IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142187
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】壁紙およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241003BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20241003BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241003BHJP
   C09J 101/00 20060101ALI20241003BHJP
   C08J 9/30 20060101ALI20241003BHJP
   D21H 27/20 20060101ALI20241003BHJP
   D21H 11/18 20060101ALI20241003BHJP
   D21H 15/02 20060101ALI20241003BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/21
C09J201/00
C09J101/00
C08J9/30 CEY
D21H27/20 A
D21H11/18
D21H15/02
B32B27/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054237
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】曽根 篤
【テーマコード(参考)】
4F074
4F100
4J004
4J040
4L055
【Fターム(参考)】
4F074AA02
4F074AA48
4F074AA64
4F074AD13
4F074AH04
4F074BB10
4F074CB52
4F074CC04Z
4F074CC22X
4F074CC28Z
4F074CC32Z
4F074DA02
4F074DA13
4F074DA20
4F074DA24
4F074DA59
4F100AJ04A
4F100AJ04B
4F100AJ06B
4F100AK01C
4F100AK15C
4F100AK25B
4F100AK53B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100CA02B
4F100DJ01B
4F100DJ03B
4F100EH46B
4F100EJ42
4F100GB07
4F100JL13B
4F100YY00B
4J004AA04
4J004AA10
4J004AA13
4J004AB01
4J004AC03
4J004CA05
4J004CB02
4J004CC03
4J004FA07
4J040BA022
4J040DF021
4J040EC022
4J040JA03
4J040KA04
4J040KA16
4J040KA25
4J040KA37
4J040NA12
4L055AA02
4L055AC06
4L055AF09
4L055AF10
4L055AF46
4L055AG03
4L055AG07
4L055AG34
4L055AG68
4L055AG71
4L055AG99
4L055AH37
4L055AJ03
4L055BE08
4L055EA08
4L055EA14
4L055EA16
4L055EA30
4L055EA32
4L055GA23
(57)【要約】
【課題】製造時や施工後に反りや皺が発生し難い壁紙を提供する。
【解決手段】壁紙基材と、壁紙基材の少なくとも一方の表面に設けられた粘着層とを備える壁紙であって、壁紙基材がセルロースを含有し、粘着層が、数平均繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバーを含有する、壁紙。また、数平均繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバーを含有する粘着層用組成物を準備する工程と、粘着層用組成物を用いて、セルロースを含有する壁紙基材上に粘着層を成形する工程とを含む、壁紙の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁紙基材と、前記壁紙基材の少なくとも一方の表面に設けられた粘着層とを備える壁紙であって、
前記壁紙基材がセルロースを含有し、
前記粘着層が、数平均繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバーを含有する、壁紙。
【請求項2】
前記セルロースナノファイバーの数平均繊維長が50nm以上2000nm以下である、請求項1に記載の壁紙。
【請求項3】
前記セルロースナノファイバーの平均重合度が100以上2000以下である、請求項1に記載の壁紙。
【請求項4】
前記セルロースナノファイバーがカルボキシ化セルロースナノファイバーである、請求項1に記載の壁紙。
【請求項5】
前記セルロースナノファイバーが金属を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバーであり、
前記金属が、長周期表における第2族~第14族かつ第3周期~第6周期の金属から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の壁紙。
【請求項6】
前記金属が、銅、亜鉛または銀である、請求項5に記載の壁紙。
【請求項7】
前記粘着層が樹脂発泡体よりなる、請求項1に記載の壁紙。
【請求項8】
前記樹脂発泡体が、複数の気泡が連通してなる連続気泡を含む、請求項7に記載の壁紙。
【請求項9】
前記壁紙基材が、樹脂化粧層と、セルロースを含有する裏打ち材とを含む、請求項1に記載の壁紙。
【請求項10】
前記樹脂化粧層が、塩化ビニル樹脂を含む、請求項1に記載の壁紙。
【請求項11】
前記裏打ち材がセルロースを50質量%以上含有する、請求項9または10に記載の壁紙。
【請求項12】
数平均繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバーを含有する粘着層用組成物を準備する工程と、
前記粘着層用組成物を用いて、セルロースを含有する壁紙基材上に粘着層を成形する工程と、
を含む、壁紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙および壁紙の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リワーク性(貼り直し性)を備えた壁紙シートとして、装飾層と、裏打層と、所定の粘着力を有する粘着層とがこの順で配置されている壁紙シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、消臭性および吸着性に優れ、壁紙、床材または壁材等に付着させ得る自己吸着性積層体として、ナトリウム以外の金属を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバーを含む自己吸着性発泡シートと、基材とを備える自己吸着性積層体が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-54523号公報
【特許文献2】特開2022-101282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記従来の壁紙では、粘着層の形成時、或いは、施工(貼り付け)後に、反りや皺が発生することがあった。
【0006】
そこで、本発明は、製造時や施工後に反りや皺が発生し難い壁紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、セルロースを含む壁紙基材を用いた場合に反りや皺が発生し易いこと、および、粘着層に所定のセルロースナノファイバーを含有させればセルロースを含む壁紙基材を用いた場合であっても反りや皺の発生を抑制し得ることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、この発明は上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、[1]本発明の壁紙は、壁紙基材と、前記壁紙基材の少なくとも一方の表面に設けられた粘着層とを備え、前記壁紙基材がセルロースを含有し、前記粘着層が、数平均繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバーを含有することを特徴とする。このように、粘着層に数平均繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバーを含有させれば、セルロースを含有する壁紙基材を用いた場合であっても、製造時や施工後に反りや皺が発生するのを抑制することができる。
なお、本発明において、セルロースナノファイバーの「数平均繊維径」は、原子間力顕微鏡(例えば、Dimension FastScan AFM(BRUKER社製、Tapping mode))を使用してセルロースナノファイバー5本以上について繊維径を測定し、測定した繊維径の個数平均を算出することにより求めることができる。
【0009】
ここで、[2]上記[1]に記載の壁紙は、前記セルロースナノファイバーの数平均繊維長が50nm以上2000nm以下であることが好ましい。セルロースナノファイバーの数平均繊維長が50nm以上2000nm以下であれば、反りや皺の発生を更に抑制することができる。
なお、本発明において、セルロースナノファイバーの「数平均繊維長」は、原子間力顕微鏡(例えば、Dimension FastScan AFM(BRUKER社製、Tapping mode))を用いてセルロースナノファイバー5本以上の繊維長を測定し、得られた測定値の平均値を算出することにより求めることができる。
【0010】
また、[3]上記[1]または[2]に記載の壁紙は、前記セルロースナノファイバーの平均重合度が100以上2000以下であることが好ましい。平均重合度が100以上であれば、粘着層に高い機械的強度を付与することができる。また、平均重合度が2000以下であれば、粘着層中におけるセルロースナノファイバーの分散性を確保することができる。
なお、本発明において、セルロースナノファイバーの「平均重合度」は、例えば、Isogai,A.,Mutoh,N.,Onabe,F.,Usuda,M.,“Viscosity measurements of cellulose/SO2-amine-dimethylsulfoxide solution”,Sen’i Gakkaishi,45,299-306(1989)に準拠して測定することができる。
【0011】
更に、[4]上記[1]~[3]の何れかに記載の壁紙は、前記セルロースナノファイバーがカルボキシ化セルロースナノファイバーであることが好ましい。カルボキシ化セルロースナノファイバーは分散性に優れており、配合量が少量であっても、所望の性能を良好に発揮することができる。
【0012】
また、[5]上記[1]~[4]の何れかに記載の壁紙は、前記セルロースナノファイバーが金属を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバーであり、前記金属が、長周期表における第2族~第14族かつ第3周期~第6周期の金属から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの金属を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバーを用いれば、壁紙に例えば消臭性などの種々の特性を付与することができる。
【0013】
ここで、[6]上記[5]に記載の壁紙は、前記金属が、銅、亜鉛または銀であることが好ましい。銅、亜鉛または銀を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバーを用いれば、壁紙に優れた消臭性を付与することができる。
【0014】
更に、[7]上記[1]~[6]の何れかに記載の壁紙は、前記粘着層が樹脂発泡体よりなることが好ましい。樹脂発泡体よりなる粘着層を備える壁紙は、リワーク性に優れると共に糊残りが少ない。
【0015】
ここで、[8]上記[7]に記載の壁紙は、前記樹脂発泡体が、複数の気泡が連通してなる連続気泡を含むことが好ましい。連続気泡を含む樹脂発泡体よりなる粘着層を備える壁紙は、優れた粘着力を発揮し得る。
【0016】
また、[9]上記[1]~[8]の何れかに記載の壁紙は、前記壁紙基材が、樹脂化粧層と、セルロースを含有する裏打ち材とを含むことが好ましい。粘着層に数平均繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバーを含有させれば、セルロースを含有する裏打ち材を用いた場合であっても、製造時や施工後に反りや皺が発生するのを良好に抑制することができる。
【0017】
ここで、[10]上記[9]に記載の壁紙は、前記樹脂化粧層が、塩化ビニル樹脂を含むことが好ましい。塩化ビニル樹脂を含む樹脂化粧層は、加工性に優れているからである。
【0018】
そして、[11]上記[9]または[10]に記載の壁紙は、前記裏打ち材がセルロースを50質量%以上含有することが好ましい。粘着層に数平均繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバーを含有させれば、セルロースを50質量%以上含有する裏打ち材を用いた場合であっても、製造時や施工後に反りや皺が発生するのを良好に抑制することができる。
【0019】
また、この発明は上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、[12]本発明の壁紙の製造方法は、数平均繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバーを含有する粘着層用組成物を準備する工程と、前記粘着層用組成物を用いて、セルロースを含有する壁紙基材上に粘着層を成形する工程とを含むことを特徴とする。このような製造方法によれば、上述した本発明の壁紙を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、製造時や施工後に反りや皺が発生し難い壁紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(壁紙)
本発明の壁紙は、セルロースを含有する壁紙基材と、壁紙基材の少なくとも一方の表面に設けられた粘着層とを備えており、粘着層が数平均繊維径100nm以下のセルロースナノファイバーを含有する。そして、本発明の壁紙は、特に限定されることなく、壁材に貼り付ける壁紙や、壁材等に貼り付けられている既存の壁紙の上に貼り付けて用いる壁紙として用いることができる。
なお、本発明の壁紙は、壁紙基材および粘着層以外に任意の層を備えていてもよく、粘着層は、壁紙基材上に直接形成されていてもよいし、壁紙基材上に任意の層を介して形成されていてもよい。具体的には、特に限定されることなく、本発明の壁紙は、粘着層の壁紙基材側とは反対側に剥離紙を備えていてもよい。
【0022】
<壁紙基材>
壁紙基材としては、セルロースを含有するものであれば任意の壁紙基材を用いることができる。そして、壁紙基材は、単層構造の基材であってもよいし、多層構造の基材であってもよいが、多層構造の基材であることが好ましく、樹脂化粧層と、セルロースを含有する裏打ち材とを含有し、任意に接着層などを更に含有する多層構造の基材であることがより好ましい。
セルロースを含有する壁紙基材を備える壁紙は、吸湿等に起因して反りや皺が発生し易いが、数平均繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバーを含有する粘着層を使用すれば、反りや皺の発生を抑制することができる。
【0023】
なお、壁紙基材に含まれるセルロースは、公知の方法で変性または化学修飾されていてもよい。
【0024】
[樹脂化粧層]
樹脂化粧層としては、特に限定されることなく、塩化ビニル樹脂やオレフィン樹脂などの樹脂を含む化粧層を用いることができ、中でも、加工性に優れる観点から、塩化ビニル樹脂を含む化粧層を用いることが好ましい。
【0025】
なお、樹脂化粧層には、エンボス加工などの各種加工や、装飾などの各種意匠が施されていてもよい。
【0026】
[裏打ち材]
裏打ち材としては、特に限定されることなく、セルロースを含有する任意の裏打ち材を用いることができる。具体的には、裏打ち材としては、例えば、普通紙、難燃紙等の紙;織布;などが挙げられる。
【0027】
そして、裏打ち材は、セルロースを50質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましく、セルロースのみからなることが更に好ましい。粘着層に数平均繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバーを含有させれば、セルロースを50質量%以上含有する裏打ち材を用いた場合であっても、製造時や施工後に反りや皺が発生するのを良好に抑制することができる。
【0028】
<粘着層>
粘着層は、数平均繊維径100nm以下のセルロースナノファイバーを含有することを必要する。そして、粘着層は、通常、重合体を含有し、任意に、添加剤を更に含有し得る。
なお、リワーク性の向上および糊残りの抑制の観点からは、粘着層は、樹脂発泡体よりなることが好ましく、粘着力を更に向上させる観点から、複数の気泡が連通してなる連続気泡を含む樹脂発泡体よりなることがより好ましい。
【0029】
[セルロースナノファイバー]
粘着層に用いられるセルロースナノファイバーは、本発明の壁紙に反りや皺が発生するのを抑制する成分である。また、セルロースナノファイバーは、得られる粘着層に強度を付与することができる。そのため、粘着層の強度を維持しつつ、粘着層を低密度化することができる。
【0030】
また、セルロースナノファイバーの数平均繊維径は、100nm以下であることが必要であり、50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。数平均繊維径が上記上限値以下のセルロースナノファイバーを用いれば、製造時や施工後に反りや皺が発生し難い壁紙が得られる。なお、セルロースナノファイバーの数平均繊維径は、通常、1nm以上である。
【0031】
ここで、数平均繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバーを粘着層に含有させることで壁紙の反りや皺の発生を抑制できる理由は、明らかではないが、以下の通りであると推察される。即ち、数平均繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバーは分散性に優れており、粘着層中で分散して粘着層の強度を向上させることができるので、反りや皺の発生が抑制される。また、セルロースを含有する壁紙基材と同様に水分を吸湿し得るので、吸湿の程度の違いに起因した反りの発生を抑制することができる。
【0032】
また、セルロースナノファイバーは、数平均繊維長が50nm以上であることが好ましく、70nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることが更に好ましく、400nm以上であることが特に好ましく、2000nm以下であることが好ましく、1500nm以下であることがより好ましく、1000nm以下であることが更に好ましく、600nm以下であることが特に好ましい。数平均繊維長が50nm以上であれば、粘着層に十分に高い機械的強度を付与することができる。また、数平均繊維長が2000nm以下であれば、セルロースナノファイバーの分散性を確保することができると共に粘着層の形成性を高めることができる。従って、数平均繊維長が上記範囲内のセルロースナノファイバーを用いれば、壁紙の反りや皺の発生を更に抑制することができる。
【0033】
なお、セルロースナノファイバーの数平均繊維長は、例えば、原料として使用する天然セルロースの数平均繊維長や処理条件、処理後のセルロースナノファイバーを分散(解繊)させる条件を変更することによって調整することができる。具体的には、分散処理(解繊処理)の時間を長くすれば、数平均繊維長を短くすることができる。
【0034】
更に、セルロースナノファイバーは、平均重合度(セルロース分子中に含まれるグルコース単位の数の平均値)が100以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましく、500以上であることが更に好ましく、2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、1000以下であることが更に好ましく、700以下であることが特に好ましい。平均重合度が100以上であれば、粘着層に十分に高い機械的強度を付与することができる。また、平均重合度が2000以下であれば、セルロースナノファイバーの分散性を確保することができる。従って、平均重合度が上記範囲内のセルロースナノファイバーを用いれば、壁紙の反りや皺の発生を更に抑制することができる。
【0035】
なお、セルロースナノファイバーの平均重合度は、原料として使用する天然セルロースの平均重合度や処理条件、処理後のセルロースナノファイバーを分散(解繊)させる条件などを変更することにより調整することができる。
【0036】
また、セルロースナノファイバーは、酸化処理や変性などの化学処理が施されていないセルロースナノファイバーであってもよいが、酸化処理が施された酸化セルロースナノファイバーであることが好ましく、カルボキシ化セルロースナノファイバーであることがより好ましい。カルボキシ化セルロースナノファイバーなどの酸化セルロースナノファイバーは分散性に優れており、配合量が少量であっても、所望の性能を良好に発揮することができる。
【0037】
ここで、カルボキシ化セルロースナノファイバーは、原料セルロースのβ-グルコース単位の6位の1級水酸基が、アルデヒド基を経てカルボキシ基まで酸化されたものである。カルボキシセルロースナノファイバーに所望の特性を十分に付与する観点からは、カルボキシ化セルロースナノファイバーにおいて、上記1級水酸基は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上カルボキシ基まで酸化されていることが好ましい。
【0038】
カルボキシ化セルロースナノファイバーのカルボキシ基量は、特開2016-141777号公報または特開2019-199622号公報に記載されている方法に従って測定することができる。
【0039】
更に、セルロースナノファイバーは、金属を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバーであることが好ましく、金属を塩の形で含有する含金属カルボキシ化セルロースナノファイバーであることがより好ましい。金属を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバーを用いれば、壁紙に例えば消臭性などの種々の特性を付与することができる。
【0040】
ここで、含金属酸化セルロースナノファイバーが含有する金属は、当該含金属酸化セルロースナノファイバーに付与したい特性に応じた金属とすることができる。金属は、例えば、長周期表における第2族~第14族かつ第3周期~第6周期の金属から選択される少なくとも1種;より好ましくはマグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、錫、バリウム、および鉛よりなる群から選択される少なくとも1種;更に好ましくはアルミニウム、カルシウム、鉄、コバルト、銅、亜鉛、および銀よりなる群から選択される少なくとも1種;特に好ましくは、銀、亜鉛、および銅よりなる群から選択される少なくとも1種、とすることができる。
なお、銅および銀を含む含金属酸化セルロースナノファイバー(含銅酸化セルロースナノファイバー、含銀酸化セルロースナノファイバー)は、硫化水素、メチルメルカプタン等の硫黄系悪臭ガスに対する消臭性に特に優れている。
【0041】
上記含金属酸化セルロースナノファイバー中の金属の量は、得られる発泡シートに所望の特性を付与することができる限り限定されない。例えば、含金属カルボキシ化セルロースナノファイバーにおいて、金属は、カルボキシ化セルロースナノファイバーのカルボキシ基のモル量の1/3以上の割合で存在していることが好ましく、1/2以上の割合で存在していることがより好ましい。含金属酸化セルロースナノファイバーにおける金属の含有割合が大きいほど、壁紙に例えば消臭性などの種々の特性を高いレベルで付与することができる。
なお、含金属セルロースナノファイバー中の金属は、例えば、特開2016-141777号公報または特開2019-199622号公報に記載されている方法に従って、ICP-AES法により定性および定量することができる。
【0042】
そして、上述したセルロースナノファイバーは、例えば、漂白クラフトパルプを機械解繊処理することにより得ることができる。
また、酸化セルロースナノファイバーは、例えば、特開2016-141777号公報や、特開2019-199622号公報に記載されている方法に従って製造することができる。
なお、上記のようにして製造されたセルロースナノファイバーは、通常、水などの分散媒体中に分散された分散液として得られる。そして、固体のセルロースナノファイバーを使用する場合は、上記分散液を公知の手段で乾燥させればよい。
【0043】
[重合体]
粘着層に用いられる重合体は、粘着層において樹脂マトリックスを形成する。
【0044】
重合体としては、任意の重合体を用いることができる。そして、重合体は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリレート単量体単位、不飽和カルボン酸単量体単位、シアン化ビニル単量体単位、およびアルケニル芳香族単量体単位からなる群から選択される少なくとも1つの単量体単位を含むことができる。
重合体は、(メタ)アクリレート単量体単位を含むことが好ましい。得られる粘着層に柔軟性が付与され、粘着層が良好な吸着力(自着力)を発揮することができるからである。
また、重合体は、(メタ)アクリレート単量体単位、不飽和カルボン酸単量体単位、シアン化ビニル単量体単位、アルケニル芳香族単量体単位以外の単量体単位(以下、「その他の単量体単位」と称する。)を含んでいてもよい。
【0045】
<<(メタ)アクリレート単量体単位>>
(メタ)アクリレート単量体単位は、(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位である。(メタ)アクリレート単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体;などを挙げることができる。
なお、(メタ)アクリレート単量体は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。また、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0046】
ここで、(メタ)アクリレート単量体としては、粘着層の柔軟性を更に高めて壁紙の自着力を一層良好に確保する観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が1以上14以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(以下、「C1-14(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」と略記する場合がある。)がより好ましい。
【0047】
なお、C1-14(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸n-ヘプチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸n-ドデシルが挙げられる。これらの中でも、自着力およびコストの観点で、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。
【0048】
そして、重合体中における(メタ)アクリレート単量体単位の割合は、重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、85質量%以上であることが特に好ましく、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、92質量%以下であることが更に好ましい。重合体における(メタ)アクリレート単量体単位の割合が60質量%以上であれば、壁紙の自着力を十分に確保することができる。一方、重合体における(メタ)アクリレート単量体単位の割合が99質量%以下であれば、壁紙の自着力が過度に高まることもない。そのため、壁紙の被着体への樹脂残りを抑制することができる。
【0049】
<<不飽和カルボン酸単量体単位>>
不飽和カルボン酸単量体単位は、不飽和カルボン酸単量体に由来する繰り返し単位である。
不飽和カルボン酸単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸;イタコン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノプロピル等のα,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステル;などを挙げることができる。また、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの、加水分解などによりカルボン酸基に誘導することができる基を有するものも同様に使用することができる。これらの中でも、後述する架橋剤との反応性、重合体ラテックスの安定性、およびコストの観点で、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
なお、不飽和カルボン酸単量体は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0050】
そして、重合体中における不飽和カルボン酸単量体単位の割合は、重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2.5質量%以下であることが更に好ましい。重合体中における不飽和カルボン酸単量体単位の割合が0.1質量%以上であることにより、後述する架橋剤による架橋反応を十分に進行させることができる。その結果、粘着層に十分な強度を付与しつつ、壁紙の被着体への樹脂残りを抑制することができる。一方、重合体中における不飽和カルボン酸単量体単位の割合が10質量%以下であることにより、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことが容易になり、また、重合体の架橋が過度に進行して粘着層の自着力が損なわれるといったこともない。
【0051】
<<シアン化ビニル単量体単位>>
シアン化ビニル単量体単位は、シアン化ビニル単量体に由来する繰り返し単位である。
シアン化ビニル単量体の具体例としては、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体が挙げられる。そして、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β-エチレン性不飽和化合物であれば特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル;α-クロロアクリロニトリル、α-ブロモアクリロニトリルなどのα-ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリルなどのα-アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。これらの中でも、粘着層の破壊強度を高める観点から、アクリロニトリルが好ましい。
なお、シアン化ビニル単量体は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0052】
そして、重合体中におけるシアン化ビニル単量体単位の割合は、重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。重合体中におけるシアン化ビニル単量体単位の割合が1質量%以上であれば、得られる粘着層に十分な強度を付与しつつ、壁紙の被着体への樹脂残りを抑制することができる。一方、重合体中におけるシアン化ビニル単量体単位の割合が30質量%以下であれば、得られる粘着層の柔軟性を十分に確保して、良好な自着力を有する壁紙を得ることができる。
【0053】
<<アルケニル芳香族単量体単位>>
アルケニル芳香族単量体単位は、アルケニル芳香族単量体に由来する繰り返し単位である。
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α-クロロスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。これらの中でも、重合性やコストの観点で、スチレンが好ましい。
なお、アルケニル芳香族単量体は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0054】
そして、重合体中におけるアルケニル芳香族単量体単位の割合は、重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることが更に好ましく、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。重合体中におけるアルケニル芳香族単量体単位の割合が0.5質量%以上であれば、アルケニル芳香族単量体単位の疎水性に基づいて粘着層への水の浸入を防ぐことができ、壁紙の耐水性を高めることができる。一方、重合体中におけるアルケニル芳香族単量体単位の割合が20質量%以下であれば、得られる粘着層の柔軟性を十分に確保して、良好な自着力を有する壁紙を得ることができる。
【0055】
<<その他の単量体単位>>
その他の単量体単位は、上述した単量体と共重合可能なその他の単量体に由来する繰り返し単位である。
その他の単量体としては、例えば、共役ジエン単量体、α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸完全エステル単量体、シアン化ビニル単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体、オレフィン系単量体、架橋性単量体などを挙げることができる。これらの単量体は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0056】
前記共役ジエン単量体の具体例としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、シクロペンタジエン、などが挙げられる。
【0057】
前記α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸完全エステル単量体の具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、などを挙げることができる。
【0058】
前記シアン化ビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリル、などを挙げることができる。
【0059】
前記カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニル、などを挙げることができる。
【0060】
前記オレフィン系単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、などを挙げることができる。
【0061】
前記架橋性単量体は、重合体分子内部および/または重合体分子間の架橋を効率的に行わせることが可能な単量体である。前記架橋性単量体としては、重合体を架橋できる限り特に限定されないが、重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(上記共役ジエン単量体を除く)、および架橋性官能基を有する単量体が挙げられる。
架橋性単量体を使用する場合、重合体中における架橋性単量体単位の割合は、重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。重合体中における架橋性単量体単位の割合が上記範囲内であれば、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことが容易になり、また、重合体の架橋が過度に進行して粘着層の吸着性が損なわれることを防止し易くなる。
【0062】
前記多官能性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジアクリル酸エチレン、ジメタクリル酸エチレン、メタクリル酸アリルなどの2官能性単量体;トリメタクリル酸トリメチロールプロパンなどの3官能性単量体;などを用いることができる。多官能性単量体は、不飽和結合を末端に有することが好ましい。多官能性単量体は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0063】
架橋性官能基を有する単量体としては、カルボキシ基以外の有機酸基、水酸基、アミノ基、アミド基、メルカプト基、エポキシ基などの官能基を有する単量体を挙げることができる。
【0064】
前記有機酸基を有する単量体は、特に限定されないが、その代表的なものとして、スルホン酸基などの有機酸基を有する単量体を挙げることができる。また、これらのほか、スルフェン酸基、スルフィン酸基、リン酸基などを含有する単量体も使用することができる。
【0065】
前記スルホン酸基を有する単量体の具体例としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸などのα,β-不飽和スルホン酸、および、これらの塩を挙げることができる。
【0066】
前記有機酸基を有する単量体を使用する場合、前記重合体における前記有機酸基を有する単量体に由来する単量体単位の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。前記重合体における前記有機酸基を有する単量体に由来する単量体単位の含有量が上記範囲内であると、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことが容易になり、また、重合体の架橋が過度に進行して粘着層の吸着性が損なわれることを防止し易くなる。
【0067】
なお、前記有機酸基を有する単量体単位は、前記有機酸基を有する単量体の重合によって、重合体中に導入するのが簡便であり好ましいが、重合体生成後に、公知の高分子反応により、有機酸基を導入してもよい。
【0068】
有機酸基以外の官能基(水酸基、アミノ基、アミド基、エポキシ基)を有する単量体を使用する場合、前記重合体における前記有機酸基以外の官能基を有する単量体に由来する単量体単位の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。前記重合体における前記有機酸基以外の官能基を有する単量体に由来する単量体単位の含有量が10質量%以下であると、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことが容易になり、また、重合体の架橋が過度に進行して、粘着層の吸着性が損なわれることを防止し易くなる。
【0069】
なお、重合体は、任意に発泡および硬化させて粘着層を形成する際のホルムアルデヒドの生成を十分に抑制する観点から、N-メチロール基を有さないことが好ましい。より具体的には、重合体は、N-メチロール基を有する単量体単位を含まないことが好ましい。
ここで、N-メチロール基を有する単量体としては、例えば、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミドが挙げられる。
【0070】
<<重合体の性状>>
重合体のガラス転移温度は、-10℃以下であることが好ましく、-13℃以下であることがより好ましく、-17℃以下であることが更に好ましく、-20℃以下であることが特に好ましい。重合体のガラス転移温度が-10℃以下であれば、粘着層の自着力を十分に確保しつつ、壁紙を被着体に良好に密着させることができる。これにより、被着体と粘着層との間や、被着体と壁紙との間に水分が侵入するのを防ぐことができる。そのため、壁紙の耐水性を高めることができる。
また、重合体のガラス転移温度の下限値は、特に限定されないが、壁紙の被着体への糊残りを十分に抑制する観点から、-40℃以上であることが好ましい。
なお、重合体のガラス転移温度は、例えば、重合体を含む重合体ラテックスを乾燥させて得られたフィルムのガラス転移温度を、JIS K7121に準じて、示差走査熱量分析計を用いて測定することにより得ることができる。示差走査熱量分析計としては、例えば、DSC7000X(日立ハイテクサイエンス社製)を用いることができる。
【0071】
重合体のゲル分率は、95質量%以下であることが好ましく、93質量%以下であることがより好ましい。ゲル分率が95質量%以下であれば、適切な自着力を有し、かつ、平滑性に優れた粘着層を作製することができる。また、重合体のゲル分率の下限値は、特に限定されないが、例えば、50質量%以上とすることができ、70質量%以上とすることができる。
なお、重合体のゲル分率は、例えば、以下の方法により測定することができる。まず、重合体を厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に250μmのアプリケーターで塗布し、常温下で24時間乾燥させて、樹脂フィルムを得る。このフィルムをサンプルとして、所定量(X)(約500mg)を精秤し、これを酢酸エチル100ml中に常温で3日間浸漬した後、不溶分を200メッシュの金網で濾過し、15時間常温下で風乾し、その後100℃で2時間乾燥させ、常温下で冷却した後に試料の重量(Y)を測定する。そして、XおよびYを次式に代入することにより、ゲル分率を算出する。
ゲル分率(%)=(Y)/(X)×100
【0072】
<<重合体の調製方法>>
重合体を得る際の重合方法は、特に限定されず、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などのいずれであってもよく、これら以外の方法でもよい。重合に用いる重合開始剤、乳化剤、分散剤等の種類や量にも特に制限はない。重合に際して、単量体、重合開始剤、乳化剤、分散剤等の添加方法にも特に制限はない。また、重合温度や圧力、撹拌条件等にも制限はない。
なお、重合体は、固体で用いることもできるが、乳化重合で得たラテックスや、重合体を後乳化して得たラテックスなど、重合体を含むラテックス(重合体ラテックス)の状態で使用することが好ましい。
ここで、重合体ラテックスの固形分濃度としては、得られる粘着層の密度維持などの観点から、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、52質量%以上であることが特に好ましく、70質量%以下であることが好ましく、58質量%以下であることがより好ましい。
【0073】
なお、粘着層中のセルロースナノファイバーの含有量は、上述した重合体100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、また、5質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることより好ましい。
【0074】
[添加剤]
粘着層は、粘着層の形成工程における加工性向上や粘着層の性能向上のために、各種添加剤を含有することができる。このような添加剤としては、例えば、架橋剤、高級脂肪酸塩や界面活性剤などの整泡剤、発泡助剤、増粘剤、充填材、防腐剤、防かび剤、ゲル化剤、難燃剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与剤、導電性化合物、耐水剤、耐油剤などを挙げることができる。なお、上述したその他の添加剤の具体例としては、特に限定されることなく、既知の添加剤、例えば国際公開第2016/147679号に記載されているものを用いることができる。
【0075】
<<架橋剤>>
粘着層に任意に含まれる架橋剤としては、粘着層中で上述した重合体(特には、上述した重合体の不飽和カルボン酸単量体単位)と架橋構造を形成しうるものであれば特に限定されない。このような架橋剤としては、例えば、カルボジイミド系架橋剤;エポキシ系架橋剤;オキサゾリン系架橋剤;トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネート等の多官能性イソシアネート系架橋剤;金属塩系架橋剤;金属キレート系架橋剤;過酸化物系架橋剤;などが挙げられる。中でも、エポキシ系架橋剤が好ましく用いられ、2以上のエポキシ基を一分子内に有する化合物がより好ましく用いられる。そして、エポキシ系架橋剤としては、脂肪酸ポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0076】
ここで、エポキシ系架橋剤は、既知の手法により合成してもよく、市販品を使用してもよい。市販品のエポキシ系架橋剤としては、例えば、ジャパンコーティングレジン社製の「リカボンド(登録商標)」などが挙げられる。
エポキシ系架橋剤は、それが有するエポキシ基と上記重合体中の官能基等(例えば、不飽和カルボン酸単量体単位に由来するカルボン酸基)との反応により、重合体の分子内または分子間に架橋構造を形成する。エポキシ系架橋剤を用いれば、適度な自着力を有し、強度に優れた粘着層を形成することができる。そのため、架橋剤としてエポキシ系架橋剤を含む粘着層を用いれば、壁紙の被着体への樹脂残りを抑制することができる。
【0077】
なお、本発明においては、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂等のホルムアルデヒドを発生する原因となる架橋剤は使用しないことが好ましい。
【0078】
ここで、架橋剤の配合量は、上述した重合体100質量部当たり、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることが更に好ましく、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。架橋剤の配合量が上述した範囲内であることにより、強度や弾性を適度に保った粘着層を得ることができる。そのため、粘着層の自着力を確保すると共に、壁紙の被着体への樹脂残りを十分に抑制することができる。
【0079】
<<整泡剤>>
整泡剤としては、ステアリン酸アンモニウムなどの脂肪酸アンモニウム;アルキルスルホサクシネートなどのスルホン酸型アニオン界面活性剤;四級アルキルアンモニウムクロライド;アルキルベタイン両性化物;および、脂肪酸アルカノールアミンなどが使用できる。
【0080】
<<増粘剤>>
増粘剤としては、ポリアクリル酸ナトリウムなどのアクリル系ポリマー;微粒シリカなどの無機化合物微粒子;および、酸化マグネシウムなどの反応性無機化合物を使用することできる。
【0081】
[粘着層の性状]
ここで、粘着層は、発泡体であっても、非発泡体であってもよいが、粘着層の平滑性、並びに、リワーク性の向上および糊残りの抑制の観点からは、発泡体であることが好ましく、樹脂発泡体よりなることがより好ましい。
【0082】
そして、粘着層が樹脂発泡体などの発泡体よりなる場合、粘着層は、複数の気泡が連通してなる連続気泡を含むことが好ましい。粘着層がこのような連続気泡を含めば、粘着層と被着体との間に溜まった空気を、連続気泡を介して粘着層の外部に容易に除去することができるため、粘着層のエア抜け性が更に向上し、被着体への貼り付けを綺麗に、かつ、容易に行うことができる。なお、エア抜け性をより向上させる観点から、粘着層中の連続気泡は、粘着層の平面方向に延在する連続気泡を含むことが好ましい。
粘着層における連続気泡は、通常、粘着層の断面を、例えば、レーザー顕微鏡、デジタルマイクロスコープ、走査型電子顕微鏡などで観察することにより、確認することができる。
【0083】
また、粘着層が樹脂発泡体などの発泡体よりなる場合、粘着層の密度は、特に限定されないが、0.3g/cm以上であることが好ましく、0.4g/cm以上であることがより好ましく、また、0.7g/cm以下であることが好ましく、0.6g/cm以下であることがより好ましい。粘着層の密度が0.3g/cm以上であれば、粘着層の強度を確保することができる。一方、粘着層の密度が0.7g/cm以下であれば、エア抜け性(粘着層と被着体との間に残存する空気溜まりを容易に除去する能力)を十分高めることができる。
【0084】
粘着層の厚みは、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることが更に好ましく、また、3mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましく、400μm以下であることが特に好ましい。粘着層の厚みが30μm以上であれば、粘着層の機械強度を十分に確保することができる。一方、粘着層の厚みが3mm以下であれば、繰り返しの貼り付け性(リワーク性能)に優れた壁紙を得ることができる。
【0085】
粘着層の性状(密度、厚み、連続気泡の有無、硬度など)は、例えば、気泡の混入比率、組成、製造条件などを変更することにより、調整することができる。
【0086】
(壁紙の製造方法)
本発明の壁紙の製造方法は、上述した本発明の壁紙を製造する際に用いることができ、数平均繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバーを含有する粘着層用組成物を準備する工程(準備工程)と、粘着層用組成物を用いて、セルロースを含有する壁紙基材上に粘着層を成形する工程(層形成工程)とを含み、任意に、粘着層以外の層を形成する工程や、粘着層に剥離紙を貼り合わせる工程などのその他の工程を更に含み得る。
【0087】
<準備工程>
準備工程では、粘着層の形成に用いられる粘着層用組成物を準備する。
【0088】
[粘着層用組成物]
ここで、粘着層用組成物は、通常、重合体と、数平均繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバーとを含み、任意に、溶媒およびその他の添加剤を更に含む。
なお、粘着層用組成物に含まれ得る重合体、セルロースナノファイバーおよび添加剤は、本発明の壁紙に関して上述したものと同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0089】
溶媒としては、特に限定されないが、水が好ましい。ここで、溶媒として水を用いる場合、粘着層用組成物に含まれる水は、例えば、重合体ラテックス由来の水、および/またはセルロースナノファイバーの水分散液に由来する水、および/またはその他の添加剤に由来する水とすることができる。
【0090】
そして、粘着層用組成物が溶媒を含む場合、当該粘着層用組成物の粘度は、800mPa・s以上10,000mPa・s以下とするのが好ましく、900mPa・s以上8,000mPa・s以下とするのがより好ましく、1,000mPa・s以上7,500mPa・s以下とするのが更に好ましい。粘着層用組成物の粘度が1,000mPa・s以上であれば、粘着層用組成物を用いて粘着層を形成する際に液ダレが生じて厚みの制御が困難になるのを防止することができる。一方、粘着層用組成物の粘度が10,000mPa・s以下であれば、粘着層の形成が容易である。
なお、粘着層用組成物の粘度は、B型粘度計(RION社製、「VISCOTESTER VT-06」)を用いて、温度23℃で測定することができる。
【0091】
また、粘着層用組成物のpHは、5以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましく、8以上であることが更に好ましく、また、10以下であることが好ましく、9.7以下であることがより好ましく、9.5以下であることが更に好ましい。粘着層用組成物のpHが5以上であれば、セルロースナノファイバーの析出、凝集を良好に防止することができる。一方、粘着層用組成物のpHが10以下であれば、架橋剤を使用した場合に、架橋反応が進み難くなることに起因する粘着層の強度の低下を良好に防止することができる。
なお、粘着層用組成物のpHは、pH計(HORIBA製 pH METER F-52)を用いて温度23℃で測定することができる。
【0092】
[粘着層用組成物の調製方法]
粘着層用組成物は、重合体およびセルロースナノファイバーを、所望により用いられる溶媒およびその他の添加剤と任意の方法で混合することにより製造することができる。
【0093】
例えば、粘着層用組成物を調製する際に重合体ラテックスを用いる場合には、この重合体ラテックスに、セルロースナノファイバーと任意に用いられるその他の添加剤とを添加して既知の方法で混合すればよい。
【0094】
また、例えば、粘着層用組成物を調製する際にセルロースナノファイバーの分散液を用いる場合には、この分散液に固体の重合体または重合体ラテックスと任意に用いられるその他の添加剤とを添加して既知の方法で混合すればよい。
【0095】
さらに、例えば、粘着層用組成物を調製する際に溶媒を使用しない場合は、固体の重合体と、セルロースナノファイバーと、任意に用いられる固体のその他の添加剤とを既知の方法、例えば、既知のロール、ヘンシェルミキサー、ニーダーなどを使用して、混合すればよい。
【0096】
なお、粘着層用組成物中にセルロースナノファイバーを良好に分散させる観点からは、攪拌下の重合体ラテックスにセルロースナノファイバーの分散液(例えば、水分散液)を添加して混合液を得た後、任意で、該混合液にその他の添加剤を添加して既知の方法で更に混合することが好ましい。その他の添加剤は、架橋剤、増粘剤等の系内の粘度を上昇させるものはなるべく後から添加し、系内の組成が均一に保たれることが好ましい。
【0097】
<層形成工程>
層形成工程では、準備工程で準備した粘着層用組成物を用いて、セルロースを含有する壁紙基材上に粘着層を成形する。
なお、壁紙基材としては、本発明の壁紙に関して上述したものと同様のものを用いることができるので、ここでは説明を省略する。
【0098】
ここで、壁紙基材上への粘着層の形成は、例えば、壁紙基材上で上記粘着層用組成物を任意に発泡させた後でシート状に成形することにより行うことができる。或いは、壁紙基材上への粘着層の形成は、粘着層を独立膜として得た後、これを基材上に任意の接着剤等の公知の手段で貼り合わせることにより行ってもよい。中でも、粘着層の形成は、壁紙基材上で上記粘着層用組成物を任意に発泡させた後でシート状に成形することにより行うことが好ましい。
【0099】
以下、一例として、壁紙基材上で上記粘着層用組成物を発泡させた後でシート状に成形することにより粘着層の形成する方法について、説明する。
【0100】
まず、上記粘着層用組成物を発泡させることにより、未固化状態の発泡組成物を得る。ここで、粘着層用組成物がディスパージョンの形態である場合には、発泡ディスパージョンが得られる。
【0101】
なお、発泡の方法としては、通常、機械発泡を採用する。発泡倍率は、適宜、調整すればよいが、通常1.2倍以上5倍以下、好ましくは1.5倍以上4倍以下である。機械発泡の方法は、特に限定されないが、粘着層用組成物のディスパージョン中に一定量の空気を混入しオークスミキサー、ホイッパーなどにより連続的にまたはバッチ式に撹拌することにより行うことができる。こうして得られた発泡ディスパージョンはクリーム状になる。
上記機械発泡により細孔を形成することで、エア抜け性に優れた粘着層が最終的に得られる。なお、発泡倍率が、1.2倍以上であると、エア抜け性が低下するのを防止することができ、5倍以下であると、粘着層の強度が低下するのを防止することができる。
【0102】
次に、上記発泡組成物をシート状にする。発泡組成物をシート状にする方法は特に限定されない。好適な方法としては、例えば、壁紙基材上で発泡組成物をシート状に塗布する方法などが挙げられる。
【0103】
発泡組成物を壁紙基材等の上に塗布する方法としては、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、スクリーンコーター、ドクターナイフコーター、コンマナイフコーターなどの一般に知られているコーティング装置が使用できる。
【0104】
次に、壁紙基材の上でシート状にした発泡組成物を固化させる。発泡組成物の固化は、例えば、発泡組成物の重合体を架橋することにより行われる。重合体を架橋する方法は、限定されないが、発泡組成物を加熱乾燥する方法が好ましい。加熱乾燥の方法としては、壁紙基材の上の発泡組成物を乾燥させ、かつ、重合体を架橋させることができる方法であれば特に限定されず、既知の乾燥炉(例えば、熱風循環型のオーブン、熱油循環熱風チャンバー、遠赤外線ヒーターチャンバー)を使用することができる。乾燥温度は、例えば60℃以上180℃以下とすることができる。また、乾燥を一定温度で実施するのではなく、乾燥初期には低温で内部から乾燥させ、乾燥後期に、より高温で十分乾燥させるような多段階乾燥を行うことが好ましい。
【0105】
このようにして、シート状の発泡組成物が固化してなる粘着層を壁紙基材の上に備える壁紙が形成される。
【0106】
なお、得られた壁紙は、特に限定されないが、例えば、粘着層側の表面に剥離紙としてのセパレーターフィルムが貼られた後、巻取機によって巻き取られ、プレス裁断、スリッター等により裁断されて使いやすいサイズに加工することができる。
【実施例0107】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、複数種類の単量体を重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される単量体単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。そして、実施例および比較例における各種の測定および評価については、以下の方法に従って行なった。
【0108】
<数平均繊維径>
原子間力顕微鏡(Dimension FastScan AFM(BRUKER社製、Tapping mode))を使用してセルロースナノファイバー5本について繊維径を測定し、測定した繊維径の個数平均を算出することにより求めた。
<外観>
製造直後および平坦な台に静置して7日経過後の壁紙について、外観を目視で確認した。
<塗工性>
発泡組成物または粘着層用組成物について、自動塗工機(本体:TQC sheen社製 AFA-Standard KT-AB4420、アプリケーター:コーテック社製 マルチアプリケーター MA-250)を用いて塗布した際に、アプリケーターがスムーズに動いた場合を「良好」とし、アプリケーターが引っ掛かりスムーズに動かない場合を「不良」とした。
<平面平滑性>
発泡組成物または粘着層用組成物を塗工した後の塗工面の外観を目視で確認し、以下の基準で評価した。
A:平滑
B:細かな凹凸が存在
C:大きな凹凸が存在
【0109】
(製造例1)
<TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液の調製>
乾燥重量で1g相当分の針葉樹漂白クラフトパルプ、5mmolの次亜塩素酸ナトリウム、0.1g(1mmol)の臭化ナトリウムおよび0.016g(1mmol)のTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル)を100mLの水に分散させ、室温で4時間穏やかに撹拌し、蒸留水で洗浄することで、TEMPO触媒酸化パルプ(酸化セルロース)を得た。なお、得られたTEMPO触媒酸化パルプのカルボキシ基量は、1.4mmol/gであった。
その後、未乾燥のTEMPO触媒酸化パルプに蒸留水を加え、固形分濃度0.1%の水分散液を調製した。そして、水分散液に、ホモジナイザー(マイクロテック・ニチオン製、ヒスコトロン)を使用して7.5×1000rpmで2分間、超音波ホモジナイザー(nissei製、Ultrasonic Generator)を使用し、容器の周りを氷で冷やしながら、V-LEVEL4、TIP26Dで4分間の解繊処理を施すことで、TEMPO酸化セルロースナノファイバーを含む水分散液を得た。その後、TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液から、遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用した遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により未解繊成分を取り除き、透明な液体である濃度0.1%のTEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液を得た。なお、TEMPO酸化セルロースナノファイバーは、共酸化剤由来のナトリウムを塩の形で含有していた。即ち、TEMPO酸化セルロースナノファイバーは、ナトリウムを塩の形で含有する含金属カルボキシ化セルロースナノファイバーであった。
【0110】
(製造例2)
<銅含有TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液の調製>
製造例1で得られた100mLのTEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液に対し、撹拌下で1Mの塩酸1mLを加えてpHを1に調整した。そして、60分間撹拌を継続した。
その後、塩酸の添加によりゲル化したTEMPO酸化セルロースナノファイバーを遠心分離(12000G)により回収し、回収したTEMPO酸化セルロースナノファイバーを1Mの塩酸および多量の蒸留水で順次洗浄した。
次に、100mLの蒸留水を加え、ナトリウムが水素で置換されたTEMPO酸化セルロースナノファイバーが分散した濃度0.1%の水素置換TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液を得た。なお、水素置換されたTEMPO酸化セルロースナノファイバーの表面のカルボキシ基は、Biomacromolecules(2011年,第12巻,第518-522ページ)に従いFT-IR(日本分光製、FT/IR-6100)で測定したところ、90%以上がカルボン酸型に置換されていた。
得られた濃度0.1%の水素置換TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液50gを撹拌し、そこへ濃度0.1%の酢酸銅(II)水溶液18gを加え、室温で3時間撹拌を継続した。その後、酢酸銅(II)水溶液の添加によりゲル化した酸化セルロースナノファイバーを遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用して遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により回収した後、濃度0.1%の酢酸銅(II)水溶液にて回収した酸化セルロースナノファイバーを洗浄し、次に、回収した酸化セルロースナノファイバーを多量の蒸留水で洗浄した。
その後、50mLの蒸留水を加え、超音波ホモジナイザー(nissei製、Ultrasonic Generator)を使用し、容器の周りを氷で冷やしながら、V-LEVEL4、TIP26Dで超音波処理(2分間)を行うことで、銅で置換されたTEMPO酸化セルロースナノファイバーを分散させた。その後、銅で置換されたTEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液から、遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用した遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により未解繊成分を取り除いた。以上により、固形分濃度0.1%の銅含有TEMPO酸化セルロースナノファイバー(以下、単に「TOCN-Cu」ともいう)水分散液を得た。なお、銅含有TEMPO酸化セルロースナノファイバーは、銅を塩の形で含有する含金属カルボキシ化セルロースナノファイバーである。
【0111】
(製造例3)
<銅含有TEMPO酸化パルプ水分散液の調製>
乾燥重量で1g相当分の針葉樹漂白クラフトパルプ、5mmolの次亜塩素酸ナトリウム、0.1g(1mmol)の臭化ナトリウムおよび0.016g(1mmol)のTEMPOを100mLの水に分散させ、室温で4時間穏やかに撹拌し、蒸留水で洗浄することで、TEMPO触媒酸化パルプ(酸化セルロース)を得た。なお、得られたTEMPO触媒酸化パルプのカルボキシ基量は、1.4mmol/gであった。
上記TEMPO触媒酸化パルプ(固形分濃度15.5%)6gに蒸留水を930g加え、その水分散液を撹拌させ、そこへ濃度6.4%の酢酸銅(II)水溶液をゆっくり滴下してその後24時間撹拌し続けた。その分散液を桐山ロート(濾紙No.5B、95Φm/m)で濾過して固形分濃度20.0%の銅含有TEMPO酸化パルプ水分散液を得た。
【0112】
(実施例1)
アクリル系重合体のラテックス(固形分濃度58%)200gを500mlディスポカップに秤取り、ミキサー(特殊機化工業製、ROBOMICS)で撹拌(1750rpm)した。製造例2で得られた銅含有TEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Cu)水分散液(固形分濃度0.5%)をエバポレーターで固形分濃度1.1%に濃縮し、撹拌されているラテックスに対し濃縮後の水分散液107g(アクリル系重合体のラテックス100質量部に対するTOCN-Cu量は1質量部)を少量ずつ徐々に加え、加えた後30分そのまま撹拌を続けた。その後、得られた混合液を攪拌しながらそこへ整泡剤としてステアリン酸アンモニウム(サンノプコ社製、ノプコDC-100A(濃度30%))8g、エポキシ系架橋剤として脂肪酸ポリグリシジルエーテル(ジャパンコーティングレジン社製、リカボンドEX-8)6g、増粘剤としてポリアクリル酸ナトリウム(東亞合成社製、アロンA-20L(濃度15%))6gを順番に加え、30分撹拌して粘着層用組成物を得た。粘着層用組成物は、濃度39%、粘度28dPa・s(粘度計:RION社製、VISCO TESTER VT-06)、pH9.3であった。
粘着層用組成物を泡立て器(テスコム社製、ハンドミキサーTHM272)を用いて発泡倍率2.0倍となるように発泡し、密度0.42g/cmの発泡組成物を得た。
得られた発泡組成物を壁紙基材(塩化ビニル樹脂製の樹脂化粧層と、100%セルロース紙よりなる裏打ち材との2層構造の基材、サンゲツ社製、TH30451)上に自動塗工機(本体:TQC sheen社製 AFA-Standard KT-AB4420、アプリケーター:コーテック社製 マルチアプリケーター MA-250)を用いて塗布した。その塗布した壁紙を80℃のオーブン(ヤマト科学社製 DNF400)に80秒、次いで120℃のオーブン(ヤマト科学社製 DNF400)に80秒、140℃のオーブンに80秒投入して乾燥し、厚みが120μmで密度が0.42g/cmの粘着層(発泡層)を壁紙基材上に備える壁紙を得た。そして、壁紙の外観の観察を行った。結果を表1に示す。
【0113】
(実施例2)
製造例2で得られた銅含有TEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Cu)水分散液(固形分濃度0.5%)に替えて製造例1で得られた濃度0.1%のTEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液を使用した以外は実施例1と同様にして、厚みが120μmで密度が0.42g/cmの粘着層(発泡層)を壁紙基材上に備える壁紙を得た。そして、壁紙の外観の観察を行った。結果を表1に示す。
【0114】
(実施例3)
粘着層用組成物を泡立て器で発泡させることなく、発泡組成物に替えて密度1.00g/cmの粘着層用組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚みが120μmで密度が1.00g/cmの粘着層(非発泡層)を壁紙基材上に備える壁紙を得た。そして、壁紙の外観の観察を行った。結果を表1に示す。
【0115】
(実施例4)
銅含有TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液をエバポレーターで濃縮して得た濃縮後の水分散に替えて漂白クラフトパルプを機械解繊処理したセルロースナノファイバー(スギノマシン社製、BiNFi-s、数平均繊維径50nm)を用いた以外は実施例1と同様にして、厚みが120μmで密度が0.42g/cmの粘着層(発泡層)を壁紙基材上に備える壁紙を得た。そして、壁紙の外観の観察を行った。結果を表1に示す。
【0116】
(比較例1)
銅含有TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液を使用することなく、アクリル系重合体のラテックスに整泡剤としてステアリン酸アンモニウム(サンノプコ社製、ノプコDC-100A(濃度30%))8g、エポキシ系架橋剤として脂肪酸ポリグリシジルエーテル(ジャパンコーティングレジン社製、リカボンドEX-8)6g、増粘剤としてポリアクリル酸ナトリウム(東亞合成社製、アロンA-20L(濃度15%))6gを順番に加え、その混合液を30分撹拌して粘着層用組成物を得た以外は実施例1と同様にして、厚みが120μmで密度が0.42g/cmの粘着層(発泡層)を壁紙基材上に備える壁紙を得た。そして、壁紙の外観の観察を行った。結果を表1に示す。
【0117】
(比較例2)
アクリル系重合体のラテックス(固形分濃度58%)250gを500mlディスポカップに秤取り、ミキサー(特殊機化工業製、ROBOMICS)で撹拌(1750rpm)した。撹拌されているラテックスに対し、製造例3で得られた銅含有TEMPO酸化パルプ水分散液(固形分濃度20.0%)を2.1g(アクリル系重合体のラテックス100質量部に対するTOCN-Cu量は0.3質量部)を少量ずつ徐々に加え、加えた後30分そのまま撹拌を続けた。その後、得られた混合液を攪拌しながらそこへ整泡剤としてステアリン酸アンモニウム(サンノプコ社製、ノプコDC-100A(濃度30%))10g、エポキシ系架橋剤として脂肪酸ポリグリシジルエーテル(ジャパンコーティングレジン社製、リカボンドEX-8)7.5g、増粘剤としてポリアクリル酸ナトリウム(東亞合成社製、アロンA-20L(濃度15%))7.5gを順番に加え、30分撹拌して粘着層用組成物を得た。撹拌時、ミキサーの羽根に銅含有TEMPO酸化パルプが巻き付き粘着層用組成物中の銅含有TEMPO酸化パルプの含有量にロスが生じた。粘着層用組成物は、濃度57%、粘度66dPa・s(粘度計:RION社製、VISCO TESTER VT-06)、pH8.7であった。
粘着層用組成物を泡立て器(テスコム社製、ハンドミキサーTHM272)を用いて発泡倍率2.0倍となるように発泡し、密度0.42g/cmの発泡組成物を得た。
得られた発泡組成物を壁紙基材(塩化ビニル樹脂製の樹脂化粧層と、100%セルロース紙よりなる裏打ち材との2層構造の基材、サンゲツ社製、TH30451)上に自動塗工機(本体:TQC sheen社製 AFA-Standard KT-AB4420、アプリケーター:コーテック社製 マルチアプリケーター MA-250)を用いて塗布した。その塗布した壁紙を80℃のオーブン(ヤマト科学社製 DNF400)に80秒、次いで120℃のオーブン(ヤマト科学社製 DNF400)に80秒、140℃のオーブンに80秒投入して乾燥し、厚みが120μmで密度が0.42g/cmの粘着層(発泡層)を壁紙基材上に備える壁紙を得た。そして、壁紙の外観の観察を行った。結果を表1に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
表1より、実施例1~4の壁紙では製造時および製造後の双方において反りや皺の発生が抑制されているのに対し、比較例1,2の壁紙では反りや皺が発生していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明によれば、製造時や施工後に反りや皺が発生し難い壁紙を提供することができる。