(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141834
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の酸化膜厚測定方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3205 20060101AFI20241003BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20241003BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/88 Z
H01L21/66 P
H01L27/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053681
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草野 健一郎
【テーマコード(参考)】
4M106
5F033
5F038
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106AA13
4M106CA10
4M106CA48
4M106DH04
5F033GG01
5F033GG02
5F033HH04
5F033JJ01
5F033MM20
5F033MM21
5F033PP06
5F033QQ08
5F033RR04
5F033SS11
5F033VV12
5F033XX34
5F033XX37
5F038CA02
5F038CA13
5F038CD12
5F038DT12
(57)【要約】
【課題】酸化膜の厚さを容易に測定することが可能な半導体装置及び半導体装置の酸化膜厚測定方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体素子及び1以上のトレンチが形成される基板と、トレンチ内に配置される酸化膜と、基板のトレンチが形成されるトレンチ領域と、トレンチが形成されずに半導体素子が形成される非トレンチ領域との境界を跨いで、非トレンチ領域からトレンチ領域の酸化膜に渡って配置される配線と、を備え、配線は、トレンチを形成する壁面の一部を覆う。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子及び1以上のトレンチが形成される基板と、
前記トレンチ内に配置される酸化膜と、
前記基板の前記トレンチが形成されるトレンチ領域と、前記トレンチが形成されずに前記半導体素子が形成される非トレンチ領域との境界を跨いで、前記非トレンチ領域から前記トレンチ領域の前記酸化膜に渡って配置される配線と、
を備え、
前記配線は、前記トレンチを形成する壁面の一部を覆う、半導体装置。
【請求項2】
前記配線は、前記基板を平面視して、複数の蛇行部を有するミアンダ状に形成され、
前記境界は、前記基板を平面視して、前記蛇行部に沿って形成されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記トレンチ及び前記酸化膜は、前記基板を平面視して、前記基板において第1方向に延伸して形成され、
前記配線は、前記基板を平面視して、前記第1方向と交差する第2方向に延伸して、前記トレンチ及び前記酸化膜を横切る部分を有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記トレンチ及び前記酸化膜は、前記第2方向に間隔を空けて、複数本配列される、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記配線は、前記トレンチ及び前記酸化膜を前記第1方向において間欠的に横切るように、ミアンダ状に形成される、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体装置は、前記基板のスクライブラインに形成される請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体素子及び1以上のトレンチが形成される基板と、前記トレンチ内に配置される酸化膜と、前記基板の前記トレンチが形成されるトレンチ領域と、前記トレンチが形成されずに前記半導体素子が形成される非トレンチ領域との境界を跨いで、前記非トレンチ領域から前記トレンチ領域の前記酸化膜に渡って配置される配線と、を備え、前記配線は、前記トレンチを形成する壁面の一部を覆う半導体装置の酸化膜厚測定方法であって、
前記酸化膜が第1厚さのときの前記配線の第1抵抗値を測定するステップと、
前記酸化膜が前記第1厚さよりも小さい第2厚さのときの前記配線の第2抵抗値を測定するステップと、
前記第1抵抗値及び前記第2抵抗値に基づき、前記第2厚さを測定する測定ステップと、
を含む半導体装置の酸化膜厚測定方法。
【請求項8】
半導体素子及び1以上のトレンチが形成される基板と、前記トレンチ内に配置される酸化膜と、前記基板の前記トレンチが形成されるトレンチ領域と、前記トレンチが形成されずに前記半導体素子が形成される非トレンチ領域との境界を跨いで、前記非トレンチ領域から前記トレンチ領域に渡って配置される配線と、を備え、前記配線は、前記トレンチを形成する壁面の一部を覆い、前記トレンチ及び前記酸化膜は、前記基板を平面視して、前記基板において第1方向に延伸して形成され、前記配線は、前記基板を平面視して、前記第1方向と交差する第2方向に延伸して、前記トレンチ及び前記酸化膜を横切る部分を有する半導体装置の酸化膜厚測定方法であって、
前記酸化膜が第1厚さのときの前記配線の第1抵抗値を測定するステップと、
前記酸化膜が前記第1厚さよりも小さい第2厚さのときの前記配線の第2抵抗値を測定するステップと、
前記第1抵抗値及び前記第2抵抗値に基づき、前記第2厚さを測定する測定ステップと、
を含む半導体装置の酸化膜厚測定方法。
【請求項9】
前記半導体装置は、前記基板のスクライブラインに形成される請求項7または8に記載の半導体装置の酸化膜厚測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の酸化膜厚測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置として、STI構造を有する半導体装置が開示されている(例えば特許文献1)。STI構造を有する半導体装置では、基板の表面に形成された1以上のトレンチを埋めるように酸化膜が形成され、当該酸化膜の表面が平坦化される。これにより、基板の表面に形成された複数の半導体素子がトレンチにより絶縁される。
【0003】
ここで、酸化膜の厚さが小さい場合、トレンチの肩部が露出し、又は、当該肩部に形成される酸化膜が薄くなり得る。これにより半導体素子間に寄生トランジスタが発生し、トランジスタの特性が所望の特性に対して変化し得る。また、酸化膜の耐圧が低下して経時絶縁破壊(Time Dependant Dielectric Breakdown:TDDB:)が生じ易くなる。従って、半導体素子を適切に絶縁するためには、トレンチを埋めこまれている酸化膜の厚さを確保することが重要である。なお、トレンチの肩部は、トレンチが形成されるトレンチ領域とトレンチが形成されずに半導体素子が形成される非トレンチ領域との境界付近の領域である。
【0004】
TDDBなどを防止するため、従来の半導体装置の製造工程では、酸化膜が適切な厚さを有しているかを確認する方法として、半導体装置を裁断して酸化膜の断面を確認する方法、トランジスタのI-V特性(Current-Voltage characteristic)を確認する方法などを採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、量産される半導体装置の全てについて酸化膜の厚さを測定することが困難であり、半導体装置の製造時間を短縮する上で改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記の事情を踏まえ、酸化膜の厚さを容易に測定することが可能な半導体装置及び半導体装置の酸化膜厚測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る半導体装置は、半導体素子及び1以上のトレンチが形成される基板と、前記トレンチ内に配置される酸化膜と、前記基板の前記トレンチが形成されるトレンチ領域と、前記トレンチが形成されずに前記半導体素子が形成される非トレンチ領域との境界を跨いで、前記非トレンチ領域から前記トレンチ領域の前記酸化膜に渡って配置される配線と、を備え、前記配線は、前記トレンチを形成する壁面の一部を覆う。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る半導体装置の酸化膜厚測定方法は、半導体素子及び1以上のトレンチが形成される基板と、前記トレンチ内に配置される酸化膜と、前記基板の前記トレンチが形成されるトレンチ領域と、前記トレンチが形成されずに前記半導体素子が形成される非トレンチ領域との境界を跨いで、前記非トレンチ領域から前記トレンチ領域の前記酸化膜に渡って配置される配線と、を備え、前記配線は、前記トレンチを形成する壁面の一部を覆う半導体装置の酸化膜厚測定方法であって、前記酸化膜が第1厚さのときの前記配線の第1抵抗値を測定するステップと、前記酸化膜が前記第1厚さよりも小さい第2厚さのときの前記配線の第2抵抗値を測定するステップと、前記第1抵抗値及び前記第2抵抗値に基づき、前記第2厚さを測定する測定ステップと、を含む。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る半導体装置の酸化膜厚測定方法は、半導体素子及び1以上のトレンチが形成される基板と、前記トレンチ内に配置される酸化膜と、前記基板の前記トレンチが形成されるトレンチ領域と、前記トレンチが形成されずに前記半導体素子が形成される非トレンチ領域との境界を跨いで、前記非トレンチ領域から前記トレンチ領域に渡って配置される配線と、を備え、前記配線は、前記トレンチを形成する壁面の一部を覆い、前記トレンチ及び前記酸化膜は、前記基板を平面視して、前記基板において第1方向に延伸して形成され、前記配線は、前記基板を平面視して、前記第1方向と交差する第2方向に延伸して、前記トレンチ及び前記酸化膜を横切る部分を有する半導体装置の酸化膜厚測定方法であって、前記酸化膜が第1厚さのときの前記配線の第1抵抗値を測定するステップと、前記酸化膜が前記第1厚さよりも小さい第2厚さのときの前記配線の第2抵抗値を測定するステップと、前記第1抵抗値及び前記第2抵抗値に基づき、前記第2厚さを測定する測定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、酸化膜の厚さを容易に測定することが可能な半導体装置及び半導体装置の酸化膜厚測定方法を提供することが可能となる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置を含むウエハを平面視した図である。
【
図2A】
図2Aは、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置の構成を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置の構成を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、酸化膜2の厚さと配線3の抵抗値との間の相関性について説明するための図である。
【
図3B】
図3Bは、酸化膜2の厚さと配線3の抵抗値との間の相関性について説明するための図である。
【
図3C】
図3Cは、酸化膜2の厚さと配線3の抵抗値との間の相関性について説明するための図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置の酸化膜厚測定方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置の変形例を説明するための図である。
【
図6A】
図6Aは、本開示の第2実施形態にかかる半導体装置の構成を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、本開示の第2実施形態にかかる半導体装置の構成を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、本開示の第2実施形態にかかる半導体装置の酸化膜厚測定方法を説明するための図である。
【
図7B】
図7Bは、本開示の第2実施形態にかかる半導体装置の酸化膜厚測定方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本開示の第2実施形態にかかる半導体装置の第1変形例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、本開示の第2実施形態にかかる半導体装置の第2変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0014】
[第1実施形態]
(半導体装置の構成)
図1は、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置を含むウエハを平面視した図である。
【0015】
ウエハWは、半導体素子10が形成される半導体基板である。具体的には、ウエハはSi(シリコン)を含むSi基板である。なお、ウエハWは、Si基板に限定されず、SiC(シリコンカーバイド)を含む基板、GaAs(ガリウム砒素)を含む基板などでもよい。
【0016】
ウエハWには、所定幅のスクライブライン領域SLおよびアクティブ領域ACが設けられている。スクライブライン領域SLには、テスト用素子群(Test Element Group:TEG)としての半導体装置100が形成されている。アクティブ領域ACは、ウエハWのうち後述するトレンチが形成されない非トレンチ領域と解釈してよい。
図1に示す領域Xは、複数のスクライブライン領域SLの内、第1実施形態にかかる半導体装置100が形成される領域である。
図2A及び
図2Bを参照して、第1実施形態にかかる半導体装置100の構成を説明する。
【0017】
図2A及び
図2Bは、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置の構成を示す図である。
図2Aには、
図1の領域Xを拡大した図が示されている。
図2Bには、
図2Aに示す半導体装置100のA-A線断面が示されている。
【0018】
半導体装置100は、半導体素子及び1以上のトレンチ1が形成される基板20と、トレンチ1内に配置される酸化膜2と、配線3とを備える。
【0019】
基板20は、
図1に示すウエハWの一部である。トレンチ1は、方向D1に間隔を空けて複数配列されている。酸化膜2の材料は、用途、目的などに応じて適宜選択可能であり、一例としてシリコン酸化膜が挙げられる。
【0020】
配線3は、方向D1と交差する方向D2に延伸し、基板20上に配置される導電部材である。配線3は、ゲート電極、ドレイン電極、ソース電極などに相当する電極であり、配線3の材料は、用途、目的などに応じて適宜選択可能であり、一例としてPoly Si(多孔質シリコン)が挙げられる。
【0021】
図2Aに示すように、配線3は、中央部が基板20上の境界30と重なるように、基板20に配置されている。具体的には、配線3は、境界30を跨いで、アクティブ領域AC(非トレンチ領域)からトレンチ領域TCの酸化膜2に渡って配置される。境界30は、基板20のトレンチ1が形成されるトレンチ領域TCと、アクティブ領域ACとが接する部分である。
【0022】
図2Bに示すように、配線3は、その表面に段差部4を有すると共に、トレンチ1を形成する壁面1Aの一部を覆っている。配線3の一部は、アクティブ領域ACに配置され、配線3の残りの部分は、トレンチ1の内部に配置されている。当該部分は、トレンチ1を形成する壁面1Aの一部と覆い、かつ、酸化膜2の上面の一部を覆う。このように配線3は段差部4を有することにより、配線3の断面積は段差が無い場合に比べて大きくなる。
【0023】
(半導体装置の製造方法)
次に、第1実施形態にかかる半導体装置100の製造方法について簡単に説明する。
【0024】
まず基板20のアクティブ領域ACを覆うようにシリコン酸化膜を形成する。次に公知のCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いてシリコン酸化膜を覆うようにシリコン窒化膜を形成する。次に、公知のフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜にパターニングを施す。
【0025】
次に、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜をマスクとして基板20をエッチングすることにより、基板20にトレンチ1を形成する。次に、公知のCVD法を用いて、基板20を覆うように、SiO2等の絶縁体で構成される酸化膜2を形成する。酸化膜2は、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の上面を覆う厚さで形成される。先の工程で形成されたトレンチ1には、酸化膜2が埋め込まれる。
【0026】
次に、公知のCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて酸化膜2を平坦化する。具体的には、CMP法による平坦化においては、研磨液(スラリー)を流しながら酸化膜2を研磨する。次に、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜をエッチングにより除去する。
【0027】
次に、公知の熱酸化法を用いて基板20に絶縁膜を形成する。続いて、公知のCVD法を用いて、絶縁膜上にポリシリコン膜を形成する。次に、公知のフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術により、絶縁膜及びポリシリコン膜をパターニングして、配線3を形成する。
【0028】
次に、酸化膜2の厚さと配線3の抵抗値との間の相関性について説明する。
図3A、
図3B及び
図3Cは、酸化膜2の厚さと配線3の抵抗値との間の相関性について説明するための図である。
【0029】
図3Aには、正常に成膜された酸化膜2及び配線3の断面が示されている。酸化膜2が正常に成膜された場合、酸化膜2の上面とアクティブ領域ACの上面とが略同じ高さに位置するため、酸化膜2とアクティブ領域ACの間に段差が発生しない。従って、アクティブ領域ACから酸化膜2に渡って形成される配線3の断面は、平らな板状となる。
【0030】
図3Bには、
図3Aの酸化膜2に比べて、厚さが小さくなった酸化膜2が示されている。トレンチ1の深さに対して酸化膜2の厚さが小さい場合、酸化膜2の上面の位置は、アクティブ領域ACの上面の位置と異なるため、酸化膜2とアクティブ領域ACの間に段差が発生する。このため、配線3の一部がトレンチ1の内部に入る形となることで、アクティブ領域ACから酸化膜2に渡って形成される配線3には、段差部4が形成される。
【0031】
このように段差部4が形成される配線3の断面積は、配線3の一部がトレンチ1の内部に入る形となることで、
図3Aに示す配線3の断面積よりも大きくなる。そして、
図3Aに示す配線3と
図3Bに示す配線3のそれぞれの長さが等しい場合、配線3の断面積が大きくなるほど、配線3の抵抗値は小さくなる。
【0032】
図3Cには、さらに厚さが小さくなった酸化膜2が示されている。
図3Cに示すように酸化膜2が薄くなると、配線3の断面積がより大きくなり、配線3の抵抗値がさらに小さくなる。
【0033】
このように、酸化膜2の厚さと配線3の抵抗値との間に相関性があるため、配線3の抵抗値を測定することによって、酸化膜2の厚さを測定することが可能である。
図4を参照して、第1実施形態にかかる半導体装置100の酸化膜厚測定方法について説明する。
【0034】
(酸化膜厚測定方法)
図4は、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置の酸化膜厚測定方法を説明するための図である。
図4には、横軸を酸化膜2の厚さとし、縦軸を配線3の抵抗値とするグラフが示されている。グラフには、酸化膜2の厚さと配線3の抵抗値とを示す複数のデータ点(a点、b点、c点)がプロットされている。
【0035】
a点に対応するThaは、
図3Aに示す酸化膜2の厚さを表し、a点に対応するRaは、
図3Aに示す配線3の抵抗値を表す。
【0036】
b点に対応するThbは、
図3Bに示す酸化膜2の厚さを表し、b点に対応するRbは、
図3Bに示す配線3の抵抗値を表す。
【0037】
c点に対応するThcは、
図3Cに示す酸化膜2の厚さを表し、c点に対応するRcは、
図3Cに示す配線3の抵抗値を表す。
【0038】
図4に示すように、Thaを基準にして酸化膜2の厚さが小さくなるにつれて、配線3の抵抗値は、Raを基準にして小さくなる傾向がある。このように、酸化膜2の厚さと配線3の抵抗値との間には相関性があるため、配線3の抵抗値を測定することにより、トレンチ1に埋め込まれている酸化膜2の厚さを測定することが可能である。
【0039】
第1実施形態にかかる酸化膜厚測定方法は、酸化膜2が第1厚さのときの配線3の第1抵抗値を測定するステップと、酸化膜2が第1厚さよりも小さい第2厚さのときの配線3の第2抵抗値を測定するステップとを含む。さらに、第1実施形態にかかる酸化膜厚測定方法は、測定した第1抵抗値及び第2抵抗値に基づき、第2厚さを測定する測定ステップを含む。
【0040】
具体的には、RaとRbとの差分、RaとRcとの差分などを予め収集し、これらが検出されたときの酸化膜2の厚さの測定値と当該差分とを対応付けたデータを、メモリに保存する。その後、
図1に示すウエハW上に設けられている半導体装置100の配線3の抵抗値を測定し、上記のデータに測定した抵抗値を照合することで、酸化膜2の厚さを測定することができる。
【0041】
これにより、例えば点aの抵抗値(Ra)を基準にして、測定した抵抗値(例えばRb)が特定範囲内にある場合には、
図1に示す半導体素子10が形成されるアクティブ領域ACのトレンチに埋め込まれている酸化膜2が正常に形成されていると判定可能である。一方、測定した抵抗値が特定範囲内にない場合には、酸化膜2が薄い、つまり酸化膜2が正常に形成されていないと判定可能である。
【0042】
[第1実施形態の変形例]
図5は、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置の変形例を説明するための図である。
図5に示す半導体装置100はミアンダ状の配線3を備え、当該配線3は基板20を平面視して複数の蛇行部40を有する。配線3の中央部は、基板20を平面視して、基板20上の境界30と重なるように、ミアンダ状に配置されている。トレンチ1とアクティブ領域ACとの境界30は、基板20を平面視して、配線3の蛇行部40に沿って形成されている。
【0043】
ミアンダ状に形成された配線3を用いることにより、第1実施形態の直線状の配線3に比べて、ミアンダ状の配線3の配線長が長くなるため、各トレンチ1内の酸化膜2の厚さが小さくなったときの配線3の抵抗値の変化が大きくなり、抵抗値の測定感度が向上する。
【0044】
(作用・効果)
以上に説明したように、第1実施形態にかかる半導体装置100及び半導体装置100の酸化膜厚測定方法では、アクティブ領域AC(非トレンチ領域)からトレンチ領域TCの酸化膜2に渡って配置される配線3がトレンチ1を形成する壁面1Aの一部を覆うように構成されている。
【0045】
この構成により、酸化膜2の厚さが小さくなるほど配線3の抵抗値が小さくなるため、配線3の抵抗値を測定することにより、トレンチ1に埋め込まれている酸化膜2の厚さを測定することが可能である。このため、アクティブ領域ACに形成される半導体装置を裁断して酸化膜の断面を確認し、或いはアクティブ領域ACに形成されるトランジスタのI-V特性を確認することなく、STI構造における酸化膜の厚さを容易に測定することが可能となる。従って、量産される半導体装置の製造時間を短縮することが可能である。
【0046】
また、第1実施形態にかかる半導体装置100は、基板20のスクライブライン(スクライブライン領域SL)に形成されることで、アクティブ領域ACを狭めることなく酸化膜2の厚さを測定することができる。従って、量産される半導体装置の製造数量を減らすことなく、STI構造における酸化膜の厚さを容易に測定することが可能となる。
【0047】
[第2実施形態]
図6A及び
図6Bは、本開示の第2実施形態にかかる半導体装置の構成を示す図である。
図6Aには、基板20を平面視したときの半導体装置100が示されている。
【0048】
半導体装置100のトレンチ1及び酸化膜2は、基板20を平面視して、基板20において第1方向に延伸して形成されている。半導体装置100の配線3は、基板20を平面視して、第1方向と交差する第2方向に延伸して、トレンチ1及び酸化膜2を横切る部分31を有する。
【0049】
図6Bには、
図6Aに示す半導体装置100のB-B線断面が示されている。
図6Bに示すように、配線3は、アクティブ領域ACから酸化膜2の上面に渡って配置され、さらに、当該酸化膜2の上面からアクティブ領域ACに渡って配置されている。つまり配線3は、一部領域が、トレンチ1の開口部に形成される2つの境界30を跨ぎ、かつ、トレンチ1内の酸化膜2の上面全体を覆うように、形成されている。
【0050】
図7A及び
図7Bは、本開示の第2実施形態にかかる半導体装置の酸化膜厚測定方法を説明するための図である。
【0051】
図7Aには、酸化膜2が正常に成膜された場合、つまり、酸化膜2の上面とアクティブ領域ACの上面とが略同じ高さに位置する場合の配線3の断面が示されている。酸化膜2が正常に成膜された場合、酸化膜2の上面とアクティブ領域ACの上面とが略同じ高さに位置するため、酸化膜2とアクティブ領域ACの間に段差が発生しない。従って、アクティブ領域ACから酸化膜2に渡って形成される配線3の断面は、平らな板状となる。
【0052】
図7Bには、
図7Aの酸化膜2に比べて、厚さが小さくなった酸化膜2が示されている。トレンチ1の深さに対して酸化膜2の厚さが小さい場合、酸化膜2の上面の位置は、アクティブ領域ACの上面の位置と異なるため、酸化膜2とアクティブ領域ACの間に段差が発生する。このため、配線3の一部領域、つまり酸化膜2と対向する箇所が、トレンチ1の内部に入る形となることで、配線3の一部領域は、トレンチ1の開口部からトレンチ1の底部に向かって窪む凹状に形成される。
【0053】
従って、
図7Bに示す配線3の長さは、
図7Aに示す配線3よりも長くなるため、
図7Bに示す配線3の抵抗値は、
図7Aに示す配線3の抵抗値と異なる値を示す。
【0054】
前述の通り、酸化膜2の厚さと配線3の抵抗値との間に相関性があるため、第1実施形態と同様に、配線3の抵抗値を測定することにより、トレンチ1に埋め込まれている酸化膜2の厚さを測定可能である。
【0055】
[第2実施形態の第1変形例]
図8は、本開示の第2実施形態にかかる半導体装置の第1変形例を説明するための図である。
図8に示すトレンチ1及び酸化膜2は、前述した第2方向に間隔を空けて、複数本配列される。なお、
図8には、2つのトレンチ1と、これらのトレンチ1に埋め込まれている酸化膜2とが示されている。
【0056】
このように複数のトレンチ1及び酸化膜2を設けることで、トレンチ1の数が増えるほど、酸化膜2上に形成される凹状の配線3の領域が増加し得る。これにより、各トレンチ1内の酸化膜2の厚さが小さくなったときの配線3は、トレンチ1が1つの場合に比べて、より一層長くなり得る。従って、配線3の抵抗値の変化量がさらに大きくなり、抵抗値の測定感度が向上することで、酸化膜2の厚さをより一層容易に測定し得る。
【0057】
なお、トレンチ1及び酸化膜2の数は2つに限定されず、3つ以上でもよい。トレンチ1及び酸化膜2の数が増えるほど、配線3がより一層長くなり、配線3の抵抗値の変化量を大きくすることができる。
【0058】
[第2実施形態の第2変形例]
図9は、本開示の第2実施形態にかかる半導体装置の第2変形例を説明するための図である。
図9に示す配線3は、トレンチ1及び酸化膜2を、第1方向において、間欠的に横切るようにミアンダ状に形成されている。第1方向は、基板20を平面視して、半導体装置100のトレンチ1及び酸化膜2が延伸する方向である。
【0059】
具体的には、ミアンダ状の配線3は、基板20を平面視して、複数の蛇行部40を有する。トレンチ1及び酸化膜2は、これらの複数の蛇行部40の内、少なくとも1以上の蛇行部と重なるように設けられている。
【0060】
このように、トレンチ1が蛇行部40と重なることで、トレンチ1内の酸化膜2上に形成される凹状の配線3の領域は、
図8に示す配線3に比べて、さらに増加し得る。つまり、配線3がトレンチ1及び酸化膜2を横切る部分31が増加し得る。
【0061】
これにより、各トレンチ1内の酸化膜2の厚さが小さくなったときの配線3の配線長がさらに長くなる。従って、配線3の抵抗値の変化量がさらに大きくなり、抵抗値の測定感度が向上することで、酸化膜2の厚さをさらに容易に測定し得る。
【0062】
(作用・効果)
以上に説明したように、第2実施形態にかかる半導体装置100によれば、配線3は、基板20を平面視して第2方向に延伸して、トレンチ1及び酸化膜2を横切る部分31を有するように構成されている。
【0063】
この構成により、酸化膜2の厚さが小さい場合、配線3の一部領域が、トレンチ1の開口部からトレンチ1の底部に向かって窪む凹状に形成されるため、配線3の抵抗値が変化する。従って、第1実施形態と同様に、配線3の抵抗値に基づき、酸化膜2の厚さを容易に測定し得る。
【0064】
なお、本開示では、スクライブライン(スクライブライン領域SL)に形成される半導体装置100の構成例を説明したが、半導体装置100が形成される場所は、スクライブライン以外の箇所、例えば、
図1に示すウエハWの周縁部付近の領域でもよい。
【0065】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
【0066】
(付記1)
半導体素子及び1以上のトレンチが形成される基板と、
前記トレンチ内に配置される酸化膜と、
前記基板の前記トレンチが形成されるトレンチ領域と、前記トレンチが形成されずに前記半導体素子が形成される非トレンチ領域との境界を跨いで、前記非トレンチ領域から前記トレンチ領域の前記酸化膜に渡って配置される配線と、
を備え、
前記配線は、前記トレンチを形成する壁面の一部を覆う、半導体装置。
【0067】
(付記2)
前記配線は、前記基板を平面視して、複数の蛇行部を有するミアンダ状に形成され、
前記境界は、前記基板を平面視して、前記蛇行部に沿って形成されている、付記1に記載の半導体装置。
【0068】
(付記3)
前記トレンチ及び前記酸化膜は、前記基板を平面視して、前記基板において第1方向に延伸して形成され、
前記配線は、前記基板を平面視して、前記第1方向と交差する第2方向に延伸して、前記トレンチ及び前記酸化膜を横切る部分を有する、付記1または2に記載の半導体装置。
【0069】
(付記4)
前記トレンチ及び前記酸化膜は、前記第2方向に間隔を空けて、複数本配列される、付記3に記載の半導体装置。
【0070】
(付記5)
前記配線は、前記トレンチ及び前記酸化膜を前記第1方向において間欠的に横切るように、ミアンダ状に形成される、付記3に記載の半導体装置。
【0071】
(付記6)
前記半導体装置は、前記基板のスクライブラインに形成される付記1から5の何れか一つに記載の半導体装置。
【0072】
(付記7)
半導体素子及び1以上のトレンチが形成される基板と、前記トレンチ内に配置される酸化膜と、前記基板の前記トレンチが形成されるトレンチ領域と、前記トレンチが形成されずに前記半導体素子が形成される非トレンチ領域との境界を跨いで、前記非トレンチ領域から前記トレンチ領域の前記酸化膜に渡って配置される配線と、を備え、前記配線は、前記トレンチを形成する壁面の一部を覆う半導体装置の酸化膜厚測定方法であって、
前記酸化膜が第1厚さのときの前記配線の第1抵抗値を測定するステップと、
前記酸化膜が前記第1厚さよりも小さい第2厚さのときの前記配線の第2抵抗値を測定するステップと、
前記第1抵抗値及び前記第2抵抗値に基づき、前記第2厚さを測定する測定ステップと、
を含む半導体装置の酸化膜厚測定方法。
【0073】
(付記8)
半導体素子及び1以上のトレンチが形成される基板と、前記トレンチ内に配置される酸化膜と、前記基板の前記トレンチが形成されるトレンチ領域と、前記トレンチが形成されずに前記半導体素子が形成される非トレンチ領域との境界を跨いで、前記非トレンチ領域から前記トレンチ領域に渡って配置される配線と、を備え、前記配線は、前記トレンチを形成する壁面の一部を覆い、前記トレンチ及び前記酸化膜は、前記基板を平面視して、前記基板において第1方向に延伸して形成され、前記配線は、前記基板を平面視して、前記第1方向と交差する第2方向に延伸して、前記トレンチ及び前記酸化膜を横切る部分を有する半導体装置の酸化膜厚測定方法であって、
前記酸化膜が第1厚さのときの前記配線の第1抵抗値を測定するステップと、
前記酸化膜が前記第1厚さよりも小さい第2厚さのときの前記配線の第2抵抗値を測定するステップと、
前記第1抵抗値及び前記第2抵抗値に基づき、前記第2厚さを測定する測定ステップと、
を含む半導体装置の酸化膜厚測定方法。
【0074】
(付記9)
前記半導体装置は、前記基板のスクライブラインに形成される付記7または8に記載の半導体装置の酸化膜厚測定方法。
【符号の説明】
【0075】
1 トレンチ
1A 壁面
2 酸化膜
3 配線
4 段差部
10 半導体素子
20 基板
30 境界
31 横切る部分
40 蛇行部
100 半導体装置