(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142118
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ペースト調味料及びその製造方法、食品組成物、医薬品組成物並びにニンニク中の成分を増加させる方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20241003BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20241003BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20241003BHJP
A61K 36/8962 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A23L27/00 D
A23L19/00 C
A61K31/198
A61K36/8962
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054132
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】根岸 剛大
【テーマコード(参考)】
4B016
4B047
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LE04
4B016LG09
4B016LK06
4B016LK08
4B016LP04
4B016LP05
4B016LP08
4B016LP09
4B047LB02
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4B047LG11
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4B047LG21
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4B047LG46
4B047LP02
4B047LP05
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4B047LP20
4C088AB87
4C088AC12
4C088BA06
4C088BA23
4C088BA31
4C088MA52
4C088NA05
4C088NA14
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA58
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA14
(57)【要約】
【課題】本発明の一以上の実施形態は、ニンニクの好ましい風味と、ニンニクを加熱調理することにより生じるコクや香ばしさ等の風味を有する調味料を提供する。
【解決手段】第1の実施形態に係るペースト調味料は、全量100gあたり50mg以上のS-アリルシステインを含むニンニク、3質量%~25質量%の脂質、3質量%~25質量%の糖、及び、35質量%~75質量%の水を含む。第2の実施形態に係るペースト調味料の製造方法は、生ニンニクとしての換算含有量が150質量%~500質量%のニンニク、3質量%~25質量%の脂質、3質量%~25質量%の還元糖、及び、35質量%~75質量%の水を含有する原料混合物を容器に収容し密封し、続いて、最高到達品温が100℃~140℃、加熱価が33~80となるように加圧加熱処理して前記容器中においてペースト調味料を調製することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペースト調味料であって、
前記ペースト調味料の全量100gあたり50mg以上のS-アリルシステインを含むニンニク、
3質量%~25質量%の脂質、
3質量%~25質量%の糖、及び、
35質量%~75質量%の水
を含む、前記ペースト調味料。
【請求項2】
アリルメチルスルフィド、ピラジン、ジメチルジスルフィド、2-メチルピラジン、及び、2-エチル-6-メチルピラジンを含む、請求項1に記載のペースト調味料。
【請求項3】
アリルメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、ジアリルジスルフィド、アリルメチルトリスルフィド、プロピルメチルペルトリスルフィド、2-プロペニルプロピルトリスルフィド、及び、ジアリルテトラスルフィドを更に含む、請求項2に記載のペースト調味料。
【請求項4】
生ニンニクとしての換算含有量が150質量%~500質量%のニンニク、
3質量%~25質量%の脂質、
3質量%~25質量%の還元糖、及び、
35質量%~75質量%の水
を含む原料混合物を容器に収容し密封する工程、並びに、
前記容器中の前記原料混合物を、最高到達品温が100℃~140℃、加熱価が33~80となるように加圧加熱処理して、前記容器中においてペースト調味料を調製する工程
を含み、
前記加熱価は、品温A(℃)に対して10{(A-120)/30}で求められる値を加熱時間(分)で積分した値である、
ペースト調味料の製造方法。
【請求項5】
前記ニンニクは、前記ニンニクの全量を100質量%としたとき60質量%以上の乾燥ニンニクを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
100gあたり50mg以上のS-アリルシステインを含有する食品組成物。
【請求項7】
100gあたり50mg以上のS-アリルシステインを含有する医薬品組成物。
【請求項8】
ニンニク中の、S-アリルシステイン、アリルメチルスルフィド、ピラジン、ジメチルジスルフィド、2-メチルピラジン、2-エチル-6-メチルピラジン、アリルメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、ジアリルジスルフィド、アリルメチルトリスルフィド、プロピルメチルペルトリスルフィド、2-プロペニルプロピルトリスルフィド、及び、ジアリルテトラスルフィドからなる群から選択される1以上の成分を増加させる方法であって、
生ニンニクとしての換算含有量が150質量%~500質量%のニンニク、
3質量%~25質量%の脂質、
3質量%~25質量%の還元糖、及び、
35質量%~75質量%の水
を含む原料混合物を容器に収容し密封する工程、並びに、
前記容器中の前記原料混合物を、最高到達品温が100℃~140℃、加熱価が33~80となるように加圧加熱処理する工程
を含み、
前記加熱価は、品温A(℃)に対して10{(A-120)/30}で求められる値を加熱時間(分)で積分した値である、
前記方法。
【請求項9】
前記ニンニクは乾燥ニンニクを含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一以上の実施形態は、ペースト調味料及びその製造方法に関する。
【0002】
本発明の別の一以上の実施形態は、食品組成物及び医薬品組成物に関する。
【0003】
本発明の更に別の一以上の実施形態は、ニンニク中の、S-アリルシステイン等を含む群から選択される1以上の成分を増加させる方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ニンニクは種々の硫黄を含む化合物(含硫化合物)及びアミノ酸が含まれており、これらの物質が、ニンニクに特有の香気や風味に関与する。
【0005】
特許文献1では、ニンニクを食用油脂とともに加熱したガーリックオイルは、加熱されたニンニク特有のロースト香を有する一方で、時間経過とともに生辛い不快臭を生じるという課題があることが記載されている。そして特許文献1では、この課題を解決する手段として、原料ニンニクをフルクトース及び/又はガラクトースを含有する90℃以上の乳化液中で加熱処理を開始する加熱処理工程を含むガーリックオイルの製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献2では、ニンニクを配合し、辛味などの刺激が低下し、良好な風味を有する液体調味料を提供するための手段として、生ニンニクを配合し、[60℃以上となる加熱温度と60℃との温度差(℃)]と[加熱時間(分)]との積で表される加熱積算値が200~900℃・分になるように加熱処理する液体調味料の製造方法が記載されている。
【0007】
一方、近年、レトルト耐性容器内での加圧加熱処理を利用して調味料を製造する方法が開発されている。例えば特許文献3では、玉ねぎを焙煎したときのような特有の甘味と香りを有する容器詰め加圧加熱飴色玉ねぎ調味料を製造する方法として、玉ねぎ及び脂質を含み、脂質の含有量が9質量%以上35質量%以下であり、水の含有量が20質量%以上70%質量以下である原料混合物を調製する工程、前記原料混合物を容器に収容し密封する工程、及び、前記容器中での前記原料混合物を、最高到達品温が100~140℃、加熱価が33~80となるように加圧加熱処理する工程を含む方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-57313号公報
【特許文献2】特開2010-263841号公報
【特許文献3】特開2021-136871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一以上の実施形態は、ニンニクを加熱調理することにより生じるコクや香ばしさ等の好ましい風味を食品に付与することができ、必要に応じて更にニンニクの好ましい風味を食品に付与することができる調味料を提供する。
【0010】
本発明の別の一以上の実施形態は、ニンニクに由来する成分を含有する食品組成物又は医薬品組成物を提供する。
【0011】
本発明の更に別の一以上の実施形態は、ニンニク中の1以上の成分を増加させる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ニンニク、脂質、還元糖及び水を所定の割合で含有する原料混合物を容器に収容し密封し所定条件で加圧加熱処理することにより、ニンニクの好ましい風味と、ニンニクを加熱調理することにより生じるコクや香ばしさ等の好ましい風味を有するペースト調味料が得られることを見出した。本発明者らはまた、前記ペースト調味料は、S-アリルシステイン等の1以上のニンニク由来成分を、原料として配合したニンニクよりも多く含有することを見出した。すなわち本発明は下記の一以上の実施形態を包含する。
【0013】
(1)ペースト調味料であって、
前記ペースト調味料の全量100gあたり50mg以上のS-アリルシステインを含むニンニク、
3質量%~25質量%の脂質、
3質量%~25質量%の糖、及び、
35質量%~75質量%の水
を含む、前記ペースト調味料。
【0014】
(2)アリルメチルスルフィド、ピラジン、ジメチルジスルフィド、2-メチルピラジン、及び、2-エチル-6-メチルピラジンを含む、(1)に記載のペースト調味料。
【0015】
(3)アリルメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、ジアリルジスルフィド、アリルメチルトリスルフィド、プロピルメチルペルトリスルフィド、2-プロペニルプロピルトリスルフィド、及び、ジアリルテトラスルフィドを更に含む、(2)に記載のペースト調味料。
【0016】
(4)生ニンニクとしての換算含有量が150質量%~500質量%のニンニク、
3質量%~25質量%の脂質、
3質量%~25質量%の還元糖、及び、
35質量%~75質量%の水
を含む原料混合物を容器に収容し密封する工程、並びに、
前記容器中の前記原料混合物を、最高到達品温が100℃~140℃、加熱価が33~80となるように加圧加熱処理して、前記容器中においてペースト調味料を調製する工程
を含み、
前記加熱価は、品温A(℃)に対して10{(A-120)/30}で求められる値を加熱時間(分)で積分した値である、
ペースト調味料の製造方法。
【0017】
(5)前記ニンニクは、前記ニンニクの全量を100質量%としたとき60質量%以上の乾燥ニンニクを含む、(4)に記載の方法。
【0018】
(6)100gあたり50mg以上のS-アリルシステインを含有する食品組成物。
【0019】
(7)100gあたり50mg以上のS-アリルシステインを含有する医薬品組成物。
【0020】
(8)ニンニク中の、S-アリルシステイン、アリルメチルスルフィド、ピラジン、ジメチルジスルフィド、2-メチルピラジン、2-エチル-6-メチルピラジン、アリルメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、ジアリルジスルフィド、アリルメチルトリスルフィド、プロピルメチルペルトリスルフィド、2-プロペニルプロピルトリスルフィド、及び、ジアリルテトラスルフィドからなる群から選択される1以上の成分を増加させる方法であって、
生ニンニクとしての換算含有量が150質量%~500質量%のニンニク、
3質量%~25質量%の脂質、
3質量%~25質量%の還元糖、及び、
35質量%~75質量%の水
を含む原料混合物を容器に収容し密封する工程、並びに、
前記容器中の前記原料混合物を、最高到達品温が100℃~140℃、加熱価が33~80となるように加圧加熱処理する工程
を含み、
前記加熱価は、品温A(℃)に対して10{(A-120)/30}で求められる値を加熱時間(分)で積分した値である、
前記方法。
【0021】
(9)前記ニンニクは乾燥ニンニクを含む、(8)に記載の方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一以上の実施形態によれば、ニンニクを加熱調理することにより生じるコクや香ばしさ等の好ましい風味を食品に付与することができ、必要に応じて更にニンニクの好ましい風味を食品に付与することができる、新たな調味料及びその製造方法が提供される。
【0023】
本発明の別の一以上の実施形態によれば、ニンニクに由来するS-アリルシステインを100gあたり50mg以上の濃度で含有する食品組成物又は医薬品組成物が提供される。
【0024】
本発明の更に別の一以上の実施形態によれば、ニンニク中の、S-アリルシステイン、アリルメチルスルフィド、ピラジン、ジメチルジスルフィド、2-メチルピラジン、2-エチル-6-メチルピラジン、アリルメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、ジアリルジスルフィド、アリルメチルトリスルフィド、プロピルメチルペルトリスルフィド、2-プロペニルプロピルトリスルフィド、及び、ジアリルテトラスルフィドからなる群から選択される1以上の成分を増加させる方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
<ペースト調味料>
本発明の第1の実施形態は、
ペースト調味料であって、
前記ペースト調味料の全量100gあたり50mg以上のS-アリルシステインを含むニンニク、
3質量%~25質量%の脂質、
3質量%~25質量%の糖、及び、
35質量%~75質量%の水
を含む、前記ペースト調味料、
に関する。
【0026】
本実施形態に係るペースト調味料は、ニンニクを加熱調理することにより生じるコクや香ばしさ等の風味を食品に付与することができ、必要に応じて更にニンニクの好ましい風味を食品に付与することができる。
【0027】
本実施形態に係るペースト調味料は、例えば、ニンニクを含む食材の加熱調理により風味づけされる、デミグラスソース等の食品の製造において、前記食材の代わりに又は前記食材に加えて、調味料として添加することができる。また、本実施形態に係るペースト調味料は、ソーセージ、肉類、バケット等の食材に直接付けることにより、前記食材に風味を付与することができる。本実施形態に係るペースト調味料を用いることで、ニンニクの好ましい風味と、ニンニクを加熱調理することにより生じるコクや香ばしさ等の風味を有する食品を簡便に調製することができる。本実施形態に係るペースト調味料を、食品へ多量に添加することにより、ニンニクの好ましい風味と、コク及び香ばしさを食品に付与することができる。ニンニクの風味と、コク及び香ばしさとを付与することが好ましい食品としては、例えばラーメン、焼き肉のたれ、中華調味料、トマトソース、チャーハンが例示できる。また、本実施形態に係るペースト調味料を、食品へ少量添加することにより、ニンニクの風味を抑え、主にコク及び香ばしさのみを食品に付与することができる。主にコク及び香ばしさのみを付与することが好ましい食品としては、例えばデミグラスソース、ホワイトソース、カレーソース、ボロネーゼソース、みそ汁、ハンバーグが例示できる。
【0028】
本実施形態に係るペースト調味料は、好ましくは前記ペースト調味料を収容する容器を更に備える容器詰めペースト調味料である。この容器詰めペースト調味料は、典型的には容器ごと加圧加熱処理された食品であり、例えばレトルト食品である。容器ごと加圧加熱処理された容器詰めペースト調味料は、常温流通が可能である。
【0029】
本実施形態に係るペースト調味料は、好ましくは、
生ニンニクとしての換算含有量が150質量%~500質量%のニンニク、
3質量%~25質量%の脂質、
3質量%~25質量%の還元糖、及び、
35質量%~75質量%の水
を含む原料混合物を容器に収容し密封する工程、並びに、
前記容器中の前記原料混合物を、最高到達品温が100℃~140℃、本明細書で定義する加熱価が33~80となるように加圧加熱処理して、前記容器中においてペースト調味料を調製する工程
を含む方法により製造することができる。この製造方法は、本発明の第2の実施形態として後述する。
【0030】
本実施形態に係るペースト調味料に含まれるニンニクは、原料として配合したニンニクが他の原料とともに加熱処理されたものである。原料として配合するニンニクの好ましい態様は、本発明の第2の実施形態に係る製造方法に関して後述する通りである。本実施形態に係るペースト調味料中のニンニクは、例えば、原料として配合したニンニクの原形を留めずに崩壊し、連続相である水中に分散した状態で含まれるが、みじん切り(ダイス状)、スライス状等の原形を留めた状態で含まれてもよい。
【0031】
本実施形態に係るペースト調味料は、好ましくは、ペースト調味料の全量100gあたり50mg以上(「50mg/100g以上」と記載する)のS-アリルシステインを含むニンニクを含む。S-アリルシステインは、様々な有益な生理活性を有することが知られている。
【0032】
本実施形態に係るペースト調味料中のニンニクの含有量は、S-アリルシステインの含有量として、より好ましくは60mg/100mg以上、更に好ましくは65mg/100mg以上となる量であり、上限は特に限定されないが、好ましくは、S-アリルシステインの含有量として500mg/100mg以下、より好ましくは300mg/100mg以下となる量である。
【0033】
本実施形態に係るペースト調味料は、より好ましい態様において、アリルメチルスルフィド、ピラジン、ジメチルジスルフィド、2-メチルピラジン、及び、2-エチル-6-メチルピラジンの5種の成分を含み、特に好ましい態様において、アリルメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、ジアリルジスルフィド、アリルメチルトリスルフィド、プロピルメチルペルトリスルフィド、2-プロペニルプロピルトリスルフィド、及び、ジアリルテトラスルフィドの7種の成分を更に含む。前記12種の成分は、ニンニクが有する好ましい香りに関与する成分である。後述する本発明の第2の実施形態に係る製造方法により得られた本実施形態に係るペースト調味料は、前記12種の成分及びS-アリルシステインを、原料として配合したニンニク中の含量から予測される含量よりも高い含量で含有することができる。
【0034】
本実施形態に係るペースト調味料は、より好ましい態様において、アリルメチルスルフィド、ピラジン、ジメチルジスルフィド、2-メチルピラジン、及び、2-エチル-6-メチルピラジンの5種の成分を含み、アリルメチルスルフィドの含有量が、生ニンニクをすりおろしたペーストを冷凍した後、解凍したもの(以下、「冷凍ガーリックペースト」と称する場合がある)における含有量の好ましくは0.50倍以上、より好ましくは1.8倍以上であり、好ましくは10.0倍以下、より好ましくは7.0倍以下であり、ジメチルジスルフィドの含有量が、冷凍ガーリックペーストにおける含有量の好ましくは2.0倍以上、より好ましくは3.0倍以上であり、好ましくは25.0倍以下であり、且つ、ピラジン、2-メチルピラジン、及び、2-エチル-6-メチルピラジンの含有量が、冷凍ガーリックペースト中の含有量よりも多い。なお冷凍ガーリックペーストには、ピラジン、2-メチルピラジン、及び、2-エチル-6-メチルピラジンは含まれない、又は含まれたとしても検出限界以下である。
【0035】
本実施形態に係るペースト調味料は、特に好ましい態様において、直前の段落に記載の含有量で前記5種の成分を含み、アリルメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、ジアリルジスルフィド、アリルメチルトリスルフィド、プロピルメチルペルトリスルフィド、2-プロペニルプロピルトリスルフィド、及び、ジアリルテトラスルフィドの7種の成分を更に含み、アリルメチルジスルフィドの含有量が、冷凍ガーリックペーストにおける含有量の好ましくは0.30倍以上、より好ましくは0.60倍以上であり、好ましくは7.0倍以下、より好ましくは5.0倍以下であり、ジメチルトリスルフィドの含有量が、冷凍ガーリックペーストにおける含有量の好ましくは0.25倍以上、より好ましくは0.50倍以上であり、好ましくは5.0倍以下、より好ましくは3.0倍以下であり、ジアリルジスルフィドの含有量が、冷凍ガーリックペーストにおける含有量の好ましくは0.05倍以上、より好ましくは0.10倍以上であり、好ましくは5.0倍以下、より好ましくは2.0倍以下であり、アリルメチルトリスルフィドの含有量が、冷凍ガーリックペーストにおける含有量の好ましくは0.15倍以上、より好ましくは0.20倍以上であり、好ましくは6.0倍以下、より好ましくは3.0倍以下であり、プロピルメチルペルトリスルフィドの含有量が、冷凍ガーリックペーストにおける含有量の好ましくは0.40倍以上、より好ましくは0.50倍以上であり、好ましくは15.0倍以下、より好ましくは10.0倍以下であり、2-プロペニルプロピルトリスルフィドの含有量が、冷凍ガーリックペーストにおける含有量の好ましくは0.05倍以上、より好ましくは0.10倍以上であり、好ましくは6.0倍以下、より好ましくは3.0倍以下であり、ジアリルテトラスルフィドの含有量が、冷凍ガーリックペーストにおける含有量の好ましくは0.03倍以上、より好ましくは0.06倍以上であり、好ましくは5.0倍以下、より好ましくは1.5倍以下である。
【0036】
本実施形態に係るペースト調味料は、より好ましい態様において、アリルメチルスルフィド、ピラジン、ジメチルジスルフィド、2-メチルピラジン、及び、2-エチル-6-メチルピラジンの5種の成分を含み、アリルメチルスルフィドの、実験6及び7に記載の条件でのガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)による分析で得られるピーク面積が好ましくは700,000以上、より好ましくは2,000,000以上であり、好ましくは20,000,000以下、より好ましくは10,000,000以下であり、ピラジンの、実験6及び7に記載の条件でのGC/MSによる分析で得られるピーク面積が好ましくは30,000以上、より好ましくは50,000以上であり、好ましくは400,000以下、より好ましくは350,000以下であり、ジメチルジスルフィドの、実験6及び7に記載の条件でのGC/MSによる分析で得られるピーク面積が好ましくは300,000以上、より好ましくは500,000以上であり、好ましくは6,000,000以下、より好ましくは4,000,000以下であり、2-メチルピラジンの、実験6及び7に記載の条件でのGC/MSによる分析で得られるピーク面積が好ましくは800,000以上、より好ましくは1,000,000以上であり、好ましくは8,000,000以下、より好ましくは6,000,000以下であり、2-エチル-6-メチルピラジンの、実験6及び7に記載の条件でのGC/MSによる分析で得られるピーク面積が好ましくは40,000以上、より好ましくは60,000以上であり、好ましくは500,000以下、より好ましくは300,000以下である。
【0037】
本実施形態に係るペースト調味料は、特に好ましい態様において、直前の段落に記載の量で前記5種の成分を含み、アリルメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、ジアリルジスルフィド、アリルメチルトリスルフィド、プロピルメチルペルトリスルフィド、2-プロペニルプロピルトリスルフィド、及び、ジアリルテトラスルフィドの7種の成分を更に含み、アリルメチルジスルフィドの、実験6及び7に記載の条件でのGC/MSによる分析で得られるピーク面積が好ましくは3,000,000以上、より好ましくは4,000,000以上であり、好ましくは40,000,000以下、より好ましくは30,000,000以下であり、ジメチルトリスルフィドの、実験6及び7に記載の条件でのGC/MSによる分析で得られるピーク面積が好ましくは400,000以上、より好ましくは500,000以上であり、好ましくは5,000,000以下、より好ましくは4,000,000以下であり、ジアリルジスルフィドの、実験6及び7に記載の条件でのGC/MSによる分析で得られるピーク面積が好ましくは900,000以上、より好ましくは11,000,000以上であり、好ましくは200,000,000以下、より好ましくは150,000,000以下であり、アリルメチルトリスルフィドの、実験6及び7に記載の条件でのGC/MSによる分析で得られるピーク面積が好ましくは6,000,000以上、より好ましくは8,000,000以上であり、好ましくは150,000,000以下、より好ましくは100,000,000以下であり、プロピルメチルペルトリスルフィドの、実験6及び7に記載の条件でのGC/MSによる分析で得られるピーク面積が好ましくは80,000以上、より好ましくは95,000以上であり、好ましくは3,000,000以下、より好ましくは2,000,000以下であり、2-プロペニルプロピルトリスルフィドの、実験6及び7に記載の条件でのGC/MSによる分析で得られるピーク面積が好ましくは200,000以上、より好ましくは300,000以上であり、好ましくは8,000,000以下、より好ましくは7,000,000以下であり、ジアリルテトラスルフィドの、実験6及び7に記載の条件でのGC/MSによる分析で得られるピーク面積が好ましくは400,000以上、より好ましくは500,000以上であり、好ましくは20,000,000以下、より好ましくは12,000,000以下である。
【0038】
本実施形態に係るペースト調味料におけるニンニクの含有量は、S-アリルシステインが、ペースト調味料の全量に対して前記濃度となる量であればよい。このようなニンニクの含有量は、好ましくは、本実施形態に係るペースト調味料の全量に対する生ニンニクとしての換算含有量として150質量%~500質量%である。本実施形態に係るペースト調味料における、生ニンニクとしての換算含有量としての、ニンニクの含有量の下限は、好ましくは200質量%以上、より好ましくは210質量%以上、より好ましくは230質量%以上であり、ニンニクの含有量の上限は、好ましくは400質量%以下、より好ましくは350質量%以下、より好ましくは320質量%以下である。
【0039】
本実施形態に係るペースト調味料における脂質としては、技術分野で通常採用されるものを、特に制限されることなく使用でき、例えば菜種油、オリーブ油、パーム油、大豆油、ココナツ油、キャノーラ油、コメ油、からし油、ピーナツ油、牛脂、ラード、バター等の油脂を用いることができる。前記脂質は、常温(25℃)において液状の油脂を含んでもよいし、常温で固形状の油脂を含んでもよいし、液状油脂と固形状油脂との混合物を含んでもよい。常温で固形状の油脂としては、融点40℃程度、例えば融点35℃~45℃、の油脂が例示できる。
【0040】
本実施形態に係るペースト調味料における脂質は、油脂等の脂質として原料混合物に配合されたものには限らず、脂質以外の形態で配合された原料に由来する脂質も包含する。
【0041】
本実施形態に係るペースト調味料は、3質量%~25質量%の脂質を含むことにより、ナッツのような香ばしさとコクを有し、且つ、ニンニクの青臭い香りが抑制されている。ペースト調味料において、脂質の含有量が3質量%未満である場合、香ばしさとコクが十分でないことがあり、脂質の含有量が25質量%超である場合、脂質が他の成分と分離することがある。本実施形態に係るペースト調味料における脂質の含有量の下限はより好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、上限はより好ましくは22質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0042】
脂質の含有量の測定は、「消費者庁 食品表示法 栄養成分等の分析方法 別添 栄養成分等の分析方法等 通則」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_200327_11.pdf)に記載されているエーテル抽出法に基づいて行うことができる。
【0043】
本実施形態に係るペースト調味料における糖は、単糖類又は二糖類であって糖アルコールでないものを指す。ペースト調味料に含まれる糖は、好ましくは、還元糖である。還元糖としては、グルコース、フルクトース、キシロース等の単糖類、ラクトース、マルトース、イソマルトース等の二糖類が挙げられ、本実施形態に係るペースト調味料は1種以上の還元糖を含むことができる。還元糖は、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖等の形態で原料混合物に配合されることができる。還元糖を、ニンニク、脂質及び水とともに含む原料混合物を容器中で加圧加熱して、本実施形態に係るペースト調味料を製造するとき、還元糖の一部はアミノ酸とメイラード反応等の反応を生じ、未反応の還元糖は加圧加熱後のペースト調味料中に含まれる。
【0044】
本実施形態に係るペースト調味料に含まれる糖は、原料混合物に糖として配合されたものには限らず、糖以外の形態で配合された原料(例えばニンニク)に由来する糖も包含する。例えば、ニンニク、糖、脂質及び水を含む原料混合物を容器中で加圧加熱して、本実施形態に係るペースト調味料を製造するとき、ニンニク中の糖や、ニンニク中の多糖が分解して生じた糖が、加圧加熱後のペースト調味料中に含まれ得る。
【0045】
本実施形態に係るペースト調味料は、3質量%~25質量%の糖を含むことにより、ナッツのような香ばしさとコクを有し、且つ、ニンニクの青臭い香りが抑制されている。糖の含有量が3質量%未満であると香ばしさとコクが感じられにくくなる。糖の含有量が25質量%を超えると、コクは強くなるがニンニクの好ましい風味が弱まり過ぎる。本実施形態に係るペースト調味料における糖の含有量の下限はより好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、上限はより好ましくは20質量%以下、より好ましくは17質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。
【0046】
本実施形態に係るペースト調味料中の糖の含有量の測定は、前記の「消費者庁 食品表示法 栄養成分等の分析方法 別添 栄養成分等の分析方法等 通則」に記載されている高速液体クロマトグラフ法による糖質の分析方法に基づいて行うことができる。
【0047】
本実施形態に係るペースト調味料に含まれる水は、原料混合物に水として配合されたものには限らず、水以外の形態で配合された原料(例えばニンニク)に由来する水も包含する。
【0048】
本実施形態に係るペースト調味料は、35質量%~75質量%の水を含むことにより、ナッツのような香ばしさとコクを有し、且つ、ニンニクの青臭い香りが抑制されている。ペースト調味料中の水が35質量%未満である場合、製品の流動性が低く製造が困難なことがある。ペースト調味料中の水が75質量%超である場合、香ばしさ及びコクが感じられ難い。本実施形態に係るペースト調味料における水の含有量の下限はより好ましくは40質量%以上であり、上限はより好ましくは70質量%以下、特に好ましくは65質量%以下である。
【0049】
水の含有量の測定は、前記の「消費者庁 食品表示法 栄養成分等の分析方法 別添 栄養成分等の分析方法等 通則」に記載されている減圧加熱乾燥法の乾燥助剤(70℃、5時間)を用いる方法に基づいて行うことができる。
【0050】
本実施形態に係るペースト調味料は、好ましくは、25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が500mPa・s~63,000mPa・sである。この粘性を有するペースト調味料は、水分の分離が抑制され、且つ、流動性を有するため取扱いが容易であるという点で好ましい。
【0051】
ペースト調味料の粘度は、直径1mmの粒子を超えるサイズを有する固体を取り除いたサンプルを回転式粘弾性測定装置(Anton Paar社製MCR102)を用いCYLINDER B-CC25のボブシリンダー、25℃にて、ずり速度0.1s-1から31s-1までの間を低ずり速度側から測定することにより測定することができる。
【0052】
本実施形態に係るペースト調味料は、調味料に配合され得る他の成分を更に含んでもよい。前記他の成分としては、例えば、香辛料、果汁、食塩、酵母エキス、チャツネ、風味油脂、たんぱく加水分解物、ゼラチン、トマトペースト、各種畜肉エキス、各種海鮮エキス、各種野菜エキス、ウスターソース、トマトケチャップ、デキストリン、着色料、香料、甘味料、苦味料、酸味料、うま味調味料、発酵調味料、タンパク加水分解物、保存料、防カビ剤、酸化防止剤、乳化剤、pH調整剤、かんすい、増粘安定剤、酵素、製造用剤、栄養強化剤、みょうばん等が挙げられる。
【0053】
本実施形態に係るペースト調味料は、上記の通り容器に収容された容器詰めペースト調味料として提供されることが好ましい。この場合の容器は、加圧加熱耐性を有する容器であることが好ましく、パウチ、パック等の形態であることができる。加圧加熱耐性を有する容器の素材としては、紙、缶、コーティング紙、PET等の樹脂、アルミニウム等の金属、ガラス等が使用できる。加圧加熱耐性を有する容器は、好ましくは樹脂フィルムから構成される。樹脂フィルムは、樹脂層に加えてアルミニウム箔等の金属箔の層を更に含むものであってもよい。樹脂フィルムは、PET(ポリエチレンテレフタレート)/NY(ナイロン)/AL(アルミニウム箔)/CPP(無延伸ポリプロピレン)、PET/NY/CPP、PET/NY/NY/CPP、PET/エバール(商標)/NY/CPP、アルミ蒸着PET/NY/CPP、透明蒸着PET/NY/CPP等の層構造を有する多層フィルムであることが好ましい。
【0054】
<ペースト調味料の製造方法>
本発明の第2の実施形態は、
生ニンニクとしての換算含有量が150質量%~500質量%のニンニク、
3質量%~25質量%の脂質、
3質量%~25質量%の還元糖、及び、
35質量%~75質量%の水
を含む原料混合物を容器に収容し密封する工程(この工程を「第1工程」と称する場合がある)、並びに、
前記容器中の前記原料混合物を、最高到達品温が100℃~140℃、加熱価が33~80となるように加圧加熱処理して、前記容器中においてペースト調味料を調製する工程(この工程を「第2工程」と称する場合がある)
を含み、
前記加熱価は、品温A(℃)に対して10{(A-120)/30}で求められる値を加熱時間(分)で積分した値である、
ペースト調味料の製造方法、
に関する。
【0055】
本実施形態に係る方法では、ニンニクの好ましい風味と、ニンニクを加熱調理することにより生じるコクや香ばしさ等の風味を有するペースト調味料を製造することができる。本実施形態に係る方法によれば、所定配合の原料混合物を容器内に密封した状態で加圧加熱するため、開放条件下での加熱では揮発してしまう香気成分や風味に関与する成分(例えばニンニクに特徴的な揮発性の含硫化合物)を含有するペースト調味料が得られる。また、本実施形態に係る方法では容器ごとレトルト処理装置や圧力釜等の加圧加熱装置により加圧加熱処理するため、製造されるペースト調味料の品質を、ロット間でのばらつきが少ない一定の品質にすることができる。本実施形態に係る方法により製造されたペースト調味料は、容器詰めペースト調味料として常温流通が可能である。本実施形態に係る方法により製造されるペースト調味料は、好ましくは、本発明の第1の実施形態に係るペースト調味料に関して説明した特徴を有する。
【0056】
生ニンニクとしての換算含有量が150質量%~500質量%のニンニクを含む前記原料混合物を前記第2工程において加圧加熱処理して得られるペースト調味料は、ニンニクの風味と、ナッツのような香ばしさやコクを有し、且つ、ニンニクの青臭い香りが抑制されている。ニンニクの生ニンニクとしての換算含有量が150質量%未満であると、製造されるペースト調味料のコク、香ばしさ及びニンニクの好ましい風味が十分でない場合がある。ニンニクの生ニンニクとしての換算含有量が500質量%を上回ると、製造されるペースト調味料のニンニクの風味が強すぎる場合がある。また、生ニンニクとしての換算含有量が500質量%を上回る量のニンニクは水への分散が困難であるため、ペースト調味料の生産が困難な場合がある。前記原料混合物における、生ニンニクとしての換算含有量としての、ニンニクの含有量の下限は、好ましくは200質量%以上、より好ましくは210質量%以上、より好ましくは230質量%以上であり、ニンニクの含有量の上限は、好ましくは400質量%以下、より好ましくは350質量%以下、より好ましくは320質量%以下である。
【0057】
前記原料混合物に配合するニンニクは、乾燥ニンニク及び生ニンニクの1種以上であることができる。乾燥ニンニクは、すりおろした生ニンニク、生ニンニクの粉砕物、生ニンニクのスライス片、生ニンニクをみじん切りしたダイス片等の形態の生ニンニクの乾燥物であり、好ましくは乾燥ニンニク粉末である。乾燥ニンニク粉末は、すりおろした生ニンニクや生ニンニクの粉砕物を乾燥すること、生ニンニクを乾燥させたのち粉砕すること、生ニンニクのスライス片又はダイス片を乾燥させたのち更に粉砕することにより得ることができる。生ニンニクは、すりおろした生ニンニク、生ニンニクの粉砕物、生ニンニクのスライス片、生ニンニクをみじん切りしたダイス片等の形態の生ニンニクである。生ニンニクは、好ましくは、すりおろした生ニンニク、生ニンニクの粉砕物等のペースト状の生ニンニクである。各種形態の生ニンニクの凍結品又はその解凍品も、生ニンニクとして利用できる。
【0058】
前記原料混合物に配合するニンニクは、好ましくは乾燥ニンニクを含み、より好ましくは乾燥ニンニクと生ニンニクとを含む。乾燥ニンニクを含む前記原料混合物を前記第2工程において加圧加熱処理することにより、コクと香ばしい風味のペースト調味料が得られる。また乾燥ニンニクと生ニンニクとを併用することで、コクと香ばしい風味を有し、且つ、ニンニクの好ましい風味がより強いペースト調味料が得られる。
【0059】
より好ましい実施形態では、前記原料混合物におけるニンニクは、ニンニクの全量を100質量%としたとき好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは75質量%以上の乾燥ニンニクを含み、残量の生ニンニクを含む。この好ましい実施形態では、乾燥ニンニクの含有量の上限は限定されずニンニクの全量が乾燥ニンニクであってもよいが、好ましくはニンニクの全量100質量%のうち、95質量%以下又は90質量%以下が乾燥ニンニクであり、残量が生ニンニクである。
【0060】
前記原料混合物は更に、3質量%~25質量%の脂質を含む。この量の脂質を含む前記原料混合物を容器内に密封し前記第2工程において加圧加熱処理することで、ニンニクの風味と、ナッツのような香ばしさやコクを有し、且つ、ニンニクの青臭い香りが抑制されたペースト調味料が得られる。前記原料混合物の脂質の含有量が3質量%未満である場合、ペースト調味料の香ばしさとコクが十分でないことがあり、25質量%超である場合、製造されるペースト調味料中での脂質が他の成分と分離することがある。前記原料混合物における脂質の含有量の下限はより好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、上限はより好ましくは22質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。原料混合物中の脂質は、油脂等の脂質として原料混合物に配合されたものには限らず、脂質以外の形態で配合された原料に由来する脂質も包含する。前記原料混合物中の脂質の種類及び脂質の測定方法は、本発明の第1の実施形態に係るペースト調味料中の脂質に関して説明した通りである。
【0061】
前記原料混合物は更に、3質量%~25質量%の還元糖を含む。この量の還元糖を含む前記原料混合物を容器内に密封し前記第2工程において加圧加熱処理することで、容器内にて、還元糖と、ニンニクに由来するアミノ酸や含硫化合物とがメイラード反応等の反応を生じ、ナッツのような香ばしさとコクを有し、且つ、ニンニクの青臭い香りが抑制されたペースト調味料が得られる。前記原料混合物中の還元糖の含有量が3質量%未満であると、ペースト調味料に香ばしさとコクが感じられにくくなる。前記原料混合物中の還元糖の含有量が25質量%を超えると、ペースト調味料のコクは強くなるがニンニクの風味が弱まり過ぎる。前記原料混合物中の還元糖の含有量の下限はより好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、上限はより好ましくは20質量%以下、より好ましくは17質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。還元糖としては、グルコース、フルクトース、キシロース等の単糖類、ラクトース、マルトース、イソマルトース等の二糖類が挙げられ、前記原料混合物は1種以上の還元糖を含むことができる。還元糖は、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖等の形態で配合することができる。前記原料混合物中の還元糖は、還元糖として配合されたものには限らず、還元糖以外の形態で配合された原料(例えばニンニク)に由来する還元糖も包含する。前記原料混合物中の還元糖の測定方法は、本発明の第1の実施形態に係るペースト調味料中の還元糖に関して説明した通りである。
【0062】
前記原料混合物は更に、35質量%~75質量%の水を含むことにより、上記の好ましい風味を有するペースト調味料が得られる。前記原料混合物中の水が35質量%未満である場合、流動性が低く製造が困難なことがある。前記原料混合物中の水が75質量%超である場合、ペースト調味料に香ばしさ及びコクが感じられ難い。前記原料混合物における水の含有量の下限はより好ましくは40質量%以上であり、上限はより好ましくは70質量%以下、特に好ましくは65質量%以下である。前記原料混合物中の水は、水として配合されたものには限らず、水以外の形態で配合された原料(例えばニンニク)に由来する水も包含する。前記原料混合物中の水の測定方法は、本発明の第1の実施形態に係るペースト調味料中の水に関して説明した通りである。
【0063】
前記原料混合物は、当技術分野の調味料に配合され得る他の成分を更に含んでもよい。前記他の成分の具体例は、本発明の第1の実施形態におけるペースト調味料に配合され得る他の成分に関して説明した通りである。
【0064】
前記第1工程において用いる容器は、本発明の第1の実施形態における容器に関して説明した通りである。
【0065】
前記原料混合物の容器内へ収容し密封する前記第1工程は、例えば開放口を有する前記容器を用意し、前記開放口を通じて前記原料混合物を前記容器内に収容した後、前記開放口をヒートシール等で封鎖することを含む。この場合、前記開放口を封鎖する前に容器内の空気をできるだけ排出しておくことが好ましい。
【0066】
次に前記第2工程について説明する。
【0067】
前記第2工程において「加熱価」は、品温A(℃)に対して10{(A-120)/30}で求められる値を加熱時間(分)で積分した値であり、加熱量の大きさを示すパラメーターである。加熱価は、加圧加熱処理中、品温を毎分測定することにより、算出することができる。例えば、6分間の加圧加熱処理において、各時間における品温(℃)が、表1に示される値であったとする。
【0068】
【0069】
上記の6分間の加圧加熱処理の場合、加熱価は12.6と算出することができる。
【0070】
前記第2工程において、最高到達品温が100℃~140℃、加熱価が33~80となるように加圧加熱処理を行うことにより、容器内で原料混合物の加熱とメイラード反応等の反応が進み、上記の好ましい風味を有するペースト調味料が容器内で調製される。容器内で加圧加熱処理を行うため、開放条件下での加熱では揮発する香気成分や風味に関与する成分(例えばニンニクに特徴的な揮発性の含硫化合物)が揮発せずにペースト調味料に含まれる。加熱価が33未満である場合、反応が十分に進まず好ましい風味が得られにくい。加熱価が80超である場合、反応が進み過ぎ焦げたような味が感じられる。加熱価は、好ましくは35以上、より好ましくは45以上であり、好ましくは70以下、より好ましくは65以下である。最高到達品温はより好ましくは110℃~130℃である。
【0071】
前記第2工程における加圧加熱処理は、レトルト処理装置や圧力釜を用いて実施することができる。
【0072】
<食品組成物及び医薬品組成物>
本発明の第3の実施形態は、
100gあたり50mg以上のS-アリルシステインを含有する食品組成物、
に関する。
【0073】
本発明の第4の実施形態は、
100gあたり50mg以上のS-アリルシステインを含有する医薬品組成物、
に関する。
【0074】
S-アリルシステインには様々な生理活性が知られている。本発明の第3の実施形態に係る食品組成物は、S-アリルシステインを補給する目的でヒトが摂取することができる。本発明の第4の実施形態に係る医薬品組成物は、S-アリルシステインの補給を必要とするヒト又は非ヒト動物に投与することができる。
【0075】
本発明の第3の実施形態に係る食品組成物及び第4の実施形態に係る医薬品組成物において、S-アリルシステインの含有量はより好ましくは、より好ましくは60mg/100mg以上、更に好ましくは65mg/100mg以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは500mg/100mg以下、より好ましくは300mg/100mg以下である。
【0076】
本発明の第3の実施形態に係る食品組成物及び第4の実施形態に係る医薬品組成物は、より好ましくは、組成物全量100gあたり50mg以上(50mg/100g以上)のS-アリルシステインとなる量のニンニクを含む。
【0077】
本発明の第3の実施形態に係る食品組成物は、食品として許容される成分を更に含むことができる。本発明の第3の実施形態に係る食品組成物の形態は特に限定されず、固形状、半固形状(ペースト状)、液状等の各種形態であってよい。
【0078】
本発明の第4の実施形態に係る医薬品組成物は、医薬品として許容される成分、例えば担体、添加物、賦形剤、を更に含むことができる。本発明の第4の実施形態に係る医薬品組成物は経口投与される組成物であることが好ましく、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤等の経口剤であることが好ましい。
【0079】
<ニンニク中の成分を増加させる方法>
本発明の第5の実施形態は、
ニンニク中の、S-アリルシステイン、アリルメチルスルフィド、ピラジン、ジメチルジスルフィド、2-メチルピラジン、2-エチル-6-メチルピラジン、アリルメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、ジアリルジスルフィド、アリルメチルトリスルフィド、プロピルメチルペルトリスルフィド、2-プロペニルプロピルトリスルフィド、及び、ジアリルテトラスルフィドからなる群から選択される1以上の成分を増加させる方法であって、
生ニンニクとしての換算含有量が150質量%~500質量%のニンニク、
3質量%~25質量%の脂質、
3質量%~25質量%の還元糖、及び、
35質量%~75質量%の水
を含む原料混合物を容器に収容し密封する工程(第1工程)、並びに、
前記容器中の前記原料混合物を、最高到達品温が100℃~140℃、加熱価が33~80となるように加圧加熱処理する工程(第2工程)
を含み、
前記加熱価は、品温A(℃)に対して10{(A-120)/30}で求められる値を加熱時間(分)で積分した値である、
前記方法、
に関する。
【0080】
本実施形態に係る方法によれば、ニンニク中の前記1以上の成分の含量を、当初の含量よりも高めることができる。本発明の第1の実施形態に関して説明したとおり、S-アリルシステインは、ニンニクを脂質、糖及び水とともに加熱調理したときに生じる、種々の有益な生理活性を有することが知られている成分である。アリルメチルスルフィド、ピラジン、ジメチルジスルフィド、2-メチルピラジン、2-エチル-6-メチルピラジン、アリルメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、ジアリルジスルフィド、アリルメチルトリスルフィド、プロピルメチルペルトリスルフィド、2-プロペニルプロピルトリスルフィド、及び、ジアリルテトラスルフィドは、ニンニクが有する好ましい香りに関与する成分である。
【0081】
本実施形態に係る方法において、増加される前記1以上の成分は、少なくともS-アリルシステインを含むことが好ましく、少なくともS-アリルシステイン、アリルメチルスルフィド、ピラジン、ジメチルジスルフィド、2-メチルピラジン、及び、2-エチル-6-メチルピラジンを含むことが好ましく、S-アリルシステイン、アリルメチルスルフィド、ピラジン、ジメチルジスルフィド、2-メチルピラジン、2-エチル-6-メチルピラジン、アリルメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、ジアリルジスルフィド、アリルメチルトリスルフィド、プロピルメチルペルトリスルフィド、2-プロペニルプロピルトリスルフィド、及び、ジアリルテトラスルフィドの全てを含むことが好ましい。
【0082】
本実施形態に係る方法において、前記ニンニクは、乾燥ニンニク及び生ニンニクの1種以上であることができ、好ましくは乾燥ニンニクを含む。本実施形態に係る方法は、乾燥ニンニク中の前記1以上の成分を特に顕著に増加させることができる。前記ニンニクは、特に好ましくは、前記ニンニクの全量を100質量%としたとき好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは75質量%以上の乾燥ニンニクを含み、残量の生ニンニクを含む。この好ましい実施形態では、乾燥ニンニクの含有量の上限は限定されずニンニクの全量が乾燥ニンニクであってもよい。
【0083】
本実施形態に係る方法における、ニンニク、脂質、還元糖、水、原料混合物、容器、第1工程、第2工程、加熱価等の特徴は、<ペースト調味料の製造方法>の欄で説明した、本発明の第2の実施形態に係るペースト調味料の製造方法における各特徴と同じであり、説明を省略する。
【実施例0084】
1.実験1
1.1.サンプル
下記表に示す配合で原材料を混合し、85℃まで加熱し、その後パウチに充填し密封して、加圧加熱により120℃63分相当(加熱価=63)の加熱を実施して、パウチ内でペースト調味料を調製した。実験1-2、1-3では、冷凍ガーリックペースト(すりおろした生ニンニクの冷凍品を解凍したもの。「生ニンニク」と称する場合がある)とガーリックパウダー(ニンニクの乾燥粉末。「乾燥ニンニク」と称する場合がある)とを、生ニンニク:乾燥ニンニクの質量の比が1:3.0又は1:3.6となるように配合した。実験1-1では生ニンニクを用いず乾燥ニンニクのみを用いた。
【0085】
使用したガーリックパウダー(乾燥ニンニク)の水分は7質量%、冷凍ガーリックペースト(生ニンニク)の水分は66.5質量%であった。実験2以後でも同じ水分のガーリックパウダー及び冷凍ガーリックペーストを使用した。
【0086】
【0087】
1.2.評価項目
専門パネラー1名が、各実験で得られたペースト調味料の風味の下記の各項目を絶対評価で1~5点で評価した。結果を下記表に示す。
【0088】
後味の伸び:後味が伸びないものを1、伸びるものを5
青臭さ:青臭いものを1、青臭くないものを5
ニンニクの香り:ニンニクの香りがしないものを1、ニンニクの香りがするものを5
香ばしさ:香ばしくないものを1、香ばしいものを5
【0089】
各評価項目について、1及び2は許容できない品質であり、3以上であれば許容できる品質であることを意味する。
【0090】
【0091】
1.3.評価まとめ
乾燥ニンニクのみを配合した実験1-1のペースト調味料は、ニンニクの香りと青臭さが抑制され、香ばしさ及び後味の伸びが強いものであった。
【0092】
乾燥ニンニクと生ニンニクとを配合した実験1-2及び1-3のペースト調味料は、ニンニクの好ましい香りを有するとともに、強い香ばしさ及び後味の伸びを有していた。
【0093】
2.実験2
2.1.サンプル
還元糖である果糖ブドウ糖液糖を含む下記表に示す配合で原材料を混合し、85℃まで加熱し、その後パウチに充填し密封して、加圧加熱により、120℃63分相当(加熱価=63)の加熱を実施して、パウチ内でペースト調味料を調製した。
【0094】
【0095】
2.2.評価項目
専門パネラー1名が、各実験で得られたペースト調味料の風味の下記の各項目を絶対評価で1~5点で評価した。結果を下記表に示す。
【0096】
後味の伸び:後味が伸びないものを1、伸びるものを5
青臭さ:青臭いものを1、青臭くないものを5
ニンニクの香り:ニンニクの香りがしないものを1、ニンニクの香りがするものを5
香ばしさ:香ばしくないものを1、香ばしいものを5
【0097】
各評価項目について、1及び2は許容できない品質であり、3以上であれば許容できる品質であることを意味する。
【0098】
【0099】
2.3.評価まとめ
還元糖である果糖ブドウ糖液糖を配合し加熱して調製した実験2-2のペースト調味料は、青臭さは感じられず、後味の伸び、ニンニクの香り及び香ばしさが強く感じられた。
【0100】
一方、ショ糖を配合し加熱して調製した実験2-1のペースト調味料は、香ばしさや後味の伸びが無く、ニンニクの青臭さや香りが顕著であった。
【0101】
3.実験3
3.1.サンプル
油脂の量が異なる下記表に示す4種類の配合で原材料を混合し、85℃まで加熱し、その後パウチに充填し密封して、加圧加熱により、120℃63分相当(加熱価=63)の加熱を実施して、パウチ内でペースト調味料を調製した。
【0102】
【0103】
3.2.評価項目
専門パネラー1名が、各実験で得られたペースト調味料の風味の下記の各項目を絶対評価で1~5点で評価した。結果を下記表に示す。
【0104】
後味の伸び:後味が伸びないものを1、伸びるものを5
青臭さ:青臭いものを1、青臭くないものを5
ニンニクの香り:ニンニクの香りがしないものを1、ニンニクの香りがするものを5
香ばしさ:香ばしくないものを1、香ばしいものを5
【0105】
各評価項目について、1及び2は許容できない品質であり、3以上であれば許容できる品質であることを意味する。
【0106】
【0107】
3.3.評価まとめ
ペースト調味料は、油脂の配合量が多いものほど、ナッツのような強い香ばしさを有し、青臭さは抑制された。
【0108】
4.実験4
4.1.サンプル
果糖ブドウ糖液糖の配合量が異なる下記表に示す配合の原材料を混合し、85℃まで加熱し、その後パウチに充填し密封して、加圧加熱により、120℃63分相当(加熱価=63)の加熱を実施して、パウチ内でペースト調味料を調製した。
【0109】
【0110】
4.2.評価項目
専門パネラー1名が、各実験で得られたペースト調味料の風味の下記の各項目を絶対評価で1~5点で評価した。結果を下記表に示す。
【0111】
後味の伸び:後味が伸びないものを1、伸びるものを5
青臭さ:青臭いものを1、青臭くないものを5
ニンニクの香り:ニンニクの香りがしないものを1、ニンニクの香りがするものを5
香ばしさ:香ばしくないものを1、香ばしいものを5
【0112】
各評価項目について、1及び2は許容できない品質であり、3以上であれば許容できる品質であることを意味する。
【0113】
【0114】
4.3.評価まとめ
糖の配合量が多いペースト調味料ほど、加熱により生じる香ばしさやコクが強く、ニンニク独特の青臭さやニンニクの香りは抑制された。糖を配合しない実験4-1では、香ばしさや複雑な風味が形成されず、ニンニク独特の青臭さやニンニクの香りが目立って感じられた。
【0115】
一方、糖の配合量の多い実施例4-4のペースト調味料は、香ばしさとコクが強いが、ニンニクらしい香りはやや抑制されていた。
【0116】
5.実験5
5.1.サンプル
ガーリックパウダーの配合量が異なる下記表に示す配合の原材料を混合し、85℃まで加熱し、その後パウチに充填し密封して、加圧加熱により、120℃63分相当(加熱価=63)の加熱を実施して、パウチ内でペースト調味料を調製した。使用したガーリックパウダーの水分が7質量%であることと、実験1等で使用した冷凍ガーリックペースト(生ニンニク)の水分が66.5質量%であることとに基づいて、各配合のペースト調味料に含まれるガーリックパウダーのニンニク生換算量を算出した。
【0117】
【0118】
5.2.評価項目
専門パネラー1名が、各実験で得られたペースト調味料の風味の下記の各項目を絶対評価で1~5点で評価した。結果を下記表に示す。
【0119】
後味の伸び:後味が伸びないものを1、伸びるものを5
青臭さ:青臭いものを1、青臭くないものを5
ニンニクの香り:ニンニクの香りがしないものを1、ニンニクの香りがするものを5
香ばしさ:香ばしくないものを1、香ばしいものを5
【0120】
各評価項目について、1及び2は許容できない品質であり、3以上であれば許容できる品質であることを意味する。
【0121】
【0122】
5.3.評価まとめ
ガーリックパウダーの濃度が高いペースト調味料ほど、強い香ばしさとコクを有していた。
【0123】
6.実験6
6.1.サンプル
下記表に示す配合の原材料を混合し、85℃まで加熱し、その後パウチに充填し密封して、加圧加熱により、120℃63分相当(加熱価=63)の加熱を実施して、パウチ内でペースト調味料のサンプル(No.1~13)を調製した。使用したガーリックパウダーは水分が7質量%であることと、実験1等で使用した冷凍ガーリックペースト(生ニンニク)の水分が66.5質量%であることとに基づいて、各サンプル中の、生ニンニクとして換算したガーリックパウダーの配合量が100質量%、200質量%又は300質量%となるように、ガーリックパウダー(水分7質量%)の配合量を調整した。
【0124】
【0125】
【0126】
6.2.S-アリルシステイン含量の定量
上記6.1.で調製したペースト調味料のサンプルNo.1~13中のS-アリルシステインの含有量を測定した。測定方法は次の通りである。
【0127】
(試験操作)
各サンプルをメタノール:水:ギ酸(50:50:1(v/v/v))溶液で混濁する。
超音波振盪、遠心分離を行った後、上澄みを採取する。
上澄みをミニカラムに負荷し、溶離、精製する。
蒸留水で定容し、0.45μLフィルターでろ過する。
HPLCで測定し、検量線にて定量する。
【0128】
(測定条件)
装置名:日立Chromaster HPLC
カラム:CapcellPak SCX UG80 HPLCイオン交換カラム
カラム温度:45℃
移動相:10mMリン酸カリウム
検出器:UV210nm
【0129】
各サンプルの原材料として用いた前記ガーリックパウダー中のS-アリルシステインの含有量を上記方法で測定した。前記ガーリックパウダー(水分7質量%)は、100gあたり61mgのS-アリルシステインを含んでいた。また、すりおろした生ニンニクを冷凍した冷凍ガーリックペースト(水分66.5質量%)の解凍品についても同様に測定したところ、100gあたり30mgのS-アリルシステインを含んでいた。
【0130】
ペースト調味料の各サンプル中のS-アリルシステインの含有量の、ガーリックパウダーの配合量に基づいて算出した計算値、及び、実際の測定値を、サンプル100gあたりのS-アリルシステインの質量(mg/100g)として下記表に示す。いずれのサンプルでもS-アリルシステインの含有量の測定値は、計算値を大幅に上回っていた。ガーリックパウダー以外の配合原料は含硫化合物を含まないことから、加圧加熱処理により、ガーリックパウダーからS-アリルシステインが生成されたと推定される。
【0131】
【0132】
【0133】
6.3.香気成分の分析
上記6.1.で調製したペースト調味料のサンプルNo.1~13、及び、原材料として配合したガーリックパウダー、並びに、比較のためすりおろした生ニンニクを冷凍した冷凍ガーリックペーストの解凍品中の、揮発性成分(香気成分)を、ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)により分析した。
【0134】
GC/MSの分析方法は以下の通りである。
【0135】
(試験操作)
1.20mL容固相マイクロ抽出(SPME)用ガラスバイアルに検体を1g採取した。前記検体を収容した前記バイアル内のヘッドスペース(気相)に、下記の条件でSPMEファイバーを曝し、前記SPMEファイバーに揮発性成分を吸着させた。
2.前記SPMEファイバーに吸着された揮発性成分を、下記の測定条件に沿って、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)で測定した。
3.測定後、検出された成分のうち、質量スペクトルがライブラリと90%以上の一致率となったものを選出した。ライブラリはNIST20を使用した。
【0136】
(使用機器および解析ソフト)
◆GC-MS
メーカー:Agilent Technologies
GC型番:7890A
MS型番:5975C
(測定条件)
◆SPME
SPMEファイバー:85μm厚 アセンブリカルボキセン/ポリジメチルシロキサン(CAR/PDMS) Stableflexタイプ
吸着条件:60℃5分安定化→60℃10分吸着
◆GC
ライナー:SPME用
カラム:(5%-フェニル)-メチルポリシロキサンキャピラリカラム30m,直径0.25mm,膜厚0.25μm
注入時間:300秒
注入口:250℃
スプリットレス(2分後にスプリットベントへパージ)
コンスタントフロー制御:1.0ml/min
オーブン:40℃5分→10℃/分昇温→230℃
ポストラン:300℃10分
トランスファライン:280℃
◆MS
イオン源:230℃
イオン化電圧:70eV
四重極:150℃
スキャン範囲:29-300(m/z)
【0137】
各サンプル中に検出された成分の、ガスクロマトグラフィーの保持時間(分)、メインフラグメントの質量電荷比(m/z)、及び、ピーク面積の合計値を下記表に示す。
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
ペースト調味料のサンプルNo.1~13で検出された成分ID1~15のピーク面積(合計値)を、ガーリックパウダーで検出された各成分のピーク面積(合計値)で除した比を下記表に示す。表中**は、ペースト調味料のサンプルでは検出されたが、ガーリックパウダーでは検出限界以下であったため比が算出できないことを示す。すなわち**に対応する成分は、ガーリックパウダーでは検出限界以下であるが、ガーリックパウダーを含む所定の配合の原材料を容器中で加圧加熱処理して得たペースト調味料には検出可能な濃度で含まれる成分である。
【0142】
【0143】
【0144】
同様に、ペースト調味料のサンプルNo.1~13で検出された成分ID1~15のピーク面積(合計値)を、冷凍ガーリックペーストで検出された各成分のピーク面積(合計値)で除した比を下記表に示す。表中**は、ペースト調味料のサンプルでは検出されたが、冷凍ガーリックペーストでは検出限界以下であったため比が算出できないことを示す。すなわち**に対応する成分は、冷凍ガーリックペーストでは検出限界以下であるが、ガーリックパウダーを含む所定の配合の原材料を容器中で加圧加熱処理して得たペースト調味料には検出可能な濃度で含まれる成分である。
【0145】
【0146】
【0147】
ペースト調味料のサンプルNo.1~13は、ガーリックパウダーと比較して、好ましい香気に関与すると考えられるアリルメチルスルフィド(ID:1)、ピラジン(ID:2)、ジメチルジスルフィド(ID:3)、2-メチルピラジン(ID:5)、アリルメチルジスルフィド(ID:6)、ジメチルトリスルフィド(ID:8)、2-エチル-6-メチルピラジン(ID:9)、ジアリルジスルフィド(ID:10)、アリルメチルトリスルフィド(ID:11)、プロピルメチルペルトリスルフィド(ID:12)、2-プロペニルプロピルトリスルフィド(ID:13)、及び、ジアリルテトラスルフィド(ID:14)をより高濃度で含み、好ましくない香気に関与すると考えられるヘキサナール(ID:4)をより低濃度で含む。この傾向は特に、サンプルNo.5~13で顕著であった。すなわち、ガーリックパウダーを含む所定の配合の原材料を容器中で加圧加熱処理することにより、ガーリックパウダーよりも好ましい香りを有するペースト調味料が得られた。
【0148】
ペースト調味料のサンプルNo.1~13は、上記の通り12種の好ましい香気成分をガーリックパウダーよりも高濃度に含むが、そのうち、アリルメチルスルフィド(ID:1)、ピラジン(ID:2)、ジメチルジスルフィド(ID:3)、2-メチルピラジン(ID:5)、及び、2-エチル-6-メチルピラジン(ID:9)については、冷凍ガーリックペーストよりも更に高濃度であった。しかも、ペースト調味料のサンプルNo.1~13中の、好ましくない香気に関与すると考えられるヘキサナール(ID:4)及び3H-1,2-ジチオール(ID:7)の濃度は、冷凍ガーリックペーストよりも低濃度であった。
【0149】
以上の結果は、ペースト調味料のサンプルNo.1~13が、ガーリックパウダー及び冷凍ガーリックペーストよりも好ましい香りを有することを示す。
【0150】
7.実験7
7.1.サンプル
下記表に示す配合の原材料を混合し、85℃まで加熱し、その後パウチに充填し密封して、加圧加熱により、120℃63分相当(加熱価=63)の加熱を実施して、パウチ内でペースト調味料のサンプル(No.14及び15)を調製した。使用したガーリックパウダーは水分が7質量%であることと、使用した冷凍ガーリックペースト(生ニンニク)の水分が66.5質量%であることとに基づいて、各サンプル中の、生ニンニクとして換算したガーリックパウダーの配合量を算出した。
【0151】
【0152】
7.2.香気成分の分析
上記7.1.で調製したペースト調味料のサンプルNo.14及び15、並びに、原材料として配合したガーリックパウダー及び冷凍ガーリックペーストの解凍品中の、揮発性成分(香気成分)を、ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)により分析した。
【0153】
GC/MSの分析方法は実験6に記載の通りである。
【0154】
各サンプル中に検出された成分の、ガスクロマトグラフィーの保持時間(分)、メインフラグメントの質量電荷比(m/z)、及び、ピーク面積の合計値を下記表に示す。
【0155】
【0156】
ペースト調味料のサンプルNo.14及び15で検出された成分ID1~15のピーク面積(合計値)を、ガーリックパウダーで検出された各成分のピーク面積(合計値)で除した比を下記表に示す。表中**は、ペースト調味料のサンプルでは検出されたが、ガーリックパウダーでは検出限界以下であったため比が算出できないことを示す。すなわち**に対応する成分は、ガーリックパウダーでは検出限界以下であるが、ガーリックパウダーを含む所定の配合の原材料を容器中で加圧加熱処理して得たペースト調味料には検出可能な濃度で含まれる成分である。
【0157】
【0158】
同様に、ペースト調味料のサンプルNo.14及び15で検出された成分ID1~15のピーク面積(合計値)を、冷凍ガーリックペーストで検出された各成分のピーク面積(合計値)で除した比を下記表に示す。表中**は、ペースト調味料のサンプルでは検出されたが、冷凍ガーリックペーストでは検出限界以下であったため比が算出できないことを示す。すなわち**に対応する成分は、冷凍ガーリックペーストでは検出限界以下であるが、所定の配合の原材料を容器中で加圧加熱処理して得たペースト調味料には検出可能な濃度で含まれる成分である。
【0159】
【0160】
非還元糖(グラニュー糖、ショ糖)を糖原料として配合したペースト調味料のサンプルNo.14及び還元糖(果糖ブドウ糖液糖)を糖原料として配合したペースト調味料のサンプルNo.15において、ガーリックパウダー及び冷凍ガーリックペーストと比較して増加及び減少している成分の種類は、実験6のサンプルNo.5~13と概ね同様であった。
【0161】
一方、サンプルNo.14とサンプルNo.15とを比較すると、サンプルNo.15は、好ましい香気に関与すると考えられるピラジン(ID:2)、2-メチルピラジン(ID:5)、2-プロペニルプロピルトリスルフィド(ID:13)、及び、ジアリルテトラスルフィド(ID:14)の濃度が顕著に高く、好ましくない香気に関与すると考えられる3H-1,2-ジチオール(ID:7)の濃度が顕著に低いことが確認された。実験2で確認された、果糖ブドウ糖液糖を配合した実験2-2のペースト調味料の、ショ糖を配合した実験2-1のペースト調味料と比較した好ましい香りは、これらの成分の違いに関連している可能性がある。