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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142170
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】バイポーラ型鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20241003BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241003BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20241003BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20241003BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/613
H01M10/6555
H01M10/6551
H01M10/653
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054214
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】西久保 英郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 寛一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩根 典靖
【テーマコード(参考)】
5H028
5H031
【Fターム(参考)】
5H028AA08
5H028BB01
5H028CC01
5H028CC08
5H028CC19
5H028CC22
5H028EE01
5H028EE04
5H028EE06
5H031AA01
5H031AA09
5H031BB02
5H031BB03
5H031CC01
5H031EE01
5H031EE02
5H031EE03
5H031KK01
(57)【要約】
【課題】発熱による電極の腐食劣化や電解液の減少等を大きく抑えて寿命の低下を抑制できるバイポーラ型鉛蓄電池を提供する。
【解決手段】鉛又は鉛合金からなる電極箔を有する正極112及び負極113で電解層121を挟んだセル120を複数積層して電気的に直列に接続したスタック101を備えたバイポーラ型鉛蓄電池100であって、スタック101の積層方向に隣り合うセル120の間に位置するように積層されてセル120と電気的に絶縁する板形状の金属板141を有していることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛又は鉛合金からなる電極箔を有する正極及び負極で電解層を挟んだセルを複数積層して電気的に直列に接続したスタックを備えたバイポーラ型鉛蓄電池であって、
前記スタックの積層方向に隣り合う前記セルの間に位置するように積層されて前記セルと電気的に絶縁する板形状の熱伝導手段を有している
ことを特徴とするバイポーラ型鉛蓄電池。
【請求項2】
前記熱伝導手段は、前記正極を一方面に設けられて前記負極を他方面に設けられるバイポーラプレートの内部に埋設された金属板である
ことを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ型鉛蓄電池。
【請求項3】
前記熱伝導手段は、前記正極を一方面に設けられた正極用モノポーラプレートの他方面と、前記負極を他方面に設けられた負極用モノポーラプレートの一方面との間に挟まれた金属板である
ことを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ型鉛蓄電池。
【請求項4】
前記金属板は、前記スタックの積層方向と直交する方向に当該スタックから露出する放熱フィンを有している
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のバイポーラ型鉛蓄電池。
【請求項5】
前記金属板の前記放熱フィンは、櫛歯形状に形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載のバイポーラ型鉛蓄電池。
【請求項6】
前記金属板の前記放熱フィンは、前記スタックの積層方向に沿うように配向されている
ことを特徴とする請求項4に記載のバイポーラ型鉛蓄電池。
【請求項7】
前記スタックの積層方向に隣り合う前記セルの間を電気的に接続する導通体と前記金属板との間に、熱伝導性フィラを含有するゴム又はグリースからなる伝熱材が介在している
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のバイポーラ型鉛蓄電池。
【請求項8】
前記熱伝導性フィラは、アルミナ,窒化アルミニウム,窒化ケイ素,窒化ホウ素,炭化ケイ素,炭化ホウ素,グラファイト,カーボンナノチューブのうちの少なくとも1種である
ことを特徴とする請求項7に記載のバイポーラ型鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイポーラ型鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
バイポーラ型鉛蓄電池は、鉛箔を有する正極と鉛箔を有する負極とで電解層を挟んだセルを複数積層して直列に電気的に接続したスタックを備えた構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2014-534582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したようなバイポーラ型鉛蓄電池は、使用していると、発電反応の際に発熱を伴ってしまう(特に、スタックの外側よりも内側ほど高温になり易い)。発熱により内部の温度が高くなると、電極の腐食劣化や電解液の減少等を招き易くなってしまい、寿命の低下を引き起こすおそれがあった。
【0005】
このようなことから、本発明は、発熱による電極の腐食劣化や電解液の減少等を大きく抑えて寿命の低下を抑制できるバイポーラ型鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するための、本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池は、鉛又は鉛合金からなる電極箔を有する正極及び負極で電解層を挟んだセルを複数積層して電気的に直列に接続したスタックを備えたバイポーラ型鉛蓄電池であって、前記スタックの積層方向に隣り合う前記セルの間に位置するように積層されて前記セルと電気的に絶縁する板形状の熱伝導手段を有していることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池は、上述したバイポーラ型鉛蓄電池において、前記熱伝導手段が、前記正極を一方面に設けられて前記負極を他方面に設けられるバイポーラプレートの内部に埋設された金属板であると好ましい。
【0008】
また、本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池は、上述したバイポーラ型鉛蓄電池において、前記熱伝導手段が、前記正極を一方面に設けられた正極用モノポーラプレートの他方面と、前記負極を他方面に設けられた負極用モノポーラプレートの一方面との間に挟まれた金属板であると好ましい。
【0009】
また、本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池は、上述したバイポーラ型鉛蓄電池において、前記金属板が、前記スタックの積層方向と直交する方向に当該スタックから露出する放熱フィンを有していると好ましい。
【0010】
また、本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池は、上述したバイポーラ型鉛蓄電池において、前記金属板の前記放熱フィンが、櫛歯形状に形成されていると好ましい。
【0011】
また、本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池は、上述したバイポーラ型鉛蓄電池において、前記金属板の前記放熱フィンが、前記スタックの積層方向に沿うように配向されていると好ましい。
【0012】
また、本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池は、上述したバイポーラ型鉛蓄電池において、前記スタックの積層方向に隣り合う前記セルの間を電気的に接続する導通体と前記金属板との間に、熱伝導性フィラを含有するゴム又はグリースからなる伝熱材が介在していると好ましい。
【0013】
また、本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池は、上述したバイポーラ型鉛蓄電池において、前記熱伝導性フィラが、アルミナ,窒化アルミニウム,窒化ケイ素,窒化ホウ素,炭化ケイ素,炭化ホウ素,グラファイト,カーボンナノチューブのうちの少なくとも1種であると好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池によれば、熱伝導手段が、スタックの内側の熱を外側へ向かって伝達拡散することができるので、スタック内の内側と外側との温度を均一にするように内側の温度を低下させることができる。したがって、使用に伴うスタックの内部温度の上昇を抑制することができるので、正極や負極の腐食劣化や電解液の減少等を大きく抑えることができ、寿命の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池の第1の実施形態の概略構造を示す断面図である。
図2図1の矢線II方向からみた図である。
図3】本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池の第2の実施形態の概略構造を示す断面図である。
図4図3の矢線IV方向からみた図である。
図5】本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池の第3の実施形態の概略構造を示す断面図である。
図6図5の矢線VI方向からみた図である。
図7】本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池の第4の実施形態の概略構造を示す断面図である。
図8図7の矢線VIII方向からみた図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではなく、各実施形態で説明した種々の技術的事項を、必要に応じて置き換えることや組み合わせることが適宜可能なものである。
【0017】
[第1の実施形態]
本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池の第1の実施形態を図1,2に基づいて説明する。
【0018】
図1,2に示すように、耐酸性を有する樹脂(例えばABS樹脂等)からなるバイポーラプレート111の周縁端には、リム111aが一体的に形成されている。バイポーラプレート111の一方面(図1中、上方面)には、鉛又は鉛合金からなる電極箔に正極用活物質層を設けた正極112が配設されている。バイポーラプレート111の他方面(図1中、下方面)には、鉛又は鉛合金からなる電極箔に負極用活物質層を設けた負極113が配設されている。
【0019】
バイポーラプレート111の内部には、正極112と負極113とを電気的に接続する円柱形状の導通体114が当該バイポーラプレート111を厚さ方向(図1中、上下方向)に貫通するようにして設けられている。このようなバイポーラプレート111,正極112,負極113,導通体114等により、本実施形態ではバイポーラ電極110を構成している。
【0020】
バイポーラ電極110の正極112側及び負極113側には、硫酸等の電解液を含むガラス繊維マット等の電解層121がそれぞれ配設されている。これらバイポーラ電極110と電解層121とは、交互に複数積層されている。言い換えると、正極112及び負極113で電解層121を挟んで複数積層されている。このような正極112,負極113,電解層121等により、本実施形態ではセル120を構成している。
【0021】
バイポーラ電極110と電解層121との積層方向、言い換えると、セル120の積層方向一方端側(図1中、上方端側)には、耐酸性を有する樹脂(例えばABS樹脂等)からなるエンドプレート132が配設されている。エンドプレート132の周縁端には、バイポーラ電極110との対向方向(図1中、上方向)へ向かって突出するリム132aが一体的に形成されている。エンドプレート132のバイポーラ電極110との対向面(図1中、下面)には、負極113が配設されている。
【0022】
バイポーラ電極110と電解層121との積層方向、言い換えると、セル120の積層方向他方端側(図1中、下方端側)には、耐酸性を有する樹脂(例えばABS樹脂等)からなるエンドプレート131が配設されている。エンドプレート131の周縁端には、バイポーラ電極110との対向方向(図1中、下方向)へ向かって突出するリム131aが一体的に形成されている。エンドプレート131のバイポーラ電極110との対向面(図1中、上面)には、正極112が配設されている。
【0023】
つまり、エンドプレート131,132は、対をなして、交互に複数積層されたバイポーラ電極110及び電解層121、言い換えると、交互に複数積層されたバイポーラプレート111及びセル120を間に位置させるように挟んでいるのである。積層されたバイポーラプレート111のリム111aとエンドプレート131,132のリム131a,132aとの間は、接合されて密着している。このようなバイポーラ電極110,電解層121,エンドプレート131,132等により、本実施形態では、セル120を電気的に直列に接続したスタック101を構成している。
【0024】
バイポーラプレート111の内部には、バイポーラプレート111の周縁端近傍にまで周縁端を位置させた板形状の熱伝導手段である金属板141が埋設されている。金属板141には、導通体114と接触することなく導通体114を貫通させる貫通穴141aが形成されている。金属板141の貫通穴141aと導通体114との隙間は、バイポーラプレート111と同じ材質の樹脂で埋め込まれている。
【0025】
つまり、金属板141は、スタック101の積層方向(図1中、上下方向)に隣り合うセル120の間に位置するように積層されてセル120と電気的に絶縁しているのである。なお、金属板141は、金属であれば特に限定されることはないが、アルミニウムや銅からなると、高熱伝導率であるため、非常に好ましい。
【0026】
このようなバイポーラ電極110は、貫通穴141aを形成した金属板141を内部に埋設しつつ導通体114用の挿入穴を貫通穴141aの内部に形成できるように金型内に金属板141を設置してバイポーラプレート111の樹脂材料でインサート成型等のインジェクション成型をすることにより、バイポーラプレート111を得ることができる。得られたバイポーラプレート111の上記挿入穴に導通体114を差し込んだ後、正極112及び負極113をバイポーラプレート111に載せて導通体114と接合することにより、製造できる。
【0027】
このような本実施形態に係るバイポーラ型鉛蓄電池100においては、使用に伴って、発電反応による発熱を生じる。この発熱は、スタック101の外側よりも内側ほど大きい。そのため、熱は、金属板141によって、スタック101の内側から外側へ向かって伝達拡散される。これにより、スタック101内は、内側と外側との温度が均一になるように内側の温度が低下するようになる。
【0028】
したがって、本実施形態に係るバイポーラ型鉛蓄電池100によれば、使用に伴うスタック101の内部温度の上昇を抑制することができるので、正極112や負極113の腐食劣化や電解液の減少等を大きく抑えることができ、寿命の低下を抑制することができる。
【0029】
[第2の実施形態]
本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池の第2の実施形態を図3,4に基づいて説明する。ただし、前述した実施形態と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0030】
図3,4に示すように、バイポーラプレート111の内部には、対をなす一組の辺(図3,4中、左右辺)をスタック101の積層方向と直交する方向(図3,4中左右方向)に露出させた放熱フィン242を有する金属板241が埋設されている。金属板241の放熱フィン242は、表面積を大きくするように櫛歯形状に形成されている。なお、図3,4中、241aは貫通穴である。
【0031】
このような本実施形態に係るバイポーラ型鉛蓄電池200においては、使用に伴って、発電反応による発熱を生じると、前述した実施形態の場合と同様に、金属板241によって、熱がスタック101の内側から外側へ向かって拡散し、放熱フィン242にまで伝達する。放熱フィン242に伝達した熱は、放熱フィン242からスタック101の外部へ放出される。これにより、スタック101内は、内側と外側との温度が均一になるように内側の温度が低下する。
【0032】
したがって、本実施形態に係るバイポーラ型鉛蓄電池200によれば、放熱フィン242によってスタック101の外部へ放熱することができるので、前述した実施形態の場合よりも冷却効率を高めることができ、スタック101の内側の温度上昇をより効率的に抑制することができる。
【0033】
[第3の実施形態]
本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池の第3の実施形態を図5,6に基づいて説明する。ただし、前述した実施形態と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0034】
図5,6に示すように、バイポーラプレート111の内部には、対をなす一組の辺(図3,4中、左右辺)をスタック101の積層方向と直交する方向(図5,6中左右方向)に露出させた放熱フィン342を有する金属板341が埋設されている。金属板341の放熱フィン342は、リム111aから離反する距離を短くするようにスタック101の積層方向に沿って配向されると共に、リム111aを隠すようにT字形状に形成されている。なお、図5,6中、341aは貫通穴である。
【0035】
このような本実施形態に係るバイポーラ型鉛蓄電池300においては、前述した第2の実施形態のバイポーラ型鉛蓄電池200の場合と同様に、使用に伴って生じた熱が金属板341によってスタック101の内側から外側へ向かって拡散し、放熱フィン342からスタック101の外部へ放出される。
【0036】
このとき、放熱フィン342の表面積を放熱フィン242の表面積よりも大きくすることが省スペースでできるので、小型化を維持しつつ前述した第2の実施形態の場合よりも外部への放熱速度を高めることができる。
【0037】
したがって、本実施形態に係るバイポーラ型鉛蓄電池300によれば、前述した実施形態の場合よりも冷却効率をさらに高めることができ、スタック101の内側の温度上昇の抑制をさらに効率的に行うことができる。
【0038】
なお、金属板341の放熱フィン342においては、前述した第2の実施形態の場合のように、表面積を大きくするように櫛歯形状を形成することも可能である。
【0039】
[第4の実施形態]
本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池の第4の実施形態を図7,8に基づいて説明する。ただし、前述した実施形態と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0040】
図7,8に示すように、耐酸性を有する樹脂(例えばABS樹脂等)からなる正極用モノポーラプレート411Aの周縁端には、リム411Aaが一体的に形成されている。正極用モノポーラプレート411Aの一方面(図7中、上方面)には、正極112が配設されている。耐酸性を有する樹脂(例えばABS樹脂等)からなる負極用モノポーラプレート411Bの周縁端には、リム411Baが一体的に形成されている。負極用モノポーラプレート411Bの他方面(図7中、下方面)には、負極113が配設されている。
【0041】
正極用モノポーラプレート411Aと負極用モノポーラプレート411Bとは、電解層121を正極112と負極113とで挟むように配設されている。また、正極用モノポーラプレート411Aの他方面(図7中、下方面)と負極用モノポーラプレート411Bの一方面(図7中、上方面)とは、対向して金属板141を挟持する組をなすように配設されている。つまり、金属板141は、一方面に正極112を設けられた正極用モノポーラプレート411Aの他方面と、他方面に負極113を設けられた負極用モノポーラプレート411Bの一方面との間に挟まれているのである。
【0042】
金属板141を挟持する組をなす正極用モノポーラプレート411A及び負極用モノポーラプレート411Bの内部には、正極用モノポーラプレート411Aの一方面(図7中、上方面)の正極112と負極用モノポーラプレート411Bの他方面(図7中、下方面)の負極113とを電気的に接続する導通体414が設けられている。導通体414は、正極用モノポーラプレート411A及び負極用モノポーラプレート411Bを厚さ方向に貫通すると共に、金属板141の貫通穴141aを貫通している。
【0043】
金属板141の貫通穴141aと導通体414との間は、熱伝導性フィラを含有する絶縁性のゴムからなる断面円筒形状をなす伝熱材451が介在している。つまり、導通体414の外周に伝熱材451の内周が嵌合し、金属板141の貫通穴141aの内周に伝熱材451の外周が嵌合しているのである。
【0044】
伝熱材451の絶縁性を有するゴムとしては、シリコン系ゴム,アクリル系ゴム,スチレン系ゴム等を挙げることができる。また、伝熱材451の熱伝導性フィラとしては、アルミナ,窒化アルミニウム,窒化ケイ素,窒化ホウ素,炭化ケイ素,炭化ホウ素,グラファイト,カーボンナノチューブ等を挙げることができる。特に、窒化アルミニウム,炭化ケイ素,グラファイト,カーボンナノチューブであると、高熱伝導率であるため、非常に好ましい。
【0045】
つまり、前述した実施形態においては、金属板141を内部に埋設するようにインサート成型等のインジェクション成型したバイポーラプレート111の一方面に正極112を設けると共に他方面に負極113を設けることによりバイポーラ電極110を構成した。これに対し、本実施形態においては、従来のバイポーラプレートの一方面に正極112を設けた正極用モノポーラプレート411Aの他方面と、従来のバイポーラプレートの他方面に負極113を設けた負極用モノポーラプレート411Bの一方面とで金属板141を挟持した。これにより、金属板141を内装したバイポーラプレート411としてバイポーラ電極410を構成するようにしたのである。
【0046】
そして、バイポーラ電極410と電解層121とを交互に複数積層することにより、電解層121を正極112及び負極113で挟んだセル120を複数積層している。なお、本実施形態においては、モノポーラプレート411A,411B,正極112,負極113,導通体414等により、バイポーラ電極410を構成している。また、バイポーラ電極410,電解層121,エンドプレート131,132等により、電気的に直列に接続されたスタック401を構成している。
【0047】
このようなバイポーラ電極410は、金属板141の貫通穴141aに伝熱材451を嵌合し、従来のバイポーラプレートからなる対をなすモノポーラプレート411A,411Bで金属板141を挟んでリム411Aa,411Ba間を接合する。これに導通体414を差し込んで金属板141の貫通穴141aに設けた伝熱材451内に嵌合させつつモノポーラプレート411A,411B内を貫通させた後、正極112及び負極113を導通体414と接合することにより、製造できる。このとき、モノポーラプレート411A,411Bと伝熱材451との間を接着剤や溶着等で接合していると、接合強度を高めることができるので、より好ましい。
【0048】
このような本実施形態に係るバイポーラ型鉛蓄電池400においては、使用に伴って、発電反応による発熱を生じると、前述した実施形態の場合と同様に、金属板141によって、スタック401の内側から外側へ向かって伝達拡散される。これにより、スタック401内は、内側と外側との温度が均一になるように内側の温度が低下するようになる。
【0049】
このとき、金属板141の貫通穴141aと導通体414との間に伝熱材451が介在していることから、正極112及び負極113の熱を導電体414から伝熱材451を介して金属板141に伝達することが効率よく行うことができる。
【0050】
したがって、本実施形態に係るバイポーラ型鉛蓄電池400によれば、前述した第1の実施形態の場合よりも冷却効率をさらに高めることができ、スタック401の内側の温度上昇の抑制をさらに効率的に行うことができる。
【0051】
また、従来のバイポーラプレートの一方面に正極112を設けた正極用モノポーラプレート411Aの他方面と、従来のバイポーラプレートの他方面に負極113を設けた負極用モノポーラプレート411Bの一方面とで金属板141を挟持することにより、バイポーラ電極410を構成するようにした。そのため、金属板141を内装するようにインサート成型等のインジェクション成型をするための金型をわざわざ用意する必要がなく、バイポーラ電極410を従来と同様にして製造することができるので、コストの上昇を大きく抑制することができる。
【0052】
[他の実施形態]
なお、前述した第1~3の実施形態においては、金属板141,241,341の貫通穴141a,241a,341aと導通体114との間をバイポーラプレート111と同じ材質の樹脂で埋め込んだ場合について説明したが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、金属板141,241,341の貫通穴141a,241a,341aと導通体114と間に、バイポーラプレート111と同じ材質の樹脂に代えて、例えば、前述した第4の実施形態の場合と同様に、伝熱材451を介在させることも可能である。
【0053】
また、前述した第2,3の実施形態においては、放熱フィン242,342を有する金属板241,341をインサート成型等のインジェクション成型により内装したバイポーラ電極110の場合について説明したが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、例えば、放熱フィン242,342を有する金属板241,341を、前述した第4の実施形態の場合と同様に、従来のバイポーラプレートで挟持して内装することにより、バイポーラ電極を構成することも可能である。
【0054】
また、前述した第2,3の実施形態においては、対をなす一組の辺に放熱フィン242,342を有する金属板241,341を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、例えば、設置位置や設置方向等の各種条件に応じて、一辺のみに放熱フィンを有する金属板を適用することや、すべての辺に放熱フィンを有する金属板を適用することも可能である。
【0055】
また、前述した実施形態においては、金属板141,241,341を内部に有するバイポーラプレート111,411のバイポーラ電極110,410のみを利用したスタック101,401の場合について説明した。すなわち、スタック101,401の積層方向に隣り合うセル120の間のすべてに位置するように、金属板141,241,341を内部に有するバイポーラプレート111,411を積層した場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、例えば、金属板141,241,341を内部に有するバイポーラプレート111,411のバイポーラ電極110,410を少なくとも一つ利用したスタックとすることも可能である。言い換えれば、スタック101,401の積層方向に隣り合うセル120の間のうちの少なくとも一つの間に位置するように、金属板141,241,341を内部に有するバイポーラプレート111,411を積層することも可能である。
【0056】
また、前述した実施形態においては、金属板の貫通穴と導通体との間に、熱伝導性フィラを含有する絶縁性のゴムからなる断面円筒形状をなす伝熱材451を介在させた場合について説明したが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、金属板の貫通穴と導通体との間に、伝熱材451に代えて、例えば、熱伝導性フィラを含有する絶縁性のグリースからなる伝熱材を介在させることも可能である。このような絶縁性を有するグリースとしては、シリコン系グリース,エステル系グリース等を挙げることができる。なお、熱伝導性フィラは、前述した実施形態の伝熱材451の熱伝導性フィラと同じである。
【0057】
また、前述した実施形態においては、熱伝導性フィラを含有する絶縁性のゴム又はグリースからなる伝熱材を介在させた場合について説明したが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、熱伝導性フィラを含有しない絶縁性のゴム又はグリースからなる伝熱材(絶縁材)を介在させることも可能である。しかしながら、前述した実施形態のように、熱伝導性フィラを含有する絶縁性のゴム又はグリースからなる伝熱材を介在させると、熱伝導性を高めることができるので、非常に好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係るバイポーラ型鉛蓄電池は、発熱による電極の腐食劣化や電解液の減少等を大きく抑えて寿命の低下を抑制できるので、各種産業において、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
100 バイポーラ型鉛蓄電池
101 スタック
110 バイポーラ電極
111 バイポーラプレート
111a リム
112 正極
113 負極
114 導通体
120 セル
121 電解層
131,132 エンドプレート
131a,132a リム
141 金属板
141a 貫通穴
200 バイポーラ型鉛蓄電池
241 金属板
241a 貫通穴
242 放熱フィン
300 バイポーラ型鉛蓄電池
341 金属板
341a 貫通穴
342 放熱フィン
400 バイポーラ型鉛蓄電池
401 スタック
410 バイポーラ電極
411 バイポーラプレート
411A 正極用モノポーラプレート
411Aa リム
411B 負極用モノポーラプレート
411Ba リム
414 導通体
451 伝熱材
図1
図2
図3
図4
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図8