(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142086
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】シリカゾルの製造方法、研磨組成物の製造方法、研磨方法、半導体ウェハの製造方法及び半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/152 20060101AFI20241003BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20241003BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C01B33/152 B
B24B37/00 H
H01L21/304 622B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054079
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】奈木野 勇生
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 裕太
【テーマコード(参考)】
3C158
4G072
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AC04
3C158CB01
3C158CB10
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4G072AA28
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4G072UU01
5F057AA28
5F057BA15
5F057CA12
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA07
(57)【要約】
【課題】シリカ粒子の表面シラノール基濃度を精密に制御し得るシリカゾルの製造方法を提供すること。
【解決手段】反応槽にて、分散媒としてアルコール及び水を含むシリカ分散液中の前記分散媒を除去または置換する工程(1)を含み、前記工程(1)において、前記分散媒が除去または置換されたシリカ分散液中の前記アルコールと前記水との比率が6:94から0:100に到達するまでの間の、前記反応槽内の前記分散媒が除去または置換されたシリカ分散液の重量に対する前記アルコールの除去速度が150g/h/kg未満である、シリカゾルの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽にて、分散媒としてアルコール及び水を含むシリカ分散液中の前記分散媒を除去または置換する工程(1)を含み、
前記工程(1)において、前記分散媒が除去または置換されたシリカ分散液中の前記アルコールと前記水との比率が6:94から0:100に到達するまでの間の、前記反応槽内の前記分散媒が除去または置換されたシリカ分散液の重量に対する前記アルコールの除去速度が150g/h/kg未満である、シリカゾルの製造方法。
【請求項2】
前記シリカ分散液が、テトラアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応により得られたものである、請求項1に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項3】
前記テトラアルコキシシランがテトラメトキシシランを含む、請求項2に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項4】
前記分散媒の置換が、前記アルコールを含む分散媒を除去し、水を添加する置換である、請求項1に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項5】
前記分散媒の除去が、前記アルコールを含む分散媒の除去である、請求項1に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項6】
前記アルコールがメタノールを含む、請求項1に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の製造方法で得られたシリカゾルを添加して研磨組成物を製造する、研磨組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の製造方法で得られたシリカゾルを含む研磨組成物を用いて研磨する工程を含む、研磨方法。
【請求項9】
請求項8に記載の研磨方法を含む、半導体ウェハの製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の研磨方法を含む、半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカゾルの製造方法、研磨組成物の製造方法、研磨方法、半導体ウェハの製造方法及び半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属や無機化合物等の材料の表面を研磨する方法として、研磨液を用いた研磨方法が知られている。中でも、半導体用のプライムシリコンウェハやこれらの再生シリコンウェハの最終仕上げ研磨、及び、半導体デバイス製造時の層間絶縁膜の平坦化、金属プラグの形成、埋め込み配線形成等の化学的機械的研磨(CMP)では、その表面状態が半導体特性に大きく影響するため、これらの部品の表面や端面は、極めて高精度に研磨されることが要求されている。
【0003】
このような精密研磨においては、シリカゾルを含む研磨組成物が採用されており、その主成分である砥粒として、コロイダルシリカが広く用いられている。コロイダルシリカは、その製造方法の違いにより、四塩化珪素の熱分解によるもの(ヒュームドシリカ等)、水ガラス等の珪酸アルカリの脱イオンによるもの、アルコキシシランの加水分解反応によるもの(一般に「ゾルゲル法」と称される)等が知られている。一般的にコロイダルシリカは水を分散媒として利用されることが多い。
【0004】
コロイダルシリカは、その物性が研磨液としての性能に影響することが知られており、多くの検討がなされてきた。中でも、コロイダルシリカの粒子表面シラノール基の研磨性能へ及ぼす影響については、シリコンウェハの研磨のみならず、半導体デバイス製造時の化学的機械的研磨においても、多くの検討がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応によるシリカゾルを製造する方法が開示されている。また、特許文献2には、シリカ粒子の表面シラノール基濃度がコバルト膜の研磨性能に影響があることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/015943号
【特許文献2】特開2018-107293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シリカ粒子の表面シラノール基濃度は、研磨に用いる際の研磨性能に大きく影響を与えることが知られている。一方で、シリカ粒子の表面シラノール基濃度の精密な制御は困難であるという課題が存在する。
【0008】
特許文献1に開示されているシリカゾルの製造方法では、シリカ粒子の表面シラノール基濃度について何ら言及されていない。また、特許文献2には、シリカ粒子の表面シラノール基濃度が研磨性能に影響があることが開示されているものの、その精密な制御の仕方については開示されていない。このように、従来のシリカゾルやシリカ粒子の製造方法では、シリカ粒子の表面シラノール基濃度を十分に制御できているとは言えず、シリカ粒子の表面シラノール基濃度を精密に制御することが強く望まれている。
【0009】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、本発明は、シリカ粒子の表面シラノール基濃度を精密に制御し得るシリカゾルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、シリカ分散液の溶媒を水に置換する工程における、分散媒の留出速度を適切に設定することで、シリカ粒子の表面シラノール基濃度を制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]反応槽にて、分散媒としてアルコール及び水を含むシリカ分散液中の前記分散媒を除去または置換する工程(1)を含み、
前記工程(1)において、前記分散媒が除去または置換されたシリカ分散液中の前記アルコールと前記水との比率が6:94から0:100に到達するまでの間の、前記反応槽内の前記分散媒が除去または置換されたシリカ分散液の重量に対する前記アルコールの除去速度が150g/h/kg未満である、シリカゾルの製造方法。
[2]前記シリカ分散液が、テトラアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応により得られたものである、[1]に記載のシリカゾルの製造方法。
[3]前記テトラアルコキシシランがテトラメトキシシランを含む、[2]に記載のシリカゾルの製造方法。
[4]前記分散媒の置換が、前記アルコールを含む分散媒を除去し、水を添加する置換である、[1]~[3]のいずれか1に記載のシリカゾルの製造方法。
[5]前記分散媒の除去が、前記アルコールを含む分散媒の除去である、[1]~[3]のいずれか1に記載のシリカゾルの製造方法。
[6]前記アルコールがメタノールを含む、[1]~[5]のいずれか1に記載のシリカゾルの製造方法。
[7][1]~[6]のいずれか1に記載の製造方法で得られたシリカゾルを添加して研磨組成物を製造する、研磨組成物の製造方法。
[8][1]~[6]のいずれか1に記載の製造方法で得られたシリカゾルを含む研磨組成物を用いて研磨する工程を含む、研磨方法。
[9][8]に記載の研磨方法を含む、半導体ウェハの製造方法。
[10][8]に記載の研磨方法を含む、半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本実施形態に係るシリカゾルの製造方法によれば、シリカ分散液から分散媒を留出させる速度を特定範囲とすることで、分散媒の除去または置換中にシリカ粒子表面のシラノール基濃度を低減でき、シリカ粒子の表面シラノール基濃度を精密に制御し得る。そのため、得られたシリカゾルを研磨剤とする研磨組成物は、極めて高精度の研磨が要求される半導体ウェハや半導体デバイスの研磨においても非常に良好な研磨性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について詳述するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施できる。尚、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いる。
【0014】
本明細書において、「シリカ分散液」とは、シリカ粒子が分散した液をいう。シリカ分散液は、工程(0)において後述するように、例えば、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させることにより得られる。
【0015】
<シリカゾルの製造方法>
本実施形態に係るシリカゾルの製造方法は、下記工程(1)を含むことを特徴とする。
(1)反応槽にて、分散媒としてアルコール及び水を含むシリカ分散液中の前記分散媒を除去または置換する工程
【0016】
本実施形態に係るシリカゾルの製造方法は、工程(1)の前に、下記工程(0)をさらに含むことが好ましい。
工程(0):テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させてシリカ分散液を得る工程
【0017】
本実施形態に係るシリカゾルの製造方法は、工程(1)の前及び後の少なくとも一方に、下記工程(2-1)及び工程(2-2)の少なくとも一方をさらに含んでもよい。
工程(2-1):前記分散媒を除去若しくは置換する前または後の前記シリカ分散液に分散剤を添加する工程
工程(2-2):前記分散媒を除去若しくは置換する前または後の前記シリカ分散液を濃縮する工程
以下、各工程について説明する。
【0018】
<<工程(1)>>
工程(1)は、反応槽にて、分散媒としてアルコール及び水を含むシリカ分散液中の前記分散媒を除去または置換する工程である。工程(1)では、分散媒が除去または置換されたシリカ分散液中のアルコールと水との比率が6:94から0:100に到達するまでの間の、反応槽内の分散媒が除去または置換されたシリカ分散液の重量に対するアルコールの除去速度を150g/h/kg未満とする。
【0019】
本明細書において、「シリカ分散液」とは、シリカ粒子が分散した液をいう。シリカ分散液は、工程(0)において後述するように、例えば、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させることにより得られる。
【0020】
シリカ分散液における分散媒、すなわち除去または置換される分散媒は、アルコールを含む液体であることが好ましい。これは、例えば、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させてシリカ分散液を得る場合に、アルコールを溶媒等に用いることに因るものである。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。
【0021】
シリカ分散液における分散媒と置換する別の分散媒は、水が好ましい。これは、水はアルコールに比べて沸点が高いために置換しやすく、また、得られるシリカゾルの分散媒を水とすることで、シリカ粒子の分散性が向上するためである。また、得られるシリカゾルの分散媒を水とすることで、半導体ウェハ又は半導体デバイスの製造に使われる研磨液として有効に使用することができるためである。
【0022】
シリカ分散液における分散媒(置換される分散媒)がアルコールを含む液体であり、これを別の分散媒として水に置換する場合、アルコールを含む液体の除去と水の添加とを行う他、シリカ分散液が、アルコールに加えてアルカリ触媒を含む場合であっても、水と置換することで、アルコールと共にアルカリ触媒も除去できる。
【0023】
すなわち、シリカ分散液の分散媒の除去は、アルコールを含む分散媒の除去を含むことが好ましく、アルコール及びアルカリ触媒の除去を含むことがより好ましい。シリカ分散液の分散媒の置換は、アルコールを含む分散媒を除去し、水を添加することを含むことが好ましく、アルコール及びアルカリ触媒を除去し、水を添加することを含むことがより好ましい。
【0024】
工程(1)において、分散媒が除去または置換されたシリカ分散液中のアルコールと水との比率が6:94から0:100に到達するまでの間の、反応槽内の分散媒が除去または置換されたシリカ分散液の重量に対するアルコールの除去速度は150g/h/kg未満とする。当該除去速度を150g/h/kg未満とすることで、分散媒の留出速度を遅くして分散媒の除去または置換中にシリカ粒子表面のシラノール基濃度を低減でき、シリカ粒子の表面シラノール基濃度を精密に制御できる。
【0025】
前記除去速度は、150g/h/kg未満、好ましくは130g/h/kg以下、より好ましくは100g/h/kg以下、特に好ましくは70g/h/kg以下である。当該除去速度の下限は特に制限されないが、除去効率の観点から、好ましくは10g/h/kg以上である。
【0026】
前記除去または置換はジャケット部を有する容器で行うことがシリカ分散液を簡便に加熱できる点から好ましい。ジャケット部とは、温度調整を可能とするための2層構造となる部分を意味し、通常は内槽の外側に設けられる。ジャケット部の2層構造の空洞部分には蒸気、水、油等を入れて温度管理を行うことができる。
【0027】
ジャケット部の空洞部分に液体を入れる場合には、その液面が、内槽となる容器の内部におけるシリカ分散液よりも低い位置として、除去や置換を行うことが、槽の壁面、シリカ粒子の分散液及び気相部の三相界面におけるシリカ粒子の凝集を抑制できる点から好ましい。
【0028】
前記除去速度は、熱媒の温度を適宜調整することにより調整し得る。熱媒の温度を調整する方法としては、例えば、熱媒を循環恒温装置により加熱冷却する方法、熱媒をボイラーにより加熱する方法、熱媒の流量を調整する方法が挙げられる。
【0029】
シリカ分散液における分散媒を除去または置換する際の加熱温度は、シリカ分散液の分散媒の沸点とすればよく、アルコールを含む液体である場合には、例えば50℃~100℃が好ましい。
【0030】
単位時間あたりに留去する分散媒の体積と添加する水の体積との比は4:6~6:4になるように維持することが好ましく、4:6~5.5:4.5、又は、4.5:5.5~6:4になるように維持することがより好ましく、4.5:5.5~5.5:4.5になるように維持することがさらに好ましい。当該比が前記範囲内であると、得られるシリカゾルの粘度のばらつきやシリカ粒子の凝集を抑制できる。
【0031】
シリカ分散液における分散媒の除去または置換は大気圧下で行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。減圧にする場合、分散媒の沸点を低くして置換される分散媒の除去速度を向上できる。
【0032】
<<工程(0)>>
工程(0)は、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させてシリカ分散液を得る工程であり、上記工程(1)の前に行うことが好ましい。
【0033】
工程(0)は、例えば、テトラアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応を、アルカリ触媒を含む溶液(A)に、テトラアルコキシシランを含む溶液(B)及び水を含む溶液(C)を添加して行うことができる。
【0034】
溶液(A)は、アルカリ触媒を含む。溶液(A)中のアルカリ触媒としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチル水酸化アンモニウム等が挙げられる。これらのアルカリ触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルカリ触媒の中でも、触媒作用に優れ、粒子形状を制御しやすく、金属の混入を抑制することができ、揮発性が高く加水分解反応及び縮合反応後の除去性に優れることから、アンモニアが好ましい。
【0035】
また、溶液(A)は、アルコールを含むことが好ましい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。これらのアルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルコールの中でも、テトラアルコキシシランを溶解しやすく、加水分解反応及び縮合反応で用いるものと副生するものとが同一で、製造上の利便性に優れることから、メタノール、エタノールがより好ましく、メタノールが更に好ましい。
【0036】
溶液(A)は、アルコキシシランの加水分解を促進させることができることから、水を含むことが好ましい。また、溶液(A)は、アルコール、水以外の溶媒を含むことができる。
【0037】
溶液(A)中のアルカリ触媒の濃度は、溶液(A)100質量%中、0.5質量%以上が、シリカ粒子の凝集を抑制し、シリカゾル中のシリカ粒子の分散安定性に優れるため好ましく、0.6質量%以上がより好ましい。また、反応制御性の観点から、アルカリ触媒の濃度は2.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましい。
【0038】
溶液(A)中のアルコールの濃度は、溶液(A)100質量%中、10質量%以上が、シリカ粒子の粒径制御性及び反応液中でのテトラアルコキシシランの分散性に優れるため好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。また、加水分解反応で生成するケイ酸の反応液中での分散性に優れるため、アルコールの濃度は96質量%以下が好ましく、94質量%以下がより好ましい。
【0039】
溶液(A)中の水の濃度は、溶液(A)100質量%中、3質量%以上が、加水分解反応で生成するケイ酸の反応液中での分散性に優れるため好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、反応液中でのテトラアルコキシシランの分散性に優れるため、水の濃度は90質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0040】
溶液(A)中のアルコール、水以外の溶媒の濃度は、アルカリ触媒とアルコールと水の残部の濃度とすることが好ましい。
【0041】
溶液(B)は、テトラアルコキシシランを含む。テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が挙げられる。これらのテトラアルコキシシランは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのテトラアルコキシシランの中でも、加水分解反応が早く、未反応物が残留しづらく、生産性に優れ、安定なシリカゾルを容易に得ることができることから、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましく、テトラメトキシシランがより好ましい。
【0042】
溶液(B)は、反応液中でのテトラアルコキシシランの分散性に優れることから、溶媒を含むことが好ましい。溶液(B)中の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの溶媒の中でも、加水分解反応及び縮合反応で用いるものと副生するものとが同一で、製造上の利便性に優れることから、アルコールが好ましく、メタノール、エタノールがより好ましく、メタノールが更に好ましい。
【0043】
溶液(B)中のテトラアルコキシシランの濃度は、溶液(B)100質量%中、76質量%以上が、用いる溶媒の量を低減することができ、シリカ粒子の生産性に優れるため好ましく、77質量%以上がより好ましい。また、反応液中でのテトラアルコキシシランの分散性に優れるため、テトラアルコキシシランの濃度は、89質量%以下が好ましく、88質量%以下がより好ましい。
【0044】
溶液(B)中の溶媒の濃度は、溶液(B)100質量%中、11質量%以上が、反応液中でのテトラアルコキシシランの分散性に優れるため好ましく、12質量%以上がより好ましい。また、用いる溶媒の量を低減することができ、シリカ粒子の生産性に優れるため、溶媒の濃度は24質量%以下が好ましく、23質量%以下がより好ましい。また、溶液(B)中の溶媒の濃度は、溶液(B)のテトラアルコキシシランの残部の濃度であることが好ましい。
【0045】
溶液(C)は、水を含む溶液であり、更にアルカリ触媒を含むことが好ましい。溶液(C)中のアルカリ触媒としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチル水酸化アンモニウム等が挙げられる。これらのアルカリ触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルカリ触媒の中でも、触媒作用に優れ、粒子形状を制御しやすく、金属の混入を抑制することができ、揮発性が高く加水分解反応及び縮合反応後の除去性に優れることから、アンモニアが好ましい。
【0046】
溶液(C)は、水以外の溶媒を含んでもよい。溶液(C)中の水以外の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
溶液(C)中のアルカリ触媒の濃度は、溶液(C)100質量%中、0質量%、すなわち含まなくてもよいが、含む場合には1質量%以上が好ましく、また、反応が過度に速く進行せず、反応制御性に優れるため、5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましい。
【0048】
溶液(C)中の水の濃度は、溶液(C)100質量%中、95質量%以上が、加水分解反応で生成するケイ酸の反応液中での分散性に優れるため好ましく、96質量%以上がより好ましい。また、水の濃度は100質量%、すなわち、溶液(C)は水のみから構成されていてもよいが、他の成分を含む場合には、99質量%以下が好ましい。
【0049】
溶液(C)中の水以外の溶媒の濃度は、水とアルカリ触媒の残部の濃度とすることが好ましい。
【0050】
加水分解反応及び縮合反応の反応系内の反応液に対する水の濃度は、反応中に大きく変化しないようにすることが好ましい。これは、工程(1)を通して水の濃度が変化すると、中間生成物であるケイ酸の反応液中での分散性が変わり、アルコール生成の安定性が損なわれるためである。水の濃度の変化率は、75%以下とすることが好ましく、50%以下とすることがより好ましい。
【0051】
反応系内の水の濃度とは、加水分解反応及び縮合反応における反応系内の液体及び液体に溶解した物質の総量中の水の総量をいう。反応系内の液体及び液体に溶解した物質の総量は、反応開始時は溶液(A)のみとなり、反応中は溶液(A)、溶液(B)、溶液(C)及び反応で生成したアルコールの総量となる。反応系内の液体及び液体に溶解した物質に、液体に分散しているシリカ粒子は含まない。
【0052】
加水分解反応及び縮合反応の反応系内のアルカリ触媒の濃度は、反応系内の反応液100質量%中、0.5質量%以上に維持することが、シリカ粒子の凝集を抑制し、シリカゾル中のシリカ粒子の分散安定性に優れるため好ましく、0.6質量%以上に維持することがより好ましい。また、反応が過度に速く進行せず、反応制御性に優れるため、2.0質量%以下に維持することが好ましく、1.5質量%以下に維持することがより好ましい。
【0053】
反応系内のアルカリ触媒の濃度とは、加水分解反応及び縮合反応における反応系内の液体及び液体に溶解した物質の総量中のアルカリ触媒の総量をいう。
【0054】
テトラアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応の反応温度、すなわち、反応系内の反応液の温度は、反応が過度に遅く進行せず、制御性に優れる観点から15℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましい。また、加水分解反応速度と縮合反応速度のバランスに優れる観点から、温度は50℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。
【0055】
本工程(0)において得られるシリカ粒子の分散液にアルコールが含まれる場合、上記工程(1)において置換されるシリカ分散液における分散媒(置換される分散媒)も、アルコールを含む液体となることとなる。
【0056】
<<工程(2-1)>>
工程(2-1)は、上記工程(1)において分散媒を除去若しくは置換する前または後のシリカ分散液に分散剤を添加する工程であり、上記工程(1)の前及び後の少なくとも一方に行うことが好ましい。分散剤を添加することにより、得られるシリカゾルにおけるシリカ粒子の凝集を抑制できる。
【0057】
分散剤としては、例えば、無機酸、無機酸塩、有機酸、有機酸塩、界面活性剤等が挙げられる。これらの分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの分散剤の中でも、高温でも分解しにくく、揮発性が低く、コロイダルシリカの凝集・沈降の抑制を維持することができることから、有機酸、有機酸塩が好ましく、分解温度及び沸点が共に60℃以上である有機酸、有機酸塩がより好ましく、クエン酸、安息香酸、安息香酸アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、クエン酸テトラメチルアンモニウムが更に好ましい。
【0058】
無機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、アルキルリン酸エステル、ホウ酸、ピロリン酸、ホウフッ酸、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。これらの無機酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの無機酸の中でも、硫酸、硝酸が好ましい。
【0059】
無機酸塩としては、例えば、硫酸アンモニウム、塩酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、ホウ酸アンモニウム八水和物等が挙げられる。これらの無機酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの無機酸塩の中でも、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムが好ましい。
【0060】
有機酸としては、例えば、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コハク酸、マロン酸、フマル酸、フタル酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコ-ル酸、サリチル酸、グリセリン酸、乳酸等が挙げられる。これらの有機酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの有機酸の中でも、クエン酸、安息香酸が好ましい。
【0061】
有機酸塩としては、例えば、安息香酸アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、シュウ酸アンモニウム一水和物、ギ酸アンモニウム、サリチル酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、クエン酸テトラメチルアンモニウム等が挙げられる。これらの有機酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの有機酸塩の中でも、安息香酸アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、クエン酸テトラメチルアンモニウムが好ましい。
【0062】
分散剤の添加量は、シリカ粒子に対して10質量ppm以上が好ましく、30質量ppm以上がより好ましく、また、3000質量ppm以下が好ましく、1200質量ppm以下がより好ましい。また、シリカゾルにおけるシリカ粒子が凝集しないように、pHが6.9未満にならない範囲で分散剤を添加することが好ましい。
【0063】
<<工程(2-2)>>
工程(2-2)は、上記工程(1)において分散媒を除去若しくは置換する前または後のシリカ分散液を濃縮する工程であり、工程(1)の前と、工程(1)の後の少なくとも一方で行うことが好ましい。
【0064】
また、工程(1)の後に工程(2-1)の分散剤を添加する工程を行った場合にはその後に工程(2-2)を行うことも好ましい。工程(2-2)は一度のみ行ってもよいし、工程(1)の前後に複数回行ってもよい。
【0065】
シリカ分散液を濃縮する方法としては、例えば、加熱濃縮、減圧濃縮等が挙げられる。
【0066】
工程(2-2)における濃縮率は、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れる観点から、101質量%以上が好ましく、102質量%以上が好ましい。また、シリカ粒子の凝集や微粒子の発生を抑制する観点から、濃縮率は300質量%以下が好ましく、200質量%以下がより好ましい。
【0067】
濃縮率は下記式によって求めることができる。
濃縮率(質量%)=(α/β)×100
上記式中、αは濃縮前のシリカ分散液の質量を意味し、βは濃縮後のシリカ分散液の質量を意味する。
【0068】
<シリカゾル>
本実施形態に係るシリカゾルの製造方法によって得られるシリカゾル(以下、「本実施形態に係るシリカゾル」、又は、単に「シリカゾル」と称することがある。)の粘度は、取り扱い性の観点から30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましく、15mPa・s以下がさらに好ましい。また、粘度の下限は特に限定されないが、通常2mPa・s以上である。本実施形態におけるシリカゾルの粘度とは、25℃、ずり速度150/秒の条件で、E型粘度計にて測定される値である。
【0069】
シリカゾル中のシリカ粒子の濃度は、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れる観点から、3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。また、シリカゾルや研磨組成物中のシリカ粒子の凝集を抑制することができ、シリカゾルや研磨組成物の保存安定性に優れるといった観点から、シリカ粒子の濃度は50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0070】
シリカゾル中に不純物として混入した金属、すなわち金属不純物は、シリコンウェハの研磨において、被研磨体の表面に付着し、被研磨体を汚染することで、被研磨体や最終製品の特性に悪影響を及ぼす。
【0071】
また、シリカゾルに金属不純物が存在すると、酸性を示す表面シラノール基と金属不純物とが配位的な相互作用が発生し、酸性度等の表面シラノール基の化学的性質を変化させたり、シリカ粒子表面の立体的な環境、すなわちシリカ粒子の凝集のしやすさ等を変化させ、研磨レートに影響を及ぼす。
そのため、シリカゾル中の金属含有率、すなわち金属不純物の濃度は1質量ppm以下が好ましく、0.2質量ppm以下がより好ましい。
【0072】
シリカゾルの金属含有率は、高周波誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により測定する。具体的には、シリカ粒子を0.4g含むシリカゾルを正確に量り取り、硫酸とフッ酸を加え、加温、溶解、蒸発させ、残存した硫酸滴に対して、その総量が正確に10gとなるよう純水を加えて試験液を作製し、高周波誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて測定する。対象の金属は、ナトリウム、カリウム、鉄、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、コバルト、クロム、銅、マンガン、鉛、チタン、銀、ニッケルとし、これらの金属の含有率の合計を金属含有率とする。
【0073】
シリカゾルの金属含有率は、例えば、アルコキシシランを主原料として加水分解反応及び縮合反応を行ってシリカ粒子を得ることで、1質量ppm以下とすることができる。水ガラス等の珪酸アルカリの脱イオンによる方法では、原料由来のナトリウム等が残存するため、シリカ粒子の金属含有率を1質量ppm以下とすることが極めて困難である。
【0074】
シリカゾル中の分散媒の含有率は、50質量%以上が、シリカゾルや研磨組成物中のシリカ粒子の凝集を抑制することができ、シリカゾルや研磨組成物の保存安定性に優れるため好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。また、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れる観点から、分散媒の含有率は97質量%以下が好ましく、96質量%以下がより好ましく、95質量%以下がさらに好ましい。
【0075】
シリカゾル中のシリカ粒子や分散媒の含有率は、工程(1)や工程(2-2)において、所望の範囲に設定することができる。
【0076】
シリカゾルは、シリカ粒子及び分散媒以外に、その性能を損なわない範囲において、必要に応じて、酸化剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、pH緩衝剤、界面活性剤、キレート剤、抗菌殺生物剤等の他の成分を含んでもよい。
【0077】
特に、シリカゾルの保存安定性に優れることから、シリカゾル中に抗菌殺生物剤を含ませることが好ましい。
【0078】
抗菌殺生物剤としては、例えば、過酸化水素、アンモニア、第四級アンモニウム水酸化物、第四級アンモニウム塩、エチレンジアミン、グルタルアルデヒド、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。これらの抗菌殺生物剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの抗菌殺生物剤の中でも、シリカゾルとの親和性に優れることから、過酸化水素が好ましい。抗菌殺生物剤は、一般に殺菌剤と言われるものも含む。
【0079】
シリカゾル中の抗菌殺生物剤の含有率は、0.0001質量%以上が、シリカゾルの保存安定性に優れるため好ましく、0.001質量%以上がより好ましい。また、シリカゾルの本来の性能を損なわない観点から、抗菌殺生物剤の含有率は10質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0080】
シリカゾルのpHは、6.0以上が、分散安定性に優れて、シリカ粒子の凝集を抑制することができるため好ましく、6.5以上がより好ましい。また、シリカ粒子の溶解を防ぎ、長期間の保存安定性に優れるため、シリカゾルのpHは8.0以下が好ましく、7.8以下がより好ましい。
シリカゾルのpHは、pH調整剤を添加することで、所望の範囲に設定することができる。
【0081】
<シリカ粒子の物性>
本実施形態に係るシリカゾルの製造方法により製造されるシリカゾル中のシリカ粒子の好適物性等について、以下に説明する。
【0082】
(平均1次粒子径)
シリカ粒子の平均1次粒子径は、5nm以上が、シリカゾルの保存安定性に優れるため好ましく、10nm以上がより好ましい。また、シリカ粒子の平均1次粒子径は、シリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、シリカ粒子の沈降を抑制することができるため、100nm以下が好ましく、60nm以下がより好ましい。
【0083】
シリカ粒子の平均1次粒子径は、BET法により測定する。具体的には、比表面積自動測定装置を用いてシリカ粒子の比表面積を測定し、下記式(1)を用いて平均1次粒子径を算出する。
平均1次粒子径(nm)=6000/(比表面積(m2/g)×密度(g/cm3))・・・(1)
【0084】
シリカ粒子の平均1次粒子径は、公知の条件及び方法により、所望の範囲に設定することができる。
【0085】
(平均2次粒子径)
シリカ粒子の平均2次粒子径は、10nm以上が、研磨後の洗浄における粒子等の除去性に優れ、シリカゾルの保存安定性に優れるため好ましく、20nm以上がより好ましい。また、研磨時のシリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、研磨後の洗浄における粒子等の除去性に優れ、シリカ粒子の沈降を抑制することができるため、シリカ粒子の平均2次粒子径は200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。
【0086】
シリカ粒子の平均2次粒子径は、DLS法により測定する。具体的には、動的光散乱粒子径測定装置を用いて測定する。
【0087】
シリカ粒子の平均2次粒子径は、公知の条件及び方法により、所望の範囲に設定することができる。
【0088】
(cv値)
シリカ粒子のcv値は、10%以上が、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れ、シリコンウェハの生産性に優れるため好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。また、研磨時のシリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、研磨後の洗浄における粒子等の除去性に優れるため、シリカ粒子のcv値は50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、35%以下がさらに好ましい。
【0089】
シリカ粒子のcv値は、動的光散乱粒子径測定装置を用いてシリカ粒子の平均2次粒子径を測定し、下記式(2)を用いて算出する。
cv値(%)=(標準偏差(nm)/平均2次粒子径(nm))×100(%)・・・(2)
【0090】
(会合比)
シリカ粒子の会合比は、1.0以上が、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れ、シリコンウェハの生産性に優れるため好ましく、1.1以上がより好ましい。また、研磨時のシリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、シリカ粒子の凝集を抑制することができるため、4.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましい。
【0091】
シリカ粒子の会合比は、前述の測定方法にて測定した平均1次粒子径と前述の測定方法にて測定した平均2次粒子径とから、下記式(3)を用いて算出する。
会合比=平均2次粒子径/平均1次粒子径・・・(3)
【0092】
(表面シラノール基濃度)
シリカ粒子の表面シラノール基濃度は、分散安定性の観点から、0.2%以上が好ましく、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは0.8%以上である。また、シリカ粒子の凝集抑制の観点から、1.35%以下が好ましく、より好ましくは1.3%以下、さらに好ましくは1.25%以下である。
【0093】
シリカ粒子の表面シラノール基濃度は、シアーズ法により測定する。具体的には、下記に示す条件で測定し、算出する。
【0094】
シリカ粒子1.5gに相当するシリカゾルを採取し、純水を加えて液量を90mLにする。25℃の環境下、pHが3.6になるまで0.1mol/Lの塩酸水溶液を加える。次いで、塩化ナトリウム30gを加え、純水を徐々に加えながら塩化ナトリウムを完全に溶解させ、最終的に試験液の総量が150mLになるまで純水を加えて、試験液を得る。
【0095】
得られた試験液を自動滴定装置に入れ、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHが4.0から9.0になるのに要する0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の滴定量A(mL)を測定する。
【0096】
上記シリカ粒子の表面シラノール基濃度の測定、算出方法は、「G.W.Sears,Jr.,Analytical Chemistry,Vol.28,No.12,pp.1981-1983(1956).」、「羽場真一,半導体集積回路プロセス用研磨剤の開発,高知工科大学博士論文,pp.39-45,2004年3月」、「特許第5967118号公報」、「特許第6047395号公報」を参考にする。
【0097】
シリカ粒子の表面シラノール基濃度は、下記式(4)を用いて、シリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の消費量V(mL)を算出し、下記式(5)を用いて、シリカ粒子の表面シラノール基濃度COH(%)を算出した。
V=(A×f×100×1.5)/(W×C)・・・(4)
A:シリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の滴定量(mL)
f:用いた0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の力価
CSiO2:シリカゾル中のシリカ粒子の濃度(質量%)
W:シリカゾルの採取量(g)
COH=(B×MOH)/m×100・・・(5)
B:Vから算出したシリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した水酸化ナトリウム量(mol)
MOH:OHのモル質量(17g/mоl)
m:シリカ粒子量(1.5g)
【0098】
シリカ粒子の表面シラノール基濃度は、上記工程(1)において、分散媒が除去または置換されたシリカ分散液中のアルコールと水との比率が6:94から0:100に到達するまでの間の、反応槽内の該シリカ分散液の重量に対する前記アルコールの除去速度を150g/h/kg未満とすることにより、精密に制御し得る。
【0099】
(形状)
シリカ粒子の形状としては、例えば、球状、鎖状、繭状(こぶ状や落花生状とも称される)、異形状(例えば、疣状、屈曲状、分岐状等)等が挙げられる。これらのシリカ粒子の形状の中でも、研磨時のシリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減させたい場合は、球状が好ましく、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートをより高めたい場合は、異形状が好ましい。
【0100】
[研磨組成物]
本実施形態に係るシリカゾルの製造方法で得られたシリカゾルは、研磨組成物として好適に用いることができる。
研磨組成物は、本実施形態に係るシリカゾルの製造方法により製造されたシリカゾル及び水溶性高分子を含むことが好ましい。
【0101】
水溶性高分子は、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨組成物の濡れ性を高める。水溶性高分子は、水親和性の高い官能基を保有する高分子であることが好ましく、この水親和性の高い官能基とシリカ粒子の表面シラノール基との親和性が高く、研磨組成物中でより近傍にシリカ粒子と水溶性高分子とが安定して分散する。そのため、シリコンウェハに代表される被研磨体への研磨の際、シリカ粒子と水溶性高分子との効果が相乗的に機能する。
【0102】
水溶性高分子としては、例えば、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン骨格を有する共重合体、ポリオキシアルキレン構造を有する重合体等が挙げられる。
【0103】
セルロース誘導体としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、加水分解処理を施したヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0104】
ポリビニルピロリドン骨格を有する共重合体としては、例えば、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとのグラフト共重合体等が挙げられる。
【0105】
ポリオキシアルキレン構造を有する重合体としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体等が挙げられる。
【0106】
これらの水溶性高分子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの水溶性高分子の中でも、シリカ粒子の表面シラノール基との親和性が高く、相乗的に作用して被研磨体の表面に良好な親水性を与えることから、セルロース誘導体が好ましく、ヒドロキシエチルセルロースがより好ましい。
【0107】
水溶性高分子の重量平均分子量は、1,000以上が、研磨組成物の親水性が向上するため好ましく、5,000以上がより好ましく、10,000以上がさらに好ましい。また、シリカゾルとの親和性に優れ、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れるため、重量平均分子量は3,000,000以下が好ましく、2,000,000以下がより好ましく、1,000,000以下がさらに好ましい。
【0108】
水溶性高分子の重量平均分子量は、ポリエチレンオキサイド換算で、0.1mol/LのNaCl溶液を移動相とする条件で、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定する。
【0109】
研磨組成物中の水溶性高分子の含有率は、0.02質量%以上が、研磨組成物の親水性が向上するため好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。また、研磨組成物調製時のシリカ粒子の凝集を抑制することができるため、水溶性高分子の含有率は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0110】
研磨組成物は、シリカゾル及び水溶性高分子以外に、その性能を損なわない範囲において、必要に応じて、塩基性化合物、研磨促進剤、界面活性剤、親水性化合物、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、pH緩衝剤、キレート剤、抗菌殺生物剤等の他の成分を含んでもよい。
【0111】
特に、シリコンウェハに代表される被研磨体の表面に化学的な作用を与えて化学的研磨、すなわちケミカルエッチングができ、シリカ粒子の表面シラノール基との相乗効果により、シリコンウェハに代表される被研磨体の研磨速度を向上させることができることから、研磨組成物中に塩基性化合物を含ませることが好ましい。
【0112】
塩基性化合物としては、例えば、有機塩基性化合物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属炭酸塩、アンモニア等が挙げられる。これらの塩基性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの塩基性化合物の中でも、水溶性が高く、シリカ粒子や水溶性高分子との親和性に優れることから、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムが好ましく、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウムがより好ましく、アンモニアがさらに好ましい。
【0113】
研磨組成物中の塩基性化合物の含有率は、0.001質量%以上が、シリコンウェハに代表される被研磨体の研磨速度を向上させることができるため好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。また、研磨組成物の安定性に優れるため、塩基性化合物の含有率は5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
【0114】
研磨組成物のpHは、8.0以上が、研磨組成物中のシリカ粒子の凝集を抑制することができ、研磨組成物の分散安定性に優れるため好ましく、9.0以上がより好ましい。また、シリカ粒子の溶解を抑制することができ、研磨組成物の安定性に優れるため、研磨組成物のpHは12.0以下が好ましく、11.0以下がより好ましい。
研磨組成物のpHは、pH調整剤を添加することで、所望の範囲に設定することができる。
【0115】
研磨組成物は、本実施形態に係るシリカゾル、水溶性高分子、及び、必要に応じて、他の成分を混合することで得られるが、保管、運搬を考慮し、一旦高濃度で調製し、研磨直前に水等で希釈してもよい。
【0116】
[研磨方法]
本実施形態に係る研磨方法は、上記本実施形態に係るシリカゾルの製造方法で得られたシリカゾルを含む研磨組成物を用いて研磨する工程を含む。
研磨組成物は、前述した研磨組成物を用いることが好ましい。シリカゾルの閉塞係数が小さく、シリカゾル中のシリカ粒子の凝集が抑制されるため、本実施形態に係る研磨方法を用いると、研磨ムラや研磨傷の発生が抑制される。
【0117】
具体的な研磨の方法としては、例えば、シリコンウェハの表面を研磨パッドに押し付け、研磨パッド上に上記研磨組成物を滴下し、シリコンウェハの表面を研磨する方法が挙げられる。
【0118】
[半導体ウェハの製造方法、半導体デバイスの製造方法]
本実施形態に係る半導体ウェハの製造方法及び本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法は、上記本実施形態に係る研磨方法を含む。
【0119】
[用途]
本実施形態に係るシリカゾルは、研磨用途に好適に用いることができ、例えば、シリコンウェハ等の半導体材料の研磨、ハードディスク基板等の電子材料の研磨、集積回路を製造する際の平坦化工程における研磨(化学的機械的研磨)、フォトマスクや液晶に用いる合成石英ガラス基板の研磨、磁気ディスク基板の研磨等に用いることができ、中でもシリコンウェハの研磨や化学的機械的研磨に特に好適に用いることができる。
【実施例0120】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0121】
[測定方法]
(平均1次粒子径の測定)
実施例及び比較例で得られたシリカゾルを150℃で乾燥し、比表面積自動測定装置「BELSORP-MR1」(機種名、マイクロトラック・ベル株式会社)を用いて、シリカ粒子の比表面積を測定し、下記式(1)を用い、密度を2.2g/cm3とし、平均1次粒子径を算出した。
平均1次粒子径(nm)=6000/(比表面積(m2/g)×密度(g/cm3))・・・(1)
【0122】
(平均2次粒子径の測定)
実施例及び比較例で得られたシリカゾルにおけるシリカ粒子の平均2次粒子径は、動的光散乱粒子径測定装置「ゼーターサイザーナノZS」(機種名、マルバーン社製)を用いて測定した。
【0123】
(会合比の算出)
測定した平均1次粒子径と平均2次粒子径とから、下記式(3)を用いて会合比を算出した。
会合比=平均2次粒子径/平均1次粒子径・・・(3)
【0124】
(表面シラノール基濃度の測定)
実施例及び比較例で得られたシリカゾルの、シリカ粒子1.5gに相当する量を、200mLトールビーカーに採取し、純水を加えて液量を90mLにした。
25℃の環境下、トールビーカーにpH電極を挿入し、マグネティックスターラーにより試験液を5分間撹拌させた。マグネティックスターラーによる攪拌を続けた状態で、pHが3.6になるまで0.1mol/Lの塩酸水溶液を加えた。トールビーカーからpH電極を取り外し、マグネティックスターラーによる攪拌を続けた状態で、塩化ナトリウムを30g加え、純水を徐々に加えながら塩化ナトリウムを完全に溶解させた。最終的に試験液の総量が150mLになるまで純水を加え、マグネティックスターラーにより試験液を5分間撹拌させ、試験液を得た。
得られた試験液の入ったトールビーカーを、自動滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)にセットし、装置付属のpH電極とビュレットをトールビーカーに挿入した。マグネティックスターラーにより試験液を撹拌させながら、ビュレットを通じて0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHが4.0から9.0になるのに要する0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の滴定量A(mL)を測定した。
下記式(4)を用いて、シリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の消費量V(mL)を算出し、下記式(5)を用いて、シリカ粒子の表面シラノール基濃度COH(%)を算出した。
V=(A×f×100×1.5)/(W×C)・・・(4)
A:シリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の滴定量(mL)
f:用いた0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の力価
CSiO2:シリカゾル中のシリカ粒子の濃度(質量%)
W:シリカゾルの採取量(g)
COH=(B×MOH)/m ×100・・・(5)
B:Vから算出したシリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した水酸化ナトリウム量(mol)
MOH:OHのモル質量(17g/mоl)
m:シリカ粒子量(1.5g)
【0125】
[実施例1]
テトラメトキシシラン85質量%とメタノール15質量%とを混合した溶液(B)と3質量%アンモニア水溶液の溶液(C)とをそれぞれ調液した。温度計、攪拌機、供給管及び留出ラインを備えた反応槽に、予めメタノール、純水及びアンモニアを混合した溶液(A)を仕込んだ。溶液(A)中のメタノールの濃度を84.5質量%、溶液(A)中の水の濃度を15質量%、溶液(A)中のアンモニアの濃度を0.5質量%とした。
【0126】
溶液(A)132質量%に、溶液(B)100質量%及び溶液(C)37質量%を、612分間かけてそれぞれ等速で添加し、シリカ粒子の含有率が約12.5質量%のシリカ粒子の分散液を得た。
【0127】
得られたシリカ粒子の分散液を加温し、シリカ粒子の含有率が約17.5質量%になるように濃縮した。次いで、シリカ粒子の分散液の液量を一定に保つように、純水を添加しながら、メタノールとアンモニアを除去した。次いで、シリカ粒子の分散液を濃縮し、シリカ粒子の含有率が約20質量%のシリカ粒子の分散液(シリカゾル)を得た。水置換はシリカ粒子の分散液中のメタノールと水の比率が6:94から0:100に到達するまでの間の槽内における該分散液重量に対するアルコール除去速度の平均が35g/h/kgとなるよう熱媒の温度を調整した。
【0128】
[実施例2]
テトラメトキシシラン85質量%とメタノール15質量%とを混合した溶液(B)と3質量%アンモニア水溶液の溶液(C)とをそれぞれ調液した。温度計、攪拌機、供給管及び留出ラインを備えた反応槽に、予めメタノール、純水及びアンモニアを混合した溶液(A)を仕込んだ。溶液(A)中のメタノールの濃度を84.5質量%、溶液(A)中の水の濃度を15質量%、溶液(A)中のアンモニアの濃度を0.5質量%とした。
【0129】
溶液(A)132質量%に、溶液(B)100質量%及び溶液(C)37質量%を、612分間かけてそれぞれ等速で添加し、シリカ粒子の含有率が約12.5質量%のシリカ粒子の分散液を得た。
【0130】
得られたシリカ粒子の分散液を加温し、シリカ粒子の含有率が約17.5質量%になるように濃縮した。次いで、シリカ粒子の分散液の液量を一定に保つように、純水を添加しながら、メタノールとアンモニアを除去した。次いで、シリカ粒子の分散液を濃縮し、シリカ粒子の含有率が約20質量%のシリカ粒子の分散液(シリカゾル)を得た。水置換はシリカ粒子の分散液中のメタノールと水の比率が6:94から0:100に到達するまでの間の槽内における該分散液重量に対するアルコール除去速度の平均が120g/h/kgとなるよう熱媒の温度を調整した。
【0131】
[比較例1]
テトラメトキシシラン85質量%とメタノール15質量%とを混合した溶液(B)と3質量%アンモニア水溶液の溶液(C)とをそれぞれ調液した。温度計、攪拌機、供給管及び留出ラインを備えた反応槽に、予めメタノール、純水及びアンモニアを混合した溶液(A)を仕込んだ。溶液(A)中のメタノールの濃度を84.5質量%、溶液(A)中の水の濃度を15質量%、溶液(A)中のアンモニアの濃度を0.5質量%とした。
【0132】
溶液(A)132質量%に、溶液(B)100質量%及び溶液(C)37質量%を、612分間かけてそれぞれ等速で添加し、シリカ粒子の含有率が約12.5質量%のシリカ粒子の分散液を得た。
【0133】
得られたシリカ粒子の分散液を加温し、シリカ粒子の含有率が約17.5質量%になるように濃縮した。次いで、シリカ粒子の分散液の液量を一定に保つように、純水を添加しながら、メタノールとアンモニアを除去した。次いで、シリカ粒子の分散液を濃縮し、シリカ粒子の含有率が約20質量%のシリカ粒子の分散液(シリカゾル)を得た。水置換はシリカ粒子の分散液中のメタノールと水の比率が6:94から0:100に到達するまでの間の槽内における該分散液重量に対するアルコール除去速度の平均が206g/h/kgとなるよう熱媒の温度を調整した。
【0134】
得られたシリカゾルの評価結果を、表1に示す。
【0135】
【0136】
表1に示すように、本実施形態に係るシリカゾルの製造方法によれば、シリカ粒子の分散液中のメタノールと水の比率が6:94から0:100に到達するまでの間の槽内における該分散液重量に対するアルコール除去速度の平均が150g/h/kg未満であることにより、シリカ粒子の表面シラノール基濃度を精密に制御できることが分かった。また、本実施形態に係るシリカゾルの製造方法で得られたシリカゾルは表面シラノール基濃度が精密に制御されていることが分かった。
本実施形態に係るシリカゾルの製造方法で得られたシリカゾルは、研磨用途に好適に用いることができ、例えば、シリコンウェハ等の半導体材料の研磨、ハードディスク基板等の電子材料の研磨、集積回路を製造する際の平坦化工程における研磨(化学的機械的研磨)、フォトマスクや液晶に用いる合成石英ガラス基板の研磨、磁気ディスク基板の研磨、Si、Cu、W、Ti、Cr、Co、Zr、Hf、Mo、Ta、Ru、Au、Pt又はAg等の金属;前記金属の酸化物、窒化物、シリサイド等の金属化合物の研磨等に用いることができ、中でもシリコンウェハの研磨や化学的機械的研磨に特に好適に用いることができる。