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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142041
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20241003BHJP
   H01P 3/12 20060101ALI20241003BHJP
   H01P 3/127 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/46 B
H05K3/46 Z
H01P3/12 100
H01P3/127
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054001
(22)【出願日】2023-03-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、令和4年度における電波資源拡大のための研究開発のうちテラヘルツ波による超大容量無線LAN伝送技術の研究開発の委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】種子田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 樹
(72)【発明者】
【氏名】中林 陽子
【テーマコード(参考)】
5E316
5J014
【Fターム(参考)】
5E316AA32
5E316AA35
5E316AA43
5E316BB04
5E316BB07
5E316CC05
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC32
5E316EE01
5E316FF01
5E316GG15
5E316GG28
5E316HH06
5J014DA00
5J014EA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】内蔵されたポスト壁導波路において、電波の透過特性を向上する配線基板を提供する。
【解決手段】対向する2つの導体16p、17pと、2つの導体を接続する第1ポスト壁31及び第2ポスト壁32と、に囲まれた領域が電磁波の伝送路となるポスト壁導波路1Wを内蔵する配線基板1であって、第2ポスト壁32は、複数の絶縁層12、14、15を貫通するビア配線13v、16v、17vが積層された第2柱状部32pが、電磁波を伝送する方向に所定間隔で配列された構成であり、電磁波を伝送する方向に対して垂直な方向に切った断面視において、第1柱状部31p及び第2柱状部32pを構成するビア配線13v、16v、17vは、階段状に積層され、導体16p、17pと接しない絶縁層12において対向するビア配線13vの間隔は、導体と接する2つの絶縁層14、15において対向するビア配線16v、17v各々の間隔よりも広い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの導体と、2つの前記導体を接続する第1ポスト壁及び第2ポスト壁と、に囲まれた領域が電磁波の伝送路となるポスト壁導波路を内蔵する配線基板であって、
2つの前記導体は、3層以上の絶縁層を挟んで対向して配置され、
前記第1ポスト壁は、各々の前記絶縁層を貫通するビア配線が積層された第1柱状部が、前記電磁波を伝送する方向に所定間隔で配列された構成であり、
前記第2ポスト壁は、各々の前記絶縁層を貫通するビア配線が積層された第2柱状部が、前記電磁波を伝送する方向に所定間隔で配列された構成であり、
前記電磁波を伝送する方向に対して垂直な方向に切った断面視において、前記第1柱状部及び前記第2柱状部を構成する前記ビア配線は階段状に積層され、前記導体と接しない前記絶縁層において対向する前記ビア配線の間隔は、前記導体と接する2つの前記絶縁層において対向する前記ビア配線の各々の間隔よりも広い、配線基板。
【請求項2】
前記断面視において、前記導体と接しないいずれかの前記絶縁層に位置する前記ビア配線は、当該絶縁層の両面側に位置する幅広部から厚さ方向の中央側に位置する幅狭部に向かって徐々に幅が狭くなる、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記断面視において、前記導体と接する2つの前記絶縁層に位置する前記ビア配線は、前記導体から離れるにつれて幅が狭くなる、請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記断面視において、前記導体と接する2つの前記絶縁層に位置する前記ビア配線の前記導体側の端部から前記幅狭部に至るまで、前記ビア配線の前記伝送路に面する側は、同一方向に傾斜している、請求項3に記載の配線基板。
【請求項5】
前記断面視において、前記第1柱状部及び前記第2柱状部を構成する前記ビア配線の端部は、ビア受けパッドの表面の前記伝送路に近い領域に偏在して接続されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項6】
前記断面視において、前記第1柱状部と、前記第2柱状部とは、左右対称構造である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項7】
前記断面視において、前記第1柱状部と、前記第2柱状部とは、上下対称構造である、請求項6に記載の配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ポスト壁導波路と称される技術が提案されている。ポスト壁導波路は、例えば、誘電体ブロックの第1の領域を上下に貫通する複数の金属柱で形成した両側ポスト壁と後方ポスト壁とを有する。そして、少なくとも両側ポスト壁と後方ポスト壁及び、両側ポスト壁と後方ポスト壁で囲まれる領域に対応して誘電体ブロックの第1の領域の上下面に形成された導体箔を有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5669043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のポスト壁導波路は、方形導波管に近い形状であるため、電波の透過特性に改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、配線基板に内蔵されたポスト壁導波路において、電波の透過特性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本配線基板は、対向する2つの導体と、2つの前記導体を接続する第1ポスト壁及び第2ポスト壁と、に囲まれた領域が電磁波の伝送路となるポスト壁導波路を内蔵する配線基板であって、2つの前記導体は、3層以上の絶縁層を挟んで対向して配置され、前記第1ポスト壁は、各々の前記絶縁層を貫通するビア配線が積層された第1柱状部が、前記電磁波を伝送する方向に所定間隔で配列された構成であり、前記第2ポスト壁は、各々の前記絶縁層を貫通するビア配線が積層された第2柱状部が、前記電磁波を伝送する方向に所定間隔で配列された構成であり、前記電磁波を伝送する方向に対して垂直な方向に切った断面視において、前記第1柱状部及び前記第2柱状部を構成する前記ビア配線は階段状に積層され、前記導体と接しない前記絶縁層において対向する前記ビア配線の間隔は、前記導体と接する2つの前記絶縁層において対向する前記ビア配線の各々の間隔よりも広い。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、配線基板に内蔵されたポスト壁導波路において、電波の透過特性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る配線基板を例示する図(その1)である。
図2】第1実施形態に係る配線基板を例示する図(その2)である。
図3】第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その1)である。
図4】第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その2)である。
図5】第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その3)である。
図6】シミュレーションについて説明する図である。
図7】シミュレーションの結果を示す図である。
図8】第1実施形態の変形例1に係る配線基板を例示する断面図(その1)である。
図9】第1実施形態の変形例1に係る配線基板を例示する断面図(その2)である。
図10】通常よりも大きく形成したビア受けパッドを例示する図(その1)である。
図11】通常よりも大きく形成したビア受けパッドを例示する図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
[配線基板の全体構造]
図1は、第1実施形態に係る配線基板を例示する図(その1)である。図1(a)は配線基板1の全体を示す断面図、図1(b)は図1(a)のポスト壁導波路1w及びその近傍の縦断面図である。
【0011】
図1を参照すると、配線基板1は、配線層11と、絶縁層12と、配線層13と、絶縁層14と、絶縁層15と、配線層16と、配線層17と、絶縁層18と、絶縁層19と、配線層20と、配線層21とを有している。配線基板1は、絶縁層18上に、配線層20を選択的に露出するソルダーレジスト層を有してもよい。また、配線基板1は、絶縁層19上に、配線層21を選択的に露出するソルダーレジスト層を有してもよい。配線基板1は、ポスト壁導波路1wを内蔵している。ポスト壁導波路1wについては、後述する。
【0012】
なお、本実施形態では、便宜上、図1における配線基板1の配線層20側を上側又は一方の側、配線層21側を下側又は他方の側とする。また、各部位の配線層20側の面を一方の面又は上面、配線層21側の面を他方の面又は下面とする。但し、配線基板1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。また、平面視とは対象物を絶縁層18の一方の面の法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を絶縁層18の一方の面の法線方向から視た形状を指すものとする。なお、配線基板1を図1とは上下反転して図示する場合には、上面と下面の定義は図面の表示に合わせて上記とは反対になる。
【0013】
配線基板1において、配線層11は絶縁層12の上面側に埋め込まれている。配線層11の上面は絶縁層12の上面から露出し、配線層11の下面及び側面は絶縁層12に被覆されている。配線層11は、配線パターンと、ビア受け用のパッドとを含む。パッドの平面形状は、例えば、直径が60μm~120μm程度の円形である。配線層11の材料としては、例えば、銅(Cu)等を用いることができる。配線層11は、複数の金属層の積層構造であってもよい。配線層11の厚さは、例えば、10~30μm程度とすることができる。
【0014】
絶縁層12は、配線層11の側面及び下面を被覆するように形成されている。絶縁層12の上面は、例えば、配線層11の上面と面一とすることができる。絶縁層12の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂を主成分とする絶縁性樹脂等を用いることができる。絶縁層12の厚さは、例えば20~30μm程度とすることができる。なお、ここでいう絶縁層12の厚さは、配線層11の下面から絶縁層12の下面までの距離である。以降の絶縁層等の厚さについても同様である。絶縁層12は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有することができる。
【0015】
配線層13は、絶縁層12を貫通し配線層11の下面を露出するビアホール12x内に充填されたビア配線13v、及び絶縁層12の下面に形成された配線パターン13pを含んで構成されている。配線パターン13pは、ビア受け用のパッドを含んでもよい。図1に示す縦断面視において、ビア配線13vは、絶縁層12の両面側に位置する幅広部13aから厚さ方向の中央側に位置する幅狭部13bに向かって徐々に幅が狭くなる砂時計形状とすることができる。配線層13は、ビアホール12xの底部に露出した配線層11と電気的に接続されている。配線層13の材料や配線層13を構成する配線パターンの厚さは、例えば、配線層11と同様とすることができる。
【0016】
絶縁層14は、絶縁層12の上面に配置され、配線層11の上面を被覆する。絶縁層14の材料や厚さは、例えば、絶縁層12と同様とすることができる。絶縁層14は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有することができる。
【0017】
絶縁層15は、絶縁層12の下面に配置され、配線層13の下面及び側面を被覆する。絶縁層15の材料や厚さは、例えば、絶縁層12と同様とすることができる。絶縁層15は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有することができる。
【0018】
配線層16は、絶縁層14を貫通し配線層11の上面を露出するビアホール14x内に充填されたビア配線16v、及び絶縁層14の上面に形成された配線パターンを含んで構成されている。配線パターンは、導体16pを含む。配線パターンは、ビア受け用のパッドを含んでもよい。ビア配線16vは、導体16pから離れるにつれて幅が狭くなる形状とすることができる。例えば、ビア配線16vは、絶縁層18側の径が配線層11の上面側の径よりも大きい逆円錐台状することができる。配線層16は、ビアホール14xの底部に露出した配線層11と電気的に接続されている。配線層16の材料や配線層16を構成する配線パターンの厚さは、例えば、配線層11と同様とすることができる。
【0019】
配線層17は、絶縁層15を貫通し配線層13の下面を露出するビアホール15x内に充填されたビア配線17v、及び絶縁層15の下面に形成された配線パターンを含んで構成されている。配線パターンは、導体17pを含む。配線パターンは、ビア受け用のパッドを含んでもよい。ビア配線17vは、導体17pから離れるにつれて幅が狭くなる形状とすることができる。例えば、ビア配線17vは、絶縁層19側の径が配線層13の下面側の径よりも大きい円錐台状とすることができる。配線層17は、ビアホール15xの底部に露出した配線層13と電気的に接続されている。配線層17の材料や配線層17を構成する配線パターンの厚さは、例えば、配線層11と同様とすることができる。
【0020】
絶縁層18は、絶縁層14の上面に配置され、配線層16の上面及び側面を被覆する。絶縁層18の材料や厚さは、例えば、絶縁層12と同様とすることができる。絶縁層18は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有することができる。
【0021】
絶縁層19は、絶縁層15の下面に配置され、配線層17の下面及び側面を被覆する。絶縁層19の材料や厚さは、例えば、絶縁層12と同様とすることができる。絶縁層19は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有することができる。
【0022】
配線層20は、絶縁層18を貫通し配線層16の上面を露出するビアホール18x内に充填されたビア配線、及び絶縁層18の上面に形成された配線パターンを含んで構成されている。配線層20のビア配線は、配線層20側の径が配線層16の上面側の径よりも大きい逆円錐台状とすることができる。配線層20は、ビアホール18xの底部に露出した配線層16と電気的に接続されている。配線層20の材料や配線層20を構成する配線パターンの厚さは、例えば、配線層11と同様とすることができる。
【0023】
配線層21は、絶縁層19を貫通し配線層17の下面を露出するビアホール19x内に充填されたビア配線、及び絶縁層19の下面に形成された配線パターンを含んで構成されている。配線層21のビア配線は、配線層21側の径が配線層17の下面側の径よりも大きい円錐台状とすることができる。配線層21は、ビアホール19xの底部に露出した配線層17と電気的に接続されている。配線層20の材料や配線層20を構成する配線パターンの厚さは、例えば、配線層11と同様とすることができる。
【0024】
[ポスト壁導波路]
図2は、第1実施形態に係る配線基板を例示する図(その2)である。図2(a)は図1(a)のポスト壁導波路1wの斜視図、図2(b)は図2(a)のA-A線に沿う縦断面図である。図1及び図2を参照して、ポスト壁導波路1wについて説明する。
【0025】
図1及び図2に示すように、配線基板1には、Z方向に対向する2つの導体16p及び17pと、導体16pと導体17pとを接続する第1ポスト壁31及び第2ポスト壁32と、に囲まれた領域が電磁波の伝送路1tとなるポスト壁導波路1wが内蔵されている。図1及び図2の例では、電磁波を伝送する方向はY方向である。なお、伝送路1tは直線状には限定されず、曲線状であってもよいし、直線状の部分と曲線状の部分とが混在してもよい。
【0026】
導体16pは配線層16の配線パターンの一部であり、導体17pは配線層17の配線パターンの一部である。導体16pと導体17pとは、絶縁層15、12、及び14を挟んでZ方向において対向して配置されている。導体16p及び17pの形状は、例えば、図2(a)に示すように、互いに対向する矩形のベタパターンである。
【0027】
第1ポスト壁31は、絶縁層15を貫通するビア配線17v、絶縁層12を貫通するビア配線13v、及び絶縁層14を貫通するビア配線16vが積層された第1柱状部31pが、図2に示すように電磁波を伝送するY方向に所定間隔で配列された構成である。また、第2ポスト壁32は、絶縁層15を貫通するビア配線17v、絶縁層12を貫通するビア配線13v、及び絶縁層14を貫通するビア配線16vが積層された第2柱状部32pが、第1柱状部31pと同様に電磁波を伝送するY方向に所定間隔で配列された構成である。第1ポスト壁31と第2ポスト壁32の各々のY方向の長さL1は、例えば、5mmとすることができる。
【0028】
第1ポスト壁31と第2ポスト壁32とは、X方向において所定間隔で対向している。第1ポスト壁31と第2ポスト壁32とのX方向の間隔L2は、例えば、0.82mmとすることができる。第1ポスト壁31と第2ポスト壁32とのX方向の間隔L2は、厚さ方向においてX方向の間隔が最も広い位置で規定するものとする。
【0029】
図2(b)に示す縦断面において、第1柱状部31pを構成するビア配線17v、13v、及び16vの中心軸は略一致している。同様に、第2柱状部32pを構成するビア配線17v、13v、及び16vの中心軸は略一致している。第1柱状部31pと第2柱状部32pの各々のY方向のピッチL3は、例えば、0.125mmとすることができる。伝送路1tで伝送できる電磁波の周波数は、例えば、150GHz~160GHzとすることができる。
【0030】
電磁波を伝送する方向に対して垂直な方向に切った縦断面視において、すなわち図1(b)に示す縦断面において、第1柱状部31p及び第2柱状部32pを構成するビア配線は階段状に積層されている。ここで、階段状とは、上下に隣接するビア配線の中心軸が一致しないことである。言い換えれば、第1柱状部31p及び第2柱状部32pを構成するビア配線の積層構造には、上下に隣接するビア配線同士が平面視で同じ位置で重ならないスタガード方式が採用されている。
【0031】
導体16p及び17pと接しない絶縁層12においてX方向に対向するビア配線13vの間隔は、導体16pと接する絶縁層14においてX方向に対向するビア配線16vの間隔よりも広い。また、導体16p及び17pと接しない絶縁層12においてX方向に対向するビア配線13vの間隔は、導体17pと接する絶縁層15においてX方向に対向するビア配線17vの間隔よりも広い。導体16pと接する絶縁層14においてX方向に対向するビア配線16vの間隔は、導体17pと接する絶縁層15においてX方向に対向するビア配線17vの間隔と同じであってもよい。
【0032】
ここで、X方向に対向するビア配線の間隔は、X方向の最も間隔の広い位置で規定するものとする。例えば、X方向に対向するビア配線16vの間隔は、絶縁層12の上面と接するビア配線16vの下端同士の間隔で規定する。また、X方向に対向するビア配線13vの間隔は、幅狭部13b同士の間隔で規定する。
【0033】
図1(b)に示す縦断面において、第1柱状部31pと、第2柱状部32pとは、例えば、左右対称構造である。また、図1(b)に示す縦断面において、第1柱状部31pと、第2柱状部32pとは、例えば、上下対称構造である。
【0034】
このように、ポスト壁導波路1wを構成する第1柱状部31pと第2柱状部32pのX方向における間隔は、厚さ方向の中心付近が最も広く、導体16p及び17pに近づくほど狭くなる。これにより、伝送路1tは、円形導波管に近い形状となるため、第1柱状部31pと第2柱状部32pのX方向における間隔が厚さ方向において一定である方形導波管に近い形状よりも、電波の透過特性を向上することができる。
【0035】
図1(b)に示す縦断面において、ビア配線16vの導体16p側の端部から幅狭部13bに至るまで、ビア配線16v及び13vの伝送路1tに面する側は、同一方向に傾斜していることが好ましい。また、ビア配線17vの導体17p側の端部から幅狭部13bに至るまで、ビア配線17v及び13vの伝送路1tに面する側は、同一方向に傾斜していることが好ましい。これにより、伝送路1tは、円形導波管により近い形状となるため、電波の透過特性をより向上することができる。
【0036】
図1(b)に示す縦断面において、第1柱状部31p及び第2柱状部32pを構成するビア配線16vの下端部は、配線層11のビア受けパッドの上面の伝送路1tに近い領域に偏在して接続されていることが好ましい。また、第1柱状部31p及び第2柱状部32pを構成するビア配線17vの上端部は、配線層13のビア受けパッドの表面の伝送路1tに近い領域に偏在して接続されていることが好ましい。また、第1柱状部31p及び第2柱状部32pを構成するビア配線13vの上端部は、配線層11のビア受けパッドの下面の伝送路1tに近い領域に偏在して接続されていることが好ましい。これにより、伝送路1tにビア受けパッドが突出しくなり、円形導波管にさらに近い形状となるため、電波の透過特性をさらに向上することができる。
【0037】
なお、配線基板1において、絶縁層の層数は、3層以上の任意の層数とすることができる。
【0038】
また、配線基板1は、ポスト壁導波路1wを構成する部分以外の絶縁層や配線層を有していなくてもよい。すなわち、配線基板1自身がポスト壁導波路1wであってもよい。
【0039】
また、配線基板1は半導体チップを搭載又は内蔵してもよい。この半導体チップは、例えば、伝送路1tで伝送される電磁波の送信及び/又は受信が可能である。
【0040】
[配線基板の製造方法]
次に、第1実施形態に係る配線基板の製造方法について説明する。図3図5は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図である。ここでは、支持体の一方側のみに層構造を形成する工程の例を示すが、支持体の一方側及び他方側に層構造を形成する工程としてもよい。なお、各図の破線Cは配線基板を個片化する際に切断する位置を示している。断面視で隣接する破線Cの間に位置する領域が、最終的に個片化されて1つの配線基板となる。
【0041】
まず、図3(a)に示す工程では、支持体300を準備する。支持体300は、例えば、コア基板301の一方側にキャリア付き銅箔304を積層した構造である。コア基板301は、例えば、厚さが0.7mm程度の樹脂製の基板であり、ガラス繊維等の補強部材を有してもよい。キャリア付き銅箔304は、例えば銅からなる厚さ10~50μm程度の厚箔(キャリア箔)304b上に、剥離層(図示せず)を介して、例えば銅からなる厚さ1.5~5μm程度の薄箔304aが剥離可能な状態で貼着された構造を有する。厚箔304bは、薄箔304aの取り扱いを容易にするための支持材として設けられている。
【0042】
なお、上記の支持体300の構造は一例であり、これには限定されない。例えば、支持体300において、コア基板301に代えて、複数のプリプレグが積層された積層体を用いてもよい。また、支持体300は、ガラス基板や金属基板等の一方側に、剥離層を介してキャリア付き銅箔304を配置した構造としてもよい。
【0043】
次に、図3(b)に示す工程では、支持体300上に配線層11を形成する。具体的には、キャリア付き銅箔304の上面(薄箔304aの上面)に、ドライフィルムレジスト等を用いて、配線層11を形成する部分に開口部を有するレジスト層を形成する。そして、金属層であるキャリア付き銅箔304を給電層とする電解めっき法により、開口部内に露出するキャリア付き銅箔304の上面に電解めっき層である配線層11を形成する。配線層11の材料や厚さは、前述の通りである。その後、レジスト層を剥離して除去する。
【0044】
次に、図3(c)に示す工程では、支持体300上に、配線層11の支持体300と接していない面を被覆する絶縁層12を形成する。具体的には、キャリア付き銅箔304の上面に、配線層11を被覆する絶縁層12を形成する。まず、例えば、熱硬化性樹脂を主成分とする半硬化状態のフィルム状の絶縁性樹脂を準備する。そして、キャリア付き銅箔304の上面に、この絶縁性樹脂をラミネートし、加熱及び加圧しながら硬化させて絶縁層12とする。あるいは、フィルム状の絶縁性樹脂のラミネートに代えて、液状又はペースト状の絶縁性樹脂を塗布後、硬化させて絶縁層12を形成してもよい。絶縁層12の材料や厚さは、前述の通りである。
【0045】
次に、図3(d)に示す工程では、絶縁層12に、絶縁層12を貫通し配線層11の上面を露出するビアホール12xを形成する。ビアホール12xは、例えば、COレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等を用いたレーザ加工法により形成できる。ビアホール12xを形成後、デスミア処理を行い、ビアホール12xの底部に各々露出する配線層11の表面に付着した樹脂残渣を除去することが好ましい。
【0046】
ビアホール12xは、例えば、砂時計形状とすることができる。砂時計形状は、絶縁層12に照射するレーザ光のパワーを調整することにより形成可能である。レーザ光のパワーを調整することにより、一部のレーザ光が配線層11の上面で絶縁層12側に反射するため、図3(d)のような砂時計形状となる。
【0047】
次に、図4(a)に示す工程では、絶縁層12上に、配線層13を形成する。配線層13は、例えば、セミアディティブ法により形成することができる。具体的には、例えば、絶縁層12の上面、ビアホール12xの内側面、及びビアホール12x内に露出する配線層11の上面を連続的に被覆するシード層を、銅の無電解めっきや銅のスパッタにより形成する。次に、シード層上に、配線層13の形状に合わせた開口部を有するレジスト層を形成する。そして、シード層を給電層とする電解めっき法により、開口部内に露出するシード層上に電解めっき層を形成する。次に、レジスト層を除去した後、電解めっき層から露出するシード層をエッチングにより除去し、シード層上に電解めっき層が積層された配線層13を形成する。
【0048】
次に、図4(b)及び図4(c)に示す工程では、図4(a)に示す支持体300を除去する。支持体300を除去するには、まず、図4(b)に示すように、コア基板301及び厚箔304bを薄箔304aから機械的に剥離する。そして、図4(c)に示すように、薄箔304aを、例えば、塩化第二鉄水溶液や塩化第二銅水溶液や過硫酸アンモニウム水溶液等を用いたウェットエッチングにより除去する。
【0049】
次に、図4(d)に示す工程では、配線層11の支持体300と接していた面を被覆するように、絶縁層12の一方の側に絶縁層14を形成する。また、配線層13を被覆するように、絶縁層12の他方の側に絶縁層15を形成する。具体的には、例えば、熱硬化性樹脂を主成分とする半硬化状態のフィルム状の絶縁性樹脂を2つ準備する。そして、絶縁層12の一方の面及び他方の面に、この絶縁性樹脂をラミネートし、加熱及び加圧しながら硬化させて絶縁層14及び絶縁層15とする。あるいは、フィルム状の絶縁性樹脂のラミネートに代えて、液状又はペースト状の絶縁性樹脂を塗布後、硬化させて絶縁層14及び絶縁層15を形成してもよい。絶縁層14及び絶縁層15の材料や厚さは、例えば、絶縁層12と同様とすることができる。なお、図4(d)は、図4(c)とは上下が反転した状態で描かれている。後述の図5についても同様である。
【0050】
次に、図5(a)に示す工程では、絶縁層14に、絶縁層14を貫通し配線層11の上面を露出するビアホール14xを形成する。また、絶縁層15に、絶縁層15を貫通し配線層13の下面を露出するビアホール15xを形成する。ビアホール14x及び15xは、例えば、COレーザ等を用いたレーザ加工法により形成できる。ビアホール14x及び15xを形成後、必要に応じ、デスミア処理を行い、ビアホール14xの底部に露出する配線層11の表面、及びビアホール15xの底部に露出する配線層13の表面に付着した樹脂残渣を除去することが好ましい。
【0051】
次に、図5(b)に示す工程では、絶縁層14上に配線層16を形成する。また、絶縁層15下に配線層17を形成する。配線層16及び17は、配線層13と同様に、例えば、セミアディティブ法により形成することができる。
【0052】
次に、図5(c)に示す工程では、図4(d)~図5(b)と同様の工程を繰り返し、絶縁層18及び19、ビアホール18x及び19x、並びに配線層20及び21を形成する。その後、破線Cの部分で切断を行い、個別の配線基板1を得ることができる。
【0053】
[シミュレーション]
ポスト壁導波路1wを内蔵した配線基板1と、比較例であるポスト壁導波路2w~5wを内蔵した配線基板について、Sパラメータのシミュレーションを行った。ポスト壁導波路1w~5wは、150GHz~160GHzの電波を伝送可能に設計されている。図6に示すように、ポスト壁導波路2w~5wは、方形導波管に近い形状である。ポスト壁導波路2wは、スルーホールで柱状部が形成されている。ポスト壁導波路3wは、縦断面視で幅が一定の矩形状のビア配線が積層されて柱状部が形成されている。ポスト壁導波路4wは、縦断面視で同一方向を向く台形状のビア配線が積層されて柱状部が形成されている。ポスト壁導波路5wは、縦断面視で厚さ方向中央部の幅が狭くなる砂時計形状のビア配線が積層されて柱状部が形成されている。ポスト壁導波路3w~5wにおいて、積層された各ビア配線の中心軸は一致している。
【0054】
図7は、図6に示す各ポスト壁導波路の高周波信号の伝送特性を示す図であり、120Ωで規格化したSパラメータのシミュレーション結果を示している。図7(a)は反射特性、図7(b)は透過特性である。図7(a)から、150GHz~160GHzにおける反射特性は、ポスト壁導波路2wがやや優れているが、ポスト壁導波路1w及び3w~5wには大きな違いはみられない。一方、図7(b)から、150GHz~160GHzにおける透過特性は、ポスト壁導波路1wが最も優れている。
【0055】
このように、シミュレーションから、ポスト壁導波路1wのような円形導波管に近い形では、ポスト壁導波路2w~5wのような方形導波管に近い形よりも透過特性が改善されることがわかった。
【0056】
〈第1実施形態の変形例〉
第1実施形態の変形例では、配線基板に内蔵するポスト壁導波路において、柱状部におけるビア配線の積層構造が第1実施形態とは異なる例を示す。なお、第1実施形態の変形例において、既に説明した実施形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
【0057】
図8は、第1実施形態の変形例1に係る配線基板を例示する断面図であり、図1(b)と同様のポスト壁導波路及びその近傍の縦断面図である。図8(a)では、ビア配線13vの形状が図1(b)とは異なる。図8(a)において、ビア配線13vは、絶縁層15側の径が配線層11の下面側の径よりも大きい円錐台状である。図8(a)のような構造の場合も、円形導波管に近い形のポスト壁導波路を実現できるため、電波の透過特性を向上することができる。
【0058】
図8(b)では、図1(b)に対して絶縁層が3層追加されている。具体的には、絶縁層12と絶縁層15との間に絶縁層51が挿入されている。絶縁層51には、ビア受け用のパッドを含む配線パターン52pとビア配線52vが形成されている。ビア配線52vは、絶縁層15側の径が配線パターン13pの下面側の径よりも大きい円錐台状である。
【0059】
絶縁層12と絶縁層14との間に絶縁層53及び55が挿入されている。絶縁層53には、ビア受け用のパッドを含む配線パターン54pとビア配線54vが形成されている。ビア配線54vは、絶縁層55側の径が配線層11の上面側の径よりも大きい逆円錐台状である。絶縁層55には、ビア受け用のパッドを含む配線パターン56pとビア配線56vが形成されている。ビア配線56vは、絶縁層14側の径が配線パターン54pの上面側の径よりも大きい逆円錐台状である。図8(b)のような構造の場合も、円形導波管に近い形のポスト壁導波路を実現できるため、電波の透過特性を向上することができる。また、絶縁層の積層数を増やすことで、円形導波管にさらに近い形のポスト壁導波路を実現できる点で好適である。
【0060】
図9は、第1実施形態の変形例2に係る配線基板を例示する断面図であり、図1(a)と同様のポスト壁導波路及びその近傍の縦断面図である。図9(a)では、ビア配線13v及び17vの形状が図8(a)とは異なる。図9(a)において、ビア配線13vは、絶縁層14側の径が配線パターン13pの上面側の径よりも大きい逆円錐台状である。ビア配線17vは、絶縁層12側の径が導体17pの上面側の径よりも大きい逆円錐台状である。図9(a)のような構造の場合も、円形導波管に近い形のポスト壁導波路を実現できるため、電波の透過特性を向上することができる。
【0061】
図9(b)では、絶縁層51が削除された点が図8(b)とは異なる。図9(b)において、ビア配線13vは、絶縁層53側の径が配線パターン13pの上面側の径よりも大きい逆円錐台状である。また、ビア配線17vは、絶縁層12側の径が導体17pの上面側の径よりも大きい逆円錐台状である。図9(b)のような構造の場合も、円形導波管に近い形のポスト壁導波路を実現できるため、電波の透過特性を向上することができる。また、絶縁層の積層数を増やすことで、円形導波管にさらに近い形のポスト壁導波路を実現できる点で好適である。
【0062】
図9(a)や図9(b)に示したように、全てのビア配線の形状が略同一であっても、各ビア配線を階段状に積層することにより、円形導波管に近い形のポスト壁導波路を実現できる。
【0063】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0064】
例えば、上述した実施形態では、ビア配線の端部が、ビア受けパッドの表面の伝送路に近い領域に偏在して接続される例を紹介したが、図10のようにしてもよい。図10(a)は断面図であり、図10(b)は配線パターン13pのビア受けパッドを例示する部分平面図である。図10(b)では、ビア受けパッドの上面において、ビア配線13vの下端部と接続される領域を破線で示し、ビア受けパッドの下面において、ビア配線17vの上端部と接続される領域を一点鎖線で示している。
【0065】
図10のように、通常よりも大きく形成したビア受けパッドにビア配線を接続することにより、ビア配線の端部を意図的に偏在させずに同様の効果を得ることができる。これにより繊細な位置合わせを必要とせず、安定的に配線基板を製造することができる。
【0066】
通常よりも大きなビア受けパッドの例としては、例えば、円形や楕円形が挙げられる。また、通常よりも大きなビア受けパッドは、例えば、図11(a)に示すような鉄アレイ型、図11(b)に示すような瓢箪型、図11(c)に示すような方形など、種々の形状が考えられる。また、通常よりも大きなビア受けパッドを形成せずとも、通常サイズの2つのビア受けパッドを配線で接続したものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 配線基板
1t 伝送路
1w ポスト壁導波路
11,13,16,17,20,21 配線層
12,14,15,18,19,51,53,55 絶縁層
12x,14x,18x,19x ビアホール
13a 幅広部
13b 幅狭部
13p,52p,54p,56p 配線パターン
13v,16v,17v,52v,54v,56v ビア配線
16p,17p 導体
31 第1ポスト壁
31p 第1柱状部
32 第2ポスト壁
32p 第2柱状部
300 支持体
301 コア基板
304 キャリア付き銅箔
304a 薄箔
304b 厚箔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11