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特開2024-142180自己吸着性積層体及び自己吸着性発泡シート用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142180
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】自己吸着性積層体及び自己吸着性発泡シート用組成物
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20241003BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20241003BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20241003BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20241003BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20241003BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B27/30 A
B32B5/18
C08L33/06
C09J133/04
C09J7/30
C09J7/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054226
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 亜梨沙
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AJ04A
4F100AK15C
4F100AK25B
4F100AK41A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA01B
4F100CA02B
4F100DG15A
4F100DJ01B
4F100GB08
4F100JA05B
4F100JK06
4F100JK07B
4F100JK08
4F100JL11
4F100JL14
4F100YY00B
4J002BG041
4J002ER006
4J002EU226
4J002FD146
4J002FD320
4J002GF00
4J004AA10
4J040DF021
4J040KA16
4J040MA10
(57)【要約】
【課題】ポリ塩化ビニル壁紙と撥水壁紙の双方に対して、バランス良く適度な密着性を発現する自己吸着性積層体を提供する。
【解決手段】基材と、アクリル樹脂発泡体よりなる自己吸着性発泡シートとを積層してなる自己吸着性積層体であって、前記自己吸着性発泡シートは、ポリ塩化ビニル壁紙に対する剥離力P1と、撥水壁紙に対する剥離力P2の双方が1.00N/cm以上4.00N/cm以下であり、前記剥離力P1と前記剥離力P2の差の絶対値が1.00N/cm未満である、自己吸着性積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、アクリル樹脂発泡体よりなる自己吸着性発泡シートとを積層してなる自己吸着性積層体であって、
前記自己吸着性発泡シートは、ポリ塩化ビニル壁紙に対する剥離力P1と、撥水壁紙に対する剥離力P2の双方が1.00N/cm以上4.00N/cm以下であり、前記剥離力P1と前記剥離力P2の差の絶対値が1.00N/cm未満である、自己吸着性積層体。
【請求項2】
前記自己吸着性発泡シートの平均厚みが40μm超である、請求項1に記載の自己吸着性積層体。
【請求項3】
前記自己吸着性発泡シートの引張弾性率が0.05N/mm以下であり、前記自己吸着性発泡シートの破断伸度が300%以上である、請求項1又は2に記載の自己吸着性積層体。
【請求項4】
アクリル樹脂及び架橋剤を含む自己吸着性発泡シート用組成物であって、
前記アクリル樹脂の引張弾性率が0.30N/mm以下であり、前記アクリル樹脂の破断伸度が500%以上である、自己吸着性発泡シート用組成物。
【請求項5】
前記アクリル樹脂のガラス転移温度が-40℃以下である、請求項4に記載の自己吸着性発泡シート用組成物。
【請求項6】
前記架橋剤の含有量が、前記アクリル樹脂100質量部当たり0.5質量部以上3質量部以下である、請求項4に記載の自己吸着性発泡シート用組成物。
【請求項7】
前記アクリル樹脂が、アクリル酸2-エチルヘキシル単位を50質量%以上の割合で含む重合体である、請求項4~6の何れかに記載の自己吸着性発泡シート用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己吸着性積層体及び自己吸着性発泡シート用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、壁や窓ガラス等の被着体に貼り付けて使用する貼着シートとして、微細な空孔を多数有する発泡材料からなり、自己吸着性を有するシート状の部材、即ち自己吸着性発泡シート(以下、単に「発泡シート」という場合がある。)が使用されている。自己吸着性発泡シートの接着様式は、糊接着ではなく、微細な空孔を利用した被着体への吸着である。したがって、自己吸着性発泡シートは、従来の糊接着を採用した貼着シートに比べて貼り直しが容易であり、例えば、壁紙、ポスター、ステッカーといった用途に好適に使用される。
【0003】
そして、これらの用途に用いるに際し、自己吸着性発泡シートは、通常、基材と積層された自己吸着性積層体(以下、単に「積層体」という場合がある。)の形態で使用される。この自己吸着性積層体の基材側の表面に印刷等の装飾が施されることで、上述した用途に有利に使用することができる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-23156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層体を貼り付ける壁を構成する壁紙としては、ポリ塩化ビニル壁紙(少なくとも表層がポリ塩化ビニル製の壁紙。以下、「PVC壁紙」と略記する場合がある。)が一般的である。また近年、撥水性を高めるべくその表面に撥水加工が施された壁紙(以下、「撥水壁紙」と称する。)も使用が拡大している。
ここで、従来の積層体は、PVC壁紙には良好に貼り付けることができるが、撥水壁紙に対しては貼り付き難い場合や、一旦貼り付いても経時で剥がれる場合があった。また従来の積層体では、撥水壁紙に対する密着性を高めると、PVC壁紙に対する密着性が過度に高まるため剥がして再度貼り付けることが困難となる(すなわち、リワーク性が損なわれる)。そして、一般消費者が積層体を選定・購入するに際し、被着対象の壁がPVC壁紙であるのか、撥水壁紙であるのかを判断するのは容易ではない。
すなわち、従来の積層体には、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に対して、バランス良く適度な密着性を発現して汎用性を高めるという課題があった。
【0006】
そこで本発明は、ポリ塩化ビニル壁紙と撥水壁紙の双方に対して、バランス良く適度な密着性を発現する自己吸着性積層体の提供を目的とする。
また本発明は、ポリ塩化ビニル壁紙と撥水壁紙の双方に対して、バランス良く適度な密着性を発現する自己吸着性積層体の作製に使用しうる、自己吸着性発泡シート用組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、所定の方法で測定される二種の剥離力が所定の範囲内であり、且つ当該二種の剥離力の差の絶対値が所定の値未満である発泡シートを備える積層体であれば、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に対して適度な密着性を発現し、優れた汎用性を備えることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明によれば、下記〔1〕~〔3〕の自己吸着性積層体、及び〔4〕~〔7〕の自己吸着性発泡シート用組成物が提供される。
【0009】
〔1〕基材と、アクリル樹脂発泡体よりなる自己吸着性発泡シートとを積層してなる自己吸着性積層体であって、前記自己吸着性発泡シートは、ポリ塩化ビニル壁紙に対する剥離力P1と、撥水壁紙に対する剥離力P2の双方が1.00N/cm以上4.00N/cm以下であり、前記剥離力P1と前記剥離力P2の差の絶対値が1.00N/cm未満である、自己吸着性積層体。
剥離力P1と剥離力P2がそれぞれ1.00~4.00N/cmの範囲内であり、剥離力P1と剥離力P2の差の絶対値(以下、「|P1-P2|」と称する場合がある。)が1.00N/cm未満である発泡シートを備える積層体は、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に対してバランス良く適度な密着性を発現し、汎用性に優れる。
なお本明細書において、自己吸着性発泡シートの「ポリ塩化ビニル壁紙に対する剥離力P1」と「撥水壁紙に対する剥離力P2」は、それぞれ実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0010】
〔2〕前記自己吸着性発泡シートの平均厚みが40μm超である、上記〔1〕に記載の自己吸着性積層体。
発泡シートの平均厚みを40μm超とすることで、当該発泡シートの剥離力P1及びP2をそれぞれ高めて、剥離力P1及びP2、並びに|P1-P2|を所定の範囲内へと制御し易くなるといった利点がある。
なお本明細書において、自己吸着性発泡シート等の「平均厚み」は、測定対象である自己吸着性発泡シート等の、任意の6点の厚みの算術平均値を指す。
【0011】
〔3〕前記自己吸着性発泡シートの引張弾性率が0.05N/mm以下であり、前記自己吸着性発泡シートの破断伸度が300%以上である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の自己吸着性発泡シート。
発泡シートの引張弾性率を0.05N/mm以下とし、破断伸度が300%以上とすることで、剥離力P1及びP2、並びに|P1-P2|を所定の範囲内へと制御し易くなるといった利点がある。
なお本明細書において、自己吸着性発泡シートの「引張弾性率」と「破断伸度」は、それぞれ実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0012】
〔4〕アクリル樹脂及び架橋剤を含む自己吸着性発泡シート用組成物であって、前記アクリル樹脂の引張弾性率が0.30N/mm以下であり、前記アクリル樹脂の破断伸度が500%以上である、自己吸着性発泡シート用組成物。
引張弾性率が0.30N/mm以下であり且つ破断伸度が500%以上であるアクリル樹脂と、架橋剤とを含む発泡シート用組成物を用いて形成されるアクリル樹脂発泡体を発泡シートとして用いれば、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に対してバランス良く適度な密着性を発現し、汎用性に優れる積層体を作製することができる。
なお本明細書において、アクリル樹脂の「引張弾性率」と「破断伸度」は、それぞれ実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0013】
〔5〕前記アクリル樹脂のガラス転移温度が-40℃以下である、上記〔4〕に記載の自己吸着性発泡シート用組成物。
ガラス転移温度が-40℃以下であるアクリル樹脂を含む発泡シート用組成物を用いて発泡シートを形成すれば、剥離力P1及びP2、並びに|P1-P2|を所定の範囲内へと制御し易くなるといった利点がある。また、貼り付け時の凹凸追従性及び長期に亘る密着安定性に優れる発泡シートを得ることができる。
なお本明細書において、アクリル樹脂等の樹脂の「ガラス転移温度」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0014】
〔6〕前記架橋剤の含有量が、前記アクリル樹脂100質量部当たり0.5質量部以上3質量部以下である、上記〔4〕又は〔5〕に記載の自己吸着性発泡シート用組成物。
架橋剤の含有量が上記範囲内である発泡シート用組成物を用いて発泡シートを形成すれば、剥離力P1及びP2、並びに|P1-P2|を所定の範囲内へと制御し易くなるといった利点がある。また、強度及び柔軟性に優れる発泡シートを得ることができる。
【0015】
〔7〕前記アクリル樹脂が、アクリル酸2-エチルヘキシル単位を50質量%以上の割合で含む重合体である、上記〔4〕~〔6〕の何れかに記載の自己吸着性発泡シート用組成物。
繰り返し単位としてアクリル酸2-エチルヘキシル単位を50質量%以上の割合で含むアクリル樹脂を含有する発泡シート用組成物を用いて発泡シートを形成すれば、剥離力P1及びP2、並びに|P1-P2|を所定の範囲内へと制御し易くなるといった利点がある。
なお本明細書において、「単量体単位」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に含まれる、当該単量体由来の繰り返し単位」を意味し、例えば上記の「アクリル酸2-エチルヘキシル単位」とは、アクリル酸2-エチルヘキシル由来の繰り返し単位を意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ポリ塩化ビニル壁紙と撥水壁紙の双方に対して、バランス良く適度な密着性を発現する自己吸着性積層体を提供することができる。
また本発明によれば、ポリ塩化ビニル壁紙と撥水壁紙の双方に対して、バランス良く適度な密着性を発現する自己吸着性積層体の作製に使用しうる、自己吸着性発泡シート用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の自己吸着性積層体は、特に限定されることなく、自己吸着性積層体の自己吸着性発泡シートを、例えば、壁紙が貼られた壁面などの被着面に貼り付けて使用し、使用後は該被着面から容易に剥離することができるものである。また本発明の自己吸着性発泡シート用組成物は、本発明の自己吸着性積層体を構成する自己吸着性発泡シートの作製に用いることができる。
【0018】
(自己吸着性積層体)
本発明の積層体は、アクリル樹脂発泡体よりなる発泡シートと、基材とを積層してなる。そして本発明の積層体では、発泡シートについて、ポリ塩化ビニル壁紙に対する剥離力P1と、撥水壁紙に対する剥離力P2の双方が1.00N/cm以上4.00N/cm以下であり、剥離力P1と前記剥離力P2の差の絶対値が1.00N/cm未満であることを特徴とする。このような性状を有する発泡シートを備える本発明の積層体は、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に対して適度な密着性をバランス良く発現し、汎用性に優れる。
【0019】
なお、本発明の積層体の構造は、基材の厚み方向一方側に発泡シートが積層されており、一方の表面(使用時に被着体に貼り合わされる面)が発泡シートで構成されていれば、特に限定されない。例えば、積層体は、基材と発泡シートとの間に接着層などの任意の層が介在する構造であってもよい。また例えば、積層体は、被着体に貼り合わされる前の運搬時や保管時には、発泡シート側の表面に剥離可能なセパレーターフィルムが積層されていてもよい。
【0020】
<自己吸着性発泡シート>
発泡シートは、アクリル樹脂発泡体で構成され、そして所定の性状を有する。
【0021】
<<剥離力P1>>
発泡シートは、PVC壁紙に対する剥離力P1が、上述の通り1.00N/cm以上4.00N/cm以下であることが必要であり、1.40N/cm以上であることが好ましく、1.80N/cm以上であることがより好ましく、2.20N/cm以上であることが更に好ましく、2.60N/cm以上であることが特に好ましく、3.70N/cm以下であることが好ましく、3.40N/cm以下であることがより好ましく、3.10N/cm以下であることが更に好ましく、2.90N/cm以下であることが特に好ましい。剥離力P1が1.00N/cmを下回ると、積層体のPVC壁紙に対する密着性が低下する。一方、剥離力P1が4.00N/cmを上回ると、PVC壁紙からの剥離が困難となり、積層体のリワーク性を確保することができない。換言すると、剥離力P1が1.00N/cm以上4.00N/cm以下の範囲内であれば、積層体がPVC壁紙に対して適度な密着性を有するといえる。
【0022】
<<剥離力P2>>
発泡シートは、撥水壁紙に対する剥離力P2が、上述の通り1.00N/cm以上4.00N/cm以下であることが必要であり、1.30N/cm以上であることが好ましく、1.60N/cm以上であることがより好ましく、1.90N/cm以上であることが更に好ましく、2.10N/cm以上であることが特に好ましく、3.50N/cm以下であることが好ましく、3.00N/cm以下であることがより好ましく、2.70N/cm以下であることが更に好ましく、2.40N/cm以下であることが特に好ましい。剥離力P2が1.00N/cmを下回ると、積層体の撥水壁紙に対する密着性が低下する。一方、剥離力P2が4.00N/cmを上回ると、撥水壁紙からの剥離が困難となり、積層体のリワーク性を確保することができない。換言すると、剥離力P2が1.00N/cm以上4.00N/cm以下の範囲内であれば、積層体が撥水壁紙に対して適度な密着性を有するといえる。
【0023】
<<剥離力P1と剥離力P2の差の絶対値>>
発泡シートは、|P1-P2|が、上述の通り1.00N/cm未満であることが必要であり、0.90N/cm未満であることが好ましく、0.80N/cm未満であることがより好ましく、0.70N/cm未満であることが更に好ましく、0.65N/cm未満であることが特に好ましい。|P1-P2|が1.00N/cm以上であると、PVC壁紙に対する密着性と撥水壁紙に対する密着性との間のギャップが大きくなり、積層体は、一般壁紙と撥水壁紙の双方に対して適度な密着性をバランス良く発揮することができない。
【0024】
<<平均厚み>>
発泡シートは、平均厚みが40μm超であることが好ましく、60μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることが更に好ましく、1mm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。発泡シートの平均厚みが40μm超であれば、当該発泡シートを備える積層体を被着体に貼り付けた際に凹凸追従性を高めることができる。そのため、剥離力P1と剥離力P2をそれぞれ高めて、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に対する密着性を向上させることができる。すなわち、剥離力P1及びP2、並びに|P1-P2|を所定の範囲内へと制御し易くなるといった利点がある。一方、発泡シートの平均厚みが1mm以下であれば、当該発泡シートを備える積層体の自重増加を抑制し、施工性を高めることができる。
【0025】
<<引張弾性率>>
発泡シートは、引張弾性率が0.05N/mm以下であることが好ましく、0.04N/mm以下であることがより好ましく、0.03N/mm以下であることが更に好ましく、0.02N/mm以下であることが特に好ましい。発泡シートの引張弾性率が0.05N/mm以下であれば、剥離力P1及びP2、並びに|P1-P2|を所定の範囲内へと制御し易くなるといった利点がある。なお、発泡シートについて引張弾性率の下限は、特に限定されないが、例えば0.001N/mm以上とすることができる。
【0026】
<<破断伸度>>
発泡シートは、破断伸度が300%以上であることが好ましく、350%以上であることがより好ましく、400%以上であることが更に好ましく、450%以上であることがより一層好ましく、500%以上であることが特に好ましい。発泡シートの破断伸度が300%以上であれば、剥離力P1及びP2、並びに|P1-P2|を所定の範囲内へと制御し易くなるといった利点がある。なお、発泡シートについて破断伸度の上限は、特に限定されないが、例えば1000%以下とすることができる。
【0027】
なお、上述した発泡シートの性状(剥離力P1及びP2、|P1-P2|、平均厚み、引張弾性率、破断伸度等)は、例えば、発泡シート用組成物の組成及び固形分濃度、発泡時の気泡の混入比率、発泡体をコーティングする厚み、並びに、乾燥及び架橋の条件等を変更することにより、調整することができる。
【0028】
<基材>
基材としては、特に限定されず、自己吸着性積層体に用いられる既知の基材(紙基材、プラスチック基材など)を用いてもよい。しかしながら、本発明の積層体には、不織布層、融点が120℃以上の結晶性樹脂又はガラス転移温度が50℃以上の非結晶性樹脂からなる樹脂層、及び、アルミニウム層からなる群から選ばれる少なくとも1つの層を含む基材を用いることが好ましい。これらの層の少なくとも1つを備える基材を、当該層を介して発泡シートに貼り合わせれば、積層体が吸湿した際の寸法変化を抑制する(すなわち、耐湿性を向上させる)ことができる。なお基材は、上記の層少なくとも1つに加え、任意で、上記所定の材料以外の材料から構成される層(以下、単に「その他の層」という)を備えていてもよい。その他の層は、通常、所定の材料からなる層の、自己吸着性発泡シートが設けられる側とは反対側の表面の上に形成される。その他の層は、当該表面の一部に設けられていてもよいし全体に設けられていてもよいが、全体に設けられていることが好ましい。
【0029】
基材は、上述した所定の材料からなる層のみからなっていてもよい。中でも、基材は、不織布層、又は、不織布層と所定の樹脂層とからなることが好ましい。
基材が、不織布層、所定の樹脂層、及びアルミニウム層からなる群から選択される2種以上の層を含む場合、これらの層を一体化する方法は、特に限定されず、接着剤の使用、融着、圧着等の既知の手法を用いて一体化することができる。
【0030】
また、上記所定の材料からなる層の平均厚みは、特に限定されないが、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、130μm以上であることが更に好ましく、また、1000μm以下であることが好ましい。上記所定の材料からなる層の平均厚みが50μm以上であれば、積層体の機械的強度を向上させることができると共に、基材が不織布層を含む場合であって、後述する発泡シート用組成物から形成される発泡体や、所定の樹脂層を形成するための樹脂組成物等を不織布層にコーティングしたときに、裏抜けを良好に抑制することができる。また上記所定の材料からなる層の厚みが1000μm以下であれば、発泡シートを作製する際の加熱乾燥時に熱の通りが悪化することを抑制して、発泡シートを充分乾燥させることができる。
【0031】
<<不織布層>>
不織布層は、不織布から構成される層である。不織布(フリース)は、繊維が3次元に絡んでなる材料である。具体的には、「不織布」とは、JIS L 0222にて定義されているように、「繊維シート、ウェブ又はバットで、繊維が一方向又はランダムに配向しており、交絡、融着、及び接着の少なくとも1つの態様によって繊維間が結合されたもの」(ただし、紙、織物、編物、タフト及び縮じゅうフェルトを除く)を指す。このように、不織布は繊維が3次元に絡んでなるため、吸湿しても寸法変化し難いものと推察される。
不織布の材質は、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル、ポリウレタン、ポリオオキシメチレン、ポリテトラフルオレエチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール等の樹脂を用いることが好ましい。これらの樹脂は1種類を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、樹脂としては、耐熱性、耐水性、耐薬品性等の観点からは、ポリエステルを用いることが好ましい。また、発泡シートを作製する際の加熱処理中の収縮や溶融に起因して基材の外観が損なわれることを抑制する観点からは、樹脂としては、耐熱性に優れるもの(例えば、結晶性樹脂を用いる場合、融点が100℃以上のもの)を用いることが好ましい。
【0032】
ここで、積層体の耐湿性を一層向上させる観点からは、不織布を構成する繊維は上述した樹脂のみからなることが望ましいが、本発明で使用される不織布は、パルプを含んでいてもよい。ここで、パルプとは、複数のセルロース繊維が集合した繊維状の物質を指す。例えば、不織布は、不織布に含まれる成分の合計を100質量%としたときに、50質量%以上90質量%以下のパルプを含み得る。
【0033】
また、不織布層には、本発明の効果を損なわない範囲で、不織布の製造に使用され得るバインダー(接着剤)、後述する所定の樹脂層を構成する樹脂等の成分、及び/又は、発泡シートを構成するアクリル樹脂等の成分が含まれていてもよい。さらに、不織布層には、本発明の効果を損なわない範囲で、難燃剤、無機質剤、着色剤、サイズ剤、定着剤、防カビ剤、艶消し剤、抗菌剤などの添加剤が適宜添加されていてもよい。
なお、不織布層には、後述する「融点が120℃以上の結晶性樹脂又はガラス転移温度が50℃以上の非結晶性樹脂からなる樹脂層」は含まれないものとする。
【0034】
不織布の製造方法としては、特に限定されず、例えば、湿式法、スパンボンド法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法、水流絡合(スパンレース)法などのいずれであってもよい。
【0035】
<<融点が120℃以上の結晶性樹脂又はガラス転移温度が50℃以上の非結晶性樹脂からなる樹脂層>>
融点が120℃以上の結晶性樹脂又はガラス転移温度が50℃以上の非結晶性樹脂からなる樹脂層は、融点が120℃以上の結晶性樹脂からなるフィルム(シート)、又はガラス転移温度が50℃以上の非結晶性樹脂からなるフィルム(シート)である。
これらの樹脂は、吸湿しても寸法変化し難く、また、耐熱性に優れるため、耐湿性を向上させつつ、発泡シートを作製する際の加熱乾燥時の熱による基材の劣化を抑制することができる。
【0036】
融点が120℃以上の結晶性樹脂としては、限定されないが、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン等;ポリアミド;ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。これらの樹脂は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、融点が120℃以上の結晶性樹脂としては、耐湿性及び耐熱性の観点から、ポリエステルを用いることが好ましい。
なお本明細書において、結晶性樹脂の「融点」は、示差走査熱量計を用いてJIS K7121に準じて求めることができる。
【0037】
ガラス転移温度が50℃以上の非結晶性樹脂としては、限定されないが、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル樹脂)、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。これらの樹脂は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、加工性、印刷適正、難燃性、耐久性、耐候性、耐薬品性等の観点からは、ガラス転移温度が50℃以上の非結晶性樹脂としては、ポリ塩化ビニルを用いることが好ましい。
【0038】
上記樹脂は発泡体とされていてもよい。すなわち、上記所定の樹脂層は発泡樹脂フィルム(シート)であり得る。
なお、上記所定の樹脂層には、通常、自己吸着性発泡シートを構成するアクリル樹脂発泡体は含まれない。
【0039】
上記樹脂フィルム(シート)の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、上記樹脂を含む樹脂層用組成物又はその発泡体を離型性シート(離型性を有する工程紙など)にコーティングしてシート状に成形し、次いで加熱乾燥させて離型性シートの上に直接樹脂層を形成し、得られた積層体から離型性シートを剥離することにより、樹脂層を単独で(独立フィルム(シート)として)得ることができる。あるいは、基材が上記不織布層及び/又は上記アルミニウム層を備える場合、樹脂層(フィルム)は、上記樹脂を含む樹脂層用組成物又はその発泡体を不織布層又はアルミニウム層にコーティングしてシート状に成形し、次いで加熱乾燥させることにより得てもよい。
ここで、樹脂層用組成物が含み得るその他の成分(樹脂以外の成分)、樹脂層用組成物の調製方法及びコーティング方法、並びに、樹脂の発泡方法及び発泡体の架橋方法等は、特に限定されず、後述する「自己吸着性発泡シート用組成物」、「自己吸着性発泡シート及び自己吸着性積層体の製造」の項に記載されたものと同様のものを用いることができる。
【0040】
<<アルミニウム層>>
アルミニウム層は、アルミニウムから構成されるフィルム(シート)である。アルミニウムは吸湿により寸法変化がし難く、また、軽量であり断熱性に優れる材料である。したがって、アルミニウム層は、自重増加の抑制及び断熱性の向上を図りつつ、耐湿性を向上させ得る。
【0041】
アルミニウムフィルム(シート)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により形成することができる。なお、基材が上記所定の樹脂層を備える場合、該所定の樹脂層上に蒸着法によりアルミニウムを成膜することによりアルミニウム層を形成してもよい。
【0042】
<<その他の層>>
基材が含み得るその他の層としては、特に限定されないが、アルミニウム以外の金属層、ガラス層などを用いることができる。
【0043】
その他の層の平均厚みは、特に限定されないが、10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、また、500μm以下であることがより好ましい。
【0044】
その他の層は、特に限定されず、所定の材料からなる層上に公知の方法により設けることができる。
【0045】
上記所定の材料からなる層とその他の層とを一体化する方法は、特に限定されず、接着剤の使用、融着、圧着等の既知の手法を用いて行うことができる。
【0046】
<<基材の平均厚み>>
基材の平均厚みは、特に限定されないが、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、130μm以上であることが更に好ましく、また、1000μm以下であることが好ましい。基材の平均厚みが50μm以上であれば、積層体の耐湿性を更に向上させることができると共に、基材が不織布層を含む場合であって、後述する発泡シート用組成物から形成される発泡シートや、上記所定の樹脂層を形成するための樹脂組成物等を不織布層にコーティングしたときに、裏抜けを良好に抑制することができる。また、基材の平均厚みが1000μm以下であれば、発泡シートを作製する際の加熱乾燥時に熱の通りが悪化することを抑制して、発泡シートを充分乾燥させることができる。
【0047】
<<基材の坪量>>
基材の坪量は、特に限定されないが、10g/m以上であることが好ましく、20g/m以上であることがより好ましく、また、500g/m以下であることが好ましく、400g/m以下であることがより好ましい。基材の坪量が10g/m以上であれば、積層体の強度を高めることができる。また、基材の坪量が500g/m以下であれば、自重の増加を抑制し、施工性を高めることができる。
【0048】
基材は、適宜製造してもよいが、市販のものを用いてもよい。基材として用いられ得る不織布の市販品としては、例えば、帝人フロンティア社製の「315TH-140」、「05-TH-20」等が挙げられる。また、不織布層と樹脂層とを有する市販の基材としては、例えば、アサヒペン社製の「FW-01」等のフリース(不織布)壁紙が挙げられる。
【0049】
(自己吸着性発泡シート用組成物)
本発明の発泡シート用組成物は、アクリル樹脂と架橋剤を含み、任意に、整泡剤、溶媒及びその他の添加剤からなる群より選択される1種以上を更に含有する。本発明の発泡シート用組成物は、上述した本発明の積層体を構成する、発泡シートとしてのアクリル樹脂発泡体の形成に好適に用いることができる。
【0050】
<アクリル樹脂>
アクリル樹脂は、(メタ)アクリレート単量体単位を含む重合体であり、そして引張弾性率が0.30N/mm以下であり、破断伸度が500%以上であることが必要である。
なお本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0051】
<<組成>>
アクリル樹脂を構成する重合体は、上述の通り(メタ)アクリレート単量体単位を含有し、任意に、その他の単量体単位を更に含有する。
【0052】
ここで、(メタ)アクリレート単量体単位は、(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位である。(メタ)アクリレート単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体;などを挙げることができる。これらは1種類を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。そしてこれらの中でも、発泡シートの剥離力P1及びP2、並びに|P1-P2|を所定範囲内へと制御し、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に対して適度な密着性をバランス良く発現する積層体を効率的に得る観点から、(メタ)アクリレート単量体としては、アクリル酸2-エチルヘキシルとメタクリル酸メチルの少なくとも一方を用いることが好ましく、少なくともアクリル酸2-エチルヘキシルを用いることがより好ましく、アクリル酸2-エチルヘキシルとメタクリル酸メチルの双方を用いることが更に好ましい。換言すると、アクリル樹脂は、アクリル酸2-エチルヘキシル単位とメタクリル酸メチル単位の少なくとも一方を含む重合体であることが好ましく、少なくともアクリル酸2-エチルヘキシル単位を含む重合体であることがより好ましく、アクリル酸2-エチルヘキシル単位とメタクリル酸メチル単位の双方を含む重合体であることが更に好ましい。
なお本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0053】
重合体中における(メタ)アクリレート単量体単位の割合は、発泡シートの剥離力P1及びP2、並びに|P1-P2|を所定範囲内へと制御し、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に対して適度な密着性をバランス良く発現する積層体を効率的に得る観点から、重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることがより一層好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、100質量%以下であり、99質量%以下であることが好ましい。
また、重合体がアクリル酸2-エチルヘキシル単位を含む場合、重合体中におけるアクリル酸2-エチルヘキシル単位の割合は、発泡シートの剥離力P1及びP2、並びに|P1-P2|を所定範囲内へと制御し、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に対して適度な密着性をバランス良く発現する積層体を効率的に得る観点から、重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることがより一層好ましく、85質量%以上であることが特に好ましく、100質量%以下とすることができ、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、92質量%以下であることが更に好ましく、88質量%いかであることがより一層好ましい。
そして、重合体がメタクリル酸メチル単位を含む場合、重合体中におけるメタクリル酸メチル単位の割合は、発泡シートの剥離力P1及びP2、並びに|P1-P2|を所定範囲内へと制御し、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に対して適度な密着性をバランス良く発現する積層体を効率的に得る観点から、重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましく、7質量%以上であることがより一層好ましく、9質量%以上であることが特に好ましく、30質量%以下とすることができ、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。
【0054】
その他の単量体単位としては、特に限定されることなく、例えば国際公開第2018/151274号に記載の単量体単位などが挙げられる。具体的には、その他の単量体単位としては、特に限定されることなく、不飽和カルボン酸単量体単位、シアン化ビニル単量体単位及びアルケニル芳香族単量体単位などが挙げられる。
そしてこれらの中でも、後述する架橋剤を用いて架橋構造を形成する観点から、不飽和カルボン酸単量体単位が好ましい。
ここで、不飽和カルボン酸単量体単位は、不飽和カルボン酸単量体に由来する繰り返し単位である。不飽和カルボン酸単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などを挙げることができる。これらは1種類を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。そしてこれらの中でも、発泡シートの剥離力P1及びP2、並びに|P1-P2|を所定範囲内へと制御し、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に対して適度な密着性をバランス良く発現する積層体を効率的に得る観点から、不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸が好ましい。換言すると、アクリル樹脂は、アクリル酸単位を含む重合体であることが好ましい。
そして、重合体が不飽和カルボン酸単量体単位を含む場合、重合体中における不飽和カルボン酸単量体単位の割合は、発泡シートの剥離力P1及びP2、並びに|P1-P2|を所定範囲内へと制御し、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に対して適度な密着性をバランス良く発現する積層体を効率的に得る観点から、重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましく、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。
【0055】
<<引張弾性率>>
アクリル樹脂は、引張弾性率が上述の通り0.30N/mm以下であることが必要であり、0.25N/mm以下であることが好ましく、0.20N/mm以下であることがより好ましく、0.10N/mm以下であることが更に好ましく、0.05N/mm以下であることがより一層好ましい。アクリル樹脂の引張弾性率が0.30N/mmを上回ると、発泡シートの剥離力P2が低下し、そして|P1-P2|が大きくなり、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に対して適度な密着性をバランス良く発現する積層体を効率的に得ることができない。換言すると、アクリル樹脂の引張弾性率が0.30N/mm以下であれば、発泡シートの剥離力P2を高めつつ|P1-P2|を低下させて、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に対して適度な密着性をバランス良く発現する積層体を効率的に得ることができる。なお、アクリル樹脂について引張弾性率の下限は、特に限定されないが、例えば0.001N/mm以上とすることができる。
アクリル樹脂の引張弾性率は、アクリル樹脂を構成する重合体の組成や、重合条件を調整することで制御しうる。
【0056】
<<破断伸度>>
アクリル樹脂は、破断伸度が上述の通り500%以上であることが好ましく、550%以上であることがより好ましく、600%以上であることが更に好ましく、650%以上であることがより一層好ましく、700%以上であることが特に好ましい。アクリル樹脂の破断伸度が500%を下回ると、発泡シートの剥離力P1及びP2が低下し、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に対して適度な密着性をバランス良く発現する積層体を効率的に得ることができない。換言すると、アクリル樹脂の破断伸度が500%以上であれば発泡シートの剥離力P1及びP2を高めて、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に対して適度な密着性をバランス良く発現する積層体を効率的に得ることができる。なお、アクリル樹脂について破断伸度の上限は、特に限定されないが、例えば1500%以下とすることができる。
アクリル樹脂の破断伸度は、アクリル樹脂を構成する重合体の組成や、重合条件を調整することで制御しうる。
【0057】
<架橋剤>
発泡シート用組成物が含む架橋剤としては、アクリル樹脂を架橋可能であれば特に限定されることなく、エポキシ系架橋剤;カルボジイミド系架橋剤;オキサゾリン系架橋剤;トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネート等の多官能性イソシアネート系架橋剤;金属塩系架橋剤;金属キレート系架橋剤;過酸化物系架橋剤;などが挙げられる。これらは1種類を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。そしてこれらの中でも、発泡シートの剥離力P1及びP2、並びに|P1-P2|を所定範囲内へと制御し、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に対して適度な密着性をバランス良く発現する積層体を効率的に得る観点から、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤が好ましい。
【0058】
カルボジイミド系架橋剤としては、二つ以上のカルボジイミド基を一分子内に有する化合物が好ましく用いられる。また、カルボジイミド系架橋剤は、合成してもよく、市販品を使用してもよい。市販品のカルボジイミド系架橋剤としては、例えば、DIC社製の「DICNAL(登録商標) HX」、日清紡ケミカル製の「カルボジライト(登録商標)」などが挙げられる。
オキサゾリン系架橋剤としては、二つ以上のオキサゾリン基を一分子内に有する化合物が好ましく用いられる。オキサゾリン系架橋剤は、合成してもよく、市販品を使用してもよい。市販品のオキサゾリン系架橋剤としては、例えば、日本触媒社製の「エポクロス WS-300」、「エポクロス WS-500」、及び「エポクロス WS-700」などが挙げられる。
【0059】
発泡シート用組成物中の架橋剤の含有量は、アクリル樹脂100質量部当たり、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、3質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以下であることが更に好ましく、1.3質量部以下であることが特に好ましい。架橋剤の含有量が上述した範囲内である発泡シート用組成物を用いて発泡シートを形成すれば、剥離力P1及びP2、並びに|P1-P2|を所定の範囲内へと制御し易くなるといった利点がある。また、強度及び柔軟性に優れる発泡シートを得ることができる。
【0060】
<整泡剤>
発泡シート用組成物が任意に含みうる整泡剤としては、高級脂肪酸塩や界面活性剤などの既知の整泡剤を用いることができる。なお、整泡剤は、発泡シート用組成物を用いて形成したアクリル樹脂発泡体中に残留し得る。
そして、発泡シート用組成物中の整泡剤の含有量は、特に限定されることなく、アクリル樹脂100質量部当たり、0.1質量部以上20質量部以下とすることができる。整泡剤の配合量が上記範囲内であれば、良好な連続気泡構造を有するアクリル樹脂発泡体が得られる。
【0061】
<溶媒>
発泡シート用組成物が任意に含みうる溶媒としては、特に限定されることなく、水又は有機溶媒が挙げられる。中でも、水が好ましい。
【0062】
<その他の添加剤>
発泡シート用組成物が任意に含みうるその他の添加剤としては、例えば、発泡助剤、増粘剤、増粘助剤、充填材、防腐剤、防かび剤、ゲル化剤、難燃剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与剤、導電性化合物、耐水剤、耐油剤などを挙げることができる。なお、上述したその他の添加剤としては、特に限定されることなく、既知の添加剤、例えば国際公開第2016/147679号に記載されているものを用いることができる。
【0063】
(自己吸着性発泡シート及び自己吸着性積層体の製造)
上述した本発明の発泡シート用組成物を用いて、本発明の積層体が備える発泡シート(アクリル樹脂発泡体)を製造する方法は、特に限定されることなく、例えば、準備した発泡シート用組成物を発泡させて未硬化(未架橋)状態の発泡体を得た後、発泡体をシート状に成形し、必要に応じて硬化(架橋反応)させることにより行うことができる。
【0064】
ここで、発泡シート用組成物は、上述した成分を任意の方法及び順番で混合することにより調製することができる。例えば、発泡シート用組成物の調製にアクリル樹脂のラテックスを用いる場合には、ラテックスに対し、架橋剤、そして必要に応じて整泡剤、その他の添加剤などを添加して既知の方法で混合すればよい。また、発泡シート用組成物の調製に溶媒を使用せず、固形状のアクリル樹脂を用いる場合には、固形状のアクリル樹脂と、架橋剤、そして必要に応じて添加される整泡剤、その他の添加剤などとを既知の方法(例えば、既知のロール、ヘンシェルミキサー、ニーダー等を使用)で混合すればよい。
【0065】
なお、溶媒を含む発泡シート用組成物(例えば、エマルジョン又はディスパージョンの形態をとる。)の粘度は、1,000mPa・s以上とするのが好ましく、2,000mPa・s以上とするのがより好ましく、3,500mPa・s以上とするのが更に好ましく、10,000mPa・s以下とするのが好ましく、5,500mPa・s以下とするのがより好ましい。発泡シート用組成物の粘度が1,000mPa・s以上であれば、発泡シート用組成物から形成される発泡体を基材又は離型性シート(離型性を有する工程紙など)の上にコーティングする際に液ダレが生じて厚みの制御が困難になるのを防止することができる。一方、発泡シート用組成物の粘度が10,000mPa・s以下であれば、発泡シートを形成する際に機械発泡による発泡倍率の制御が困難になることもない。
なお、発泡シート用組成物の粘度は、B型粘度計を用いて、温度23℃で測定することができる。
【0066】
また、発泡シート用組成物の発泡の方法としては、柔軟性に優れる発泡シートを得る観点から、機械発泡を採用することが好ましい。発泡倍率は、適宜、調整すればよいが、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは1.6倍以上であり、また、好ましくは2.2倍以下、より好ましくは2.0倍以下である。発泡倍率が1.5倍以上であれば、貼り付け時の凹凸追従性及び長期に亘る密着安定性に優れる発泡シートを得ることができる。また、発泡倍率が2.2倍以下であれば、剥離時の被着面への樹脂残りの発生を抑制することができる。
【0067】
なお、機械発泡は、特に限定されないが、発泡シート用組成物のエマルジョン又はディスパージョン中に一定量の空気を混入しオークスミキサー、ホイッパー等により連続的又はバッチ式に撹拌することにより行うことができる。こうして得られた発泡体(発泡エマルジョン又は発泡ディスパージョン)はクリーム状になる。
【0068】
更に、発泡体をシート状に成形する方法は特に限定されない。好適な方法としては、例えば、不織布層、所定の樹脂層、又はアルミニウム層を備える上記基材の上に発泡体をコーティングしてシート状に成形する方法が挙げられる。このように、上記基材上へ発泡体のコーティングを行い、架橋反応を進行させれば、基材上に直接発泡シートが設けられた積層体を得ることができる。
【0069】
なお、発泡体のコーティングは、上記基材に替えて、離型性シートの上に行うこともできる。離型性シートの上へ発泡体のコーティングを行い、架橋反応を進行させれば、離型性シートの上に直接発泡シートが設けられた積層体を得ることができる。そして、この積層体の発泡シートから離型性シートを剥離させることで、発泡シートを単独で(独立膜として)得ることができる。
【0070】
発泡体を基材又は離型性シート(以下、これらを纏めて「基材等」という場合がある。)の上へコーティングする方法としては、アプリケーター、バーコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、スクリーンコーター、ドクターナイフコーター、コンマナイフコーター等の一般に知られているコーティング装置を使用することができる。
【0071】
シート状に成形された発泡体を架橋する方法としては、発泡体を加熱乾燥する方法が好ましい。加熱乾燥の方法としては、シート状に成形された発泡体を乾燥、架橋させることができる方法であれば特に限定されず、既知の乾燥炉(例えば、熱風循環型のオーブン、熱油循環熱風チャンバー、遠赤外線ヒーターチャンバー)を使用することができる。乾燥温度は、例えば60℃以上180℃以下とすることができる。また、乾燥を一定温度で実施するのではなく、乾燥初期には低温で内部から乾燥させ、乾燥後期に、より高温で十分乾燥させるような多段階乾燥を行うことが好ましい。
【0072】
なお、上述したようにして得られる、発泡シートと基材等との積層体は、特に限定されないが、例えば、自己吸着性を有する面にセパレーターフィルムが貼られた後、巻取機によって巻き取られ、プレス裁断、スリッター等により裁断されて使いやすいサイズに加工することができる。
【0073】
上述したアクリル樹脂発泡体よりなる発泡シートの成形を基材上で行った場合には、得られる積層体をそのまま、或いは、必要に応じて切断等の加工を施してから、本発明の積層体として用いることができる。
また、上述したアクリル樹脂発泡体よりなる発泡シートの成形を離型性シート上で行った場合には、離型性シートから剥離した発泡シートを基材に積層及び一体化することにより、本発明の積層体を得ることができる。ここで、発泡シートと基材の一体化は、接着剤の使用、融着、圧着等の既知の手法を用いて行うことができる。
【0074】
(自己吸着性積層体の用途)
本発明の積層体は、その基材面に、例えば、オフセット印刷、シール印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷、レーザープリンター、熱転写プリンター、インクジェットプリンター等による印刷を施すことができる。また、本発明の積層体は、基材に加飾が施されていてもよい。
そして、本発明の積層体は、特に限定されることなく、例えば壁紙の上に貼る壁紙等の、被着面に対して貼り付けるシートとして有利に使用することが可能である。
【実施例0075】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、実施例及び比較例において、アクリル樹脂のガラス転移温度、引張弾性率及び破断伸度、発泡シートの引張弾性率、破断伸度、PVC壁紙に対する剥離力P1、撥水壁紙に対する剥離力P2、及び|P1-P2|は、以下の方法で測定又は評価した。
【0076】
<アクリル樹脂のガラス転移温度>
JIS K7121に準拠し、測定温度-50℃以上160℃以下、昇温速度10℃/分の条件で、示差走査熱量分析計を用いることにより測定した。
<アクリル樹脂の引張弾性率>
アクリル樹脂単体を23℃で78時間乾燥し、厚みが1mmの試験樹脂シートを得た。この試験樹脂シートをJIS K 7113:1995 2号形に裁断し、オートグラフ(島津製作所社製、「AG-IS」)を用いて、引張速度200mm/分、つかみ具間距離:40mmとし、JIS K 7113:1995の試験方法にて引張試験を実施し、応力を測定した。そして、下記の式で引張弾性率E(N/mm)を算出した。
=Δσ/Δε=(σ25%-σ5%)/(0.25-0.05)
Δδ:直線上の2点間の元の平均断面積による応力差
Δε:上記と同じ2点間の歪みの差
なお2点の応力は、5%伸長時の応力(σ5%)、25%%伸長時の応力(σ25%)を使用した。
<アクリル樹脂の破断伸度>
上記「アクリル樹脂の引張弾性率」と同様にして引張試験を実施し、試験樹脂シートを破断させた。試験樹脂シートの破断が生じた際のシート長L(=つかみ具間距離、単位:mm)と、引張試験実施前の初期シート長L(=つかみ具間距離、40mm)を用い、下記の式で破断伸度l(%)を算出した。
l=(L-L)/L×100=(L-40)/40×100
<発泡シートの引張弾性率>
各実施例及び比較例において、基材として離型性シート(三井化学東セロ社製、「SP-PET-O1-BU」、平均厚み:100μm)を用いた以外は当該実施例又は比較例と同じ手順で発泡シート用組成物、積層体を作製した。次いで積層体の発泡シートから離型性シートを剥離し、そして発泡シートをJIS K 7113:1995 2号形に裁断し、試験用発泡シートを得た。得られた試験用発泡シートについて、オートグラフ(島津製作所社製、「AG-IS」)を用いて、引張速度200mm/分、つかみ具間距離:40mmとし、JIS K 7113:1995の試験方法にて引張試験を実施し、応力を測定した。そして、下記の式で引張弾性率E(N/mm)を算出した。
=Δσ/Δε=(σ25%-σ5%)/(0.25-0.05)
Δδ:直線上の2点間の元の平均断面積による応力差
Δε:上記と同じ2点間の歪みの差
なお2点の応力は、5%伸長時の応力(σ5%)、25%%伸長時の応力(σ25%)を使用した。
<発泡シートの破断伸度>
各実施例及び比較例において、基材として離型性シート(三井化学東セロ社製、「SP-PET-O1-BU」、平均厚み:100μm)を用いた以外は当該実施例又は比較例と同じ手順で発泡シート用組成物、積層体を作製した。次いで積層体の発泡シートから離型性シートを剥離し、そして発泡シートをJIS K 7113:1995 2号形に裁断し、試験用発泡シートを得た。
上記「発泡シートの引張弾性率」と同様にして引張試験を実施し、試験用発泡シートを破断させた。試験用発泡シートの破断が生じた際のシート長L(=つかみ具間距離、単位:mm)と、引張試験実施前の初期シート長L(=つかみ具間距離、40mm)を用い、下記の式で破断伸度l(%)を算出した。
l=(L-L)/L×100=(L-40)/40×100
<PVC壁紙に対する剥離力P1>
作製した積層体を125mm×25mmのサイズに切り出し、試験片とした。次に、125mm×50mmのサイズに切り出したPVC壁紙を同サイズのアルミ板に両面テープで貼り合わせ、被着体を用意した。被着体のPVC壁紙側の面に試験片の発泡シート側の面を貼り合わせ、試験片の上から2kgfの荷重をかけてローラーで圧着し、23℃、50%RH環境下にて1時間放置した。その後、試験片の端部をオートグラフ(島津製作所社製、「AG-IS」)の上側チャックに固定し、被着体を下側チャックに固定し、23℃、50%RH環境下にて180度剥離試験を300mm/分の速度で実施した。この時の剥離力(N/mm)を、PVC壁紙に対する剥離力P1とした。
-PVC壁紙-
上記剥離力P1の測定には、以下のPVC壁紙を使用した。
製品名:LB9233(リリカラ社製)
材質:ポリ塩化ビニル
また当該PVC壁紙の形状をワンショット3D形状測定機(キーエンス社製、「VR-3100」)で測定したところ、算術平均高さSaが0.1mm、最大高さSzが0.8mmであり、また最も突出している部分を通過する面を基準面とした時に、基準面から-100μmの範囲内に含まれる面積の割合が35.8%であった。
<撥水壁紙に対する剥離力P2>
作製した積層体を125mm×25mmのサイズに切り出し、試験片とした。次に、125mm×50mmのサイズに切り出した撥水壁紙を同サイズのアルミ板に両面テープで貼り合わせ、被着体を用意した。被着体の撥水壁紙側の面に試験片の発泡シート側の面を貼り合わせ、試験片の上から2kgfの荷重をかけてローラーで圧着し、23℃、50%RH環境下にて1時間放置した。その後、試験片の端部をオートグラフ(島津製作所社製、「AG-IS」)の上側チャックに固定し、被着体を下側チャックに固定し、23℃、50%RH環境下にて180度剥離試験を300mm/分の速度で実施した。この時の剥離力(N/mm)を、撥水壁紙に対する剥離力P2とした。
-撥水壁紙-
上記剥離力P2の測定には、以下の撥水壁紙を使用した。
製品名:LV3453(リリカラ社製)
材質:ポリ塩化ビニル(撥水トップコート)
また当該撥水壁紙の形状をワンショット3D形状測定機(キーエンス社製、「VR-3100」)で測定したところ、算術平均高さSaが0.1mm、最大高さSzが0.6mmであり、また最も突出している部分を通過する面を基準面とした時に、基準面から-100μmの範囲内に含まれる面積の割合が66.0%であった。
<発泡シートの|P1-P2|>
上記測定で得られた剥離力P1と剥離力P2を用い、それらの差の絶対値を算出した。
【0077】
(実施例1)
<重合体Aの調製>
脱イオン水27.0部に、アクリル酸2-エチルヘキシル86.6部、メタクリル酸メチル11.8部、及びアクリル酸1.6部からなる単量体混合物100部、並びに、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム0.4部(花王社製:ラテムルE-118B)を混合、撹拌して、単量体乳化物を得た。
次いで、上記とは別に、還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口、及び撹拌機を備えたガラス製反応容器を準備し、このガラス製反応容器に、脱イオン水43.0部及びポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム0.2部を入れ、撹拌しながら、温度を80℃に昇温させた。そして、80℃を維持した状態で、脱イオン水5.7部に溶解させた過硫酸アンモニウム0.3部を添加し、続いて、上記にて得られた単量体乳化物を、4時間かけて徐々に添加した。添加終了後、さらに4時間撹拌を継続した後、冷却して反応を終了させ、反応混合物を得た。この時の重合転化率は、ほぼ100%(98%以上)であり、得られた反応混合物を、5%アンモニア水にてpH7.5に調整し、ポリオキシエチレンラウリルエーテル2.5部(花王社製:エマルゲン120)を添加後、濃縮を行い、固形分濃度60.2%の重合体ラテックスを得た。そして、得られた重合体ラテックスに含まれる重合体A(アクリル樹脂)は、アクリル酸2-エチルヘキシル単位を86.6%、メタクリル酸メチル単位を11.8%、アクリル酸単位を1.6%含んでいた。そして重合体Aについて、ガラス転移温度、引張弾性率、及び破断伸度を測定した。結果を表1に示す。
<発泡シート用組成物の調製>
混合容器に、100部の重合体Aを含む上記重合体ラテックス、1部のカルボジイミド系架橋剤(架橋剤、日清紡ケミカル社製、「カルボジライト E-02」)、及び3.5部の酸化チタン水分散体(顔料、DIC社製、DISPERSE WHITE HG-701)を添加し、ディスパーで撹拌した。次に撹拌を継続しながら、6部の整泡剤〔アルキルベタイン両性化物・脂肪酸アルカノールアミド混合物(DIC社製、DICNAL M-20)/スルホン酸型アニオン界面活性剤(DIC社製、DICNAL M-40)の1/1混合物〕及び増粘助剤としての28%アンモニア水0.6部をこの順に添加し、150メッシュでろ過した。最後に、1部の増粘剤(カルボン酸変性アクリル酸エステル重合体。東亞合成社製、アロンB-300K)を添加して粘度を4,500mPa・sに調整し、発泡シート用組成物を得た。
<積層体の作製>
上記の通り得られた発泡シート用組成物を泡立て器で撹拌し、発泡倍率が1.8倍になるように泡立て、更に撹拌速度を落として5分間撹拌を続行した。
発泡済みの発泡シート用組成物(発泡体)を、基材(アサヒペン社製、「FW-01」;パルプとポリエステル繊維からなる不織布層と、発泡塩化ビニル樹脂層とからなる基材、平均厚み:468μm)の不織布層の上に、アプリケーターを用いてコーティングした。これを乾燥炉に入れ、100℃で1.33分間、120℃で1.33分間、130℃で1.33分間保持して、乾燥及び架橋を実施して基材上に発泡シートを備える積層体を得た。発泡シートの平均厚みは200μmであった。
そして、得られた積層体を用いて、発泡シートの引張弾性率、破断伸度、剥離力P1及びP2、|P1-P2|を評価した。結果を表1に示す。
【0078】
(実施例2)
発泡シート用組成物の調製に際し、カルボジイミド系架橋剤の量を固形分換算で1部から1.5部に変更した以外は、実施例1と同様にして重合体A、発泡シート用組成物及び積層体を準備し、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
(比較例1)
以下のようにして重合体B(アクリル樹脂)、発泡シート用組成物及び積層体を準備し、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
<重合体Bの調製>
脱イオン水27.0部に、アクリル酸2-エチルヘキシル36.9部、アクリル酸n-ブチル60.0部、アクリロニトリル0.5部、及びアクリル酸2.6部からなる単量体混合物100部、並びに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8部(花王社製:ネオペレックスG-15)を混合、撹拌して、単量体乳化物を得た。
次いで、上記とは別に、還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口、及び撹拌機を備えたガラス製反応容器を準備し、このガラス製反応容器に、脱イオン水43.0部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部を入れ、撹拌しながら、温度を80℃に昇温させた。そして、80℃を維持した状態で、脱イオン水5.7部に溶解させた過硫酸アンモニウム0.3部を添加し、続いて、上記にて得られた単量体乳化物を、4時間かけて徐々に添加した。添加終了後、さらに4時間撹拌を継続した後、冷却して反応を終了させ、反応混合物を得た。この時の重合転化率は、ほぼ100%(98%以上)であり、得られた反応混合物を、5%アンモニア水にてpH8.9に調整し、ラウリル硫酸ナトリウム0.3部(花王社製:エマール2Fペースト)を添加後、濃縮を行い、固形分濃度56%の重合体ラテックスを得た。そして、得られた重合体ラテックスに含まれる重合体B(アクリル樹脂)は、アクリル酸2-エチルヘキシル単位を36.9%、アクリル酸n-ブチル単位を60.0%、アクリロニトリル単位を0.5%、アクリル酸単位を2.6%含んでいた。
<発泡シート用組成物の調製>
混合容器に、100部の重合体Bを含む上記重合体ラテックス、1部のエポキシ系架橋剤(架橋剤、ジャパンコーティングレジン株式会社製、製品名「リカボンド EX-8」)、及び3.5部の酸化チタン水分散体(顔料、DIC社製、DISPERSE WHITE HG-701)を添加し、ディスパーで撹拌した。次に撹拌を継続しながら、4部の整泡剤〔ステアリン酸アンモニウム、サンノプコ株式会社製、製品名「ノプコDC-100A」〕を添加し、150メッシュでろ過して粘度が4,000mPa・sの発泡シート用組成物を得た。
<積層体の作製>
上記の通り得られた発泡シート用組成物を泡立て器で撹拌し、発泡倍率が1.8倍になるように泡立て、更に撹拌速度を落として5分間撹拌を続行した。
発泡済みの発泡シート用組成物(発泡体)を、基材(アサヒペン社製、「FW-01」;パルプとポリエステル繊維からなる不織布層と、発泡塩化ビニル樹脂層とからなる基材、平均厚み:468μm)の不織布層の上に、アプリケーターを用いてコーティングした。これを乾燥炉に入れ、80℃で1.33分間、120℃で1.33分間、140℃で1.33分間保持して、乾燥及び架橋を実施して基材上に発泡シートを備える積層体を得た。発泡シートの平均厚みは200μmであった。
【0080】
(比較例2)
以下のようにして重合体C(アクリル樹脂)、発泡シート用組成物及び積層体を準備し、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
<重合体Cの調製>
脱イオン水27.0部に、アクリル酸n-ブチル84.4部、メタクリル酸n-ブチル7.1部、アクリロニトリル0.8部、アクリル酸2-エチルヘキシル2.2部、メタクリル酸メチル3.6部、及びアクリル酸1.9部からなる単量体混合物100部、並びに、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム0.4部(花王社製:ラテムルE-118B)を混合、撹拌して、単量体乳化物を得た。
次いで、上記とは別に、還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口、及び撹拌機を備えたガラス製反応容器を準備し、このガラス製反応容器に、脱イオン水43.0部及びポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム0.2部を入れ、撹拌しながら、温度を80℃に昇温させた。そして、80℃を維持した状態で、脱イオン水5.7部に溶解させた過硫酸アンモニウム0.3部を添加し、続いて、上記にて得られた単量体乳化物を、4時間かけて徐々に添加した。添加終了後、さらに4時間撹拌を継続した後、冷却して反応を終了させ、反応混合物を得た。この時の重合転化率は、ほぼ100%(98%以上)であり、得られた反応混合物を、5%アンモニア水にてpH5.5に調整し、ポリオキシエチレンラウリルエーテル1.0部(花王社製:エマルゲン120)を添加後、濃縮を行い、固形分濃度53%の重合体ラテックスを得た。そして、得られた重合体ラテックスに含まれる重合体C(アクリル樹脂)は、アクリル酸n-ブチル単位を84.4%、メタクリル酸n-ブチル単位を7.1%、アクリロニトリル単位を0.8%、アクリル酸2-エチルヘキシル単位を2.2%、メタクリル酸メチル単位を3.6%、及びアクリル酸単位を1.9%含んでいた。
<発泡シート用組成物の調製>
混合容器に、100部の重合体Cを含む上記重合体ラテックス、1部のカルボジイミド系架橋剤(架橋剤、日清紡ケミカル社製、「カルボジライト E-02」)、及び3.5部の酸化チタン水分散体(顔料、DIC社製、DISPERSE WHITE HG-701)を添加し、ディスパーで撹拌した。次に撹拌を継続しながら、6部の整泡剤〔アルキルベタイン両性化物・脂肪酸アルカノールアミド混合物(DIC社製、DICNAL M-20)/スルホン酸型アニオン界面活性剤(DIC社製、DICNAL M-40)の1/1混合物〕及び増粘助剤としての28%アンモニア水0.6部をこの順に添加し、150メッシュでろ過した。最後に、4部の増粘剤(カルボン酸変性アクリル酸エステル重合体。東亞合成社製、アロンB-300K)を添加して粘度を4,500mPa・sに調整し、発泡シート用組成物を得た。
<積層体の作製>
上記の通り得られた発泡シート用組成物を泡立て器で撹拌し、発泡倍率が1.8倍になるように泡立て、更に撹拌速度を落として5分間撹拌を続行した。
発泡済みの発泡シート用組成物(発泡体)を、基材(アサヒペン社製、「FW-01」;パルプとポリエステル繊維からなる不織布層と、発泡塩化ビニル樹脂層とからなる基材、平均厚み:468μm)の不織布層の上に、アプリケーターを用いてコーティングした。これを乾燥炉に入れ、100℃で1.33分間、120℃で1.33分間、130℃で1.33分間保持して、乾燥及び架橋を実施して基材上に発泡シートを備える積層体を得た。発泡シートの平均厚みは200μmであった。
【0081】
【表1】
【0082】
表1より、実施例1~2では、引張弾性率が0.3N/mm以下であり且つ破断伸度が500%以上であるアクリル樹脂と、架橋剤とを含む発泡シート用組成物を用いることで、剥離力P1と剥離力P2の双方が1.00~4.00N/cm以下、そして|P1-P2|が1.00N/cm未満である発泡シートを備え、PVC壁紙と撥水壁紙の双方に適度な密着性をバランス良く発現する積層体が得られていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、ポリ塩化ビニル壁紙と撥水壁紙の双方に対して、バランス良く適度な密着性を発現する自己吸着性積層体を提供することができる。
また本発明によれば、ポリ塩化ビニル壁紙と撥水壁紙の双方に対して、バランス良く適度な密着性を発現する自己吸着性積層体の作製に使用しうる、自己吸着性発泡シート用組成物を提供することができる。