(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142036
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】転写フィルム、積層体、光学フィルム、偏光板、画像表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241003BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20241003BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20241003BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20241003BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20241003BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20241003BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241003BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20241003BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/00
H10K50/10
H10K50/86
H10K59/00
H10K59/10
G09F9/00 313
G02F1/1335 510
G02F1/13363
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053994
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】横田 知瞭
(72)【発明者】
【氏名】小西 敏博
(72)【発明者】
【氏名】古木 裕介
(72)【発明者】
【氏名】松本 彩子
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
3K107
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA18
2H149AB26
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2H149FA01Y
2H149FA24Y
2H149FA33Y
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2H149FD33
2H291FA22X
2H291FA22Z
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2H291HA11
2H291HA13
2H291HA15
2H291LA13
2H291PA44
3K107AA01
3K107BB01
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3K107GG09
5G435AA17
5G435BB05
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5G435DD11
5G435FF05
5G435HH18
5G435HH20
(57)【要約】
【課題】加工適性に優れ、仮支持体の剥離性にも優れる転写フィルム、積層体、光学フィルム、偏光板、画像表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置の提供。
【解決手段】第1仮支持体と、前記第1仮支持体に隣接して配置された第1位相差層とを有する、転写フィルムであって、前記第1位相差層が、重合性基を有する液晶化合物に由来する単位を含むポリマーを含み、要件1~要件3をいずれも満たす、転写フィルム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1仮支持体と、前記第1仮支持体に隣接して配置された第1位相差層とを有する、転写フィルムであって、
前記第1位相差層が、重合性基を有する液晶化合物に由来する単位を含むポリマーを含み、
要件1~要件3をいずれも満たす、転写フィルム。
要件1:前記第1位相差層の破断剥離荷重が、0.15N/25mm以上0.40N/25mm未満である。
要件2:前記第1仮支持体と前記第1位相差層との間の剥離強度が、0.05~0.60N/25mmである。
要件3:前記第1位相差層の前記第1仮支持体とは反対側の表面から前記第1仮支持体側に向かってイオンビームを照射しながら飛行時間型2次イオン質量分析法で前記第1位相差層の成分分析を行った際に、前記第1位相差層の前記第1仮支持体とは反対側の表面から前記第1仮支持体側の表面に向かって前記第1位相差層の全厚みの90%の位置を深さ位置D90とし、前記深さ位置D90と前記第1位相差層の前記仮支持体側の表面との間の領域を領域Xとした場合に、
前記領域Xにおける全2次イオン強度の合計値ITXに対する、前記領域Xにおける含フッ素化合物に由来する2次イオン強度の合計値IFXの比率が、1%以下である。
【請求項2】
前記ポリマーが、垂直配向に固定される、請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項3】
前記ポリマーが、更に、2個以上の重合性基を有する非液晶化合物に由来する単位を含む、請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項4】
前記非液晶化合物が、水素結合性基を有する、請求項3に記載の転写フィルム。
【請求項5】
前記非液晶化合物が、ウレタン結合を有する、請求項3に記載の転写フィルム。
【請求項6】
更に、要件4を満たす、請求項3に記載の転写フィルム。
要件4:前記第1位相差層の前記第1仮支持体とは反対側の表面から前記第1仮支持体側に向かってイオンビームを照射しながら飛行時間型2次イオン質量分析法で前記第1位相差層の成分分析を行った際に、前記第1位相差層の前記第1仮支持体とは反対側の表面から前記第1仮支持体側の表面に向かって前記第1位相差層の全厚みの45%の位置を深さ位置D45、55%の位置を深さ位置D55、及び、90%の位置を深さ位置D90とし、前記深さ位置D45と前記深さ位置D55との間の領域を領域Yとし、前記深さ位置D90と前記第1位相差層の前記第1仮支持体側の表面との間の領域を領域Xとした場合に、
前記領域Xにおける前記非液晶化合物に由来する2次イオン強度の合計値IMXが、前記領域Yにおける前記非液晶化合物に由来する2次イオン強度の合計値IMYよりも大きい。
【請求項7】
前記第1位相差層が、フッ素原子を有さず、かつ、式(X1)で表される繰り返し単位及び式(X2)で表される繰り返し単位からなる群から選択される少なくとも1種を有するポリマーXを含む、請求項1に記載の転写フィルム。
【化1】
式(X1)中、
R
X11は、水素原子又はメチル基を表す。
L
X11は、単結合、又は、-O-、-CO-、-NR
L-、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、置換基を有していてもよい2価の芳香族基、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される2価の連結基を表す。R
Lは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。
R
X12は、炭素数1~20のアルキル基を表す。ただし、R
X12が炭素数2~20のアルキル基を表す場合、前記炭素数2~20のアルキル基を構成する-CH
2-の1個以上が、-COO-、-CO-又は-O-に置換されていてもよい。
式(X2)中、
R
X21は、水素原子又はメチル基を表す。
L
X21は、単結合又は2価の連結基を表す。
R
X22は、-OH、-COOH、-PO
3H、-OP(=O)(OH)
2、-CO
2
-M
+、-SO
3
-M
+、-NT
1T
2、オキサゾリン基、-N
+(Q)
3E
-又はベタイン構造を有する基を表す。
M
+は、アルカリ金属カチオン又はN
+(Q)
4を表す。
T
1及びT
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数1~20のアルコキシ基を表す。T
1及びT
2は、直接又は連結基を介して互いに結合して窒素原子を含む環を形成していてもよい。
E
-は、アニオンを表す。
Qは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を表す。
【請求項8】
前記ポリマーXが、水酸基を有する、請求項7に記載の転写フィルム。
【請求項9】
更に、要件5を満たす、請求項7に記載の転写フィルム。
要件5:前記第1位相差層の前記第1仮支持体とは反対側の表面から前記第1仮支持体側に向かってイオンビームを照射しながら飛行時間型2次イオン質量分析法で前記第1位相差層の成分分析を行った際に、前記第1位相差層の前記第1仮支持体とは反対側の表面から前記第1仮支持体側の表面に向かって前記第1位相差層の全厚みの45%の位置を深さ位置D45、55%の位置を深さ位置D55、及び、90%の位置を深さ位置D90とし、前記深さ位置D45と前記深さ位置D55との間の領域を領域Yとし、前記深さ位置D90と前記第1位相差層の前記第1仮支持体側の表面との間の領域を領域Xとした場合に、
前記領域Xにおける前記ポリマーXに由来する2次イオン強度の合計値IPXが、前記領域Yにおける前記ポリマーXに由来する2次イオン強度の合計値IPYよりも大きい。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の転写フィルムと、
前記第1位相差層の前記第1仮支持体とは反対側の表面上に、直接又は粘着剤層を介して配置された、第2位相差層と、
第2仮支持体と、をこの順で有する、積層体。
【請求項11】
請求項10に記載の積層体から、前記第1仮支持体及び前記第2仮支持体を剥離してなる、光学フィルム。
【請求項12】
請求項11に記載の光学フィルムを含む、偏光板。
【請求項13】
請求項12に記載の偏光板を含む、画像表示装置。
【請求項14】
請求項12に記載の偏光板を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写フィルム、積層体、光学フィルム、偏光板、画像表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
位相差層は、液晶表示装置の視野角補償膜又は有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)表示装置の反射防止膜として用いることがある。
また、近年、表示装置の普及に伴い、表示装置に使用される位相差層に対して、製造工程の簡略化が要求されている。
【0003】
このような要求に対して、特許文献1には、特定の破断剥離荷重となる層を有する位相差層を含む転写フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の転写フィルムに含まれる位相差層としては、特定の破断剥離荷重を有する位相差層に限られており、上記以外の破断剥離荷重となる位相差層を含む転写フィルムも望まれていた。
また、本発明者らは、比較例に示すような従来の位相差層を有する転写フィルムについて検討したところ、加工適性及び仮支持体の剥離性の少なくとも一方が、劣ることを知見した。
加工適性に優れるとは、第1仮支持体と第1位相差層とを有する転写フィルム、及び、第2仮支持体と第2位相差層とを有する被転写物を用いて、転写フィルムが有する第1位相差層の第1仮支持体とは反対側の表面と、被転写物が有する第2位相差層の第2仮支持体とは反対側の表面とを貼合して積層体を得て、積層体から第2仮支持体を剥離した際に、積層体中の他の層内及び層間で剥離が生じず、かつ、積層体中の他の層で破断が生じずに、第2仮支持体のみを剥離しやすいことを意味する。
また、仮支持体の剥離性とは、第2仮支持体が剥離された積層体から第1仮支持体を更に剥離した際に、ジッピング現象及び剥離跡が生じずに、第1仮支持体を剥離しやすいことを意味する。
【0006】
そこで、本発明は、加工適性に優れ、仮支持体の剥離性にも優れる転写フィルム、積層体、光学フィルム、偏光板、画像表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0008】
〔1〕
第1仮支持体と、上記第1仮支持体に隣接して配置された第1位相差層とを有する、転写フィルムであって、
上記第1位相差層が、重合性基を有する液晶化合物に由来する単位を含むポリマーを含み、
要件1~要件3をいずれも満たす、転写フィルム。
要件1:上記第1位相差層の破断剥離荷重が、0.15N/25mm以上0.40N/25mm未満である。
要件2:上記第1仮支持体と上記第1位相差層との間の剥離強度が、0.05~0.60N/25mmである。
要件3:上記第1位相差層の上記第1仮支持体とは反対側の表面から上記第1仮支持体側に向かってイオンビームを照射しながら飛行時間型2次イオン質量分析法で上記第1位相差層の成分分析を行った際に、上記第1位相差層の上記第1仮支持体とは反対側の表面から上記第1仮支持体側の表面に向かって上記第1位相差層の全厚みの90%の位置を深さ位置D90とし、上記深さ位置D90と上記第1位相差層の上記仮支持体側の表面との間の領域を領域Xとした場合に、
上記領域Xにおける全2次イオン強度の合計値ITXに対する、上記領域Xにおける含フッ素化合物に由来する2次イオン強度の合計値IFXの比率が、1%以下である。
〔2〕
上記ポリマーが、垂直配向に固定される、〔1〕に記載の転写フィルム。
〔3〕
上記ポリマーが、更に、2個以上の重合性基を有する非液晶化合物に由来する単位を含む、〔1〕に記載の転写フィルム。
〔4〕
上記非液晶化合物が、水素結合性基を有する、〔3〕に記載の転写フィルム。
〔5〕
上記非液晶化合物が、ウレタン結合を有する、〔3〕に記載の転写フィルム。
〔6〕
更に、要件4を満たす、〔3〕に記載の転写フィルム。
要件4:上記第1位相差層の上記第1仮支持体とは反対側の表面から上記第1仮支持体側に向かってイオンビームを照射しながら飛行時間型2次イオン質量分析法で上記第1位相差層の成分分析を行った際に、上記第1位相差層の上記第1仮支持体とは反対側の表面から上記第1仮支持体側の表面に向かって上記第1位相差層の全厚みの45%の位置を深さ位置D45、55%の位置を深さ位置D55、及び、90%の位置を深さ位置D90とし、上記深さ位置D45と上記深さ位置D55との間の領域を領域Yとし、上記深さ位置D90と上記第1位相差層の上記第1仮支持体側の表面との間の領域を領域Xとした場合に、
上記領域Xにおける上記非液晶化合物に由来する2次イオン強度の合計値IMXが、上記領域Yにおける上記非液晶化合物に由来する2次イオン強度の合計値IMYよりも大きい。
〔7〕
上記第1位相差層が、フッ素原子を有さず、かつ、後述する式(X1)で表される繰り返し単位及び後述する式(X2)で表される繰り返し単位からなる群から選択される少なくとも1種を有するポリマーXを含む、〔1〕に記載の転写フィルム。
〔8〕
上記ポリマーXが、水酸基を有する、〔7〕に記載の転写フィルム。
〔9〕
更に、要件5を満たす、〔7〕に記載の転写フィルム。
要件5:上記第1位相差層の上記第1仮支持体とは反対側の表面から上記第1仮支持体側に向かってイオンビームを照射しながら飛行時間型2次イオン質量分析法で上記第1位相差層の成分分析を行った際に、上記第1位相差層の上記第1仮支持体とは反対側の表面から上記第1仮支持体側の表面に向かって上記第1位相差層の全厚みの45%の位置を深さ位置D45、55%の位置を深さ位置D55、及び、90%の位置を深さ位置D90とし、上記深さ位置D45と上記深さ位置D55との間の領域を領域Yとし、上記深さ位置D90と上記第1位相差層の上記第1仮支持体側の表面との間の領域を領域Xとした場合に、
上記領域Xにおける上記ポリマーXに由来する2次イオン強度の合計値IPXが、上記領域Yにおける上記ポリマーXに由来する2次イオン強度の合計値IPYよりも大きい。
〔10〕
〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の転写フィルムと、
上記第1位相差層の上記第1仮支持体とは反対側の表面上に、直接又は粘着剤層を介して配置された、第2位相差層と、
第2仮支持体と、をこの順で有する、積層体。
〔11〕
〔10〕に記載の積層体から、上記第1仮支持体及び上記第2仮支持体を剥離してなる、光学フィルム。
〔12〕
〔11〕に記載の光学フィルムを含む、偏光板。
〔13〕
〔12〕に記載の偏光板を含む、画像表示装置。
〔14〕
〔12〕に記載の偏光板を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加工適性に優れ、仮支持体の剥離性にも優れる転写フィルム、積層体、光学フィルム、偏光板、画像表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の転写フィルムの実施形態の一例を示す模式的な断面図である。
【
図2】破断剥離荷重の測定方法を説明する模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、平行及び直交とは、それぞれ厳密な平行又は厳密な直交から±5°の範囲を意味する。
本明細書において、各種成分は、各種成分に該当する物質を1種単独又は2種以上で用いてもよい。各種成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りがない限り、併用した物質の合計の含有量を意味する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルのの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念である。
【0012】
本明細書において、2価の基(例えば、-O-CO-)の結合方向は特に限定されず、例えば、「L1-L2-L3」の結合においてL2が-O-CO-である場合、L1側に結合している位置を*1、L3側に結合している位置を*2とすると、L2は*1-O-CO-*2であってもよく、*1-CO-O-*2であってもよい。
【0013】
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は、それぞれ、波長λにおける面内のレターデーション及び厚み方向のレターデーションを表す。なお、波長λは、特に記載がないときは、550nmとする。
また、本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は、AxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)において、波長λで測定した値である。
具体的には、AxoScan OPMF-1にて、平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScan OPMF-1で算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味する。
【0014】
本明細書において、固形分とは、膜(例えば、第1位相差層)を形成する成分を意味し、溶剤(例えば、有機溶剤及び水等)は含まれない。また、膜を形成する成分であれば、その性状が液体状であっても、固形分とみなす。
【0015】
[転写フィルム]
本発明の転写フィルムは、第1仮支持体と、第1仮支持体に隣接して配置された第1位相差層とを有する、転写フィルムであって、第1位相差層が、重合性基を有する液晶化合物に由来する単位を含むポリマー(以下、「ポリマーLC」ともいう。)を含み、後述する要件1~要件3をいずれも満たす。
【0016】
本発明の転写フィルムが、加工適性及び仮支持体の剥離性のいずれもが優れる機構は、明らかではないが、本発明者は以下のように推測している。
要件1~要件3のいずれも満たす場合、それぞれの要件が調和的に作用することで、加工適性及び仮支持体の剥離性に優れると推測される。
以下、加工適性及び仮支持体の剥離性の少なくとも一方がより優れることを、本発明の効果がより優れるともいう。
【0017】
図1に、本発明の転写フィルムの実施形態の一例を示す。
図1に示す転写フィルム10は、第1仮支持体1と、第1位相差層2とを有する。
以下、本発明の転写フィルムが満たす各要件、及び、本発明の転写フィルムに用いられる各部材について詳述する。
【0018】
〔要件1〕
要件1:第1位相差層の破断剥離荷重が、0.15N/25mm以上0.40N/25mm未満である。
【0019】
要件1としては、要件1-1が好ましい。
要件1-1:第1位相差層の破断剥離荷重が、0.20~0.35N/25mmである。
【0020】
破断剥離荷重は、以下の手順で測定した荷重(単位:N/25mm)をいう。
図2に示すように、第1仮支持体1及び第1位相差層2を有する転写フィルム10と、予めコロナ処理(出力:15W・min/m
2、搬送速度:10m/min)を施したトリアセチルセルロース(TAC)基板8とを、以下に示す組成で調製した紫外線(UV)硬化型樹脂組成物7を介してローラー貼合機(貼合速度:150rpm/min、貼合圧:0.4MPa)を用いて貼合する。
次いで、室温(23℃)にて紫外線照射(150mJ/cm
2)を行い、UV硬化型樹脂組成物7を硬化させ、貼合フィルムを作製する。UV硬化型樹脂組成物に含まれる各種成分は、実施例における紫外線硬化型樹脂組成物に含まれる各種成分と同じである。
作製した貼合フィルムを幅25mmに裁断し、ガラス基板6に粘着剤層(SK1478、綜研化学社製)5を介して貼合する。
次いで、TAC基板8を、
図2において矢印で示す90°方向に、10mm/minで引き上げたときに、第1位相差層が破断又は破断と同時に剥離する時にかかる荷重値を、テンシロン万能材料試験機(オリエンテック社製)にて測定し、これを破断剥離荷重と定義する。
【0021】
第1位相差層の破断剥離荷重を調整する方法としては、例えば、後述する2個以上の重合性基を有する非液晶化合物の種類、その含有量、第1位相差を形成する際の紫外線照射量、第1位相差層形成用組成物における固形分濃度、溶媒の種類及び組成等を調整する方法が挙げられる。また、後述する要件3における合計値ITX及び合計値IFXを調整する方法も挙げられる。
【0022】
〔要件2〕
要件2:第1仮支持体と第1位相差層との間の剥離強度が、0.05~0.60N/25mmである。
【0023】
要件2としては、要件2-1が好ましく、要件2-2がより好ましい。
要件2-1:第1仮支持体と第1位相差層との間の剥離強度が、0.08~0.50N/25mmである。
要件2-2:第1仮支持体と第1位相差層との間の剥離強度が、0.10~0.20N/25mmである。
【0024】
剥離強度は、以下の手順で測定した荷重値(単位:N/25mm)をいう。
まず、転写フィルムを150mm×25mmに裁断した後、第1位相差層の第1仮支持体と反対側の表面を、粘着剤層(SK1478、綜研化学社製)を介してガラス基板に貼合する。このとき、ガラス基板に80mm×25mm部分のみを貼合する。
次いで、転写フィルムのガラス基板に貼合されていない部分とガラス基板とを把持し、これらに180°方向に力をかけて第1仮支持体を剥離したときの荷重値をテンシロン万能材料試験機(オリエンテック社製)にて測定する。
【0025】
第1仮支持体と第1位相差層との間の剥離強度を調整する方法としては、例えば、第1位相差層において、ポリマーXの種類、その含有量、第1位相差層の厚み、第1位相差層を形成する際の紫外線照射量、第1位相差層形成用組成物における固形分濃度の調整、溶媒の種類及び組成等を調整する方法が挙げられる。また、後述する要件3における合計値ITX及び合計値IFXを調整する方法も挙げられる。
【0026】
〔要件3〕
要件3:第1位相差層の第1仮支持体とは反対側の表面から第1仮支持体側に向かってイオンビームを照射しながら飛行時間型2次イオン質量分析法で第1位相差層の成分分析を行った際に、第1位相差層の第1仮支持体とは反対側の表面から第1仮支持体側の表面に向かって第1位相差層の全厚みの90%の位置を深さ位置D90とし、深さ位置D90と第1位相差層の仮支持体側の表面との間の領域を領域Xとした場合に、
領域Xにおける全2次イオン強度の合計値ITXに対する、領域Xにおける含フッ素化合物に由来する2次イオン強度の合計値IFXの比率(IFX/ITX)が、1%以下である。
なお、含フッ素化合物について、後述するとおりである。
【0027】
要件3としては、要件3-1が好ましい。
要件3-1:上記飛行時間型2次イオン質量分析法を行った際に、上記領域Xにおける全2次イオン強度の合計値ITXに対する、領域Xにおける含フッ素化合物に由来する2次イオン強度の合計値IFXの比率が、0.5%以下である。
【0028】
なお、IFX/ITXの下限は、特に制限されないが、低いほど好ましい(例えば、0%以上)。つまり、第1位相差層がフッ素原子を有する化合物(例えば、後述する含フッ素化合物)を含まなくてもよく、第1位相層の領域Xにおけるフッ素原子を有する化合物が存在しなくてもよい。
【0029】
要件3における合計値IFX及び合計値ITXの算出方法について詳述する。
【0030】
飛行時間型2次イオン質量分析装置を用いて、第1位相差層の第1仮支持体とは反対側の表面から第1仮支持体側に向かってイオンビーム照射(例えば、Bi
3+1次イオン銃を用いて成分分析、及び、Arガスクラスターイオンビーム(Ar-GCIB)でのスパッタリング)をしながら飛行時間型2次イオン質量分析法で第1位相差層の成分分析を行う。
次いで、第1位相差層の第1仮支持体とは反対側の表面から第1仮支持体側の表面に向かって第1位相差層の全厚みの90%の位置を深さ位置D90とし、深さ位置D90と第1位相差層の仮支持体側の表面との間の領域を領域Xとする(
図1参照)。
【0031】
IFX/ITXは、1%以下である。
合計値IFXとは、領域Xにおける含フッ素化合物に由来するフラグメントイオンの強度の合計値を意味する。
また、合計値ITXとは、領域Xにおける第1位相差層に含まれる各種成分に由来する全フラグメントイオンの強度の合計値を意味する。なお、全フラグメントイオンには、含フッ素化合物に由来するフラグメントイオンの強度も含まれる。
言い換えると、合計値IFXは領域Xにおける第1位相差層中の含フッ素化合物に由来する化合物の存在量を示し、合計値ITXは領域Xにおける第1位相差層中の各種成分の合計存在量を示す。つまり、IFX/ITXは、領域Xにおいて、含フッ素化合物に由来する化合物の存在量が、第1位相差層に含まれる各種成分の合計存在量に対して、1%以下であることを示し、領域Xにおいて、含フッ素化合物に由来する化合物の存在量が比較的少ないことを意味する。
なお、飛行時間型2次イオン質量分析においては、第1位相差層の第1仮支持体側の表面から第1仮支持体とは反対側の表面に向かって、各位置(10nm毎の位置)で測定される。
【0032】
飛行時間型2次イオン質量分析装置としては、例えば、TOF-SIMS V(ION-TOF社製)等の公知の装置が挙げられる。
飛行時間型2次イオン質量分析におけるイオン銃としては、例えば、Biイオン銃(Bi3
+)が挙げられる。
【0033】
飛行時間型2次イオン質量分析条件としては、例えば、以下の条件が挙げられる。
分析装置:TOF-SIMS V (Ion TOF社製)
分析条件:
・Bi3+1次イオン銃(25kV、0.2pA)、測定領域:300μm×300μm、256×256pixels、1回積算の条件で測定
・帯電補正のため低速電子銃(20eV)の併用
・Ar-GCIBは、10kV、5.2nA、面積500μm×500μmの条件でスパッタ
【0034】
IFX/ITXを調整する方法としては、例えば、含フッ素化合物の含有量を減らす方法、含フッ素化合物の構造を調整する方法、後述するポリマーXの含有量を増やす方法、及び、ポリマーXの構造を調整する方法が挙げられる。
【0035】
〔要件4〕
転写フィルムは、更に要件4を満たすことも好ましい。
要件4:第1位相差層の第1仮支持体とは反対側の表面から第1仮支持体側に向かってイオンビームを照射しながら飛行時間型2次イオン質量分析法で第1位相差層の成分分析を行った際に、第1位相差層の第1仮支持体とは反対側の表面から第1仮支持体側の表面に向かって第1位相差層の全厚みの45%の位置を深さ位置D45、55%の位置を深さ位置D55、及び、90%の位置を深さ位置D90とし、深さ位置D45と深さ位置D55との間の領域を領域Yとし、深さ位置D90と第1位相差層の第1仮支持体側の表面との間の領域を領域Xとした場合に、
領域Xにおける2個以上の重合性基を有する非液晶化合物に由来する2次イオン強度の合計値IMXが、領域Yにおける2個以上の重合性基を有する非液晶化合物に由来する2次イオン強度の合計値IMYよりも大きい。
なお、2個以上の重合性基を有する非液晶化合物については、後述するとおりである。
【0036】
合計値I
MXとは、領域Xにおける2個以上の重合性基を有する非液晶化合物に由来するフラグメントイオンの強度の合計値を意味する。
また、合計値I
MYは、領域Yにおける2個以上の重合性基を有する非液晶化合物に由来するフラグメントイオンの強度の合計値を意味する。
合計値I
MXは領域Xにおける2個以上の重合性基を有する非液晶化合物に由来する化合物の存在量を示し、合計値I
MYは領域Yにおける2個以上の重合性基を有する非液晶化合物に由来する化合物の存在量を示す。つまり、合計値I
MXが合計値I
MYよりも大きい場合、2個以上の重合性基を有する非液晶化合物に由来する化合物が、領域Yよりも領域Xに比較的多く存在していることを意味する。上記状態である場合、破断剥離荷重及び剥離強度が適正な範囲になりやすく、本発明の効果がより優れる。
要件4における合計値I
MX及び合計値I
MYは、上述した要件3の測定方法と同様の方法で算出できる(
図1参照)。
【0037】
合計値IMX及び合計値IMYを調整する方法としては、例えば、2個以上の重合性基を有する非液晶化合物の種類、その含有量、第1位相差層形成用組成物における固形分濃度の調整、溶媒の種類及び組成等を調整する方法が挙げられる。
【0038】
〔要件5〕
転写フィルムは、更に要件5を満たすことも好ましい。
要件5:第1位相差層の第1仮支持体とは反対側の表面から第1仮支持体側に向かってイオンビームを照射しながら飛行時間型2次イオン質量分析法で第1位相差層の成分分析を行った際に、第1位相差層の第1仮支持体とは反対側の表面から第1仮支持体側の表面に向かって第1位相差層の全厚みの45%の位置を深さ位置D45、55%の位置を深さ位置D55、及び、90%の位置を深さ位置D90とし、深さ位置D45と深さ位置D55との間の領域を領域Yとし、深さ位置D90と第1位相差層の第1仮支持体側の表面との間の領域を領域Xとした場合に、
領域XにおけるポリマーXに由来する2次イオン強度の合計値IPXが、領域YにおけるポリマーXに由来する2次イオン強度の合計値IPYよりも大きい。
なお、ポリマーXについては、後述するとおりである。
【0039】
合計値I
PXとは、領域XにおけるポリマーXに由来するフラグメントイオンの強度の合計値を意味する。
また、合計値I
PYとは、領域Yにおける上記ポリマーXに由来するフラグメントイオンの強度の合計値を意味する。
合計値I
PXは領域XにおけるポリマーXの存在量を示し、合計値I
PYは領域YにおけるポリマーXの存在量を示す。つまり、合計値I
PXが合計値I
PYよりも大きい場合、第1位相差層において、ポリマーXが、第1位相差層の中間領域よりも第1位相差層の第1仮支持体側の表面に比較的多く存在していることを示す。上記状態である場合、破断剥離荷重及び剥離強度が適正な範囲になりやすく、本発明の効果がより優れる。
要件5における合計値I
PX及び合計値I
PYは、上述した要件3の測定方法と同様の方法で算出できる(
図1参照)。
【0040】
合計値IPX及び合計値IPYを調整する方法としては、例えば、後述するポリマーXの種類、その含有量、第1位相差層形成用組成物における固形分濃度の調整、溶媒の種類及び組成等を調整する方法が挙げられる。
【0041】
〔第1仮支持体〕
転写フィルムは、第1仮支持体を有する。
第1仮支持体は、第1位相差層の支持体としての機能を有し、本発明の転写フィルムを被転写物に貼合した後に、剥離されて取り除かれる。
第1仮支持体は、基材のみを有していてもよく、基材と配向膜とを有していてもよい。
また、第1仮支持体が基材と配向膜とを有する場合、転写フィルムにおいて、配向膜と第1位相差層とが直接接するように第1仮支持体を配置することが好ましい。
仮支持体は、透明及び不透明のいずれであってもよい。
【0042】
基材としては、ポリマーフィルムが好ましい。
ポリマーフィルムを構成するポリマーとしては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系ポリマー;ポリメチルメタクリレート及びラクトン環含有重合体等のアクリル酸エステル重合体を有するアクリル系ポリマー;熱可塑性ノルボルネン系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ポリスチレン及びアクリロニトリル・スチレン共重合体(ASポリマー)等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロン及び芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;これらのポリマーを混合したポリマーが挙げられる。
なかでも、上記ポリマーとしては、剥離性が優れる点で、セルロース系ポリマー又はポリエステル系ポリマーが好ましい。
【0043】
基材の厚みは、転写フィルムの取扱い性に優れる点で、10~150μmが好ましく、20~100μmがより好ましい。
【0044】
配向膜としては、例えば、ポリマー等の有機化合物からなるラビング処理膜、無機化合物の斜方蒸着膜、マイクログルーブを有する膜、並びに、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド及びステアリル酸メチル等の有機化合物のラングミュア・ブロジェット法によるLB(ラングミュア・ブロジェット)膜を累積させた膜が挙げられる。
【0045】
ラビング処理による配向膜は、ポリマー層の表面を紙又は布で一定方向に数回擦ることにより形成できる。
配向膜に使用する材料としては、ポリイミド、ポリビニルアルコール、特開平9-152509号公報に記載された重合性基を有するポリマー、特開2005-097377号公報、特開2005-099228号公報又は特開2005-128503号公報に記載の配向膜の形成に用いられる材料が好ましい。
【0046】
また、配向膜としては、光配向性材料に偏光又は非偏光を照射して配向膜とした、いわゆる光配向膜も好ましい。
光配向膜に用いられる光配向材料としては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-076839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-094071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号及び特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報及び特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミド及び/又はアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号及び特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報及び特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、光架橋性ポリアミド及び光架橋性エステル、並びに、特開平9-118717号公報、特表平10-506420号公報、特表2003-505561号公報、国際公開第2010/150748号、特開2013-177561号公報及び特開2014-012823号公報に記載の光二量化可能な化合物、特にシンナメート化合物、カルコン化合物及びクマリン化合物が挙げられる。
なかでも、光配向膜に用いられる光配向材料としては、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、光架橋性ポリアミド、光架橋性エステル、シンナメート化合物又はカルコン化合物が好ましい。
なお、配向膜が光配向性ポリマーである場合、光照射により光配向性ポリマーを配向させて、配向規制力を付与してもよい。
【0047】
配向膜の厚みは、配向膜の形成材料に応じて、必要な配向機能を得られる厚みを適宜調整すればよい。配向膜の厚みは、0.01~5μmが好ましく、0.05~2μmがより好ましい。
【0048】
仮支持体の厚みは、転写フィルムの取扱い性に優れる点で、10~160μmが好ましく、20~100μmがより好ましい。
【0049】
〔第1位相差層〕
転写フィルムは、第1仮支持体に隣接して配置された第1位相差層を有する。
第1位相差層は、ポリマーLCを含む層である。
【0050】
<ポリマーLC>
ポリマーLCは、重合性基を有する液晶化合物に由来する単位を含むポリマーである。
重合性基を有する液晶化合物に由来する単位は、重合性基を有する液晶化合物を重合して、得られる単位(好ましくは、繰り返し単位)であることが好ましい。
また、ポリマーLCは、上記重合性基を有する液晶化合物に由来する単位を含んでいれば、他の成分に由来する単位を含んでいてもよい。他の成分に由来する単位としては、例えば、後述する液晶組成物に含まれ得る各種成分であって、重合性基を有する成分に由来する単位(例えば、2個以上の重合性基を有する非液晶化合物に由来する単位、及び、重合性基を有する含フッ素化合物に由来する単位)が挙げられ、2個以上の重合性基を有する非液晶化合物に由来する単位が好ましい。言い換えると、ポリマーLCは、2個以上の重合性基を有する非液晶化合物に由来する単位を含むことが好ましい。
【0051】
ポリマーLCは、垂直配向に固定されていることが好ましい。
【0052】
重合性基を有する液晶化合物は、重合性基を有する液晶化合物であれば、特に制限されない。
重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基及びアリル基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0053】
液晶化合物は、棒状タイプと円盤状タイプとに分類できる。更に、それぞれに低分子タイプと高分子タイプがある。
高分子とは、重合度が100以上のものを意味する(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。
液晶化合物としては、棒状液晶化合物又は円盤状液晶化合物(ディスコティック液晶化合物)が好ましい。液晶化合物は、2種以上の棒状液晶化合物、2種以上の円盤状液晶化合物、及び、棒状液晶化合物と円盤状液晶化合物との混合物のいずれであってもよい。
また、配向を固定化する点で、液晶化合物は、2以上の重合性基を有することが好ましい。液晶化合物が2種類以上の混合物の場合、少なくとも1種類の液晶化合物が1分子中に2以上の重合性基を有していることが好ましい。
棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報の請求項1及び特開2005-289980号公報の段落[0026]~[0098]に記載の液晶化合物が挙げられる。
円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落[0020]~[0067]及び特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0108]に記載の液晶化合物が挙げられる。
【0054】
上記液晶化合物としては、棒状液晶化合物が好ましい。
棒状液晶化合物としては、例えば、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が挙げられる。
【0055】
ポリマーLCは、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
ポリマーLCの含有量は、第1位相差層の全質量に対して、50~99質量%が好ましく、80~95質量%がより好ましい。
【0056】
<ポリマーX>
第1位相差層は、ポリマーXを含んでいてもよい。
ポリマーXは、フッ素原子を有さないことが好ましく、フッ素原子を有さず、かつ、式(X1)で表される繰り返し単位及び式(X2)で表される繰り返し単位からなる群から選択される少なくとも1種を有することがより好ましい。
【0057】
【0058】
式(X1)中、
RX11は、水素原子又はメチル基を表す。
LX11は、単結合、又は、-O-、-CO-、-NRL-、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、置換基を有していてもよい2価の芳香族基、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される2価の連結基を表す。RLは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。
RX12は、炭素数1~20のアルキル基を表す。ただし、RX12が炭素数2~20のアルキル基を表す場合、炭素数2~20のアルキル基を構成する-CH2-の1個以上が、-COO-、-CO-又は-O-に置換されていてもよい。
式(X2)中、
RX21は、水素原子又はメチル基を表す。
LX21は、単結合又は2価の連結基を表す。
RX22は、-OH、-COOH、-PO3H、-OP(=O)(OH)2、-CO2
-M+、-SO3
-M+、-NT1T2、オキサゾリン基、-N+(Q)3E-又はベタイン構造を有する基を表す。
M+は、アルカリ金属カチオン又はN+(Q)4を表す。
T1及びT2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数1~20のアルコキシ基を表す。T1及びT2は、直接又は連結基を介して互いに結合して窒素原子を含む環を形成していてもよい。
E-は、アニオンを表す。
Qは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0059】
式(X1)中、RX11は、水素原子又はメチル基を表す。
RX11としては、メチル基が好ましい。
【0060】
式(X1)中、LX11は、単結合、又は、-O-、-CO-、-NRL-、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、置換基を有していてもよい2価の芳香族基、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される2価の連結基を表す。RLは、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を表す。
上記2価の脂肪族基及び上記2価の芳香族基が有し得る置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子及びヒドロキシ基が挙げられる。
上記置換基を有していてもよい2価の脂肪族基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基、置換基を有していてもよい分岐鎖状のアルキレン基(好ましくは、炭素数3~10)及び置換基を有していてもよい環状のアルキレン基(好ましくは、炭素数3~10)が挙げられる。
上記炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基としては、例えば、置換基を有していてもよい、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基及びデシレン基が挙げられる。
上記分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、置換基を有していてもよい、ジメチルメチレン基、メチルエチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基及び2-エチル-2-メチルプロピレン基が挙げられる。
上記環状のアルキレン基としては、例えば、置換基を有していてもよい、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基、シクロデシレン基、アダマンタン-ジイル基、ノルボルナン-ジイル基、exo-テトラヒドロジシクロペンタジエン-ジイル基が挙げられ、置換基を有していてもよいシクロヘキシレン基が好ましい。
置換基を有していてもよい2価の芳香族基としては、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリーレン基が好ましい。
上記炭素数6~12のアリーレン基としては、例えば、置換基を有していてもよい、フェニレン基、キシリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基及び2,2’-メチレンビスフェニル基が挙げられ、置換基を有していてもよいフェニレン基が好ましい。
RLで表される置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。上記アルキル基の炭素数としては、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~7がより好ましく、炭素数1~4が更に好ましい。上記アルキル基としては、例えば、置換基を有していてもよい、メチル基、エチル基、2-ヒドロキシエチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、4-ヒドロキシブチル基及びn-ヘキシル基が挙げられる。
LX11としては、-COO-を含む2価の連結基が好ましく、-COO-2価の脂肪族基-がより好ましい。
【0061】
式(X1)中、RX12は、炭素数1~20のアルキル基を表す。ただし、RX12が炭素数2~20のアルキル基を表す場合、炭素数2~20のアルキル基を構成する-CH2-の1個以上が、-COO-、-CO-又は-O-に置換されていてもよい。
RX12で表される炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、直鎖状が好ましい。上記アルキル基の炭素数は、2~10が好ましく、2~5がより好ましい。上記炭素数は、炭素数2~20のアルキル基を構成する-CH2-の1個以上が、-COO-、-CO-又は-O-に置換された場合、その置換後のアルキル基の炭素数を意味する。
【0062】
式(X1)で表される繰り返し単位としては、式(X3)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0063】
【0064】
式(X3)中、
RX11は、水素原子又はメチル基を表す。
LX11は、単結合、又は、-O-、-CO-、-NRL-、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、置換基を有していてもよい2価の芳香族基、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される2価の連結基を表す。RLは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。
LRXは、単結合又は炭素数1~5のアルキレン基を表す。
RX13は、炭素数1~5のアルキル基を表す。
【0065】
LRXとしては、メチレン基又はエチレン基が好ましい。
RX13としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
ポリマーXが式(X3)で表される繰り返し単位を有する場合、ポリマーXが第1仮支持体と相互作用しやすく、第1位相差層を形成した際に、第1位相差層の第1仮支持体側の表面に偏在化しやすい。上記によって、要件5を満たしやすい。
【0066】
式(X2)中、RX21は、水素原子又はメチル基を表す。
RX21としては、メチル基が好ましい。
【0067】
式(X2)中、LX21は、単結合又は2価の連結基を表す。
2価の連結基としては、例えば、-COO-、-CO-、-O-、置換基を有していてもよいアルキレン基(好ましくは炭素数1~20)、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~20)、置換基を有していてもよいアリーレン基(好ましくは炭素数6~20)、-SO-、-SO2-、-NH-、-NRN-、及び、これらを組み合わせた2価の連結基が挙げられる。RNは、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(好ましくは炭素数6~20)を表す。
上記アルキレン基、上記シクロアルキレン基及び上記アリーレン基が有し得る置換基としては、ヒドロキシ基又はカルボキシ基が好ましい。
LX21としては、2価の連結基が好ましく、-O-、-COO-、-CONH-及び置換基を有していてもよいアルキレン基からなる群から選択される少なくとも1つからなる2価の連結基がより好ましい。
上記アルキレン基の炭素数は、炭素数1~20が好ましく、炭素数1~12がより好ましく、炭素数1~6が更に好ましい。
【0068】
式(X2)中、RX22は、-OH、-COOH、-PO3H、-OP(=O)(OH)2、-CO2
-M+、-SO3
-M+、-NT1T2、オキサゾリン基、-N+(Q)3E-又はベタイン構造を有する基を表す。
M+は、アルカリ金属カチオン又はN+(Q)4を表す。T1及びT2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数1~20のアルコキシ基を表す。T1及びT2は、直接又は連結基を介して互いに結合して窒素原子を含む環を形成していてもよい。E-は、アニオンを表す。Qは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0069】
RX22としては、-N+(Q)3E-又は-OHが好ましい。
ポリマーXがRX22として-N+(Q)3E-を有する場合、ポリマーXが第1仮支持体と相互作用しやすく、第1位相差層を形成した際に、第1位相差層の第1仮支持体側の表面に偏在化しやすい。上記によって、要件5を満たしやすい。
【0070】
M+で表されるアルカリ金属カチオンとしては、例えば、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン及びセリウムカチオンが挙げられる。
【0071】
T1及びT2のいずれかで表される炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、Qで表される炭素数1~20のアルキル基が挙げられる。
T1及びT2のいずれかで表される炭素数1~20のアルコキシ基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。上記アルコキシ基の炭素数としては、1~7が好ましく、1~4がより好ましい。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、2-ヒドロキシエトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、3-ヒドロキシプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、4-ヒドロキシブチルオキシ基及びn-ヘキシルオキシ基が挙げられる。
T1及びT2は、直接又は連結基を介して互いに結合して窒素原子を含む環を形成していてもよい。上記形成される環としては、モルホリン環が好ましい。なお、上記環を構成する窒素原子は、-NT1T2におけるN(窒素原子)である。
T1及びT2としては、水素原子が好ましい。
【0072】
E-で表されるアニオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン;水酸化物イオン;シアン化物イオン;ベンゼンスルホネートアニオン、p-トルエンスルホネートアニオン及びトリフルオロメタンスルホネートアニオン等のスルホネートアニオン;パークロレートアニオン;テトラフルオロボレートアニオン及びテトラフェニルボレートアニオン等のボレートアニオン;ヘキサフルオロホスフェートアニオン;アセテートアニオンが挙げられる。
【0073】
Qで表される炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、直鎖状が好ましい。
上記アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。
-N+(Q)3E-中、3つのQのうち、少なくとも1つは、炭素数1~20のアルキル基を表すことが好ましく、3つは、炭素数1~20のアルキル基を表すことがより好ましい。
N+(Q)4中、4つのQのうち、少なくとも1つは、炭素数1~20のアルキル基を表すことが好ましく、4つは、炭素数1~20のアルキル基を表すことがより好ましい。
なお、複数のQ同士は、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0074】
ポリマーXは、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
ポリマーXの含有量は、第1位相差層の全質量に対して、0.5~2.0質量%が好ましく、0.8~1.4質量%がより好ましい。
【0075】
<含フッ素化合物>
第1位相差層は、含フッ素化合物を含んでいてもよい。
含フッ素化合物は、フッ素原子を有する化合物であれば、特に制限されないが、例えば、フッ素原子を有するレベリング剤(例えば、フッ素原子を有するポリマー)が挙げられる。
含フッ素化合物は、上述した各種成分とは異なることが好ましい。なお、フッ素原子及びケイ素原子を有する化合物は、含フッ素化合物に分類する。
【0076】
含フッ素化合物は、重合性基を有していてもよい。重合性基としては、例えば、重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基及びアリル基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。また、含フッ素化合物が重合性基を有する場合、第1位相差層は、その重合性基を有する含フッ素化合物の重合物を含んでいてもよい。
【0077】
含フッ素化合物は、フッ素原子を含む基を有することが好ましく、フッ素原子を含む基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。
フッ素原子を含む基としては、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換したアルキル基が好ましい。
フッ素原子を含む基としては、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換した、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換した、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、水素原子の半数以上がフッ素原子で置換した炭素数1~10のアルキル基が更に好ましい。
上記アルキル基は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよく、直鎖状がより好ましい。
また、フッ素原子を含む基は、水素原子、フッ素原子及び炭素原子からなる群から選択される原子からなる基であり、フッ素原子及び炭素原子を少なくとも含む基であることも好ましい。
【0078】
フッ素原子を含む基としては、式(F)で表される基も好ましい。
【0079】
*-(CH2)ma-(CF2)mb-CF2X (F)
【0080】
式(F)中、
*は、結合位置を表す。
Xは、水素原子又はフッ素原子を表す。
ma及びmbは、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
【0081】
Xとしては、フッ素原子が好ましい。
maは、0~10の整数が好ましく、0~6の整数がより好ましく、0~3の整数が更に好ましく、1~3の整数が特に好ましい。
mbは、0~12の整数が好ましく、0~8の整数がより好ましく、0~5の整数が更に好ましく、3~5の整数が特に好ましい。
【0082】
含フッ素化合物としては、上記式(F)で表される基を有する繰り返し単位を含む含フッ素ポリマーが好ましい。
含フッ素ポリマー中、式(F)で表される基を有する繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、含フッ素ポリマーに含まれる全繰り返し単位に対して、62~78質量%が好ましく、68~74質量%がより好ましい。
【0083】
式(F)で表される基を有する繰り返し単位としては、式(G)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0084】
【0085】
式(G)中、
RGは、水素原子又はメチル基を表す。
LGは、単結合又は2価の連結基を表す。
Xは、水素原子又はフッ素原子を表す。
ma及びmbは、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
式(G)中のX、ma及びmbは、それぞれ式(F)中のX、ma及びmbと同義であり、好適態様も同じである。
LGで表される2価の連結基としては、例えば、式(X1)中のLX11で表される2価の連結基が挙げられ、-COO-が好ましい。
【0086】
上記含フッ素ポリマーは、式(F)で表される基を有する繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を含んでいてもよい。
他の繰り返し単位としては、例えば、カルボキシ基を有する繰り返し単位及び重合性基を有する繰り返し単位が挙げられる。
重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基及びアリル基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
ポリマー中における、重合性基を有する繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、ポリマーに含まれる全繰り返し単位に対して、5~15質量%が好ましく、7~12質量%がより好ましい。
【0087】
含フッ素化合物は、式(X3)で表される繰り返し単位を有さないことも好ましい。
上記である場合、第1位相差層において、含フッ素化合物が領域Xにおける存在量が少なくなりやすく、要件1を満たしやすい。
【0088】
含フッ素化合物としては、例えば、特開2001-330725号公報の[0028]~[0056]及び特開2005-062673号公報の[0069]~[0126]に記載の化合物が挙げられる。
【0089】
含フッ素化合物の含有量は、第1位相差層の全質量に対して、0.2~1.0質量%が好ましく、0.2~0.5質量%がより好ましく、0.3~0.4質量%が更に好ましい。
【0090】
<含ケイ素化合物>
第1位相差層は、含ケイ素化合物を含んでいてもよい。
含ケイ素化合物は、ケイ素原子を有する化合物であれば、特に制限されないが、例えば、ケイ素原子を有するレベリング剤(例えば、ケイ素原子を有するポリマー)が挙げられる。
含ケイ素化合物は、上述した各種成分とは異なることが好ましい。
含ケイ素化合物の含有量は、第1位相差層の全質量に対して、0.2~1.0質量%が好ましく、0.2~0.5質量%がより好ましく、0.3~0.4質量%が更に好ましい。
【0091】
<その他成分>
第1位相差層は、上述した各種成分以外に、その他成分を含んでいてもよい。
その他成分としては、例えば、液晶組成物に含まれる各種成分、それらの重合物、それらの硬化物及びそれらの分解物から選択される成分が挙げられる。
上記重合物としては、例えば、ポリマーLC以外のポリマーであって、2個以上の重合性基を有する非液晶化合物に由来する単位から選択される単位を含むポリマーが挙げられる。
【0092】
第1位相差層の厚み(膜厚)は特に限定されないが、0.1~10μmが好ましく、0.3~5μmがより好ましい。
【0093】
〔他の層〕
転写フィルムは、第1仮支持体及び第1位相差層以外に他の層を有していてもよい。
他の層としては、例えば、カバーフィルムが挙げられ、上記第1仮支持体を構成する基材が好ましい。
【0094】
〔転写フィルムの製造方法〕
転写フィルムの製造方法としては、特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
転写フィルムの製造方法としては、後述する液晶組成物を第1仮支持体上に塗布し、所望の配向状態とした後に、重合により固定化する方法が好ましい。
液晶組成物の塗布方法としては、例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法及びダイコーティング法が挙げられる。
また、重合条件は特に制限されないが、光照射による重合においては、紫外線を用いることが好ましい。照射量は、10mJ/cm2~50J/cm2が好ましく、20mJ/cm2~5J/cm2がより好ましく、30mJ/cm2~3J/cm2が更に好ましく、50~1000mJ/cm2が特に好ましい。また、重合反応を促進するため、加熱条件下で実施してもよい。
【0095】
以下、液晶組成物が含み得る各種成分について詳述する。
【0096】
<液晶組成物>
(2個以上の重合性基を有する非液晶化合物)
液晶組成物は、2個以上の重合性基を有する非液晶化合物を含んでいてもよい。
2個以上の重合性基を有する非液晶化合物非液晶化合物は、3~5個の重合性基を有することが好ましい。
2個以上の重合性基を有する非液晶化合物非液晶化合物としては、2個以上の重合性基を有するモノマー(以下、「多官能モノマー」ともいう。)が好ましい。
多官能モノマーとしては、例えば、3個以上の水酸基を有する多価アルコールと、(メタ)アクリル酸とのエステル類及びウレタン(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0097】
上記エステル類としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO(プロピレンオキサイド)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールトヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3-シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート及びカプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0098】
上記エステル類の市販品としては、例えば、A-DPH(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、A-TMMT(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)(新中村化学工業社製);SP327(大阪有機化学工業社製);が挙げられる。
【0099】
上記ウレタン(メタ)アクリレート類としては、例えば、ポリイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とを用いた付加反応により得られる化合物;ポリアルコール化合物とイソシアネート基含有(メタ)アクリレート化合物とを用いた付加反応により得られる化合物;が挙げられる。
【0100】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられる。
【0101】
ポリアルコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールエタン及びトリメチロールプロパンが挙げられる。
イソシアネート基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-イソシアナトエチルアクリレート及び2-イソシアナトエチルメタクリレートが挙げられる。
【0102】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、例えば、根上工業社製のアートレジンUN-3320HA、アートレジンUN-3320HC、アートレジンUN-3320HS及びアートレジンUN-904;日本合成化学社製の紫光UV-1700B、紫光UV-7605B、紫光UV-7610B、紫光UV-7630B及び紫光UV-7640B;新中村化学工業社製のNKオリゴU-6PA、NKオリゴU-10HA、NKオリゴU-10PA、NKオリゴU-1100H、NKオリゴU-15HA、NKオリゴU-53H及びNKオリゴU-33H;ダイセル・オルネクス社製のKRM8452、EBECRYL1290、KRM8200、EBECRYL5129及びKRM8904;日本化薬社製のUX-5000が挙げられる。
【0103】
2個以上の重合性基を有する非液晶化合物の分子量は、重合性基1個あたり、150以下が好ましい。
「重合性基1個あたりの分子量」とは、重合性基が(メタ)アクリロイル基である場合、いわゆるアクリル当量を意味する。
【0104】
2個以上の重合性基を有する非液晶化合物は、分子内にウレタン結合を有することが好ましく、上述したウレタン(メタ)アクリレート類であることがより好ましい。
また、2個以上の重合性基を有する非液晶化合物は、水素結合性基を有することも好ましい。上記水素結合性基としては、例えば、ヒドロキシ基、アミド結合、カルボキシ基、ウレタン結合、ウレア結合及びエステル結合が挙げられ、ウレタン結合又はウレア結合を好ましく、ウレタン結合がより好ましい。
【0105】
液晶組成物が2個以上の重合性基を有する非液晶化合物を含む場合、2個以上の重合性基を有する非液晶化合物の含有量は、液晶組成物の全固形分に対して、4.0~8.0質量%が好ましく、4.0~5.0質量%がより好ましい。
【0106】
(オニウム塩化合物)
液晶組成物は、オニウム塩化合物を含んでいてもよい。
オニウム塩化合物としては、例えば、垂直配向剤としての公知のオニウム化合物が挙げられる。具体的には、特開2016-105127号公報の[0042]~[0052]に記載の化合物が挙げられる。
液晶組成物がオニウム塩化合物を含む場合、オニウム塩化合物の含有量は、液晶化合物の全質量に対して、0.5~5質量%が好ましく、1~3質量%がより好ましい。
【0107】
(重合開始剤)
液晶組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。
重合開始剤としては、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、α-カルボニル化合物、アシロインエーテル、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物、多核キノン化合物、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ、アクリジン化合物、フェナジン化合物、オキサジアゾール化合物及びアシルフォスフィンオキシド化合物が挙げられる。
液晶組成物が重合開始剤を含む場合、重合開始剤の含有量は、液晶組成物の全固形分に対して、0.5~5質量%が好ましい。
【0108】
(溶媒)
液晶組成物は、第1位相差層を形成する作業性等の点で、溶媒を含むことが好ましい。
溶媒としては、例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類;ジオキサン及びテトラヒドロフラン等のエーテル類;ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;トルエン、キシレン及びトリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン及びクロロトルエン等のハロゲン化炭素類;酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類;水;エタノール、イソプロパノール、ブタノール及びシクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ及びエチルセロソルブ等のセロソルブ類;セロソルブアセテート類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等のアミド類が挙げられる。
【0109】
[積層体]
積層体は、上述した転写フィルムと、転写フィルムが有する第1位相差層の第1仮支持体とは反対側の表面上に直接又は粘着剤層を介して配置された第2位相差層と、第2仮支持体とをこの順で有する。
積層体が粘着剤層を有する場合、積層体は、第1仮支持体、第1位相差層、粘着剤層、第2位相差層及び第2仮支持体をこの順で有する。
第1仮支持体及び第1位相差層は、上述したとおりである。
粘着剤層が含む粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤及びセルロース系粘着剤が挙げられ、透明性、耐候性及び耐熱性の点で、アクリル系粘着剤(感圧粘着剤)が好ましい。
【0110】
第2仮支持体としては、例えば、第1仮支持体が挙げられる。第2仮支持体は、第1仮支持体と同一又は異なっていてもよい。
【0111】
第2位相差層としては、例えば、第1位相差層及びそれ以外の位相差層(要件1~3の少なくとも1つを満たさない位相差層)が挙げられる。第2位相差層は、第1位相差層と同一又は異なっていてよい。
【0112】
積層体から第2仮支持体を剥離した際に、第2仮支持体と第2位相差層との間で界面剥離できることが好ましく、上記界面剥離以外に剥離が生じないことがより好ましい。
言い換えると、第2仮支持体と第2位相差層との間の剥離強度が、第2仮支持体と第2位相差層との間以外の積層体を構成する層間のいずれの剥離強度よりも小さいことが好ましく、第2仮支持体と第2位相差層との間の剥離強度が、0.04N/25mm以下であることがより好ましい。上記である場合、積層体から第2仮支持体のみを綺麗に剥離でき、転写フィルムの加工適性に優れる。
また、第2仮支持体が剥離された積層体から、第1仮支持体を更に剥離することで、後述する光学フィルムが得られる。光学フィルムの製造適性の点で、第2仮支持体が剥離された積層体において、第1仮支持体と第1位相差層との間の剥離強度は、第1仮支持体と第1位相差層との間以外の上記第2仮支持体が剥離された積層体を構成する層間のいずれの剥離強度よりも小さいことが好ましい。
また、積層体においては、第1仮支持体及び第2仮支持体を剥離できるように、各層内の層内剥離強度が、第1仮支持体と第1位相差層との間の剥離強度、及び、第2仮支持体と第2位相差層との間の剥離強度よりも大きいことが好ましい。
つまり、積層体から第2仮支持体を剥離し、第2仮支持体が剥離された積層体から第1仮支持体を剥離した際に、所望の仮支持体のみを剥離できるように、各層の剥離強度及び破断剥離荷重を調整することが好ましい。
【0113】
[光学フィルム]
光学フィルムは、上記積層体から第1仮支持体及び第2仮支持体を剥離してなる。
光学フィルムは、上記積層体から第1仮支持体及び第2仮支持体を剥離し、第1位相差層及び第2位相差層を有することが好ましい。また、光学フィルムは、第1位相差層と第2位相差層との間に粘着剤層を有していてもよい。上記粘着剤層としては、例えば、積層体が有し得る粘着剤層が挙げられる。
【0114】
[偏光板]
偏光板は、第1位相差層と偏光子とを有する。
また、偏光板は、第1位相差層と偏光子との間に粘着剤層を有していてもよい。上記粘着剤層としては、例えば、積層体が有し得る粘着剤層が挙げられる。
【0115】
〔偏光子〕
偏光板が有する偏光子は、光を特定の直線偏光に変換する機能を有する部材であれば、特に制限されない。
偏光子としては、例えば、吸収型偏光子及び反射型偏光子が挙げられる。
吸収型偏光子としては、例えば、ヨウ素系偏光子、二色性染料を利用した染料系偏光子及びポリエン系偏光子が挙げられる。ヨウ素系偏光子及び染料系偏光子としては、例えば、塗布型偏光子及び延伸型偏光子が挙げられ、ポリビニルアルコールにヨウ素又は二色性染料を吸着させ、延伸して作製される偏光子が好ましい。
また、基材上にポリビニルアルコール層を形成した積層フィルムの状態で延伸及び染色を施すことで偏光子を得る方法としては、例えば、特許第5048120号公報、特許第5143918号公報、特許第5048120号公報、特許第4691205号公報、特許第4751481号公報及び特許第4751486号公報が挙げられる。
反射型偏光子としては、例えば、複屈折の異なる薄膜を積層した偏光子、ワイヤーグリッド型偏光子、及び、選択反射域を有するコレステリック液晶とλ/4板とを組み合わせた偏光子が挙げられる。
なかでも、密着性がより優れる点で、偏光子は、ポリビニルアルコール系ポリマー(-CH2-CHOH-を繰り返し単位として含むポリマー。特に、ポリビニルアルコール及びエチレン-ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも1つ)を含むことが好ましい。
【0116】
偏光子の厚みは特に限定されないが、3~60μmが好ましく、5~30μmがより好ましく、5~15μmが更に好ましい。
【0117】
偏光板の製造方法としては、転写フィルムが有する第1位相差層の第1仮支持体と反対側の表面に、粘着剤層を介して偏光子を貼合する貼合工程と、貼合工程の後に、第1仮支持体を剥離し、偏光板を作製する剥離工程とを含む製造方法が好ましい。
【0118】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の偏光板を有する。
本発明の画像表示装置に用いられる表示素子としては、例えば、液晶セル、有機EL表示パネル及びプラズマディスプレイパネルが挙げられ、液晶セル又は有機EL表示パネルが好ましい。
【0119】
〔液晶表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である液晶表示装置は、上述した本発明の偏光板と、液晶セルとを有する液晶表示装置である。
液晶セルの両側に設けられる偏光板のうち、フロント側の偏光板として本発明の偏光板を用いることが好ましく、フロント側およびリア側の偏光板として本発明の偏光板を用いることがより好ましい。
【0120】
液晶表示装置に利用される液晶セルとしては、例えば、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード及びTN(Twisted Nematic)が挙げられる。
【0121】
〔有機EL表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である有機EL表示装置は、視認側から、本発明の偏光板と、有機EL表示パネルとをこの順で有することが好ましい。
有機EL表示装置における本発明の偏光板は、視認側から偏光子、任意の他のフィルム及び位相差層の順に配置されていることが好ましい。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極及び陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【実施例0122】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0123】
[実施例1]
まず、下記の手順で、第1仮支持体を作製した。
下記各種成分をミキシングタンクに投入して撹拌し、更に90℃で10分間加熱した。その後、得られた混合物を平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過して、セルロースアシレートドープを調製した。セルロースアシレートドープの固形分濃度は、23.5質量%であった。
【0124】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレートドープ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
・セルロースアシレート(アセチル置換度2.86、粘度平均重合度310)
100質量部
・糖エステル化合物1(下記式(S4)に示す) 6.0質量部
・糖エステル化合物2(下記式(S5)に示す) 2.0質量部
・シリカ粒子分散液(AEROSIL R972、日本アエロジル社製)
0.1質量部
・溶媒(塩化メチレン/メタノール/ブタノール)
=81/18/1(質量比)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0125】
【0126】
上記セルロースアシレートドープを、ドラム製膜機を用いて流延した。0℃に冷却された金属支持体上に接するようにドープをダイから流延し、その後、得られたウェブ(フィルム)を剥ぎ取った。なお、ドラムは、SUS製であった。
【0127】
流延されて得られたウェブを、ドラムから剥離後、フィルム搬送時に30~40℃で、クリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いてテンター装置内で20分間乾燥した。次いで、ウェブをロール搬送しながらゾーン加熱により後乾燥した。得られたウェブにナーリングを施した後、巻き取って第1仮支持体(セルロースアシレートフィルム)を得た。第1仮支持体の膜厚は、40μmであった。
【0128】
上記第1仮支持体上に、ギーサー塗布機を用いて、下記の液晶組成物1を塗布して、組成物層を形成した。組成物層の形成された第1仮支持体を温風にて60℃で1分間加熱し、酸素濃度が100体積ppm以下の雰囲気になるように窒素パージしながら紫外線照射(照射量120mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)を行い、棒状液晶化合物M-1の配向を固定化して第1位相差層を形成し、第1仮支持体と、上記第1仮支持体に隣接して配置された第1位相差層とを有する転写フィルム1を作製した。
なお、第1位相差層における第1位相差層の膜厚は、0.7μmであった。第1位相差層における第1位相差層のRe(550)は0nmであり、Rth(550)は-70nmであった。棒状液晶化合物M-1に由来するポリマーは、棒状液晶化合物M-1の長軸方向の転写フィルム1の表面に対する平均傾斜角は90°であり、転写フィルム1の表面に対して、垂直に配向していた。
【0129】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶組成物1
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・下記の棒状液晶化合物L-1 100質量部
・下記の多官能モノマーM-1(SP327、大阪有機化学工業社製)8.0質量部
・重合開始剤(IrgacureOXE01、BASF社製) 4.0質量部
・下記のポリマーX-1 1.2質量部
・下記のオニウム塩化合物 1.14質量部
・下記の含フッ素化合物F-1 0.4質量部
・メチルエチルケトン 43.3質量部
・プロピオン酸エチル 95.0質量部
・メチルイソブチルケトン 494.9質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0130】
・棒状液晶化合物L-1
【0131】
【0132】
・多官能モノマーM-1
【0133】
【0134】
・ポリマーX-1
【0135】
【0136】
・オニウム塩化合物
【0137】
【0138】
・含フッ素ポリマーF-1
【0139】
【0140】
[実施例2]
実施例1において、多官能モノマーM-1(8.0質量部)に代えて、多官能モノマーM-2(5.0質量部)を使用した以外は、実施例1と同様の手順で、転写フィルム2を作製した。
【0141】
・多官能モノマーM-2
【0142】
【0143】
[実施例3]
実施例2において、多官能モノマーM-2(5.0質量部)に代えて、多官能モノマーM-3(UA-306I、ウレタンアクリレートモノマー、共栄社化学製)(5.0質量部)を使用した以外は、実施例2と同様の手順で、転写フィルム3を作製した。
【0144】
なお、実施例2及び3の転写フィルムにおいて、実施例1の転写フィルムと同様に、棒状液晶化合物M-1に由来するポリマーは、棒状液晶化合物M-1の長軸方向の転写フィルム1の表面に対する平均傾斜角は90°であり、転写フィルムの表面に対して、垂直に配向していた。
【0145】
[比較例1]
実施例3において、ポリマーX-1(1.2質量部)に代えて、ポリマーY-1(3.0質量部)を使用した以外は、実施例3と同様の手順で、転写フィルムC1を作製した。
【0146】
・ポリマーY-1(含フッ素化合物)
【0147】
【0148】
[比較例2]
実施例3において、多官能モノマーM-1(1.2質量部)に代えて、多官能モノマーM-3(ウレタンアクリレートモノマー、共栄社化学製)(2.0質量部)を使用した以外は、実施例3と同様の手順で、転写フィルムC2を作製した。
【0149】
[比較例3]
実施例3において、ポリマーX-1(1.2質量部)に代えて、ポリマーX-1(5.0質量部)を使用した以外は、実施例3と同様の手順で、転写フィルムC3を作製した。
【0150】
[比較例4]
実施例4において、ポリマーX-1(1.2質量部)に代えて、ポリマーX-1(0.3質量部)を使用した以外は、実施例3と同様の手順で、転写フィルムC4を作製した。
【0151】
[加工適性測定用サンプルの作製]
酢酸ブチル(80質量部)及びメチルエチルケトン(29質量部)を含む混合液に対して、下記共重合体C-1(8.4質量部)と、下記熱酸発生剤D-1(0.3質量部)とを添加し、光配向膜用組成物1を調製した。
【0152】
・共重合体C-1(重量平均分子量:40,000)
【0153】
【0154】
・熱酸発生剤D-1
【0155】
【0156】
上記セルロースアシレートフィルム(第1仮支持体)を用いて、第1仮支持体上に、上記光配向膜用組成物1をバーコーターで連続的に塗布した。塗布後、120℃の加熱ゾーンにて1分間乾燥して溶剤を除去し、厚さ0.3μmの光異性化組成物層を形成した。続けて、鏡面処理バックアプロールに巻きかけながら、偏光紫外線照射(10mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向膜を形成し、第2仮支持体を得た。
【0157】
引き続き、長尺状に形成された光配向膜上に、下記液晶組成物2をバーコーターで塗布し、組成物層を形成した。また、塗布室の温度は23℃とした。形成した組成物層を、加熱ゾーンで120℃まで加熱した後、60℃まで冷却させた。その後、温度を保ったまま、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm)で紫外線照射(300mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)を行い、棒状液晶化合物M-1の配向を固定化して第1位相差層を形成し、第2仮支持体と、上記第2仮支持体上に配置された第2位相差層とを有する転写フィルムTを作製した。
なお、第2位相差層における第2位相差層の膜厚は、2.1μmであった。第2位相差層のRe(550)は145nmであり、Re(450)/Re(550)は0.83であった。
【0158】
得られた転写フィルムTの第2位相差層と第2仮支持体との間の剥離強度は、0.04N/25mmであった。つまり、転写フィルムTは、少なくとも要件2を満たさない転写フィルムであって、転写フィルムTの上記剥離強度は、本願の転写フィルム1~3における第1位相差層と第1仮支持体との間の剥離強度よりも小さい。
【0159】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶組成物2
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・下記液晶化合物R-1 21.80質量部
・下記液晶化合物R-2 45.40質量部
・下記液晶化合物R-3 20.00質量部
・下記液晶化合物R-4 5.00質量部
・上記棒状液晶化合物M-1 7.80質量部
・下記塩基性化合物A-1 0.50質量部
・下記重合開始剤S-1 0.50質量部
・下記レベリング剤P-1 0.09質量部
・シクロペンタノン 179.67質量部
・メチルエチルケトン 53.67質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0160】
・液晶化合物R-1
【0161】
【0162】
・液晶化合物R-2
【0163】
【0164】
・液晶化合物R-3
【0165】
【0166】
・液晶化合物R-4
【0167】
【0168】
・塩基性化合物A-1
【0169】
【0170】
・重合開始剤S-1
【0171】
【0172】
・レベリング剤P-1(下記式中、併記される数字は、レベリング剤P-1中の全繰り返し単位に対する、各繰り返し単位の含有量(質量%)を示す。)
【0173】
【0174】
転写フィルム1~3における第1位相差層の第1仮支持体とは反対側の表面、及び、転写フィルムTにおける第2位相差層の第2仮支持体とは反対側の表面、をそれぞれコロナ処理した後に下記紫外線硬化型接着剤組成物を用いて連続機にて、各転写フィルムの長手方向が平行になるように、コロナ処理された表面同士を貼合し、実施例で用いた各加工適性測定サンプルを得た。
比較例で用いた各加工適性測定サンプルは、上記各加工適性サンプルの作製手順を参考し、作製した。
【0175】
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紫外線硬化型樹脂組成物
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・下記CEL2021P(ダイセル社製) 168質量部
・下記CPI-100P(サンアプロ社製) 11質量部
・2エチルヘキシルグリシジルエーテル 24質量部
・1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル
(DME-100、新日本理化社製) 48質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0176】
・CEL2021P
【0177】
【0178】
・CPI-100P
【0179】
【0180】
[評価]
作製した転写フィルムについて、破断剥離荷重、剥離強度、仮支持体の剥離性及び加工適性を評価した。
【0181】
〔飛行時間型2次イオン質量分析〕
作製した転写フィルムについて、上述した方法で、合計値IFX、合計値ITX、合計値IMX、合計値IMY、合計値IPX及び合計値IPYをそれぞれ測定した。
【0182】
〔破断剥離荷重〕
作製した転写フィルムについて、上述した方法で破断剥離荷重を測定した。
【0183】
〔剥離強度〕
作製した転写フィルムについて、第1仮支持体と第1位相差層との間の剥離強度を上述した方法で測定した。
【0184】
〔加工適性〕
加工適性測定用サンプルから、幅25mm×長さ180mmの試験片を計5つ裁断して得た。上記試験片の第2仮支持体側を上側にして置き、第2仮支持体の粘着剤層がない部分を手で掴み、剥離角度180°で第2仮支持体を剥離した。この試験を5回行い、以下の評価基準に従って、加工適性の評価を行った。
なお、上記試験片から第2仮支持体のみを、他の層内及び層間での剥離がなく、かつ、他の層に破断なく、綺麗に剥離できた回数を計数した。
「A」:5回中5回、第2仮支持体のみを綺麗に剥離できた。
「B」:5回中3~4回、第2仮支持体のみを綺麗に剥離できた。
「C」:5回中1~2回、第2仮支持体のみを綺麗に剥離できた。
「D」:5回中、いずれも第2仮支持体のみを綺麗に剥離できなかった。
【0185】
〔仮支持体の剥離性〕
加工適性の評価において第2仮支持体が剥離された積層体における、第2位相差層の第1仮支持体とは反対側の表面に、粘着剤(SK1478、綜研化学社製)からなる粘着剤層を有する偏光子の粘着剤層表面を貼合させた。更に、第1仮支持体のみをピンセットを用いて剥離し、以下の評価基準に従って第1仮支持体の剥離性を評価した。
「A」:ジッピング現象及び剥離跡が、いずれも確認されなかった。
「B」:ジッピング現象及び剥離跡の少なくとも一方が、確認された。
【0186】
表中、「IFX/ITX(%)」の欄は、要件3を満たすか否かを示し、「A」である場合は要件3を満たし、「B」である場合は要件3を満たさないことを示す。
「IMX>IMY(%)」の欄は、要件4を満たすか否かを示し、「A」である場合は要件4を満たし、「B」である場合は要件4を満たさないことを示す。
「IPX/IPY(%)」の欄は、要件5を満たすか否かを示し、「A」である場合は要件5を満たし、「B」である場合は要件5を満たさないことを示す。
なお、IFX、ITX、IMX、IMY、IPX及びIPYは、それぞれ上述した飛行時間型2次イオン質量分析法によって求められる値である。
【0187】
【0188】
表に示す評価結果より、本発明の転写フィルムは、加工適性及び剥離性のいずれにも優れることが確認された。
実施例1~3の比較から、2個以上の重合性基を有する非液晶化合物が水素結合性基を有する場合に加工適性がより優れ、上記非液晶化合物がウレタン結合を有する場合に加工適性が更に優れることが確認された。