(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141947
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241003BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241003BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/78 B
H01L21/78 M
H01L21/78 X
H01L21/68 N
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053836
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本木 智子
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 誠
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CA06
4E168CB22
4E168HA01
4E168JA12
4E168JA13
5F063AA15
5F063AA18
5F063BA07
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5F131EC65
5F131EC75
(57)【要約】
【課題】分割性を低下させることなくデバイスチップの汚染を抑制することができる被加工物の加工方法を提供すること。
【解決手段】被加工物の加工方法は、交差する複数の分割予定ラインに区画された領域にデバイスが形成された表面を有する被加工物の加工方法であって、被加工物の裏面側から分割予定ラインに沿って加工溝を形成する加工溝形成ステップ101と、加工溝形成ステップ101の後に、被加工物の裏面に保護部材を貼着して加工溝に保護部材を密着させる密着ステップ102と、密着ステップ102の後に、被加工物の表面側より分割予定ラインに沿って被加工物にレーザー光線を照射して、被加工物を分割予定ラインに沿って分割する分割ステップ103とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差する複数の分割予定ラインに区画された領域にデバイスが形成された表面を有する被加工物の加工方法であって、
該被加工物の裏面側から該分割予定ラインに沿って加工溝を形成する加工溝形成ステップと、
該加工溝形成ステップの後に、該被加工物の裏面に保護部材を貼着して該加工溝に該保護部材を密着させる密着ステップと、
該密着ステップの後に、該被加工物の表面側より該分割予定ラインに沿って該被加工物にレーザー光線を照射して、該被加工物を該分割予定ラインに沿って分割する分割ステップと、
を備える被加工物の加工方法。
【請求項2】
該分割ステップは、
該被加工物の表面側より該分割予定ラインに沿って該被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を照射し、該被加工物の内部に分割起点を形成する分割起点形成ステップと、
該分割起点形成ステップの後に、該保護部材を拡張して該被加工物を分割する拡張ステップと、
を備える請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項3】
該分割起点形成ステップにおける該分割起点は該加工溝の底部にまで到達するように形成されることを特徴とする請求項2に記載の被加工物の加工方法。
【請求項4】
該密着ステップは、真空チャンバー内で該被加工物の裏面に該保護部材をマウントすることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交差する複数の分割予定ラインに区画された領域にデバイスが形成された表面を有する被加工物を裏面側から切削ブレードで分割予定ラインに沿って切削し、複数のデバイスチップに分割する加工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に示された加工方法は、分割予定ライン上に段差が形成された被加工物を裏面側から切削した場合、段差が起因してデバイスに達するラテラルクラックを引き起こすことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その為、被加工物の裏面側から分割予定ラインに沿って切削して表面側に至らない切削溝を形成した後、今度は表面側から分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射し、被加工物の内部に形成された改質層を起点として分割する方法が提案された。
【0006】
しかしながら分割性を向上させる為に切削溝の底部まで至る改質層をレーザー光線で形成しようとした場合、切削溝の底部からデブリが飛散し、デバイスチップを汚染させるという新たな課題が発生した。
【0007】
本発明の目的は、分割性を低下させることなくデバイスチップの汚染を抑制することができる被加工物の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の加工方法は、交差する複数の分割予定ラインに区画された領域にデバイスが形成された表面を有する被加工物の加工方法であって、該被加工物の裏面側から該分割予定ラインに沿って加工溝を形成する加工溝形成ステップと、該加工溝形成ステップの後に、該被加工物の裏面に保護部材を貼着して該加工溝に該保護部材を密着させる密着ステップと、該密着ステップの後に、該被加工物の表面側より該分割予定ラインに沿って該被加工物にレーザー光線を照射して、該被加工物を該分割予定ラインに沿って分割する分割ステップと、を備えることを特徴とする。
【0009】
前記被加工物の加工方法において、該分割ステップは、該被加工物の表面側より該分割予定ラインに沿って該被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を照射し、該被加工物の内部に分割起点を形成する分割起点形成ステップと、該分割起点形成ステップの後に、該保護部材を拡張して該被加工物を分割する拡張ステップと、を備えても良い。
【0010】
前記被加工物の加工方法において、該分割起点形成ステップにおける該分割起点は該加工溝の底部にまで到達するように形成されても良い。
【0011】
前記被加工物の加工方法において、該密着ステップは、真空チャンバー内で該被加工物の裏面に該保護部材をマウントしても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、分割性を低下させることなくデバイスチップの汚染を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の加工対象の被加工物を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2に示された被加工物の加工方法の加工溝形成ステップを模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示された被加工物の加工方法の密着ステップにおいて真空チャンバーの支持テーブルに被加工物及び環状フレームを支持した状態を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示された被加工物及び環状フレームに保護部材を密着させた状態を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示された被加工物の加工方法の密着ステップ後の被加工物を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図2に示された被加工物の加工方法の分割起点形成ステップを模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図2に示された被加工物の加工方法の分割起点形成ステップ後の被加工物の要部を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図2に示された被加工物の加工方法の拡張ステップを模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態1の変形例1に係る被加工物の加工方法の加工溝形成ステップを模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態1の変形例2に係る被加工物の加工方法の分割ステップを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0015】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の加工対象の被加工物を模式的に示す斜視図である。
図2は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の流れを示すフローチャートである。
【0016】
(被加工物)
実施形態1に係る被加工物の加工方法は、
図1に示す被加工物1を加工する方法である。実施形態1に係る被加工物の加工方法の加工対象の
図1に示す被加工物1は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを基板2とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハである。被加工物1は、
図1に示すように、基板2の表面3に交差する複数の分割予定ライン4が設定されている。被加工物1は、分割予定ライン4によって区画された各領域にデバイス5が形成された表面3を有している。
【0017】
デバイス5は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、LED(Light-Emitting Diode)等の光学素子、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)又は半導体メモリ(半導体記憶装置)である。
【0018】
被加工物1は、デバイス5が基板2の表面3から突出して、基板2の表面3とデバイス5との間に段差が形成されている。また、実施形態1において、被加工物1は、基板2の表面3の裏側の裏面6に金属膜7が形成されている。実施形態1において、被加工物1は、分割予定ライン4に沿って個々のデバイスチップ10に分割される。デバイスチップ10は、基板2の一部と、基板2の表面3に形成されたデバイス5とを含む。
【0019】
(被加工物の加工方法)
実施形態1に係る被加工物の加工方法は、被加工物1を分割予定ライン4に沿って個々のデバイスチップ10に分割する方法でもある。被加工物の加工方法は、
図2に示すように、加工溝形成ステップ101と、密着ステップ102と、分割ステップ103とを備える。
【0020】
(加工溝形成ステップ)
図3は、
図2に示された被加工物の加工方法の加工溝形成ステップを模式的に示す断面図である。加工溝形成ステップ101は、被加工物1の裏面6側から分割予定ライン4に沿って加工溝11(
図3に示す)を形成するステップである。
【0021】
実施形態1において、加工溝形成ステップ101では、被加工物1の表面3側に保護テープ20を貼着し、切削装置30が、図示しないチャックテーブルの保持面に被加工物1の表面3側を保護テープ20を介して吸引保持する。なお、実施形態1では、保護テープ20は、非粘着性と可撓性を有する樹脂により構成された基材層と、基材層に積層されかつ粘着性と可撓性を有する樹脂により構成された糊層とを備え、糊層が被加工物1の表面3側に貼着される粘着テープであるが、本発明では、糊層を備えずに熱可塑性樹脂により構成されかつ被加工物1の表面3側に熱圧着される基材層のみから構成されるシートでも良い。
【0022】
実施形態1において、加工溝形成ステップ101では、切削装置30が、保持面に被加工物1の表面3側を吸引保持した後、撮像ユニットで被加工物1を撮像して分割予定ライン4を検出し、被加工物1の分割予定ライン4と切削ブレード31との位置合わせを行なうアライメントを遂行する。実施形態1において、加工溝形成ステップ101では、切削装置30は、
図3に示すように、被加工物1と切削ブレード31とを分割予定ライン4に沿って水平方向に沿って相対的に移動させながら、切削ブレード31を裏面6側から分割予定ライン4に切り込ませる。実施形態1において、加工溝形成ステップ101では、切削装置30が、切削ブレード31を被加工物1の基板2の厚みの中央までに切り込ませて、裏面6側に開口しかつ被加工物1を分割しない加工溝11をすべての分割予定ライン4に沿って被加工物1に形成する。
【0023】
(密着ステップ)
図4は、
図2に示された被加工物の加工方法の密着ステップにおいて真空チャンバーの支持テーブルに被加工物及び環状フレームを支持した状態を模式的に示す断面図である。
図5は、
図4に示された被加工物及び環状フレームに保護部材を密着させた状態を模式的に示す断面図である。
図6は、
図2に示された被加工物の加工方法の密着ステップ後の被加工物を模式的に示す断面図である。
【0024】
密着ステップ102は、加工溝形成ステップ101の後に、被加工物1の裏面6に保護部材21を貼着して、加工溝11に保護部材21を密着させるステップである。なお、実施形態1において、保護部材21は、糊層を備えずに熱可塑性樹脂により構成されかつ被加工物1の裏面6側に熱圧着される基材層のみから構成されるシートであるが、本発明では、非粘着性と可撓性を有する樹脂により構成された基材層と、基材層に積層されかつ粘着性と可撓性を有する樹脂により構成された糊層とを備え、糊層が被加工物1の裏面6側に貼着される粘着テープでもよい。
【0025】
実施形態1において、密着ステップ102では、保護テープ20を被加工物1から剥離し、真空マウンタ40の真空チャンバー41の上側筐体42から離れた真空チャンバー41の下側筐体43内の支持テーブル44の保持面に被加工物1の表面3側を載置する。また、実施形態1において、密着ステップ102では、支持テーブル44の保持面に内径が被加工物1の外径よりも大径な環状の環状フレーム8を載置する。実施形態1において、密着ステップ102では、
図4に示すように、支持テーブル44の保持面上の被加工物1の裏面6及び環状フレーム8上に保護部材21を載置する。
【0026】
実施形態1において、密着ステップ102では、真空マウンタ40が、上側筐体42を下側筐体43に密着させて、これら筐体42,43内を外部から遮断する。すると、これら筐体42,43間が保護部材21により区切られる。開閉弁421,431を閉じて、筐体42,43内を密閉し、開閉弁422,432を開いて、吸引源423,433により筐体42,43内を減圧しながら支持テーブル44内のヒータ45により被加工物1及び環状フレーム8を介して保護部材21を加熱して軟化させる。
【0027】
実施形態1において、密着ステップ102では、真空マウンタ40が、
図5に示すように、開閉弁422,432を閉じた後、開閉弁421を開いて、上側筐体42内を大気開放する。すると、保護部材21が、ヒータ45により加熱されて軟化し、筐体42,43間の圧力差により被加工物1及び環状フレーム8に熱圧着されて、
図6に示すように、加工溝11の内面に密に接触し、被加工物1及び環状フレーム8に接着される。
【0028】
実施形態1において、密着ステップ102では、被加工物1及び環状フレーム8に接着された保護部材21を環状フレーム8の内縁と外縁との間で切断して、
図6に示すように、被加工物1を保護部材21により環状フレーム8の内側の開口内に支持する。こうして、実施形態1において、密着ステップ102は、真空チャンバー41内で被加工物1の裏面6に保護部材21をマウント(貼着)する。
【0029】
(分割ステップ)
分割ステップ103は、密着ステップ102の後に、被加工物1の表面3側より分割予定ライン4に沿って被加工物1にレーザー光線52(
図7に示す)を照射して、被加工物1を分割予定ライン4に沿って分割するステップである。実施形態1において、分割ステップ103は、
図2に示すように、分割起点形成ステップ1031と、拡張ステップ1032とを備える。
【0030】
(分割起点形成ステップ)
図7は、
図2に示された被加工物の加工方法の分割起点形成ステップを模式的に示す断面図である。
図8は、
図2に示された被加工物の加工方法の分割起点形成ステップ後の被加工物の要部を模式的に示す断面図である。分割起点形成ステップ1031は、被加工物1の表面3側より分割予定ライン4に沿って被加工物1に対して透過性を有する波長のレーザー光線52を照射し、被加工物1の内部に分割起点である改質層12を形成するステップである。
【0031】
改質層12とは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。なお、改質層12の機械的な強度は、被加工物1の改質層12以外の箇所の機械的な強度よりも低い。
【0032】
実施形態1において、分割起点形成ステップ1031では、レーザー加工装置50が、図示しないチャックテーブルの保持面に保護部材21を介して被加工物1の裏面6側を吸引保持する。実施形態1において、分割起点形成ステップ1031では、レーザー加工装置50が、保持面に被加工物1の裏面6側を吸引保持した後、撮像ユニットで被加工物1を撮像して分割予定ライン4を検出し、被加工物1の分割予定ライン4とレーザー光線照射ユニット51との位置合わせを行なうアライメントを遂行する。
【0033】
実施形態1において、分割起点形成ステップ1031では、レーザー加工装置50が、
図7に示すように、被加工物1の基板2に対して透過性を有する波長のレーザー光線52の集光点53を被加工物1の分割予定ライン4の基板2の内部に位置付け、被加工物1とレーザー光線照射ユニット51とを分割予定ライン4に沿って水平方向に沿って相対的に移動させながら、レーザー光線照射ユニット51からレーザー光線52を表面3側から分割予定ライン4に照射する。
【0034】
すると、レーザー光線52の波長が被加工物1の基板2に対して透過性を有する波長であるために、被加工物1の基板2の内部に分割予定ライン4に沿って改質層12が形成される。また、実施形態1において、分割起点形成ステップ1031では、レーザー加工装置50が、改質層12が加工溝11の底部である底面13にまで到達し、
図8に示すように、基板2の厚み方向の改質層12の長さ121が加工溝11の底の厚み111の1/2を超えかつ加工溝11の底の厚み111以下となるように、集光点53を厚み方向に延在させて、レーザー光線52を照射する。こうして、実施形態1において、分割起点形成ステップ1031における分割起点である改質層12は、加工溝11の底面13にまで到達しかつ底面13から基板2の表面3よりも裏面6側の位置まで延在するように形成される。また、実施形態1において、分割起点形成ステップ1031では、
図8に示すように、加工溝11の底面13に改質層12に連なる穴122を形成する。
【0035】
(拡張ステップ)
図9は、
図2に示された被加工物の加工方法の拡張ステップを模式的に示す断面図である。拡張ステップ1032は、分割起点形成ステップ1031の後に、保護部材21を拡張して被加工物1を分割するステップである。
【0036】
実施形態1において、拡張ステップ1032では、拡張装置60が、
図9に示すように、クランプ機構61のフレーム載置プレート62とフレーム押さえプレート63との間に環状フレーム8を保持し、保護部材21の環状フレーム8と被加工物1との間に円筒状の拡張ドラム64の上端の拡張ローラー65を当接させる。実施形態1において、拡張ステップ1032では、拡張装置60が、クランプ機構61に対して拡張ドラム64を相対的に上方に移動させる。すると、保護部材21の環状フレーム8と被加工物1との間が押圧されて、保護部材21面方向に拡張される。
【0037】
拡張ステップ1032では、保護部材21の拡張の結果、保護部材21に放射状に引張力が作用する。このように被加工物1の裏面6側に貼付された保護部材21に放射状に引張力が作用すると、被加工物1は、分割予定ライン4に沿って改質層12が形成されているので、改質層12を基点として、分割予定ライン4に沿って個々のデバイスチップ10に分割される。こうして、個々に分割されたデバイスチップ10は、保護部材21からピックアップされる。
【0038】
以上説明した実施形態1に係る被加工物の加工方法は、加工溝形成ステップ101において被加工物1の裏面6側から被加工物1を分割しない加工溝11を形成した後、分割ステップ103においてレーザー光線52を表面3側より照射して被加工物1を個々のデバイスチップ10に分割する。このために、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、被加工物1の基板2の表面3とデバイス5との間の段差が起因してデバイス5に達するラテラルクラックを引き起こすことを抑制できる。
【0039】
また、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、密着ステップ102において保護部材21を加工溝11の内面に密着させて保護部材21を被加工物1の裏面6に接着する。このために、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、分割ステップ103においてレーザー光線52を照射して生じるデブリが保護部材21に貼着され、デブリが個々に分割されたデバイスチップ10を汚染することを抑制できる。
【0040】
その結果、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、基板2の表面3とデバイス5との間に段差が形成された被加工物1であっても、分割性を低下させることなくデバイスチップ10の汚染を抑制することができるという効果を奏する。
【0041】
〔変形例1〕
実施形態1の変形例1に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図10は、実施形態1の変形例1に係る被加工物の加工方法の加工溝形成ステップを模式的に示す断面図である。なお、
図10は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。なお、変形例1に係る被加工物の加工方法は、加工溝形成ステップ101が実施形態1と異なること以外、実施形態1と同じである。
【0042】
変形例1において、加工溝形成ステップ101では、被加工物1の表面3側に保護テープ20を貼着し、レーザー加工装置70が、図示しないチャックテーブルの保持面に被加工物1の表面3側を保護テープ20を介して吸引保持する。変形例1において、加工溝形成ステップ101では、レーザー加工装置70が、保持面に被加工物1の表面3側を吸引保持した後、撮像ユニットで被加工物1を撮像して分割予定ライン4を検出し、被加工物1の分割予定ライン4とレーザー光線照射ユニット71との位置合わせを行なうアライメントを遂行する。
【0043】
変形例1において、加工溝形成ステップ101では、レーザー加工装置70が、
図10に示すように、被加工物1の金属膜7及び基板2に対して吸収性を有する波長のレーザー光線72の集光点73を被加工物1の金属膜7の表面に位置付け、被加工物1とレーザー光線照射ユニット71とを分割予定ライン4に沿って水平方向に沿って相対的に移動させながら、レーザー光線照射ユニット71からレーザー光線72を裏面6側から分割予定ライン4に照射する。変形例1において、加工溝形成ステップ101では、レーザー加工装置70が、金属膜7及び基板2にアブレーション加工を施して、裏面6側に開口しかつ被加工物1を分割しない加工溝11をすべての分割予定ライン4に沿って被加工物1に形成する。
【0044】
変形例1に係る被加工物の加工方法は、加工溝形成ステップ101において被加工物1の裏面6側から被加工物1を分割しない加工溝11を形成した後、分割ステップ103において被加工物1を個々のデバイスチップ10に分割するとともに、密着ステップ102において保護部材21を加工溝11の内面に密着させて保護部材21を被加工物1の裏面6に接着する。その結果、変形例1に係る被加工物の加工方法は、実施形態1と同様に、基板2の表面3とデバイス5との間に段差が形成された被加工物1であっても、分割性を低下させることなくデバイスチップ10の汚染を抑制することができるという効果を奏する。
【0045】
〔変形例2〕
実施形態1の変形例2に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図11は、実施形態1の変形例2に係る被加工物の加工方法の分割ステップを模式的に示す断面図である。なお、
図11は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。なお、変形例2に係る被加工物の加工方法は、分割ステップ103が実施形態1と異なること以外、実施形態1と同じである。
【0046】
変形例2において、分割ステップ103では、レーザー加工装置80が、図示しないチャックテーブルの保持面に被加工物1の裏面6側を保護部材21を介して吸引保持する。変形例2において、分割ステップ103では、レーザー加工装置80が、保持面に被加工物1の裏面6側を吸引保持した後、撮像ユニットで被加工物1を撮像して分割予定ライン4を検出し、被加工物1の分割予定ライン4とレーザー光線照射ユニット81との位置合わせを行なうアライメントを遂行する。
【0047】
変形例2において、分割ステップ103では、レーザー加工装置80が、
図11に示すように、被加工物1の基板2に対して吸収性を有する波長のレーザー光線82の集光点83を被加工物1の分割予定ライン4の表面3に位置付け、被加工物1とレーザー光線照射ユニット81とを分割予定ライン4に沿って水平方向に沿って相対的に移動させながら、レーザー光線照射ユニット81からレーザー光線82を表面3側から分割予定ライン4に照射する。変形例2において、加工溝形成ステップ101では、レーザー加工装置80が、基板2の分割予定ライン4に形成された加工溝11の底にアブレーション加工を施して、すべての加工溝11の底を切断して、被加工物1を分割予定ライン4に沿って個々のデバイスチップ10に分割する。
【0048】
変形例2に係る被加工物の加工方法は、加工溝形成ステップ101において被加工物1の裏面6側から被加工物1を分割しない加工溝11を形成した後、分割ステップ103において被加工物1を個々のデバイスチップ10に分割するとともに、密着ステップ102において保護部材21を加工溝11の内面に密着させて保護部材21を被加工物1の裏面6に接着する。その結果、変形例2に係る被加工物の加工方法は、実施形態1と同様に、基板2の表面3とデバイス5との間に段差が形成された被加工物1であっても、分割性を低下させることなくデバイスチップ10の汚染を抑制することができるという効果を奏する。
【0049】
なお、変形例2では、加工溝形成ステップ101では、変形例1と同様に、レーザー光線72を照射して加工溝11を形成しても良い。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 被加工物
3 表面
4 分割予定ライン
5 デバイス
6 裏面
11 加工溝
12 改質層(分割起点)
13 底面(底部)
21 保護部材
41 真空チャンバー
52 レーザー光線
82 レーザー光線
101 加工溝形成ステップ
102 密着ステップ
103 分割ステップ
1031 分割起点形成ステップ
1032 拡張ステップ