(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141920
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】アセトキシアリル化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/58 20060101AFI20241003BHJP
C07C 69/16 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C07C67/58
C07C69/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053800
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 葉裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD16
4H006BC51
4H006KA11
(57)【要約】
【課題】反応性に優れ、反応時の着色を抑制できるアセトキシアリル化合物を簡便な操作
で効率的に製造できる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】共役ジエン化合物のアセトキシ化反応により得られた粗アセトキシアリル化
合物含有液と、亜硫酸水素アルカリ塩及び/又は亜硫酸アルカリ塩とを接触させることを
含む、アセトキシアリル化合物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン化合物のアセトキシ化反応により得られた粗アセトキシアリル化合物含有液
と、亜硫酸水素アルカリ塩及び/又は亜硫酸アルカリ塩とを接触させることを含む、アセ
トキシアリル化合物の製造方法。
【請求項2】
前記粗アセトキシアリル化合物含有液と前記亜硫酸水素アルカリ塩及び/又は前記亜硫
酸アルカリ塩とを接触させる温度が0℃以上100℃以下である、請求項1に記載の製造
方法。
【請求項3】
前記粗アセトキシアリル化合物含有液と接触させる前記亜硫酸水素アルカリ塩及び/又
は前記亜硫酸アルカリ塩の量が、粗アセトキシアリル化合物含有液中のアセトキシアリル
化合物の量に対して、0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1又は2に記載の
製造方法。
【請求項4】
前記アセトキシアリル化合物が3,4-ジアセトキシ-1-ブテンである、請求項1又
は2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセトキシアリル化合物の製造の方法に関する。より詳細には、共役ジエン
化合物のアセトキシ化反応によるアセトキシアリル化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アセトキシアリル化合物は特徴有る骨格を有することから様々な物質への変換が可能な
化合物である。そのため、各種アセトキシアリル化合物の製造プロセスの開発が行われて
きた。例えば特許文献1には、パラジウム固体触媒によるブタジエンのジアセトキシ化反
応や、イソプレンのジアセトキシ化反応によるジアセトキシアリル化合物の製造法が開発
されている。また特許文献2には、ロジウム固体触媒を用いたブタジエンのジアセトキシ
化反応によるジアセトキシアリル化合物の製造法が報告されている。特許文献3では3,
4-ジアセトキシアリル化合物含有液にアミン類を接触させて、異性化触媒の劣化を防ぐ
ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-3110号公報
【特許文献2】特開平11-71327号公報
【特許文献3】特開2008-7486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従前知られたアセトキシアリル化合物の製造方法では、製造されたアセ
トキシアリル化合物を、例えば、異性化反応により別の化合物とする際に、反応性が乏し
く、所望の異性率が得られなかったり、異性化反応系が着色してしまう傾向にあった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、反応性に優れ、反応後の生成物の着
色を抑制できるアセトキシアリル化合物を簡便な操作で効率的に製造できる方法を提供す
ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、共役ジエン化合物のアセトキ
シ化反応により得られた粗アセトキシアリル化合物含有液と、特定の化合物とを接触させ
ることを含み、アセトキシアリル化合物を製造することで、上記課題を解決することがで
きることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、以下の[1]~[4]に存する。
【0007】
[1] 共役ジエン化合物のアセトキシ化反応により得られた粗アセトキシアリル化合物
含有液と、亜硫酸水素アルカリ塩及び/又は亜硫酸アルカリ塩とを接触させることを含む
、アセトキシアリル化合物の製造方法。
[2] 前記粗アセトキシアリル化合物含有液と前記亜硫酸水素アルカリ塩及び/又は前
記亜硫酸アルカリ塩とを接触させる温度が0℃以上100℃以下である、[1]に記載の
製造方法。
【0008】
[3] 前記粗アセトキシアリル化合物含有液と接触させる前記亜硫酸水素アルカリ塩及
び/又は前記亜硫酸アルカリ塩の量が、粗アセトキシアリル化合物含有液中のアセトキシ
アリル化合物の量に対して、0.1質量%以上10質量%以下である、[1]又は[2]
に記載の製造方法。
【0009】
[4] 前記アセトキシアリル化合物が3,4-ジアセトキシ-1-ブテンである、[1
]乃至[3]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、反応性に優れ、反応後の生成物の着色を抑制できるアセトキシアリル
化合物を簡便な操作で効率的に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を具体的に記載するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に記載
の態様に限定されない。
【0012】
本発明における「共役ジエン化合物のアセトキシ化反応により得られた粗アセトキシア
リル化合物含有液」は、種々の方法で得ることができる。
一般的には、触媒の存在下、共役ジエン化合物、酢酸及び酸素をアセトキシ化反応させ
てアセトキシアリル化合物を得ることができる。またそれらアセトキシアリル化合物の加
水分解物であるヒドロキシアセトキシアリル化合物なども併せて生成する。本発明で使用
可能な共役ジエン化合物として例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1
,3-ブタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,3
-シクロヘプタジエン、1,3-シクロオクタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-
ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエンなどが挙げられ、好ましくはブタジエン、イソプレ
ン、1,3-シクロヘキサジエン、1,3-ジクロペンタジエンであり、特に好ましくは
ブタジエン、イソプレンである。ブタジエン、イソプレンのような置換基の少ない共役ジ
エン化合物が、最も高い反応活性を示すことが好ましい理由である。共役ジエン化合物の
アセトキシ化反応に用いる触媒として、共役ジエン化合物をアセトキシアリル化合物に変
換する能力を有する触媒であれば何でも使用できるが、好ましくは第8~10族遷移金属
を含有する固体触媒であり、特に好ましくはパラジウム固体触媒である。パラジウム固体
触媒は、パラジウム金属またはその塩からなり、助触媒としてビスマス、セレン、アンチ
モン、テルル、銅などの金属またはその塩の使用が好ましく、特に好ましくはテルルであ
る。パラジウムとテルルの組み合わせが好ましい理由は、触媒活性の高さ、及びアセトキ
シアリル化合物選択率の高さである。そのため、パラジウム及びテルルを活性成分として
担持する固体触媒であることが好ましい。該パラジウム固体触媒は、シリカ、アルミナ、
チタニア、ジルコニア、活性炭、グラファイトなどの担体に担持させて使用することが好
ましく、特に好ましくは強度的に優れているシリカである。担体の物性として多孔質が好
ましく、特にその平均細孔直径が1nm~100nmである多孔質が好ましい。担体付触
媒の場合、パラジウム金属は通常0.1~20重量%、他の助触媒金属は0.01~30
重量%の範囲で選定される。この値が小さすぎると、触媒活性の低下によるコスト競争力
が低下し、またこの値が大きすぎると、触媒コストの甚大化による競争力が低下してしま
う可能性がある。
【0013】
上記のアセトキシ化反応は空気、または酸素富加された空気、窒素など不活性ガスで希
釈された空気または酸素、あるいは酸素雰囲気下で行なうことが好ましく、酸素濃度は1
vol%~100vol%の範囲であり、より好ましくは2vol%~50vol%であ
り、特に好ましくは3vol%~40vol%である。酸素濃度が低すぎると反応速度が
低下し、長大な反応器が必要となり、また酸素濃度が高すぎると、爆発、火災などプロセ
スの危険性が増大する。本反応は気相、液相のいずれでも行なうことができる。反応温度
は0℃~300℃の範囲であり、好ましくは10℃~250℃、より好ましくは30℃~
200℃の範囲である。反応温度が低すぎると反応速度が低下し、長大な反応器が必要と
なり、また反応温度が高すぎると、爆発、火災などプロセスの危険性が増大する。反応圧
力は大気圧~50MPaの範囲が好ましく、より好ましくは大気圧~30MPa、特に好
ましくは1MPa~20MPaである。アセトキシ化反応を液相にて行なう場合には、反
応に使用する溶媒は反応原料を溶解するものであれば特に制限は無いが、水、または酢酸
等のカルボン酸、あるいはブタジエンなど反応原料となる共役ジエン化合物そのもの、あ
るいはアセトキシアリル化合物など生成物そのものが好ましい。またヘキサン、ヘプタン
、オクタンなどの炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トリグライムな
どのエーテル類、酢酸エチル、酪酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルイソブチ
ルケトンなどのケトン類、1,4-ブタンジオールなどのアルコール類なども使用可能で
ある。原料となる共役ジエン化合物と触媒との質量比は100000000~1の範囲が
好ましく、より好ましくは50000000~10の範囲であり、特に好ましくは200
00000~100である。質量比が大きくなると反応速度は不充分となり、長大な反応
器が必要となりプロセス競争力を失い、またこの質量比が小さくなると触媒コストが増大
し、プロセス競争力を失う。
【0014】
本発明における「粗アセトキシアリル化合物含有液」とは、共役ジエン化合物のアセト
キシ化反応により得られた液であり、アセトキシアリル化合物、副生物として生成される
アセトキシアリル化合物よりも軽沸点の化合物(以下、「軽沸点化合物類」と称する場合
がある。)及びアセトキシアリル化合物よりも高沸点の化合物(以下、「高沸点化合物類
」と称する場合がある。)、更には前記したアセトキシ反応に使用した溶媒が含まれる。
【0015】
本発明の製造方法では、前記粗アセトキシ化合物含有液と、亜硫酸水素アルカリ塩及び
/又は亜硫酸アルカリ塩とを接触させることを含む。亜硫酸水素アルカリ塩としては、亜
硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸水素マグネシ
ウムが挙げられ、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素カルシウムが
好ましく、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムがより好ましく、亜硫酸水素ナト
リウムがさらに好ましい。又、亜硫酸アルカリ塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カ
リウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウムが挙げられ、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸
カリウム、亜硫酸カルシウムが好ましく、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウムがより好ま
しく、亜硫酸ナトリウムがさらに好ましい。亜硫酸水素アルカリ塩及び亜硫酸アルカリ塩
と接触させることが好ましく、亜硫酸水素アルカリ塩と接触させることがより好ましい。
前記粗アセトキシ化合物含有液と前記化合物とを接触させることにより、製造されたアセ
トキシアリル化合物は、反応性に優れ、反応後の生成物の着色を抑制できるアセトキシア
リル化合物とすることが可能となる。
【0016】
前記粗アセトキシアリル化合物含有液と、前記亜硫酸水素アルカリ塩及び/又は前記亜
硫酸アルカリ塩とを接触させる必要性は以下と考えている。共役ジエン化合物のアセトキ
シ化反応により得られた粗アセトキシアリル化合物含有液を、種々精製工程を経てアセト
キシアリル化合物を製造し、製造されたアセトキシアリル化合物を次の反応に供しても反
応性は乏しく、また、反応後の生成物は着色する傾向にあった。その原因を検討したとこ
ろ、該アセトキシアリル化合物に含まれる、アセトキシ反応の副生物であるケトン系化合
物の量に原因であることが明らかになった。本発明はアセトキシアリル化合物の製造にお
いて、粗アセトキシアリル化合物と亜硫酸水素アルカリ塩及び/又は亜硫酸アルカリ塩と
を接触させることにより、製造されたアセトキシアリル化合物中のケトン化合物を変換し
、ケトン化合物量を低減することができ、反応性に優れ、反応後の生成物の着色を抑制で
きるアセトキシアリル化合物とすることができる。
尚、前記粗アセトキシ化合物含有液と接触させる、前記亜硫酸水素アルカリ塩及び/又
は前記亜硫酸アルカリ塩の形態は、該粗アセトキシ化合物含有液との接触効率の観点から
溶媒に溶解させた溶液であることが好ましく、中でも、該ケトン化合物が変換された物を
溶解できる水溶液が好ましい。
【0017】
前記粗アセトキシアリル化合物含有液と前記亜硫酸水素アルカリ塩及び/又は前記亜硫
酸アルカリ塩とを接触させる温度は0℃以上100℃以下が好ましく、10℃以上80℃
以下がより好ましく、20℃以上60℃以下がさらに好ましい。前記温度範囲内で接触さ
せることにより、ケトン化合物量を効率よく低減することができ、反応性に優れ、反応後
の生成物の着色を抑制できるアセトキシアリル化合物とすることが可能となる。
【0018】
前記粗アセトキシアリル化合物含有液と接触させる前記亜硫酸水素アルカリ塩及び/又
は前記亜硫酸アルカリ塩の量は、粗アセトキシアリル化合物含有液中のアセトキシアリル
化合物の量に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質
量%以上8.0質量%以下であることがより好ましく、0.8質量%以上6.0質量%以
下であることがさらに好ましい。前記範囲内で接触させることにより、ケトン化合物量を
効率よく低減することができ、反応性に優れ、反応後の生成物の着色を抑制できるアセト
キシアリル化合物とすることが可能となる。
【0019】
前記アセトキシアリル化合物は3,4-ジアセトキシ-1-ブテンであることが好まし
い。前記化合物であることにより副生するケトン化合物が亜硫酸水素アルカリ塩及び/又
は亜硫酸アルカリ塩により低減しやすくなる。
【0020】
本発明では粗アセトキシアリル化合物含有液と亜硫酸水素アルカリ塩及び/又は亜硫酸
アルカリ塩とを接触させることを特徴とするが、該粗アセトキシアリル化合部含有液をあ
らかじめ蒸留精製後に接触させても、接触させたのち該粗アセトキシアリル化合部含有液
を蒸留精製してもよい。又、製造されたアセトキシアリル化合物がその後の反応に悪影響
を及ぼさない限り、亜硫酸水素アルカリ塩及び/又は亜硫酸アルカリ塩以外の化合物、例
えば、アミン類、炭酸塩等と接触させてもよい。
【実施例0021】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の要旨を越えない限り以下
の実施例に限定されるものではない。
【0022】
製造例1:ブタジエンのアセトキシ化反応工程
Pd-Te触媒1kgの存在下に、ブタジエン0.21kg/hr、酢酸2.94kg
/hr、6vol%酸素/94vol%窒素混合ガス0.34kg/hrを流通させ、8
0℃、6MPaの条件でアセトキシ化反応させて、1,4-ジアセトキシ-2-ブテンが
81質量%、3,4-ジアセトキシ-1-ブテンが9質量%、3-ヒドロキシ-4-アセ
トキシ-1-ブテンが2質量%、酢酸が3質量%、その他軽沸点化合物類が3質量%、高
沸点化合物類が2質量%、を含む混合液を得た。
【0023】
製造例2:3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の分離
製造例1で得た混合液11Lから3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液を連続蒸留
により分離した。尚、蒸留には20段のオルダーショウ蒸留塔を使用した。塔頂圧力は2
0torr、還流比は3、塔頂温度は95℃、塔底温度は151℃の温度範囲において保
持し、150cc/hrの流量で塔底から10段の位置に連続導入し、塔頂部から27c
c/hrで連続留出を行い、塔底から123cc/hrで連続抜き出しを行なった。本連
続蒸留により、塔底から1,4-ジアセトキシ-2-ブテンを含有する液を缶出液として
得、塔頂から3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液を留出液として得た。得られた3
,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液は、3,4-ジアセトキシ-1-ブテンが45質
量%、3-ヒドロキシ-4-アセトキシ-1-ブテンが11質量%、酢酸が22質量%、
その他3,4-ジアセトキシ-1-ブテンよりも沸点の低い成分が20質量%、3,4-
ジアセトキシ-1-ブテンよりも沸点の高い成分が2質量%を含む混合液であった。また
、該3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の1,4-ジアセトキシ-2-ブテンの含
有量は1質量%以下であった。
【0024】
製造例3:3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の精製蒸留
製造例2で得た3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液1Lから連続蒸留により主に
軽沸点化合物類を分離した。尚、蒸留には40段のオルダーショウ蒸留塔を使用した。塔
頂圧力は100torr、還流比は1、塔頂温度は95℃、塔底温度は148℃の温度に
おいて保持し、100cc/hrの流量で塔底から20段の位置に連続導入し、塔頂部か
ら41cc/hrで連続留出を行い、塔底から59cc/hrで連続抜き出しを行なった
。本連続蒸留により、塔頂から軽沸点化合物類を留出液として得た。該留出中には酢酸が
59質量%、3,4-ジアセトキシ-1-ブテンが1.6質量%(蒸留塔に導入する3,
4-ジアセトキシアリル化合物量の1.5質量%に相当)、その他、3,4-ジアセトキ
シ-1-ブテンよりも沸点の低い成分39.4質量%含まれていた。また塔底からの抜き
出した液中には3,4-ジアセトキシ-1-ブテンが70.7質量%、3-ヒドロキシ-
4-アセトキシ-1-ブテンが23.6質量%、その他軽沸点化合物類が2.4質量%、
高沸点化合物類2.6質量%を含む3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液を得た。こ
の時、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液中のアセトキシメチルビニルケトンの濃
度は3592質量ppmであった。
【0025】
製造例4:異性化反応触媒の調製
窒素ガス雰囲気下、ガラス製シュレンク内で酢酸パラジウム10.5mg、下記式(1
)で表されるホスファイト配位子96.3mg、トリフェニルホスフィン49.8mgを
製造例3で得た3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液41.3g中に添加した。この
混合液を80℃で1時間加熱し、完全に溶解させ触媒液を得た。
【0026】
【0027】
(実施例1)
3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の精製処理
100mlのガラス製容器に水17.3gを導入し、室温で亜硫酸水素ナトリウム3.
65g(0.0351mol)と炭酸水素ナトリウム2.95g(0.0351mol)
を溶解したのち、40℃で10分攪拌した。その後、製造例3で得た3,4-ジアセトキ
シ-1-ブテン含有液100gを導入し、40℃で15分攪拌した。攪拌を停止後、油相
と水相を分離して得られた油相中の水分を減圧下留去することで、精製3,4-ジアセト
キシ-1-ブテン含有液を定量的に得た。この時、精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテ
ン含有液中のアセトキシメチルビニルケトンの濃度は10質量ppm未満であった。
【0028】
精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の異性化評価
シュレンク管に、上記「3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の精製処理」で得た
、精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液1.5cc、酢酸1.5ccを導入し、
攪拌した。オイルバスで130℃に昇温した後、参考例4で調製した触媒液を窒素雰囲気
下で40μL添加し、130℃で加熱攪拌を3時間行なった(反応液中のパラジウム濃度
1.5質量ppm)。異性化反応後の液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、
1,4-ジアセトキシ-2-ブテン(シス体、トランス体合計)の収率は28.8%であ
った。
【0029】
精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の色相評価(高温保持)
200mlのガラス製容器にメタノール97g、水酸化ナトリウム3g、上記「3,4
-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の精製処理」で得た、精製3,4-ジアセトキシ-1
-ブテン含有液3gを投入し、65℃で18時間攪拌した。得られたメタノール溶液の色
相を、日本電色工業株式会社color meter ZE6000を使用して測定した
結果、APHA=132であった。
【0030】
(実施例2)
使用した亜硫酸水素ナトリウムを1.10g(0.0105mol)、炭酸水素ナトリ
ウムを0.885g(0.0105mol)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を
実施した。この時、精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液中のアセトキシメチル
ビニルケトンの濃度は10質量ppm未満であった。得られた精製3,4-ジアセトキシ
-1-ブテン含有液を使用した異性化評価における、1,4-ジアセトキシ-2-ブテン
(シス体、トランス体合計)の収率は31.3%であった。また、精製3,4-ジアセト
キシ-1-ブテン含有液の色相評価(高温保持)の結果は、APHA=248であった。
【0031】
(比較例1)
製造例3で得た3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液を使用し、実施例1と同様に
異性化反応評価と色相評価(高温保持)を実施した。3,4-ジアセトキシ-1-ブテン
含有液を使用した異性化評価における、1,4-ジアセトキシ-2-ブテン(シス体、ト
ランス体合計)の収率は3.4%であった。また、精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテ
ン含有液の色相評価(高温保持)において、APHAは999以上となり測定上限を超え
る結果であった。
【0032】
(比較例2)
3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の精製処理
製造例3で得た3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液150gからバッチ蒸留によ
り軽沸点化合物類の大部分を分離した。蒸留には理論段10段の桐山パックを使用し、塔
頂圧力は10torr、塔底温度は115℃の温度において保持し、塔頂から軽沸点化合
物類を含む留出液80g、塔底から精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液64.
4gを得た。この時、精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液中のアセトキシメチ
ルビニルケトンの濃度は225質量ppmであり、精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテ
ン含有液の収率は42.9%であった。
【0033】
精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の異性化評価
比較例2で得た精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液を使用したこと以外は、
実施例1「精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の異性化評価」に記載の内容と
同様の操作を実施した。異性化評価における、1,4-ジアセトキシ-2-ブテン(シス
体、トランス体合計)の収率は2.4%であった。
【0034】
精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の色相評価
比較例2で得た精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液を使用したこと以外は、
実施例1「精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の色相評価」に記載の内容と同
様の操作を実施した。色相評価(高温保持)において、APHAは999以上となり測定
上限を超える結果であった。
【0035】
(比較例3)
3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の精製処理
製造例3で得た3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液100gに、1,8-ジアザ
ビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン66mgを添加した後、150℃の温度で3時
間攪拌し、精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液を定量的に得た。この時、精製
3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液中のアセトキシメチルビニルケトンの濃度は1
0質量ppm未満であった。
【0036】
精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の異性化評価
比較例3で得た精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液を使用したこと以外は、
実施例1「精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の異性化評価」に記載の内容と
同様の操作を実施した。異性化評価における、1,4-ジアセトキシ-2-ブテン(シス
体、トランス体合計)の収率は21.1%であった。
【0037】
精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の色相評価
比較例3で得た精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液を使用したこと以外は、
実施例1「精製3,4-ジアセトキシ-1-ブテン含有液の色相評価」に記載の内容と同
様の操作を実施した。色相評価において、APHAは999以上となり測定上限を超える
結果であった。
【0038】
実施例1、2では、アセトキシ化反応により得られたと3,4-ジアセトキシ-1-ブ
テン含有液と亜硫酸水素アルカリ塩と接触させることにより、反応性に優れ、高温保持し
ても着色が少ないことが明らかである。一方、比較例1、2、3では、3,4-ジアセト
キシ-1-ブテン含有液を精製しているが、実施例に比べ、反応性は劣り、高温保持によ
る着色がみられる。