(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142171
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】バイポーラ型蓄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/654 20140101AFI20241003BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20241003BHJP
H01M 10/18 20060101ALI20241003BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241003BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20241003BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20241003BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20241003BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20241003BHJP
H01M 4/68 20060101ALI20241003BHJP
H01M 4/14 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M10/654
H01M10/04 Z
H01M10/18
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/6554
H01M10/653
H01M10/6556
H01M4/68 A
H01M4/14 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054215
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】西久保 英郎
(72)【発明者】
【氏名】岩根 典靖
(72)【発明者】
【氏名】山本 寛一郎
(72)【発明者】
【氏名】新垣 雅進
(72)【発明者】
【氏名】山田 惠造
(72)【発明者】
【氏名】萬ヶ原 徹
【テーマコード(参考)】
5H017
5H028
5H031
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA01
5H017CC01
5H017EE02
5H028AA05
5H028AA10
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC11
5H028CC19
5H028EE01
5H028EE04
5H028EE05
5H031AA01
5H031EE03
5H031KK01
5H031KK06
5H031KK08
5H050AA18
5H050BA09
5H050CA06
5H050CB15
5H050DA05
5H050FA03
5H050FA15
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】発熱による電極の腐食劣化や電解液の減少等を大きく抑えて寿命の低下を抑制できるバイポーラ型蓄電池を提供する。
【解決手段】バイポーラプレート111の一方面に正極112を設けられて他方面に負極113を設けられたバイポーラ電極110と、電解液を含んだ電解層120とが交互に複数積層されたスタック101を備えたバイポーラ型蓄電池100において、スタック101は、外部に連通する貫通穴101aが内部に形成され、スタック101の貫通穴101aに設けられてスタック101の内部の熱を外部へ伝達する金属棒141を備え、スタック101の貫通穴101aと金属棒141との間に、熱伝導性フィラを含有するゴムからなる伝熱材151が介在していることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイポーラプレートの一方面に正極を設けられて他方面に負極を設けられたバイポーラ電極と、電解液を含んだ電解層とが交互に複数積層されたスタックを備えたバイポーラ型蓄電池であって、
前記スタックは、外部に連通する中空部が内部に形成され、
前記スタックの前記中空部に設けられて当該スタックの内部の熱を外部へ伝達する熱伝導手段を備え、
前記スタックの前記中空部と前記熱伝導手段との間に、熱伝導性フィラを含有するゴム又はグリースからなる伝熱材が介在している
ことを特徴とするバイポーラ型蓄電池。
【請求項2】
前記スタックの前記中空部は、前記スタックの積層方向一端側の外部と他端側の外部との間を連通する貫通穴であり、
前記熱伝導手段は、前記スタックの前記貫通穴に挿通された金属棒又はヒートパイプである
ことを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ型蓄電池。
【請求項3】
前記熱伝導性フィラは、アルミナ,窒化アルミニウム,窒化ケイ素,窒化ホウ素,炭化ケイ素,炭化ホウ素,グラファイト,カーボンナノチューブのうちの少なくとも1種である
ことを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ型蓄電池。
【請求項4】
前記スタックの前記中空部の周面へ向けて前記熱伝導手段を付勢する付勢手段を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ型蓄電池。
【請求項5】
前記スタックの積層方向一端側の外部及び他端側の外部の少なくとも一方に配設されて前記熱伝導手段と接続された放熱体を備えている
ことを特徴とする請求項2に記載のバイポーラ型蓄電池。
【請求項6】
前記熱伝導手段は、前記スタックの前記中空部の内部に配設されて冷媒を流通させる冷媒流通路である
ことを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ型蓄電池。
【請求項7】
前記中空部は、前記スタックの積層方向一端側の外部と他端側の外部との間を連通する貫通穴であり、
前記冷媒流通路は、前記スタックの前記貫通穴に挿通された冷媒管である
ことを特徴とする請求項6に記載のバイポーラ型蓄電池。
【請求項8】
前記冷媒流通路は、
前記スタックの前記中空部の内部に配設された冷却容器と、
前記冷却容器の内部と前記スタックの外部との間を連通して当該冷却容器の内部へ前記冷媒を送給する送給管と、
前記冷却容器の内部と前記スタックの外部との間を連通して当該冷却容器の内部の前記冷媒を外部へ送出する送出管と
を備えていることを特徴とする請求項6に記載のバイポーラ型蓄電池。
【請求項9】
前記正極及び前記負極が鉛又は鉛合金からなる電極箔を有している
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のバイポーラ型蓄電池。
【請求項10】
請求項6に記載のバイポーラ型蓄電池を複数有するバイポーラ型蓄電池システムであって、
複数の前記バイポーラ型蓄電池の前記冷媒流通路が直列に連結され、
前記冷媒流通路に前記冷媒を流通させる冷媒流通手段を備えている
ことを特徴とするバイポーラ型蓄電池システム。
【請求項11】
バイポーラプレートの一方面に正極を設けられて他方面に負極を設けられたバイポーラ電極と、電解液を含んだ電解層とが交互に複数積層されたスタックを備えたバイポーラ型蓄電池を複数有するバイポーラ型蓄電池システムであって、
前記スタックは、外部に連通する中空部が内部に形成され、
前記スタックの前記中空部に設けられて当該スタックの内部の熱を外部へ伝達する熱伝導手段を備え、
前記熱伝導手段は、前記スタックの前記中空部の内部に配設されて冷媒を流通させる冷媒流通路であり、
複数の前記バイポーラ型蓄電池の前記冷媒流通路が直列に連結され、
前記冷媒流通路に前記冷媒を流通させる冷媒流通手段を備えている
ことを特徴とするバイポーラ型蓄電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイポーラ型蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
バイポーラ型蓄電池は、バイポーラプレートの一方面に正極を設けられると共に他方面に負極を設けられて正極と負極とが電気的に接続されたバイポーラ電極と、電解液を含んだ電解層とが交互に複数積層されたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したようなバイポーラ型蓄電池は、使用していると、発電反応の際に発熱を伴ってしまう。発熱により内部の温度が高くなると、電極の腐食劣化や電解液の減少等を招き易くなってしまい、寿命の低下を引き起こすおそれがあった。
【0005】
このようなことから、本発明は、発熱による電極の腐食劣化や電解液の減少等を大きく抑えて寿命の低下を抑制できるバイポーラ型蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するための、本発明に係るバイポーラ型蓄電池は、バイポーラプレートの一方面に正極を設けられて他方面に負極を設けられたバイポーラ電極と、電解液を含んだ電解層とが交互に複数積層されたスタックを備えたバイポーラ型蓄電池であって、前記スタックは、外部に連通する中空部が内部に形成され、前記スタックの前記中空部に設けられて当該スタックの内部の熱を外部へ伝達する熱伝導手段を備え、前記スタックの前記中空部と前記熱伝導手段との間に、熱伝導性フィラを含有するゴム又はグリースからなる伝熱材が介在していることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るバイポーラ型蓄電池は、上述したバイポーラ型蓄電池において、前記スタックの前記中空部が、前記スタックの積層方向一端側の外部と他端側の外部との間を連通する貫通穴であり、前記熱伝導手段が、前記スタックの前記貫通穴に挿通された金属棒又はヒートパイプであると好ましい。
【0008】
また、本発明に係るバイポーラ型蓄電池は、上述したバイポーラ型蓄電池において、前記熱伝導性フィラが、アルミナ,窒化アルミニウム,窒化ケイ素,窒化ホウ素,炭化ケイ素,炭化ホウ素,グラファイト,カーボンナノチューブのうちの少なくとも1種であると好ましい。
【0009】
また、本発明に係るバイポーラ型蓄電池は、上述したバイポーラ型蓄電池において、前記スタックの前記中空部の周面へ向けて前記熱伝導手段を付勢する付勢手段を備えていると好ましい。
【0010】
また、本発明に係るバイポーラ型蓄電池は、上述したバイポーラ型蓄電池において、前記スタックの積層方向一端側の外部及び他端側の外部の少なくとも一方に配設されて前記熱伝導手段と接続された放熱体を備えていると好ましい。
【0011】
また、本発明に係るバイポーラ型蓄電池は、上述したバイポーラ型蓄電池において、前記熱伝導手段が、前記スタックの前記中空部の内部に配設されて冷媒を流通させる冷媒流通路であると好ましい。
【0012】
また、本発明に係るバイポーラ型蓄電池は、上述したバイポーラ型蓄電池において、前記中空部が、前記スタックの積層方向一端側の外部と他端側の外部との間を連通する貫通穴であり、前記冷媒流通路が、前記スタックの前記貫通穴に挿通された冷媒管であると好ましい。
【0013】
また、本発明に係るバイポーラ型蓄電池は、上述したバイポーラ型蓄電池において、前記冷媒流通路が、前記スタックの前記中空部の内部に配設された冷却容器と、前記冷却容器の内部と前記スタックの外部との間を連通して当該冷却容器の内部へ前記冷媒を送給する送給管と、前記冷却容器の内部と前記スタックの外部との間を連通して当該冷却容器の内部の前記冷媒を外部へ送出する送出管とを備えていると好ましい。
【0014】
また、本発明に係るバイポーラ型蓄電池は、上述したバイポーラ型蓄電池において、前記正極及び前記負極が鉛又は鉛合金からなる電極箔を有していると好ましい。
【0015】
さらに、本発明に係るバイポーラ型蓄電池システムは、上述したバイポーラ型蓄電池を複数有するバイポーラ型蓄電池システムであって、複数の前記バイポーラ型蓄電池の前記冷媒流通路が直列に連結され、前記冷媒流通路に前記冷媒を流通させる冷媒流通手段を備えていることを特徴とする。
【0016】
くわえて、本発明に係るバイポーラ型蓄電池システムは、バイポーラプレートの一方面に正極を設けられて他方面に負極を設けられたバイポーラ電極と、電解液を含んだ電解層とが交互に複数積層されたスタックを備えたバイポーラ型蓄電池を複数有するバイポーラ型蓄電池システムであって、前記スタックは、外部に連通する中空部が内部に形成され、前記スタックの前記中空部に設けられて当該スタックの内部の熱を外部へ伝達する熱伝導手段を備え、前記熱伝導手段が、前記スタックの前記中空部の内部に配設されて冷媒を流通させる冷媒流通路であり、複数の前記バイポーラ型蓄電池の前記冷媒流通路が直列に連結され、前記冷媒流通路に前記冷媒を流通させる冷媒流通手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るバイポーラ型蓄電池によれば、使用に伴って、発電反応による発熱を生じると、当該熱が伝熱材から熱伝導手段へ伝達し、スタックの一端側の外部や他端側の外部へ放出される。このとき、伝熱材がゴム又はグリースからなるので、中空部に熱伝導手段を密接させることができると共に、熱伝導性フィラを含有しているので、高い熱伝導率を発現することができる。このため、発電反応による熱をスタック内部から熱伝導手段に効率よく伝達することが迅速にできる。したがって、使用に伴うスタックの内部温度の上昇を抑制することができるので、正極や負極の腐食劣化や電解液の減少等を大きく抑えることができ、寿命の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るバイポーラ型蓄電池の第1の実施形態の概略構造を示す断面図である。
【
図3】本発明に係るバイポーラ型蓄電池の第2の実施形態の概略構造を示す断面図である。
【
図5】本発明に係るバイポーラ型蓄電池の第3の実施形態の概略構造を示す断面図である。
【
図8】本発明に係るバイポーラ型蓄電池の第4の実施形態の概略構造を示す断面図である。
【
図10】本発明に係るバイポーラ型蓄電池の他の実施形態の概略構造を示す断面図である。
【
図11】本発明に係るバイポーラ型蓄電池のさらに他の実施形態の概略構造を示す断面図である。
【
図12】本発明に係るバイポーラ型蓄電池の第4の実施形態を利用するバイポーラ型蓄電池システムの主な実施形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るバイポーラ型蓄電池の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではなく、各実施形態で説明した種々の技術的事項を、必要に応じて置き換えることや組み合わせることが適宜可能なものである。
【0020】
[第1の実施形態]
本発明に係る第1の実施形態を
図1,2に基づいて説明する。なお、
図1は、本実施形態に係るバイポーラ型蓄電池の概略構造を示す断面図であって、
図2の I-I 線断面矢線視図となっている。
【0021】
図1に示すように、耐酸性を有する樹脂(例えばABS樹脂等)からなるバイポーラプレート111の一方面(
図1中、上方面)には、鉛又は鉛合金からなる電極箔に正極用活物質層を設けた正極112が配設されている。バイポーラプレート111の他方面(
図1中、下方面)には、鉛又は鉛合金からなる電極箔に負極用活物質層を設けた負極113が配設されている。正極112と負極113とは、図示しない接続部材により電気的に接続されている。このようなバイポーラプレート111,正極112,負極113等により、本実施形態ではバイポーラ電極110が構成されている。
【0022】
バイポーラ電極110の正極112側及び負極113側には、硫酸等の電解液を含むガラス繊維マット等の電解層120がそれぞれ配設されている。これらバイポーラ電極110と電解層120とは、交互に複数積層されている。
【0023】
バイポーラ電極110と電解層120との積層方向一方端側(
図1中、上方端側)には、耐酸性を有する樹脂(例えばABS樹脂等)からなるエンドプレート132が配設されている。エンドプレート132のバイポーラ電極110との対向面(
図1中、下面)には、負極113が配設されている。バイポーラ電極110と電解層120との積層方向他方端側(
図1中、下方端側)には、耐酸性を有する樹脂(例えばABS樹脂等)からなるエンドプレート131が配設されている。エンドプレート131のバイポーラ電極110との対向面(
図1中、上面)には、正極112が配設されている。
【0024】
つまり、エンドプレート131,132は、対をなして、交互に複数積層されたバイポーラ電極110及び電解層120を間に位置させるように挟んでいるのである。このようなバイポーラ電極110,電解層120,エンドプレート131,132等により、本実施形態ではスタック101が構成されている。
【0025】
図1,2に示すように、スタック101の外周縁には、耐酸性を有する樹脂(例えばABS樹脂等)からなる外側フレーム102が配設されており、外側フレーム102は、スタック101の外部と内部とを仕切るようにスタック101を包囲している。スタック101の中央部分には、積層方向一端側(
図1中、上端側)の外部と他端側(
図1中、下端側)の外部とを連通させる中空部である貫通穴101aが断面四角形状となるように形成されている。貫通穴101aの内面には、耐酸性を有する樹脂(例えばABS樹脂等)からなる内側フレーム103が配設されており、内側フレーム103は、貫通穴101aの内面を覆い隠すように貫通穴101aの周壁面をなしている。
【0026】
貫通穴101aの内側フレーム103よりも内側には、スタック101の内部の熱を外部へ伝達する熱伝導手段である断面四角柱形状の金属棒141が挿通されている。金属棒141は、金属であれば特に限定されることはないが、アルミニウムや銅からなると、高熱伝導率であるため、非常に好ましい。内側フレーム103と金属棒141との間には、熱伝導性フィラを含有するゴムからなる断面四角筒形状をなす伝熱材151が介在している。つまり、金属棒141の外周に伝熱材151の内周が嵌合し、貫通穴101aの内側フレーム103の内周に伝熱材151の外周が嵌合しているのである。
【0027】
伝熱材151のゴムとしては、シリコン系ゴム,アクリル系ゴム,スチレン系ゴム等を挙げることができる。また、伝熱材151の熱伝導性フィラとしては、アルミナ,窒化アルミニウム,窒化ケイ素,窒化ホウ素,炭化ケイ素,炭化ホウ素,グラファイト,カーボンナノチューブ等を挙げることができる。特に、窒化アルミニウム,炭化ケイ素,グラファイト,カーボンナノチューブであると、高熱伝導率であるため、非常に好ましい。
【0028】
このような本実施形態に係るバイポーラ型蓄電池100においては、使用に伴って、発電反応による発熱を生じると、当該熱が内側フレーム103を介して伝熱材151から金属棒141へ伝達し、金属棒141の一端(
図1中、上端)や他端(
図1中、下端)から外部へ放出される。
【0029】
このとき、伝熱材151が、ゴムからなるので、内側フレーム103の表面及び金属棒141の表面に密接できると共に、熱伝導性フィラを含有しているので、高い熱伝導率を発現することができる。このため、発電反応による熱を内側フレーム103から金属棒141へ効率よく伝達することが迅速にできる。
【0030】
したがって、本実施形態に係るバイポーラ型蓄電池100によれば、使用に伴うスタック101の内部温度の上昇を抑制することができるので、正極112や負極113の腐食劣化や電解液の減少等を大きく抑えることができ、寿命の低下を抑制することができる。
【0031】
また、スタック101の中央部分に貫通穴101aを形成して金属棒141及び伝熱材151を貫通穴101aに挿通するようにしたので、スタック101の最も温度の高くなる中央部分の熱を効率よく迅速に外部へ伝達することが容易にできる。これにより、正極112や負極113の腐食劣化や電解液の減少等をより確実に抑えることができ、寿命の低下をより確実に抑制することができる。
【0032】
[第2の実施形態]
本発明に係る第2の実施形態を
図3,4に基づいて説明する。ただし、前述した実施形態と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複する説明を省略する。なお、
図3は、本実施形態に係るバイポーラ型蓄電池の概略構造を示す断面図であって、
図4のIII-III 線断面矢線視図となっている。
【0033】
図3,4に示すように、スタック101の貫通穴101aの内側フレーム103よりも内側には、熱伝導手段である断面三角柱形状の対をなす金属棒241A,241Bが四角柱を形成するようにして挿通されている。対をなす金属棒241A,241Bの間には、金属棒241A,241Bを貫通穴101aの周面となる内側フレーム103へ向けて付勢する付勢手段である圧縮コイルばね261が金属棒241A,241Bの長手方向に沿って規定の間隔ごとに複数設けられている。
【0034】
内側フレーム103と金属棒241A,241Bとの間には、熱伝導性フィラを含有するグリースからなる伝熱材251が介在している。つまり、圧縮コイルばね261を間に介在させた対をなす金属棒241A,241Bの外周にグリースを付着して、圧縮コイルばね261を圧縮しながら金属棒241A,241Bを内側フレーム103の内側に挿通して圧縮コイルばね261の圧縮を解放するのである。これにより、金属棒241A,241Bは、内側フレーム103に対して伝熱材251を介して密接するようになる。
【0035】
伝熱材251のグリースとしては、シリコン系グリース,エステル系グリース等を挙げることができる。伝熱材251の熱伝導性フィラは、前述した実施形態の伝熱材151の熱伝導性フィラと同じである。
【0036】
このような本実施形態に係るバイポーラ型蓄電池200においては、使用に伴って、発電反応による発熱を生じると、当該熱が内側フレーム103を介して伝熱材251から金属棒241A,241Bへ伝達し、金属棒241A,241Bの一端(
図3中、上端)や他端(
図3中、下端)から外部へ放出される。
【0037】
このとき、圧縮コイルばね261が金属棒241A,241Bを内側フレーム103へ向けて付勢することにより密接させると共に、伝熱材251が熱伝導性フィラを含有しているので、前述した実施形態の場合と同様に、高い熱伝導率を発現することができる。このため、前述した実施形態の場合と同様に、発電反応による熱を内側フレーム103から金属棒241A,241Bへ効率よく伝達することが迅速にできる。
【0038】
したがって、本実施形態に係るバイポーラ型蓄電池200によれば、前述した実施形態の場合と同様な作用効果を得ることができるのはもちろんのこと、内側フレーム103に対して金属棒241A,241Bを密接させながらも、スタック101の貫通穴101aへの金属棒241A,241Bの挿通を容易に行うことができる。
【0039】
[第3の実施形態]
本発明に係る第3の実施形態を
図5~7に基づいて説明する。ただし、前述した実施形態と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複する説明を省略する。なお、
図5は、本実施形態に係るバイポーラ型蓄電池の概略構造を示す断面図であって、
図6,7の V-V 線断面矢線視図となっている。
【0040】
図5,6に示すように、金属棒241A,241Bの一端(
図5中、上端)には、対をなしてスタック101の積層方向の一端側(
図5中、上端側)を覆うように配設された放熱体である三角板形状の金属板342AB,342BBがそれぞれ接続されている。
図5,7に示すように、金属棒241A,241Bの他端(
図5中、下端)には、対をなしてスタック101の積層方向の他端側(
図5中、下端側)を覆うように配設された放熱体である三角板形状の金属板342AA,342BAがそれぞれ接続されている。金属板342AA,342BA,342AB,342BBは、金属棒241A,241Bと同じ材料からなっていると好ましい。
【0041】
このような本実施形態に係るバイポーラ型蓄電池300においては、使用に伴って、発電反応による発熱を生じると、当該熱が内側フレーム103を介して伝熱材251から金属棒241A,241Bへ伝達し、金属棒241A,241Bから金属板342AA,342BA,342AB,342BBへ伝達して外部へ放出される。
【0042】
このとき、外気と接する表面積が広い金属板342AA,342BA,342AB,342BBを介して金属棒241A,241Bからの熱を外部へ放出するので、前述した実施形態の場合よりも、外部への放熱速度を高めることができる。
【0043】
したがって、本実施形態に係るバイポーラ型蓄電池300によれば、前述した実施形態の場合と同様な作用効果を得ることができるのはもちろんのこと、前述した実施形態の場合よりも、冷却効率をさらに高めることができる。
【0044】
さらに、金属板342AA,342BA,342AB,342BBの表面に金属製のフィンを複数立設すると、冷却効率の更なる向上を図ることができるので、より好ましい。
【0045】
[第4の実施形態]
本発明に係る第4の実施形態を
図8,9に基づいて説明する。ただし、前述した実施形態と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複する説明を省略する。なお、
図8は、本実施形態に係るバイポーラ型蓄電池の概略構造を示す断面図であって、
図9の VIII-VIII 線断面矢線視図となっている。
【0046】
図8,9に示すように、スタック101の貫通穴101aの内側フレーム103よりも内側には、熱伝導手段である断面三角筒形状の対をなす冷媒流通路となる冷媒管441A,441Bが挿通されている。冷媒管441A,441Bの内部には、冷媒である冷却水1が流通するようになっている。
【0047】
このような本実施形態に係るバイポーラ型蓄電池400においては、使用に伴って、発電反応による発熱を生じると、当該熱が内側フレーム103を介して伝熱材251から冷媒管441A,441Bへ伝達し、冷媒管441A,441B内を流通する冷却水1によって外部へ放出される。
【0048】
したがって、本実施形態に係るバイポーラ型蓄電池400によれば、前述した実施形態の場合と同様な作用効果を得ることができるのはもちろんのこと、冷却水1によって強制的に排熱することができるので、前述した実施形態の場合よりも、冷却効率をさらに高めることができる。
【0049】
[他の実施形態]
なお、前述した第1~3の実施形態においては、熱伝導手段として金属棒141,241A,241Bを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らない。金属棒141,241A,241に代わる他の実施形態として、例えば、ヒートパイプを熱伝導手段として適用することも可能である。
【0050】
また、前述した第1~4の実施形態においては、伝熱材151,251を貫通穴101a(内側フレーム103)の全長にわたって連続的に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、例えば、伝熱材を場合によっては貫通穴101a(内側フレーム103)に必要に応じて断続的に設けることも可能である。しかしながら、前述した第1~4の実施形態のように、伝熱材151,251を貫通穴101a(内側フレーム103)の全長にわたって連続的に設けると、熱伝導効率を最も高めることができるので、非常に好ましい。
【0051】
また、前述した第2~4の実施形態においては、付勢手段として圧縮コイルばね261を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らない。圧縮コイルばね261に代わる他の実施形態として、例えば、皿ばね等の他のばねやゴム等の弾性体を付勢手段として適用することも可能である。
【0052】
さらには、例えば、
図10に示すように、長手方向断面V字形状と長手方向三角形状とを組み合わせて楔型とした金属棒541A,541Bを適用したバイポーラ型蓄電池500とすることにより、熱伝導手段自身が付勢手段の機能を有するようにすることも可能である。
【0053】
また、前述した第3の実施形態においては、金属棒241A,241Bの一端及び他端の両端に金属板342AA,342BA,342AB,342BBをそれぞれ接続した場合について説明したが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、例えば、場合によっては、金属棒241A,241Bの一端及び他端のいずれか一方のみに金属板342AA,342BA,342AB,342BBを接続することも可能である。しかしながら、前述した第3の実施形態のように、金属棒241A,241Bの一端及び他端の両端に金属板342AA,342BA,342AB,342BBをそれぞれ接続すると、熱伝導効率を最も高めることができるので、非常に好ましい。
【0054】
また、前述した第4の実施形態においては、スタック101の貫通穴101aの内部に冷媒管441A,441Bを設け、冷却水1を冷媒管441A,441Bの内部で一方向に流通させて冷却する冷媒流通路としたが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、例えば、
図11に示すような構造の冷媒流通路とすることも可能である。
【0055】
すなわち、スタック101の積層方向一端側(
図11中、上端側)の外部とスタック101の内部とを連通する中空部601aをスタック101の中央部分に形成し、中空部601aの内面の内側フレーム103よりも内側に伝熱材151を介して金属製の冷却容器641を配設する。冷却容器641の一端側(
図11中、上端側)に開口を閉塞する蓋642を取り付けると共に、冷却容器641の内部とスタック101の外部とを連通する送給管643及び送出管644を蓋642に設置する。
【0056】
そして、冷却水1を送給管643の一端側(
図11中、上端側)から供給して冷却容器641の内部に送給し、送出管644の一端側(
図11中、上端側)から冷却容器641の外部(スタック101の外部)へ送出する。このようにして、冷却水1を冷却容器641の内部で循環流通させてスタック101の内部を冷却する冷媒流通路を有するバイポーラ型蓄電池600とすることも可能である。
【0057】
ここで、冷媒管441A,441Bや冷却容器641の内周面に、冷却水1の流通方向に沿って連続的又は断続的にフィンを単数又は複数設けると、冷却性能をさらに高めることができるので、非常に好ましい。
【0058】
また、前述した第4の実施形態に係るバイポーラ型蓄電池400を複数組み付けて組電池とする場合には、例えば、
図12に示すように、各バイポーラ型蓄電池400の冷媒管441A,441Bを直列に連結して、冷媒管441A,441Bに冷却水1を流通させるバイポーラ型蓄電池システム40とすることも可能である。
【0059】
すなわち、貯留タンク41内の冷却水1を冷却器42で冷却しつつ、駆動ポンプ43により、最上流側に位置するバイポーラ型蓄電池400に送給して、各バイポーラ型蓄電池400内をシリーズ的に順次冷却し、最下流側に位置するバイポーラ型蓄電池400から貯留タンク41に戻すようにした冷媒流通手段を備えるようにすることも可能である。
【0060】
このとき、例えば、各バイポーラ型蓄電池400において、伝熱材251を省略することにより、伝熱材251を介することなく冷媒管441A,441Bへ伝熱させて冷却水1で冷却するようにすることも可能である。
【0061】
なお、このようなバイポーラ型蓄電池システムは、先に説明した第4の実施形態に係るバイポーラ型蓄電池400に代えて、上述したバイポーラ型蓄電池600を適用することも可能である。
【0062】
さらに、冷媒管441A,441Bや冷却容器641等の冷媒流通路を金属製とすることにより、冷却水1はもちろんのこと、代替フロンを始めとするフロン類やアンモニア等のような冷媒も利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係るバイポーラ型蓄電池は、発熱による電極の腐食劣化や電解液の減少等を大きく抑えて寿命の低下を抑制できるので、各種産業において、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 冷却水
40 バイポーラ型蓄電システム
41 貯留タンク
42 冷却器
43 駆動ポンプ
100 バイポーラ型蓄電池
101 スタック
101a 貫通穴
102 外側フレーム
103 内側フレーム
110 バイポーラ電極
111 バイポーラプレート
112 正極
113 負極
120 電解層
131,132 エンドプレート
141 金属棒
151 伝熱材
200 バイポーラ型蓄電池
241A,241B 金属棒
251 伝熱材
261 圧縮コイルばね
300 バイポーラ型蓄電池
342AA,342AB,342BA,342BB 金属板
400 バイポーラ型蓄電池
441A,441B 冷媒管
500 バイポーラ型蓄電池
541A,541B 金属棒
600 バイポーラ型蓄電池
601a 中空部
641 冷却容器
642 蓋
643 送給管
644 送出管