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特開2024-142062推定装置、装置、推定方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142062
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】推定装置、装置、推定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/12 20060101AFI20241003BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01D5/12 H
G01D5/245 110L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054039
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】築地 秀和
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA12
2F077CC02
2F077JJ01
2F077JJ07
2F077JJ20
2F077VV02
(57)【要約】
【解決手段】第1部分と、第2部分と、前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更させる可動機構と、前記第1部分及び前記第2部分の一方に設けられる少なくとも1つの磁気センサと、前記第1部分及び前記第2部分の他方に設けられ、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される磁場を提供する磁石部とを備える装置における前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢を推定する推定装置を提供する。前記推定装置は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の相関関係に基づいて、前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される測定値の組合せを示す参照情報を更新する更新部を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分と、第2部分と、前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更させる可動機構と、前記第1部分及び前記第2部分の一方に設けられる少なくとも1つの磁気センサと、前記第1部分及び前記第2部分の他方に設けられ、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される磁場を提供する磁石部とを備える装置における前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を推定する推定装置であって、
前記少なくとも1つの磁気センサにより第1時点で測定された少なくとも一方向の成分の少なくとも1つの測定値と、前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサの少なくとも一方向の成分の少なくとも1つの測定値を示す参照情報とに基づいて、前記第1時点での前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢を推定する推定部と、
前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の相関関係に基づいて、前記参照情報を更新する更新部と、
を備える、推定装置。
【請求項2】
前記可動機構は、前記第2部分を前記第1部分に対して第1位置または第1姿勢から第2位置または第2姿勢まで変更させる第1動作と、前記第2部分を前記第1部分に対して前記第2位置または前記第2姿勢から前記第1位置または前記第1姿勢まで変更させる第2動作とを可能にし、
前記更新部は、前記第1動作及び前記第2動作の少なくとも一方の少なくとも一部の間に、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の相関関係に基づいて、前記参照情報を更新する、請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記更新部は、前記第2部分が前記第1部分に対して前記第1位置または前記第1姿勢にある場合に前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の相関関係、または前記第2部分が前記第1部分に対して前記第2位置または前記第2姿勢にある場合に前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の相関関係と、に基づいて、前記参照情報を更新する、請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記相関関係は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値を第1軸、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第2方向の成分の測定値を第2軸とする座標系上で、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値及び前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第2方向の成分の測定値の組合せで示される前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に対応する座標値の集合により示される図形で表され、
前記更新部は、前記座標系上で前記図形を、拡大または縮小、及び移動の少なくとも1つを行うことで、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される複数の第1方向の成分の測定値及び複数の第2方向の成分の測定値のそれぞれで示される座標値上に位置合わせすることで、前記参照情報を更新する、請求項1に記載の推定装置。
【請求項5】
前記可動機構は、前記第2部分を前記第1部分に対して第1位置または第1姿勢から第2位置または第2姿勢まで変更させる第1動作と、前記第2部分を前記第1部分に対して前記第2位置または前記第2姿勢から前記第1位置または前記第1姿勢まで変更させる第2動作とを可能にし、
前記相関関係は、
前記第1動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値及び第2方向の成分の測定値の第1組合せ群と、
前記第2動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値及び第2方向の成分の測定値の第2組合せ群と、
を含み、
前記図形は、前記第1組合せ群に対応する第1線と、前記第2組合せ群に対応する第2線とを含む、請求項4に記載の推定装置。
【請求項6】
前記更新部は、前記座標系上で前記図形を、拡大または縮小、及び移動の少なくとも1つを行うことで、前記図形上の予め定められた特徴点を、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記複数の第1方向の成分の測定値及び前記複数の第2方向の成分の測定値のそれぞれで示される座標値のいずれかに位置合わせすることで、前記参照情報を更新する、請求項4に記載の推定装置。
【請求項7】
前記図形上の前記予め定められた特徴点は、前記第1軸の成分が最大または最小となる点、及び前記第2軸の成分が最大または最小となる点を含む、請求項6に記載の推定装置。
【請求項8】
前記参照情報は、前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサの少なくとも一方向の成分の少なくとも1つの測定値の変化を示すそれぞれの予め定められたフィット関数で表され、
前記更新部は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の相関関係に基づいて、それぞれの前記予め定められたフィット関数の特定の係数を調整することで、前記参照情報を更新する、請求項1に記載の推定装置。
【請求項9】
前記可動機構は、前記第2部分を前記第1部分に対して第1位置または第1姿勢から第2位置または第2姿勢まで変更させる第1動作と、前記第2部分を前記第1部分に対して前記第2位置または前記第2姿勢から前記第1位置または前記第1姿勢まで変更させる第2動作とを可能にし、
前記更新部は、前記座標系上で前記図形を、拡大または縮小、及び移動の少なくとも1つを行うことで、前記第1動作中または前記第2動作中に前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される複数の第1方向の成分の測定値及び複数の第2方向の成分の測定値のそれぞれで示される座標値上に予め定められた一致度以上に位置合わせできない場合、前記参照情報の更新を行わない、請求項4に記載の推定装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の推定装置と、
前記第1部分と、
前記第2部分と、
前記可動機構と、
を備える装置。
【請求項11】
第1部分と、第2部分と、前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更させる可動機構と、前記第1部分及び前記第2部分の一方に設けられる少なくとも1つの磁気センサと、前記第1部分及び前記第2部分の他方に設けられ、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される磁場を提供する磁石部とを備える装置における前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を推定する推定方法であって、
前記少なくとも1つの磁気センサにより第1時点で測定された少なくとも一方向の成分の少なくとも1つの測定値と、前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサの少なくとも一方向の成分の少なくとも1つの測定値を示す参照情報とに基づいて、前記第1時点での前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢を推定する段階と、
前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の相関関係に基づいて、前記参照情報を更新する段階と、
を備える、推定方法。
【請求項12】
第1部分と、第2部分と、前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更させる可動機構と、前記第1部分及び前記第2部分の一方に設けられる少なくとも1つの磁気センサと、前記第1部分及び前記第2部分の他方に設けられ、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される磁場を提供する磁石部とを備える装置における前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を推定する推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
前記少なくとも1つの磁気センサにより第1時点で測定された少なくとも一方向の成分の少なくとも1つの測定値と、前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサの少なくとも一方向の成分の少なくとも1つの測定値を示す参照情報とに基づいて、前記第1時点での前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢を推定する段階と、
前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の相関関係に基づいて、前記参照情報を更新する段階と、
を前記コンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、装置、推定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「ヒンジ部の角度に応じて、変動する磁石及び磁気センサの間の距離に基づいて、磁気センサを用いてヒンジ部の角度を検出可能な開閉端末」が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
【0003】
[特許文献1] 米国特許第9823093号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周辺部品の着磁状況が変わり、磁場環境が変化した場合であっても、磁気センサに対する磁石の位置の推定の精度が低下することを抑制することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様においては、第1部分と、第2部分と、前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更させる可動機構と、前記第1部分及び前記第2部分の一方に設けられる少なくとも1つの磁気センサと、前記第1部分及び前記第2部分の他方に設けられ、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される磁場を提供する磁石部とを備える装置における前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を推定する推定装置を提供する。前記推定装置は、前記少なくとも1つの磁気センサにより第1時点で測定された少なくとも一方向の成分の少なくとも1つの測定値と、前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサの少なくとも一方向の成分の少なくとも1つの測定値を示す参照情報とに基づいて、前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢を推定する推定部と、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の相関関係に基づいて、前記参照情報を更新する更新部と、を備える。
【0006】
前記推定装置において、前記可動機構は、前記第2部分を前記第1部分に対して第1位置または第1姿勢から第2位置または第2姿勢まで変更させる第1動作と、前記第2部分を前記第1部分に対して前記第2位置または前記第2姿勢から前記第1位置または前記第1姿勢まで変更させる第2動作とを可能にしてよい。前記更新部は、前記第1動作及び前記第2動作の少なくとも一方の少なくとも一部の間に、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の相関関係に基づいて、前記参照情報を更新してよい。
【0007】
いずれかの前記推定装置において、前記更新部は、前記第2部分が前記第1部分に対して前記第1位置または前記第1姿勢にある場合に前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の相関関係、または前記第2部分が前記第1部分に対して前記第2位置または前記第2姿勢にある場合に前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の相関関係と、に基づいて、前記参照情報を更新してよい。
【0008】
いずれかの前記推定装置において、前記相関関係は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値を第1軸、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第2方向の成分の測定値を第2軸とする座標系上で、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第1方向の成分の測定値及び前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記第2方向の成分の測定値の組合せで示される前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に対応する座標値の集合により示される図形で表されてよい。前記更新部は、前記座標系上で前記図形を、拡大または縮小、及び移動の少なくとも1つを行うことで、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される複数の第1方向の成分の測定値及び複数の第2方向の成分の測定値のそれぞれで示される座標値上に位置合わせすることで、前記参照情報を更新してよい。
【0009】
いずれかの前記推定装置において、前記可動機構は、前記第2部分を前記第1部分に対して第1位置または第1姿勢から第2位置または第2姿勢まで変更させる第1動作と、前記第2部分を前記第1部分に対して前記第2位置または前記第2姿勢から前記第1位置または前記第1姿勢まで変更させる第2動作とを可能にしてよい。前記相関関係は、前記第1動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値及び第2方向の成分の測定値の第1組合せ群と、前記第2動作中の前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される第1方向の成分の測定値及び第2方向の成分の測定値の第2組合せ群と、を含んでよい。前記図形は、前記第1組合せ群に対応する第1線と、前記第2組合せ群に対応する第2線とを含んでよい。
【0010】
いずれかの前記推定装置において、前記更新部は、前記座標系上で前記図形を、拡大または縮小、及び移動の少なくとも1つを行うことで、前記図形上の予め定められた特徴点を、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される前記複数の第1方向の成分の測定値及び前記複数の第2方向の成分の測定値のそれぞれで示される座標値のいずれかに位置合わせすることで、前記参照情報を更新してよい。
【0011】
いずれかの前記推定装置において、前記図形上の前記予め定められた特徴点は、前記第1軸の成分が最大または最小となる点、及び前記第2軸の成分が最大または最小となる点を含んでよい。
【0012】
いずれかの前記推定装置において、前記参照情報は、前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサの少なくとも一方向の成分の少なくとも1つの測定値の変化を示すそれぞれの予め定められたフィット関数で表されてよい。前記更新部は、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値との相関関係に基づいて、それぞれの前記予め定められたフィット関数の特定の係数を調整することで、前記参照情報を更新してよい。
【0013】
いずれかの前記推定装置において、前記可動機構は、前記第2部分を前記第1部分に対して第1位置または第1姿勢から第2位置または第2姿勢まで変更させる第1動作と、前記第2部分を前記第1部分に対して前記第2位置または前記第2姿勢から前記第1位置または前記第1姿勢まで変更させる第2動作とを可能にしてよい。前記更新部は、前記座標系上で前記図形を、拡大または縮小、及び移動の少なくとも1つを行うことで、前記第1動作中または前記第2動作中に前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される複数の第1方向の成分の測定値及び複数の第2方向の成分の測定値のそれぞれで示される座標値上に予め定められた一致度以上に位置合わせできない場合、前記参照情報の更新を行わなくてよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、いずれかの前記推定装置と、前記第1部分と、前記第2部分と、前記可動機構と、を備える、装置を提供する。
【0015】
本発明の第3の態様においては、第1部分と、第2部分と、前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更させる可動機構と、前記第1部分及び前記第2部分の一方に設けられる少なくとも1つの磁気センサと、前記第1部分及び前記第2部分の他方に設けられ、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される磁場を提供する磁石部とを備える装置における前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を推定する推定方法を提供する。前記推定方法は、前記少なくとも1つの磁気センサにより第1時点で測定された少なくとも一方向の成分の少なくとも1つの測定値と、前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサの少なくとも一方向の成分の少なくとも1つの測定値を示す参照情報とに基づいて、前記第1時点での前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢を推定する段階と、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される少なくとも1つの方向の成分の少なくとも2つの測定値の相関関係に基づいて、前記参照情報を更新する段階と、を備える。
【0016】
本発明の第4の態様においては、第1部分と、第2部分と、前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更させる可動機構と、前記第1部分及び前記第2部分の一方に設けられる少なくとも1つの磁気センサと、前記第1部分及び前記第2部分の他方に設けられ、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される磁場を提供する磁石部とを備える装置における前記第1部分に対する前記第2部分の位置及び姿勢の少なくとも一方を推定する推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムを提供する。前記プログラムは、前記少なくとも1つの磁気センサにより第1時点で測定された少なくとも一方向の成分の少なくとも1つの測定値と、前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢に応じた前記少なくとも1つの磁気センサの少なくとも一方向の成分の少なくとも1つの測定値を示す参照情報とに基づいて、前記第1時点での前記第1部分に対する前記第2部分の位置または姿勢を推定する段階と、前記少なくとも1つの磁気センサにより測定される複数の第1方向の成分の測定値と複数の第2方向の成分の測定値との間のそれぞれの相関関係、または前記少なくとも1つの磁気センサのうち第1磁気センサにより測定される複数の第1方向の成分の測定値と前記少なくとも1つの磁気センサのうち第2磁気センサにより測定される複数の第1方向の成分の測定値との相関関係に基づいて、前記参照情報を更新する段階と、を前記コンピュータに実行させる。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】装置10Aの外観斜視図の一例である。
図1B】装置10Aの閉状態における外観斜視図の一例である。
図1C】装置10Aの開状態における外観斜視図の一例である。
図2】装置10Aにおける上面図の概略の一例である。
図3】推定装置100Aの構成の一例を示す図である。
図4A】磁気センサ30が検出した、第1部分11及び第2部分12の間の角度θに応じた磁束密度の一例を示す図である。
図4B図4Aに示された磁場のX成分及びY成分を示したグラフである。
図5A】磁気センサ30が検出した、第1部分11及び第2部分12の間の角度θに応じた磁束密度の別例を示す図である。
図5B図5Aに示された磁場のX成分及びY成分の描く曲線を拡大または縮小、及び平行移動した曲線82b,84bと、図4Bで示した曲線82a,84aと、を並べて示した図である。
図6】磁石部20及び磁気センサ30が外部磁場による着磁の影響を受けた際のヒステリシス曲線の変化の一例を表した図である。
図7】20度ごとに測定値をヒステリシス曲線上にプロットした図の一例を示す。
図8】磁気センサ30が検出した、第1部分11及び第2部分12の間の角度θに応じた磁束密度の別例を示す図である。
図9図8の磁石部20及び磁気センサ30の配置において、工場での較正時のデータと、出荷後測定されたデータと、出荷後測定されたデータを拡大または縮小、及び平行移動した曲線との一例を示す図である。
図10】装置10Aにおける第1部分11に対する第2部分12の姿勢の推定に用いる参照情報の更新手順を示すフロー図の一例を示す。
図11A】装置10Bにおける外観の上面図の一例を示す図である。
図11B】装置10Bにおける外観の上面図の別例を示す図である。
図12】装置10Bにおける機能ブロックの一例を示す図である。
図13】支持部材52に対する可動部材54のX座標系における位置と、2つの磁気センサ60a,60bのそれぞれの測定値との関係の一例を示す。
図14】磁気センサ60aによる磁束密度のX成分の測定値と、磁気センサ60bによる磁束密度のX成分の測定値とを座標系の横軸及び縦軸として、それらの組み合わせの関係の一例を示す。
図15】装置10Bにおける支持部材52に対する可動部材54の位置の推定に用いる参照情報の更新手順を示すフロー図の一例を示す。
図16】本発明の複数の態様を具現化するハードウェア構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1Aは、装置10Aの外観斜視図の一例である。装置10Aは、折り畳み可能な端末であり、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット、ノートパソコン、及び小型パソコン等の携帯端末である。図中、装置10Aが、所謂フォルダブルスマートフォンである例が示される。装置10Aは、第1部分11、第2部分12、ディスプレイ14、及びヒンジ機構16を備える。
【0021】
ディスプレイ14は、折り曲げ可能なディスプレイである。例えば、ディスプレイ14は、有機EL(OLED)ディスプレイである。
【0022】
第1部分11及び第2部分12は、装置10Aの筐体の一部である。第1部分11及び第2部分12は、一体的に構成されてよい。ヒンジ機構16は、第1部分11及び第2部分12を折り畳み可能に結合する。ヒンジ機構16は、第1部分11または第2部分12の一部でよい。一例として、本実施形態の装置10Aは、ヒンジ機構16が第2部分12の一部である。
【0023】
本実施形態では、右手系(正系)の直交座標系を設定して説明が行われる。直交座標系のZ軸は、ヒンジ機構16の回転軸18の方向に取られる。例えばY軸は、図1Bに示されるフォルダブルスマートフォンの閉状態において、ヒンジ機構16から第1部分11が延在する方向に取られる。この場合に、第1部分11は、第2部分12に対して成す角の角度θが0度から180度まで変動するように回転する。ただし、Y軸の取り方と、第1部分11及び第2部分12のうち回転移動する側とは、例示であって、これに限定するものではない。第1部分11及び第2部分12の間の成す角度θが変動可能であれば、第1部分11に対して、第2部分12が回転移動してもよい。
【0024】
このように、本実施形態において、第1部分11は、ヒンジ機構16を介した回転により、第2部分12に対する姿勢を変動させる。すなわち、ヒンジ機構16は、第1部分11に対する第2部分12の姿勢を変更させる「可動機構」の一例である。
【0025】
図1Bは、装置10Aの閉状態における外観斜視図の一例である。フォルダブルスマートフォンが「閉状態」にあるとは、図のように、第1部分11及び第2部分12の間の成す角度θが0度の状態である場合であり、第1部分11が第2部分12に対して閉じた状態にあることを指す。
【0026】
ここで、本実施形態においては、装置10Aが「閉状態」にあることは、第2部分12が第1部分11に対して「第1姿勢」にあることを指す。ただし、本実施形態における「第1姿勢」の定義の仕方は例示であり、第2部分12の第1部分11に対する異なる姿勢を「第1姿勢」として定義してもよい。
【0027】
図1Cは、装置10Aの開状態における外観斜視図の一例である。装置10Aが「開状態」にあるとは、図のように、第1部分11及び第2部分12の間の成す角度θが180度の状態である場合であり、第1部分11が第2部分12に対して、折り畳まれていない状態にあることを指す。
【0028】
ここで、本実施形態においては、装置10Aが「開状態」にあることは、第2部分12が第1部分11に対して「第2姿勢」にあることを指す。ただし、本実施形態における「第2姿勢」の定義の仕方は例示であり、第2部分12の第1部分11に対する異なる姿勢を「第2姿勢」に定義してもよい。
【0029】
このように、本実施形態のヒンジ機構16は、装置10Aを「閉状態」から「開状態」、すなわち、「第1姿勢」から「第2姿勢」に変更する動作(「第1動作」の一例である。)を可能とする。また、ヒンジ機構16は、装置10Aを「開状態」から「閉状態」、すなわち、「第2姿勢」から「第1姿勢」に変更する動作(「第2動作」の一例である。)も可能とする。
【0030】
図2は、装置10Aの開状態における上面図の概略の一例である。装置10Aは、磁石部20、磁気センサ30、及び推定装置100Aを備える。以下で詳述する通り、本実施形態の装置10Aは、磁石部20及び磁気センサ30を用いることで、第1部分11及び第2部分12の間の成す角度θを精度よく推定できる。
【0031】
磁石部20は、第1部分11及び第2部分12の角度に応じて変動する磁場を生じさせる磁石を含む。これにより、磁石部20は、磁気センサ30により測定される磁場を提供する。本実施形態の磁石部20は、第1部分11及び第2部分12のうち、第2部分の一部を構成するヒンジ機構16に設けられ、磁気センサ30は、第1部分11及び第2部分12のうち、ヒンジ機構16を構成していない第1部分11に設けられる。
【0032】
ただし、磁石部20は、磁気センサ30との相対位置により、角度に応じた磁束密度が検出できる位置に設けられればよく、磁石部20は、第1部分11及び第2部分12のうちの一方に設けられ、磁気センサ30は、第1部分11及び第2部分12の他方に設けられてよい。したがって、磁石部20が第1部分11に設けられる例においては、磁気センサ30が第2部分12に設けられてよい。
【0033】
磁気センサ30は、第1部分11及び第2部分12の間の角度に応じた、ある時点の磁場(または磁束密度。以下では、磁束密度の意味を含めて単に磁場と称することがある)を測定する。磁気センサ30は、磁束密度の測定値に応じた電圧または電流を出力する。例えば、磁気センサ30は、ホール素子である。磁気センサ30によって磁束密度を測定する時点は、「第1時点」の一例である。
【0034】
装置10Aにおいて、磁気センサ30は、少なくとも1つ設けられる。特に、以下では一個の磁気センサ30で複数の異なる方向の磁束密度を測定する例についての説明がされる。しかし、装置10Aにおいて、磁気センサ30が設けられる個数は、所望に応じて2個以上であってよい。
【0035】
推定装置100Aは、磁気センサ30が検知した磁束密度の測定値に基づいて、角度θを推定し、かつ、角度θを推定するための参照情報を更新する。なお、角度θの推定は、第1部分11に対する第2部分12のヒンジ機構16を通じた回転運動によって変動する姿勢の推定の一例である。
【0036】
装置10Aは、推定装置100Aにより推定された角度に基づいて、予め定められた動作を実行する。装置10Aは、推定装置100Aにより推定された角度に基づいて、第1部分11の表示部分と、第2部分12の表示部分とに異なる画像を表示させてよい。例えば、装置10Aは、推定装置100Aにより推定された角度が90度から120度などの予め定められた角度範囲に含まれる場合、第2部分12の表示部分にキーボードなどの操作機能を表示させ、第1部分11の表示部分に操作機能により操作された内容に応じた画像、例えば、文書、映像などを表示させる表示機能を表示させてよい。以下では、図3を参照して、推定装置100Aの内部の構成及び機能についてさらに説明する。
【0037】
図3は、推定装置100Aの構成の一例を示す図である。推定装置100Aは、制御部110と、記憶部120と、通信インタフェース130とを備える。
【0038】
制御部110は、通信インタフェース130から受信した磁気センサ30による磁束密度の測定値と、記憶部120に記憶されている参照情報とに基づいて、測定値に対応する角度θを推定し、推定した角度に基づいて装置10Aが機能するよう制御する。さらに、制御部110は、参照情報を更新して、更新した参照情報を記憶部120へと記憶するよう記憶部120を制御する。
【0039】
記憶部120は、磁気センサ30が検出する磁束密度の各成分の測定値の組み合わせと、第1部分11及び第2部分12の間の角度と、を対応させる参照情報を記憶する。参照情報は、一例として、磁束密度のX軸方向の成分、Y軸方向の成分、及びZ軸方向の成分(以下では、それぞれX成分、Y成分、及びZ成分と称することがある)のうち少なくとも2成分の描くヒステリシス曲線の図形である。
【0040】
通信インタフェース130は、磁気センサ30から信号線を介して、磁気センサ30が測定する磁束密度の測定値を受信する。推定装置100Aは、磁束密度のX成分、Y成分、及びZ成分と、参照情報とに基づいて、第1部分11に対する第2部分12の角度θの推定を行う。以下では、図4A図7を参照して、制御部110が角度θの推定を行うための原理を説明し、その後に、制御部110の内部構成と、その機能との説明を行う。
【0041】
図4Aは、磁気センサ30が検出した、第1部分11及び第2部分12の間の角度θに応じた磁束密度の一例を示す図である。図中、装置10Aを閉状態から開状態へと遷移させ、再び開状態から閉状態へと遷移させた場合(すなわち、閉状態から、開状態を介して閉状態へと戻る一往復をさせた場合)の磁束密度のXYZ座標系における、X成分、Y成分、及びZ成分のそれぞれが示される。なお、本明細書では、以下の各グラフは、角度に対する各磁束密度の成分、または各磁束密度の成分間の関係及び当該関係を示す図形の形状等を例示して説明するためのものである。したがって、各グラフにおける磁束密度の各成分は、任意単位(arbitrary unit;a.u.)での値として示されている。このグラフは、角度θと磁束密度のX成分及びY成分との関係を示す「参照情報」として使用することができる。
【0042】
図中、磁束密度のX成分、Y成分、及びZ成分は、略閉曲線を描く。しかし、閉状態から開状態へと遷移する際に磁束密度のX成分が描く曲線と、開状態から閉状態へと遷移する際に磁束密度のX成分が描く曲線とは、磁気ヒステリシスの影響等により異なる軌道を描いて、曲線の端部へと至る。例えば、磁気ヒステリシスの影響は、磁束密度のX成分、Y成分、及びZ成分の各成分に現れるが、磁気ヒステリシスの影響の各成分における現れ方は、磁石部20及び磁気センサ30の相対位置に基づいて、異なる大きさで現れる。なお、装置10Aの開閉動作の際に、ヒンジの力のかかり具合により、装置10Aでは、磁石部20と、磁気センサ30との位置関係が微妙に変化することがある。この影響も、磁気センサ30の測定する磁束密度に、ヒステリシスとして現れることがある。
【0043】
図4Bは、図4Aに示された磁場のX成分及びY成分を示したグラフである。磁束密度のX成分及びY成分を図示すると、角度θを図に直接現れないパラメータとした略閉曲線のヒステリシス曲線の図形を描くことができる。
【0044】
図中、特に装置10Aが閉状態から開状態へと遷移する第1動作の際に、磁気センサ30の測定値のX成分及びY成分を結んで得られる曲線が、曲線82aとして示される。一方、その後、装置10Aが開状態から閉状態へと遷移する第2動作の際に、磁気センサ30の測定値のX成分及びY成分を結んで得られる曲線が、曲線84aとして示される。磁気ヒステリシスの影響でこれらの曲線82a,82bは異なる軌道を取って端部において略一致する座標に至る。
【0045】
このようなヒステリシス曲線を描くためには、XYZ座標系のうちの異なる2軸方向の磁束密度の成分が選択される。本実施形態のように、Z軸が第1部分11に対する第2部分12の回転軸18と略平行に取られる場合には、例えば、Z軸以外の2軸の方向の成分、すなわちX成分及びY成分を用いてよい。ただし、2成分の選び方は、この例に限定されるものではなく、他の選び方、すなわち、Y成分及びZ成分、またはZ成分及びX成分を用いてもよい。
【0046】
ヒステリシス曲線上の位置は、パラメータである角度θに依存する。磁束密度の測定値のX成分及びY成分を取得した場合に、推定装置100Aは、測定値のヒステリシス曲線上の位置を特定し、位置に対応する角度θを導出することにより、第1部分11及び第2部分12の間の角度θを推定できる。
【0047】
図5Aは、磁気センサ30が検出した、第1部分11及び第2部分12の間の角度θに応じた磁束密度の別例を示す図である。図に示されるように、センサの検出誤差、外部環境の磁場、または磁気ヒステリシスの影響等により、開閉する試行が異なると、磁束密度の角成分は、異なる軌道を描くことがある。
【0048】
角度θを横軸、磁束密度(または磁場)を縦軸とした曲線においては、例えば、図4A及び図5Aを比較した場合に、幾つかの相違点がある。図4Aの磁束密度のX成分を描いた曲線においては、85度付近の角度θにおいて、閉状態から開状態への遷移の際に描かれる曲線と、開状態から閉状態への遷移の際に描かれる曲線とが交差している。一方、図5Aの磁束密度のX成分を描いた曲線においては、端点以外では略閉曲線を描く曲線が交差していない。
【0049】
さらには、図4Aの磁束密度のY成分を描いた曲線においては、90度付近の角度θにおいて、閉状態から開状態への遷移の際に描かれる曲線と、開状態から閉状態への遷移の際に描かれる曲線とが交差している。図5Aの磁束密度のY成分を描いた曲線においては、90度付近の角度において、両曲線は互いに交差していない。
【0050】
このように、開閉の試行が異なると、角度θ及び磁束密度を描いた曲線は、幾何学的な特徴が変化することがある。しかし、図4B及び図5Bを参照して以下で説明するように、磁束密度の各成分のうち、描かれるヒステリシス曲線の図形に対して、拡大または縮小、及び平行移動を行った場合、磁束密度のX成分及びY成分の幾何学的特徴は、略一致する。
【0051】
図5Bは、図5Aに示された磁場のX成分及びY成分の描く曲線を拡大または縮小、及び平行移動した曲線82b,84bと、図4Bで示した曲線82a,84aと、を並べて示した図である。なお、本明細書において以下では、第1動作における測定値を結んだ曲線82a、測定値を結んだ曲線を拡大または縮小、及び平行移動した曲線82bと、第2動作における測定値を結んだ曲線84a、測定値を結んだ曲線を拡大または縮小、及び平行移動した曲線84bとの組み合わせを曲線82,84と総称することがある。
【0052】
図示されるように、曲線82a,82b及び曲線84a,84bのそれぞれは、多少のズレを有するものの、曲線82a,84aまたは曲線82b,84bが互いに交わるか否かの特徴等を含む多くの幾何学的特徴において略一致した概形を描く。このように、開閉の試行のたびに磁束密度のX成分及びY成分がセンサの検出誤差、外部環境の変化、またはヒステリシスの影響等を受けた場合であっても、磁束密度のX成分及びY成分の描く曲線は、拡大または縮小、及び平行移動を行うことで概形が略一致する。
【0053】
したがって、磁束密度のX成分及びY成分の描くヒステリシス曲線(曲線82,84)の形状が安定している性質を使用して、磁束密度のX成分及びY成分のヒステリシス曲線(相関関係)に対して、着磁等の磁場環境の変化が磁気センサ30に与える影響を評価することができる。このヒステリシス曲線の上での着磁等の影響を評価して、その着磁等の影響を相殺すべく角度θと磁束密度のX成分及びY成分との関係を示す参照情報を更新する。更新後の参照情報を用いて角度θを推定することで、装置10Aの周囲の磁場が変化しても、磁気センサ30に対する磁石部20の位置の推定の精度が低下することを抑制できる。なお、本実施形態において、X軸方向は、「第1方向」の一例であり、Y軸方向は、「第2方向」の一例である。このように、本実施形態において、磁束密度のX成分及びY成分の相関関係は、磁気センサ30により測定される第1方向の成分の測定値を第1軸として、磁気センサ30により測定される第2方向の成分の測定値を第2軸とする座標系上で、X成分の測定値及びY成分の測定値の組み合わせで示される第1部分11に対する第2部分12の姿勢に対応する座標値の集合により示される図形で表される。
【0054】
本実施形態では、推定装置100Aの角度θの推定に使用する磁束密度の成分として、ヒンジ機構16の回転軸18に略平行なZ軸成分以外の成分である、X成分及びY成分を用いている。このような場合には、図中に示されるようにヒステリシス曲線は、2つの曲線82,84の端点を結ぶ略閉曲線を描くことがある。
【0055】
このような場合には、磁束密度のX成分及びY成分の相関関係は、装置10Aの第1動作中の第1部分11に対する第2部分12の角度θに応じた磁気センサ30により測定されるX成分の測定値及びY成分の測定値の「第1組合せ群」(ヒステリシス曲線の2つの曲線のうちの一方の曲線に対応する組み合わせ群に相当する。)を含む。さらに、相関関係は、第2動作中の第1部分11に対する第2部分12の角度θに応じた磁気センサ30により測定されるX成分の測定値及びY成分の測定値の「第2組合せ群」(ヒステリシス曲線の2つの曲線のうちの他方の曲線に対応する組み合わせ群に相当する。)を含む。一方の曲線82は、第1組み合わせ群に対応する「第1線」の一例である。他方の曲線84は、第2組み合わせ群に対応する「第2線」の一例である。すなわち、相関関係を示すヒステリシス曲線82,84の図形は、第1組み合わせ群に対応する第1線と、第2組み合わせ群に対応する第2線とを含む。
【0056】
このような磁束密度のX成分及びY成分を座標軸とした、磁束密度のX成分及びY成分の組み合わせの描くヒステリシス曲線では、角度をパラメータとして有する曲線であり、ヒステリシス曲線上の位置と、角度θとには対応関係がある。すなわち、開閉試行の異なる曲線同士での概形の一致により、開閉試行の異なる曲線間で相互に略一致する測定位置では、第1部分11及び第2部分12の間の成す角度θも略一致した値を示す。
【0057】
本実施形態の推定装置100Aは、角度θの参照情報として図4Aまたは図5Aに示される図を用い、磁束密度の各成分の相関関係を示す図として図4Bまたは図5Bのヒステリシス曲線を用いる。しかし、別の実施形態において、推定装置100Aは、角度θの参照情報として曲線82a,84aを用いてもよい。
【0058】
図6は、磁石部20及び磁気センサ30が外部磁場による着磁の影響を受けた際のヒステリシス曲線の変化の一例を表した図である。具体的には、磁石部20と、磁気センサ30との相対的な位置関係を変化させて、第1部分11に対して第2部分12を開閉したときのヒステリシス曲線が徐々に外的要因により磁化(着磁)の影響を受ける状態を近似している。
【0059】
図中、磁気センサ30により測定される磁束密度のX成分の測定値を横軸として、磁束密度のY成分及びZ成分を縦軸としたグラフが示される。左図は、X成分及びY成分の測定値の組み合わせと、X成分及びZ成分の測定値の組み合わせとを結ぶ曲線の描く図形を示す。一方、右図は、X成分及びY成分の測定値の組み合わせと、X成分及びZ成分の測定値の組み合わせとの描く曲線に対して、拡大または縮小、及び平行移動した曲線を示している。
【0060】
右図によれば、X成分及びY成分の測定値の組み合わせと、X成分及びZ成分の測定値の組み合わせとの描く曲線のいずれもが、拡大または縮小、及び平行移動後に略一致することが読み取れる。このように、X成分及びY成分の測定値の組み合わせの描く曲線と、X成分及びZ成分の測定値の組み合わせの描く曲線とは、外的要因により磁化(着磁)の影響を受けた場合であっても、曲線に対する拡大または縮小、及び平行移動により略一致する図形となる。
【0061】
このように、磁束密度の2座標軸成分の描く図形が、センサの検出誤差、外部環境の変化またはヒステリシスの影響等に対して安定性を有することが、更に例証される。図形の幾何学的安定性の一因は、角度θを座標軸として図形を描かずに、角度θをパラメータとして、磁束密度の2座標軸成分を軸とした座標系において図形を描いたことによるものである。
【0062】
ここで、再び図3を参照して、制御部110の内部構成と機能とについて説明する。制御部110は、磁束密度の2座標軸成分の描く図形を参照情報として用いて、角度θを推定する。制御部110は、取得部112と、推定部114と、更新部116とを含む。
【0063】
取得部112は、通信インタフェース130から磁気センサ30が測定した磁束密度(または磁場)の測定値を受信し、記憶部120から参照情報を取得する。取得部112は、取得した磁気センサ30の測定値及び参照情報を推定部114に送信する。
【0064】
推定部114は、磁気センサ30によってある時点で測定される磁束密度の少なくとも一方向の成分の少なくとも1つの測定値と、第1部分11に対する第2部分12の姿勢に応じた磁気センサ30によって測定される少なくとも一方向の成分の少なくとも1つの測定値を示す参照情報とに基づいて、ある時点における第1部分11に対する第2部分12の姿勢を示す角度θを推定する。
【0065】
更新部116は、磁気センサ30により測定される磁束密度(または磁場)における複数のX成分の測定値及び複数のY成分の測定値の間のそれぞれの相関関係に基づいて、記憶部120に記憶される図形(磁束密度の各成分の測定値と、第1部分11に対して第2部分12のなす角度θとの関係を示すグラフの示す図形)の形状についての参照情報を更新する。すなわち、制御部110は、第1部分11に対する第2部分12の姿勢を示す角度を推定するだけでなく、複数の測定値の相関関係を用いて、記憶部120に記憶された参照情報を更新する。
【0066】
特に、更新部116は、磁束密度の測定値のX成分及びY成分に対して、XY座標系上で参照情報の図形の拡大または縮小、及び移動の少なくとも1つを行うことにより、X成分及びY成分の測定値のそれぞれで示される座標値上に位置合わせしてよい。更新部116は、この拡大または縮小、及び移動の少なくとも1つを行った図形に基づいて参照情報を更新してよい。
【0067】
一例として、更新部116は、図形の拡大または縮小、及び移動の少なくとも1つによる位置合わせを行って、位置合わせを行なった後の図形によって定まる相関関係に基づいて、参照情報を更新してもよい。
【0068】
別の例として、更新部116は、図形の拡大または縮小、及び移動の少なくとも1つによる位置合わせを行って、位置合わせ前の図形の形状の情報と、図形の拡大または縮小、及び移動との位置合わせに係る変換パラメータとに基づいて、参照情報を更新してもよい。変換パラメータは、位置合わせを行ったときの図形の拡大率または縮小率、及びX軸方向及びY軸方向への移動量の少なくとも1つを示す。参照情報を更新するとは、変換パラメータを更新することを含む。
【0069】
この場合には、更新部116は、測定値を元の図形に位置合わせすることで、図形の拡大または縮小、及び移動の位置合わせの変換を行ってよい。したがって、更新部116は、推定対象の磁束密度の測定値のX成分及びY成分について、変換パラメータに従って補正することで、参照情報を更新してよい。更新部116は、図形の形状と、推定対象の測定値を補正するための変換パラメータとに基づいて、参照情報を更新してもよい。これらのいずれの参照情報によっても、磁束密度のX成分及びY成分の組み合わせと、参照情報とに基づいて、推定部114は、第1部分11に対する第2部分12の角度θを推定できる。
【0070】
これにより、磁束密度のX成分の測定値及びY成分の測定値の組み合わせにより描く図形が、センサの検出誤差、外部環境の変化、またはヒステリシスの影響等を受けた場合にも次の磁気センサ30による測定に際して、推定部114がより正確に角度を推定することを可能とする。すなわち、制御部110は、装置10Aの新たな開閉動作に伴う、磁気センサ30による新たな磁束密度(または磁場)の測定に際して、より正確な角度θの推定を行うべく、記憶部120に記憶された参照情報の較正を行うことができる。
【0071】
更新部116における参照情報の更新は、装置10Aが閉状態から開状態へと至る動作(第1動作)、または装置10Aが開状態から閉状態へと至る動作(第2動作)のうちの少なくとも一方の少なくとも一部の間の、複数のX成分の測定値及び複数のY成分の測定値に基づいて行われてよい。すなわち、更新部116は、第1動作または第2動作の一部の間に測定される複数のX成分の測定値及び複数のY成分の測定値の間のそれぞれの相関関係に基づいて、角度θに対するX成分及びY成分の測定値を示す参照情報を更新してよい。
【0072】
図7は、20度ごとに測定値をヒステリシス曲線(曲線82a,84a)上にプロットした図の一例を示す。更新部116は、ヒステリシス曲線の図形が幾何学的な特徴的な形状を示す特徴点を設定し、特徴点において磁気センサ30に測定される測定値に基づいて、参照情報を更新してよい。
【0073】
推定装置100Aは、第1部分11に対する第2部分12の角度が特徴点に対応する角度θにあることを示す予め定められた条件を満たすと判断した場合に、特徴点のそれぞれに対応するX成分の測定値及びY成分に対応する測定値の相関関係に基づいて、参照情報を更新してよい。装置10Aが、慣性計測装置(IMU)を備える場合には、IMUにより測定される測定値が、第1部分11に対する第2部分12の角度が特徴点に対応する角度θに達したときの測定値の条件を満たす場合に、推定装置100Aは、予め定められた条件を満たすと判断してよい。
【0074】
あるいは、装置10Aに対してユーザが予め定められた指示を行った場合に、推定装置100Aは、予め定められた条件を満たすと判断してよい。装置10Aが第1部分11に対する第2部分12の角度が特徴点に対応する角度θに達していると判断できる予め定められた動作を実行した場合に、推定装置100Aは、予め定められた条件を満たすと判断してよい。推定装置100Aは、例えば、ディスプレイの電源がオン、またはオフしたことを検知した場合に、予め定められた条件を満たすと判断してよい。
【0075】
参照情報の更新のために使用される特徴点の数は、2点以上であればよい。例えば、推定装置100Aは、閉状態(θ=0度。第1姿勢。)に対応する特徴点と、開状態(θ=180度。第2姿勢。)に対応する特徴点との二点を用いて参照情報を較正する。このように、更新部116は、第2部分12が第1部分11に対して第1姿勢にある場合に磁気センサ30により測定されるX成分及びY成分の測定値の相関関係、または第2部分12が第1部分11に対して第2姿勢にある場合のX成分及びY成分の測定値の相関関係に基づいて参照情報を更新してよい。
【0076】
なお、この例の閉状態(θ=0度。第1姿勢。)に対応する特徴点と、開状態(θ=180度。第2姿勢。)に対応する特徴点とは、上記の通り、例えば、慣性計測装置(IMU)を用いることである程度の精度で検出できる特徴点である。IMUは、X軸、Y軸、及びZ軸に沿った軸を中心とする装置10Aの角速度、並びに装置10AのX軸、Y軸、及びZ軸方向の加速度を検出する装置である。したがって、IMUは、装置10Aが閉状態から開状態へと遷移する第1動作と、開状態から閉状態へと遷移する第2動作の切り替わりを検出できる。このようなIMUを有する装置10Aにおいては、角度θ=0度における特徴点と、角度θ=180度における特徴点とを使用してもよい。
【0077】
また、このような特徴点を少なくとも2点を用いる場合、特徴点は、X軸の成分が最大または最小となる点、及びY軸の成分が最大または最小となる点を用いてもよい。これらの2つの特徴点に対応する角度θの値は、磁石部20及び磁気センサ30の相対位置に依存する。したがって、これらの2つの特徴点は、閉状態に対応するθ=0度の点と、開状態に対応するθ=180度の点とは必ずしも一致しない。
【0078】
推定装置100Aにおける特徴点の抽出と、参照情報の更新とは、磁束密度のX成分及びY成分の描くヒステリシス曲線の図形の軌道全体について行ってもよく、軌道の一部に対して行なってもよい。例えば、推定装置100Aは、磁束密度のX成分及びY成分の描くヒステリシス曲線のうち、第1線(曲線82)と第2線(曲線84)とを別個の図形として取扱う。
【0079】
これにより、推定部114は、第1線における磁気センサ30の複数のX成分の測定値またはY成分の測定値を用いて、角度θの推定を行い、更新部116は、第1線の形状に基づいて、参照情報を更新する。同様に、推定部114は、第2線における磁気センサ30の複数のX成分の測定値またはY成分の測定値を用いて、角度θの推定を行い、更新部116は、第2線の形状に基づいて、参照情報を更新する。
【0080】
更新部116は、磁束密度の複数の成分の間の相関関係を示す図形に対して、拡大または縮小、及び移動の少なくとも1つを行うことにより、図形上の予め定められた複数の特徴点を磁気センサ30により測定されるX成分の測定値及びY成分の測定値のそれぞれで示される座標値のいずれかに位置合わせしてよい。更新部116は、この位置合わせにより得られる図形に基づいて、参照情報を更新してよい。
【0081】
このような特徴点が適切に設定される場合、本実施形態の推定装置100Aは、装置10AがIMUを有しない場合であっても、磁気センサ30の測定値に基づいて、第1部分11に対する第2部分12の姿勢を精度よく推定できる。装置10AがIMUを有しないという構成は、装置10Aにおける推定装置100Aの設置面積を低減し、製造コストを低減することにも寄与する。さらには、装置10Aは、磁気センサ30の一種類のみによる角度θを実行可能なので、装置10Aは、IMUのセンサデータと、磁気センサ30のセンサデータとの整合性を取るための構成を含まなくとも良くなる。
【0082】
図8は、磁気センサ30が検出した、第1部分11及び第2部分12の間の角度θに応じた磁束密度の別例を示す図である。本実施形態においては、磁石部20が第1部分11及び第2部分12のうちの一方に配置され、磁気センサ30が第1部分11及び第2部分12の他方に配置される点において、図1A図7の実施形態と共通する。しかし、磁石部20に対する磁気センサ30の相対位置が異なるので、角度θを横軸、磁束密度のX成分、Y成分、及びZ成分を縦軸としたグラフは、図1A図7の実施形態とは異なる値の変化の仕方と、値域とを有する。
【0083】
図9は、図8の磁石部20及び磁気センサ30の配置において、工場での較正時のデータと、出荷後測定されたデータと、出荷後測定されたデータを拡大または縮小、及び平行移動した曲線との一例を示す図である。図中、破線により工場での較正時のデータを結ぶ曲線90が示され、実線により、出荷後測定されたデータを結ぶ曲線92と、出荷後測定されたデータを拡大または縮小、及び平行移動した曲線94とが示される。
【0084】
磁気センサ30が出荷後測定されたデータを測定するに当たり、装置10Aを閉状態(θ=0度)から開状態(θ=180度)にして、装置10Aを開状態(θ=0度)から閉状態(θ=180度)にする測定を行なった。しかし、図中に示された曲線92において、実際には装置10Aは、θ=0度及びθ=180度に達しておらず、途中の角度で折り返していた場合のデータ(例えばθ=20度からθ=160度に至り、θ=160度からθ=20度に至ったデータ)が示されている。
【0085】
曲線92に対し、拡大または縮小、及び平行移動した曲線94は、工場での較正時のデータを結ぶ曲線90に対して曲率が異なるズレを生じている。特に特徴点が開状態及び閉状態を示す端点の2点を含む場合であって、端点が真の端点でなく、開閉の途中の点を誤って端点と判定した場合には、曲線92を拡大または縮小、及び平行移動しても曲線94及び曲線90を位置合わせできなくなることがある。推定部114がこのような測定値を用いて角度θを推定しても、角度θの推定値が正確でなく、更新部116がこのような測定値を用いて参照情報を更新すると、更新される参照情報も次に推定部114が推定を行うために用いる参照情報として妥当でないことがある。
【0086】
これを防ぐために、本実施形態の更新部116は、相関関係を示す図形(曲線90)を拡大または縮小、及び平行移動した図形と、測定値を結ぶ曲線92との一致度、あるいは図に示される測定値を結ぶ曲線92を拡大または縮小、及び平行移動した曲線94と、相関関係を示す図形(曲線90)との一致度に基づいて、参照情報の更新を行うか行わないかの判定を行なってよい。更新部116は、例えば、曲線と図形とを比較して、特徴点同士の距離の総和が予め定められた閾値以上(一致度が低い場合に相当)か閾値未満である(一致度が高い場合に相当)かに基づいて、更新情報を更新するか否かを判定してよい。他の例として、予め定められた一致度として、予め定められた閾値以上の距離を有する特徴点の数を用いてもよく、閾値以上の距離を有する特徴点の数が少ない場合には一致度が高く、閾値以上の距離を有する特徴点の数が多い場合には一致度が低いものと判定してもよい。
【0087】
このように、更新部116は、XY座標系上で図形を、拡大または縮小、及び移動の少なくとも1つを行うことで、例えば閉状態から開状態への第1動作または開状態から閉状態への第2動作中に磁気センサ30により測定されるX成分の測定値及びY成分の測定値に図形を位置合わせする。更新部116は、この位置合わせが予め定められた一致度以上で可能か否かを判定してよい。
【0088】
更新部116は、位置合わせが一致度以上で可能な場合には記憶部120に記憶する参照情報を更新し、位置合わせが一致度未満となる場合には記憶部120に記憶する参照情報の更新を行わないという処理を行なってよい。このように、本実施形態の更新部116は、端点の誤検出が行われている場合には、そのような測定値は外れ値であるとし参照情報を更新しない。
【0089】
したがって、推定部114は、着磁等の影響を考慮した妥当な参照情報に基づいて、正確に角度θの推定を行うことができる。結果として、推定装置100Aは、特徴点の誤抽出により角度θの推定精度が悪化することを防ぐことができる。
【0090】
図10は、装置10Aにおける第1部分11に対する第2部分12の姿勢の推定に用いる参照情報の更新手順を示すフロー図の一例を示す。更新手順は、S102~S114の各段階を備える。
【0091】
取得部112は、通信インタフェース130から磁気センサ30の測定した磁束密度(または磁場)の測定値を受信し、記憶部120から参照情報を取得する(S102)。推定部114は、取得した参照情報に基づいて、磁束密度のX成分及びY成分の組み合わせの示す相関関係の図形を特定する。さらに、推定部114は、磁気センサ30によって測定されるX成分の測定値及びY成分の測定値の組み合わせと、X成分の測定値及びY成分の測定値の組み合わせを示す相関関係とに基づいて、複数の測定値のうち、相関関係を示す図形上の特徴点に対応する測定値を特定する(S104)。
【0092】
次に、更新部116は、特徴点に対応する測定値であると特定された測定値が、相関関係を示す図形を拡大または縮小、及び平行移動した図形上の座標に位置するように図形を位置合わせする(S106)。なお、既に説明した通り、更新部116は、測定値を結ぶ曲線に拡大または縮小、及び移動の少なくとも1つを行なって、相関関係を示す図形に位置合わせし、その位置合わせしたときの拡大率または縮小率、及びX軸方向及びY軸方向の移動量を示す変換パラメータを導出してもよい。
【0093】
更新部116は、特徴点の座標値と、拡大または縮小、及び平行移動した図形との一致度を導出する(S108)。更新部116は、導出された一致度が予め定められた閾値以上であるか、閾値未満であるかを判定する(S110)。
【0094】
一致度が閾値以上である場合、更新部116は、位置合わせしたときの拡大率または縮小率、及びX軸方向及びY軸方向の移動量を示す変換パラメータに基づいて、角度θに対するX成分及びY成分の測定値を示す参照情報を更新する(S112)。すなわち、更新部116は、参照情報に示される角度θに対するX成分の測定値及びY成分の測定値をそれぞれ、拡大率または縮小率、及びX軸方向及びY軸方向の移動量に応じて更新する。一致度が閾値未満である場合、更新部116は、変換パラメータに基づいて参照情報を更新しない(S116)。
【0095】
本実施形態では、更新部116が、1つの磁気センサ30により測定されるX成分の測定値及びY成分の測定値の相関関係を用いて第1部分11に対する第2部分12の姿勢を示す角度θを推定するための参照情報を更新する例について説明した。しかし、装置10Aが、複数の磁気センサ30を備える場合には、更新部116は、複数の磁気センサ30のうちの1つの磁気センサ30により測定されるX成分の測定値と複数の磁気センサ30のうちの他の1つの磁気センサ30により測定されるX成分の測定値との相関関係を用いて第1部分11に対する第2部分12の姿勢を示す角度θを推定するための参照情報を更新してもよい。あるいは、推定部114は、複数の磁気センサ30のうちの1つの磁気センサ30により測定されるX成分の測定値と複数の磁気センサ30のうちの他の1つの磁気センサ30により測定されるY成分の測定値との相関関係を用いて第1部分11に対する第2部分12の姿勢を示す角度θを推定するための参照情報を更新してもよい。
【0096】
以上、装置10が折り畳み可能な端末である装置10Aである実施形態について説明した。以下では、装置10が、伸縮可能な端末である装置10Bである実施形態について説明する。
【0097】
図11Aから図12を参照して、装置10Bが備える構成について説明する。図11Aは、装置10Bの外観の上面図の一例を示す図であり、図11Bは、装置10Bの外観の上面図の別例を示す図である。図12は、本実施形態に係る装置10Bの機能ブロックの一例を示す図である。
【0098】
装置10Bは、伸縮可能な端末であり、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット、ノートパソコン、及び小型パソコン等の携帯端末である。図11A及び図11Bでは、装置10Bが、所謂ローラブルスマートフォンである例が示される。装置10Bは、支持部材52、可動部材54、ディスプレイ14、及び可動機構80を備える。
【0099】
装置10Bは、例えば、図11A及び図11Bに示すように、ディスプレイ14の表示画面が伸び縮みする。支持部材52及び可動部材54は、表示部を構成してよい。可動部材54は、支持部材52に対して図11Aに示す第1状態から、図11Bに示す第2状態まで、X軸の方向に沿って移動してよい。これにより、ディスプレイ14の表示画面のX方向の幅が伸び縮みする。ディスプレイ14は、例えば、可動機構80が機能することにより、Y軸に沿った回転軸を中心に巻き取り可能な有機ELディスプレイなど薄型のディスプレイでよい。支持部材52は、「第1部分」の一例であり、可動部材54は、「第2部分」の一例である。
【0100】
可動機構80は、可動部材54を支持部材52に対して移動させる駆動力を提供する駆動源を有してよい。駆動源は、静電アクチュエータ、VCM(ボイスコイルモータ)、またはピエゾアクチュエータ等のアクチュエータでよい。可動機構80は、駆動源を有さず、可動部材54は、可動機構80を介して手動で支持部材52に対して移動してもよい。
【0101】
なお、本実施形態では説明の簡単のために、装置10がヒンジ機構16または可動機構80のいずれかを有する例を示しているが、装置10はヒンジ機構16及び可動機構80の両方を有してもよい。すなわち、装置10は、例えば、スライダーヒンジ機構を用いたスマートフォンのように、折り畳み可能かつ伸縮可能な端末であってもよい。したがって、図1Aから図10を参照して説明される折り畳み可能な端末についての実施形態またはその一部は、図11A以降を参照して説明される伸縮可能な端末についての実施形態またはその一部と組み合わされてよい。以下で説明される実施形態は、支持部材52に対する可動部材54のXYZ空間内の複数の軸方向の並進移動及び回転移動に対する測定値に適用できる。
【0102】
図11Aは可動部材の可動範囲において、支持部材52に対して可動部材54が最も短縮した状態を示す。これは、可動部材54が支持部材52に対して「第1位置」にある状態の一例である。さらに、図11Bは、可動部材の可動範囲において、支持部材52に対して可動部材54が最も延伸した状態を示すものとする。これは、可動部材54が支持部材52に対して「第2位置」にある状態の一例である。
【0103】
この場合に、可動部材54を支持部材52に対して「第1位置」から「第2位置」に、すなわち、最も短縮した状態から最も延伸した状態にする動作は、「第1動作」の一例である。一方、可動部材54を支持部材52に対して「第2位置」から「第1位置」に、すなわち、最も延伸した状態から最も短縮した状態にする動作は、「第2動作」の一例である。
【0104】
図12に示されるように、装置10Bは、複数の磁気センサ60a,60b(以下では磁気センサ60として総称することがある)、及び磁石部70をさらに備える。磁気センサ60は、磁気センサ30と同様、磁気センサ60が設けられた位置における磁場を測定し、磁場に応じた測定値(例えば電圧または電流)を出力する。磁気センサ60は、ホール素子でよい。
【0105】
本実施形態では、装置10Bが、2つの磁気センサ60a,60bを備える例について説明する。しかし、装置10Bが備える磁気センサ60の数は任意であり、装置10Bは、少なくとも2つの磁気センサ60を備えればよい。装置10Bは、支持部材52に対する可動部材54の位置または姿勢を可動範囲全体にわたって推定するために必要な数の磁気センサ60を備えればよい。磁気センサ60は、X軸、Y軸、及びZ軸方向のそれぞれの磁場に応じた測定値を出力してよい。しかし、本実施形態では、説明を簡略化するために、X軸、Y軸、及びZ軸のいずれか1軸、例えば、X軸方向の磁場に応じた測定値に着目して説明する。磁気センサ60aは「第1磁気センサ」の一例であり、磁気センサ60bは「第2磁気センサ」の一例である。
【0106】
磁石部70は、複数の磁気センサ60のそれぞれに磁場を提供する。可動部材54が支持部材52に対して移動する場合、磁石部70は、可動部材54に予め定められた方向に沿ってS極及びN極が交互に配置されてよい。
【0107】
この場合、複数の磁気センサ60は、支持部材52または可動部材54のうちの一方である支持部材52に設けられてよく、磁石部70は、支持部材52または可動部材54のうちの他方である可動部材54に設けられてよい。ただし、複数の磁気センサ60及び磁石部70の何れが支持部材52または可動部材54に設けられるかは、この例には限定されず、複数の磁気センサ60が支持部材52または可動部材54の相対位置を検出できればよい。したがって、磁気センサ60が可動部材54に設けられ、磁石部70が支持部材52に設けられてもよい。
【0108】
可動部材54が、支持部材52に対して予め定められた方向に沿って移動する場合には、複数の磁気センサ60は、予め定められた方向に沿って支持部材52に設けられてよい。複数の磁気センサ60は、予め定められた方向に沿って等間隔で支持部材52に設けられてよい。
【0109】
装置10Bは、推定装置100B、及び駆動制御部150をさらに備える。推定装置100Bは、複数の磁気センサ60のそれぞれの測定値に基づいて、支持部材52に対する可動部材54の位置を推定する。駆動制御部150は、推定装置100Bにより推定された支持部材52に対する可動部材54の位置に基づいて、支持部材52に対する可動部材54の位置が目標の位置となるように、可動機構80を制御してよい。
【0110】
複数の磁気センサ60は、周囲の磁場を測定し、周囲の磁場の大きさを示す測定値を出力する。可動部材54が、支持部材52に対して移動することで、複数の磁気センサ60のそれぞれの周囲の磁場が変化する。したがって、複数の磁気センサ60のそれぞれの測定値と、支持部材52に対する可動部材54との関係が予め判明していれば、推定装置100Bは、複数の磁気センサ60のそれぞれにより測定される測定値から、支持部材52に対する可動部材54の位置を推定できる。
【0111】
次に、図13及び図14を参照して、磁気センサ60で測定した測定値から参照情報を取得して支持部材52に対する可動部材54の位置を推定する原理を説明する。図13は、可動部材54が支持部材52に対して予め定められた方向に沿って移動する場合における支持部材52に対する可動部材54のX座標系における位置と、2つの磁気センサ60a,60bのそれぞれの測定値との関係の一例を示す。
【0112】
磁気センサ60a及び磁気センサ60bの描く曲線は、次式で与えられるフィット関数を満たす。
【数1】
フィット関数は、支持部材52に対する可動部材54のX座標系における位置に応じた磁気センサ60aまたは磁気センサ60bにより測定されるX成分の測定値の変化を示す予め定められた関数である。フィット関数の式中、xは、X方向の位置を示し、
【数2】
は、X方向の各センサの磁束密度の測定値のピークの位置を示し、Aはピークの高さを示す。なお、
【数2】
は、既知または測定値から読み取り可能なパラメータとなる。変数σは、ピークの幅を示す特定の係数であり、着磁の影響により変動し、位置xの決定に影響を与えることになるパラメータとなる。
【0113】
したがって、変数σを調整することにより、磁気センサ60a,60bが反応する区間において、推定装置100は、磁気センサ60a,60bの測定値から支持部材52に対する可動部材54の位置を推定できる。
【0114】
図14は、磁気センサ60aによる磁束密度のX成分の測定値と、磁気センサ60bによる磁束密度のX成分の測定値とを座標系の横軸及び縦軸として、それらの組み合わせの関係の一例を示す図である。
【0115】
この相関関係は、駆動制御部150が可動機構80を駆動して、可動部材54を支持部材52に対して、X方向に非等速に移動した場合、駆動方向がX方向からズレを生じた場合、または磁石部70及び磁気センサ60が外部環境の磁場等により着磁の影響を受けた場合等にも幾何学的特徴が変化しない。変数σが変動すると、この組み合わせの関係を示す曲線が、シフトする。
【0116】
曲線95aは、変数σが基準となる変数σの場合の磁気センサ60aによる磁束密度のX成分の測定値と磁気センサ60bによる磁束密度のX成分の測定値との組合せの関係を示す。曲線95aは、例えば、工場出荷前に測定された測定値の組合せの関係を示す。
【0117】
図中、X方向の位置における3つの測定値96a,96b,96cが示される。測定値96a,96b,96cは、工場出荷後の磁気センサ60aによる磁束密度のX成分の測定値と磁気センサ60bによる磁束密度のX成分の測定値との組合せの関係を示す。曲線95bは、測定値96a,96b,96cを通るように曲線95aをシフトした曲線を示す。曲線95aから曲線95bにシフトするシフト量は、変数σの変化量に相当する。したがって、更新部116は、シフト量に応じて予め定められた係数を基準の変数σに乗じることで、変数σを更新してよい。
【0118】
記憶部120は、値の異なる変数σごとに、曲線95a及び曲線95bのような磁気センサ60aによる磁束密度のX成分の測定値と磁気センサ60bによる磁束密度のX成分の測定値との組合せの関係を記憶してよい。この場合、更新部116は、工場出荷後の磁気センサ60aによる磁束密度のX成分の複数の測定値と磁気センサ60bによる磁束密度のX成分の複数の測定値との組合せの関係に最も一致度が高い組合せの関係を記憶部120に記憶された組合せの関係の中から特定し、特定された組合せの関係に対応する変数σに現在の変数σを置き換えることで、変数σを更新してよい。
【0119】
したがって、推定装置100Bは、磁気センサ60a,60bの幾つかの測定値を用いて、相関関係の曲線のシフト位置を特定することにより、あるいは、相関関係の座標値を示した表の数値を特定のスケールで乗算するための係数を特定することにより、変数σの値を特定できる。あるいは、推定装置100Bは、変数σの大きさごとに予め定められた組合せの関係の中から、磁気センサ60a,60bの幾つかの測定値と合致する組合せの関係を特定することで、変数σの値を特定できる。推定装置100Bは、特定されたσに基づいて、フィット関数を調整して、調整されたフィット関数に従って、磁気センサ60a,60bが反応する区間において、支持部材52に対する可動部材54のX方向の位置を推定できる。
【0120】
これらのX方向における式1のフィット関数と、フィット関数における磁気センサ60a,60bの測定値のX成分の組み合わせとが、参照情報となる。推定装置100Bは、着磁の影響を受けない複数の磁気センサ60a,60bの組み合わせの関係に対して、磁気センサ60a,60bに測定される磁束密度のX成分の測定値の相関関係に基づいて、フィット関数における係数である変数σの値を更新する。これにより、推定装置100Bは、更新後の変数σで調整されたフィット関数に従って、複数の磁気センサ60a,60bの反応する区間における支持部材52に対する可動部材54のX方向の位置を精度よく推定できる。
【0121】
再び図12を参照して、推定装置100Bの機能及び構成を説明する。推定装置100Bは、通信インタフェース130と、記憶部120と、取得部102と、推定部104と、更新部106とを含む。
【0122】
通信インタフェース130は、複数の磁気センサ60と信号線を介して通信し、複数の磁気センサ60が測定する磁束密度の測定値を受信する。通信インタフェース130は、複数の磁気センサ60が測定する磁束密度のXYZ座標系における各成分を受信してよい。
【0123】
記憶部120は、磁気センサ60a,60bを含む複数の磁気センサ60における測定値から可動部材54の支持部材52に対する位置を推定するための参照情報を記憶する。具体的には、参照情報は、複数の磁気センサ60の相互が満たすフィット関数を含む。
【0124】
取得部102は、通信インタフェース130から複数の磁気センサ60の測定した磁束密度(または磁場)の測定値を受信し、記憶部120から参照情報を取得する。取得部102は、取得した複数の磁気センサ60の測定値及び参照情報を推定部104に送信する。
【0125】
推定部104は、複数の磁気センサ60によって測定されるX成分の測定値の組み合わせと、複数の磁気センサ60によって測定されるX成分の測定値の組み合わせを示す参照情報とに基づいて、支持部材52(第1部分11)に対する可動部材54(第2部分12)のX方向の位置を推定する。既に述べた通り、本実施形態において、参照情報は、式1のフィット関数と、フィット関数における磁気センサ60a,60bの測定値のX成分の組み合わせとであってよい。
【0126】
更新部106は、磁気センサ60により測定される磁束密度(または磁場)において、磁気センサ60aにより測定される複数のX成分の測定値及び磁気センサ60bにより測定される複数のX成分の測定値の間のそれぞれの相関関係に基づいて、記憶部120に記憶される変数σに応じたフィット関数で表される参照情報を更新する。更新部106は、磁気センサ60に対する予め定められたフィット関数に現れる係数である変数σを調整することで、参照情報を更新してよい。
【0127】
ここで、更新部106は、第1動作及び第2動作の少なくとも一方の少なくとも一部の間に、磁気センサ60aにより測定される複数のX成分の測定値と磁気センサ60bにより測定される複数のX成分の測定値との相関関係に基づいて、変数σに応じたフィット関数で表される参照情報を更新してよい。例えば、更新部106は、第1動作または第2動作の一部の間に、磁気センサ60aにより測定される複数のX成分の測定値と磁気センサ60bにより測定される複数のX成分の測定値との相関関係に基づいて、変数σに応じたフィット関数で表される参照情報を更新してよい。更新部106は、第1動作と第2動作との折り返し部分の間に、磁気センサ60aにより測定される複数のX成分の測定値と磁気センサ60bにより測定される複数のX成分の測定値との相関関係に基づいて、変数σに応じたフィット関数で表される参照情報を更新してよい。また、更新部106は、可動部材54が支持部材52に対して第1位置にある場合に、磁気センサ60aにより測定されるX成分の測定値と磁気センサ60bにより測定されるX成分の測定値との相関関係と、可動部材54が支持部材52に対して第2位置にある場合に、磁気センサ60aにより測定されるX成分の測定値と磁気センサ60bにより測定されるX成分の測定値との相関関係とに基づいて、変数σに応じたフィット関数で表される参照情報を更新してよい。
【0128】
図15は、装置10Bにおける支持部材52(第1部分11)に対する可動部材54(第2部分12)の位置の推定に用いる参照情報の更新手順を示すフロー図の一例を示す。更新手順は、S202~S206の各段階を備える。
【0129】
取得部102は、通信インタフェース130から複数の磁気センサ60の測定した磁束密度(または磁場)の測定値を受信する(S202)。更新部106は、測定値の組み合わせの相関関係を示す基準の曲線(例えば、図14の曲線95a)を複数の磁気センサ60の測定した磁束密度の測定値(例えば測定値96a,96b,96c)に合うようにシフトし、そのシフト量を特定する。さらに、更新部106は、シフト量に応じて予め定められた係数を基準の変数σに乗じることで、フィット関数の係数である変数σを特定する(S204)。または、更新部106は、複数の磁気センサ60の測定した磁束密度の測定値の組合せの関係に最も一致度が高い組合せの関係を記憶部120に記憶された組合せの関係の中から特定し、特定された組合せの関係に対応する変数σに現在の変数σを置き換えることで、フィット関数の係数である変数σを特定してよい。更新部106は、フィット関数の係数である変数σを調整して、参照情報を更新する(S206)。
【0130】
これにより、複数の磁気センサ60a,60bを用いて、IMU等を用いずに安価で外部磁場の影響等に対して較正可能な支持部材52に対する可動部材54の精確な位置の推定方法を提供できる。
【0131】
本実施形態では、更新部106が、磁気センサ60a,60bにより測定されたそれぞれの磁場のX成分の測定値の相関関係を用いて、支持部材52に対する可動部材54の位置の、複数の磁気センサ60a,60bによる測定値の参照情報を更新する例について説明した。しかし、更新部106は、複数の磁気センサ60a,60bにより測定された磁場の異なる軸方向の測定値の相関関係を用いて、支持部材52に対する可動部材54の位置を推定するための参照情報を更新してもよい。例えば、更新部106は、磁気センサ60aにより測定された磁場のX成分の測定値と磁気センサ60bにより測定された磁場のY成分の測定値との相関関係を用いて支持部材52に対する可動部材54の位置を推定するための参照情報を更新してもよい。更新部106は、1つの磁気センサ60aにより測定される磁場のX成分の測定値とY成分の測定値との相関関係を用いて支持部材52に対する可動部材54の位置を推定するための参照情報を更新してもよい。
【0132】
装置10Bは、支持部材52に対する可動部材54の複数の並進移動の軸に対してそれぞれ複数の磁気センサ60を含んでよい。例えば、複数のスライド機構を組み合わせることにより、装置10が、支持部材52に対して、可動部材54を引き出した後に、支持部材52に対して、可動部材54を重ねたり平面的な位置関係に配置したりする関係を変えることができる装置であることがある。装置10Bに、複数の磁気センサ60を設けることで、推定部104は、支持部材52に対する可動部材54のXYZ空間内の並進移動についての正確な位置の推定をし易くなる。
【0133】
図16は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化してよいコンピュータ1200の一例を示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられるオペレーションまたは当該装置の1または複数の「部」として機能させることができる。または、当該プログラムは、コンピュータ1200に当該オペレーションまたは当該1または複数の「部」を実行させることができる。当該プログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつかまたは全てに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。
【0134】
本実施形態によるコンピュータ1200は、CPU1212、及びRAM1214を含み、それらはホストコントローラ1210によって相互に接続されている。コンピュータ1200はまた、通信インタフェース1222、入力/出力ユニットを含み、それらは入力/出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続されている。コンピュータ1200はまた、ROM1230を含む。CPU1212は、ROM1230及びRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。
【0135】
通信インタフェース1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブが、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラム及びデータを格納してよい。ROM1230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、及び/またはコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。プログラムが、CR-ROM、USBメモリまたはICカードのようなコンピュータ可読記憶媒体またはネットワークを介して提供される。プログラムは、コンピュータ可読記憶媒体の例でもあるRAM1214、またはROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーションまたは処理を実現することによって構成されてよい。
【0136】
例えば、通信がコンピュータ1200及び外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、またはUSBメモリのような媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信した受信データを記憶媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0137】
また、CPU1212は、USBメモリ等のような外部記憶媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記憶媒体にライトバックしてよい。
【0138】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような様々なタイプの情報が記憶媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記憶媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記憶媒体内に格納される場合、CPU1212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0139】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ1200上またはコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記憶媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ1200に提供する。
【0140】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよい。その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0141】
コンピュータ可読命令は、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。ソースコードまたはオブジェクトコードは、従来の手続型プログラミング言語を含む。従来の手続型プログラミング言語は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語でよい。コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供されてよい。プロセッサまたはプログラマブル回路は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0142】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0143】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0144】
10 装置
11 第1部分
12 第2部分
14 ディスプレイ
16 ヒンジ機構
18 回転軸
20,70 磁石部
30,60 磁気センサ
52 支持部材
54 可動部材
80 可動機構
82,84,90,92,94,95 曲線
96 測定値
100 推定装置
102,112 取得部
104,114 推定部
106,116 更新部
110 制御部
120 記憶部
130,1222 通信インタフェース
150 駆動制御部
1200 コンピュータ
1210 ホストコントローラ
1212 CPU
1214 RAM
1220 入力/出力コントローラ
1230 ROM
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
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