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特開2024-141971推定装置、装置、推定方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141971
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】推定装置、装置、推定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/12 20060101AFI20241003BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01D5/12 H
G01D5/245 110L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053885
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】築地 秀和
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA12
2F077CC02
2F077JJ01
2F077JJ07
2F077JJ20
2F077VV02
(57)【要約】
【解決手段】第1部分と、第2部分と、可動機構と、磁気センサと、磁石部とを備える装置における前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を推定する推定装置を提供する。前記推定装置は、測定値の組み合わせと、参照情報と、に基づいて、前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢を推定する推定部を備える。前記参照情報は、第1参照情報と、第2参照情報と、を含む。前記推定装置は、測定値との組み合わせと、前記第1参照情報及び前記第2参照情報のそれぞれとの一致度合いに従って、前記組み合わせと一致度合いがより高い前記第1参照情報及び前記第2参照情報の一方を前記推定部が前記推定に用いる前記参照情報として選択する選択部をさらに備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分と、第2部分と、前記第2部分を前記第1部分に対して第1位置または第1姿勢から第2位置または第2姿勢まで変更させる第1動作と、前記第2部分を前記第1部分に対して前記第2位置または前記第2姿勢から前記第1位置または前記第1姿勢まで変更させる第2動作とを可能にする可動機構と、前記第1部分及び前記第2部分の一方に設けられる少なくとも1つの磁気センサと、前記第1部分及び前記第2部分の他方に設けられ、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される磁場を提供する磁石部とを備える装置における前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を推定する推定装置であって、
前記少なくとも1つの磁気センサにより第1時点で測定された少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の組み合わせと、前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す参照情報とに基づいて、前記第1時点での前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢を推定する推定部を備え、
前記参照情報は、
前記第1動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す第1参照情報と、
前記第2動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す第2参照情報と
を含み、
前記推定装置は、
前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の組み合わせと、前記第1参照情報及び前記第2参照情報のそれぞれとの一致度合いに従って、前記組み合わせと一致度合いがより高い前記第1参照情報及び前記第2参照情報の一方を、前記推定部が前記推定に用いる前記参照情報として選択する選択部をさらに備える、推定装置。
【請求項2】
前記可動機構は、前記第2部分を前記第1部分に対して前記第1位置または前記第1姿勢から前記第2位置または第2姿勢まで変化させる途中で、前記第1位置または前記第1姿勢に戻らせようとする反転動作を可能にし、
前記参照情報は、前記反転動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す第3参照情報をさらに含み、
前記選択部は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の組み合わせと、前記第1参照情報、前記第2参照情報、及び前記第3参照情報のそれぞれとの一致度合いとに基づいて、前記第1参照情報、前記第2参照情報、及び前記第3参照情報のうちの1つを、前記推定部による前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢の推定に用いる前記参照情報として選択する、請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記選択部は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の組み合わせと、前記第1参照情報、前記第2参照情報、及び前記第3参照情報のそれぞれとの一致度合いとに基づいて、前記組み合わせと一致度が最も高い前記第1参照情報、前記第2参照情報、及び前記第3参照情報のうちの1つを選択する、請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記第1参照情報は、前記第1動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値と第2方向の成分の測定値との組み合わせを示し、
前記第2参照情報は、前記第2動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置また姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値と第2方向の成分の測定値とを示し、
前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値と第2方向の成分の測定値と前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値と第2方向の成分の測定値とは姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値と第2方向の成分の測定値との組み合わせを示す、請求項1に記載の推定装置。
【請求項5】
前記第1参照情報は、前記第1動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値と前記第2方向の成分の測定値と第3方向の成分の測定値との組み合わせを示し、
前記第2参照情報は、前記第2動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値と前記第2方向の成分の測定値と前記第3方向の成分の測定値との組み合わせを示し、
前記選択部は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値と前記第2方向の成分の測定値と前記第3方向の成分の測定値との組み合わせと、前記第1参照情報及び前記第2参照情報のそれぞれとの一致度合いに従って、前記組み合わせと一致度合いがより高い前記第1参照情報及び前記第2参照情報の一方を選択する、請求項4に記載の推定装置。
【請求項6】
前記選択部は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の複数の組み合わせのそれぞれと、前記第1参照情報及び前記第2参照情報のそれぞれとの一致度合いに従って、前記複数の組み合わせのそれぞれと一致度合いがより高い前記第1参照情報及び前記第2参照情報の一方を選択する、請求項1に記載の推定装置。
【請求項7】
前記参照情報は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値を第1軸、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第2方向の成分の測定値を第2軸とする、または前記少なくとも1つの磁気センサのうち第1磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値を第1軸、前記少なくとも1つの磁気センサのうち第2磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値を第2軸とする座標系上で、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値及び前記第2方向の成分の測定値の組み合わせ、または前記第1磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値及び前記第2磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値の組み合わせで示される前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に対応する座標値の集合により示される図形で表され、
前記図形は、前記第1参照情報に対応する第1線と、前記第2参照情報に対応する第2線とを含み、
前記選択部は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値及び第2方向の成分の測定値の前記組み合わせ、または前記第1磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値及び前記第2磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値の組み合わせに対応する前記座標系上における座標値と、前記第1線及び前記第2線のそれぞれとの間の距離に従って、前記座標値との距離がより短い前記第1参照情報及び前記第2参照情報の一方を選択する、請求項1に記載の推定装置。
【請求項8】
前記参照情報は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値を第1軸、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第2方向の成分の測定値を第2軸とする、または前記少なくとも1つの磁気センサのうち第1磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値を第1軸、前記少なくとも1つの磁気センサのうち第2磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値を第2軸とする座標系上で、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値及び前記第2方向の成分の測定値の組み合わせ、または記第1磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値及び前記第2磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値の組み合わせで示される前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に対応する座標値の集合により示される図形で表され、
前記図形は、前記第1参照情報に対応する第1線と、前記第2参照情報に対応する第2線と、前記第3参照情報に対応する第3線とを含み、
前記推定装置は、
前記第2部分を前記第1部分に対して前記第1位置または前記第1姿勢から前記第2位置または第2姿勢まで変化させる途中で、前記第1位置または前記第1姿勢に戻らせようとする反転動作を検知する検知部をさらに備え、
前記検知部が前記反転動作を検知した場合、前記選択部は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値及び第2方向の成分の測定値の前記組み合わせ、または記第1磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値及び前記第2磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値の前記組み合わせに対応する前記座標系上における座標値と、前記第1線、前記第2線、及び前記第3線のそれぞれとの間の距離に基づいて、前記第1参照情報、前記第2参照情報、及び前記第3参照情報のうちの1つを選択する、請求項2に記載の推定装置。
【請求項9】
前記選択部は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値及び第2方向の成分の測定値の前記組み合わせ、または記第1磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値及び前記第2磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値の前記組み合わせに対応する前記座標系上における座標値と、前記第1線、前記第2線、及び前記第3線のそれぞれとの間の距離に基づいて、前記座標値の距離が最も短い前記第1参照情報、前記第2参照情報、及び前記第3参照情報のうちの1つを選択する、請求項8に記載の推定装置。
【請求項10】
請求項1から9の何れか1つに記載の推定装置と、
前記第1部分と、
前記第2部分と、
前記可動機構と
を備える装置。
【請求項11】
第1部分と、第2部分と、前記第2部分を前記第1部分に対して第1位置または第1姿勢から第2位置または第2姿勢まで変更させる第1動作と、前記第2部分を前記第1部分に対して前記第2位置または前記第2姿勢から前記第1位置または前記第1姿勢まで変更させる第2動作とを可能にする可動機構と、前記第1部分及び前記第2部分の一方に設けられる少なくとも1つの磁気センサと、前記第1部分及び前記第2部分の他方に設けられ、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される磁場を提供する磁石部とを備える装置における前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を推定する推定方法であって、
前記少なくとも1つの磁気センサにより第1時点で測定された少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の組み合わせと、前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す参照情報とに基づいて、前記第1時点での前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢を推定する段階
を備え、
前記参照情報は、
前記第1動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す第1参照情報と、
前記第2動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す第2参照情報と
を含み、
前記推定方法は、
前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の組み合わせと、前記第1参照情報及び前記第2参照情報のそれぞれとの一致度合いに従って、前記組み合わせと一致度合いがより高い前記第1参照情報及び前記第2参照情報の一方を、前記推定する段階で前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢の推定に用いる前記参照情報として選択する段階をさらに備える、推定方法。
【請求項12】
第1部分と、第2部分と、前記第2部分を前記第1部分に対して第1位置または第1姿勢から第2位置または第2姿勢まで変更させる第1動作と、前記第2部分を前記第1部分に対して前記第2位置または前記第2姿勢から前記第1位置または前記第1姿勢まで変更させる第2動作とを可能にする可動機構と、前記第1部分及び前記第2部分の一方に設けられる少なくとも1つの磁気センサと、前記第1部分及び前記第2部分の他方に設けられ、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される磁場を提供する磁石部とを備える装置における前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を推定する推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの磁気センサにより第1時点で測定された少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の組み合わせと、前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す参照情報とに基づいて、前記第1時点での前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢を推定する段階
を前記コンピュータに実行させ、
前記参照情報は、
前記第1動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す第1参照情報と、
前記第2動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す第2参照情報と
を含み、
前記プログラムは、
前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の組み合わせと、前記第1参照情報及び前記第2参照情報のそれぞれとの一致度合いに従って、前記組み合わせと一致度合いがより高い前記第1参照情報及び前記第2参照情報の一方を、前記推定する段階で前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢の推定に用いる前記参照情報として選択する段階を前記コンピュータにさらに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、装置、推定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「ヒンジ部の角度に応じて、変動する磁石及び磁気センサの間の距離に基づいて、磁気センサを用いてヒンジ部の角度を検出可能な開閉端末」が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 米国特許第9823093号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
磁気センサの測定磁場にヒステリシスがある場合に、磁気センサの測定磁場に基づいて、磁気センサに対する磁石の位置を推定する精度が低下することを抑制することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、第1部分と、第2部分と、前記第2部分を前記第1部分に対して第1位置または第1姿勢から第2位置または第2姿勢まで変更させる第1動作と、前記第2部分を前記第1部分に対して前記第2位置または前記第2姿勢から前記第1位置または前記第1姿勢まで変更させる第2動作とを可能にする可動機構と、前記第1部分及び前記第2部分の一方に設けられる少なくとも1つの磁気センサと、前記第1部分及び前記第2部分の他方に設けられ、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される磁場を提供する磁石部とを備える装置における前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を推定する推定装置を提供する。前記推定装置は、前記少なくとも1つの磁気センサにより第1時点で測定された少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の組み合わせと、前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す参照情報とに基づいて、前記第1時点での前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢を推定する推定部を備える。前記参照情報は、前記第1動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値とを示す第1参照情報と、前記第2動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す第2参照情報と、を含む。前記推定装置は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の組み合わせと、前記第1参照情報及び前記第2参照情報のそれぞれとの一致度合いに従って、前記組み合わせと一致度合いがより高い前記第1参照情報及び前記第2参照情報の一方を、前記推定部が前記推定に用いる前記参照情報として選択する選択部をさらに備える。
【0005】
いずれかの前記推定装置において、前記可動機構は、前記第2部分を前記第1部分に対して前記第1位置または前記第1姿勢から前記第2位置または第2姿勢まで変化させる途中で、前記第1位置または前記第1姿勢に戻らせようとする反転動作を可能にしてよい。前記参照情報は、前記反転動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す第3参照情報をさらに含んでよい。前記選択部は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の組み合わせと、前記第1参照情報、前記第2参照情報、及び前記第3参照情報のそれぞれとの一致度合いとに基づいて、前記第1参照情報、前記第2参照情報、及び前記第3参照情報のうちの1つを、前記推定部による前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢の推定に用いる前記参照情報として選択してよい。
【0006】
いずれかの前記推定装置において、前記選択部は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の組み合わせと、前記第1参照情報、前記第2参照情報、及び前記第3参照情報のそれぞれとの一致度合いとに基づいて、前記組み合わせと一致度が最も高い前記第1参照情報、前記第2参照情報、及び前記第3参照情報のうちの1つを選択してよい。
【0007】
いずれかの前記推定装置において、前記第1参照情報は、前記第1動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値と第2方向の成分の測定値との組み合わせを示してよい。前記第2参照情報は、前記第2動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置また姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値と第2方向の成分の測定値とを示し、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値と第2方向の成分の測定値と前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値と第2方向の成分の測定値とは姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値と第2方向の成分の測定値との組み合わせを示してよい。
【0008】
いずれかの前記推定装置において、前記第1参照情報は、前記第1動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値と前記第2方向の成分の測定値と第3方向の成分の測定値との組み合わせを示してよい。前記第2参照情報は、前記第2動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値と前記第2方向の成分の測定値と前記第3方向の成分の測定値との組み合わせを示してよい。前記選択部は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値と前記第2方向の成分の測定値と前記第3方向の成分の測定値との組み合わせと、前記第1参照情報及び前記第2参照情報のそれぞれとの一致度合いに従って、前記組み合わせと一致度合いがより高い前記第1参照情報及び前記第2参照情報の一方を選択してよい。
【0009】
いずれかの前記推定装置において、前記選択部は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の複数の組み合わせのそれぞれと、前記第1参照情報及び前記第2参照情報のそれぞれとの一致度合いに従って、前記複数の組み合わせのそれぞれと一致度合いがより高い前記第1参照情報及び前記第2参照情報の一方を選択してよい。
【0010】
いずれかの前記推定装置において、前記参照情報は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値を第1軸、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第2方向の成分の測定値を第2軸とする、または前記少なくとも1つの磁気センサのうち第1磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値を第1軸、前記少なくとも1つの磁気センサのうち第2磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値を第2軸とする座標系上で、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値及び前記第2方向の成分の測定値の組み合わせ、または前記第1磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値及び前記第2磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値の組み合わせで示される前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に対応する座標値の集合により示される図形で表されてよい。前記図形は、前記第1参照情報に対応する第1線と、前記第2参照情報に対応する第2線とを含んでよい。前記選択部は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値及び第2方向の成分の測定値の前記組み合わせ、または前記第1磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値及び前記第2磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値の組み合わせに対応する前記座標系上における座標値と、前記第1線及び前記第2線のそれぞれとの間の距離に従って、前記座標値との距離がより短い前記第1参照情報及び前記第2参照情報の一方を選択してよい。
【0011】
いずれかの前記推定装置において、前記参照情報は、少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値を第1軸、少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第2方向の成分の測定値を第2軸とする、または前記少なくとも1つの磁気センサのうち第1磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値を第1軸、前記少なくとも1つの磁気センサのうち第2磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値を第2軸とする座標系上で、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値及び前記第2方向の成分の測定値の組み合わせ、または記第1磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値及び前記第2磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値の組み合わせで示される前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に対応する座標値の集合により示される図形で表されてよい。前記図形は、前記第1参照情報に対応する第1線と、前記第2参照情報に対応する第2線と、前記第3参照情報に対応する第3線とを含んでよい。前記推定装置は、前記第2部分を前記第1部分に対して前記第1位置または前記第1姿勢から前記第2位置または第2姿勢まで変化させる途中で、前記第1位置または前記第1姿勢に戻らせようとする反転動作を検知する検知部をさらに備えてよい。前記検知部が前記反転動作を検知した場合、前記選択部は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値及び第2方向の成分の測定値の前記組み合わせ、または記第1磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値及び前記第2磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値の前記組み合わせに対応する前記座標系上における座標値と、前記第1線、前記第2線、及び前記第3線のそれぞれとの間の距離に基づいて、前記第1参照情報、前記第2参照情報、及び前記第3参照情報のうちの1つを選択してよい。
【0012】
いずれかの前記推定装置において、前記選択部は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値及び第2方向の成分の測定値の前記組み合わせ、または記第1磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値及び前記第2磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値の前記組み合わせに対応する前記座標系上における座標値と、前記第1線、前記第2線、及び前記第3線のそれぞれとの間の距離に基づいて、前記座標値の距離が最も短い前記第1参照情報、前記第2参照情報、及び前記第3参照情報のうちの1つを選択する。
【0013】
本発明の第2の態様においては、いずれかの前記推定装置と、前記第1部分と、前記第2部分と、前記可動機構とを備える装置を提供する。
【0014】
本発明の第3の態様においては、第1部分と、第2部分と、前記第2部分を前記第1部分に対して第1位置または第1姿勢から第2位置または第2姿勢まで変更させる第1動作と、前記第2部分を前記第1部分に対して前記第2位置または前記第2姿勢から前記第1位置または前記第1姿勢まで変更させる第2動作とを可能にする可動機構と、前記第1部分及び前記第2部分の一方に設けられる少なくとも1つの磁気センサと、前記第1部分及び前記第2部分の他方に設けられ、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される磁場を提供する磁石部とを備える装置における前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を推定する推定方法を提供する。前記推定方法は、前記少なくとも1つの磁気センサにより第1時点で測定された少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の組み合わせと、前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す参照情報とに基づいて、前記第1時点での前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢を推定する段階を備える。前記参照情報は、前記第1動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す第1参照情報と、前記第2動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す第2参照情報と、を含む。前記推定方法は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の組み合わせと、前記第1参照情報及び前記第2参照情報のそれぞれとの一致度合いに従って、前記組み合わせと一致度合いがより高い前記第1参照情報及び前記第2参照情報の一方を、前記推定する段階で前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢の推定に用いる前記参照情報として選択する段階をさらに備える。
【0015】
本発明の第4の態様においては、第1部分と、第2部分と、前記第2部分を前記第1部分に対して第1位置または第1姿勢から第2位置または第2姿勢まで変更させる第1動作と、前記第2部分を前記第1部分に対して前記第2位置または前記第2姿勢から前記第1位置または前記第1姿勢まで変更させる第2動作とを可能にする可動機構と、前記第1部分及び前記第2部分の一方に設けられる少なくとも1つの磁気センサと、前記第1部分及び前記第2部分の他方に設けられ、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される磁場を提供する磁石部とを備える装置における前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を推定する推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムを提供する。前記プログラムは、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの磁気センサにより第1時点で測定された少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の組み合わせと、前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す参照情報とに基づいて、前記第1時点での前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢を推定する段階を前記コンピュータに実行させる。前記参照情報は、前記第1動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す第1参照情報と、前記第2動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値を示す第2参照情報とを含む。前記プログラムは、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の組み合わせと、前記第1参照情報及び前記第2参照情報のそれぞれとの一致度合いに従って、前記組み合わせと一致度合いがより高い前記第1参照情報及び前記第2参照情報の一方を、前記推定する段階で前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢の推定に用いる前記参照情報として選択する段階を前記コンピュータにさらに実行させる。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】装置10Aの外観斜視図の一例である。
図1B】装置10Aの閉状態における外観斜視図の一例である。
図1C】装置10Aの開状態における外観斜視図の一例である。
図2】装置10Aにおける上面図の概略の一例である。
図3】推定装置100Aの構成の一例を示す図である。
図4A】磁気センサ30が検出した、第1部分11及び第2部分12の間の角度θに応じた磁束密度の一例を示す図である。
図4B図4Aに示された磁場のX成分及びY成分を示したグラフである。
図5A】磁気センサ30が検出した、第1部分11及び第2部分12の間の角度θに応じた磁束密度の別例を示す図である。
図5B図5Aに示された磁場のX成分及びY成分の描く曲線を拡大または縮小、及び平行移動した曲線82b,84bと、図4Bで示した曲線82a,84aと、を並べて示した図である。
図6】磁石部20及び磁気センサ30が外部磁場による着磁の影響を受けた際のヒステリシス曲線の変化の一例を表した図である。
図7】第1参照情報及び第2参照情報の一例を示す図である。
図8】第1部分11に対する第2部分12の角度θの推定方法のフロー図の一例を示す。
図9】第1部分11及び第2部分12の間の角度θが0度または180度に至らない状態で装置10Aの開閉の反転が行われる場合の測定値の一例を示す図である。
図10】第1参照情報、第2参照情報、及び第3参照情報の一例を示す図である。
図11A】装置10Bにおける外観の上面図の一例を示す図である。
図11B】装置10Bにおける外観の上面図の別例を示す図である。
図12】本実施形態に係る装置10Bにおける機能ブロックの一例を示す図である。
図13】本発明の複数の態様を具現化するハードウェア構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1Aは、装置10Aの外観斜視図の一例である。装置10Aは、折り畳み可能な端末であり、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット、ノートパソコン、及び小型パソコン等の携帯端末である。図中、装置10Aが、所謂フォルダブルスマートフォンである例が示される。装置10Aは、第1部分11、第2部分12、ディスプレイ14、及びヒンジ機構16を備える。
【0020】
ディスプレイ14は、折り曲げ可能なディスプレイである。例えば、ディスプレイ14は、有機EL(OLED)ディスプレイである。
【0021】
第1部分11及び第2部分12は、装置10Aの筐体の一部である。第1部分11及び第2部分12は、一体的に構成されてよい。ヒンジ機構16は、第1部分11及び第2部分12を折り畳み可能に結合する。ヒンジ機構16は、第1部分11または第2部分12の一部でよい。一例として、本実施形態の装置10Aでは、ヒンジ機構16が第2部分12の一部である。
【0022】
本実施形態では、右手系(正系)の直交座標系を設定して説明が行われる。直交座標系のZ軸は、ヒンジ機構16の回転軸18の方向に取られる。例えばY軸は、図1Bに示されるフォルダブルスマートフォンの閉状態において、ヒンジ機構16から第1部分11が延在する方向に取られる。この場合に、第1部分11は、第2部分12に対して成す角の角度θが0度から180度まで変動するように回転する。ただし、Y軸の取り方と、第1部分11及び第2部分12のうち回転移動する側とは、例示であって、これに限定するものではない。第1部分11及び第2部分12の間の成す角度θが変動可能であれば、第1部分11に対して、第2部分12が回転移動してもよい。
【0023】
このように、本実施形態において、第1部分11は、ヒンジ機構16を介した回転により、第2部分12に対する姿勢を変動させる。携帯端末に使われるヒンジ機構16は、第1部分11に対する第2部分12の角度θを0度から180度までの間の所望の角度で維持できるヒンジ機構であってよく、所謂トルクヒンジであってよい。ヒンジ機構16は、第1部分11に対する第2部分12の姿勢を変更させる「可動機構」の一例である。
【0024】
図1Bは、装置10Aの閉状態における外観斜視図の一例である。フォルダブルスマートフォンが「閉状態」にあるとは、図のように、第1部分11及び第2部分12の間の成す角度θが0度の状態である場合を指し、第1部分11が第2部分12に対して閉じた状態にあることを指す。
【0025】
ここで、本実施形態においては、装置10Aが「閉状態」にあることは、第2部分12が第1部分11に対して「第1姿勢」にあることを指す。ただし、本実施形態における「第1姿勢」の定義の仕方は例示であり、第2部分12の第1部分11に対する異なる姿勢を「第1姿勢」として定義してもよい。
【0026】
図1Cは、装置10Aの開状態における外観斜視図の一例である。装置10Aが「開状態」にあるとは、図のように、第1部分11及び第2部分12の間の成す角度θが180度の状態である場合を指し、第1部分11が第2部分12に対して、折り畳まれていない状態を指す。
【0027】
ここで、本実施形態においては、装置10Aが「開状態」にあることは、第2部分12が第1部分11に対して「第2姿勢」にあることを指す。ただし、本実施形態における「第2姿勢」の定義の仕方は例示であり、第2部分12の第1部分11に対する異なる姿勢を「第2姿勢」に定義してもよい。
【0028】
このように、本実施形態のヒンジ機構16は、装置10Aを「閉状態」から「開状態」、すなわち、「第1姿勢」から「第2姿勢」に変更する動作(「第1動作」の一例である。)を可能とする。また、ヒンジ機構16は、装置10Aを「開状態」から「閉状態」、すなわち、「第2姿勢」から「第1姿勢」に変更する動作(「第2動作」の一例である。)も可能とする。
【0029】
図2は、装置10Aの開状態における上面図の概略の一例である。装置10Aは、磁石部20、磁気センサ30、及び推定装置100Aを備える。以下で詳述する通り、本実施形態の装置10Aは、磁石部20及び磁気センサ30を用いることで、第1部分11及び第2部分12の間の成す角度θを精度良く推定できる。
【0030】
磁石部20は、第1部分11及び第2部分12の間の角度に応じて変動する磁場を生じさせる磁石を含む。これにより、磁石部20は、磁気センサ30により測定される磁場を提供する。本実施形態の磁石部20は、第1部分11及び第2部分12のうち、第2部分の一部を構成するヒンジ機構16に設けられ、磁気センサ30は、第1部分11及び第2部分12のうち、ヒンジ機構16を構成していない第1部分11に設けられる。
【0031】
ただし、磁石部20は、磁気センサ30との相対位置により、角度に応じた磁束密度が検出できる位置に設けられればよく、磁石部20は、第1部分11及び第2部分12のうちの一方に設けられ、磁気センサ30は、第1部分11及び第2部分12の他方に設けられてよい。したがって、磁石部20が第1部分11に設けられる例においては、磁気センサ30が第2部分12に設けられてよい。
【0032】
磁気センサ30は、第1部分11及び第2部分12の間の角度に応じた、ある時点での磁場(または磁束密度。磁束密度は、磁場に透磁率を乗じて得られるので、以下では、磁束密度の意味を含めて単に磁場と称することがある。)を検出する。磁気センサ30は、測定時点での磁束密度の測定値に応じた電圧または電流を出力する。例えば、磁気センサ30は、ホール素子である。磁気センサ30による磁束密度の測定時点は、「第1時点」の一例である。
【0033】
装置10Aにおいて、磁気センサ30は、少なくとも1つ設けられる。本実施形態では、磁気センサ30の個数は、一個であることを想定して説明がされる。特に、以下では一個の磁気センサ30で複数の異なる方向の磁束密度を測定する例についての説明がされる。しかし、装置10Aにおいて、磁気センサ30が設けられる個数は、所望に応じて2個以上であってよい。
【0034】
推定装置100Aは、磁気センサ30が検知した磁束密度の測定値に基づいて、角度θを推定する。なお、角度θの推定は、第1部分11に対する第2部分12のヒンジ機構16を通じた回転運動によって変動する姿勢の推定の一例である。
【0035】
装置10Aは、推定装置100Aにより推定された角度に基づいて、予め定められた動作を実行する。装置10Aは、推定装置100Aにより推定された角度に基づいて、第1部分11の表示部分と、第2部分12の表示部分とに異なる画像を表示させてよい。例えば、装置10Aは、推定装置100Aにより推定された角度が90度から120度などの予め定められた角度範囲に含まれる場合、第2部分12の表示部分にキーボードなどの操作機能を表示させ、第1部分11の表示部分に操作機能により操作された内容に応じた画像、例えば、文書、映像などを表示させる表示機能を表示させてよい。以下では、図3を参照して、推定装置100Aの内部の構成及び機能についてさらに説明する。
【0036】
図3は、推定装置100Aの構成の一例を示す図である。推定装置100Aは、制御部110と、記憶部120と、通信インタフェース130とを備える。推定装置100Aは、CPUとメモリとを備えるコンピュータにより構成されてよい。CPUが制御部110として機能し、メモリが記憶部120として機能してよい。
【0037】
制御部110は、通信インタフェース130から受信した磁気センサ30による磁束密度の測定値と、記憶部120に記憶されている参照情報とに基づいて、測定値に対応する角度θを推定し、推定した角度に基づいて装置10Aが機能するよう制御する。
【0038】
記憶部120は、磁気センサ30が検出する磁束密度の各成分の測定値の組み合わせと、第1部分11及び第2部分12の間の角度と、を対応させる参照情報を記憶する。参照情報は、一例として、磁束密度のX軸方向の成分、Y軸方向の成分、及びZ軸方向の成分(以下では、それぞれX成分、Y成分、及びZ成分と称することがある)のうち少なくとも2成分を座標軸とした場合に描かれるヒステリシス曲線の図形である。
【0039】
通信インタフェース130は、磁気センサ30が測定する磁束密度の測定値を受信する。通信インタフェース130は、磁気センサ30と信号線を介して通信する。
【0040】
制御部110は、磁束密度のX成分、Y成分、及びZ成分と、参照情報とに基づいて、第1部分11に対する第2部分12の角度θの推定を行い、装置10Aの動作を制御する。以下では、図4A図7を参照して、制御部110が角度θの推定を行うための原理を説明し、その後に、制御部110の内部構成と、その機能との説明を行う。
【0041】
図4Aは、磁気センサ30が検出した、第1部分11及び第2部分12の間の角度θに応じた磁束密度の一例を示す図である。図中、装置10Aを閉状態から開状態へと遷移させ、再び開状態から閉状態へと遷移させた場合(すなわち、閉状態から、開状態を介して閉状態へと戻る一往復をさせた場合)の磁束密度のXYZ座標系における、X成分、Y成分、及びZ成分のそれぞれが示される。なお、本明細書では、以下の各グラフは、角度に対する各磁束密度の成分、または各磁束密度の成分間の関係及び当該関係を示す図形の形状等を例示して説明するためのものである。したがって、各グラフにおける磁束密度の各成分は、任意単位(arbitrary unit;a.u.)での値として示されている。
【0042】
装置10Aを閉状態から開状態へと遷移させ、再び開状態から閉状態へと遷移させた場合、状態遷移動作は、第1部分11に対する第2部分12の角度θが180度である姿勢において切り替わる。
【0043】
さらに、動作を開始する際の閉状態における第1部分11に対する第2部分12の角度θと、動作を終了する際の閉状態における第1部分11に対する第2部分12の角度θとはともにθ=0度で等しい。したがって、動作開始時に磁気センサ30が測定する各成分の磁場と、動作終了時に磁気センサ30が測定する各成分の磁場とは略一致する。したがって、図中、磁束密度のX成分、Y成分、及びZ成分は、略閉曲線を描く。
【0044】
しかし、閉状態から開状態へと遷移する際に磁束密度のX成分が描く曲線と、開状態から閉状態へと遷移する際に磁束密度のX成分が描く曲線とは、磁気ヒステリシスの影響等により異なる軌道を描いて、曲線の端部へと至る。例えば、磁気ヒステリシスの影響は、磁束密度のX成分、Y成分、及びZ成分の各成分に現れるが、磁気ヒステリシスの影響の各成分における現れ方は、磁石部20及び磁気センサ30の相対位置に基づいて、異なる大きさで現れる。なお、装置10Aの開閉動作の際に、ヒンジの力のかかり具合により、装置10Aでは、磁石部20と、磁気センサ30との位置関係が微妙に変化することがある。この影響も、磁気センサ30の測定する磁束密度に、ヒステリシスとして現れることがある。
【0045】
図4Bは、図4Aに示された磁場のX成分及びY成分を示したグラフである。磁束密度のX成分及びY成分を図示すると、角度θを図に直接現れないパラメータとした略閉曲線のヒステリシス曲線の図形を描くことができる。
【0046】
図中、特に装置10Aが閉状態から開状態へと遷移する第1動作の際に、磁気センサ30の測定値のX成分及びY成分を結んで得られる曲線が、曲線82aとして示される。一方、その後、装置10Aが開状態から閉状態へと遷移する第2動作の際に、磁気センサ30の測定値のX成分及びY成分を結んで得られる曲線が、曲線84aとして示される。磁気ヒステリシスの影響でこれらの曲線82a,84aは異なる軌道を取って端部において略一致する座標に至る。
【0047】
このようなヒステリシス曲線を描くためには、XYZ座標系のうちの異なる2軸方向の磁束密度の成分が選択される。本実施形態のように、Z軸が第1部分11に対する第2部分12の回転軸18と略平行に取られる場合には、例えば、Z軸以外の2軸の方向の成分、すなわちX成分及びY成分を用いてよい。ただし、2成分の選び方は、この例に限定されるものではなく、他の選び方、すなわち、Y成分及びZ成分、またはZ成分及びX成分を用いてもよい。
【0048】
ヒステリシス曲線上の位置は、パラメータである角度θに依存する。磁束密度の測定値のX成分及びY成分を取得した場合に、推定装置100Aは、測定値のヒステリシス曲線上の位置を特定し、位置に対応する角度θを導出することにより、第1部分11及び第2部分12の間の角度θを推定できる。
【0049】
図5Aは、磁気センサ30が検出した、第1部分11及び第2部分12の間の角度θに応じた磁束密度の別例を示す図である。図に示されるように、センサの検出誤差、外部環境の磁場、または磁気ヒステリシスの影響等により、開閉する試行が異なると、磁束密度の角成分は、異なる軌道を描くことがある。
【0050】
角度θを横軸、磁束密度(または磁場)を縦軸とした曲線においては、例えば、図4A及び図5Aを比較した場合に、幾つかの相違点がある。図4Aの磁束密度のX成分を描いた曲線においては、85度付近の角度θにおいて、閉状態から開状態への遷移の際に描かれる曲線と、開状態から閉状態への遷移の際に描かれる曲線とが交差している。一方、図5Aの磁束密度のX成分を描いた曲線においては、端点以外では閉曲線を描く曲線が交差していない。
【0051】
さらには、図4Aの磁束密度のY成分を描いた曲線においては、90度付近の角度θにおいて、閉状態から開状態への遷移の際に描かれる曲線と、開状態から閉状態への遷移の際に描かれる曲線とが交差している。図5Aの磁束密度のY成分を描いた曲線においては、90度付近の角度において、両曲線は互いに交差していない。
【0052】
このように、開閉の試行が異なると、角度θ及び磁束密度を描いた曲線は、幾何学的な特徴が変化することがある。しかし、図4B及び図5Bを参照して以下で説明するように、磁束密度の各成分のうち、描かれるヒステリシス曲線の図形に対して、拡大または縮小、及び平行移動を行った場合、磁束密度のX成分及びY成分の幾何学的特徴は、略一致する。
【0053】
図5Bは、図5Aに示された磁場のX成分及びY成分の描く曲線を拡大または縮小、及び平行移動した曲線82b,84bと、図4Bで示した曲線82a,84aと、を並べて示した図である。本明細書において、以下では、第1動作における測定値を結んだ曲線82a、測定値を結んだ曲線を拡大または縮小、及び平行移動した曲線82bと、第2動作における測定値を結んだ曲線84a、測定値を結んだ曲線を拡大または縮小、及び平行移動した曲線84bとの組み合わせを曲線82,84と総称することがある。
【0054】
図示されるように、曲線82a,82b及び曲線84a,84bのそれぞれは、多少のズレを有するものの、曲線82a,84aまたは曲線82b,84bが互いに交わるか否かの特徴等を含む多くの幾何学的特徴において略一致した概形を描く。このように、開閉の試行のたびに磁束密度のX成分及びY成分がセンサの検出誤差、外部環境の変化、またはヒステリシスの影響等を受けた場合であっても、磁束密度のX成分及びY成分の描く曲線は、拡大または縮小、及び平行移動を行うことで概形が略一致する。開閉試行の異なる曲線同士での概形の一致性により、開閉試行の異なる曲線間で相互に略一致する測定位置では、第1部分11及び第2部分12の間の成す角度θも略一致した値を示す。
【0055】
したがって、磁束密度のX成分及びY成分の描くヒステリシス曲線(曲線82,84)についての情報は、X成分の測定値及びY成分の測定値の組み合わせを示す「参照情報」として用いることができる。すなわち、このような参照情報を用いて角度θを推定することで、装置10Aの周囲の磁場が変化しても、磁気センサ30に対する磁石部20の位置の推定の精度が低下することを抑制できる。なお、本実施形態において、X軸方向は、「第1方向」の一例であり、Y軸方向は、「第2方向」の一例であり、Z軸方向は、「第3方向」の一例である。
【0056】
本実施形態においては、推定装置100Aは、装置10Aを閉状態から開状態へと遷移させる第1動作中の第1部分11に対する第2部分12の姿勢に応じた磁気センサ30により測定されるX成分の測定値とY成分の測定値とを示す曲線82についての情報を「第1参照情報」として用いる。推定装置100Aは更に、装置10Aを開状態から閉状態へと遷移させる第2動作中の第1部分11に対する第2部分12の姿勢に応じた磁気センサ30により測定されるX成分の測定値とY成分の測定値とを示す曲線84についての情報を「第2参照情報」として用いる。
【0057】
第1参照情報は、曲線82の形状であってよく、第2参照情報は、曲線84の形状であってよい。ただし、第1参照情報は、曲線82の形状を再現可能な程度に数値の組み合わせを示す座標点間の差分が小さい、したがって数値の組み合わせを示す座標点の密度が曲線82の形状を再現可能な程度に密なX成分及びY成分の数値の組み合わせ群であってよい。同様に、第2参照情報は、曲線84の形状を再現可能な程度に数値の組み合わせを示す座標点間の差分が小さい、したがって数値の組み合わせを示す座標点の密度が曲線84の形状を再現可能な程度に密なX成分及びY成分の数値の組み合わせ群であってよい。
【0058】
曲線82は、装置10Aの第1動作に対応する曲線であり、曲線84は、装置10Aの第2動作に対応する曲線である。曲線82及び曲線84は、曲率及び軌道が相互に異なり、磁場の各成分が所定の値を有する場合に、対応する角度θの値も相互に異なる。
【0059】
推定装置100Aは、参照情報のうち、曲線82に対応する第1参照情報と、曲線84に対応する第2参照情報とを別個に用いる。推定装置100Aは、磁気センサ30により得られた複数の測定値を結ぶ曲線が、第1参照情報に対応する曲線82と、第2参照情報に対応する曲線84とのいずれにより適合するかを判定し、角度θの推定に用いる参照情報を第1参照情報及び第2参照情報から選択する。これにより、推定装置100Aは、適合する参照情報を用いて、装置10Aが第1動作または第2動作のいずれにあるかを判定し、角度θを精度良く推定できる。
【0060】
図6は、磁石部20及び磁気センサ30が外部磁場による着磁の影響を受けた際のヒステリシス曲線の変化の一例を表した図である。具体的には、磁石部20と、磁気センサ30との相対的な位置関係を変化させて、第1部分11に対して第2部分12を開閉したときのヒステリシス曲線が徐々に外的要因により磁化(着磁)の影響を受ける状態を近似している。
【0061】
図中、磁気センサ30により測定される磁束密度のX成分の測定値を横軸として、磁束密度のY成分及びZ成分を縦軸としたグラフが示される。左図は、X成分及びY成分の測定値の組み合わせと、X成分及びZ成分の測定値の組み合わせとを結ぶ曲線の描く図形を示す。一方、右図は、X成分及びY成分の測定値の組み合わせと、X成分及びZ成分の測定値の組み合わせとの描く曲線に対して、拡大または縮小、及び平行移動した曲線を示している。
【0062】
右図によれば、X成分及びY成分の測定値の組み合わせと、X成分及びZ成分の測定値の組み合わせとの描く曲線のいずれもが、拡大または縮小、及び平行移動後に略一致することが読み取れる。このように、X成分及びY成分の測定値の組み合わせの描く曲線と、X成分及びZ成分の測定値の組み合わせの描く曲線とは、外的要因により磁化(着磁)の影響を受けた場合であっても、曲線に対する拡大または縮小、及び平行移動により略一致する図形となる。
【0063】
このように、磁束密度の2座標軸成分の描く図形が、センサの検出誤差、外部環境の変化またはヒステリシスの影響等に対して安定性を有することが、更に例証される。図形の幾何学的安定性の一因は、角度θを座標軸として図形を描かずに、角度θをパラメータとして、磁束密度の2座標軸成分を軸とした座標系において図形を描いたことによるものである。
【0064】
図7は、第1参照情報及び第2参照情報の一例を示す図である。推定装置100Aは、第1参照情報として曲線82の形状を示す曲線82cと、第2参照情報として曲線84の形状を示す曲線84cと、を用いる。
【0065】
このように、本実施形態において、参照情報は、磁気センサ30により測定される第1方向の成分の測定値を第1軸として、磁気センサ30により測定される第2方向の成分の測定値を第2軸とする座標系上で、X成分の測定値及びY成分の測定値の組み合わせで示される第1部分11に対する第2部分12の姿勢に対応する座標値の集合により示される図形で表される。
【0066】
一方の曲線82は、第1参照情報に対応する「第1線」の一例である。他方の曲線84は、第2参照情報に対応する「第2線」の一例である。推定装置100Aは、磁場のX成分の測定値及び磁場のY成分の測定値を座標軸とする座標系において、測定値の示す座標値と、座標系内に描かれる曲線82または曲線84との距離に基づいて、第1参照情報及び第2参照情報のうちいずれを用いるかを選択する。
【0067】
ここで、再び図3を参照して、制御部110の内部構成と機能とについて説明する。制御部110は、磁束密度の2座標軸成分の描く図形を参照情報として用いて、角度θを推定する。制御部110は、取得部112と、検知部114と、選択部116と、推定部118と、を含む。
【0068】
ただし、制御部110は、参照情報として、磁気センサ30の測定した磁束密度のうち、一次独立な3自由度の成分についての座標値の組み合わせを含む第1参照情報及び第2参照情報を用いてもよい。一次独立な3自由度とは、直交座標系における軸方向の(X,Y,Z)の自由度であってよく、円筒座標系の(r,θ,z)の自由度であってもよく、球面座標系の(r,θ,φ)であってもよい。
【0069】
取得部112は、通信インタフェース130から磁気センサ30が測定した磁束密度(または磁場)の測定値を受信し、記憶部120から参照情報を取得する。取得部112は、取得した磁気センサ30の測定値及び参照情報を検知部114に送信する。参照情報は、第1参照情報及び第2参照情報を含む。
【0070】
検知部114は、第1部分11に対する第2部分12の姿勢を変動させる際に、姿勢の変動をさせる動作の途中で、動作の方向が変化したか否かを検出する。具体的には、検知部114は、第2部分12を第1部分11に対して第1姿勢(例えば角度θ=0度)から第2姿勢(例えば角度θ=180度)まで変化させる途中で、第1姿勢に戻らせようとする反転動作を検知する。
【0071】
検知部114は、複数の測定値と、参照情報とに基づいて、動作方向の反転を検出してよい。検知部114は、例えば、複数の測定値の参照情報からの差分が大きくなった場合に、動作方向の変化を検出してよい。検知部114が行う第1部分11の第2部分12に対する動作方向の変化の検知は、測定値を結ぶ曲線がXY平面内での所定の角度(例えば90度)以上の軌道の変化を生じたことに基づいてもよい。
【0072】
あるいは、検知部114は、慣性計測装置(IMU)を含んでもよい。IMUは、X軸、Y軸、及びZ軸に沿った軸を中心とする装置10Aの角速度、並びに装置10AのX軸、Y軸、及びZ軸方向の加速度を検出する装置である。検知部114がIMUを含むことにより、第1部分11に対する第2部分12の角速度及び加速度の変化から、第1部分11に対する第2部分12の動作方向の変化を検知できる。これにより、例えば、検知部114は、一軸方向の加速度の符号の正負が逆転することを動作方向の変化が生じたこととしてもよい。
【0073】
更なる別の実施形態として、IMUが第1部分11または第2部分12のいずれか一方に設けられ、かつ検知部114は、IMUに対して、通信線を介して接続されてもよい。なお、本明細書において、有線または無線による等特段言及がない場合において、「接続される」とは、導電パターン、配線、または接合材(例えばはんだ)等を介して、両者が導通するように「電気的に接続される」ことを意味する。検知部114は、接続されたIMUを介して第1部分11に対する第2部分12の動作方向の変化を検知できる。検知部114は、動作方向の変化を検出するためのセンサとして、IMUの代わりに、もしくはIMUに加えて加速度センサを含んでもよい。
【0074】
検知部114は、動作方向の変化の検知結果を選択部116に出力する。検知部114が動作方向の変化を検知したことに応じて、以下で選択部116が行う、参照情報の選択について再度の選択が行われてよい。あるいは、検知部114が動作方向の変化の検知をしたことに応じて、その時点から改めて取得部112による測定値の取得を行なってもよい。
【0075】
特に検知部114がIMUを含む場合、検知部114は、静止状態からの動作開始も検知できる。この場合、検知部114が動作開始及び動作方向の変化を検知することに応じて、取得部112がその動作方向における磁気センサ30の測定値を取得するよう構成されてよい。したがって、検知部114は、取得部112に対し、動作開始及び動作方向の変化の検知結果を出力してもよい。
【0076】
検知部114は、動作方向の検知結果に加え、取得部112から受信した磁気センサ30の測定値及び参照情報を選択部116に出力してよい。ただし、取得部112は、検知部114を介さずに、磁気センサ30の測定値及び参照情報を直接選択部116に出力してもよい。
【0077】
選択部116は、少なくとも1つの磁気センサ30により測定される磁場の各成分の測定値及び少なくとも1つの参照情報に基づいて、参照情報から位置の推定に用いる参照情報を選択する。選択部116は、少なくとも1つの磁気センサ30により測定される測定値のX成分及びY成分の組み合わせと、第1参照情報及び第2参照情報により示される曲線82,84のそれぞれが示す座標値の組み合わせとの一致度合いを導出する。選択部116は、第1参照情報及び第2参照情報のうち、測定値のX成分及びY成分の組み合わせとの一致度合いがより高い第1参照情報及び第2参照情報の一方を選択する。
【0078】
選択部116は、例えば、磁気センサ30により測定される磁場の測定値のうち、予め定められた、またはユーザにより選択された特徴点が有する座標値から、第1線(曲線82c)または第2線(曲線84c)までの距離に基づいて、一致度合いを導出する。選択部116は、特徴点の座標値から第1線または第2線までの距離のうち、より短い距離を有する曲線に対応する、第1参照情報または第2参照情報を選択してよい。
【0079】
あるいは、選択部116は、一致度合いの導出を複数の測定値と曲線との最小自乗距離の総和によって導出してよい。選択部116は、導出した一致度合いに従って、第1参照情報及び第2参照情報のうち、最小自乗距離の総和が小さくなる参照情報を一致度合いがより高い参照情報として選択してよい。
【0080】
なお、第1参照情報及び第2参照情報が、3次元空間内の一次独立な3自由度の成分についての測定値の組み合わせを示す情報である場合には、選択部116は、3次元空間内で第1参照情報及び第2参照情報の選択を行う。すなわち、選択部116は、三次元空間内での磁場の第1方向、第2方向、第3方向の測定値の成分の組み合わせと、第1参照情報及び第2参照情報が示す図形との一致度合いに従って、組み合わせと一致度合いがより高い第1参照情報及び第2参照情報の一方を選択する。選択部116は、磁気センサ30により測定される各成分の磁場の測定値と、選択した参照情報とを推定部118へと送信する。
【0081】
推定部118は、磁気センサ30によって測定される磁場の各成分の測定値の組み合わせと、選択部116により選択された磁気センサ30によって測定される各成分の測定値の組み合わせを示す参照情報とに基づいて、第1部分11に対する第2部分12の角度を推定する。本実施形態において、推定部118は、磁気センサ30によって測定されるX成分の測定値及びY成分の測定値の組み合わせと、選択部116により選択された第1参照情報及び第2参照情報の一方とに基づいて、第1部分11に対する第2部分12の姿勢を示す角度θを推定する。
【0082】
図8は、第1部分11に対する第2部分12の間の成す角度θの推定方法のフロー図の一例を示す。推定方法は、S102~S114の各段階を備える。
【0083】
検知部114は、第1部分11に対する第2部分12の姿勢が変化するヒンジ機構16の動作開始を検出する(S102)。取得部112は、その動作方向における、第1部分11に対する第2部分12の姿勢に対応する角度θに応じた少なくとも1つの磁気センサ30により測定された磁場の測定値を取得する(S104)。
【0084】
選択部116は、磁気センサ30により測定される測定値に対応する座標値の組み合わせと、参照情報により示される図形である曲線(例えば曲線82c,84c)それぞれとの距離を導出する(S106)。選択部116は、導出された距離に応じた一致度合いに基づいて、一致度が最も高い曲線を選択する(S108)。推定部118は、磁気センサ30により測定される測定値と、選択部116に選択された対象の曲線を示す参照情報とに基づいて、第1部分11に対する第2部分12の姿勢に対応する角度θを推定する(S110)。
【0085】
S110迄で一連の測定値に対して角度θの推定がなされると、測定値の検出の間に動作方向の変動が検知されるかどうかの判定へと進む。検知部114が、第1部分11に対する第2部分12の動作方向の変化が反転動作等の所定の角度以上の動作方向の変化を検出したか否かが判定される(S112)。検知部114が動作方向の変化を検出した場合、再びS104と進み、その動作方向において、取得部102は、磁気センサ30の磁場の測定値を取得する。一方、検知部114が動作方向の変化を検出しない場合には、S114へと進み第1部分11に対する第2部分12の間の成す角度θが変化する動作が終了したか否かが判定される。
【0086】
例えば、IMUを含む検知部114は、第1部分11に対する第2部分12の成す角度θを変化させる動作が終了したか否かを判定する(S114)。第1部分11に対する第2部分12の動作終了が判定された場合には、推定方法は終了する。一方、第1部分11に対する第2部分12の動作終了が判定されない場合には、再びS110に戻り、推定部118がその時点での第1部分11に対する第2部分12の角度θを推定してよい。
【0087】
以上の各段階を備える推定方法により、第1部分11に対する第2部分12の成す角度θが推定される。本実施形態の推定方法によれば、複数の参照情報を角度の推定に用いることにより、参照情報に対応する第1部分11に対する第2部分12の動作方向を細分化した推定が行われる。これにより、第1部分11に対する第2部分12の角度θが精度良く推定される。
【0088】
図9は、第1部分11及び第2部分12の間の角度θが0度または180度に至らない状態で装置10Aの開閉の反転が行われる場合の測定値の一例を示す図である。
【0089】
ヒンジ機構16においては、第1部分11に対する第2部分12の角度θが0度または180度以外の角度においても開閉の動作方向が変わることがある。特に、装置10Aがフォルダブルスマートフォンである場合、ヒンジ機構16は、角度θを0度から180度までの間の所望の角度で維持できるトルクヒンジであってよい。このようなトルクヒンジが使用される場合にあっては、装置10Aの動作方向は、0度から180度の間の任意の角度θから開閉動作の方向を反転させ易い。
【0090】
このように、装置10Aは、第2部分12を第1部分11に対して、角度θ=0度(装置10Aの閉状態)に対応する第1姿勢から角度θ=180度(装置10Aの開状態)に対応する第2姿勢まで変化させる第1動作の途中で、角度θ=0度の第1姿勢へと反転動作を行なうことがある。図中、装置10Aがこのような反転動作を行なった場合の磁場のX成分及びY成分の測定値の組み合わせの一例が示される。
【0091】
開閉動作が途中で反転する場合には、磁気センサ30が測定した測定値は、曲線82に対応する第1参照情報または曲線84に対応する第2参照情報のいずれによっても近似できない、測定値群86を含む場合がある。このような場合に測定値に対応する角度を精度良く推定するために、さらなる参照情報を導入することができる。
【0092】
図10は、第1参照情報、第2参照情報、及び第3参照情報の一例を示す図である。第3参照情報は、角度θが0度から180度の途中の角度で反転動作を行なった場合の曲線96に対応する参照情報である。
【0093】
本実施形態においては、第1部分11に対する第2部分12の角度θは、曲線92に基づいて、θ=0度(装置10Aの閉状態)からθ=180度(装置10Aの開状態)へと遷移する。さらに、第1部分11に対する第2部分12の角度θは、曲線96に基づいて、角度θ=180度から再び角度θ=0度(装置10Aの閉状態)へと向かう動作に遷移する。その変化の途中、第1部分11に対する第2部分12の動作は、ある角度θ(予め定められた角度。例えば角度θ=130度)で曲線96上で反転して、曲線96上で所定の角度(例えば角度θ=150度)まで戻る。第1部分11に対し、第2部分12は、再びその角度から曲線94に基づいて、角度θ=0度へと動作する。
【0094】
ここで、曲線92の形状に関する参照情報が第1参照情報に対応し、曲線94の形状に関する参照情報が第2参照情報に対応し、曲線96の形状に関する参照情報が第3参照情報に対応する。さらに、曲線92は第1線に対応し、曲線94は第2線に対応し、曲線96は第3線に対応する。したがって、図7の実施形態と異なり、本実施形態においては、推定装置100は、3つの曲線92,94,96に関する第1参照情報~第3参照情報によって、測定値に対応する角度θの推定を行う。
【0095】
このように、第1参照情報~第3参照情報は、磁気センサ30により測定される磁場のX成分の測定値を第1軸、磁気センサ30により測定される第2方向の成分の測定値を第2軸とする座標系上で示される。参照情報は、この座標系上において、磁気センサ30により測定される磁場のX成分の測定値及びY成分の測定値の組み合わせで示される第1部分11に対する第2部分12の位置または姿勢に対応する座標値の集合により示される図形で表される。
【0096】
ただし、第1参照情報~第3参照情報は、磁気センサ30の測定した磁束密度のうち、一次独立な3自由度の成分についての座標値の組み合わせを示す参照情報であってもよい。例えば、3自由度とは、直交座標系における軸方向の(X,Y,Z)の自由度であってよく、円筒座標系の(r,θ,z)の自由度であってもよく、球面座標系の(r,θ,φ)であってもよい。
【0097】
本実施形態においては、図3の制御部110は以下の動作をしてよい。取得部112は、参照情報が第1参照情報~第3参照情報を含む点を除き、参照情報が第1参照情報及び第2参照情報を含む場合と動作は共通している。
【0098】
検知部114は、第1部分11に対する第2部分12の姿勢を変動させる際に、姿勢の変動をさせる動作の途中で、動作の方向が変化する反転動作が生じたか否かを検出する。第3参照情報が用いられる場合とは、反転動作が生じる場合に他ならない。したがって、装置10Aの反転動作が生じた場合、検知部114は反転動作を検知して、選択部116は、参照情報を再度選択する。
【0099】
選択部116は、少なくとも1つの磁気センサ30により測定される磁場の各成分の測定値及び少なくとも1つの参照情報に基づいて、参照情報から位置の推定に用いる参照情報を選択する。選択部116は、少なくとも1つの磁気センサ30により測定される測定値のX成分及びY成分の組み合わせと、第1参照情報~第3参照情報により示される曲線92,94,96のそれぞれが示す座標値の組み合わせとの一致度合いを導出する。選択部116は、第1参照情報~第3参照情報のうち、測定値のX成分及びY成分の組み合わせとの一致度合いが最も高い第1参照情報~第3参照情報のうちの1つを選択する。
【0100】
なお、第1参照情報~第3参照情報が、3次元空間内の一次独立な3自由度の成分についての測定値の組み合わせを示す情報である場合には、選択部116は、3次元空間内で第1参照情報~第3参照情報の選択を行う。選択部116は、3次元空間内での磁場の第1方向、第2方向、第3方向の測定値の成分の組み合わせと、第1参照情報~第3参照情報が示す図形(曲線92,94,96)との一致度合いに従って、組み合わせと一致度合いが最も高い第1参照情報~第3参照情報のうちの1つを選択する。選択部116は、磁気センサ30により測定される各成分の磁場の測定値と、選択した参照情報とを推定部118へと送信する。
【0101】
推定部118は、磁気センサ30によって測定されるX成分の測定値及びY成分の測定値の組み合わせと、選択部116により選択された第1参照情報~第3参照情報のうちの1つとに基づいて、第1部分11に対する第2部分12の姿勢を示す角度θを推定する。以上により、推定装置100Aは、第1部分11に対して第2部分12が姿勢を変更する動作途中で動作の反転動作を行う場合であっても、角度θを精度良く推定できる。
【0102】
本実施形態では、推定部118は、1つの磁気センサ30により測定されるX成分の測定値及びY成分の測定値の組み合わせを用いて第1部分11に対する第2部分12の姿勢を示す角度θを推定する例について説明した。しかし、装置10Aが、複数の磁気センサ30を備える場合には、推定部118は、複数の磁気センサ30のうちの1つの磁気センサ30により測定されるX成分の測定値と複数の磁気センサ30のうちの他の1つの磁気センサ30により測定されるX成分の測定値との組み合わせを用いて第1部分11に対する第2部分12の姿勢を示す角度θを推定してもよい。あるいは、推定部118は、複数の磁気センサ30のうちの1つの磁気センサ30により測定されるX成分の測定値と複数の磁気センサ30のうちの他の1つの磁気センサ30により測定されるY成分の測定値との組み合わせを用いて第1部分11に対する第2部分12の姿勢を示す角度θを推定してもよい。
【0103】
以下では、装置10が、伸縮可能な端末である装置10Bである実施形態について説明する。図11Aから図12を参照して、装置10Bが備える構成について説明する。図11Aは、装置10Bの外観の上面図の一例を示す図であり、図11Bは、装置10Bの外観の上面図の別例を示す図である。図12は、本実施形態に係る装置10Bの機能ブロックの一例を示す図である。
【0104】
装置10Bは、伸縮可能な端末であり、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット、ノートパソコン、及び小型パソコン等の携帯端末である。図11A及び図11Bでは、装置10Bが、所謂ローラブルスマートフォンである例が示される。装置10Bは、支持部材52、可動部材54、ディスプレイ14、及び可動機構80を備える。
【0105】
装置10Bは、例えば、図11A及び図11Bに示すように、ディスプレイ14の表示画面が伸び縮みする。支持部材52及び可動部材54は、表示部を構成してよい。可動部材54は、支持部材52に対して図11Aに示す第1状態から、図11Bに示す第2状態まで、X軸の方向に沿って移動してよい。これにより、ディスプレイ14の表示画面のX方向の幅が伸び縮みする。ディスプレイ14は、例えば、可動機構80が機能することにより、Y軸に沿った回転軸を中心に巻き取り可能な有機ELディスプレイなど薄型のディスプレイでよい。支持部材52は、「第1部分」の一例であり、可動部材54は、「第2部分」の一例である。
【0106】
可動機構80は、可動部材54を支持部材52に対して移動させる駆動力を提供する駆動源を有してよい。駆動源は、静電アクチュエータ、VCM(ボイスコイルモータ)、またはピエゾアクチュエータ等のアクチュエータでよい。可動機構80は、駆動源を有さず、可動部材54は、可動機構80を介して手動で支持部材52に対して移動してもよい。
【0107】
なお、本実施形態では説明の簡単のために、装置10がヒンジ機構16または可動機構80のいずれかを有する例を示しているが、装置10はヒンジ機構16及び可動機構80の両方を有してもよい。すなわち、装置10は、例えば、スライダーヒンジ機構を用いたスマートフォンのように、折り畳み可能かつ伸縮可能な端末であってもよい。したがって、図1Aから図10を参照して説明される折り畳み可能な端末についての実施形態またはその一部は、図11A以降を参照して説明される伸縮可能な端末についての実施形態またはその一部と組み合わされてよい。以下で説明される実施形態は、支持部材52に対する可動部材54のXYZ空間内の複数の軸方向の並進移動及び回転移動に対する測定値に適用できる。
【0108】
図11Aは可動部材の可動範囲において、支持部材52に対して可動部材54が最も短縮した状態を示す。これは、可動部材54が支持部材52に対して「第1位置」にある状態の一例である。さらに、図11Bは、可動部材の可動範囲において、支持部材52に対して可動部材54が最も延伸した状態を示すものとする。これは、可動部材54が支持部材52に対して「第2位置」にある状態の一例である。
【0109】
この場合に、可動部材54を支持部材52に対して「第1位置」から「第2位置」に、すなわち、最も短縮した状態から最も延伸した状態にする動作は、「第1動作」の一例である。一方、可動部材54を支持部材52に対して「第2位置」から「第1位置」に、すなわち、最も延伸した状態から最も短縮した状態にする動作は、「第2動作」の一例である。
【0110】
図12に示されるように、装置10Bは、複数の磁気センサ60a,60b(以下では磁気センサ60として総称することがある)、及び磁石部70をさらに備える。磁気センサ60は、磁気センサ30と同様、磁気センサ60が設けられた位置における磁場を測定し、磁場に応じた測定値(例えば電圧または電流)を出力する。磁気センサ60は、ホール素子でよい。
【0111】
本実施形態では、装置10Bが、複数の磁気センサ60を備える例について説明する。複数の磁気センサ60は、磁気センサ60a,60bを含む。装置10Bが備える磁気センサ60の数は任意であり、装置10Bは、少なくとも2つの磁気センサ60を備えればよい。装置10Bは、支持部材52に対する可動部材54の位置または姿勢を可動範囲全体にわたって推定するために必要な数の磁気センサ60を備えればよい。磁気センサ60は、X軸、Y軸、及びZ軸方向のそれぞれの磁場に応じた測定値を出力してよい。しかし、本実施形態では、説明を簡略化するために、X軸、Y軸、及びZ軸のいずれか1軸、例えば、X軸方向の磁場に応じた測定値に着目して説明する。磁気センサ60aは「第1磁気センサ」の一例であり、磁気センサ60bは「第2磁気センサ」の一例である。
【0112】
磁石部70は、複数の磁気センサ60のそれぞれに磁場を提供する。可動部材54が支持部材52に対して移動する場合、磁石部70は、可動部材54に予め定められた方向に沿ってS極及びN極が交互に配置されてよい。
【0113】
この場合、複数の磁気センサ60は、支持部材52または可動部材54のうちの一方である支持部材52に設けられてよく、磁石部70は、支持部材52または可動部材54のうちの他方である可動部材54に設けられてよい。ただし、複数の磁気センサ60及び磁石部70の何れが支持部材52または可動部材54に設けられるかは、この例には限定されず、複数の磁気センサ60が支持部材52または可動部材54の相対位置を検出できればよい。したがって、磁気センサ60が可動部材54に設けられ、磁石部70が支持部材52に設けられてもよい。
【0114】
可動部材54が、支持部材52に対して予め定められた方向に沿って移動する場合には、複数の磁気センサ60は、予め定められた方向に沿って支持部材52に設けられてよい。複数の磁気センサ60は、予め定められた方向に沿って等間隔で支持部材52に設けられてよい。
【0115】
装置10Bは、推定装置100B、及び駆動制御部150をさらに備える。推定装置100Bは、複数の磁気センサ60のそれぞれの測定値に基づいて、支持部材52に対する可動部材54の位置を推定する。駆動制御部150は、推定装置100Bにより推定された支持部材52に対する可動部材54の位置に基づいて、支持部材52に対する可動部材54の位置が目標の位置となるように、可動機構80を制御してよい。
【0116】
複数の磁気センサ60は、周囲の磁場を測定し、周囲の磁場の大きさを示す測定値を出力する。可動部材54が、支持部材52に対して移動することで、複数の磁気センサ60のそれぞれの周囲の磁場が変化する。したがって、複数の磁気センサ60のそれぞれの測定値と、支持部材52に対する可動部材54との関係が予め判明していれば、推定装置100Bは、複数の磁気センサ60のそれぞれにより測定される測定値から、支持部材52に対する可動部材54の位置を推定できる。
【0117】
次に、推定装置100Bの内部の構成及び機能について説明する。推定装置100Bは、通信インタフェース130と、記憶部120と、取得部102と、検知部104と、選択部106,推定部108とを含む。推定装置100Bは、CPU及びメモリを備えるコンピュータに構成されてよい。CPUが、取得部102、検知部104、選択部106、及び推定部108として機能し、メモリが記憶部120として機能してよい。
【0118】
通信インタフェース130は、複数の磁気センサ60と信号線を介して通信し、複数の磁気センサ60が測定する磁束密度の測定値を受信する。通信インタフェース130は、複数の磁気センサ60が測定する磁束密度のXYZ座標系における各成分を受信してよい。
【0119】
記憶部120は、磁気センサ60a,60bを含む複数の磁気センサ60における測定値から可動部材54の支持部材52に対する位置を推定するための参照情報を記憶する。参照情報は、支持部材52に対する可動部材54の第1位置から第2位置へ移動させる第1動作において、複数の磁気センサ60が測定する磁場のX成分の測定値の組み合わせを示す第1参照情報を含む。第1参照情報において、磁場のX成分の組み合わせが示される複数の磁気センサ60は、例えば磁気センサ60a,60bである。ただし、第1参照情報において、磁場のX成分の組み合わせが示される複数の磁気センサ60は、他の磁気センサ(磁気センサ60c,60d等)含んでよい。
【0120】
参照情報は更に、支持部材52に対する可動部材54の第2位置から第1位置へ移動させる第2動作において、複数の磁気センサ60が測定する磁場のX成分の測定値の組み合わせを示す第2参照情報とを含む。第2参照情報において、磁場のX成分の組み合わせが示される複数の磁気センサ60は、例えば磁気センサ60a,60bである。ただし、第2参照情報において、磁場のX成分の組み合わせが示される複数の磁気センサ60は、他の磁気センサを含んでよい。
【0121】
参照情報は、例えば、磁気センサ60a,60bの検出範囲の一部において、その範囲での磁気センサ60a,60bにより測定される測定値の組み合わせを示す関数である。例えば、参照情報は、第1参照情報及び第2参照情報で、係数の異なる関数を含んでよい。さらに、参照情報は、可動部材54(第2部分)を支持部材52(第1部分)に対して第1位置から第2位置まで変化させる途中で、第1位置に戻らせようとする反転動作の際に、より適合する係数を有する関数に対応する第3参照情報を含んでもよい。また、参照情報は、第1参照情報~第3参照情報に対応する係数に応じて、複数の磁気センサ60a,60bの測定値の組み合わせが示す曲線の図形であってもよい。
【0122】
取得部102は、通信インタフェース130から複数の磁気センサ60の測定した磁束密度(または磁場)の測定値を受信し、記憶部120から参照情報を取得する。取得部102は、取得した複数の磁気センサ60の測定値及び1以上の参照情報を検知部104に送信する。
【0123】
検知部104は、複数の磁気センサ60の測定値に基づいて、支持部材52に対する可動部材54の移動方向の変化を検知する。具体的には、検知部104は、X方向における加速度の符号の変化に基づいて、動作方向の変化を検知してよい。
【0124】
選択部106は、測定値及び1以上の参照情報に基づいて、1以上の参照情報から位置の推定に用いる参照情報を選択する。選択部106は、例えば、第1参照情報及び第2参照情報から、X軸における支持部材52に対する可動部材54の相対位置の推定に使用する参照情報を選択する。参照情報は、選択部106は、例えば、第1磁気センサ60a,60bにより測定される磁場のX成分の複数の測定値に基づいて、測定値の組み合わせを示す第1参照情報及び第2参照情報とのうち一致度合いの高い関数を与える参照情報を選択する。
【0125】
また、検知部104が反転動作を検知したことに応じて、選択部106は、適合する参照情報の選択を再度行なってよい。選択部106は、例えば、第1磁気センサ60a,60bにより測定される磁場のX成分の複数の測定値と、第1参照情報、第2参照情報、及び第3参照情報のそれぞれとの一致度合いとに基づいて、第1参照情報、第2参照情報、及び第3参照情報のうちから位置の推定に用いる参照情報を選択する。選択部106は、第1参照情報~第3参照情報の与える関数の有する係数に応じて、複数の磁気センサ60a,60bの測定値の組み合わせが示す曲線の図形と、実際に磁気センサ60a,60bにより測定された測定値の組み合わせが示す曲線との一致度により参照情報を選択してよい。選択部106は、複数の磁気センサ60により測定されるX成分の測定値と、選択した参照情報とを推定部108へと送信する。
【0126】
推定部108は、複数の磁気センサ60によって測定されるX成分の測定値の組み合わせと、選択部106により選択された複数の磁気センサ60によって測定されるX成分の測定値の組み合わせを示す参照情報とに基づいて、支持部材52(第1部分11)に対する可動部材54(第2部分12)のX方向の位置を推定する。
【0127】
以上により推定装置100Bは、複数の磁気センサ60によって測定されるX成分の測定値の組み合わせに対して、動作方向等に基づいて細分化された複数の参照情報を用いて位置の推定を行う。これにより、推定装置100Bは、第1部分11に対して第2部分12が位置を変更する動作をする場合に、動作方向が変動した場合であっても、精度良く第1部分11に対する第2部分12の位置を推定できる。
【0128】
本実施形態では、推定部108が、磁気センサ60a,60bにより測定されたそれぞれの磁場のX成分の測定値の組み合わせを用いて支持部材52に対する可動部材54の位置を推定する例について説明した。しかし、推定部108は、複数の磁気センサ60により測定された磁場の異なる軸方向の測定値の組み合わせを用いて支持部材52に対する可動部材54の位置を推定してもよい。例えば、推定部108は、磁気センサ60aにより測定された磁場のX成分の測定値と磁気センサ60aにより測定された磁場のY成分の測定値との組み合わせを用いて支持部材52に対する可動部材54の位置を推定してもよい。推定部108は、1つの磁気センサ60aにより測定される磁場のX成分の測定値とY成分の測定値との組み合わせを用いて支持部材52に対する可動部材54の位置を推定してもよい。
【0129】
装置10Bは、支持部材52に対する可動部材54の複数の並進移動の軸に対してそれぞれ複数の磁気センサ60を含んでよい。例えば、複数のスライド機構を組み合わせることにより、装置10Bが、支持部材52に対して、可動部材54を引き出した後に、支持部材52に対して、可動部材54を重ねたり平面的な位置関係に配置したりする関係を変えることができる装置であることがある。装置10Bに、複数の磁気センサ60を設けることで、推定部108は、支持部材52に対する可動部材54のXYZ空間内の並進移動についての正確な位置の推定をし易くなる。
【0130】
図13は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化してよいコンピュータ1200の一例を示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられるオペレーションまたは当該装置の1または複数の「部」として機能させることができる。または、当該プログラムは、コンピュータ1200に当該オペレーションまたは当該1または複数の「部」を実行させることができる。当該プログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつかまたは全てに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。
【0131】
本実施形態によるコンピュータ1200は、CPU1212、及びRAM1214を含み、それらはホストコントローラ1210によって相互に接続されている。コンピュータ1200はまた、通信インタフェース1222、入力/出力ユニットを含み、それらは入力/出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続されている。コンピュータ1200はまた、ROM1230を含む。CPU1212は、ROM1230及びRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。
【0132】
通信インタフェース1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブが、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラム及びデータを格納してよい。ROM1230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、及び/またはコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。プログラムが、CR-ROM、USBメモリまたはICカードのようなコンピュータ可読記憶媒体またはネットワークを介して提供される。プログラムは、コンピュータ可読記憶媒体の例でもあるRAM1214、またはROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーションまたは処理を実現することによって構成されてよい。
【0133】
例えば、通信がコンピュータ1200及び外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、またはUSBメモリのような媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信した受信データを記憶媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0134】
また、CPU1212は、USBメモリ等のような外部記憶媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記憶媒体にライトバックしてよい。
【0135】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような様々なタイプの情報が記憶媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記憶媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記憶媒体内に格納される場合、CPU1212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0136】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ1200上またはコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに有線または無線により接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記憶媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ1200に提供する。
【0137】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよい。その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0138】
コンピュータ可読命令は、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。ソースコードまたはオブジェクトコードは、従来の手続型プログラミング言語を含む。従来の手続型プログラミング言語は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語でよい。コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供されてよい。プロセッサまたはプログラマブル回路は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0139】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0140】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0141】
10 装置
11 第1部分
12 第2部分
14 ディスプレイ
16 ヒンジ機構
18 回転軸
20,70 磁石部
30,60 磁気センサ
52 支持部材
54 可動部材
80 可動機構
82,84,92,94,96 曲線
86 測定値群
100 推定装置
102,112 取得部
104,114 検知部
106,116 選択部
108,118 推定部
110 制御部
120 記憶部
130,1222 通信インタフェース
150 駆動制御部
1200 コンピュータ
1210 ホストコントローラ
1212 CPU
1214 RAM
1220 入力/出力コントローラ
1230 ROM
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13