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特開2024-142214近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料粉末の製造方法、近赤外線遮蔽材料
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  • 特開-近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料粉末の製造方法、近赤外線遮蔽材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142214
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料粉末の製造方法、近赤外線遮蔽材料
(51)【国際特許分類】
   C01G 41/00 20060101AFI20241003BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C01G41/00 A
C09K3/00 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054287
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】若林 正男
(72)【発明者】
【氏名】中倉 修平
(72)【発明者】
【氏名】田山 真由
【テーマコード(参考)】
4G048
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB01
4G048AC08
4G048AD03
4G048AD06
4G048AE05
(57)【要約】
【課題】可視光線領域の光の透過性に優れ、近赤外線領域の光については高い吸収を発揮でき、かつ耐候性に優れた近赤外線遮蔽材料粉末をすることを目的とする。
【解決手段】複合タングステン酸化物を含む近赤外線遮蔽材料粉末であって、
前記複合タングステン酸化物は、一般式Csで表され、
前記一般式における前記x、前記y、前記zは、0.32≦x/y≦0.35、2.5≦z/y≦2.8の関係を満たし、
CIE-Lの表色系において、a≦0かつb≦-10を満たす、近赤外線遮蔽材料粉末。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合タングステン酸化物を含む近赤外線遮蔽材料粉末であって、
前記複合タングステン酸化物は、一般式Csで表され、
前記一般式における前記x、前記y、前記zは、0.32≦x/y≦0.35、2.5≦z/y≦2.8の関係を満たし、
CIE-Lの表色系において、a≦0かつb≦-10を満たす、近赤外線遮蔽材料粉末。
【請求項2】
前記複合タングステン酸化物が六方晶のみからなる、請求項1に記載の近赤外線遮蔽材料粉末。
【請求項3】
複合タングステン酸化物を含む近赤外線遮蔽材料粉末の製造方法であって、
タングステンを含有するタングステン原料と、セシウムを含有するセシウム原料と、を混合し、混合物を得る混合工程と、
前記混合物を還元雰囲気下、400℃より高く500℃未満の熱処理温度で熱処理する熱処理工程と、を有し、
前記混合工程では、前記混合物に含まれる、タングステン元素に対するセシウム元素の物質量の割合が0.32以上0.35以下となるように、前記タングステン原料と、前記セシウム原料とを混合し、
前記混合物の平均粒子径が500nm以下である、近赤外線遮蔽材料粉末の製造方法。
【請求項4】
液体媒体と、
前記液体媒体中に含まれる請求項1または請求項2に記載の近赤外線遮蔽材料粉末と、を有し、
全光線吸収率を80%とした場合のヘイズ値が0.3%以下である、近赤外線遮蔽材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料粉末の製造方法、近赤外線遮蔽材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球資源の節約および環境負荷の低減の為、自動車や建物の窓には、太陽光中の近赤外線を遮蔽する機能が求められている。これは当該自動車や建物の窓において、近赤外線が遮蔽されることにより自動車内や建物内の温度上昇を低減することができ、冷房負荷を軽減することができるからである。
【0003】
一方、視界の確保など、窓本来の機能を維持するため、窓材には、目に感知される明るさ、すなわち可視光透過率はできるだけ高いことが求められている。
【0004】
赤外線を遮蔽するガラスとして、特許文献1には、ガラスに着色剤として酸化鉄等を添加した赤外線吸収グリーンガラス組成物が開示されている。また、特許文献2には、赤外線反射性を有する帯状のフィルムと、赤外線吸収性を有する帯状のフィルムとを、それぞれ経糸あるいは緯糸として編織物としてなる保温用シートが開示されている。そして、赤外線反射性を有する帯状のフィルムとして、合成樹脂フィルムにアルミ蒸着加工を施し、さらに合成樹脂フィルムを積層したものを用いることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-264994号公報
【特許文献2】特開平9-107815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1については、酸化鉄等による赤外線吸収力に限界がある。このため、当該赤外線吸収グリーンガラス組成物の可視光透過率を高くすると、赤外線吸収性が低下してしまうという難点がある。特許文献2に開示された、合成樹脂フィルムにアルミ蒸着加工を施し、さらに合成樹脂フィルム積層した物についても、可視光透過率を高くすると、赤外線遮蔽性が低下してしまうという難点がある。
【0007】
また、近赤外線遮蔽材料粉末等の近赤外線遮蔽材料は、高温や、高温高湿の環境下に置かれることが多いため、高温や、高温高湿の環境下に置かれた場合でも、光学特性に大きな変化を生じない耐候性を有することが求められている。
【0008】
そこで、本発明の一側面では、可視光線領域の光の透過性に優れ、近赤外線領域の光については高い吸収を発揮でき、かつ耐候性に優れた近赤外線遮蔽材料粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面では、複合タングステン酸化物を含む近赤外線遮蔽材料粉末であって、
前記複合タングステン酸化物は、一般式Csで表され、
前記一般式における前記x、前記y、前記zは、0.32≦x/y≦0.35、2.5≦z/y≦2.8の関係を満たし、
CIE-Lの表色系において、a≦0かつb≦-10を満たす、近赤外線遮蔽材料粉末を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一側面では、可視光線領域の光の透過性に優れ、近赤外線領域の光については高い吸収を発揮でき、かつ耐候性に優れた近赤外線遮蔽材料粉末を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、近赤外線遮蔽材料の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0013】
以下、[1]近赤外線遮蔽材料粉末、[2]近赤外線遮蔽材料粉末の製造方法、[3]近赤外線遮蔽材料、の順で詳細に説明する。
[1]近赤外線遮蔽材料粉末
本発明の発明者は、可視光線領域の光の透過性に優れ、近赤外線領域の光については高い吸収を発揮でき、かつ耐候性に優れた近赤外線遮蔽材料粉末について検討を行った。その結果、所定の組成を有する複合タングステン酸化物を含み、色味を所定の範囲内とすることで可視光線領域の光の透過性に優れ、近赤外線領域の光については高い吸収を発揮でき、かつ耐候性を高められることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
このため、本実施形態の近赤外線遮蔽材料粉末は、複合タングステン酸化物を含む。本実施形態の近赤外線遮蔽材料粉末は、複合タングステン酸化物のみから構成することもできるが、この場合でも不可避不純物を含有することを排除するものではない。
(1)複合タングステン酸化物の組成について
本実施形態の近赤外線遮蔽材料粉末が含有する複合タングステン酸化物は、一般式Csで表すことができる。そして、上記一般式におけるx、y、zは、0.32≦x/y≦0.35、2.5≦z/y≦2.8の関係を満たす。
【0015】
複合タングステン酸化物は、三酸化タングステン(WO)にセシウムを添加した組成を有している。三酸化タングステンでは有効な自由電子を含まないため、1モルのタングステンに対する酸素の割合を3未満としないと赤外線吸収効果を発揮することはできない。しかしながら、複合タングステン酸化物では、セシウムを添加することで自由電子を生じ、赤外線吸収効果を得ることができる。
【0016】
このため、複合タングステン酸化物は、セシウムを含有することで赤外線吸収効果を発揮できるが、タングステンに対するセシウムの物質量での含有割合を示すx/yを0.32以上とすることで、近赤外線領域の光の吸収機能を高めることができる。またx/yを0.35以下とすることで異相の混入を抑制し、近赤外線領域の光の吸収機能を高めることができる。また、異相の混入を抑制することで、近赤外線遮蔽材料粉末の色味を所望の範囲内にし易くなる。
【0017】
また、複合タングステン酸化物では、セシウムによる自由電子の供給があるため、タングステンに対する酸素の物質量での含有割合であるz/yを3以下とすることができる。ただし、WOの結晶相は可視光線領域の光について吸収や散乱を生じさせ、近赤外線領域の光の吸収を低下させる恐れがある。このため、WOの生成を抑制する観点から、1モルのタングステンに対する酸素の割合は2より大きくすることが好ましい。
【0018】
そして、本発明の発明者の検討によると、タングステンに対する酸素の物質量での含有割合であるz/yについて所定の範囲内を選択することで、可視光線領域の光の透過性に優れ、近赤外線領域の光の吸収を高くしつつ、耐候性も高めることができる。
【0019】
具体的には、z/yを2.5以上とすることで、高温や、高温高湿の環境下に置かれた場合でも酸化することを抑制できる。このため、z/yを2.5以上とすることで、耐候性を高めることができ、高温や、高温高湿の環境下に置いた後でも、近赤外線領域の光の吸収を高く保つことができる。
【0020】
また、z/yを2.8以下とすることで、異相の混入を抑制し、近赤外線領域の光の吸収を高くできる。
【0021】
このため、本実施形態の近赤外線遮蔽材料粉末が含有する複合タングステン酸化物では、タングステンに対する酸素の物質量での含有割合であるz/yは、2.5以上2.8以下であることが好ましい。
(2)複合タングステン酸化物の結晶構造、結晶子径について
本実施形態の近赤外線遮蔽材料粉末が含有する複合タングステン酸化物の結晶構造は特に限定されないが、複合タングステン酸化物は、六方晶のみからなることが好ましい。
【0022】
複合タングステン酸化物が六方晶の結晶構造を有する場合、当該粒子の可視光線領域の光の透過が向上し、近赤外線領域の光の吸収が向上する。
【0023】
複合タングステン酸化物が正方晶、立方晶の結晶構造をとるときでも近赤外線遮蔽材料として機能する。ただし、当該複合タングステン酸化物がとる結晶構造によって、近赤外線領域の光の吸収位置が変化する傾向がある。この近赤外線領域の光の吸収位置は、立方晶よりも正方晶のときが長波長側に移動し、さらに六方晶のときは正方晶のときよりも長波長側に移動する傾向がある。また、当該吸収位置の変動に付随して、可視光線領域の光の吸収は六方晶が最も少なく、次に正方晶が少なく、立方晶はこれらの中では可視光線領域の光の吸収が最も大きい。よって、より可視光線領域の光を透過して、より赤外線領域の光を遮蔽する用途には、六方晶の複合タングステン酸化物を用いることが好ましい。
【0024】
上述のように、複合タングステン酸化物が六方晶の結晶構造を有する場合、複合タングステン酸化物の可視光線領域の光の透過率、および近赤外線領域の光の吸収が特に向上する。このため、近赤外線遮蔽材料粉末は、六方晶の結晶構造の複合タングステン酸化物のみからなることが好ましい。そして、複合タングステン酸化物がセシウムを含有する場合に六方晶を形成し易くなる。このため、既述の一般式で示した様に、複合タングステン酸化物は、セシウムを含有することが好ましい。
【0025】
本実施形態の近赤外線遮蔽材料粉末が含有する複合タングステン酸化物の結晶子径は特に限定されないが、例えば20nm以下であることが好ましい。結晶子径の下限値は特に限定されないが、例えば5nm以上とすることができる。
【0026】
複合タングステン酸化物の結晶子径は、例えば後述する分散工程後において、上記範囲を充足することが好ましい。
【0027】
複合タングステン酸化物の結晶子径は、X線回折パターンから(200)面のピークを用いて、シェラーの式により算出することができる。
(3)近赤外線遮蔽材料粉末の色味について
本実施形態の近赤外線遮蔽材料粉末は、CIE-Lの表色系において、a≦0かつb≦-10を満たすことが好ましい。
【0028】
は緑から赤にかけての色味の強さを表し、0は緑でもなく赤でもない色味で、マイナスの値は緑味を、プラスの値は赤味を表している。このため、a≦0とすることで、緑味を有するか、赤味を有しない色味となる。係る色味とすることで、可視光線領域の光の透過性を高めることができる。
【0029】
は、青から黄にかけての色味の強さを表し、0は青でもなく黄でもない色味で、マイナスの値は青味を、プラスの値は黄味を表している。このため、b≦-10とすることで、青味を有する色味となる。係る色味とすることで、近赤外線領域の光の吸収を高めることができる。
[2]近赤外線遮蔽材料粉末の製造方法
次に、本実施形態の近赤外線遮蔽材料粉末の製造方法について説明する。
【0030】
本実施形態の近赤外線遮蔽材料粉末の製造方法によれば、既述の近赤外線遮蔽材料粉末を製造できるため、既に説明した事項については説明を省略する。なお、ここでは近赤外線遮蔽材料粉末の製造方法の構成例を示しているに過ぎず、既述の近赤外線遮蔽材料粉末の製造方法が、以下の構成例に限定されるものではない。
【0031】
本実施形態の近赤外線遮蔽材料粉末は、還元雰囲気中で、原料の混合物を熱処理することで製造できる。
【0032】
以下、本実施形態の近赤外線遮蔽材料粉末の原料である(1)タングステン原料、(2)セシウム原料について説明し、さらに(3)近赤外線遮蔽材料粉末の製造方法について説明する。
【0033】
(1)タングステン原料
タングステンを含有するタングステン原料(タングステン源)としては、例えばタングステン化合物粉末を用いることができる。タングステン化合物粉末としては、タングステン酸粉末、三酸化タングステン粉末、二酸化タングステン粉末、酸化タングステンの水和物粉末、六塩化タングステン粉末、タングステン酸アンモニウム粉末、六塩化タングステン粉末、タングステン酸アンモニウム粉末、六塩化タングステン粉末をアルコールに溶解させた後、乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、六塩化タングステン粉末をアルコール中に溶解させた後、水を添加して沈殿させ、当該沈殿物を乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、タングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、から選択される1種類以上を用いることができる。
【0034】
さらに、タングステン原料として液体のタングステン化合物を用いることも好ましい構成である。タングステン原料として液体のタングステン化合物を用いた場合、当該液体のタングステン化合物と、後述するセシウム原料とを均一に混合することが容易であることによる。当該観点から、タングステン原料として、タングステン酸アンモニウム水溶液や、六塩化タングステン水溶液を用いることも好ましい。
(2)セシウム原料
セシウムを含有するセシウム原料(セシウム源)としては、炭酸セシウム、水酸化セシウム、酢酸セシウム、酸化セシウム等から選択された1種類以上を好適に用いることができる。
(3)近赤外線遮蔽材料粉末の製造方法
本実施形態の近赤外線遮蔽材料粉末の製造方法は、以下の混合工程、熱処理工程を有することができる。各工程について以下に説明する。
(3-1)混合工程
混合工程では、既述のタングステン原料、およびセシウム原料を秤量、混合し、混合物を得ることができる。
【0035】
混合工程では、混合物に含まれる、タングステン元素(W)に対するセシウム元素(Cs)の物質量の割合、すなわち混合物におけるCs/Wの物質量比が0.32以上0.35以下となるように、タングステン原料、セシウム原料を秤量、混合することが好ましい。
【0036】
混合物中のタングステンに対するセシウムの物質量比を0.35以下とすることで、熱処理工程後に得られる近赤外線遮蔽材料粉末に異相が生じることを防止できる。上記のように、近赤外線遮蔽材料粉末での異相の生成を抑制することで、近赤外線遮蔽材料粉末の色味を所望のものとすることができ、近赤外線領域の光の吸収を高めることができる。
【0037】
また、混合物中のタングステンに対するセシウムの物質量比を0.32以上とすることで、セシウムが複合タングステン酸化物中に均一に分散し、近赤外線領域の光の吸収を高めることができる。
【0038】
タングステン原料とセシウム原料の混合方法は特に限定されず、乾式法または湿式法を用いることができる。乾式法は、混合後に乾燥などの工程を必要としないため、生産性を高めることができる。
【0039】
また、各原料成分を分子レベルで均一混合した混合物を得る観点からは、各原料を溶液で混合する湿式法を好適に用いることができる。当該観点からは、原料粉末が水や有機溶媒等の溶媒に溶解可能なものを用いることが好ましい。
【0040】
このため、混合工程における混合方法は、生産性や、得られる混合物に要求される均一性の程度等を考慮し、選択することができる。
【0041】
湿式法によりタングステン原料とセシウム原料とを混合する場合、例えば以下の手順により実施できる。以下の説明ではタングステン原料としてHWO粉末を、セシウム原料としてCsCO粉末を用いた場合を例に説明する。
【0042】
湿式法によりタングステン原料とセシウム原料とを混合する場合、混合工程は、例えば、秤量されたHWO粉末と、CsCO粉末と、を乳鉢に入れ、水を加えて混合し、混合物とすることで実施できる。さらに、得られた混合物を大気中100℃で乾燥させて乾燥物とすることができ、得られた乾燥物を乳鉢で粉砕することで、粉砕された混合物を得ることもできる。
【0043】
なお、混合時に加える水の量は、秤量した原料粉末が均一に混合できる量であれば良い。また、大気中100℃での乾燥時間は、水が蒸発し終える時間であれば良いが、例えば12時間程度が好ましい。
【0044】
混合工程で得られ、焼成工程に供する混合物は平均粒子径が500nm以下であることが好ましい。このため、混合工程において、タングステン原料とセシウム原料とを混合した後、必要に応じて粉砕処理を行うことが好ましい。混合工程が粉砕処理を含む場合、混合工程は混合・粉砕工程ということもできる。この場合、混合・粉砕工程は、既述のタングステン原料、およびセシウム原料を目的組成にあわせて秤量、混合し、粉砕することで混合物を調製できる。
【0045】
本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって求めた体積基準の粒度分布における体積積算値50%での粒径を意味する。
【0046】
粉砕は、ローラミル、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、回転ミル、遊星ミル、振動ミル、ビーズミル等を用いて粉砕することができる。粉砕後の混合物の平均粒子径は、500nm以下にすることが好ましい。混合物の平均粒子径が500nm以下であれば、熱処理工程において低温度で焼成することができ、粒子が粗大化しないため、得られた近赤外線遮蔽材料粉末を用いた分散液や分散体のヘイズ値が低くなる。また分散工程においても短時間で分散することができる。
【0047】
なお、タングステン原料とセシウム原料との混合物の平均粒子径が500nm以下の場合、粉砕を行わずに熱処理工程に供することもできる。
(3-2)熱処理工程
熱処理工程では、既述の混合工程、もしくは混合・粉砕工程で得られた混合物を還元雰囲気下で熱処理し、近赤外線遮蔽材料粉末を調製できる。
【0048】
熱処理工程では、混合工程で得られた混合物を坩堝等の焼成容器に充填し、熱処理できる。
【0049】
熱処理の条件は特に限定されないが、熱処理工程後に得られる近赤外線遮蔽材料粉末が含有する複合タングステン酸化物におけるタングステンに対する酸素の物質量(z/y)の値が所望の範囲となるように選択できる。例えば熱処理温度が500℃未満であることが好ましい。また、熱処理温度の下限値についても特に限定されないが、熱処理温度は400℃より高いことが好ましい。
【0050】
熱処理温度までの昇温速度についても特に限定されないが、例えば5℃/min以上15℃/min以下の昇温速度で昇温できる。15℃/min以下の昇温速度で昇温することで、平均粒子径が500nm以下とした混合物を構成する粒子の中心にまで十分に加熱し、目的組成の複合タングステン酸化物を含む近赤外線遮蔽材料粉末にできる。また、5℃/min以上の昇温速度で昇温することで、近赤外線遮蔽材料粉末の生産性を高められる。
【0051】
熱処理温度に到達後、熱処理温度で保持する時間である熱処理時間についても特に限定されないが、1時間以上2時間以下とすることが好ましい。熱処理温度において、1時間以上熱処理することで、平均粒子径が500nm以下とした混合物を構成する粒子の中心にまで十分に加熱し、目的組成の複合タングステン酸化物を含む近赤外線遮蔽材料粉末にできる。また、熱処理時間を2時間以下とすることで、近赤外線遮蔽材料粉末の生産性を高められる。
【0052】
還元雰囲気についても特に限定されないが、還元ガスと不活性ガスとを含む雰囲気とすることができ、例えば窒素ガスをキャリアとし、還元ガスとして水素ガスを含む雰囲気とすることができる。還元雰囲気とする場合の還元ガスの含有割合は特に限定されないが、例えば還元ガスが水素ガスの場合、体積割合で1%以上10%以下含むことが好ましい。水素を体積割合で1%以上10%以下の割合で含むことで、混合物の還元を十分に進行させることができる。
(3-3)分散工程
本実施形態の近赤外線遮蔽材料粉末の製造方法は、混合工程、熱処理工程以外に、任意の工程を有することもでき、例えば分散工程を有することもできる。
【0053】
分散工程は、熱処理工程で得られた近赤外線遮蔽材料粉末を湿式粉砕し、液体媒体(分散媒)である有機溶剤中に近赤外線遮蔽材料粉末を分散する工程である。分散工程を実施することで、粒子径がさらに微細な近赤外線遮蔽材料粉末を得ることができる。
【0054】
分散工程では、熱処理工程で得られた近赤外線遮蔽材料粉末に、分散剤と有機溶剤とを添加した後、湿式粉砕を行うことが好ましい。
【0055】
添加する分散剤としては、特に制限はなく、複合タングステン酸化物を含む近赤外線遮蔽材料粉末を分散できる一般的な分散剤を用いることができる。好ましい分散剤の例としては、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、或いはエポキシ基を官能基として有する分散剤が挙げられる。これらの官能基は、近赤外線遮蔽材料粉末が含有する粒子の表面に吸着し、近赤外線遮蔽材料粉末が含有する粒子の凝集を防ぎ、均一に分散させる効果をもつからである。
【0056】
好ましい分散剤の具体例として、カルボキシル基を官能基として有するアクリル-スチレン共重合体系分散剤、アミンを含有する基を官能基として有するアクリル系分散剤等が挙げられる。ただし、分散剤はこれらに限定されるものではない。
【0057】
添加する有機溶剤としては特に制限はなく、近赤外線遮蔽膜等を形成する際に要求される条件により、適宜に選定できる。
【0058】
好ましい有機溶剤の具体例として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル等のグリコール誘導体、フォルムアミド、N-メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
近赤外線遮蔽材料粉末に分散剤、有機溶剤を添加する際、配合割合は特に限定されず、任意に選択できる。例えば近赤外線遮蔽材料粉末5質量部以上15質量部以下と、分散剤5質量部以上15質量部以下と、有機溶剤70質量部以上90質量部以下と、の割合で混合することが好ましい。
【0060】
近赤外線遮蔽材料粉末を有機溶剤中へ分散させる方法は特に限定されない。近赤外線遮蔽材料粉末を粉砕でき、生成した近赤外線遮蔽材料粉末を有機溶剤中へ均一に分散できる方法であれば任意に選択できる。具体的には、ビーズミル分散、ボールミル分散、サンドミル分散、超音波分散などの装置や方法を用いることで、近赤外線遮蔽材料粉末を粉砕でき、生成した近赤外線遮蔽材料粉末を均一に有機溶剤中へ分散させることができる。
[3]近赤外線遮蔽材料
次に、本実施形態の近赤外線遮蔽材料について説明する。
【0061】
本実施形態の近赤外線遮蔽材料は、液体媒体と、液体媒体中に含まれる既述の近赤外線遮蔽材料粉末と、を含有できる。すなわち、例えば図1に示した様に、本実施形態の近赤外線遮蔽材料10は、既述の近赤外線遮蔽材料粉末11と、液体媒体12とを含むことができる。近赤外線遮蔽材料粉末11は、上記液体媒体12中に分散していることが好ましい。このため、近赤外線遮蔽材料は、近赤外線遮蔽粒子分散液ということもできる。
【0062】
なお、図1は模式的に示した図であり、本実施形態の近赤外線遮蔽材料は、係る形態に限定されるものではない。例えば図1において近赤外線遮蔽材料粉末11の各粒子を円で表し、球状の粒子として記載しているが、近赤外線遮蔽材料粉末11の各粒子の形状は係る形態に限定されるものではなく、任意の形状を有することができる。近赤外線遮蔽材料10は、近赤外線遮蔽材料粉末11、液体媒体12以外に、必要に応じてその他添加剤を含むこともできる。
【0063】
本実施形態の近赤外線遮蔽材料は、既述の近赤外線遮蔽材料粉末を用いて、別の言い方をすれば既述の近赤外線遮蔽材料粉末の製造方法により得られた近赤外線遮蔽材料粉末を用いて得ることができる。
【0064】
近赤外線遮蔽材料は、上記近赤外線遮蔽材料粉末、液体媒体に加えて、さらに所望により分散剤、その他添加剤を含むこともできる。近赤外線遮蔽材料は、近赤外線遮蔽材料粉末が固体媒体中に分散された近赤外線遮蔽粒子分散体の中間生成物あるいはコーティング液として用いることもできる。
【0065】
本実施形態の近赤外線遮蔽材料は、既述の分散工程により得ることができる。このため、分散剤や、有機溶剤については既に説明したため、説明を省略する。
【0066】
本実施形態の近赤外線遮蔽材料の特性は特に限定されないが、全光線吸収率を80%とした場合のヘイズ値が0.3%以下であることが好ましい。本実施形態の近赤外線遮蔽材料粉末を用いることで、上記範囲を充足するヘイズ値とすることができ、光の散乱を抑制できるため好ましい。
【実施例0067】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(評価方法)
まず、以下の実施例、比較例における評価方法について説明する。
(結晶構造、結晶子径)
実施例、比較例の熱処理工程後に得られた、近赤外線遮蔽材料粉末が含有する複合タングステン酸化物の結晶構造の測定を行った。
【0068】
当該複合タングステン酸化物のX線回折パターンを、粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社PANalytical製 X'Pert-PRO/MPD)を用いて粉末X線回折法(θ-2θ法)により測定した。得られたX線回折パターンから複合タングステン酸化物に含まれる結晶構造や、六方晶以外の異相の有無を特定した。
【0069】
また、分散工程で得られた近赤外線遮蔽材料である近赤外線遮蔽粒子分散液から近赤外線遮蔽材料粉末を回収し、測定したX線回折パターンから、シェラーの式を用いて複合タングステン酸化物の結晶子径を算出した。
【0070】
なお、シェラーの式は以下の式(1)で表される。式(1)中のDは結晶子径を、βは回折線幅を、λはX線の波長を、θはブラッグ角(回折角)を、それぞれ表している。Kはシェラー定数であり0.89を用いた。結晶子径の算出には、(200)面のピークを用いているため、θは13.8976°になる。また、X線としては、CuKα線を用いているため、λは1.5418Åである。回折線プロファイルの幅である、回折線幅βを算出するに当っては、Kα1、Kα2に波形分離した後、測定機器の光学系による広がりを補正し、Kα1による回折ピークの半価幅を用いた。
【0071】
D=Kλ÷(βcosθ) ・・・(1)
(近赤外線遮蔽材料の光学特性)
実施例および比較例で得られた近赤外線遮蔽材料粉末、および近赤外線遮蔽材料である近赤外線遮蔽粒子分散液の光学特性は、以下のように測定した。
【0072】
まず、分光光度計の測定用ガラスセルにて近赤外線遮蔽材料を溶媒のメチルイソブチルケトンで希釈して、近赤外線遮蔽材料粉末の濃度が1質量%となるように調整した。次に、希釈した近赤外線遮蔽材料を分光光度用セルに投入し、分光光度計(日立製作所製 型式:U-4000)により可視光線領域である波長500nm、および近赤外線領域である波長1000nmにおいて透過率測定を行った。評価結果を表3の「透過率」の欄に示す。
【0073】
また、実施例および比較例で得られた近赤外線遮蔽材料粉末について、色味値Lを、色彩色差計(コニカミノルタジャパン株式会社製 型式:CR-5)を用いて測定し、表2の「L」、「a」、「b」の欄にそれぞれ示している。
(耐熱試験、耐湿熱試験)
耐熱試験用の試料として、各実施例、比較例で分散工程後に得られた近赤外線遮蔽材料である近赤外線遮蔽粒子分散液を、耐熱試験用の試料として、ガラス基板に全光線吸収率が80%となるように塗工、乾燥したものを用意した。(以下、「耐熱試験用試料」とも記載する)なお、乾燥は70℃で1分間行った。
【0074】
また、耐湿熱試験用の試料として、各実施例、比較例で分散工程後に得られた近赤外線遮蔽材料を、ポリエチレンテレフタレート製の基板に全光線吸収率が80%となるように塗工、乾燥したものを用意した。(以下、「耐湿熱試験用試料」とも記載する)なお、乾燥は70℃で1分間行った。
【0075】
耐熱試験用試料について、乾燥後、塗布膜のヘイズ値を、ヘイズメーター(株式会社村上色彩技術研究所製HM-150N)を用いて測定し、JIS K 7136(2000)に基づき算出した。測定結果を表3の「ヘイズ」の欄に示す。
【0076】
耐熱試験、耐湿熱試験を実施する前に、耐熱試験用試料、耐湿熱試験用試料について、分光光度計により、波長500nm、波長1000nmにおいて透過率測定を行った。
【0077】
そして、耐熱試験として、耐熱試験用試料を120℃に設定した恒温機の中に120時間静置した。耐熱試験用試料について、恒温機に120時間静置した後の波長500nmと波長1000nmの透過率を測定した。120時間後の各波長での透過率を表3の「耐熱後透過率」の欄に示している。また、耐熱試験後と、耐熱試験前の透過率の変化量を、耐熱後-耐熱前の欄に記載している。
【0078】
耐湿熱試験として、耐湿熱試験用試料を85℃、相対湿度を90%に設定した恒温機の中に静置した。耐湿熱試験用試料について、恒温機に120時間静置した後の波長500nmと波長1000nmの透過率を測定した。120時間後の各波長での透過率を表3の「耐湿熱後透過率」の欄に示している。また、耐湿熱試験後と、耐湿熱試験前の透過率の変化量を、耐湿熱後-耐湿熱前の欄に記載している。
[実施例1]
以下の手順により、近赤外線遮蔽材料粉末を製造した。
(1)混合工程
タングステン原料であるHWO(タングステン酸)粉末と、セシウム原料であるCsCO(炭酸セシウム)粉末とを、混合し、混合物を調製した。
【0079】
タングステン原料と、セシウム原料とは、混合物に含まれるタングステン元素(W)に対するセシウム元素(Cs)の物質量の割合が、表1のCs/Wの欄に示すように、Cs/W=0.32になるように秤量し、乳鉢で混合して混合物とした。
【0080】
得られた混合粉末をジェットミル粉砕で平均粒子径500nmとした後、熱処理工程に供した。
(2)熱処理工程
混合工程で得られた、平均粒子径500nmの混合粉末を、10体積%水素-90体積%窒素の雰囲気下で、室温から熱処理温度である450℃まで、10℃/minの昇温速度で昇温した。熱処理温度に到達後、熱処理温度で1時間熱処理(焼成)して複合タングステン酸化物からなる近赤外線遮蔽材料粉末を得た。
【0081】
得られた近赤外線遮蔽材料粉末のXRDスペクトルを測定した。その結果、近赤外線遮蔽材料粉末は、複合タングステン酸化物から構成され、複合タングステン酸化物の結晶構造は六方晶であり、異相は含まないことを確認できた。複合タングステン酸化物の結晶構造、異相の有無は表2の「結晶」の欄に示している。
【0082】
得られた近赤外線遮蔽材料粉末について、セシウム量と、タングステン量をICP発光分光分析装置(島津製作所製 型式:ICPE-9000)により分析した。また、酸素量は、酸素・窒素・水素分析装置(LECOジャパン製 型式:ONH836型)により分析した。
【0083】
その結果、本実施例で得られた近赤外線遮蔽材料粉末が含有する複合タングステン酸化物において、タングステンに対するセシウムの物質量での含有割合を示すCs/Wは0.32であることを確認できた。また、タングステンに対する酸素の物質量での含有割合を示すO/Wは2.5であることを確認できた。評価結果はそれぞれ表2の「物質量比」の欄に示している。
(3)分散工程
熱処理工程で得られた近赤外線遮蔽材料粉末10質量%と、酢酸ノルマルブチルを主成分とした分散剤10質量%と、有機溶剤としてメチルイソブチルケトン80質量%とを秤量した。これらを、0.3mmφのジルコニアビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、5時間の粉砕・分散処理をおこなって、実施例1に係る近赤外線遮蔽材料である、近赤外線遮蔽粒子分散液を得た。
【0084】
実施例1に係る近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料の製造条件を表1に記載する。
【0085】
得られた近赤外線遮蔽材料である近赤外線遮蔽粒子分散液について、既述の光学特性の評価等、および耐熱試験、耐湿熱試験を実施した。評価結果を表2、表3に示す。
[実施例2]
混合工程において、タングステン原料と、セシウム原料とを、混合物に含まれるタングステン元素(W)に対するセシウム元素(Cs)の物質量の割合が、表1のCs/Wの欄に示すように、Cs/W=0.35になるように秤量し、乳鉢で混合して混合粉末とした。
【0086】
以上の点以外は、実施例1と同じ条件、手順で、近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料を作製し、評価を行った。
【0087】
近赤外線遮蔽材料粉末の製造条件を表1に、近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料の評価結果を表2、表3に示す。
[比較例1、比較例2]
混合工程において、タングステン原料と、セシウム原料とを、混合物に含まれるタングステン元素(W)に対するセシウム元素(Cs)の物質量の割合が、表1のCs/Wの欄に示した値になるように秤量し、乳鉢で混合して混合粉末とした。
【0088】
以上の点以外は、実施例1と同じ条件、手順で、近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料を作製し、評価を行った。
【0089】
近赤外線遮蔽材料粉末の製造条件を表1に、近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料の評価結果を表2、表3に示す。
[実施例3]
熱処理工程において、混合工程で得られた、平均粒子径500nmの混合粉末を、1体積%水素-99体積%窒素の雰囲気下で、室温から熱処理温度である450℃まで、10℃/minの昇温速度で昇温した。熱処理温度に到達後、熱処理温度で1時間熱処理(焼成)して複合タングステン酸化物からなる近赤外線遮蔽材料粉末を得た。
【0090】
以上の点以外は、実施例1と同じ条件、手順で、近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料を作製し、評価を行った。
【0091】
近赤外線遮蔽材料粉末の製造条件を表1に、近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料の評価結果を表2、表3に示す。
[比較例3]
熱処理工程において、混合工程で得られた、平均粒子径500nmの混合粉末を、1体積%水素-99体積%窒素の雰囲気下で、室温から熱処理温度である400℃まで、10℃/minの昇温速度で昇温した。熱処理温度に到達後、熱処理温度で1時間熱処理(焼成)して複合タングステン酸化物からなる近赤外線遮蔽材料粉末を得た。
【0092】
以上の点以外は、実施例1と同じ条件、手順で、近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料を作製し、評価を行った。
【0093】
近赤外線遮蔽材料粉末の製造条件を表1に、近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料の評価結果を表2、表3に示す。
[比較例4]
熱処理工程において、混合工程で得られた、平均粒子径500nmの混合粉末を、10体積%水素-90体積%窒素の雰囲気下で、室温から熱処理温度である500℃まで、10℃/minの昇温速度で昇温した。熱処理温度に到達後、熱処理温度で1時間熱処理(焼成)して複合タングステン酸化物からなる近赤外線遮蔽材料粉末を得た。
【0094】
以上の点以外は、実施例1と同じ条件、手順で、近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料を作製し、評価を行った。
【0095】
近赤外線遮蔽材料粉末の製造条件を表1に、近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料の評価結果を表2、表3に示す。
[比較例5]
混合工程において、タングステン原料と、セシウム原料とを、混合物に含まれるタングステン元素(W)に対するセシウム元素(Cs)の物質量の割合が、表1のCs/Wの欄に示すように、Cs/W=0.32になるように秤量し、乳鉢で混合して混合粉末とした。
【0096】
そして、得られた混合粉末をジェットミル粉砕で平均粒子径600nmとした後、熱処理工程に供した。
【0097】
以上の点以外は、実施例1と同じ条件、手順で、近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料を作製し、評価を行った。
【0098】
近赤外線遮蔽材料粉末の製造条件を表1に、近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料の評価結果を表2、表3に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
表2、表3に示した結果によれば、実施例1~実施例3の近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料によれば、波長500nmでの透過率が高く、波長1000nmの透過率が低いことを確認できた。すなわち、実施例1~実施例3の近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料によれば、可視光線領域の光の透過性に優れ、近赤外線領域の光については高い吸収を発揮できることを確認できた。
【0102】
また、実施例1~実施例3の近赤外線遮蔽材料粉末、近赤外線遮蔽材料によれば、耐熱試験、耐湿熱試験のいずれにおいても、試験前後での光学特性に変化がみられず、耐候性に優れていることを確認できた。
【符号の説明】
【0103】
10 近赤外線遮蔽材料
11 近赤外線遮蔽材料粉末
12 液体媒体
図1