの他方では、いずれのハーネスIDにも対応付けられていない電線IDを有する電線が存在することを示す第1エラーと、配線表と設計情報とにおいて、異なるハーネスIDに対応付けられている電線IDを有する電線が存在することを示す第2エラーと、のうちの少なくとも一方である。
【0007】
本開示の一態様は、移動体に配線される各電線の識別情報である電線IDと、該電線IDを有する電線を束ねてなるワイヤハーネスの識別情報であるハーネスIDとの対応関係を示す配線表に基づき作成された情報であって、対応関係を示し、移動体への電線の配線に用いられる情報である設計情報を検証するよう構成される検証装置であって、検出部と、報知部と、を備える。検出部は、配線表が示す対応関係と、設計情報が示す対応関係とに基づき、設計情報におけるエラーを検出するよう構成される。報知部は、検出されたエラーを報知するよう構成される。エラーとは、配線表と設計情報とのうちの一方では、いずれかのハーネスIDに対応付けられているが、これらのうちの他方では、いずれのハーネスIDにも対応付けられていない電線IDを有する電線が存在することを示す第1エラーと、配線表と設計情報とにおいて、異なるハーネスIDに対応付けられている電線IDを有する電線が存在することを示す第2エラーと、のうちの少なくとも一方である。
【0008】
本開示の一態様は、移動体に配線される各電線の識別情報である電線IDと、該電線IDを有する電線を束ねてなるワイヤハーネスの識別情報であるハーネスIDとの対応関係を示す配線表に基づき作成された情報であって、対応関係を示し、移動体への電線の配線に用いられる情報である設計情報を検証するよう構成される検証プログラムである。検証プログラムは、配線表が示す対応関係と、設計情報が示す対応関係とに基づき、設計情報におけるエラーを検出するよう構成された検出部と、検出されたエラーを報知するよう構成される報知部として、コンピュータを動作させるよう構成される。エラーとは、配線表と設計情報とのうちの一方では、いずれかのハーネスIDに対応付けられているが、これらのうちの他方では、いずれのハーネスIDにも対応付けられていない電線IDを有する電線が存在することを示す第1エラーと、配線表と設計情報とにおいて、異なるハーネスIDに対応付けられている電線IDを有する電線が存在することを示す第2エラーと、のうちの少なくとも一方である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電線の配線エラーについての確認作業の負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】検証装置のブロック図である。
図2】ワイヤハーネスの構成を説明する模式図である。
図3】配線表の説明図である。
図4】設計情報の説明図である。
図5】設計変更後の配線表の説明図である。
図6】設計変更後の設計情報の説明図である。
図7】検証処理のフローチャートである。
図8】開始画面の説明図である。
図9】ハーネスID入力画面の説明図である。
図10】検証結果画面の説明図である。
図11】変形例1の検証処理のフローチャートである。
図12】変形例2の検証処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0012】
[1.検証装置の構成]
本開示の一実施形態である検証装置1は、一例として、複数の鉄道車両を連結した列車(移動体)へのワイヤハーネス20の配線を検証するための装置として構成される(図1、2参照)。無論、これに限らず、検証装置1は、例えば、航空機、自動車、及び船舶等の移動体へのワイヤハーネス20の配線を支援する装置として構成されてもよい。
【0013】
検証装置1は、例えばPCとしての構成を有しており、制御部10と、記憶部11と、HMI部12と、外部IF部13とを備える。
制御部10は、CPU10Aと、メモリ10Bとを備える。メモリ10Bは、例えばROM、RAM、NVRAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリを有していてもよい。CPU10Aは、メモリ10Bに記憶されたプログラムに従う処理を実行する。
【0014】
記憶部11は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)等として構成される。記憶部11は、図示しないオペレーションシステム(以後、OS)や検証プログラム11Aを等のプログラムと、後述する配線表11B及び設計情報11C等のデータとが保存されている。記憶部11は、非遷移的実体的記録媒体に相当する。
【0015】
HMI部12は、検証装置1と作業者との間で情報をやり取りするための各種機器であり、キーボード、タッチパネル、マウス等の入力装置、液晶画面、ランプ等の表示装置、マイク、スピーカ等の音響装置等を含む。HMIは、Human Machine Interfaceの略である。
【0016】
外部IF部13は、USBメモリ等の外部機器が接続されるインタフェースである。
制御部10のCPU10Aは、記憶部11からメモリ10BにロードされたOSや検証プログラム11Aに従い動作する。検証プログラム11Aは、OS上で動作するよう構成されており、CPU10Aが検証プログラム11Aに従い動作することで、検証装置1としての機能が発揮される。
【0017】
なお、検証装置1は、PCではない装置として構成されていてもよい。また、検証装置1の機能の全部又は一部は、検証プログラム11Aではなく、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0018】
[2.ワイヤハーネスの構成]
ワイヤハーネス20は、図2に示すように、列車を構成する鉄道車両に搭載された機器の間をつなぐ複数の電線21が束ねられたものである。電線21は、接続された機器の間で電力や電気信号などを伝えるものである。電線21の端部には、接続される機器に対応した形状を有するコネクタ22が取り付けられている。
【0019】
ワイヤハーネス20には、当該ワイヤハーネス20に設けられた複数の電線21を束ねて拘束する拘束部材23が設けられている。拘束部材23としては、粘着テープや、チューブ、結束バンドなどの樹脂製の結束部材や、金属製の結束部材や、ロウ引き紐などを例示することができる。なお、結束部材には、貫通孔が設けられていてもよい。貫通孔は、結束部材が設けられたワイヤハーネス20を、鉄道車両の車体に固定する際に用いられるボルトなどの固定部材が挿通されるものである。
【0020】
[3.配線表及び設計情報]
図3に示す配線表は、ハーネス設計の依頼元から提供される情報であり、鉄道車両に配線される各電線21の識別情報(以後、電線ID)と、各電線21を包含するワイヤハーネス20の識別情報(以後、ハーネスID)との対応関係を示す。なお、配線表においては、各電線IDは、1つのハーネスIDに対応付けられることを念のため付言しておく。
【0021】
一方、図4に示す設計情報は、鉄道車両への各ワイヤハーネス20の配線作業を行うために用いられる。設計情報は、各ワイヤハーネス20のハーネスIDと、該ワイヤハーネス20が包含する複数の電線の電線IDとを対応付けており、配線表と同様にして、電線IDと、該電線IDを有する電線を包含するハーネスIDとの対応関係を示す。
【0022】
これに加え、設計情報は、例えば、各電線の両端であるFサイドとTサイドとが配置される鉄道車両の領域等といった、各ワイヤハーネス20を鉄道車両に配線する際に必要となる各種情報を示す。なお、図4におけるAREA1~8は、ワイヤハーネス20が配置される鉄道車両の領域を示す情報の一例である。
【0023】
設計情報は、配線表に基づき作成される。すなわち、作業者は、配線表に基づき各ワイヤハーネス20が包含する各電線の電線IDを把握する。また、作業者は、3DCADデータにより形成される仮想空間に設けられた鉄道車両の3Dモデルを用いて、ワイヤハーネス20を仮想的に配線する。該モデルは、鉄道車両を構成する部品の位置及び形状や、鉄道車両に設けられた機器の位置や、該機器と電線との接続位置等を示し、作業者は、該モデルにおいて各ワイヤハーネス20のルーティング等を行う。これにより、各ワイヤハーネス20に包含される各電線の長さ、径、分岐位置、拘束部材の種類や位置等が定められ、これらの情報に基づき設計情報が作成される。
【0024】
一方、鉄道車両へのワイヤハーネス20の配線に対し、設計変更が加えられる場合が想定される。このような場合、ハーネス設計の依頼元は、配線表により設計変更の内容を示す。一例として、図5の配線表では、設計変更により、図3の配線表における電線IDが「10」である電線(以後、電線10)の包含先が、ハーネスIDが「ハーネス1」であるワイヤハーネス(以後、ハーネス1)から、ハーネスIDが「ハーネス2」であるワイヤハーネス(以後、ハーネス2)に変更されている。
【0025】
そして、作業者は、同様にして設計変更後の配線表に基づき設計情報を作成するが、その際にミスが生じる恐れがある。図6に示す設計変更後の設計情報は、図5の設計変更後の配線表に基づき作成されたものである。該設計情報では、作業者のミスにより、ハーネス1が包含する電線から、電線IDが「9」である電線(以後、電線9)が削除されている。また、該設計情報では、作業者のミスにより、ハーネス1が包含する電線の中に電線10を残したまま、ハーネス2が包含する電線として電線10が加えられている。
【0026】
[4.検証プログラム]
検証プログラム11Aは、配線表の内容が設計情報に適切に反映されたかどうかを検証する検証処理を実行する。検証処理では、新たに作成された配線表の内容が設計情報に適切に反映されたかどうかが検証されてもよいし、配線表により示された設計変更の内容が設計情報に適切に反映されたかどうかが検証されてもよい。また、検証プログラム11Aは、一例として、VBAにより記述されたエクセル(登録商標)のマクロとして構成されていてもよい。無論、これに限らず、検証プログラム11Aは、OS上で動作するアプリ等、様々な態様で構成され得る。以下では、検証処理について、図7のフローチャートを用いて説明する。また、以下の説明では、検証処理の主体を検証プログラム11Aとして記載しているが、検証処理は、検証プログラム11Aに従い動作する検証装置1の制御部10のCPU10Aにより実行されることを、念のため付言しておく。
【0027】
S100では、検証プログラム11Aは、HMI部12に開始画面30(図8参照)を表示する。そして、開始画面30におけるSettingボタン32に対する操作が行われると、検証プログラム11Aは、入力欄31を介して、検証の対象となる配線表及び設計情報が保存されている各ディレクトリのファイルパスの入力を受け付ける。なお、新たに作成された配線表及び設計情報と、設計変更後の配線表及び設計情報とが、検証の対象になり得る。その後、Startボタン33に対する操作が行われると、検証プログラム11Aは、入力欄31に入力された各ディレクトリに保存されている配線表及び設計情報を読み出し、S105に移行する。
【0028】
S105では、検証プログラム11Aは、HMI部12にハーネスID入力画面40(図9参照)を表示する。そして、検証プログラム11Aは、ハーネスID入力画面40を介して、検証の対象となるワイヤハーネス(以後、対象ワイヤハーネス)のハーネスIDの選択を受け付ける。具体的には、例えば、設計変更後の配線表及び設計情報の検証を行う場合には、設計変更が行われたワイヤハーネスが対象ワイヤハーネスとして選択され得る。なお、全てのワイヤハーネスを対象ワイヤハーネスとする場合には、検証プログラム11Aは、例えば、ハーネスID入力画面40に設けられた図示しない表示要素を介して、作業者からその旨の指示を受け付けてもよい。また、S105の処理は省略されても良く、この場合、検証プログラム11Aは、全てのワイヤハーネスを対象ワイヤハーネスとしてもよい。
【0029】
S110では、検証プログラム11Aは、S105にて選択された対象ワイヤハーネスが包含する全ての電線の電線IDを、配線表及び設計情報の各々から抽出する。また、検証プログラム11Aは、設計情報におけるエラーを検出するため、配線表から抽出した対象ワイヤハーネスが包含する各電線の電線IDと、設計情報から抽出した対象ワイヤハーネスが包含する各電線の電線IDとを比較し、S115に移行する。なお、S105の処理が省略された場合は、S110では、検証プログラム11Aは、全てのワイヤハーネスが包含する全ての電線の電線IDを、配線表及び設計情報の各々から抽出する。
【0030】
S115では、検証プログラム11Aは、S110での比較結果に基づき、設計情報におけるエラー、具体的には、欠落電線、過剰電線、相違電線、及び重複電線を検出する。そして、検証プログラム11Aは、エラーが検出された場合には(S120:Yes)、S125に移行し、エラーが検出されなかった場合には(S120:No)、HMI部12を介して設計情報にエラーが存在しない旨を表示し(S130)、本処理を終了する。
【0031】
欠落電線とは、配線表ではいずれかのハーネスIDに対応付けられているが、設計情報ではいずれのハーネスIDにも対応付けられていない電線IDを有する電線を意味する。つまり、欠落電線の電線IDは、配線表には登録されているが、設計情報には登録されていない。一方、過剰電線とは、設計情報ではいずれかのハーネスIDに対応付けられているが、配線表ではいずれのハーネスIDにも対応付けられていない電線IDを有する電線を意味する。つまり、過剰電線の電線IDは、設計情報には登録されているが、配線表には登録されていない。
【0032】
このように、検証プログラム11Aは、配線表と設計情報とのうちの一方では、いずれかのハーネスIDに対応付けられているが、これらのうちの他方では、いずれのハーネスIDにも対応付けられていない電線IDを有する電線が存在することを検出する。
【0033】
具体的には、例えば、図5に示すように、設計変更後の配線表により電線10の包含先がハーネス1からハーネス2に変更されたとする。しかし、図6に示すように、設計変更後の設計情報において、誤って、電線10に替えて電線9がハーネス1から削除されたとする。このような場合には、電線9は欠落電線に相当する。
【0034】
なお、検証プログラム11Aは、さらに、配線表において欠落電線を包含するワイヤハーネスを、欠落電線の本来の包含先として検出する。図5、6に示す例では、ハーネス1が欠落電線の本来の包含先として検出される。また、同様にして、過剰電線と、設計情報において過剰電線を包含するワイヤハーネスも検出され得る。
【0035】
一方、相違電線とは、配線表と設計情報とにおいて、異なるハーネスIDに対応付けられている電線IDを有する電線を意味する。つまり、相違電線の電線IDは、配線表と設計情報との双方に登録されているが、対応付けられているハーネスIDが異なる。また、重複電線とは、設計情報において、電線IDが複数のハーネスIDに対応付けられている相違電線を意味する。
【0036】
具体的には、例えば、図5に示すように、設計変更後の配線表により、電線10の包含先がハーネス1からハーネス2に変更されたとする。しかし、図6に示すように、設計変更後の設計情報において、ハーネス1が包含する電線から電線10が削除されること無く、ハーネス2が包含する電線として電線10が追加されてしまうというミスが発生したとする。このような場合には、電線10は、相違電線及び重複電線に相当する。つまり、ハーネス1が包含する電線10が相違電線であり、ハーネス2が包含する電線10が重複電線である。
【0037】
無論、これに限らず、重複電線には相当しない相違電線も検出され得る。
また、検証プログラム11Aは、配線表及び設計情報の各々において相違電線を包含するワイヤハーネスを検出する。また、検証プログラム11Aは、設計情報において重複電線を包含する複数のワイヤハーネスを検出すると共に、配線表において重複電線を包含するワイヤハーネスを、重複電線の本来の包含先として検出する。
【0038】
S125では、検証プログラム11Aは、HMI部12を介してS115で検出された設計情報のエラーを報知し、本処理を終了する。
すなわち、欠落電線が検出された場合であれば、欠落電線の電線IDと、配線表において欠落電線の電線IDに対応付けられているハーネスID、換言すれば、該欠落電線を本来包含すべきワイヤハーネスのハーネスIDが表示されてもよい。
【0039】
また、過剰電線が検出された場合であれば、過剰電線の電線IDと、設計情報において過剰電線の電線IDに対応付けられているハーネスIDが表示されてもよい。
また、相違電線が検出された場合であれば、相違電線の電線IDと、配線表において相違電線の電線IDに対応付けられているハーネスIDと、設計情報において相違電線の電線IDに対応付けられているハーネスIDとが表示されてもよい。なお、検出された相違電線が重複電線である場合には、配線表において重複電線の電線IDに対応付けられているハーネスIDと、設計情報において重複電線の電線IDに対応付けられている複数のハーネスIDとが表示されてもよい。
【0040】
具体的には、例えば、図10の検証結果画面50によりエラーが表示されてもよい。検証結果画面50は、表として構成されており、各ワイヤハーネスにおいてエラーが検出された電線と、エラーの内容とを示す。検証結果画面50は、「電線ID」、「ハーネスID」、及び「結果」という項目を有しており、各行は、エラーが検出された電線に対応している。
【0041】
「電線ID」に対応する欄は、エラーが検出された電線の電線IDが表示される。
「ハーネスID」に対応する欄は、エラーが検出された電線を包含するワイヤハーネスのハーネスIDが表示される。
【0042】
「結果」に対応する欄は、検出されたエラーの内容を示す。
なお、一例として、図6に示すように、電線9が欠落電線として検出されたと仮定する。この場合、図10に示すようにして、「電線ID」及び「結果」の欄にて、電線9に欠落電線である旨が示されると共に、「ハーネスID」の欄にて、配線表において電線9がハーネス1に包含される旨が示される。
【0043】
さらに、図6に示すように、電線10が、ハーネス1及び2に包含される重複電線として検出されたと仮定する。この場合、図10に示すように、ハーネス1及び2の各々に包含される電線10に対応する2つの行が設けられ、これらの行により、重複電線が生じた旨が示される。また、これらの各行における「結果」に対応する欄では、該行に対応する電線及びワイヤハーネスが、配線表に基づかず誤って(例えば、作業者のミス)設計情報に設けられたものであるか、配線表に基づき正しく設けられたものであるかが示される。検証結果画面50は、前者の場合には、「重複(エラー有)」と表示し、後者の場合には、「重複(エラー無)」と表示する。作業者は、「重複(エラー有)」と表示された内容について修正を行う。
【0044】
[5.検証処理の変形例1]
変形例1の検証処理では、図11に示すように、S110及びS115に替えて、S110A、S113A、S116Aが行われる。
【0045】
S110Aでは、検証プログラム11Aは、設計情報における対象ワイヤハーネスから重複電線を検出し、S113Aに移行する。なお、検出された重複電線は、メモリ10Bに記憶される。
【0046】
S113Aでは、検証プログラム11Aは、配線表及び設計情報の各々から重複電線の電線IDを除去し、S116Aに移行する。なお、重複電線の電線IDが除去された配線表及び設計情報は、メモリ10Bに記憶される。
【0047】
S116Aでは、検証プログラム11Aは、S113Aで重複電線の電線IDが除去された配線表及び設計情報における対象ワイヤハーネスから、欠落電線、過剰電線、及び相違電線を検出する。なお、検出された欠落電線、過剰電線、及び相違電線は、メモリ10Bに記憶される。
【0048】
S125では、検証プログラム11Aは、HMI部12を介してS113A、S116Aで検出・記憶された設計情報のエラーを報知し、本処理を終了する。
この外にも、S110Aでは、検証プログラム11Aは、配線表及び設計情報における対象ワイヤハーネスから相違電線を検出すると共に、設計情報における対象ワイヤハーネスから重複電線を検出してもよい。続くS113Aでは、検証プログラム11Aは、配線表及び設計情報の各々から相違電線の電線IDを除去し、S116では、検証プログラム11Aは、配線表及び設計情報における対象ワイヤハーネスから、欠落電線及び過剰電線を検出してもよい。
【0049】
また、検証プログラム11Aは、S110Aにて、配線表及び設計情報における対象ハーネスから欠落電線及び過剰電線を検出し、S113Aにて、配線表及び設計情報の各々から、欠落電線及び過剰電線の電線IDを除去してもよい。そして、検証プログラム11Aは、S116Aにて、配線表及び設計情報における対象ワイヤハーネスから、相違電線及び重複電線を検出してもよい。
【0050】
こうすることにより、S116Aにおいて検証の対象となる電線IDの数を減らすことができる。このため、エラーを検出するための処理負荷を低減できる。
[6.検証処理の変形例2]
変形例2の検証処理では、図12に示すように、S110及びS115に替えて、S110B、S113B、S116Bが行われる。
【0051】
S110Bでは、検証プログラム11Aは、配線表における各対象ワイヤハーネスの評価値と、設計情報における各対象ワイヤハーネスの評価値とを算出する。なお、評価値とは、各対象ワイヤハーネスに包含される各電線の電線IDに基づき算出された値であり、例えば、対象ワイヤハーネスに包含される各電線の電線IDの総和であってもよいし、各電線IDの標準偏差であってもよいし、これらを組み合わせたものであってもよい。
【0052】
続くS113Bでは、検証プログラム11Aは、配線表における対象ワイヤハーネスの評価値と、設計情報における同一の対象ワイヤハーネスの評価値とを比較し、これらの評価値が異なる場合には、該対象ワイヤハーネスをエラー有ハーネスとみなす。
【0053】
続くS116Bでは、検証プログラム11Aは、配線表におけるエラー有ハーネスに含まれる電線の電線IDと、設計情報における同一のエラー有ハーネスに含まれる電線の電線IDとを比較することで、欠落電線、過剰電線、及び相違電線を検出する。さらに、検証プログラム11Aは、相違電線に基づき、設計情報における重複電線を検出してもよい。
【0054】
こうすることにより、配線表及び設計情報における全ての対象ワイヤハーネスについて電線IDを比較してエラーを検出する場合に比べ、処理負荷を低減できる。
[7.効果]
(1)上記実施形態によれば、検証処理では、配線表と設計情報とを比較することで、設計情報におけるエラーが検出される。このため、配線されるワイヤハーネスの数が膨大であっても、配線表に基づき作成された設計情報におけるエラーを容易且つ確実に検出でき、設計情報の見直しに要する作業負荷を低減できる。したがって、電線の配線エラーについての確認作業の負荷を軽減できる。
【0055】
(2)また、検証処理では、設計情報におけるエラーとして欠落電線や重複電線が検出される。このため、設計情報におけるエラーを好適に検出できる。
(3)また、検証処理では、作業者により選択されたワイヤハーネスに包含される電線を対象として、検証が行われる。このため、検証処理の負荷を低減でき、検証処理に要する時間を低減できる。
【0056】
[8.他の実施形態]
(1)上記実施形態における検証処理では、欠落電線、過剰電線、相違電線、及び重複電線が検出されたが、これらのうちの一部が検出されてもよい。
【0057】
(2)上述した検証装置1や検証プログラム11Aの他、検証プログラム11Aが記憶されている、例えば半導体メモリやハードディスクドライブ等の非遷移的実体的記録媒体や、検証処理に対応する検証方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【0058】
(3)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0059】
[9.文言の対応関係]
検証処理のS105が選択工程の一例に、S110及びS115と、S110A、S113A、及びS116Aと、S110B、S113B、及びS116Bとが、検出工程及び検出部の一例に、S125が、報知工程及び報知部の一例に相当する。
【0060】
また、S110Aが第1ステップの一例に、S116Aが第2ステップの一例に相当し、S110Bが算出ステップの一例に、S113B、S116Bが検出ステップの一例に相当する。
【0061】
また、欠落電線及び過剰電線が、第1エラーの一例に相当し、相違電線及び重複電線が、第2エラーの一例に相当する。
【符号の説明】
【0062】
1…検証装置、10…制御部、10A…CPU、10B…メモリ、11…記憶部、11A…検証プログラム、11B…配線表、11C…設計情報、12…HMI部、13…外部IF部、20…ワイヤハーネス、21…電線、22…コネクタ、23…拘束部材。
図1
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