(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142393
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】表面保護フィルムおよび光学部品
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241003BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241003BHJP
C09J 7/20 20180101ALI20241003BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20241003BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241003BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B27/00 M
C09J7/38
C09J7/20
C09J133/00
C09J11/06
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054517
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 智美
(72)【発明者】
【氏名】新見 洋人
(72)【発明者】
【氏名】積田 幸衣
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2H149AA01
2H149AB26
2H149CA02
2H149FA12X
2H149FA66
2H149FB01
4F100AH03B
4F100AH06B
4F100AK25B
4F100AK42A
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
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4F100CB05B
4F100GB41
4F100JK01
4F100JL13B
4F100JL14C
4J004AA10
4J004AB01
4J004DB02
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4J040DF001
4J040EF282
4J040EK032
4J040GA08
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA32
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】剥離帯電圧を小さくでき、かつ押圧痕の形成を抑えることができる表面保護フィルムおよび光学部品を提供する。
【解決手段】表面保護フィルム10は、透明性を有する樹脂からなる基材フィルム1と、基材フィルム1の一方の面に形成された粘着剤層2と、を備える。粘着剤層2は、ポリ(メタ)アクリル系ポリマーと、ポリエーテル変性シリコーン化合物と、イソシアネート系架橋剤と、帯電防止剤とを含む。表面保護フィルム10をTACフィルムに貼合した場合のループスティフネステスタによる応力減衰率は0.5%以上、3.0%以下となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する樹脂からなる基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面に形成された粘着剤層と、を備え、
前記粘着剤層は、ポリ(メタ)アクリル系ポリマーと、ポリエーテル変性シリコーン化合物と、イソシアネート系架橋剤と、帯電防止剤とを含み、
TACフィルムに貼合した場合のループスティフネステスタによる応力減衰率は0.5%以上、3.0%以下となる、
表面保護フィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層の、前記基材フィルムとは反対側に、剥離フィルムが貼合された、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表面保護フィルムが被着体に貼合された、光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルムおよび光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
光学用フィルム、及びそれを用いたディスプレイなどの光学製品が用いられている。光学用フィルムは、例えば、偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルム、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルム等である。光学製品を製造、搬送する際には、光学用フィルムの表面に表面保護フィルムを貼合して、後工程における表面の汚れや傷付きを防止することができる。
【0003】
光学製品の外観検査は、表面保護フィルムを光学用フィルムに貼合したまま行うことができる。表面保護フィルムを貼合したまま外観検査を行うと、表面保護フィルムを剥がして再び貼合する手間を省くことができるため、作業効率を高めることができる。
【0004】
特許文献1には、アルキルトリメチルアンモニウム塩、水酸基含有アクリル系ポリマー、ポリイソシアネートからなる粘着剤を用いた表面保護フィルムが開示されている。特許文献2には、イオン性液体と酸価が1.0以下のアクリルポリマーからなる粘着剤組成物、およびそれを用いた粘着シート類が開示されている。特許文献3には、アクリルポリマー、ポリエーテルポリオール化合物、アニオン吸着性化合物により処理したアルカリ金属塩からなる粘着組成物、およびそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。特許文献4には、アルカリ金属塩と、ポリエーテル変性シリコーンとを含有する粘着剤組成物、およびそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-131957号公報
【特許文献2】特開2005-330464号公報
【特許文献3】特開2005-314476号公報
【特許文献4】特開2014-125625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表面保護フィルムが貼合された偏光板は、被着体から剥離するときに、剥離帯電によって被着体の回路(ドライバーICなど)が悪影響を受けるのを抑えることが求められている。表面保護フィルムが貼合された偏光板は、ハンドリングのために手で掴んだ場合や、ロールで押さえたりした場合等で押圧力が加えられると、押圧痕(押され跡)がつくことがある。押圧痕がついた偏光板は、凹みがある状態のため、偏光板の製品としての外観が悪くなり、歩留まりを落とす要因となる。
【0007】
本発明の一態様は、剥離帯電圧を小さくでき、かつ押圧痕の形成を抑えることができる表面保護フィルムおよび光学部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、透明性を有する樹脂からなる基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面に形成された粘着剤層と、を備え、前記粘着剤層は、ポリ(メタ)アクリル系ポリマーと、ポリエーテル変性シリコーン化合物と、イソシアネート系架橋剤と、帯電防止剤とを含み、TACフィルムに貼合した場合のループスティフネステスタによる応力減衰率は0.5%以上、3.0%以下となる、表面保護フィルムを提供する。
【0009】
前記表面保護フィルムは、前記粘着剤層の、前記基材フィルムとは反対側に、剥離フィルムが貼合されている。
【0010】
本発明の他の態様は、前記表面保護フィルムが被着体に貼合された、光学部品を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様は、剥離帯電圧を小さくでき、かつ押圧痕の形成を抑えることができる表面保護フィルムおよび光学部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態の表面保護フィルムの断面図である。
【
図2】実施形態の表面保護フィルムに剥離フィルムを貼合した剥離フィルム付き表面保護フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、実施形態の表面保護フィルムを示した断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る表面保護フィルム10は、基材フィルム1と、粘着剤層2とを備える。
【0014】
[基材フィルム]
基材フィルム1としては、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルで形成されたフィルム(ポリエステルフィルム)が用いられる。ポリエステルフィルムのほか、必要な強度を有し、かつ光学適性を有するものであれば、他の樹脂からなるフィルムも使用可能である。基材フィルム1は、無延伸フィルムであってもよいし、一軸または二軸延伸されたフィルムであってもよい。延伸フィルムの延伸倍率、および、延伸フィルムの結晶化に伴い形成される軸方法の配向角度は、特定の値に制御してもよい。
【0015】
基材フィルム1としては、透明性及び可撓性を有する樹脂からなる基材フィルムが用いられる。これにより、表面保護フィルム10を、被着体である光学製品に貼合した状態で、光学製品の外観検査を行うことができる。
【0016】
「透明」とは、例えば、測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、全波長域における厚さ方向の透過率の平均値として算出される可視光透過率が50%以上(好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上)であることを意味する。光透過率は、JIS K 7375:2008に規定される「プラスチック-全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に準拠して測定することができる。
【0017】
基材フィルム1の厚みは、特に限定はないが、例えば、12μm~100μmとすることができる。基材フィルム1の厚みは、20μm~50μmであると基材フィルム1が取り扱い易くなるため、さらに好ましい。必要に応じて、基材フィルム1の表面に、コロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
【0018】
[粘着剤層]
粘着剤層2は、被着体の表面に接着し、使用後に簡単に剥がせ、かつ、被着体を汚染しにくい特性を持つことが好ましい。粘着剤層2は、基材フィルム1の一方の面(
図1では下面)に形成されている。
粘着剤層2は、ポリ(メタ)アクリル系ポリマーと、ポリエーテル変性シリコーン化合物と、イソシアネート系架橋剤と、帯電防止剤とを含む。
【0019】
ポリ(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、主モノマーと、コモノマーと、官能性モノマーとを共重合したポリマーであってよい。
主モノマーとしては、ブチルアクリレート(例えばn-ブチルアクリレート)、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレートなどが挙げられる。主モノマーとしては、これらのうち1つを使用してもよいし、2以上を併用してもよい。
コモノマーとしては、アクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどが挙げられる。コモノマーとしては、これらのうち1つを使用してもよいし、2以上を併用してもよい。
官能性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート)、ヒドロキシブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、水酸基含有アクリルモノマー、カルボキシル基含有アクリレート、ポリオキシアルキレン基含有アクリルモノマーなどが挙げられる。官能性モノマーとしては、これらのうち1つを使用してもよいし、2以上を併用してもよい。ポリ(メタ)アクリル系ポリマーは、求める特性に応じて適当な組成を選択すればよい。
【0020】
ポリ(メタ) アクリル系ポリマーを構成するモノマー組成は、(メタ)アクリル系モノマーが50%以上であることが好ましく、(メタ)アクリル系モノマーが100%でもよい。
【0021】
ポリ(メタ)アクリル系ポリマーには、ポリオキシアルキレン基を含有する化合物を共重合させたり、混合してもよい。
ポリオキシアルキレン基を含有する化合物としては、ポリエチレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリエチレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレート、ポリプロピレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリプロピレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(400)メタクリレートなどが挙げられる。
【0022】
ポリエーテル変性シリコーン化合物は、シリコーン鎖にポリエーテル基を導入したシロキサン化合物である。ポリエーテル変性シリコーン化合物は、例えば、シリコーン鎖にオキシアルキレン鎖を導入したシロキサン化合物である。オキシアルキレン鎖の原料となるアルキレンオキサイドの具体例としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどが挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、これらのうち1つを使用してもよいし、2以上を併用してもよい。2以上のアルキレンオキサイドを使用する場合、それらの付加形態は、ブロック付加でもよいし、ランダム付加でもよい。
【0023】
ポリエーテル基は、シリコーン鎖の側鎖に導入してもよいし、シリコーン鎖の末端に導入してもよい。ポリエーテル基は、シリコーン鎖の側鎖と末端の両方に導入してもよい。
【0024】
ポリエーテル変性シリコーン化合物は、例えば、粘着剤層2の帯電防止効果に影響する。例えば、側鎖に用いるポリエチレンオキサイドの分子量を選択することにより、粘着剤層2の帯電防止効果を調整することができる。
【0025】
ポリエーテル変性シリコーン化合物の市販品としては、例えば、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L 、KF-355A、KF-642、KF-644、KF-6012、KF-6017P、KF-6020、KF-6204(信越化学工業社製);SH3746、SH3771、SH3772、SH3773M、SH8400、SH8700、SF8410、FZ-2110、FZ-2123、L-7001、L-7002(ダウ・東レ社製);TSF-4440、TSF-4441、TSF-4445、TSF-4446、TSF-4450(モメンティブパーフォーマンス・マテリアルズ社製);BYK-300、BYK-306、BYK-307、BYK-320、BYK-325、BYK-330(ビックケミー社製)などが挙げられる。
【0026】
粘着剤層2に対するポリエーテル変性シリコーン化合物の添加量は、その種類や、粘着剤との相溶性の度合いにより異なるが、表面保護フィルム10を被着体から剥離するときの剥離帯電圧、被着体に対する汚染性、粘着特性などを考慮して設定すればよい。シリコーン系界面活性剤の添加量が多いほど、表面保護フィルム剥離時の剥離帯電圧を低くできる可能性はあるが、被着体を汚染しやすくなることから、適度な添加量を選定する必要がある。
【0027】
ポリエーテル変性シリコーン化合物の添加量は、例えば、ポリ(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.005~0.5質量部(好ましくは、0.01~0.1質量部)とすることができる。
【0028】
イソシアネート系架橋剤は、ポリ(メタ)アクリル系ポリマーを架橋させる。イソシアネート系架橋剤は、ポリ(メタ)アクリル系ポリマーを硬化させる硬化剤である。イソシアネート系架橋剤は、例えば、ポリイソシアネート化合物である。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジイソシアネート類のビュレット変性体、ジイソシアネート類のイソシアヌレート変性体、またはジイソシアネート類のアダクト体が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、これらのうち1つを使用してもよいし、2以上を併用してもよい。
【0029】
ジイソシアネート類としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。ジイソシアネート類としては、これらのうち1つを使用してもよいし、2以上を併用してもよい。
アダクト体としては、例えば、ジイソシアネート類と3価以上のポリオールとのアダクト体が挙げられる。3価以上のポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン等がある。
【0030】
ポリ(メタ) アクリル系ポリマーが架橋反応可能な官能基(水酸基など)を有する場合、この官能基がイソシアネート系架橋剤と反応することで架橋は進行する。
イソシアネート系架橋剤の添加量は、ポリ(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.25質量部以上、10質量部以下が好ましい。
【0031】
イソシアネート系架橋剤の市販品としては、例えば、コロネート(登録商標)HX(HDIイソシアヌレート体、東ソー社製)、コロネート(登録商標)HL(HDIアダクト体、東ソー社製)、タケネート(登録商標)D-140N(IPDIアダクト体、三井化学社製)などが挙げられる。
【0032】
帯電防止剤としては、アルカリ金属塩が使用できる。アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の塩が挙げられる。具体的には、例えば、Li+、Na+、K+のうち1以上のカチオンと、Cl-、Br-、I-、BF4
- 、PF6
-、SCN-、ClO4
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N- 、(CF3SO2)3C- のうち1以上のアニオンと、から構成される金属塩が好適に用いられる。なかでも特に、LiBr、LiI、LiBF4、LiP F6、LiSCN、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5 SO2)2N、Li(CF3SO2)3Cなどのリチウム塩が好ましく挙げられる。これらのアルカリ金属塩は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
Li(CF3SO2)2Nは、リチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドである。
【0033】
帯電防止剤としては、イオン性化合物を使用してもよい。イオン性化合物としては、イオン性液体、イオン性固体などがある。イオン性化合物は、カチオンとアニオンを有するイオン性化合物である。カチオンとしては、イミダゾリウムイオンなどの環状アミジンイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオン、トリ-n-ブチルメチルアンモニウムイオン等が挙げられる。アニオンとしては、CnH2n+1COO-、CnF2n+1COO-、NO3
-、CnF2n+1SO3
-、(CnF2n+1SO2)2N-、(CnF2n+1SO2)3C-、PO4
3-、AlCl4
-、Al2Cl7
-、ClO4
-、BF4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-等が挙げられる。
イオン性液体としては、「(n-C4H9)3(CH3)N+ -N(SO2CF3)2」(トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド)を挙げることができる。
【0034】
帯電防止剤の市販品としては、FC-4400(トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、スリーエム社製)などがある。
【0035】
帯電防止剤によって、光学部品の搬送時や取り扱い時に静電気を低く抑えることができる。そのため、工程中の塵や埃などの異物の吸着が抑制される。表面保護フィルム10を光学製品5(
図3参照)から剥離するとき、剥離帯電圧を低く抑制することができる。したがって、光学製品5のドライバーIC、TFT素子、ゲート線駆動回路などを破壊するおそれが少なくなる。よって、液晶表示パネル等を製造する工程での生産効率を高めるとともに、生産工程の信頼性を高めることができる。
【0036】
粘着剤層2には、必要に応じて、架橋反応を促進するために架橋触媒を添加剤として添加してもよい。粘着剤層2には、必要に応じて、基材フィルム1と粘着剤との密着性を向上させるために、シランカップリング剤などの密着性向上剤を添加剤として添加してもよい。粘着剤層2には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を添加してもよい。
【0037】
粘着剤層2の厚さは、特に限定はされないが、例えば、5μm~40μmが好ましく、10μm~30μmがより好ましい。
表面保護フィルム10の、被着体の表面に対する剥離速度0.3m/minでの粘着力(低速粘着力)は、例えば、0.03N/25mm~0.1N/25mmであってよい。粘着力(低速粘着力)は、0.05N/25mm~0.07N/25mmが好ましい。被着体としては、例えば、TAC偏光板(TACフィルムを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板)が挙げられる。
【0038】
表面保護フィルム10の、被着体の表面に対する剥離速度30m/minでの粘着力(高速粘着力)は、0.8N/25mm以下であることが好ましい。高速粘着力が0.8N/25mmを超えると、使用後に表面保護フィルム10を剥がす際の作業性が悪くなるおそれがある。被着体としては、例えば、TAC偏光板(TACフィルムを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板)が挙げられる。
【0039】
粘着剤層2の粘着力の調整には、粘着剤組成の変更、硬化剤の添加量の調整、粘着付与剤または粘着力調整剤の添加量調整など、公知の手法を用いることができる。
【0040】
表面保護フィルム10をTACフィルムに貼合した場合のループスティフネステスタによる応力減衰率は、0.5%以上、3.0%以下である。
応力減衰率は、0.5%以上であると、剥離帯電圧を低減しやすくなる。
応力減衰率は、3.0%以下であると、押圧痕が形成されるのを抑制することができる。応力減衰率は、小さいほど押圧痕の形成を抑制する効果が高い。
【0041】
応力減衰率は、例えば、次のようにして測定することができる。
表面保護フィルムをTACフィルム(トリアセチルセルロースフィルム、厚さ60μm)に貼合したサンプル(例えば、幅15mm×長さ170mm)を用意する。
ループステフネステスタ(登録商標)(東洋精機製作所社製)(ループスティフネステスタ)にサンプルをセットする。サンプルを厚さ方向にループ状(円弧形状)に曲げる。測定端子によってサンプルのループ部分を押しつぶすように押圧したときのサンプルの応力(最大応力)を測定する。
【0042】
応力減衰率は、前述の最大応力に対する、測定端子の停止から1秒後の応力の減少率である。応力減少率(%)は、最大応力をσ1とし、測定端子の停止から1秒後の応力をσ2としたとき、(σ1-σ2)/σ1×100と表される。例えば、σ1が100Paであり、σ2が98Paであれば、応力減少率は、(100-98)/100×100=2%となる。
【0043】
基材フィルム1の表面に、粘着剤層2を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。具体的には、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
【0044】
粘着剤層2を形成する方法、および、粘着剤層2に剥離フィルム3を貼合する方法は、公知の方法を採用できる。具体的には、(1)基材フィルム1の片面に、粘着剤層2を形成するための樹脂組成物を塗布、乾燥して粘着剤層2を形成した後に、粘着剤層2に剥離フィルム3を貼合する方法、(2)剥離フィルム3の表面に、粘着剤層2を形成するための樹脂組成物を塗布・乾燥し粘着剤層2を形成した後に、粘着剤層2に基材フィルム1を貼合する方法などが挙げられる。
【0045】
図2は、表面保護フィルム10に剥離フィルム3を貼合した剥離フィルム付き表面保護フィルム11を示した断面図である。
図2に示すように、剥離フィルム3は、粘着剤層2の、基材フィルム1とは反対側(
図2では下面側)に貼合されている。
【0046】
剥離フィルム3としては、公知の剥離フィルムを用いればよい。剥離フィルム3としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、フッ素フィルムなどを、フィルム単体で用いてもよい。剥離フィルム3は、樹脂フィルムを離型剤(剥離剤ともいう)で処理した剥離フィルムでもよい。樹脂フィルムとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)などのポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムが挙げられる。離型剤としては、シリコーン樹脂、長鎖アルキル基含有樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。なかでも、PETフィルムにシリコーン系離型剤を処理した剥離フィルム3が好適である。
剥離フィルム3の厚さは特に制限されないが、作業性とコスト面から12μm~38μmが好ましい。
【0047】
図3は、光学部品の例である光学部品20を示した断面図である。
図3に示すように、光学部品20は、光学製品5の表面に、表面保護フィルム10が貼合されている。光学部品20は、次のようにして作製される。剥離フィルム付き表面保護フィルム11(
図2参照)の剥離フィルム3を剥離し、粘着剤層2が表出した状態とした後、この表面保護フィルム10を、粘着剤層2によって、被着体である光学製品5に貼合する。
【0048】
光学製品5としては、偏光板、位相差板、レンズフィルム、位相差板兼用の偏光板、レンズフィルム兼用の偏光板などの光学用フィルムが挙げられる。このような光学製品5は、液晶表示パネルなどの液晶表示装置、各種計器類の構成部材として使用される。光学製品5としては、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルムなどの、光学用フィルムも挙げられる。
【実施例0049】
次に、実施例により、本発明をさらに説明する。
(実施例1)
2-エチルヘキシルアクリレート80質量部と、ブチルアクリレート10質量部と、メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレート7質量部と、2-ヒドロキシエチルアクリレート3重量部との共重合体からなる粘着剤を調製した。この粘着剤の40%酢酸エチル溶液100質量部に対して、帯電防止剤としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド0.3質量部、ポリエーテル変性シリコーン化合物としてダウシル(登録商標)L-7002(ダウ・東レ社製)0.08質量部、および、イソシアネート系架橋剤として、コロネート(登録商標)HX(東ソー社製)1質量部を撹拌・混合して粘着剤組成物を調合した。
【0050】
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(基材フィルム)の表面に、調合した粘着剤組成物を、アプリケーターを用いて、乾燥後の粘着剤層の厚さが20μmになるように塗布した。粘着剤組成物を塗布した基材フィルムを100℃の熱風循環式オーブンにて3分間加熱乾燥し、粘着フィルムを得た。この粘着フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面に粘着剤層が形成されて構成されている。
粘着フィルムの粘着剤層の表面に、剥離フィルム(ダイヤホイルMRF25、三菱ケミカル社製)を剥離剤層が粘着剤層と接するように貼合した。得られた粘着シートを40℃にて3日間エージングを行い実施例1の表面保護フィルムを得た。剥離フィルムは、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、シリコーン剥離剤を処理したフィルムである。
【0051】
(実施例2)
ダウシルL-7002の添加量を0.04質量部にした以外は実施例1と同様にして実施例2の表面保護フィルムを得た。
【0052】
(実施例3)
ダウシルL-7002の添加量を0.02質量部にした以外は実施例1と同様にして実施例2の表面保護フィルムを得た。
【0053】
(実施例4)
帯電防止剤としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドの代わりに、トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(FC-4400、スリーエム社製、融点27.5℃)0.3質量部を用いた以外は実施例1と同様にして実施例4の表面保護フィルムを得た。
【0054】
(実施例5)
ダウシルL-7002の添加量を0.04質量部にした以外は実施例4と同様にして実施例5の表面保護フィルムを得た。
【0055】
(実施例6)
ダウシルL-7002の添加量を0.02質量部にした以外は実施例4と同様にして実施例6の表面保護フィルムを得た。
【0056】
(実施例7)
ダウシルL-7002の添加量を0.04質量部にしたこと、および、コロネートHXの添加量を1.5質量部にしたこと以外は実施例4と同様にして実施例7の表面保護フィルムを得た。
【0057】
(比較例1)
ダウシルL-7002の添加量を0.32質量部にした以外は実施例1と同様にして比較例1の表面保護フィルムを得た。
【0058】
(比較例2)
ダウシルL-7002の添加量を0.16質量部にした以外は実施例1と同様にして比較例2の表面保護フィルムを得た。
【0059】
(比較例3)
ダウシルL-7002の添加量を0にした以外は実施例1と同様にして比較例3の表面保護フィルムを得た。
【0060】
(比較例4)
ダウシルL-7002の添加量を0.32質量部にした以外は実施例4と同様にして比較例4の表面保護フィルムを得た。
【0061】
(比較例5)
ダウシルL-7002の添加量を0.16質量部にした以外は実施例4と同様にして比較例5の表面保護フィルムを得た。
【0062】
(比較例6)
ダウシルL-7002の添加量を0にした以外は実施例4と同様にして比較例6の表面保護フィルムを得た。
【0063】
以下、評価試験の方法および結果について示す。
【0064】
(対TAC偏光板 粘着力の測定方法)
TACフィルムを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板(TAC偏光板)を、ガラス板の表面に、貼合機を用いて貼合せる。TAC偏光板の表面に、帯状(幅25mm)に裁断した表面保護フィルムを貼合せる。表面保護フィルムを貼合せたTAC偏光板を、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管する。引張試験機を用いて0.3m/分の剥離速度で180°の方向に表面保護フィルムを剥離したときの強度を測定し、これを粘着力(N/25mm)とする。TAC偏光板は、偏光板の両面にそれぞれTACフィルムを貼合せて形成されている。
【0065】
(対TAC偏光板 剥離帯電圧の測定方法)
TACフィルムを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板(TAC偏光板)を、ガラス板の表面に、貼合機を用いて貼合せる。TAC偏光板の表面に、帯状(幅25mm)に裁断した表面保護フィルムを貼合せる。表面保護フィルムを貼合せたTAC偏光板を、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管する。高速剥離試験機(テスター産業製)を用いて毎分30mの剥離速度で表面保護フィルムを剥離しながら、前記偏光板表面の表面電位を、表面電位計(キーエンス(株)製)を用いて10ms毎に測定したときの、表面電位の絶対値の最大値を剥離帯電圧(kV)とする。
【0066】
(対PMMA偏光板 剥離帯電圧の測定方法)
TAC偏光板に代えてPMMA偏光板を用いた以外は「対TAC偏光板 剥離帯電圧」と同様にして剥離帯電圧を測定する。PMMA偏光板は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)フィルムを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板である。PMMA偏光板は、偏光板の両面にそれぞれPMMAフィルムを貼合せて形成されている。
【0067】
(対TACフィルム 応力減衰率)
表面保護フィルムをTACフィルム(厚さ60μm)に貼合せて得られた複合フィルムを24時間静置する。この複合フィルムを帯状(幅15mm×長さ170mm)に裁断してサンプルとする。
ループステフネステスタ(登録商標)(東洋精機製作所社製)にサンプルをセットする。サンプルを厚さ方向にループ状(円弧形状)に曲げる。測定端子によってサンプルのループ部分を押しつぶすように押圧したときのサンプルの応力を測定する。詳しくは、サンプルを外周80mmのループ状(円弧形状)に曲げる。測定端子を用いてループ部分を直径方向に押圧する。測定端子は、ループ部分の短軸方向の内径が1.5mmとなるまでループ部分を押圧した後、停止する。測定端子がループ部分に押圧力を加える速度は、例えば、3.3mm/secである。測定端子によってループ部分を押圧し、測定端子が停止したときの応力(最大応力)を測定する。
応力減衰率は、前述の最大応力に対する、測定端子の停止から1秒後の応力の減少率である。応力減少率(%)は、最大応力をσ1とし、測定端子の停止から1秒後の応力をσ2としたとき、(σ1-σ2)/σ1×100と表される。
【0068】
(押圧試験:パイプ法再現試験)
図4は、押圧試験の試験装置を示す構成図である。
図4に示すように、この試験装置は、第1パイプ21と、第2パイプ22と、第3パイプ23とを備える。パイプ21~23は、ステンレス鋼製であり、長さ80mm、外径16mmである。
第2パイプ22と第3パイプ23は左右に並んで互いに接している。第1パイプ21は、第2パイプ22および第3パイプ23の上に配置される。平面視において、第1パイプ21の中心軸は、第2パイプ22と第3パイプ23との接線の位置にある。
【0069】
TACフィルム(厚さ60μm)を偏光子保護フィルムとして用いた偏光板(TAC偏光板)の表面に表面保護フィルムを貼合することにより、光学部品20を得る(
図3参照)。光学部品20は、光学製品5(偏光板)の表面に、表面保護フィルム10が貼合されている。
【0070】
パイプ22,23とパイプ21との間に、光学部品20を挟み込む。23℃の条件で、パイプ21をパイプ22,23に近づけることで、光学部品20に300gの荷重をかける。荷重をかける時間は20秒間である。パイプ21~23による押圧箇所における押圧痕の有無を確認する。押圧痕が形成されなかった場合を「〇」(Good)とする。押圧痕が形成された場合を「×」(No Good)とする。
【0071】
実施例1~7および比較例1~6の表面保護フィルムについて、測定結果を表1に示した。
【0072】
【0073】
表1より、以下のことがわかる。
実施例1~7の表面保護フィルムは、対TACフィルムの応力減衰率が0.5%以上、3.0%以下である。実施例1~7の表面保護フィルムでは、対TAC偏光板および対PMMA偏光板の剥離帯電圧は低かった。実施例1~7の表面保護フィルムでは、押圧痕は確認できなかった。
応力減衰率が高い比較例1,2,4,5では、押圧痕が確認された。応力減衰率が低い比較例3,6では、対PMMA偏光板の剥離帯電圧が大きくなった。
このように、比較例1~6では、押圧試験における押圧痕の抑制と、剥離帯電圧の抑制とを両立するのは難しかった。これに対し、実施例1~7では、応力減衰率を前述の範囲とすることで、押圧痕の形成を抑え、かつ剥離帯電圧を低くすることができた。