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  • 特開-焼却灰の水洗処理方法。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141793
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】焼却灰の水洗処理方法。
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/80 20220101AFI20241003BHJP
   C04B 7/38 20060101ALI20241003BHJP
   B09B 101/30 20220101ALN20241003BHJP
【FI】
B09B3/80 ZAB
C04B7/38
B09B101:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053631
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】中村 明則
(72)【発明者】
【氏名】平山 浩喜
(72)【発明者】
【氏名】有井 恒之
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA36
4D004AB06
4D004AC05
4D004BA02
4D004CA13
4D004CA40
4D004CB15
4D004CC03
4D004DA02
4D004DA11
(57)【要約】
【課題】 安定的に塩素含有量の少ない、性状が均一な安定した処理済みの焼却灰(洗浄灰)を効率よく得る焼却灰の水洗処理方法を提供することを目的とする。これにより、該焼却灰をセメント原燃料として使用しても、取扱い易く、製造されるセメント中の塩素量を抑制することができ、よって、セメント原燃料として常に多量の焼却灰を使用することが容易となる。
【解決手段】 焼却灰を水と混合してスラリーを調製し、該スラリーをろ過装置にかけて洗浄灰と洗浄水とに分離した後、さらにろ過残渣を水洗する焼却灰の水洗処理方法において、予めスラリー濃度とろ過時間の関係を求める工程と、前記ろ過装置にかけるスラリー濃度を求め、前記求められた関係より、ろ過時間を算出する工程と、前記スラリーを算出されたろ過時間まで前記ろ過装置にかける工程を有する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却灰を水と混合してスラリーを調製し、該スラリーをろ過装置にかけて洗浄灰と洗浄水とに分離した後、さらにろ過残渣を水洗する焼却灰の水洗処理方法において、
予めスラリー濃度とろ過時間の関係を求める工程と、
前記ろ過装置にかけるスラリー濃度を求め、前記求められた関係より、ろ過時間を算出する工程と、
前記スラリーを算出されたろ過時間まで前記ろ過装置にかける工程を有することを特徴とする焼却灰の水洗処理方法。
【請求項2】
前記ろ過装置は、フィルタープレス又はベルトフィルターである請求項1に記載の焼却灰の水洗処理方法。
【請求項3】
前記水洗する工程は、前記ろ過残差の2倍以上の水で水洗する請求項1又は2に記載の焼却灰の水洗処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰の水洗処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ゴミ等の焼却飛灰、バイオマス灰や塩素バイパスダスト等の焼却灰の利用方法の一つに、セメントの原燃料とする方法がある。しかしながら、セメント原燃料とする場合も無制限に使用できるわけではなく、特に、最終製品であるセメント中の塩素含有量をJIS規格に収めるために、焼却灰を洗浄し、その塩素含有量を減らす必要性がある。
焼却灰の洗浄は、焼却灰を水と混合してスラリーを調製し、該スラリーをろ過装置にかけて洗浄灰と洗浄水とに分離した後、さらにろ過残渣を水洗する方法がある。この場合、焼却灰の重量によって、ろ過装置にかけるスラリーの量、すなわち、ろ過時間を一定に調整している(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-95605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、焼却灰中の可溶性成分量は必ずしも一定ではなく、むしろ大きく変動するため、スラリー濃度(固形分濃度)が変動する。上記特許文献1に記載の方法では、焼却灰のスラリー化の際、焼却灰とスラリーを作製するための水の量を制御して、定量供給するため、スラリー濃度が一定にならず、ろ過時間を一定に調整した場合、ろ過装置に溜まる固形分が増減し、得られるろ過残渣にムラが生じるとともに処理効率が変動するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。その結果、フィルタープレス等のろ過装置による焼却灰スラリーのろ過洗浄において、スラリー調整時のスラリー濃度(スラリー中の不溶性成分量)とスラリーのろ過時間の制御により、ろ過残差ムラの生じやすさ、ろ過洗浄処理効率が決ることを見出した。さらに、この知見に基づき、さらに安定した形状のろ過残渣(洗浄灰)が効率良く得られる本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の焼却灰の水洗処理方法は、焼却灰を水と混合してスラリーを調製し、該スラリーをろ過装置にかけて洗浄灰と洗浄水とに分離した後、さらにろ過残渣を水洗する焼却灰の水洗処理方法において、予めスラリー濃度とろ過時間の関係を求める工程と、前記ろ過装置にかけるスラリー濃度を求め、前記求められた関係より、ろ過時間を算出する工程と、前記スラリーを算出されたろ過時間まで前記ろ過装置にかける工程を有する。
また、本発明の焼却灰の水洗処理方法において、前記ろ過装置は、フィルタープレス又はベルトフィルターであることが好ましい。
更に、本発明の焼却灰の水洗処理方法において、前記水洗する工程は、前記ろ過残差の2倍以上の水で水洗することが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、安定的に塩素含有量の少ない、性状が均一な安定した処理済みの焼却灰(洗浄灰)を効率よく得ることができる。これにより、該焼却灰をセメント原燃料として使用しても、取扱い易く、製造されるセメント中の塩素量を抑制することができ、よって、セメント原燃料として常に多量の焼却灰を使用することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】スラリー濃度とろ過時間の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(焼却灰)
本発明において処理対象とされる焼却灰は特に限定されるものではなく、バイオマス灰や石炭灰、塩素バイパスダスト等にも適用できる。その発生量が多く、セメント原料以外の有用な用途が実質的に無く、かつ塩素含有量も比較的多い点で都市焼却灰を対象とすることが好ましい。
都市ごみの焼却炉から排出される焼却灰のうち、主灰は、主としてストーカー炉の下部より燃え殻として排出される焼却灰であり、冷却焼却後に水と接触するため、水分を20%ないし50%(質量)程度含有する塊状物として得られる。また、その塩素含有量は、0.5ないし5.0%(質量)に及ぶ。一方、飛灰は、ストーカー炉の排ガスや流動床炉の排ガスより補足される微粉であり、一般に5ないし30%(質量)程度の割合で塩素を含有している。主灰および飛灰は、ともに塩素成分を含む可溶性成分量の変動範囲が大きい。
【0009】
上記主灰には、空き缶、針金等の異物が多く含まれる場合があり、これらをあらかじめ除去することが好ましい。また、主灰は塊状物であるため、あらかじめ平均粒径が500μm以下、好ましくは、200μm以下、さらに好ましくは、50ないし150μmとなるように調整することが必要である。さらに、主灰粉砕後においても、未粉砕物や粉砕前に除去しきれていない異物を除去することが好ましい。
【0010】
一方、飛灰は主灰に対して多量のダイオキシン類を含有しているため、予め脱ダイオキシン類処理をされていることが好ましい。脱ダイオキシン類の方法は特に限定されず公知の条件にて行えばよいが、例えば、飛灰を無酸素雰囲気下、300ないし600℃、好ましくは350℃ないし500℃の温度で処理すればよい。上記無酸素雰囲気下とは、酸素が完全に存在しない場合の他に、装置等の構造により不可避的に進入する酸素、被処理物に同伴される酸素等が含有されている態様を含むものである。脱ダイオキシン類は、無酸素雰囲気を窒素ガスによって形成し、加熱機により加熱を行う態様が好ましい。なお、脱ダイオキシン類処理における加熱により、水銀も揮発除去でき、比較的高濃度の水銀を含む都市焼却灰の前処理としては有効である。
【0011】
(焼却灰の水洗処理方法)
本発明の焼却灰の水洗処理方法は、焼却灰を水と混合してスラリーを調製し、該スラリーをろ過装置にかけて洗浄灰と洗浄水とに分離した後、さらにろ過残渣を水洗する焼却灰の水洗処理方法において、予めスラリー濃度とろ過時間の関係を求める工程と、前記ろ過装置にかけるスラリー濃度を求め、前記求められた関係より、ろ過時間を算出する工程と、前記スラリーを算出されたろ過時間まで前記ろ過装置にかける工程を有する。
以下、詳細に説明する。
【0012】
(1)スラリーを調製する工程
本発明においては、上記の如くして前処理された主灰、飛灰等の焼却灰あるいはその他の焼却灰をそれぞれ、或いは同時に水と混合してスラリー化する。スラリー化の方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜選択して行えばよい。例えば、スラリー貯槽内に、焼却灰及び水を入れて攪拌する方法が挙げられる。
本発明では、形状の安定したろ過残渣を効率的に得るために、スラリー調製時において、スラリー濃度を測定し、スラリーのろ過時間を調整する。効率的処理の観点から、スラリー濃度に応じてろ過時間を変更する。
スラリー調整時にその濃度を測定する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜選択して行えばよい。例えば、スラリーを採取してその濃度を測定してもよい。スラリー比重を求めて換算してもよい。また、スラリー濃度計/濁度系を、貯槽内に入れて測定する方法が挙げられる。
なおスラリーを調製する際の水の水温は特に限定されるものではないが、10℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましく、20℃以上が最も好ましい。この際に用いる水としては、一般的な工水、地下水、水道水等を用いることができる。
攪拌を行う時間は、全体が均一なスラリーとなる程度であればよく、攪拌装置にもよるが、一般的には5~60分間程度で十分である。
【0013】
(2)ろ過装置にかけて洗浄灰と洗浄水とに分離する工程
次いで、上記のようにして調製したスラリーを固液分離にかける。本発明において、当該分離におけるろ過装置は、特に限定されるものではなく、フィルタープレス又はベルトフィルターなども用いられるが、分離効率、脱水率、及び分離後の固形分の洗浄が容易な点でフィルタープレスのような容積式ろ過装置が好適に用いられる。
【0014】
(スラリー濃度とろ過時間の関係を求める工程)
スラリー濃度を変えたスラリーを作製し、フィルタープレスでろ過して、ろ室が充填された時間(ろ過時間)を求める。スラリー濃度とろ過時間との関係を例えばグラフにする。
(ろ過時間を算出する工程)
実際のスラリーの濃度を測定し、グラフからろ過時間を算出する。
(ろ過装置にかける工程)
算出された時間まで、スラリーをろ過装置にかける。なお、供給する焼却灰の性状(固形分濃度)が変わる際には、再度グラフよりろ過時間を算出し、その時間でろ過装置にかけるとよい。
【0015】
(3)ろ過残渣を水洗する工程
ろ過装置より水と固形分(ろ過残渣)とに分離した後、分離仕切れなかったろ過残渣に含まれる塩素分(多くはろ別しきれなかった洗浄水中に含まれる)を除去するため、固形分をさらに水洗するが、固体容積、すなわち、ろ過残渣の容積(フィルタープレスであればろ室容積、ベルトフィルターであればろ過残渣の容積)の2容量倍以上に設定することが好ましい。
【0016】
また、この洗浄工程における水温は、特に限定されるものではないが、10℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましく、20℃以上が最も好ましい。
本発明においては、塩素量を低減された、取扱い易い安定した残渣(洗浄灰)を効率的に得ることができる。
本発明において、上記洗浄工程で得られた残渣(洗浄灰:脱水ケーキ)は、カルシウム化合物、シリカを主成分とし、かつ塩素分が大幅に低減され、性状が安定しているため、セメント製造工場にてセメント原料として使用される。この場合、上記固形分は水分を含有しているため、原料調製行程でセメント原料とともにドライヤーを経てサスペンションプレヒーターに供給することが好ましい。また、本発明で得られる排水は、公知の排水処理を行い処理排水として排出すればよい。
本発明は、スラリー濃度を測定し、スラリー濃度にろ過時間を対応させることによって、取扱い易い安定した残渣(洗浄灰)を効率的に得る。特に、可溶性成分量の変動が大きい、ごみ焼却飛灰や塩素バイパスダスト等の焼却灰の処理にその有効性が高い。
【実施例0017】
以下、実験例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各実験例における焼却灰中の塩素濃度の測定は、試料の焼却灰を100℃で乾燥後、蛍光X線分析によって測定した。
【0018】
(スラリー濃度とろ過時間の関係を求める工程)
都市ゴミ焼却炉より得られたゴミ焼却飛灰に対してスラリー濃度が5.0質量%、7.5質量%、10.0質量%、15.0質量%(水温15℃)となるように、水を加えてスラリーを得た。これらのスラリーをそれぞれろ室容積が3mのフィルタープレスでろ過して、ろ室が充填された時間をろ過時間として求めた。各濃度でのろ過時間は、それぞれ4分、6分、9分、16分であった。スラリー濃度とろ過時間との関係を図1に示す。図1の各プロットから例えば、累乗近似で近似曲線(下記、式1)を得た。
y=119.28x-1.271・・・(1)
【0019】
実施例1~8および比較例1~4
(ろ過時間を算出する工程)
次に、4種のスラリーの濃度を測定したところ、それぞれ、5.7質量%、7.4質量%、11.0質量%、17.3質量%であった。ここで、式1からろ過時間が、それぞれ13.1分、9.3分、5.7分、3.1分と算出された。
(ろ過装置にかける工程)
4種のスラリーをそれぞれ算出された時間までろ過装置にかけた。その結果を表1に示す。さらにろ過残渣を、フィルタープレスのろ室容積の2容量倍相当の水量で正洗浄し、その結果を表1に示す。
なお、供給する焼却灰の性状(固形分濃度)がろ過の途中で変わる際には、再度式1よりろ過時間を算出し、その時間でろ過装置にかけるとよい。
【0020】
実施例1~8においては、算出されたろ過時間でろ室が充填されており、ろ過時間効率が良好であった。
しかしながら、比較例1、2のように、算出されたろ過時間よりも短い場合には、ろ室が充填されおらず、ろ過残渣が薄く、不均一であった。ろ過残渣の塩素濃度は十分に低下していたが、薄く不均質なろ過残差となっていたため、その後のセメント原料への利用の際、扱い難いものとなった。
また、比較例3、4のように、算出されたろ過時間よりも長い場合には、スラリーを送液することができず、ポンプ等に負荷がかかっていた。ろ過残渣の塩素濃度は十分に低下しており、得られたろ過残渣も均質であったが、必要以上に長い時間をかけるため、無駄であり効率が良くない。更に、装置に無駄な負荷をかけてしまうことになる。
また、実施例2、4、6、8のように、ろ過残差の2倍の水で水洗した場合には、ろ過残渣中の塩素濃度が低くなり、セメント原燃料として、好適に焼却灰を使用することができる。











【0021】
【表1】
図1