(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141829
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法、苦味が抑制された未精製オリーブオイル、未精製オリーブオイルの苦味抑制剤、及び未精製オリーブオイルの苦味を抑制する方法
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20241003BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20241003BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20241003BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
A23D9/00
A23L5/00 H
A23L19/00 A
A23L27/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053676
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西村 紗希
(72)【発明者】
【氏名】境野 眞善
(72)【発明者】
【氏名】谷津 穂高
(72)【発明者】
【氏名】古野 麻衣子
【テーマコード(参考)】
4B016
4B026
4B035
4B047
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LE05
4B016LG01
4B016LK02
4B016LK06
4B016LP02
4B016LP04
4B026DC01
4B026DG01
4B026DL02
4B026DP01
4B026DX01
4B035LC01
4B035LE03
4B035LG04
4B035LG12
4B035LG32
4B035LP21
4B047LB03
4B047LB08
4B047LB09
4B047LE05
4B047LG05
4B047LG06
4B047LG11
4B047LP02
(57)【要約】
【課題】ポリフェノール含有量が多くても、苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法等を提供する。
【解決手段】苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法が、第1の未精製オリーブオイルと第2の未精製オリーブオイルを混合する混合工程を含み、この第1の未精製オリーブオイルは、特定のケトン、特定の飽和脂肪族アルコール、及び特定の不飽和脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1つを含み、この特定のケトン、特定の飽和脂肪族アルコール、及び特定の不飽和脂肪族アルコールそれぞれの含有量の合計が1315μg/mL以上の範囲であり、この第2の未精製オリーブオイル中のポリフェノールの含有量が200mg/kg以上の範囲である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法であって、
第1の未精製オリーブオイルと第2の未精製オリーブオイルを混合する混合工程を含み、
当該第1の未精製オリーブオイルは、下記式(1)で示されるケトン、下記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び下記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1つを含み、
【化1】
【化2】
【化3】
当該式(1)~(3)中、R
1は炭素数1~6のアルキル基であり、R
2はメチル基又はエチル基であり、R
3は炭素数1~5のアルキル基であり、R
4は炭素数1~5のアルキル基であり、R
5はメチレン基又はエチレン基であり、
当該第1の未精製オリーブオイル中の当該式(1)で示されるケトン、当該式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び当該式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールそれぞれの含有量の合計が1315μg/mL以上の範囲であり、
当該第2の未精製オリーブオイル中のポリフェノールの含有量が200mg/kg以上の範囲である、苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法。
【請求項2】
下記条件(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも1つの条件が満たされ、
条件(a):前記第1の未精製オリーブオイル中の前記式(1)で示されるケトンの含有量の合計が50μg/mL以上、
条件(b):前記第1の未精製オリーブオイル中の前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコールの含有量の合計が290μg/mL以上、
条件(c):前記第1の未精製オリーブオイル中の前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールの含有量の合計が985μg/mL以上、
である、請求項1に記載された苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法。
【請求項3】
前記式(1)で示されるケトンは、3-ペンタノン、2-ヘプタノン、及び2-オクタノンからなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコールは、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、及び1-オクタノールからなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールは、トランス-2-ペンテン-1-オール、トランス-2-ヘキセン-1-オール、トランス-3-ヘキセン-1-オール、トランス-2-ヘプテン-1-オール、シス-2-ペンテン-1-オール、シス-2-ヘキセン-1-オール、シス-3-ヘキセン-1-オール、及びシス-2-ヘプテン-1-オールからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載された苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法。
【請求項4】
前記苦味が抑制された未精製オリーブオイル中のポリフェノールの含有量が160mg/kg以上の範囲である、請求項1又は2に記載された苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法。
【請求項5】
前記苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の前記式(1)で示されるケトン、前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールそれぞれの含有量の合計が1235μg/mL以上の範囲である、請求項1又は2に記載された苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法。
【請求項6】
苦味が抑制された未精製オリーブオイルであって、
ポリフェノール、並びに、下記式(1)で示されるケトン、下記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び下記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1つを含み、
【化4】
【化5】
【化6】
当該式(1)~(3)中、R
1は炭素数1~6のアルキル基であり、R
2はメチル基又はエチル基であり、R
3は炭素数1~5のアルキル基であり、R
4は炭素数1~5のアルキル基であり、R
5はメチレン基又はエチレン基であり、
当該苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の当該ポリフェノールの含有量が160mg/kg以上の範囲であり、
当該苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の当該式(1)で示されるケトン、当該式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び当該式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールそれぞれの含有量の合計が1235μg/mL以上の範囲であることを特徴とする苦味が抑制された未精製オリーブオイル。
【請求項7】
下記条件(d)~(f)からなる群から選択される少なくとも1つの条件が満たされ、
条件(d):前記苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の前記式(1)で示されるケトンの含有量の合計が36μg/mL以上の範囲であり、
条件(e):前記苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコールの含有量の合計が150μg/mL以上の範囲であり、
条件(f):前記苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールの含有量の合計が1030μg/mL以上の範囲、
である、請求項6に記載された苦味が抑制された未精製オリーブオイル。
【請求項8】
前記式(1)で示されるケトンとして3-ペンタノン、2-ヘプタノン、及び2-オクタノンからなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコールとして1-ペンタノール、1-ヘキサノール、及び1-オクタノールからなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールとしてトランス-2-ペンテン-1-オール、トランス-2-ヘキセン-1-オール、トランス-3-ヘキセン-1-オール、トランス-2-ヘプテン-1-オール、シス-2-ペンテン-1-オール、シス-2-ヘキセン-1-オール、シス-3-ヘキセン-1-オール、及びシス-2-ヘプテン-1-オールからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項6又は7に記載された苦味が抑制された未精製オリーブオイル。
【請求項9】
請求項6又は7に記載された苦味が抑制された未精製オリーブオイルを含む食品。
【請求項10】
未精製オリーブオイルの苦味抑制剤であって、
第1の未精製オリーブオイルを有効成分として含み、
当該第1の未精製オリーブオイルは、下記式(1)で示されるケトン、下記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び下記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1つを含み、
【化7】
【化8】
【化9】
当該式(1)~(3)中、R
1は炭素数1~6のアルキル基であり、R
2はメチル基又はエチル基であり、R
3は炭素数1~5のアルキル基であり、R
4は炭素数1~5のアルキル基であり、R
5はメチレン基又はエチレン基であり、
当該第1の未精製オリーブオイル中の当該式(1)で示されるケトン、当該式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び当該式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールそれぞれの含有量の合計が1315μg/mL以上の範囲であることを特徴とする未精製オリーブオイルの苦味抑制剤。
【請求項11】
未精製オリーブオイルの苦味を抑制する方法であって、
第1の未精製オリーブオイルと第2の未精製オリーブオイルを混合する混合工程を含み、
当該第1の未精製オリーブオイルは、下記式(1)で示されるケトン、下記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び下記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1つを含み、
【化10】
【化11】
【化12】
当該式(1)~(3)中、R
1は炭素数1~6のアルキル基であり、R
2はメチル基又はエチル基であり、R
3は炭素数1~5のアルキル基であり、R
4は炭素数1~5のアルキル基であり、R
5はメチレン基又はエチレン基であり、
当該第1の未精製オリーブオイル中の当該式(1)で示されるケトン、当該式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び当該式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールそれぞれの含有量の合計が1315μg/mL以上の範囲であり、
当該第2の未精製オリーブオイル中のポリフェノールの含有量が200mg/kg以上の範囲であることを特徴とする未精製オリーブオイルの苦味を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法、苦味が抑制された未精製オリーブオイル、未精製オリーブオイルの苦味抑制剤、及び未精製オリーブオイルの苦味を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
未精製オリーブオイルは、モクセイ科植物であるオリーブの果実から採取される植物油である。未精製オリーブオイルには、ステアリン酸、パルミチン酸等の固形グリセリドが約25質量%、リノール酸、オレイン酸等の液状グリセリドが約75質量%含まれており、古来食用油、化粧料、セッケン原料、薬用等に広く用いられてきている。未精製オリーブオイルには、微量成分としてポリフェノールが含まれることが知られている。ポリフェノールは未精製オリーブオイルの酸化安定性及び風味に寄与していると共に、機能性の一部を担っていると考えられている。
【0003】
未精製オリーブオイルに含まれるポリフェノールとして、ヒドロキシチロソール、チロソール、オレウロペイン、4-ヒドロキシ安息香酸、プロトカテク酸、没食子酸、コーヒー酸、アクテオシド等が知られている。
【0004】
未精製オリーブオイルは、オリーブ果実から得られる液相をオイル層と水層に分離して得られ、多くのポリフェノールは水層に移行する。そのため、必然的に未精製オリーブオイルに含まれるポリフェノールの含有量は低くなる。そこで、未精製オリーブオイルに含まれるポリフェノールの含有量の増加が検討された。特許文献1には、オリーブオイルにオリーブ果実由来水溶性成分を溶解させることにより得られるポリフェノール高含有オリーブオイルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリフェノールの含有量が多い未精製オリーブオイルは強い苦味を示す。本発明が解決しようとする課題は、ポリフェノールの含有量が多くても、苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法、当該未精製オリーブオイル、未精製オリーブオイルの苦味抑制剤、及び未精製オリーブオイルの苦味を抑制する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題に鑑み検討を重ね、ポリフェノールの含有量が多い未精製オリーブオイルと、特定の化合物を所定量以上含有する未精製オリーブオイルを混合すると、ポリフェノールの含有量が高くても、苦味が抑制された未精製オリーブオイルを製造できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
【0008】
本発明は、第1の未精製オリーブオイルと第2の未精製オリーブオイルを混合する混合工程を含み、当該第1の未精製オリーブオイルは、下記式(1)で示されるケトン、下記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び下記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1つを含み、当該式(1)~(3)中、R1は炭素数1~6のアルキル基であり、R2はメチル基又はエチル基であり、R3は炭素数1~5のアルキル基であり、R4は炭素数1~5のアルキル基であり、R5はメチレン基又はエチレン基であり、当該第1の未精製オリーブオイル中の当該式(1)で示されるケトン、当該式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び当該式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールそれぞれの含有量の合計が1315μg/mL以上の範囲であり、当該第2の未精製オリーブオイル中のポリフェノールの含有量が200mg/kg以上の範囲である、苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法に関する。
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
前記苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法において、好ましくは、下記条件(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも1つの条件が満たされ、
条件(a):前記第1の未精製オリーブオイル中の前記式(1)で示されるケトンの含有量の合計が50μg/mL以上、
条件(b):前記第1の未精製オリーブオイル中の前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコールの含有量の合計が290μg/mL以上、
条件(c):前記第1の未精製オリーブオイル中の前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールの含有量の合計が985μg/mL以上である。
【0013】
前記苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法において、好ましくは、前記式(1)で示されるケトンは、3-ペンタノン、2-ヘプタノン、及び2-オクタノンからなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコールは、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、及び1-オクタノールからなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールは、トランス-2-ペンテン-1-オール、トランス-2-ヘキセン-1-オール、トランス-3-ヘキセン-1-オール、トランス-2-ヘプテン-1-オール、シス-2-ペンテン-1-オール、シス-2-ヘキセン-1-オール、シス-3-ヘキセン-1-オール、及びシス-2-ヘプテン-1-オールからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0014】
前記苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法において、前記苦味が抑制された未精製オリーブオイル中のポリフェノールの含有量は、好ましくは160mg/kg以上の範囲である。
【0015】
前記苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法において、前記苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の前記式(1)で示されるケトン、前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールそれぞれの含有量の合計は、好ましくは1235μg/mL以上の範囲である。
【0016】
本発明は、ポリフェノール、並びに、下記式(1)で示されるケトン、下記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び下記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1つを含み、当該式(1)~(3)中、R1は炭素数1~6のアルキル基であり、R2はメチル基又はエチル基であり、R3は炭素数1~5のアルキル基であり、R4は炭素数1~5のアルキル基であり、R5はメチレン基又はエチレン基であり、当該苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の当該ポリフェノールの含有量が160mg/kg以上の範囲であり、当該苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の当該式(1)で示されるケトン、当該式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び当該式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールそれぞれの含有量の合計が1235μg/mL以上の範囲である、苦味が抑制された未精製オリーブオイルに関する。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
前記未精製オリーブオイルにおいて、好ましくは、下記条件(d)~(f)からなる群から選択される少なくとも1つの条件が満たされ、
条件(d):前記苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の前記式(1)で示されるケトンの含有量の合計が36μg/mL以上の範囲であり、
条件(e):前記苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコールの含有量の合計が150μg/mL以上の範囲であり、
条件(f):前記苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールの含有量の合計が1030μg/mL以上の範囲である。
【0021】
前記未精製オリーブオイルにおいて、好ましくは、前記式(1)で示されるケトンとして3-ペンタノン、2-ヘプタノン、及び2-オクタノンからなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコールとして1-ペンタノール、1-ヘキサノール、及び1-オクタノールからなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールとしてトランス-2-ペンテン-1-オール、トランス-2-ヘキセン-1-オール、トランス-3-ヘキセン-1-オール、トランス-2-ヘプテン-1-オール、シス-2-ペンテン-1-オール、シス-2-ヘキセン-1-オール、シス-3-ヘキセン-1-オール、及びシス-2-ヘプテン-1-オールからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0022】
本発明は、前記苦味が抑制された未精製オリーブオイルを含む食品に関する。
【0023】
また本発明は、第1の未精製オリーブオイルを有効成分として含み、当該第1の未精製オリーブオイルは、下記式(1)で示されるケトン、下記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び下記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1つを含み、当該式(1)~(3)中、R1は炭素数1~6のアルキル基であり、R2はメチル基又はエチル基であり、R3は炭素数1~5のアルキル基であり、R4は炭素数1~5のアルキル基であり、R5はメチレン基又はエチレン基であり、当該第1の未精製オリーブオイル中の当該式(1)で示されるケトン、当該式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び当該式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールそれぞれの含有量の合計が1315μg/mL以上の範囲である、未精製オリーブオイルの苦味抑制剤に関する。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
さらに本発明は、第1の未精製オリーブオイルと第2の未精製オリーブオイルを混合する混合工程を含み、当該第1の未精製オリーブオイルは、下記式(1)で示されるケトン、下記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び下記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1つを含み、当該式(1)~(3)中、R1は炭素数1~6のアルキル基であり、R2はメチル基又はエチル基であり、R3は炭素数1~5のアルキル基であり、R4は炭素数1~5のアルキル基であり、R5はメチレン基又はエチレン基であり、当該第1の未精製オリーブオイル中の当該式(1)で示されるケトン、当該式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び当該式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールそれぞれの含有量の合計が1315μg/mL以上の範囲であり、当該第2の未精製オリーブオイル中のポリフェノールの含有量が200mg/kg以上の範囲である、未精製オリーブオイルの苦味を抑制する方法に関する。
【0028】
【0029】
【0030】
【発明の効果】
【0031】
本発明の未精製オリーブオイルの製造方法は、ポリフェノールの含有量が多くても、苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法を提供する。本発明の未精製オリーブオイルは、ポリフェノールの含有量が多くても、苦味が抑制された未精製オリーブオイルである。本発明の未精製オリーブオイルの苦味抑制剤は、ポリフェノールの含有量が多い未精製オリーブオイルと混合すると苦味が抑制された未精製オリーブオイルを与える剤である。本発明の未精製オリーブオイルの苦味を抑制する方法は、ポリフェノールの含有量が多い未精製オリーブオイルの苦味を抑制する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明について更に詳細に説明する。
なお、数値範囲の「~」は、断りがなければ、以上から以下を表し、両端の数値をいずれも含む。また、数値範囲を示したときは、上限値および下限値を適宜組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示したものとする。
【0033】
[苦味が抑制された未精製オリーブオイル及び当該未精製オリーブオイルの製造方法]
本発明の苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法は、第1の未精製オリーブオイルと第2の未精製オリーブオイルを混合する混合工程を含む。前記混合方法は特に限定されない。
【0034】
本発明における未精製オリーブオイルとは、オリーブの実から圧搾、遠心分離等の方法により分離された油であって、その油が脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理、脱臭処理のうちの1種又は2種以上の精製処理を経ていないか、もしくはいずれの精製処理も経ていない該オリーブオイルをいう。好ましくは、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理、及び脱臭処理のいずれの精製処理をも経ていない該オリーブオイルである。なお、脱ガム処理は、油分中に含まれるリン脂質を主成分とするガム質を水和除去する工程である。脱酸処理は、アルカリ水で処理等することにより、油分中に含まれる遊離脂肪酸をセッケン分として除去する工程である。脱色処理は、油分中に含まれる色素を活性白土等に吸着させて除去する工程である。脱臭処理は、減圧下で水蒸気蒸留等することによって油分中に含まれる有臭成分を除去する工程である。
【0035】
オリーブの実の由来に特に制限はなく、日本国産であっても外国産であってもよい。
未精製オリーブオイルは、エキストラバージンオリーブオイル(エクストラバージンオリーブオイルともいう。)、バージンオリーブオイル、オーディナリーバージンオリーブオイル、ランパンテバージンオリーブオイル等として市場にも流通しており、いずれを用いてもよい。本発明においてはそのような市販品を用いてもよく、好ましくはエキストラバージンオリーブオイル及びバージンオリーブオイルから選ばれる一種または二種であり、より好ましくはエキストラバージンオリーブオイルである。なお、バージンオリーブオイルは、官能評価における判定基準により、エキストラバージンオリーブオイル、バージンオリーブオイル、オーディナリーバージンオリーブオイル、ランパンテバージンオリーブオイルの4つに区分されている。バージンオリーブオイルの基準は、国際オリーブ協会の定めた基準を適宜参照することができる。
【0036】
前記第1の未精製オリーブオイルは、下記式(1)で示されるケトン、下記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び下記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
前記式(1)~(3)中、R1は炭素数1~6のアルキル基であり、R2はメチル基又はエチル基であり、R3は炭素数1~5のアルキル基であり、R4は炭素数1~5のアルキル基であり、R5はメチレン基又はエチレン基である。
【0041】
前記アルキル基として、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0042】
前記式(3)で表される化合物が、二重結合の部分にシス型、トランス型等の立体異性体を含む場合、当該立体異性体は、シス型、トランス型のいずれの異性体であってよく、当該化合物が2以上の異性体を含んでいてもよい。
【0043】
R1~R5は1又は2以上の置換基を有していてもよい。2以上の置換基は互いに連結して環を形成してもよい。
【0044】
上記置換基は特に限定されないが、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基(芳香族ヘテロ環基)、又は脂肪族へテロ環基が好ましい。
【0045】
シクロアルキル基は、炭素数が3以上10以下のシクロアルキル基が好ましく、3以上8以下のシクロアルキル基がより好ましい。シクロアルキル基として、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。
【0046】
アルケニル基は、炭素数が2以上36以下のアルケニル基が好ましく、2以上18以下のアルケニル基がより好ましく、2以上6以下のアルケニル基が更に好ましい。アルケニル基として、例えばビニル、アリル、ブテニル、ヘキセニル等が挙げられる。
【0047】
アルキニル基は、炭素数が2以上36以下のアルキニル基が好ましく、2以上18以下のアルキニル基がより好ましく、2以上4以下のアルキニル基が更に好ましい。アルキニル基として、例えばエチニル、ブチニル、ヘキシニル等が挙げられる。
【0048】
アリール基は、炭素数6以上24以下のアリール基が好ましく、炭素数6以上12以下のアリール基がより好ましい。アリール基として、例えばフェニル基が挙げられる。
【0049】
芳香族ヘテロ環が縮合環である場合、単環の芳香族ヘテロ環のみからなる基に加えて、単環の芳香族ヘテロ環に他の環、例えば、芳香族炭化水素環、脂肪族炭化水素環又はヘテロ環が縮合した縮合ヘテロ環からなる基を包含する。芳香族ヘテロ環を構成する環構成ヘテロ原子の数は1個以上であればよく、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。また、芳香族ヘテロ環の環員数としては、3~8員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましい。芳香族ヘテロ環の炭素数は5以上24以下であることが好ましく、5以上18以下であることがより好ましく、5以上10以下であることが更に好ましい。芳香族ヘテロ環の炭素数は5以上24以下であることが好ましく、5以上18以下であることがより好ましく、5以上10以下であることが更に好ましい。5員環の芳香族ヘテロ環及び5員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、フラン環、チオフェン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インドリン環、インダゾール環の各環基が挙げられる。また、6員環の芳香族ヘテロ環及び6員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キナゾリン環の各環基が挙げられる。
【0050】
脂肪族ヘテロ環基は、脂肪族ヘテロ環のみからなる単環の基と、脂肪族ヘテロ環に他の環(例えば、脂肪族環)が縮合した脂肪族縮合ヘテロ環からなる基とを包含する。脂肪族ヘテロ環を構成する環構成ヘテロ原子の数は1個以上であればよく、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。また、脂肪族ヘテロ環の環員数としては、3~8員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましい。脂肪族ヘテロ環の炭素数は0以上24以下であることが好ましく、1以上18以下であることがより好ましく、更に好ましくは2以上10以下、特に好ましくは3以上5以下である。脂肪族ヘテロ環の好ましい具体例としては、ピロリジン環、オキソラン環、チオラン環、ピペリジン環、テトラヒドロフラン環、オキサン環(テトラヒドロピラン環)、チアン環、ピペラジン環、モルホリン環、キヌクリジン環、ピロリジン環、アゼチジン環、オキセタン環、アジリジン環、ジオキサン環、ペンタメチレンスルフィド環、γ-ブチロラクトン等を挙げることができる。
【0051】
上記置換基として、以下の基も挙げられる。
アルコキシ基(好ましくは炭素数1以上20以下のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、
アリールオキシ基(好ましくは炭素数6以上26以下のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1-ナフチルオキシ、3-メチルフェノキシ、4-メトキシフェノキシ等)、
ヘテロ環オキシ基(上記ヘテロ環基に-O-基が結合した基)、
アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2以上20以下のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2-エチルヘキシルオキシカルボニル等)、
アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数6以上26以下のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、1-ナフチルオキシカルボニル、3-メチルフェノキシカルボニル、4-メトキシフェノキシカルボニル等)、
アミノ基(好ましくは炭素数0以上20以下のアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、例えば、アミノ(-NH2)、N,N-ジメチルアミノ、N,N-ジエチルアミノ、N-エチルアミノ、アニリノ等)、
スルファモイル基(好ましくは炭素数0以上20以下のスルファモイル基、例えば、N,N-ジメチルスルファモイル、N-フェニルスルファモイル等)、
アシル基(アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アルキニルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基を含み、好ましくは炭素数1以上20以下のアシル基、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、オクタノイル、ヘキサデカノイル、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル、ベンゾイル、ナフトイル、ニコチノイル等)、
アシルオキシ基(アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、アルキニルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ヘテロ環カルボニルオキシ基を含み、好ましくは炭素数1以上20以下のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、オクタノイルオキシ、ヘキサデカノイルオキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、クロトノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ、ニコチノイルオキシ等)、
アリーロイルオキシ基(好ましくは炭素数7以上23以下のアリーロイルオキシ基、例えば、ベンゾイルオキシ等)、
カルバモイル基(好ましくは炭素数1以上20以下のカルバモイル基、例えば、N,N-ジメチルカルバモイル、N-フェニルカルバモイル等)、
アシルアミノ基(好ましくは炭素数1以上20以下のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1以上20以下のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、
アリールチオ基(好ましくは炭素数6以上26以下のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、1-ナフチルチオ、3-メチルフェニルチオ、4-メトキシフェニルチオ等)、
ヘテロ環チオ基(上記ヘテロ環基に-S-基が結合した基)、
アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1以上20以下のアルキルスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等)、
アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6以上22以下のアリールスルホニル基、例えば、ベンゼンスルホニル等)、
アルキルシリル基(好ましくは炭素数1以上20以下のアルキルシリル基、例えば、モノメチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル等)、
アリールシリル基(好ましくは炭素数6以上42以下のアリールシリル基、例えば、トリフェニルシリル等)、
ホスホリル基(好ましくは炭素数0以上20以下のリン酸基、例えば、-OP(=O)(RP)2)、
ホスホニル基(好ましくは炭素数0以上20以下のホスホニル基、例えば、-P(=O)(RP)2)、
ホスフィニル基(好ましくは炭素数0以上20以下のホスフィニル基、例えば、-P(RP)2)、スルホ基(スルホン酸基)、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルファニル基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)。RPは、水素原子又は置換基(好ましくは上記置換基から選択される基)である。
また、これらの置換基で挙げた各基は、上記置換基が更に置換していてもよい。
【0052】
前記式(1)で示されるケトン(以下、単に「ケトン」とも言う。)は、好ましくは、3-ペンタノン、2-ヘプタノン、及び2-オクタノンからなる群から選択される少なくとも1つを含む。前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール(以下、単に「飽和脂肪族アルコール」とも言う。)は、好ましくは、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、及び1-オクタノールからなる群から選択される少なくとも1つを含む。前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコール(以下、単に「不飽和脂肪族アルコール」とも言う。)は、好ましくは、トランス-2-ペンテン-1-オール、トランス-2-ヘキセン-1-オール、トランス-3-ヘキセン-1-オール、トランス-2-ヘプテン-1-オール、シス-2-ペンテン-1-オール、シス-2-ヘキセン-1-オール、シス-3-ヘキセン-1-オール、及びシス-2-ヘプテン-1-オールからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0053】
より好ましくは、前記式(1)で示されるケトンは、3-ペンタノン、2-ヘプタノン、及び2-オクタノンを含み、前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコールは、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、及び1-オクタノールを含み、かつ前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールは、シス-2-ペンテン-1-オール、シス-2-ヘキセン-1-オール、及びシス-3-ヘキセン-1-オールを含む。
【0054】
前記第1の未精製オリーブオイル中の前記式(1)で示されるケトン、前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールそれぞれの含有量の合計は1315μg/mL以上の範囲である。前記含有量の合計が1315μg/mL未満であると、製造される未精製オリーブオイルの苦味が十分に抑制されない。
前記含有量の合計は、好ましくは1350μg/mL以上の範囲であり、より好ましくは1450μg/mL以上の範囲であり、更に好ましくは1550μg/mL以上の範囲であり、更により好ましくは1600μg/mL以上の範囲であり、より一層好ましくは1800μg/mL以上の範囲であり、特に好ましくは2000μg/mL以上の範囲である。
【0055】
前記第2の未精製オリーブオイル中のポリフェノールの含有量は200mg/kg以上の範囲である。前記含有量は、好ましくは210mg/kg以上の範囲であり、より好ましくは220mg/kg以上の範囲であり、更に好ましくは230mg/kg以上の範囲である。さらに前記含有量は、250mg/kg以上、300mg/kg以上、350mg/kg以上、400mg/kg以上、500mg/kg以上、又は600mg/kg以上の範囲であってもよい。
【0056】
本発明の苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法において、好ましくは、下記条件(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも1つの条件が満たされる。更に好ましくは、下記条件(a)~(c)の全ての条件が満たされる。
条件(a):前記第1の未精製オリーブオイル中の前記式(1)で示されるケトンの含有量の合計が50μg/mL以上、
条件(b):前記第1の未精製オリーブオイル中の前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコールの含有量の合計が290μg/mL以上、
条件(c):前記第1の未精製オリーブオイル中の前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールの含有量の合計が985μg/mL以上である。
【0057】
前記条件(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも1つの条件が満たされると、本発明の苦味が抑制された未精製オリーブオイルの苦味がより抑制される。
【0058】
前記第1の未精製オリーブオイル中の前記式(1)で示されるケトンの含有量の合計は、より好ましくは100μg/mL以上の範囲であり、更に好ましくは150μg/mL以上の範囲であり、更により好ましくは200μg/mL以上の範囲であり、特に好ましくは250μg/mL以上の範囲である。
【0059】
前記第1の未精製オリーブオイル中の前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコールの含有量の合計は、より好ましくは300μg/mL以上の範囲であり、更に好ましくは350μg/mL以上の範囲であり、更により好ましくは400μg/mL以上の範囲であり、特に好ましくは500μg/mL以上の範囲である。
【0060】
前記第1の未精製オリーブオイル中の前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールの含有量の合計は、より好ましくは1000μg/mL以上の範囲であり、更に好ましくは1200μg/mL以上の範囲であり、更により好ましくは1400μg/mL以上の範囲であり、特に好ましくは1600μg/mL以上の範囲である。
【0061】
本発明の苦味が抑制された未精製オリーブオイルの製造方法において、当該苦味が抑制された未精製オリーブオイル中のポリフェノールの含有量は、好ましくは160mg/kg以上の範囲であり、より好ましくは170mg/kg以上の範囲であり、更に好ましくは180mg/kg以上の範囲である。さらに前記含有量は、200mg/kg以上、250mg/kg以上、300mg/kg以上、350mg/kg以上、400mg/kg以上、又は450mg/kg以上の範囲であってもよい。
【0062】
また、前記苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の前記式(1)で示されるケトン、前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールそれぞれの含有量の合計は、好ましくは1235μg/mL以上の範囲であり、より好ましくは1250μg/mL以上の範囲であり、更に好ましくは1350μg/mL以上の範囲であり、更により好ましくは1500μg/mL以上の範囲であり、特に好ましくは1600μg/mL以上の範囲である。前記含有量の合計が前記範囲であると、本発明の苦味が抑制された未精製オリーブオイルの苦味がより抑制される。
【0063】
本発明の苦味が抑制された未精製オリーブオイルにおいて、好ましくは、下記条件(d)~(f)からなる群から選択される少なくとも1つの条件が満たされる。更に好ましくは、下記条件(d)~(f)の全ての条件が満たされる。
条件(d):前記苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の前記式(1)で示されるケトンの含有量の合計が36μg/mL以上の範囲であり、
条件(e):前記苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコールの含有量の合計が150μg/mL以上の範囲であり、
条件(f):前記苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールの含有量の合計が1030μg/mL以上の範囲である。
【0064】
前記条件(d)~(f)からなる群から選択される少なくとも1つの条件が満たされると、本発明の苦味が抑制された未精製オリーブオイルの苦味がより抑制される。
【0065】
前記苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の前記式(1)で示されるケトンの含有量の合計は、より好ましくは40μg/mL以上の範囲であり、更に好ましくは60μg/mL以上の範囲であり、更により好ましくは80μg/mL以上の範囲であり、特に好ましくは100μg/mL以上の範囲である。
【0066】
前記苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコールの含有量の合計は、より好ましくは180μg/mL以上の範囲であり、更に好ましくは200μg/mL以上の範囲であり、更により好ましくは230μg/mL以上の範囲であり、特に好ましくは250μg/mL以上の範囲である。
【0067】
前記苦味が抑制された未精製オリーブオイル中の前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールの含有量の合計は、より好ましくは1050μg/mL以上の範囲であり、更に好ましくは1100μg/mL以上の範囲であり、更により好ましくは1200μg/mL以上の範囲であり、特に好ましくは1250μg/mL以上の範囲である。
【0068】
[苦味が抑制された未精製オリーブオイルの応用]
本発明の苦味が抑制された未精製オリーブオイルには、適宜任意の成分が配合されてもよい。任意の成分としては、例えば、乳化剤、香料、酸味料、甘味料、調味料、酸化防止剤、消泡剤、着色料、pH調整剤、増粘安定剤、食品保存料、生理活性物質等が挙げられる。
【0069】
本発明の苦味が抑制された未精製オリーブオイルは、食品に添加されてよい。添加方法は特に限定されず、例えば、本発明の苦味が抑制された未精製オリーブオイルがそのまま食品に添加されてもよいし、本発明の苦味が抑制された未精製オリーブオイルが食用油脂に溶かされ風味油の形態としてから食品に添加されてもよい。また、本発明の苦味が抑制された未精製オリーブオイルが添加された食用油脂、又は本発明の苦味が抑制された未精製オリーブオイルは、食品の調理、加工、あるいは製造等の後にふり掛けたり、塗布したりすること等により、その食品に添加してもよい。さらに前記食用油脂又は前記未精製オリーブオイルは、食品の調理、加工、あるいは製造等におけるほぐし油、炊飯油、フライ油、炒め油等の調理用油、練りこみ油、インジェクション用油、仕上げ油等の調味用油等に用いること等により、その食品に添加してもよい。
【0070】
本発明の苦味が抑制された未精製オリーブオイルが添加される食品は特に限定されないが、例えば、
食用油脂;
マーガリン、スプレッド、バター、マヨネーズ、ドレッシング、クリーム等の油脂加工食品(食用油脂を原料として含有する食品を指す);
ドーナツ、クッキー、パイ、ケーキ、パン、ピザ等のベーカリー食品類;
そば、うどん、ラーメン、パスタ等の麺類;
炊飯(米)、炒飯等の米飯類;
チーズ、バター、ヨーグルト等の乳製品;
ハンバーグ、ハム、ソーセージ等の畜肉加工食品;
ちくわ、蒲鉾等の水産加工食品;
コーンスープ、コンソメスープ、ポタージュ等のスープ類;
ドレッシング、マヨネーズ、中華の素、焼き肉のタレ等の調味料類やソース類;
ドーナツ、揚げパン、唐揚げ、天ぷら、コロッケ、ポテトフライ等のフライ食品;
野菜炒め、レバー炒め、ニラ炒め、もやし炒め、炒飯等の炒め食品;
ハンバーグ、ステーキ、餃子、目玉焼き等の焼成食品;冷凍食品;健康食品等が挙げられる。
【0071】
<食用油脂>
前記食用油脂は、食品分野で使用される通常の食用油脂であればよく、特に限定されない。前記食用油脂として、例えば、菜種油、大豆油、ヒマワリ油、綿実油、落花生油、米油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ごま油、エゴマ油、アマニ油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、やし油、パーム核油等の植物性油脂;
ラード、牛脂、鶏油、乳脂、魚油などの動物性油脂;
中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの合成油脂が挙げられる。また、上記植物性油脂、動物性油脂及び合成油脂のそれぞれを、硬化、分別及びエステル交換の少なくとも1種の処理をした加工油脂を使用することもできる。それら油脂類は単独で、又は混合されて用いられる。
【0072】
<副原料>
本発明の苦味が抑制された未精製オリーブオイルが添加される食用油脂又は油脂加工食品には、前記食用油脂に加えて、乳製品、増粘安定剤、食塩、塩化カリウムなどの塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸などの酸味料、糖類、甘味料、着色料、酸化防止剤、植物蛋白、卵および各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、果実、果汁、及び香辛料等の少なくとも1種を含有させてもよい。
【0073】
[未精製オリーブオイルの苦味抑制剤とその応用]
本発明の未精製オリーブオイルの苦味抑制剤は、前記第1の未精製オリーブオイルを有効成分として含む。前記第1の未精製オリーブオイル中の前記式(1)で示されるケトン、前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールそれぞれの含有量の合計は1315μg/mL以上の範囲である。前記含有量の合計が1315μg/mL未満であると、苦味抑制剤と、ポリフェノールの含有量が多い未精製オリーブオイルを混合しても、苦味が十分に抑制された未精製オリーブオイルが得られない。
前記含有量の合計は、好ましくは1350μg/mL以上の範囲であり、より好ましくは1450μg/mL以上の範囲であり、更に好ましくは1550μg/mL以上の範囲であり、更により好ましくは1600μg/mL以上の範囲であり、より一層好ましくは1800μg/mL以上の範囲であり、特に好ましくは2000μg/mL以上の範囲である。
【0074】
本発明の未精製オリーブオイルの苦味を抑制する方法は、前記第1の未精製オリーブオイルと前記第2の未精製オリーブオイルを混合する混合工程を含む。前記混合方法は特に限定されない。
【実施例0075】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
各対照例、実施例及び比較例において、各種物性は以下のとおりに測定ないし評価された。
<ポリフェノールの含有量>
各未精製オリーブオイル試料が、International Olive Council(IOC)の分析方法(https://www.internationaloliveoil.org/what-we-do/chemistry-standardisation-unit/standards-and-methods/に掲載されているCOI/T.20/Doc. No 29 -DETERMINATION OF PHENOLIC COMPOUNDS)に従って調製された。前記各未精製オリーブオイル試料中のポリフェノールの含有量は、機器として株式会社島津製作所製Nexera X2、カラムとしてPhenomenex社製Kinetex C18(内径2.1mm、長さ150mm、粒子径2.6μm)が使用され、下記条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定された。
【0077】
移動相:移動相Aとして0.2体積%酢酸水溶液、移動相Bとしてアセトニトリル/メタノール混合液(混合体積比1:1)が使用され、グラジエントプログラムにより、移動相A及びBの体積混合比を下記の通りに変化させた。
HPLC開始時~1分経過まで移動相Bが4体積%、
1分経過~43.75分経過まで移動相Bが4~60体積%、
43.75分経過~50分経過まで移動相Bが60~100体積%、
50分経過~60分経過まで移動相Bが100体積%、
60分経過~75分経過まで移動相Bが4体積%。
【0078】
流速:0.2ml/分、
カラム温度:27℃、
検出器:株式会社島津製作所製フォトダイオードアレイ(SPD-M20A)、
検出条件:280nm、40℃、
注入量:5μL。
【0079】
<ケトン、飽和脂肪族アルコール、及び不飽和脂肪族アルコールの含有量>
前記各未精製オリーブオイル試料1.5gが10mLのガラスバイアル中に量り取られ、当該ガラスバイアル中の前記各未精製オリーブオイル試料に、内標として1.611mg/mLの4-メチル-2-ペンタノールのメタノール溶液5μLが添加されて(Eur. J. Lipid. Sci. Technol., 2015, vol. 117, p514-522参照)、前記各未精製オリーブオイル試料中のケトン、飽和脂肪族アルコール、及び不飽和脂肪族アルコールの含有量が、機器としてLECOジャパン合同会社製GC-Tof-MS Pegasus(登録商標)BT、カラムとしてアジレント・テクノロジー株式会社製DB-WAX-UI(内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm)が使用され、下記条件で固相マイクロ抽出(SPME:Solid phase micro extraction)法により測定された。
【0080】
加温:40℃、2分、
吸着材:StableFlex50/30μm、Supelco社製DVB/CAR/PDMS
捕集時間:40℃、40分、
キャリアガス:ヘリウム、
流速:1.07ml/分、
オーブン温度:40℃で10分間、その後3℃/分の昇温速度で昇温し、200℃で10分間、
スキャン範囲:m/z=45-400、
スプリット比:1:10、
イオン源温度:250℃、
イオン化:EI、
イオン化電圧:70V。
【0081】
<苦味の官能評価>
4名のパネルが、ポリスポイトで各対照例、実施例及び比較例の未精製オリーブオイルを採取して口腔内にふくませ、当該未精製オリーブオイルの苦みを評価し、下記基準に従って評価した。評点はパネル全員の合議で算出し、B~S評価を合格とした。
-苦味の評価基準-
S:苦味が非常に弱い
A:苦味が弱い
B:苦味がややあるが許容範囲内
C:苦味がある
D:苦味が強い
E:苦味が非常に強い
【0082】
各対照例、実施例及び比較例で使用された各未精製オリーブオイルは、以下の通りである。
[第1の未精製オリーブオイル]
試料1:オーストラリア産未精製オリーブオイル(ポリフェノールの含有量78mg/kg)
試料2:オリースール社製Santiago(ポリフェノールの含有量160mg/kg)
試料3:オーストラリア産未精製オリーブオイル(ポリフェノールの含有量180mg/kg)
試料4:オーストラリア産未精製オリーブオイル(ポリフェノールの含有量170mg/kg)
試料5:スペイン産未精製オリーブオイル(ポリフェノールの含有量152mg/kg)
試料6:イタリア産未精製オリーブオイル(ポリフェノールの含有量165mg/kg)
[第2の未精製オリーブオイル]
試料7:piccolocampagna社製Piccolo(ポリフェノールの含有量661mg/kg)
試料8:スペイン産未精製オリーブオイル(ポリフェノールの含有量231mg/kg)
【0083】
前記各未精製オリーブオイル中の前記式(1)で示されるケトン、前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールの含有量を、表1に示す。
【0084】
【0085】
[実施例1]
試料1と試料7を、試料1の含有量が35質量%となるように混合して未精製オリーブオイルを得た。当該未精製オリーブオイルの苦味を前述の基準に従って評価すると共に、当該未精製オリーブオイル中のポリフェノール、前記式(1)で示されるケトン、前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールの含有量を前述の方法で測定した。結果を表2に示す。
【0086】
[実施例2]
試料1に代えて試料2を使用し、試料2の含有量を40質量%に変更する以外、実施例1と同様にした。結果を表2に示す。
【0087】
[実施例3]
試料1に代えて試料3を使用し、試料3の含有量を40質量%に変更する以外、実施例1と同様にした。結果を表2に示す。
【0088】
[実施例4]
試料1に代えて試料4を使用し、試料4の含有量を40質量%に変更する以外、実施例1と同様にした。結果を表2に示す。
【0089】
[比較例1]
試料1に代えて試料5を使用し、試料5の含有量を40質量%に変更する以外、実施例1と同様にした。結果を表2に示す。
【0090】
[比較例2]
試料1に代えて試料6を使用し、試料6の含有量を40質量%に変更する以外、実施例1と同様にした。結果を表2に示す。
【0091】
[対照例1]
なお、対照例1として、試料7の苦味を前述の基準に従って評価すると共に、試料7中の前記式(1)で示されるケトン、前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールの含有量を前述の方法で測定した。結果を表2に示す。表2中の「合計」は、前記ケトン、飽和脂肪族アルコール、及び不飽和脂肪族アルコールの含有量の合計である。
【0092】
[実施例5]
試料1と試料8を使用し、試料1の含有量が10質量%となるように混合して未精製オリーブオイルを得た。当該未精製オリーブオイルについて実施例1と同様に評価及び測定した。結果を表2に示す。
【0093】
[比較例3]
試料1に代えて試料5を使用し、試料5の含有量を10質量%に変更する以外、実施例5と同様にした。結果を表2に示す。
【0094】
[対照例2]
なお、対照例2として、試料8の苦味を前述の基準に従って評価すると共に、試料8中の前記式(1)で示されるケトン、前記式(2)で示される飽和脂肪族アルコール、及び前記式(3)で示される不飽和脂肪族アルコールの含有量を前述の方法で測定した。結果を表2に示す。表2中の「合計」は、前記ケトン、飽和脂肪族アルコール、及び不飽和脂肪族アルコールの含有量の合計である。
【0095】
【0096】
得られた各未精製オリーブオイルにおいて、第1の未精製オリーブオイル中のケトン、飽和脂肪族アルコール、及び不飽和脂肪族アルコールの含有量の合計が1315μg/mL未満である比較例1~3の未精製オリーブオイルは苦味を有していた。一方、前記含有量の合計が1315μg/mL以上である実施例1~5の未精製オリーブオイルの苦味評価は合格であった。