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特開2024-141852半導体装置及び半導体装置の酸化膜厚測定方法
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  • 特開-半導体装置及び半導体装置の酸化膜厚測定方法 図1
  • 特開-半導体装置及び半導体装置の酸化膜厚測定方法 図2A
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  • 特開-半導体装置及び半導体装置の酸化膜厚測定方法 図3A
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  • 特開-半導体装置及び半導体装置の酸化膜厚測定方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141852
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の酸化膜厚測定方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20241003BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20241003BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/88 Z
H01L21/66 P
H01L27/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053700
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草野 健一郎
【テーマコード(参考)】
4M106
5F033
5F038
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106AA13
4M106CA11
4M106CA48
4M106DH04
5F033GG01
5F033GG02
5F033HH04
5F033JJ01
5F033MM20
5F033PP06
5F033QQ08
5F033RR04
5F033SS11
5F033VV12
5F033XX33
5F033XX37
5F038AC10
5F038CA02
5F038CA13
5F038CD13
5F038DT12
(57)【要約】
【課題】酸化膜の厚さを容易に測定することが可能な半導体装置及び半導体装置の酸化膜厚測定方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体素子及び1以上のトレンチが形成される基板のスクライブラインに形成される半導体装置であって、トレンチ内に配置される酸化膜と、基板のトレンチが形成されているトレンチ領域を覆う本体部と本体部から酸化膜に向かって延伸する延伸部とを有する第1電極と、を備える。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子及び1以上のトレンチが形成される基板のスクライブラインに形成される半導体装置であって、
前記トレンチ内に配置される酸化膜と、
前記基板のトレンチが形成されているトレンチ領域を覆う本体部と前記本体部から前記酸化膜に向かって延伸する延伸部とを有する第1電極と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記本体部の表面積は、前記トレンチが形成されずに前記半導体素子が形成される非トレンチ領域に設けられている第2電極の表面積と等しい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記トレンチは複数設けられ、
前記延伸部は、複数の前記トレンチのそれぞれに配置される、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
半導体素子及び1以上のトレンチが形成される基板と、前記トレンチ内に配置される酸化膜と、前記基板のトレンチが形成されているトレンチ領域を覆う本体部と前記本体部から前記酸化膜に向かって延伸する延伸部とを有する第1電極と、を備え、前記基板のスクライブラインに形成される半導体装置の酸化膜厚測定方法であって、
前記酸化膜が第1厚さのときの前記第1電極の第1容量を測定するステップと、
前記酸化膜が前記第1厚さよりも薄い第2厚さのときの前記第1電極の第2容量を測定するステップと、
前記第1容量及び前記第2容量に基づき、前記第2厚さを測定する測定ステップと、
を含む半導体装置の酸化膜厚測定方法。
【請求項5】
前記本体部の表面積は、前記トレンチが形成されずに前記半導体素子が形成される非トレンチ領域に設けられている第2電極の表面積と等しい、請求項4に記載の半導体装置の酸化膜厚測定方法。
【請求項6】
前記酸化膜が前記第1厚さのときの前記半導体装置の第1耐圧を測定するステップと、
前記酸化膜が前記第2厚さのときの前記半導体装置の第2耐圧を測定するステップと、
前記第1耐圧及び前記第2耐圧に基づき、前記第2厚さを測定する測定ステップと、
を含む請求項4又は5に記載の半導体装置の酸化膜厚測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の酸化膜厚測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置として、STI構造を有する半導体装置が開示されている(例えば特許文献1)。STI構造を有する半導体装置では、基板の表面に形成された1以上のトレンチを埋めるように酸化膜が形成され、当該酸化膜の表面が平坦化される。これにより、基板の表面に形成された複数の半導体素子がトレンチにより絶縁される。
【0003】
ここで、酸化膜の厚さが小さい場合、トレンチの肩部が露出し、又は、当該肩部に形成される酸化膜が薄くなり得る。これにより半導体素子間に寄生トランジスタが発生し、トランジスタの特性が所望の特性に対して変化し得る。また、酸化膜の耐圧が低下して経時絶縁破壊(Time Dependant Dielectric Breakdown:TDDB:)が生じ易くなる。従って、半導体素子を適切に絶縁するためには、トレンチが埋め込まれている酸化膜の厚さを確保することが重要である。なお、トレンチの肩部は、トレンチが形成されるトレンチ領域とトレンチが形成されずに半導体素子が形成される非トレンチ領域との境界付近の領域である。
【0004】
TDDBなどを防止するため、従来の半導体装置の製造工程では、酸化膜が適切な厚さを有しているかを確認する方法として、半導体装置を裁断して酸化膜の断面を確認する方法、トランジスタのI-V特性(Current-Voltage characteristic)を確認する方法などを採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2023-017246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、量産される半導体装置の全てについて酸化膜の厚さを測定することが困難であり、半導体装置の製造時間を短縮する上で改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記の事情を踏まえ、酸化膜の厚さを容易に測定することが可能な半導体装置及び半導体装置の酸化膜厚測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る半導体装置は、半導体素子及び1以上のトレンチが形成される基板のスクライブラインに形成される半導体装置であって、前記トレンチ内に配置される酸化膜と、前記基板のトレンチが形成されているトレンチ領域を覆う本体部と前記本体部から前記酸化膜に向かって延伸する延伸部とを有する第1電極と、を備える。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る半導体装置の酸化膜厚測定方法は、半導体素子及び1以上のトレンチが形成される基板と、前記トレンチ内に配置される酸化膜と、前記基板のトレンチが形成されているトレンチ領域を覆う本体部と前記本体部から前記酸化膜に向かって延伸する延伸部とを有する第1電極と、を備え、前記基板のスクライブラインに形成される半導体装置の酸化膜厚測定方法であって、前記酸化膜が第1厚さのときの前記第1電極の第1容量を測定するステップと、前記酸化膜が前記第1厚さよりも薄い第2厚さのときの前記第1電極の第2容量を測定するステップと、前記第1容量及び前記第2容量に基づき、前記第2厚さを測定する測定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酸化膜の厚さを容易に測定することが可能な半導体装置及び半導体装置の酸化膜厚測定方法を提供することが可能となる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の実施形態にかかる半導体装置を含むウエハを平面視した図である。
図2A図2Aは、本開示の実施形態にかかる半導体装置の構成を示す図である。
図2B図2Bは、本開示の実施形態にかかる半導体装置の構成を示す図である。
図2C図2Cは、本体部の表面積について説明するための図である。
図3A図3Aは、酸化膜2の厚さと第1電極30の容量との間の相関性について説明するための図である。
図3B図3Bは、酸化膜2の厚さと第1電極30の容量との間の相関性について説明するための図である。
図3C図3Cは、酸化膜2の厚さと第1電極30の容量との間の相関性について説明するための図である。
図4図4は、本開示の実施形態にかかる半導体装置の酸化膜厚測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0013】
[実施形態]
(半導体装置の構成)
図1は、本開示の実施形態にかかる半導体装置を含むウエハを平面視した図である。
【0014】
ウエハWは、半導体素子10が形成される半導体基板である。具体的には、ウエハはSi(シリコン)を含むSi基板である。なお、ウエハWは、Si基板に限定されず、SiC(シリコンカーバイド)を含む基板、GaAs(ガリウム砒素)を含む基板などでもよい。
【0015】
ウエハWには、所定幅のスクライブライン領域SLおよびアクティブ領域ACが設けられている。スクライブライン領域SLには、テスト用素子群(Test Element Group:TEG)としての半導体装置100が形成されている。アクティブ領域ACは、ウエハWのうち後述するトレンチが形成されない非トレンチ領域と解釈してよい。図1に示す領域Xは、複数のスクライブライン領域SLの内、半導体装置100が形成される領域である。図2A図2B及び図2Cを参照して、半導体装置100の構成を説明する。
【0016】
図2A及び図2Bは、本開示の実施形態にかかる半導体装置の構成を示す図である。図2Aには、図1の領域Xを拡大した図が示されている。図2Bには、図2Aに示す半導体装置100のA-A線断面が示されている。
【0017】
図2A及び図2Bの左には、基板20のトレンチ領域TCに設けられた半導体装置100が示されている。図2A及び図2Bの右には、基板20のアクティブ領域ACに設けられた第2電極30Aが示されている。
【0018】
半導体装置100は、ウエハW(図1)の一部である基板20と、トレンチ1内に配置される酸化膜2と、第1電極30とを備える。
【0019】
基板20のトレンチ領域TCには1以上のトレンチ1が形成される。複数のトレンチ1は、方向D1に間隔を空けて配列されている。酸化膜2の材料は、用途、目的などに応じて適宜選択可能であり、一例としてシリコン酸化膜が挙げられる。
【0020】
第1電極30は、トレンチ領域TCに形成されるゲート電極、ドレイン電極、ソース電極などに相当する電極である。第1電極30の材料は、用途、目的などに応じて適宜選択可能であり、一例としてPoly Si(多孔質シリコン)が挙げられる。
【0021】
第1電極30は、トレンチ領域TCを覆う本体部31と、本体部31からトレンチ1内の酸化膜2に向かって延伸する複数の延伸部32とを有する。第1電極30は、板状の電極の表面に複数の突起が形成された電極と解釈してよい。
【0022】
本体部31は、複数のトレンチ1のそれぞれの開口部を覆いながら基板20のトレンチ領域TCに設けられている。本体部31は、基板20を平面視して長方形の電極である。
【0023】
延伸部32は、本体部31から酸化膜2の上面に向かって突き出る凸形状の導電性部材である。延伸部32が伸びる方向D2は、方向D1と交差する方向である。延伸部32は本体部31の一部と解釈してよい。本体部31に延伸部32が形成されることで、本体部31の一部が、トレンチ1内の酸化膜2上面に向かって突き出た形状となる。
【0024】
ここで、本体部31の表面積は、アクティブ領域ACに設けられた板状の第2電極30Aの表面積と略等しいことが望ましい。略等しいとは、本体部31の表面積と第2電極30Aの表面積との差が、製造公差に相当する特定寸法以下であることを含むと解釈してよい。第2電極30Aは、アクティブ領域AC(非トレンチ領域)に設けられている板状の電極である。
【0025】
図2Cは、本体部の表面積について説明するための図である。本体部31は、基板20と対向する対向面31aが平らに形成されている。また本体部31は、本体部31全体の表面の内、複数のトレンチ1の開口部を対向する部分(第1領域A1)を除いた部分(第2領域A2)の面積が、第2電極30A(図2A参照)全体の表面積と等しくなるように構成される。
【0026】
トレンチ1への酸化膜2の埋め込みが浅い場合、つまり酸化膜2の厚さが小さい場合、延伸部32が形成されることにより、本体部31の表面積(第2領域A2)に、延伸部32の表面積が付加される。
【0027】
本体部31の表面積が、アクティブ領域ACに設けられた板状の第2電極30Aの表面積と略等しい場合、本体部31及び延伸部32の表面積の総和、つまり第1電極30全体の表面積は、第2電極30A全体の表面積よりも大きくなる。そして、トレンチ1内の酸化膜2の厚さが小さくなる程、延伸部32の数及び延伸量が増加するため、第1電極30の表面積がより一層大きくなる。
【0028】
このように第1電極30の表面積が大きくなると、第1電極30の容量が増加するため、第2電極30Aの容量を基準にして第1電極30の容量の変化量を測定することで、トレンチ1内の酸化膜2の厚さを測定することができる。容量は、導体が電荷を蓄える能力を表す量と解釈してよく、静電容量(キャパシタンス)と解釈してもよい。また容量は、寄生容量と解釈してもよい。なお、酸化膜2の厚さの測定方法の具体例については後述する。
【0029】
(半導体装置の製造方法)
次に、半導体装置100の製造方法について簡単に説明する。
【0030】
まず基板20のアクティブ領域ACを覆うようにシリコン酸化膜を形成する。次に公知のCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いてシリコン酸化膜を覆うようにシリコン窒化膜を形成する。次に、公知のフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜にパターニングを施す。
【0031】
次に、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜をマスクとして基板20をエッチングすることにより、基板20にトレンチ1を形成する。次に、公知のCVD法を用いて、基板20を覆うように、SiO2等の絶縁体で構成される酸化膜2を形成する。酸化膜2は、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の上面を覆う厚さで形成される。先の工程で形成されたトレンチ1には、酸化膜2が埋め込まれる。
【0032】
次に、公知のCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて酸化膜2を平坦化する。具体的には、CMP法による平坦化においては、研磨液(スラリー)を流しながら酸化膜2を研磨する。次に、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜をエッチングにより除去する。
【0033】
次に、公知の熱酸化法を用いて基板20に絶縁膜を形成する。続いて、公知のCVD法を用いて、絶縁膜上にポリシリコン膜を形成する。次に、公知のフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術により、絶縁膜及びポリシリコン膜をパターニングして、第1電極30を形成する。
【0034】
次に、酸化膜2の厚さと第1電極30の容量との間の相関性について説明する。図3A図3B及び図3Cは、酸化膜2の厚さと第1電極30の容量との間の相関性について説明するための図である。
【0035】
図3Aには、正常に成膜された酸化膜2及び本体部31の断面が示されている。酸化膜2が正常に成膜された場合、酸化膜2の上面とトレンチ領域TCの上面(基板20の上面)とが略同じ高さに位置するため、酸化膜2とトレンチ領域TCの上面との間に段差が発生しない。従って、本体部31には、図2Bに示す延伸部32が形成されないため、本体部31の断面は平らな板状となる。
【0036】
図3Bには、図3Aの酸化膜2に比べて、厚さが小さくなった酸化膜2が示されている。トレンチ1の深さに対して酸化膜2の厚さが小さい場合、酸化膜2の上面の位置は、トレンチ領域TCの上面の位置と異なるため、酸化膜2とトレンチ領域TCの上面との間に段差が発生する。このため、第1電極30を形成する工程において、延伸部32がトレンチ1の内部に形成される。
【0037】
このように延伸部32が形成された第1電極30の表面積は、図3Aに示す本体部31の表面積よりも大きくなる。このように表面積が大きくなると、第1電極30の容量は、図2Bに示す第2電極30Aの容量よりも大きくなる。
【0038】
図3Cには、さらに厚さが小さくなった酸化膜2が示されている。図3Cに示すように酸化膜2が薄くなると、第1電極30の表面積がより大きくなり、第1電極30の容量がさらに大きくなる。
【0039】
このように、酸化膜2の厚さと第1電極30の容量との間に相関性があるため、第1電極30の容量を測定することによって、酸化膜2の厚さを測定することが可能である。図4を参照して、半導体装置100の酸化膜厚測定方法について説明する。
【0040】
(酸化膜厚測定方法)
図4は、本開示の実施形態にかかる半導体装置の酸化膜厚測定方法を説明するための図である。図4には、横軸を酸化膜2の厚さとし、縦軸を第1電極30の容量とするグラフが示されている。グラフには、酸化膜2の厚さと第1電極30の容量とを示す複数のデータ点(a点、b点、c点)がプロットされている。
【0041】
a点に対応するThaは、図3Cに示す酸化膜2の厚さを表し、a点に対応するCaは、図3Cに示す第1電極30の容量を表す。
【0042】
b点に対応するThbは、図3Bに示す酸化膜2の厚さを表し、b点に対応するCbは、図3Bに示す第1電極30の容量を表す。
【0043】
c点に対応するThcは、図3Aに示す酸化膜2の厚さを表し、c点に対応するCcは、図3Aに示す本体部31の容量を表す。
【0044】
図4に示すように、Thcを基準にして酸化膜2の厚さが小さくなるにつれて、第1電極30の容量は、Ccを基準にして大きくなる傾向がある。このように、酸化膜2の厚さと第1電極30の容量との間には相関性があるため、第1電極30の容量を測定することにより、トレンチ1に埋め込まれている酸化膜2の厚さを測定することが可能である。
【0045】
実施形態にかかる酸化膜厚測定方法は、酸化膜2が第1厚さのときの第1電極30の第1容量を測定するステップと、酸化膜2が第1厚さよりも小さい第2厚さのときの第1電極30の第2容量を測定するステップとを含む。さらに、実施形態にかかる酸化膜厚測定方法は、測定した第1容量及び第2容量に基づき、第2厚さを測定する測定ステップを含む。
【0046】
具体的には、CcとCbとの差分、CcとCaとの差分などを予め収集し、これらが検出されたときの酸化膜2の厚さの測定値と当該差分とを対応付けたデータを、メモリに保存する。その後、図1に示すウエハW上に設けられている半導体装置100の第1電極30の容量を測定し、測定した容量を上記のデータに照合することで、酸化膜2の厚さを測定することができる。
【0047】
これにより、例えば点cの容量(Cc)を基準にして、測定した容量(例えばCb)が特定範囲内にある場合には、図1に示す半導体素子10が形成されるアクティブ領域ACのトレンチに埋め込まれている酸化膜が正常に形成されていると判定可能である。一方、測定した容量が特定範囲内にない場合には、当該酸化膜が薄い、つまり酸化膜が正常に形成されていないと判定可能である。
【0048】
また、前述したように、アクティブ領域ACに設けられている第2電極30A(図2A)の容量を測定し、当該容量を基準にして酸化膜の厚さを判定してもよい。具体的には、第2電極30Aの容量を基準にして、第1電極30の容量(例えばCb)が特定範囲内にある場合には、図1に示す半導体素子10が形成されるアクティブ領域ACのトレンチに埋め込まれている酸化膜が正常に形成されていると判定可能である。一方、測定した容量が特定範囲内にない場合には、当該酸化膜が薄い、つまり酸化膜が正常に形成されていないと判定可能である。
【0049】
(他の実施形態)
なお、前述の通り、酸化膜2の厚さが小さい場合、トレンチ1の肩部が露出し、又は、当該肩部に形成される酸化膜2が薄くなり得るため、酸化膜2が薄くなるほど、半導体装置100の耐圧が低くなることが知られている。特にトレンチ1の肩部の酸化膜2が薄い場合、寄生容量が発生して、半導体装置100の所望の特性が得られない可能性がある。従って、酸化膜2の厚みを精度良く測定することが重要である。
【0050】
本開示の実施形態にかかる酸化膜厚測定方法には、酸化膜2の厚みを精度良く測定するため、前述した容量の測定の工程に加え、半導体装置100の耐圧を測定する工程を含めてもよい。具体的には、実施形態にかかる酸化膜厚測定方法は、酸化膜2が第1厚さのときの半導体装置100の第1耐圧を測定するステップと、酸化膜2が第2厚さのときの半導体装置100の第2耐圧を測定するステップとを含んでよい。さらに実施形態にかかる酸化膜厚測定方法は、第1耐圧及び第2耐圧に基づき、第2厚さを測定する測定ステップを含んでよい。
【0051】
より具体的には、半導体装置100の耐圧と酸化膜2の厚みとを対応付けたデータを、メモリに保存する。その後、図1に示すウエハW上に設けられている半導体装置100の第1電極30の耐圧(前述した第1耐圧及び第2耐圧)を測定し、測定した耐圧を上記のデータに照合することで、酸化膜2の厚さ(前述した第2厚さ)を測定する。このように、前述した容量の測定に加え、半導体装置100の耐圧を測定することで、酸化膜2の厚さの測定の精度を向上させることができる。
【0052】
(作用・効果)
以上に説明したように、本開示の実施形態にかかる半導体装置100は、基板20のトレンチ1が形成されているトレンチ領域TCを覆う本体部31と本体部31から酸化膜2に向かって延伸する延伸部32とを有する第1電極30を備える。
【0053】
この構成により、酸化膜2の厚さが小さくなるほど第1電極30の容量が大きくなるため、第1電極30の容量を測定することにより、トレンチ1に埋め込まれている酸化膜2の厚さを測定することが可能である。このため、アクティブ領域ACに形成される半導体装置を裁断して酸化膜の断面を確認し、或いはアクティブ領域ACに形成されるトランジスタのI-V特性を確認することなく、STI構造における酸化膜の厚さを容易に測定することが可能となる。従って、量産される半導体装置の製造時間を短縮することが可能である。
【0054】
また、実施形態にかかる半導体装置100は、基板20のスクライブライン(スクライブライン領域SL)に形成されることで、アクティブ領域ACを狭めることなく酸化膜2の厚さを測定することができる。従って、量産される半導体装置の製造数量を減らすことなく、STI構造における酸化膜の厚さを容易に測定することが可能となる。
【0055】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
【0056】
(付記1)
半導体素子及び1以上のトレンチが形成される基板のスクライブラインに形成される半導体装置であって、前記トレンチ内に配置される酸化膜と、前記基板のトレンチが形成されているトレンチ領域を覆う本体部と前記本体部から前記酸化膜に向かって延伸する延伸部とを有する第1電極と、を備える半導体装置。
【0057】
(付記2)
前記本体部の表面積は、前記トレンチが形成されずに前記半導体素子が形成される非トレンチ領域に設けられている第2電極の表面積と等しい、付記1に記載の半導体装置。
【0058】
(付記3)
前記トレンチは複数設けられ、前記延伸部は、複数の前記トレンチのそれぞれに配置される、付記1又は2に記載の半導体装置。
【0059】
(付記4)
半導体素子及び1以上のトレンチが形成される基板と、前記トレンチ内に配置される酸化膜と、前記基板のトレンチが形成されているトレンチ領域を覆う本体部と前記本体部から前記酸化膜に向かって延伸する延伸部とを有する電極と、を備え、前記基板のスクライブラインに形成される半導体装置の酸化膜厚測定方法であって、前記酸化膜が第1厚さのときの前記電極の第1容量を測定するステップと、前記酸化膜が前記第1厚さよりも薄い第2厚さのときの前記電極の第2容量を測定するステップと、前記第1容量及び前記第2容量に基づき、前記第2厚さを測定する測定ステップと、を含む半導体装置の酸化膜厚測定方法。
【0060】
(付記5)
前記本体部の表面積は、前記トレンチが形成されずに前記半導体素子が形成される非トレンチ領域に設けられている第2電極の表面積と等しい、付記4に記載の半導体装置の酸化膜厚測定方法。
【0061】
(付記6)
前記酸化膜が前記第1厚さのときの前記半導体装置の第1耐圧を測定するステップと、前記酸化膜が前記第2厚さのときの前記半導体装置の第2耐圧を測定するステップと、前記第1耐圧及び前記第2耐圧に基づき、前記第2厚さを測定する測定ステップと、を含む付記4又は5に記載の半導体装置の酸化膜厚測定方法。
【符号の説明】
【0062】
1 トレンチ
2 酸化膜
10 半導体素子
20 基板
30 第1電極
30A 第2電極
31 本体部
31a 対向面
32 延伸部
100 半導体装置
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4