IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特開-ウエーハの薄化方法 図1
  • 特開-ウエーハの薄化方法 図2
  • 特開-ウエーハの薄化方法 図3
  • 特開-ウエーハの薄化方法 図4
  • 特開-ウエーハの薄化方法 図5
  • 特開-ウエーハの薄化方法 図6
  • 特開-ウエーハの薄化方法 図7
  • 特開-ウエーハの薄化方法 図8
  • 特開-ウエーハの薄化方法 図9
  • 特開-ウエーハの薄化方法 図10
  • 特開-ウエーハの薄化方法 図11
  • 特開-ウエーハの薄化方法 図12
  • 特開-ウエーハの薄化方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141964
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ウエーハの薄化方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241003BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053877
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野本 朝輝
【テーマコード(参考)】
5F057
【Fターム(参考)】
5F057AA14
5F057AA45
5F057BA15
5F057BB05
5F057CA14
5F057DA22
5F057DA31
(57)【要約】
【課題】砥石の消耗量を削減しつつ、生産性の低下を抑制することができるウエーハの薄化方法を提供すること。
【解決手段】ウエーハの薄化方法は、ウエーハの第一の面側に第一の支持基板を接合する第一の支持基板接合ステップ1と、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点をウエーハの第二の面側からウエーハの内部に位置づけ、集光点とウエーハとを相対的に移動させながらレーザービームを照射することで、第二の面に平行な改質層と改質層から伸長するクラックとを含む分離起点を形成する分離起点形成ステップ2と、ウエーハの第二の面側から超音波を付与する第一の超音波付与ステップ3と、ウエーハの第二の面側に第二の支持基板を接合する第二の支持基板接合ステップ4と、分離起点から、第一の面を有するウエーハと第二の面を有するウエーハとにウエーハを分離することで、ウエーハを薄化する薄化ステップ6と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の面と、該第一の面と反対側の第二の面と、を有するウエーハを薄化するウエーハの薄化方法であって、
該ウエーハの該第一の面側に第一の支持基板を接合する第一の支持基板接合ステップと、
該ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点を該ウエーハの第二の面側から該ウエーハの内部に位置づけ、該集光点と該ウエーハとを該第二の面に平行な方向に相対的に移動させながら該レーザービームを照射することで、該第二の面に平行な改質層と該改質層から伸長するクラックとを含む分離起点を形成する分離起点形成ステップと、
該第一の支持基板接合ステップおよび該分離起点形成ステップを実施した後、該ウエーハの該第二の面側から超音波を付与する第一の超音波付与ステップと、
該第一の超音波付与ステップを実施した後、該ウエーハの第二の面側に第二の支持基板を接合する第二の支持基板接合ステップと、
該第二の支持基板接合ステップを実施した後、該分離起点から、該第一の面を有するウエーハと該第二の面を有するウエーハとに該ウエーハを分離することで、該ウエーハを薄化する薄化ステップと、を含む
ことを特徴とする、ウエーハの薄化方法。
【請求項2】
該第二の支持基板接合ステップを実施した後、かつ、該薄化ステップを実施する前に、該第二の支持基板側から該ウエーハに対して超音波を付与する第二の超音波付与ステップを更に含む
ことを特徴とする、請求項1に記載のウエーハの薄化方法。
【請求項3】
該第一の超音波付与ステップでは、該ウエーハの第一の領域に対して第一のエネルギー密度で超音波を付与することで、該分離起点において部分的に剥離した部分剥離部を形成し、
該第二の超音波付与ステップでは、該ウエーハの該第一の領域よりも広い第二の領域に対して該第一のエネルギー密度より低い第二のエネルギー密度で超音波を付与することで、該部分剥離部から該ウエーハの全面にわたる剥離部を形成する
ことを特徴とする、請求項2に記載のウエーハの薄化方法。
【請求項4】
該ウエーハは、タンタル酸リチウムである
ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のウエーハの薄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの薄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムタンタレート(タンタル酸リチウム;LiTaO)は、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタの基板として用いられるが、熱膨張率が大きいため、温度上昇に伴う周波数シフトが問題視されている。そこで、リチウムタンタレートウエーハに熱膨張率の小さなシリコンやサファイア等のウエーハを支持基板として接合し、熱膨張を抑制することで周波数温度特性を向上させる方法が考案された。こうして形成された接合ウエーハは、研削等により薄化されてパターニングされ、分割予定ラインに沿ってダイシングされることでデバイスチップに製造される。
【0003】
しかしながら、リチウムタンタレートを研削する際に砥石の消耗が激しく不経済であるという課題や、研削に時間がかかり生産性が低下するという問題があった。そこで、ウエーハの内部にレーザービームを照射して剥離層を形成し、この剥離層を起点として剥離する方法が試みられた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-028072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、剥離させるウエーハを極力薄くするためには、剥離層を形成する際にクラックが表出しないように加工する必要があり、これにより剥離性が低下してしまう。剥離性を向上させるために超音波を付与する方法があるが、支持基板を接合した後に超音波を付与しても剥離性があまり向上せず、かといって、支持基板を接合する前に完全にウエーハを剥離してしまうとハンドリングが困難となるという課題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、砥石の消耗量を削減しつつ、生産性の低下を抑制することができるウエーハの薄化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウエーハの薄化方法は、第一の面と、該第一の面と反対側の第二の面と、を有するウエーハを薄化するウエーハの薄化方法であって、該ウエーハの該第一の面側に第一の支持基板を接合する第一の支持基板接合ステップと、該ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点を該ウエーハの第二の面側から該ウエーハの内部に位置づけ、該集光点と該ウエーハとを該第二の面に平行な方向に相対的に移動させながら該レーザービームを照射することで、該第二の面に平行な改質層と該改質層から伸長するクラックとを含む分離起点を形成する分離起点形成ステップと、該第一の支持基板接合ステップおよび該分離起点形成ステップを実施した後、該ウエーハの該第二の面側から超音波を付与する第一の超音波付与ステップと、該第一の超音波付与ステップを実施した後、該ウエーハの第二の面側に第二の支持基板を接合する第二の支持基板接合ステップと、該第二の支持基板接合ステップを実施した後、該分離起点から、該第一の面を有するウエーハと該第二の面を有するウエーハとに該ウエーハを分離することで、該ウエーハを薄化する薄化ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明のウエーハの薄化方法は、該第二の支持基板接合ステップを実施した後、かつ、該薄化ステップを実施する前に、該第二の支持基板側から該ウエーハに対して超音波を付与する第二の超音波付与ステップを更に含むことが好ましい。
【0009】
また、本発明のウエーハの薄化方法において、該第一の超音波付与ステップでは、該ウエーハの第一の領域に対して第一のエネルギー密度で超音波を付与することで、該分離起点において部分的に剥離した部分剥離部を形成し、該第二の超音波付与ステップでは、該ウエーハの該第一の領域よりも広い第二の領域に対して該第一のエネルギー密度より低い第二のエネルギー密度で超音波を付与することで、該部分剥離部から該ウエーハの全面にわたる剥離部を形成することが好ましい。
【0010】
また、本発明のウエーハの薄化方法において、該ウエーハは、タンタル酸リチウムであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、砥石の消耗量を削減しつつ、生産性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係るウエーハの薄化方法の加工対象のウエーハの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るウエーハの薄化方法の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、図2に示す第一の支持基板接合ステップを示す斜視図である。
図4図4は、図2に示す第一の支持基板接合ステップの後のウエーハの側面図である。
図5図5は、図2に示す分離起点形成ステップの一状態を示す斜視図である。
図6図6は、図5に示す状態を一部断面で示す側面図である。
図7図7は、図6におけるウエーハの上面図である。
図8図8は、図2に示す第一の超音波付与ステップの一状態を示す側面図である。
図9図9は、図2に示す第二の支持基板接合ステップを示す斜視図である。
図10図10は、図2に示す第二の支持基板接合ステップの後のウエーハの側面図である。
図11図11は、図2に示す第二の超音波付与ステップの一状態を示す側面図である。
図12図12は、図2に示す薄化ステップの一状態を示す側面図である。
図13図13は、図2に示す薄化ステップの図12の後の一状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るウエーハ10の薄化方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態に係るウエーハ10の薄化方法の加工対象のウエーハ10の斜視図である。実施形態のウエーハ10は、タンタル酸リチウムからなるタンタル酸リチウム基板であるが、例えば、ニオブ酸リチウム基板であってもよい。ウエーハ10は、厚み350~500μm程度の円板状に形成される。ウエーハ10は、第一の面11と、第二の面12と、周面13と、オリエンテーションフラット14と、を有している。
【0015】
第一の面11は、円形状であって、円板状に形成されるウエーハ10の一方の端面である。第一の面11は、後述の第一の支持基板20と接合する接合面に相当する。第二の面12は、円形状であって、円板状に形成されるウエーハ10の第一の面11とは反対側の端面である。第二の面12は、後述の第二の支持基板30と接合する接合面に相当する。周面13は、第一の面11の外縁と第二の面12の外縁とに連なる面である。オリエンテーションフラット14は、ウエーハ10の結晶方位を示すために周面13の一部に形成される平面である。
【0016】
図2は、実施形態に係るウエーハ10の薄化方法の流れを示すフローチャートである。ウエーハ10の薄化方法は、第一の支持基板接合ステップ1と、分離起点形成ステップ2と、第一の超音波付与ステップ3と、第二の支持基板接合ステップ4と、第二の超音波付与ステップ5と、薄化ステップ6と、を含む。
【0017】
(第一の支持基板接合ステップ1)
図3は、図2に示す第一の支持基板接合ステップ1を示す斜視図である。図4は、図2に示す第一の支持基板接合ステップ1の後のウエーハ10の側面図である。第一の支持基板接合ステップ1は、ウエーハ10の第一の面11側に第一の支持基板20を接合するステップである。
【0018】
第一の支持基板20は、実施形態において、ウエーハ10と同径かつウエーハ10より厚みが大きい円板状に形成されるガラス基板であるが、ウエーハ10を支持してハンドリングを担保できるものであれば、材質(硬度)や、サイズ、厚み等は特に限定されない。第一の支持基板20は、円形状であって、円板状に形成される第一の支持基板20の一方の端面である接合面21と、接合面21とは反対側の端面である円形状の面22と、を有している。
【0019】
第一の支持基板接合ステップ1では、まず、図3に示すように、ウエーハ10の第一の面11と、第一の支持基板20の接合面21とを、間隔をあけて対向させる。次に、図4に示すように、ウエーハ10の第一の面11と、第一の支持基板20の接合面21とを、貼り合わせて接合する。
【0020】
この際、ウエーハ10と第一の支持基板20との間に接合層を設ける場合は、ウエーハ10の第一の面11と第一の支持基板20の接合面21とのうちの一方に接合層を積層してから、ウエーハ10の第一の面11と第一の支持基板20の接合面21とを、接合層を介して貼り合わせる。なお、接合層は、基材層の表裏面に粘着材層が積層された両面テープであってもよいし、酸化膜でもよいし、樹脂等を含む接着剤が塗布されることにより形成されるものでもよい。
【0021】
(分離起点形成ステップ2)
図5は、図2に示す分離起点形成ステップ2の一状態を示す斜視図である。図6は、図5に示す状態を一部断面で示す側面図である。図7は、図6におけるウエーハ10の上面図である。分離起点形成ステップ2は、第一の支持基板接合ステップ1を実施する前に実施してもよいし、第一の支持基板接合ステップ1を実施した後に実施してもよい。分離起点形成ステップ2は、レーザービーム40をウエーハ10の第二の面12側から照射することで、第二の面12に平行な改質層15-1と改質層15-1から伸長するクラック15-2とを含む分離起点15を形成するステップである。
【0022】
分離起点形成ステップ2は、レーザー加工装置45によって実施される。レーザー加工装置45は、保持テーブル46と、レーザービーム照射ユニット47と、を備える。保持テーブル46は、ウエーハ10を保持面に保持し、垂直な軸心回りに回動可能である。レーザービーム照射ユニット47は、保持テーブル46に保持されたウエーハ10に対してレーザービーム40を照射する。レーザー加工装置45は、更に、保持テーブル46とレーザービーム照射ユニット47とを相対的に移動させる不図示の移動ユニット、および保持テーブル46に保持されたウエーハ10を撮像する不図示の撮像ユニット等を備える。なお、以下の説明において、X軸方向は、水平面における一方向である。Y軸方向は、水平面において、X軸方向に直交する方向である。また、実施形態において、X軸方向が加工送り方向であり、Y軸方向が割り出し送り方向である。
【0023】
分離起点形成ステップ2では、レーザービーム40の集光点41をウエーハ10の第二の面12側からウエーハ10の内部に位置づけ、集光点41とウエーハ10とを第二の面12に平行な方向に相対的に移動させながらレーザービーム40を照射する。これにより、第二の面12に平行な改質層15-1と改質層15-1から伸長するクラック15-2とを含む分離起点15を形成する。レーザービーム40は、ウエーハ10に対して透過性を有する波長のレーザービームであり、例えば、赤外線(Infrared rays;IR)である。
【0024】
改質層15-1とは、密度、屈折率、機械的強度またはその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味する。改質層15-1は、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、およびこれらの領域が混在した領域等である。改質層15-1は、ウエーハ10の他の部分よりも機械的な強度等が低い。
【0025】
分離起点形成ステップ2では、まず、第一の支持基板20の接合面21とは反対側の面22側を保持テーブル46の保持面(上面)に吸引保持する。この際、ウエーハ10のオリエンテーションフラット14と割り出し送り方向(Y軸方向)とが平行になるように、言い換えると、ウエーハ10の結晶方位を示す<11-20>方向が加工送り方向(X軸方向)と平行になるように調整する。次に、ウエーハ10とレーザービーム照射ユニット47の集光器との位置合わせを行う。
【0026】
具体的には、不図示の移動ユニットによって、保持テーブル46をレーザービーム照射ユニット47の下方の照射領域まで移動させ、レーザービーム40の集光点41をウエーハ10の内部の所定の深さに位置づける。所定の深さは、ウエーハ10の第二の面12から20~100μm程度の深さであり、後述の薄化ステップ6で第一の面11を有するウエーハ10-1から分離させる第二の面12を有するウエーハ10-2の厚みに相当する(図13参照)。
【0027】
分離起点形成ステップ2では、次に、レーザービーム40の集光点41をウエーハ10の内部に位置づけた状態で、レーザービーム照射ユニット47を保持テーブル46に対して加工送り方向(X軸方向)に相対的に移動させる。すなわち、集光点41とウエーハ10とを、第二の面12に平行な一方向(X軸方向)に相対的に移動させながら、第二の面12側からレーザービーム40を照射する。
【0028】
これにより、ウエーハ10の内部の所定の深さに、第二の面12に平行な一方向(X軸方向)に沿う改質層15-1が形成される。ウエーハ10の外縁部までレーザービーム40を照射した後は、集光点41を割り出し送り方向(Y軸方向)に所定量相対的に移動させ、同様に、加工送り方向(X軸方向)に沿う改質層15-1を形成し、ウエーハ10の全面に亘って改質層15-1を形成する。
【0029】
この際、改質層15-1からは、第二の面12に平行な方向に沿ってクラック15-2が伸展し、ウエーハ10の内部の所定の深さにおいて、第二の面12に平行な改質層15-1とクラック15-2とを含む分離起点15が形成される。なお、平行な方向とは、伸展したクラック15-2全体を平面に近似した近似平面の水平面に対する傾きが、±5度以内、好ましくは±2度以内であることを示す。また、分離起点形成ステップ2では、伸展するクラック15-2が、ウエーハ10の第二の面12側に表出しないよう、レーザービーム40の出力を調整して改質層15-1を形成する。
【0030】
(第一の超音波付与ステップ3)
図8は、図2に示す第一の超音波付与ステップ3の一状態を示す側面図である。第一の超音波付与ステップ3は、第一の支持基板接合ステップ1および分離起点形成ステップ2を実施した後に実施される。第一の超音波付与ステップ3は、ウエーハ10の第二の面12側から超音波を付与するステップである。
【0031】
第一の超音波付与ステップ3は、超音波付与装置50によって実施される。超音波付与装置50は、保持テーブル51と、超音波ノズル52と、保持テーブル51と超音波ノズル52とを相対的に移動させる不図示の移動ユニットと、を備える。図8に示すように、実施形態の超音波ノズル52は、下端に向かって幅が狭くなる中空の円錐台部と、円錐台部の上端から上方に延在して設けられる円筒部と、を有する。超音波ノズル52の下端面は、開口を有し、保持テーブル51の保持面に対向するように設けられる。
【0032】
超音波ノズル52には、超音波振動子と、不図示の液体供給源から供給される液体55が流通する流路と、が内蔵される。超音波振動子は、交流電力が印加されることにより伸縮して超音波振動を発生させる。液体55は、例えば、純水である。液体55は、超音波ノズル52の内部において、超音波振動子による振動が伝達される位置に供給される。超音波振動子による振動が伝達された液体55は、超音波ノズル52の流路を通って、超音波ノズル52の下端面に形成された開口から、保持テーブル51に第一の支持基板20を介して保持されるウエーハ10の第二の面12に供給される。
【0033】
第一の超音波付与ステップ3では、まず、分離起点15が形成されたウエーハ10に接合した第一の支持基板20の接合面21とは反対側の面22側を、保持テーブル51の保持面(上面)で吸引保持する。次に、超音波ノズル52の下端面を、保持テーブル51に第一の支持基板20を介して保持されたウエーハ10の第二の面12と所定の間隔をあけて対向させ、互いに接近させる。
【0034】
第一の超音波付与ステップ3では、次に、超音波ノズル52に内蔵される超音波振動子に交流電力を印加し、超音波振動子を振動させた状態で、不図示の液体供給源から超音波ノズル52に液体55を供給する。この際、液体55は、超音波ノズル52の下端面に形成された開口から、ウエーハ10の第二の面12に供給される。超音波ノズル52とウエーハ10の第二の面12との間が液体55に浸漬した状態で、超音波振動子が振動することにより、超音波ノズル52の超音波振動が、液体55を介してウエーハ10の第二の面12に付与される。
【0035】
第一の超音波付与ステップ3では、次に、ウエーハ10の第二の面12に液体55を供給し、超音波振動子を振動させた状態で、不図示の移動ユニットにより、保持テーブル51と超音波ノズル52とを相対的に移動させる。これにより、液体55を媒介とした超音波振動が、ウエーハ10の第二の面12の所定の領域(第一の領域)に対して付与される。
【0036】
ウエーハ10は、超音波振動により、分離起点15において新たにクラック15-2(図7参照)が伸展し、部分的に剥離した部分剥離部16が形成される。部分剥離部16では、分離起点15を界面として、第一の面11側と第二の面12側とが分離されている。ウエーハ10の第一の領域に超音波を付与した後は、液体55の供給を停止させ、超音波ノズル52をウエーハ10の第二の面12から離隔させる。
【0037】
(第二の支持基板接合ステップ4)
図9は、図2に示す第二の支持基板接合ステップ4を示す斜視図である。図10は、図2に示す第二の支持基板接合ステップ4の後のウエーハ10の側面図である。第二の支持基板接合ステップ4は、第一の超音波付与ステップ3を実施した後に実施される。第二の支持基板接合ステップ4は、ウエーハ10の第二の面12側に第二の支持基板30を接合するステップである。
【0038】
第二の支持基板30は、熱膨張率が低い材料で構成される。実施形態の第二の支持基板30は、シリコン(Si)からなるシリコン基板であるが、サファイア(Al)等であってもよい。第二の支持基板30は、ウエーハ10と同径かつウエーハ10より厚みが大きい円板状に形成される。第二の支持基板30は、円形状であって、円板状に形成される第二の支持基板30の一方の端面である接合面31と、接合面31とは反対側の端面である円形状の面32と、を有している。
【0039】
第二の支持基板接合ステップ4では、まず、図9に示すように、第一の支持基板20が第一の面11側に接合され、分離起点15に部分剥離部16が形成されたウエーハ10の第二の面12と、第二の支持基板30の接合面31とを、間隔をあけて対向させる。次に、図10に示すように、ウエーハ10の第二の面12と、第二の支持基板30の接合面31とを、貼り合わせて接合する。
【0040】
この際、ウエーハ10と第二の支持基板30との間に接合層を設ける場合は、ウエーハ10の第二の面12と第二の支持基板30の接合面31とのうちの一方に接合層を積層してから、ウエーハ10の第二の面12と第二の支持基板30の接合面31とを、接合層を介して貼り合わせる。なお、接合層は、基材層の表裏面に粘着材層が積層された両面テープであってもよいし、酸化膜でもよいし、樹脂等を含む接着剤が塗布されることにより形成されるものでもよい。
【0041】
(第二の超音波付与ステップ5)
図11は、図2に示す第二の超音波付与ステップ5の一状態を示す側面図である。第二の超音波付与ステップ5は、第二の支持基板接合ステップ4を実施した後、かつ、薄化ステップ6を実施する前に実施される。第二の超音波付与ステップ5は、第二の支持基板30側からウエーハ10に対して超音波を付与するステップである。
【0042】
第二の超音波付与ステップ5は、超音波付与装置60によって実施される。超音波付与装置60は、保持テーブル61と、超音波ホーン62と、液体供給ノズル63と、保持テーブル61と超音波ホーン62および液体供給ノズル63とを相対的に移動させる不図示の移動ユニットと、を備える。なお、超音波ホーン62および液体供給ノズル63は、図8に示す超音波付与装置50の一部に搭載される第二の超音波付与ユニットでもよく、この場合、保持テーブル61は、図8に示す保持テーブル51と共用であってもよい。
【0043】
図11に示すように、実施形態の超音波ホーン62は、図8に示す超音波ノズル52の円筒部よりも幅広の円柱状の振動部材である。超音波ホーン62の下端面は、保持テーブル61の保持面に対向するように設けられる。超音波ホーン62には、図8に示す超音波ノズル52に内蔵された超音波振動子と同様の超音波振動子が内蔵される。超音波ホーン62は、内蔵された超音波振動子が振動することによって、超音波ホーン62全体が振動する。
【0044】
液体供給ノズル63は、超音波ホーン62に隣接する位置に設けられ、不図示の液体供給源から液体65を供給する。液体65は、例えば、純水である。不図示の液体供給源から供給される液体65は、液体供給ノズル63内の流路を通って、液体供給ノズル63の下端面に形成された開口から、保持テーブル61に第一の支持基板20およびウエーハ10を介して保持される第二の支持基板30の接合面31とは反対側の面32に供給させる。
【0045】
第二の超音波付与ステップ5では、まず、第二の支持基板30が接合されたウエーハ10に接合した第一の支持基板20の接合面21とは反対側の面22側を、保持テーブル61の保持面(上面)で吸引保持する。なお、保持テーブル61が図8に示す保持テーブル51と共用であり、第二の支持基板接合ステップ4を保持テーブル51上で実施した場合、この工程は省略されてよい。次に、超音波ホーン62の下端面を、保持テーブル61に第一の支持基板20およびウエーハ10を介して保持された第二の支持基板30の接合面31とは反対側の面32と所定の間隔をあけて対向させ、互いに接近させる。
【0046】
第二の超音波付与ステップ5では、次に、超音波ホーン62に内蔵される超音波振動子に交流電力を印加し、超音波ホーン62全体を振動させた状態で、不図示の液体供給源から液体供給ノズル63を介して超音波ホーン62の下端面に液体65を供給する。この際、液体65は、第二の支持基板30の接合面31とは反対側の面32に供給される。超音波ホーン62と第二の支持基板30の面32との間が液体65に浸漬した状態で、超音波ホーン62が振動することにより、超音波振動が、液体65を介して第二の支持基板30の面32に付与される。
【0047】
第二の超音波付与ステップ5では、次に、第二の支持基板30の面32に液体65を供給し、超音波ホーン62を振動させた状態で、不図示の移動ユニットにより、保持テーブル61と超音波ホーン62とを相対的に移動させる。これにより、液体65を媒介とした超音波振動が、第二の支持基板30の面32の所定の領域(第二の領域)に対して付与される。
【0048】
超音波ホーン62の下端面の面積は、図8に示す超音波ノズル52の下端面に設けられた開口の面積よりも広い。このため、第二の領域は、第一の超音波付与ステップ3で超音波を付与した第一の領域よりも広くなる。また、図8に示す第一の超音波付与ステップ3における超音波ノズル52を用いて付与される超音波のエネルギー密度(第一のエネルギー密度)は、図11に示す第二の超音波付与ステップ5において超音波ホーン62を用いて付与される超音波のエネルギー密度(第二のエネルギー密度)よりも高くなる。
【0049】
なお、図8に示す第一の超音波付与ステップ3における超音波付与条件は、超音波ノズル52の開口径が5~30mm程度であり、超音波振動子に印加される交流電力の出力が10~100W程度であることが好ましい。また、図11に示す第二の超音波付与ステップ5における超音波付与条件は、超音波ホーン62の下端面が50mm×50mm~200mm×200mm程度の正方形または長方形であり、超音波振動子に印加される交流電力の出力が50~150W程度であることが好ましい。
【0050】
第二の超音波付与ステップ5において、ウエーハ10は、超音波振動により、分離起点15において新たにクラック15-2(図7参照)が伸展し、分離起点15において形成された部分剥離部16から、ウエーハ10の全面に亘る剥離部17が形成される。剥離部17では、分離起点15を界面として、第一の面11側と第二の面12側とが分離されている。
【0051】
すなわち、図8に示す第一の超音波付与ステップ3では、ウエーハ10の第一の領域に対して第一のエネルギー密度で超音波を付与することで、分離起点15において部分的に剥離した部分剥離部16を形成し、図11に示す第二の超音波付与ステップ5では、第一の領域よりも広い第二の領域に対して、第一のエネルギー密度より低い第二のエネルギー密度で超音波を付与することで、部分剥離部16からウエーハ10の全面にわたる剥離部17を形成する。ウエーハ10の第二の領域に超音波を付与した後は、液体65の供給を停止させ、超音波ホーン62を第二の支持基板30の面32から離隔させる。なお、本発明において、第二の超音波付与ステップ5は、省略されてもよい。
【0052】
(薄化ステップ6)
図12は、図2に示す薄化ステップ6の一状態を示す側面図である。図13は、図2に示す薄化ステップ6の図12の後の一状態を示す側面図である。薄化ステップ6は、第二の超音波付与ステップ5を実施した後に実施される。なお、第二の超音波付与ステップ5を省略する場合、薄化ステップ6は、第二の支持基板接合ステップ4を実施した後に実施される。薄化ステップ6は、ウエーハ10を薄化するステップである。
【0053】
薄化ステップ6は、剥離装置70によって実施される。剥離装置70は、保持テーブル71と、剥離ユニット72と、保持テーブル71と剥離ユニット72とを接近および離隔させる不図示の移動ユニットと、を備える。なお、剥離ユニット72は、図8に示す超音波付与装置50や図11に示す超音波付与装置60の一部に搭載されるものでもよく、この場合、保持テーブル71は、図8に示す保持テーブル51や図11に示す保持テーブル61と共用であってもよい。
【0054】
剥離ユニット72は、下面に複数の吸引口が設けられている吸引板73を有する。複数の吸引口は、吸引板73の内部に設けられた流路を介して、不図示の吸引源に連通する。剥離装置70は、保持テーブル71で対象物の一方の面を吸引保持し、吸引板73で他方の面を吸引保持し、保持テーブル71と剥離ユニット72とを互いに離隔させることで、対象物を、一方の面側と他方の面側とに剥離させる。
【0055】
薄化ステップ6では、まず、ウエーハ10に接合した第一の支持基板20の接合面21とは反対側の面22側を、保持テーブル71の保持面(上面)で吸引保持する。なお、保持テーブル71が図11に示す保持テーブル61と共用である場合、この工程は省略されてよい。次に、剥離ユニット72の吸引板73の下端面を、保持テーブル71に第一の支持基板20およびウエーハ10を介して保持された第二の支持基板30の接合面31とは反対側の面32に接近させ、吸引板73で面32を吸引保持する。
【0056】
この状態で、図13に示すように、次に、剥離ユニット72を保持テーブル71から離隔させる。これにより、上下に引っ張られたウエーハ10が分離起点15を界面として分離し、ウエーハ10の第一の面11を有するウエーハ10-1と、ウエーハ10の第二の面12を有するウエーハ10-2とに分離される。すなわち、分離起点15から、第一の面11を有するウエーハ10-1と第二の面12を有するウエーハ10-2とにウエーハ10を分離することで、ウエーハ10を、ウエーハ10-2に薄化する。
【0057】
薄化されたウエーハ10-2は、例えば、第二の支持基板30を含む接合ウエーハとなり、剥離面19が研削されて平坦化し、デバイスウエーハに加工される。ウエーハ10-2が剥離された第一の面11を有するウエーハ10-1は、例えば、剥離面18が研削されて平坦化した研削面が新たな第二の面12となり、リサイクルウエーハとして、再度ウエーハ10として利用される。この場合、図2のフローチャートに示すウエーハ10の薄化方法の第一の支持基板接合ステップ1を省略し、分離起点形成ステップ2から薄化ステップ6までを繰り返し実施することにより、複数の薄化されたウエーハ10-2が生成される。なお、第一の面11を有するウエーハ10-1の剥離面18と、第二の面12を有するウエーハ10-2の剥離面19とは、研削される前に、超音波を付与されることにより、剥離屑が除去されてもよい。
【0058】
以上説明したように、実施形態のウエーハ10の薄化方法では、分離起点15を形成したウエーハ10に対して、更に超音波を付与して剥離の起点となる部分剥離部16を形成することで、剥離性を向上させている。すなわち、分離起点形成ステップ2においてクラック15-2が伸展し過ぎないように、照射するレーザービーム40の出力を抑える等することで分離起点15を形成した時点での剥離性が低くなってしまう場合でも、剥離させるウエーハ10-2を極力薄くすることができる。これにより、剥離した後のウエーハ10-2の研削量を削減できるため、砥石の消耗量を削減しつつ生産性の低下を抑制できるという効果を奏する。
【0059】
更に、ウエーハ10に超音波を付与して部分剥離部16を形成した後、ウエーハ10の第二の面12側に第二の支持基板30を接合させ、第二の支持基板30越しに再び超音波を付与することで、部分剥離部16からウエーハ10の全面に亘る剥離部17を形成し、剥離性を更に向上させることができる。このように二段階に分けて超音波を付与することで、剥離性を格段に向上させるとともに、剥離時のウエーハ10の割れを抑制することが可能となる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0061】
10、10-1、10-2 ウエーハ
11 第一の面
12 第二の面
15 分離起点
15-1 改質層
15-2 クラック
16 部分剥離部
17 剥離部
20 第一の支持基板
30 第二の支持基板
40 レーザービーム
41 集光点
45 レーザー加工装置
50、60 超音波付与装置
52 超音波ノズル
62 超音波ホーン
63 液体供給ノズル
55、65 液体
70 剥離装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13