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特開2024-141945透明フィルム及びその製造方法、近赤外線吸収フィルター、並びに遮熱フィルター
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  • 特開-透明フィルム及びその製造方法、近赤外線吸収フィルター、並びに遮熱フィルター 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141945
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】透明フィルム及びその製造方法、近赤外線吸収フィルター、並びに遮熱フィルター
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C08J5/18 CEP
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053833
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100213997
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】曽根 篤
【テーマコード(参考)】
4F071
【Fターム(参考)】
4F071AA09
4F071AA81
4F071AF27Y
4F071AF30Y
4F071AH03
4F071AH07
4F071AH19
4F071BA03
4F071BB02
4F071BC01
(57)【要約】
【課題】近赤外線吸収性に優れる透明フィルムの提供。
【解決手段】本発明は、数平均繊維径が100nm以下であり、且つ、銅を塩の形で含有する含銅酸化セルロースナノファイバーからなる透明フィルムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均繊維径が100nm以下であり、且つ、銅を塩の形で含有する含銅酸化セルロースナノファイバーからなる透明フィルム。
【請求項2】
前記含銅酸化セルロースナノファイバーの数平均繊維長が50nm以上2000nm以下である、請求項1に記載の透明フィルム。
【請求項3】
前記含銅酸化セルロースナノファイバーの平均重合度が100以上2000以下である、請求項1に記載の透明フィルム。
【請求項4】
前記含銅酸化セルロースナノファイバーが含銅カルボキシ化セルロースナノファイバーである、請求項1に記載の透明フィルム。
【請求項5】
波長550nmの光の光透過率が80%以上である、請求項1に記載の透明フィルム。
【請求項6】
波長800nmの光の光透過率が80%以下である、請求項1に記載の透明フィルム。
【請求項7】
波長550nmの光の光透過率から波長800nmの光の光透過率を差し引いた値が10%以上である、請求項1に記載の透明フィルム。
【請求項8】
算術平均高さSaが60μm以下である、請求項1に記載の透明フィルム。
【請求項9】
請求項1~8の何れかに記載の透明フィルムの製造方法であって、
数平均繊維径が100nm以下であり、且つ、銅を塩の形で含有する含銅酸化セルロースナノファイバーを分散媒中に分散して分散液を得る、分散工程と、
前記分散液を乾燥してフィルムを得る、乾燥工程と、
を含む、透明フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記分散媒が水である、請求項9に記載の透明フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記乾燥工程において、乾燥中の相対湿度が50%以上95%以下である、請求項9に記載の透明フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1~8の何れかに記載の透明フィルムを備える、近赤外線吸収フィルター。
【請求項13】
請求項1~8の何れかに記載の透明フィルムを備える、遮熱フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明フィルム及びその製造方法、近赤外線吸収フィルター、並びに遮熱フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
可視光線を透過させるが、赤外線を反射及び/又は吸収する透明なフィルムが、建築物、乗り物等において太陽光の熱線を抑制したり、デジタルカメラの視感度を補正したりするために用いられている。このようなフィルムとして、例えば、特許文献1には、(メタ)アクリルアミドとリン酸との反応物又はその加水分解物と、エチレン性不飽和結合を有する化合物との共重合体に、金属化合物を添加してなる赤外線遮断性樹脂を含む赤外線遮断性フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-134457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近赤外線吸収性に優れ、且つ、透明性に優れるフィルムの更なる開発が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、近赤外線吸収性及び透明性に優れる透明フィルムを提供することを目的とする。
また、本発明は、上記透明フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記透明フィルムを備える近赤外線吸収フィルターを提供することを目的とする。
また、本発明は、上記透明フィルムを備える遮熱フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、所定の数平均繊維径を有し、且つ、銅を塩の形で含有する含銅酸化セルロースナノファイバーからなる透明フィルムであれば、上記課題を解決できることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、[1]本発明は、数平均繊維径が100nm以下であり、且つ、銅を塩の形で含有する含銅酸化セルロースナノファイバーからなる透明フィルムである。
上記のような透明フィルムは、近赤外線吸収性及び透明性に優れている。また、上記のような透明フィルムは、可視光を良好に透過させつつ、近赤外線を効率的に吸収できる。言い換えると、上記のような透明フィルムは、光吸収選択性に優れている。
本明細書において、含銅酸化セルロースナノファイバーの「数平均繊維径」は、原子間力顕微鏡を使用して含銅酸化セルロースナノファイバー5本以上について繊維径を測定し、測定した繊維径の個数平均を算出することにより求めることができる。原子間力顕微鏡としては、例えば、Dimension FastScan AFM(BRUKER社製、Tapping mode)を使用できる。
【0008】
[2]上記[1]の透明フィルムにおいて、前記含銅酸化セルロースナノファイバーの数平均繊維長は50nm以上2000nm以下であることが好ましい。
含銅酸化セルロースナノファイバーの数平均繊維長が上記下限以上であれば、透明フィルムに十分に高い機械的強度を付与できる。
一方、含銅酸化セルロースナノファイバーの数平均繊維長が上記上限以下であれば、含銅酸化セルロースナノファイバーの分散性が確保され、透明フィルムを効率的に製造できる。また、透明フィルムの透明性を向上できる。
本明細書において、含銅酸化セルロースナノファイバーの「数平均繊維長」は、原子間力顕微鏡を用いて含銅酸化セルロースナノファイバー5本以上の繊維長を測定し、測定した繊維長の個数平均を算出することにより求めることができる。原子間力顕微鏡としては、例えば、Dimension FastScan AFM(BRUKER社製、Tapping mode)を使用できる。
【0009】
[3]上記[1]又は[2]の透明フィルムにおいて、前記含銅酸化セルロースナノファイバーの平均重合度は100以上2000以下であることが好ましい。
含銅酸化セルロースナノファイバーの平均重合度が上記下限以上であれば、透明フィルムに十分に高い機械的強度を付与できる。
一方、含銅酸化セルロースナノファイバーの平均重合度が上記上限以下であれば、含銅酸化セルロースナノファイバーの分散性が確保され、透明フィルムを効率的に製造できる。
本明細書において、含銅酸化セルロースナノファイバーの「平均重合度」は、例えば、「Isogai,A.,Mutoh,N.,Onabe,F.,Usuda,M.,“Viscosity measurements of cellulose/SO2-amine-dimethylsulfoxide solution”,Sen’i Gakkaishi,45,299-306(1989).」に準拠して測定できる。
【0010】
[4]上記[1]~[3]の何れかの透明フィルムにおいて、前記含銅酸化セルロースナノファイバーは含銅カルボキシ化セルロースナノファイバーであることが好ましい。
含銅酸化セルロースナノファイバーが含銅カルボキシ化セルロースナノファイバーであれば、含銅酸化セルロースナノファイバーの分散性が確保され、透明フィルムを効率的に製造できる。
【0011】
[5]上記[1]~[4]の何れかの透明フィルムにおいて、波長550nmの光の光透過率は80%以上であることが好ましい。
波長550nmの光の光透過率が上記下限以上であれば、透明フィルムの透明性を向上できる。
本明細書において、透明フィルムの光透過率の測定は、実施例に記載の方法に従って行うことができる。
【0012】
[6]上記[1]~[5]の何れかの透明フィルムにおいて、波長800nmの光の光透過率は80%以下であることが好ましい。
波長800nmの光の光透過率が上記上限以下であれば、透明フィルムの近赤外線吸収性を向上できる。
【0013】
[7]上記[1]~[6]の何れかの透明フィルムにおいて、波長550nmの光の光透過率から波長800nmの光の光透過率を差し引いた値は10%以上であることが好ましい。
上記値が上記下限以上であれば、透明フィルムの光吸収選択性を向上できる。
【0014】
[8]上記[1]~[7]の何れかの透明フィルムにおいて、算術平均高さSaは60μm以下であることが好ましい。
算術平均高さSaが上記上限以下であれば、透明フィルムの平滑性を向上できる。
本明細書において、透明フィルムの算術平均高さSaは、実施例に記載の方法に従って測定できる。
【0015】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、[9]本発明は、上記[1]~[8]の何れかの透明フィルムの製造方法であって、数平均繊維径が100nm以下であり、且つ、銅を塩の形で含有する含銅酸化セルロースナノファイバーを分散媒中に分散して分散液を得る、分散工程と、前記分散液を乾燥してフィルムを得る、乾燥工程と、を含む、透明フィルムの製造方法である。
上記透明フィルムの製造方法であれば、本発明の透明フィルムを得ることができる。
【0016】
[10]上記[9]の透明フィルムの製造方法において、分散媒は水であることが好ましい。
分散媒が水であれば、分散液中で含銅酸化セルロースナノファイバーが良好に分散し、透明フィルムの生産性を向上できる。
【0017】
[11]上記[9]又は[10]の透明フィルムの製造方法は、前記乾燥工程において、乾燥中の相対湿度が50%以上95%以下であることが好ましい。
乾燥中の相対湿度が上記下限以上であれば、得られる透明フィルムの平滑性を向上できる。
一方、乾燥中の相対湿度が上記上限以下であれば、乾燥速度を速め、透明フィルムの生産性を向上できる。
【0018】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、[12]本発明は、上記[1]~[8]の何れかの透明フィルムを備える、近赤外線吸収フィルターである。
上記のような近赤外線吸収フィルターは、所望の性能に優れている。
【0019】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、[13]本発明は、上記[1]~[8]の何れかに記載の透明フィルムを備える、遮熱フィルターである。
上記のような遮熱フィルターは、所望の性能に優れている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、近赤外線吸収性及び透明性に優れる透明フィルムを提供できる。
また、本発明によれば、上記透明フィルムの製造方法を提供できる。
また、本発明によれば、上記透明フィルムを備える近赤外線吸収フィルターを提供できる。
また、本発明によれば、上記透明フィルムを備える遮熱フィルターを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1で得られたフィルムの光透過率の測定結果を示すグラフである。
図2】実施例2で得られたフィルムの光透過率の測定結果を示すグラフである。
図3】比較例1で得られたフィルムの光透過率の測定結果を示すグラフである。
図4】比較例2で得られたフィルムの光透過率の測定結果を示すグラフである。
図5】比較例3で得られたフィルムの光透過率の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の透明フィルムは、例えば、デジタル撮影機材に内蔵されているCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)といったイメージセンサ部位、所望の光が当たることで文字や絵が浮かび上がる又は消滅する等の高いセキュリティ性が必要な媒体、色素増感太陽電池、眼鏡、サングラス等に近赤外線を吸収及び/又はカットする目的で取り付けられる近赤外線吸収フィルター(近赤外線カットフィルター);窓材、水槽等に熱を遮断する目的で取り付けられる遮熱フィルター;等に好適に用いることができる。
なお、本発明の透明フィルムは、例えば、後述する本発明の透明フィルムの製造方法を用いて製造できる。
【0023】
(透明フィルム)
本発明の透明フィルムは、数平均繊維径が100nm以下であり、且つ、銅を塩の形で含有する含銅酸化セルロースナノファイバーからなるものである。
上記のような透明フィルムは、近赤外線吸収性及び透明性に優れている。
なお、本発明の透明フィルムは所定の含銅酸化セルロースナノファイバーからなるものであるため、通常、製造時に不可避的に混入する不純物以外の成分を含んでいない。ここで、本発明の透明フィルム中における含銅酸化セルロースナノファイバーの含有割合は、通常は99質量%以上、好ましくは99.5質量%以上、より好ましくは99.9質量%以上である。
【0024】
<銅を塩の形で含有する含銅酸化セルロースナノファイバー>
本発明の透明フィルムを構成する含銅酸化セルロースナノファイバーは、銅を塩の形で含有する。このような含銅酸化セルロースナノファイバーを用いることで、透明フィルムに優れた近赤外線吸収性を発揮させることができる。
なお、以下では、銅を塩の形で含有する含銅酸化セルロースナノファイバーを単に「含銅酸化セルロースナノファイバー」と称する場合がある。
【0025】
含銅酸化セルロースナノファイバーは、含銅カルボキシ化セルロースナノファイバーであることが好ましい。含銅酸化セルロースナノファイバーが含銅カルボキシ化セルロースナノファイバーであれば、含銅酸化セルロースナノファイバーの分散性が確保され、透明フィルムを効率的に製造できる。
【0026】
ここで、上記含銅カルボキシ化セルロースナノファイバーを構成するカルボキシ化セルロースナノファイバーは、原料セルロースのβ-グルコース単位の6位の1級水酸基が、アルデヒド基を経てカルボキシ基まで酸化されたものである。含銅カルボキシ化セルロースナノファイバーに所望の特性を十分に付与する観点からは、カルボキシ化セルロースナノファイバーにおいて、上記1級水酸基は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上がカルボキシ基まで酸化されていることが好ましい。
なお、上記含銅カルボキシ化セルロースナノファイバーのカルボキシ基量は、特開2016-141777号公報又は特開2019-199622号公報に記載されている方法に従って測定できる。
【0027】
上記含銅酸化セルロースナノファイバー中の銅の量は、得られる透明フィルムに所望の特性を付与することができる限り限定されない。例えば、上記含銅カルボキシ化セルロースナノファイバーにおいて、銅は、カルボキシ化セルロースナノファイバーのカルボキシ基のモル量の1/3以上の割合で存在していることが好ましく、1/2以上の割合で存在していることがより好ましい。含銅酸化セルロースナノファイバーにおける銅の含有割合が大きいほど、得られる透明フィルムの近赤外線吸収性を向上させることができる。
なお、含銅酸化セルロースナノファイバー中の銅は、例えば、特開2016-141777号公報又は特開2019-199622号公報に記載されている方法に従って、ICP-AES法により定性及び定量できる。
【0028】
含銅酸化セルロースナノファイバーは、数平均繊維径が100nm以下である必要がある。このような含銅酸化セルロースナノファイバーを用いることで、透明フィルムに優れた透明性を発揮させることができる。
そして、含銅酸化セルロースナノファイバーの数平均繊維径は、50nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが更に好ましい。
含銅酸化セルロースナノファイバーの数平均繊維径が上記上限以下であれば、透明フィルムの透明性を向上できる。
一方、含銅酸化セルロースナノファイバーの数平均繊維径は、例えば0.5nm以上であり、1nm以上でもよい。
【0029】
含銅酸化セルロースナノファイバーの数平均繊維長は、50nm以上であることが好ましく、70nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることが更に好ましく、400nm以上であることが更により好ましく、2000nm以下であることが好ましく、1500nm以下であることがより好ましく、1000nm以下であることが更に好ましく、600nm以下であることが更により好ましい。
含銅酸化セルロースナノファイバーの数平均繊維長が上記下限以上であれば、透明フィルムに十分に高い機械的強度を付与できる。
一方、含銅酸化セルロースナノファイバーの数平均繊維長が上記上限以下であれば、含銅酸化セルロースナノファイバーの分散性が確保され、透明フィルムを効率的に製造できる。また、透明フィルムの透明性を向上できる。
なお、含銅酸化セルロースナノファイバーの数平均繊維長は、例えば、原料として使用する天然セルロースの数平均繊維長や酸化処理条件、酸化処理後のカルボキシ化セルロースナノファイバーを分散(解繊)させる条件を変更することによって調整することができる。具体的には、分散処理(解繊処理)の時間を長くすれば、数平均繊維長を短くすることができる。
【0030】
含銅酸化セルロースナノファイバーの平均重合度(セルロース分子中に含まれるグルコース単位の数の平均値)は、100以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましく、500以上であることが更に好ましく、2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、1000以下であることが更に好ましく、700以下であることが更により好ましい。
含銅酸化セルロースナノファイバーの平均重合度が上記下限以上であれば、透明フィルムに十分に高い機械的強度を付与できる。
一方、含銅酸化セルロースナノファイバーの平均重合度が上記上限以下であれば、含銅酸化セルロースナノファイバーの分散性が確保され、透明フィルムを効率的に製造できる。
なお、含銅酸化セルロースナノファイバーの平均重合度は、原料として使用する天然セルロースの平均重合度や酸化処理条件、酸化処理後のカルボキシ化セルロースナノファイバーを分散(解繊)させる条件、銅置換工程後に分散(解繊)させる条件等を変更することにより調整することができる。
【0031】
そして、上述した含銅酸化セルロースナノファイバーは、例えば、特開2016-141777号公報や、特開2019-199622号公報に記載されている方法に従って製造することができる。
なお、上記のように製造された含銅酸化セルロースナノファイバーは、通常、水等の分散媒中に分散された分散液として得られる。
【0032】
<透明フィルムの性状>
本発明の透明フィルムは、波長550nmの光の光透過率が、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることが更に好ましい。
波長550nmの光の光透過率が上記下限以上であれば、透明フィルムの透明性を向上できる。
一方、透明フィルムにおける波長550nmの光の光透過率は、例えば99%以下であり、95%以下でもよく、90%以下でもよい。
【0033】
本発明の透明フィルムは、波長800nmの光の光透過率が、85%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、60%以下であることが更に好ましい。
上記値が上記上限以下であれば、透明フィルムの光吸収選択性を向上できる。
一方、透明フィルムにおける波長800nmの光の光透過率は、例えば10%以上であり、20%以上でもよく、30%以上でもよい。
【0034】
本発明の透明フィルムは、波長550nmの光の光透過率から波長800nmの光の光透過率を差し引いた値が、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることが更に好ましい。
上記値が上記下限以上であれば、透明フィルムの光吸収選択性を向上できる。
一方、透明フィルムにおける上記値は、例えば80%以下であり、60%以下でもよく、50%以下でもよい。
【0035】
本発明の透明フィルムは、算術平均高さSaが、70μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、55μm以下であることが更に好ましい。
算術平均高さSaが上記上限以下であれば、透明フィルムの平滑性を向上できる。
一方、透明フィルムの算術平均高さSaは、例えば10μm以上であり、20μm以上でもよく、30μm以上でもよい。
なお、透明フィルムの算術平均高さSaは、後述する透明フィルムにおける乾燥工程の乾燥温度や乾燥中の相対湿度等により調整できる。
【0036】
本発明の透明フィルムは、厚みが、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが更に好ましく、100μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。
透明フィルムの厚みが上記下限以上であれば、透明フィルムの近赤外線吸収性を向上できる。
一方、透明フィルムの厚みが上記上限以下であれば、透明フィルムの透明性を向上できる。
本明細書において、透明フィルムの「厚み」は、実施例に記載の方法に従って測定できる。
【0037】
(透明フィルムの製造方法)
本発明の透明フィルムの製造方法は、数平均繊維径が100nm以下であり、且つ、銅を塩の形で含有する含銅酸化セルロースナノファイバーを分散媒中に分散して分散液を得る、分散工程と、分散液を乾燥してフィルムを得る、乾燥工程と、を含む。
上記透明フィルムの製造方法であれば、本発明の透明フィルムを得ることができる。即ち、近赤外線吸収性及び透明性に優れた透明フィルムを得ることができる。
なお、本発明の透明フィルムの製造方法は、任意に、分散工程及び乾燥工程以外の工程(以下、「その他の工程」と称する場合がある。)を更に含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、分散工程で得られた分散液中の溶存ガスを取り除く脱泡工程、乾燥工程の前に分散液を塗布して塗布膜を得る塗布工程等が挙げられる。
【0038】
<分散工程>
分散工程では、数平均繊維径が100nm以下であり、且つ、銅を塩の形で含有する含銅酸化セルロースナノファイバーを分散媒中に分散して分散液を得る。
【0039】
銅を塩の形で含有する含銅酸化セルロースナノファイバーとしては、上述したものを用いることができる。
なお、含銅酸化セルロースナノファイバーの調製において、含銅酸化セルロースナノファイバーを分散液の状態で得た場合には、該分散液をそのまま本発明の透明フィルムの製造方法に用いることができる。
【0040】
ここで、分散液中における含銅酸化セルロースナノファイバーの固形分濃度は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
分散液中における含銅酸化セルロースナノファイバーの固形分濃度が上記下限以上であれば、透明フィルムを効率的に得ることができる。
一方、分散液中における含銅酸化セルロースナノファイバーの固形分濃度が上記上限以下であれば、分散液の分散状態が良好になり、得られる透明フィルムの厚みのムラを効果的に抑制できる。
なお、分散液中における含銅酸化セルロースナノファイバーの固形分濃度は、後述する分散媒の使用量や、固形分濃度が低い分散液をエバポレーター等を用いて濃縮することで調整できる。
【0041】
分散液に用いられる分散媒は、含銅酸化セルロースナノファイバーを分散できるものであれば特に限定されないが、分散液中で含銅酸化セルロースナノファイバーが良好に分散し、透明フィルムの生産性を向上できることから、水が好ましい。ここで、分散媒として水を用いる場合、分散液に含まれる水は、例えば、含銅酸化セルロースナノファイバーの調製において、含銅酸化セルロースナノファイバーを水分散液の状態で得た場合には、該水分散液に由来する水であってもよい。
【0042】
<乾燥工程>
乾燥工程では、分散工程で得られた分散液を乾燥してフィルムを得る。本工程にて得られたフィルムを本発明の透明フィルムとしてもよい。
なお、分散液の乾燥は、例えば、得られるフィルムの形状に合わせて、所定の形状を有する容器に分散液を入れた後に行ってもよい。
【0043】
分散液の乾燥温度は、分散媒が蒸発する温度であれば特に限定されないが、20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、35℃以上であることが更に好ましい。
一方、分散液の乾燥温度は、急激な乾燥を抑制して、得られる透明フィルムの着色を効果的に抑制でき、且つ、平滑性を向上できることから、60℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、45℃以下であることが更に好ましい。
【0044】
ここで、乾燥中の相対湿度は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、85%以下であることが更に好ましい。
乾燥中の相対湿度が上記下限以上であれば、得られる透明フィルムの平滑性を向上できる。
一方、乾燥中の相対湿度が上記上限以下であれば、乾燥速度を速め、透明フィルムの生産性を向上できる。
【0045】
乾燥時間は、特に限定されないが、通常1日以上5日以下である。
【0046】
なお、乾燥には、特に限定されないが、恒温恒湿槽等の温度及び湿度を同時に制御可能な乾燥器等を用いることができる。
【0047】
(近赤外線吸収フィルター)
本発明の近赤外線吸収フィルターは、本発明の透明フィルムを備えるものである。本発明の近赤外線吸収フィルターは、本発明の透明フィルムを備えるものであるため、近赤外線吸収性、透明性及び光吸収選択性に優れている。
【0048】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、本発明の透明フィルムからなるものであってもよいが、本発明の目的を損なわない範囲において、支持体上に本発明の透明フィルムが設けられたものであってもよい。なお、透明フィルムは、特に限定されないが、接着層等を介して支持体上に設けられていてもよい。
ここで、本発明の近赤外線吸収フィルターが任意に備え得る支持体としては、例えば、シリコン、無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス等の材質で構成された基材、銅を含有するガラス基材、樹脂基材等の透明な基材等が挙げられる。
【0049】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、本発明の透明フィルム及び上述した任意の支持体の他に、誘電体多層膜、紫外線吸収層等を更に備えていてもよい。近赤外線吸収フィルターが誘電体多層膜を更に備えていれば、近赤外線吸収フィルターは、広い視野角及び優れた赤外線遮蔽性を発揮し得る。また、近赤外線吸収フィルターが紫外線吸収層を更に備えていれば、近赤外線吸収フィルターは、優れた紫外線遮蔽性を発揮し得る。
なお、本発明の近赤外線吸収フィルターが任意に備え得る誘電体多層膜としては、例えば、特開2014-41318号公報に記載された誘電体多層膜を用いることができる。
なお、本発明の近赤外線吸収フィルターが任意に備え得る紫外線吸収層としては、例えば、国際公開第2015/099060号に記載された吸収層を用いることができる。
【0050】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、例えば、デジタル撮影機材に内蔵されているCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)といったイメージセンサ部位、所望の光が当たることで文字や絵が浮かび上がる又は消滅する等の高いセキュリティ性が必要な媒体、色素増感太陽電池、眼鏡、サングラス等に用いることができる。
【0051】
(遮熱フィルター)
本発明の遮熱フィルターは、本発明の透明フィルムを備えるものである。本発明の遮熱フィルターは、本発明の透明フィルムを備えるものであるため、近赤外線吸収性に優れ、その結果、遮熱特性に優れている。
【0052】
本発明の遮熱フィルターは、本発明の透明フィルムからなるものであってもよいが、本発明の目的を損なわない範囲において、支持体上に本発明の透明フィルムが設けられたものであってもよい。なお、透明フィルムは、特に限定されないが、接着層等を介して支持体上に設けられていてもよい。
ここで、本発明の遮熱フィルターが任意に備え得る支持体としては、上述した支持体と同様のものを用いることができる。
【0053】
本発明の遮熱フィルターは、例えば、窓材、水槽等に用いることができる。特に、遮熱フィルターを窓材に用いることで、例えば、窓材の内側(例えば、室内等)の赤外線による温度上昇を抑えつつ、外の明るさを効果的に維持すること(例えば、屋外の明るさを効果的に室内に取り込むこと)ができる。
【実施例0054】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における各種の測定及び評価については、以下の方法に従って行なった。
【0055】
<フィルムの厚み>
実施例及び比較例におけるフィルムの厚みは、デジマチックシックネスゲージ(ID-C112XBS:ミツトヨ社製)を用いて測定した。
【0056】
<フィルムの算術平均高さSa>
実施例及び比較例におけるフィルムの算術平均高さSaは、デジタルマイクロスコープ(VHX-6000:キーエンス社製)を用いて測定した。具体的には、ISO 25178に準拠して、フィルムの任意の133.36μm×150.00μmの範囲内の算術平均高さSaを測定し、これをフィルムの算術平均高さSaとした。
【0057】
<フィルムの光透過率>
実施例及び比較例におけるフィルムの光透過率は。紫外可視近赤外分光光度計(V-570:日本分光社製)を用いて測定した。なお、測定は、波長200nm~2500nmの範囲で行った。そして、波長550nm及び波長800nmの光の光透過率を読み取った。
【0058】
<透明性>
上記で測定したフィルムの光透過率において、波長550nmの光の光透過率の値を用いて、以下の基準に従って透明性を評価した。
A:波長550nmの光の光透過率の値が85%以上であった。
B:波長550nmの光の光透過率の値が80%以上85%未満であった。
C:波長550nmの光の光透過率の値が70%以上80%未満であった。
D:波長550nmの光の光透過率の値が70%未満であった。
【0059】
<近赤外線吸収性>
上記で測定したフィルムの光透過率において、波長800nmの光の光透過率の値を用いて、以下の基準に従って近赤外線吸収性を評価した。
A:波長800nmの光の光透過率の値が60%以下であった。
B:波長800nmの光の光透過率の値が60%超80%以下であった。
C:波長800nmの光の光透過率の値が80%超85%以下であった。
D:波長800nmの光の光透過率の値が85%超であった。
【0060】
<光吸収選択性>
上記で測定したフィルムの光透過率において、波長550nmの光の光透過率から波長800nmの光の光透過率を差し引いた値(550nm-800nm)を用いて、以下の基準に従って光吸収選択性を評価した。
A:上記550nm-800nmの値が20%以上であった。
B:上記550nm-800nmの値が10%以上20%未満であった。
C:上記550nm-800nmの値が5%以上10%未満であった。
D:上記550nm-800nmの値が5%未満であった。
【0061】
<平滑性>
フィルムの表面を目視で確認して、以下の基準に従って平滑性を評価した。
A:フィルムの表面が平滑であった。
B:フィルムの表面に皺が生じていた。
【0062】
(実施例1)
<ナトリウム含有TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液の調製>
乾燥重量で1g相当分の針葉樹漂白クラフトパルプ、5mmolの次亜塩素酸ナトリウム、0.1g(1mmol)の臭化ナトリウム及び0.016g(1mmol)のTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)を100mLの水に分散させ、室温で4時間穏やかに撹拌し、蒸留水で洗浄することで、TEMPO触媒酸化パルプ(酸化セルロース)を得た。なお、得られたTEMPO触媒酸化パルプのカルボキシ基量は、1.4mmol/gであった。
その後、未乾燥のTEMPO触媒酸化パルプに蒸留水を加え、固形分濃度0.1%の水分散液を調製した。そして、水分散液に、ホモジナイザー(マイクロテック・ニチオン製、ヒスコトロン)を使用して7.5×1000rpmで2分間、超音波ホモジナイザー(nissei製、Ultrasonic Generator)を使用し、容器の周りを氷で冷やしながら、V-LEVEL4、TIP26Dで4分間の解繊処理を施すことで、TEMPO酸化セルロースナノファイバーとしてTEMPOカルボキシ化セルロースナノファイバーを含む水分散液を得た。その後、TEMPOカルボキシ化セルロースナノファイバー水分散液から、遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用した遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により未解繊成分を取り除き、透明な液体である濃度0.1質量%のTEMPOカルボキシ化セルロースナノファイバー水分散液を得た。なお、TEMPOカルボキシ化セルロースナノファイバーは、共酸化剤由来のナトリウムを塩の形で含有していた。即ち、上記の操作においては、ナトリウム含有TEMPO酸化セルロースナノファイバー(以下、単に「TOCN-Na」と称する場合がある。)水分散液を得た。
【0063】
<水素置換されたTEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液の調製>
100mLのTOCN-Na水分散液に対し、撹拌下で1Mの塩酸1mLを加えてpHを1に調整した。そして、60分間撹拌を継続した。
その後、塩酸の添加によりゲル化したTEMPOカルボキシ化セルロースナノファイバーを遠心分離(12000G)により回収し、回収したTEMPOカルボキシ化セルロースナノファイバーを1Mの塩酸及び多量の蒸留水で順次洗浄した。
次に、100mLの蒸留水を加え、水素置換されたTEMPOカルボキシ化セルロースナノファイバーが分散した濃度0.1質量%の水素置換されたTEMPOカルボキシ化セルロースナノファイバー(以下、単に「TOCN-H」と称する場合がある。)水分散液を得た。なお、TOCN-Hの表面のカルボキシ基は、Biomacromolecules (2011年,第12巻,第518-522ページ)に従いFT-IR(日本分光社製、FT/IR-6100)で測定したところ、90%以上がカルボン酸型に置換されていた。
【0064】
<銅含有TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液の調製(分散工程)>
上記濃度0.1質量%のTOCN-H水分散液50gを撹拌し、そこへ濃度0.1質量%の酢酸銅(II)水溶液18gを加え、室温で3時間撹拌を継続した。その後、酢酸銅(II)水溶液の添加によりゲル化したカルボキシ化セルロースナノファイバーを遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用して遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により回収した後、濃度0.1質量%の酢酸銅(II)水溶液にて回収したセルロースナノファイバーを洗浄し、次に、回収したセルロースナノファイバーを多量の蒸留水で洗浄した。
その後、50mLの蒸留水を加え、超音波ホモジナイザー(nissei製、Ultrasonic Generator)を使用し、容器の周りを氷で冷やしながら、V-LEVEL4、TIP26Dで超音波処理(2分間)を行うことで、銅イオンで置換されたTEMPOカルボキシ化セルロースナノファイバーを分散させた。その後、銅イオンで置換されたTEMPOカルボキシ化セルロースナノファイバー水分散液から、遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用した遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により未解繊成分を取り除いた。以上により、固形分濃度0.1質量%の銅含有TEMPO酸化セルロースナノファイバー(以下、単に「TOCN-Cu」と称する場合がある。)水分散液を得た。その後、この水分散液を、エバポレーターを用いて濃縮し、固形分濃度0.4質量%のTOCN-Cu水分散液を得た。
【0065】
<フィルムの作製(乾燥工程)>
上記で得られたTOCN-Cu水分散液をAGCテクノグラス社製の組織培養用無処理ディッシュ60mmに20g入れた。そして、この組織培養用無処理ディッシュを、温度40℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽に4日間入れて、表面が平滑な青色透明なフィルムを得た。
得られたフィルムを用いて、各種測定及び評価を行った。結果を表1及び図1に示す。
【0066】
(実施例2)
フィルムの作製において、TOCN-Cu水分散液を組織培養用無処理ディッシュ60mmに10g入れたこと以外は、実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表1及び図2に示す。なお、得られたフィルムは、表面が平滑で青色透明であった。
【0067】
(実施例3)
フィルムの作製において、TOCN-Cu水分散液を入れた組織培養用無処理ディッシュを、湿度管理をせずに(相対湿度:約5%)、温度40℃のオーブンに4日間入れたこと以外は、実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表1に示す。なお、得られたフィルムは、青色透明であったが、皺が入り波打った表面を有していた。
【0068】
(比較例1)
上記したナトリウム含有TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液の調製で得られた固形分濃度0.1質量%のTOCN-Na水分散液を、エバポレーターを用いて固形分濃度0.4%まで濃縮し、固形分濃度0.4%のTOCN-Na水分散液を得た。
そして、固形分濃度0.4質量%のTOCN-Cu水分散液に替えて、上記で得られた固形分濃度0.4%のTOCN-Na水分散液をフィルムの作製に用いたこと以外は、実施例2と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表1及び図3に示す。なお、得られたフィルムは、表面が平滑で無色透明であった。
【0069】
(比較例2)
フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製、G2R)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、各種測定及び評価を行った。結果を表1及び図4に示す。
【0070】
(比較例3)
フィルムとして、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(日本ゼオン社製、ZF-16)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、各種測定及び評価を行った。結果を表1及び図5に示す。
【0071】
(比較例4)
固形分濃度20%のナトリウム含有TEMPO酸化パルプ(TOC-Na)を蒸留水で希釈して固形分濃度0.1%のTOC-Na水分散液を得た。この分散液のTOC-Naの表面のカルボキシ基のナトリウム対イオンを、酢酸銅を用いて銅イオンに置換し、銅イオンで置換されたTEMPO酸化パルプ(TOC-Cu)水分散液(固形分濃度0.1質量%)を得た。得られた固形分濃度が0.1質量%のTOC-Cu水分散液を、エバポレーターを用いて固形分濃度0.4質量%まで濃縮し、固形分濃度が0.4質量%のTOC-Cu水分散液を得た。
そして、固形分濃度0.4質量%のTOCN-Cu水分散液に替えて、上記で得られた固形分濃度0.4%のTOC-Cu水分散液をフィルムの作製に用いたこと以外は、実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表1に示す。なお、得られたフィルムは、表面が平滑であったが、青色不透明であった。
【0072】
なお、表1中、
「CNF」は、セルロースナノファイバーを示し、
「CMF」は、セルロースマイクロファイバーを示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1からも明らかなように、実施例1~3のフィルムは、近赤外線吸収性及び透明性に優れた透明フィルムであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、近赤外線吸収性及び透明性に優れる透明フィルムを提供できる。
また、本発明によれば、上記透明フィルムの製造方法を提供できる。
また、本発明によれば、上記透明フィルムを備える近赤外線吸収フィルターを提供できる。
また、本発明によれば、上記透明フィルムを備える遮熱フィルターを提供できる。
図1
図2
図3
図4
図5