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特開2024-142413発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルの製造方法並びに製造装置
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  • 特開-発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルの製造方法並びに製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142413
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルの製造方法並びに製造装置
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/00 20060101AFI20241003BHJP
   A23C 9/123 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A23C9/00
A23C9/123
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054548
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 雄一
(72)【発明者】
【氏名】三塚 翔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 仁美
(72)【発明者】
【氏名】郷田 雅之
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC05
4B001AC06
4B001AC07
4B001AC31
4B001AC45
4B001BC07
4B001BC08
4B001BC12
4B001BC13
4B001BC99
4B001DC01
4B001EC04
(57)【要約】
【課題】本発明は、発酵工程を経ることなく発酵乳及び発酵乳様の酸性ゲルを製造する方法において、軟らかさをコントロールする新規な製造方法及び製造装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルの製造方法であって、
次の工程:
(1)調合乳を提供する工程
(2)前記調合乳の温度を0~10℃に制御する工程
(3)前記調合乳のpHを3.5~5.8に調整する工程
(4)pH調整された前記調合乳にせん断を加える工程
を含む前記製造方法、を提供する。また、前記(4)のせん断を加える工程としては具体的に、内径8.5~110mmの配管に時間0.5~60分、流量50~20000L/hで調合乳を送液する工程、などが挙げられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルの製造方法であって、次の工程:
(1)調合乳を提供する工程
(2)前記調合乳の温度を0~10℃に制御する工程
(3)前記調合乳のpHを3.5~5.8に調整する工程
(4)pH調整された前記調合乳にせん断を加える工程
を含む前記製造方法。
【請求項2】
前記(4)のせん断を加える工程が、内径8.5~110mmの配管に時間0.5~60分、流量50~20000L/hで調合乳を送液する工程である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記(4)のせん断を加える工程が、任意の形状の配管に時間0.5~60分、壁面せん断応力0.0002~1850Paで調合乳を送液する工程である請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記(4)のせん断を加える工程が、攪拌羽で0.5~60分間、調合乳を攪拌する工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記(4)のせん断を加える工程の前及び/又は後に、(5)調合乳の温度を0~30℃に制御する工程、をさらに含む請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記(1)の調合乳を提供する工程が、生乳、脱脂乳、還元乳、還元脱脂乳又はこれらの乳に副原料を添加したものを提供する工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
調合乳がタンパク質を6重量%以上含むものである、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項8】
(6)前記調合乳に乳酸菌、ビフィズス菌及び酵母のうちいずれか一つまたはこれらを組み合わせて添加する工程、をさらに含む請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項9】
前記(3)の調合乳のpHを3.5~5.8に調整する工程が、有機酸を用いて調整する工程である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項10】
発酵工程を含まない、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の製造方法により製造された発酵乳および発酵乳様の酸性ゲル。
【請求項12】
タンパク質含量が6.0~10重量%で、硬度が30gf以下である請求項11に記載の発酵乳および発酵乳様の酸性ゲル。
【請求項13】
乳のゲル化方法であって、0~10℃の調合乳のpHを3.5~5.8に調整した後、せん断を加える工程を含み、せん断工程の前及び/又は後に必要に応じて調合乳の温度を制御する工程を含む、乳のゲル化方法。
【請求項14】
調合乳の温度を制御する熱交換器と、前記熱交換器に調合乳を供給するポンプと、有機酸の温度を制御する熱交換器と、前記熱交換器に有機酸を供給するポンプと、温度制御された調合乳に温度制御された有機酸をドージングし、調合乳のpHを制御する配管と、pH調整された調合乳の温度を制御する熱交換器と、pH調整された調合乳を流動させる配管を備え、該配管を通過する際に調合乳のゲル化及びせん断処理が行われることを特徴とする発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルの製造装置。
【請求項15】
調合乳の温度を制御する熱交換器と、前記熱交換器に調合乳を供給するポンプと、有機酸の温度を制御する熱交換器と、前記熱交換器に有機酸を供給するポンプと、温度制御された調合乳と温度制御された有機酸を混合し、調合乳のpHを制御するタンクと、pH調整された調合乳の温度を制御する熱交換器と、前記熱交換器にpH調整された調合乳を供給するポンプと、pH調整された調合乳を流動させる配管を備え、該配管を通過する際に調合乳のゲル化及びせん断処理が行われることを特徴とする発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルの製造装置。
【請求項16】
pH調整された調合乳を流動させる配管の内径が8.5~110mm、長さが0.04~15000mの請求項14又は15に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルの製造方法並びに製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発酵乳は乳タンパク質を酸により凝固させた食品である。そのため、発酵乳を製造する際には原料乳に乳酸菌を接種し、原料乳を酸凝固させる発酵工程を必ず経ることになる。発酵乳では専用の発酵庫、発酵タンクや冷却庫が必要であり、温度管理をするための広いスペースの確保が必要になるといった課題がある。
乳酸菌や発酵庫を使用せずに発酵乳様の酸性ゲルを製造する方法として以下の先行技術がある。
【0003】
特許文献1、2には、原料乳のpHをクエン酸やリン酸で5.5~6.2に調整し、限外ろ過処理をすることで熱安定性と物性に優れた酸凝固性の乳食品の製造方法が開示されている。
特許文献3には、牛乳や豆乳に0.3~0.6%のグルコノデルタラクトンを添加して、10~40℃の温度範囲で反応させることで、乳を酸性化してゲル化させるための方法が開示されている。
特許文献4には、乳成分を含む原料液にクエン酸塩と増粘剤を配合し、原料液のpHを5.1~6.5の弱酸性に調整する工程であって、原料乳中の脂肪/タンパク質の重量比が1.8以下とすることにより弱酸性のゲル状乳加工品のタンパク質の凝集を抑制する方法が開示されている。
しかし、特許文献1、2、3では、酸性化の手段がそれぞれリン酸やクエン酸、グルコノラクトン等に限定的な方法である。また、特許文献4も酸性化の手段がクエン酸であることのほか、原料組成や増粘剤の配合により乳をゲル化するものであるから、やはり限定的な方法である。さらにまた、これらの方法は酸性化のために特定成分を添加することから、乳酸菌を発酵させて得られる発酵乳とは組成が異なって風味も異質なものとなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-64482号公報
【特許文献2】特開2018-64481号公報
【特許文献3】特許第4827100号公報
【特許文献4】特開2017-55751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、発酵工程を経ることなく発酵乳及び発酵乳様の酸性ゲルを製造する方法において、軟らかさをコントロールする新規な製造方法及び製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、所定の温度範囲の管理下で乳タンパク質を等電点付近に調整すること及びゲル化中にせん断処理をすることで、発酵乳及び発酵乳様の酸性ゲルの硬度又は粘度を制御できること、さらには固形分やタンパク質含量が高い濃縮セットタイプ様の酸性ゲルを軟らかく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には以下の工程が含まれる。
<1>
発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルの製造方法であって、次の工程:
(1)調合乳を提供する工程
(2)前記調合乳の温度を0~10℃に制御する工程
(3)前記調合乳のpHを3.5~5.8に調整する工程
(4)pH調整された前記調合乳にせん断を加える工程
を含む前記製造方法。
<2>
前記(4)のせん断を加える工程が、内径8.5~110mmの配管に時間0.5~60分、流量50~20000L/hで調合乳を送液する工程である<1>に記載の製造方法。
<3>
前記(4)のせん断を加える工程が、任意の形状の配管に時間0.5~60分、壁面せん断応力0.0002~1850Paで調合乳を送液する工程である<1>に記載の製造方法。
<4>
前記(4)のせん断を加える工程が、攪拌羽で0.5~60分間、調合乳を攪拌する工程である、<1>に記載の製造方法。
<5>
前記(4)のせん断を加える工程の前及び/又は後に、(5)調合乳の温度を0~30℃に制御する工程、をさらに含む<1>又は<2>に記載の製造方法。
<6>
前記(1)の調合乳を提供する工程が、生乳、脱脂乳、還元乳、還元脱脂乳又はこれらの乳に副原料を添加したものを提供する工程である、<1>に記載の製造方法。
<7>
調合乳がタンパク質を6重量%以上含むものである、<1>又は<2>に記載の製造方法。
<8>
(6)前記調合乳に乳酸菌、ビフィズス菌及び酵母のうちいずれか一つまたはこれらを組み合わせて添加する工程、をさらに含む<1>又は<2>に記載の製造方法。
<9>
前記(3)の調合乳のpHを3.5~5.8に調整する工程が、有機酸を用いて調整する工程である、<1>又は<2>に記載の製造方法。
<10>
発酵工程を含まない、<1>又は<2>に記載の製造方法。
<11>
<1>~<10>のいずれかに記載の製造方法により製造された発酵乳および発酵乳様の酸性ゲル。
<12>
タンパク質含量が6.0~10重量%で、硬度が30gf以下である<11>に記載の発酵乳および発酵乳様の酸性ゲル。
<13>
乳のゲル化方法であって、0~10℃の調合乳のpHを3.5~5.8に調整した後、せん断を加える工程を含み、せん断工程の前及び/又は後に必要に応じて調合乳の温度を制御する工程を含む、乳のゲル化方法。
<14>
調合乳の温度を制御する熱交換器と、前記熱交換器に調合乳を供給するポンプと、有機酸の温度を制御する熱交換器と、前記熱交換器に有機酸を供給するポンプと、温度制御された調合乳に温度制御された有機酸をドージングし、調合乳のpHを制御する配管と、pH調整された調合乳の温度を制御する熱交換器と、pH調整された調合乳を流動させる配管を備え、該配管を通過する際に調合乳のゲル化及びせん断処理が行われることを特徴とする発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルの製造装置。
<15>
調合乳の温度を制御する熱交換器と、前記熱交換器に調合乳を供給するポンプと、有機酸の温度を制御する熱交換器と、前記熱交換器に有機酸を供給するポンプと、温度制御された調合乳と温度制御された有機酸を混合し、調合乳のpHを制御するタンクと、pH調整された調合乳の温度を制御する熱交換器と、前記熱交換器にpH調整された調合乳を供給するポンプと、pH調整された調合乳を流動させる配管を備え、該配管を通過する際に調合乳のゲル化及びせん断処理が行われることを特徴とする発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルの製造装置。
<16>
pH調整された調合乳を流動させる配管の内径が8.5~110mm、長さが0.04~15000mの<14>又は<15>に記載の製造装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、所定の温度範囲の管理下で乳を等電点付近に調整すること及びせん断処理をすることで、所望の硬度のセットタイプ発酵乳及びセットタイプ発酵乳様の酸性ゲル、もしくは所望の粘度のソフトタイプ発酵乳及びソフトタイプ発酵乳様の酸性ゲルを提供することができる。
また、本発明の製造方法によれば、セットタイプとソフトタイプ様の酸性ゲルを同一の方法で製造することができ、さらには固形分やタンパク質含量が高い濃縮セットタイプ様の酸性ゲルを軟らかくすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の製造方法を実施するための製造装置を示す。
図2】本発明の製造方法を実施するための製造装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の製造方法は以下の工程(1)から工程(4)を含み、所望により(4)の工程の前及び/又は後に(5)の温度制御工程を含み、さらに必要に応じて工程(6)を含んでもよい。以下、各工程について説明する。
(1)調合乳を提供する工程
(2)前記調合乳の温度を0~10℃に制御する工程
(3)前記調合乳のpHを3.5~5.8に調整する工程
(4)pH調整された前記調合乳にせん断を加える工程
(5―1)工程(4)の前に調合乳の温度を0~30℃に制御する工程
(5-2)工程(4)の後に調合乳の温度を0~30℃に制御する工程
(6)上記(1)~(5)のいずれかの工程において乳酸菌、ビフィズス菌及び酵母のうちいずれか1つ以上を添加する工程
【0010】
工程(1):調合乳を提供する工程
本発明において工程(1)は、調合乳を提供する工程である。
本発明における調合乳としては、等電点でゲル化するタンパク質を含むものであればいずれでもよく、生乳、脱脂乳、全粉乳を溶解した還元乳、脱脂粉乳を溶解した還元脱脂乳、豆乳などが挙げられる。また、これらの調合乳に任意の副原料を添加してもよい。副原料は限定されず、適宜選択することができる。副原料は、主原料となる調合乳がゲル化できる範囲で添加することができる。副原料としては、例えば、香料、果物や野菜の実、果汁や野菜汁、果物や野菜のエキス、栄養成分を含む素材、乳素材、機能性素材、増粘剤、乳化剤、着色料、保存料等の食品添加物が挙げられる。さらに、生乳、脱脂乳は膜やエバポレーター等により濃縮してもよい。また、調合乳は公知の殺菌方法により殺菌して用いることが望ましい。そのうちでも例えば、保持式により63℃で30分間加熱殺菌するか、またはこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で殺菌することが好ましい。調合乳のタンパク質濃度は、製造する発酵乳及び発酵乳様の酸性ゲルのタンパク質濃度に相当し、1.0重量%以上が好ましく、さらに好ましくは3.0重量%以上であり、よりいっそう好ましくは6.0重量%以上である。好ましい範囲としては、1.0~20重量%であり、さらに好ましくは1.0~15重量%であり、よりいっそう好ましくは3.0~10重量%であり、もっとも好ましくは6.0~10重量%である。
乳素材は、上記以外に、全脂濃縮乳、脱脂濃縮乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、乳清(ホエイ)、ホエイパウダー、脱塩ホエイ、脱塩ホエイパウダー、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質分離物(WPI)、α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン、乳タンパク質濃縮物(MPC)、カゼイン、ナトリウムカゼイネート、カルシウムカゼイネート、クリーム、発酵クリーム、コンパウンドクリーム、クリームパウダー、バター、発酵バター、バターミルク、バターミルクパウダーおよびバターオイル等が挙げられる。
【0011】
工程(2):前記調合乳の温度を0~10℃に制御する工程
本発明において、工程(2)は、前記工程(1)の調合乳の温度を0~10℃に調整する工程である。このうちでも、調合乳の温度を0~5℃に調整することが好ましく、0~3℃に調整することがより好ましい。なお、本発明において、あらかじめ0~10℃に調整された調合乳を準備する工程も本願発明の工程(1)及び工程(2)を含む工程とみなす。
【0012】
工程(3):前記調合乳のpHを3.5~5.8に調整する工程
本発明において、工程(3)は、調合乳のpHを3.5~5.8に調整する工程である。pHを等電点付近にすることで疎水性相互作用が強くなり、タンパク質がゲル化するためである。等電点はタンパク質の種類によって変化するが、本願発明においては3.5~5.8であり、好ましくは4.2~5.0であり、さらに好ましくは4.4~4.8である。
工程(2)において調合乳の温度を0~10℃に調整することで、乳タンパク質の凝集速度を低下させ、工程(3)の等電点付近のpHにおいても直ぐに凝固せず、液状を保ち、pHが調整された調合乳の輸送および充填が可能となる。pHの調整は4.0~5.2に調整し、最終製品としての所望の風味に影響を与えない酸性の材料であればいずれでもよく、有機酸により調整することが好ましい。有機酸としては、例えば、乳酸、酢酸、酒石酸等が挙げられ、このうちでも乳酸が発酵乳あるいは発酵乳様の酸性ゲルとしての風味に影響を与えないことから好ましい。酸性材料の濃度、添加量、種類は限定されず、調合乳のpHを4.0~5.2に調整できるように適宜決定する。酸性材料として、上記有機酸のほかに、香味成分や果汁類、野菜汁類、フレーバーなどでもよい。
【0013】
工程(4):pH調整された前記調合乳にせん断を加える工程
本発明において工程(4)は、工程(3)においてpH調整された調合乳にせん断を加える工程である。せん断力が強く、せん断を加える時間が長いほどゲルは軟らかくなり、せん断力が弱く、せん断を加える時間が短いほどゲルは硬くなる傾向にある。また、調合乳の温度が高いほどゲルは軟らかくなり、調合乳の温度が低いほどゲルは硬くなる傾向にあることから、せん断力、せん断を加える時間、調合乳の温度を制御することで、所望の硬さ、粘度のゲルに調整することができる。
せん断を加える工程は調合乳に適切なせん断力が加えることができればいずれの方法でもよく、例えば、内径8.5~110mmの配管に時間0.5~60分間、流量50~20000L/hで送液する工程が挙げられる。せん断を加える時間はさらに好ましくは0.5~10分間である。
他の態様としては、任意の形状の配管に時間0.5~60分間、壁面せん断応力0.0002~1850Paで送液する工程が挙げられる。せん断を加える時間はさらに好ましくは0.5~10分間である。壁面せん断応力はさらに好ましくは0.004~950Paである。
また、さらに別の態様としては、攪拌羽で0.5~60分間攪拌する工程を挙げることができる。攪拌羽で攪拌する場合の回転数としては10rpm以上が好ましい。攪拌時間はさらに好ましくは0.5~10分間である。攪拌羽を有する撹拌装置としては、例えば、家庭用ミキサー、ハンドミキサー、フードプロセッサー、ブレンダー、クッキングカッター、プロペラ撹拌機などを挙げることができる。
本発明において、工程(4)の前及び/又は後に以下の温度制御工程を設けることがある。
【0014】
工程(5―1):工程(4)の前にpH調整された調合乳の温度を0~30℃に制御する工程
本発明において工程(5-1)は、工程(3)においてpH調整された調合乳の温度を0~30℃に調整する工程である。温度を高くすればゲル化する速度は速くなり、また、低くすればゲル化する速度は遅くなる傾向にある。ゲル化する速度を調整することで、後の工程(4)のせん断力の影響を制御することが可能となる。ゲル化速度が速いほど、せん断力の影響は強くなり、ゲル化速度が遅いほど、せん断力の影響は弱くなる。
【0015】
工程(5-2):工程(4)の後に調合乳の温度を0~30℃で静置する工程
せん断を加えた調合乳の温度を調整した後に静置することで、発酵乳様の酸性ゲルを製造できる。調合乳の静置時の温度によって、乳タンパク質の凝集速度を制御し、酸性ゲルの物性を調整する。また、調合乳の静置時の温度をなるべく低温に調整することで、製品を製造した後の保管も同時にでき、発酵庫等の温度管理が可能な広いスペースを削減することができる。
【0016】
工程(6):前記(1)~(5)のいずれか1以上の工程において、調合乳に乳酸菌、ビフィズス菌及び酵母のうちいずれか一つまたはこれらを組み合わせて添加する工程
本発明において、工程(6)は、必要に応じて、調合乳に乳酸菌、ビフィズス菌及び酵母のうちいずれか一つまたはこれらを組み合わせて(1)~(5)のいずれかの工程の調合乳に添加する工程である。乳酸菌、ビフィズス菌、酵母の種類は限定されず、適宜選択できる。さらに、乳酸菌、ビフィズス菌、酵母の濃度及び添加量は限定されず、所望の発酵乳又は発酵乳様の酸性ゲルとなるように適宜決定することができる。
本発明において発酵乳とは、生菌数と無脂乳固形分を一定以上含むものをいい、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」で定められた定義のもののほか、無脂乳固形分8.0%以上及び乳酸菌数(または酵母数)が1mlあたり1000万以上含むものであれば本発明の発酵乳に含まれる。
本願発明の製造方法において、菌を添加する場合、菌拡散のために攪拌を行うことがある。菌添加のタイミングが工程(4)のせん断を加える工程の前であれば、菌を添加した際に行う攪拌は本願の工程(4)のせん断工程を兼ねる場合もある。なお、発酵乳として製造しない場合は、乳酸菌、ビフィズス菌、酵母を添加しなくてもよい。本発明において発酵乳様の酸性ゲルとは、上記で定義される発酵乳について、規定される乳酸菌生菌数(または酵母数)を規定数含まないか、全く含まないものを言う。
このように本発明の製造方法では、発酵工程を経ることなく発酵乳又は発酵乳様の酸性ゲルを、乳酸菌(または酵母)による発酵工程を経た発酵乳と同様に製造することができる。
【0017】
本発明の製造方法は、上記の工程を有することを基本とするが、他にも食品の製造で行われる工程を上記の工程間に介在させたり、上記の工程の前や後に別途追加することができることはいうまでもない。
そのような工程としては殺菌工程、容器への充填工程、均質化工程、などが挙げられ、原料段階あるいは、製造された酸性ゲルの段階のいずれでも行うことができる。
【0018】
本発明の製造方法により得られた発酵乳および発酵乳様の酸性ゲル中のタンパク質含量は、等電点付近でゲル化できる含量であれば特に制限はないが、1.0~20重量%が好ましい。さらに好ましくは1.0~15重量%であり、よりいっそう好ましくは3.0~10重量%である。
本発明の製造方法によれば、発酵乳及び発酵乳様の酸性ゲルの硬度又はみかけ粘度を制御することが可能であり、目的に応じて設定すればよいが、タンパク質含量が6.0~10重量%のセットタイプ発酵乳及びセットタイプ発酵乳様の酸性ゲルの場合、硬度は例えば30gf以下が好ましい。また、タンパク質含量が6.0~10重量%のソフトタイプ発酵乳及びソフトタイプ発酵乳様の酸性ゲルの場合、みかけ粘度は15000cp以下が好ましい。このように高タンパク質含量でありながら、硬度又は粘度を低く抑えることができ、新しい食感の新規な発酵乳及び発酵乳様酸性ゲルを提供することができる。
本発明の製造方法により得られた発酵乳及び発酵乳様の酸性ゲルは、このまま食品として利用することができる。特に、pH、温度、せん断制御によりゲルの硬度、粘度をコントロールできることから、所望の硬度、粘度のゲル状食品を自在に製造することができる。また、公知の発酵乳と同様にさらに加工して別の食品とすることもできる。食品としては、デザートや乳飲料などが挙げられる。
本発明の発酵乳及び発酵乳様の酸性ゲルの硬度は、後述する実施例に示すとおり、テクスチャーアナライザーにより評価することができ、また、みかけ粘度はB型粘度計などにより評価することができる。
本発明の製造方法によれば、発酵乳及び発酵乳様の酸性ゲルの硬度又はみかけ粘度を制御することが可能であることから、換言すれば、乳のゲル化方法であって、0~10℃の調合乳のpHを3.5~5.8に調整した後、せん断を加える工程を含み、せん断工程の前及び/又は後に必要に応じて調合乳の温度を制御する工程を含む、乳のゲル化方法であるとも言える。
【0019】
本願発明の他の態様は、前記製造方法を実施する製造装置の発明である。当該製造装置は、調合乳の温度を制御する熱交換器と、前記熱交換器に調合乳を供給するポンプと、有機酸の温度を制御する熱交換器と、前記熱交換器に有機酸を供給するポンプと、温度制御された調合乳に温度制御された有機酸をドージングし(必要量供給し)、調合乳のpHを制御する配管と、pH調整された調合乳の温度を制御する熱交換器と、pH調整された調合乳を流動させる配管を備え、該配管を通過する際に調合乳のゲル化及びせん断処理が行われることを特徴とする。pH調整された調合乳を流動させる配管は好ましくは内径が8.5~110mmであり、長さが0.04~15000mである。当該装置の具体例を図1に示す。
【0020】
図1において、製造装置1は、調合乳および有機酸を任意の温度に制御し、調合乳に有機酸をドージングし、調合乳を任意のpHに調整した後、pH調整された調合乳の温度を任意の温度に制御し、任意の流量、温度、時間で配管内を滞留させ、容器に充填する装置である。充填後に任意の温度で静置することで、セットタイプもしくはソフトタイプ様の発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルが得られる。
製造装置1は、タンク2、熱交換器3、ポンプ4、タンク5、熱交換器6、ポンプ7、熱交換器8を備えている。
タンク2は、調合乳を貯蔵する。タンク2の種類、大きさ、形状等は特に限定されない。
熱交換器3は、調合乳の温度を制御する。熱交換器3の種類、大きさ、形状等は特に限定されない。
ポンプ4は、配管41、42を介してタンク2および熱交換器3に接続され、タンク2から熱交換器3に調合乳を供給する。ポンプ4が熱交換器3、配管42、43に供給する調合乳の流量Q1を制御する。ポンプ4としては、例えば、容積ポンプやターボ型ポンプが挙げられるが、特に限定されない。
タンク5は、調合乳のpHを調整するための有機酸を貯蔵する。タンク5の種類、大きさ、形状等は特に限定されない。
熱交換器6は、有機酸の温度を制御する。熱交換器6の種類、大きさ、形状等は特に限定されない。
ポンプ7は、配管44、45を介してタンク5および熱交換器6に接続され、タンク5から熱交換器6に有機酸を供給する。ポンプ7が熱交換器6、配管45、46に供給する有機酸の流量Q2を制御する。ポンプ7としては、例えば、容積ポンプやターボ型ポンプが挙げられるが、特に限定されない。
熱交換器8は、有機酸によりpHが調整された調合乳の温度を制御する。熱交換器8の種類、大きさ、形状等は特に限定されない。
流量Q1、Q2は配管47、48、熱交換器8に供給される調合乳のpHが3.5~5.8となるように制御する。
流量Q3は、流量Q1、Q2によって決定される。流量Q3は、50~20000L/hが好ましい。
上記装置において、タンク2内の調合乳はタンク5内の有機酸と配管46及び配管43の合流地点で混合され、等電点付近にpH調整される。そしてpH調整後に熱交換器8により温度制御されることでゲル化が開始され、配管48内を流動するときの配管内の速度勾配によるせん断力によって調合乳のせん断処理が行われることになる。
ここで、配管48内で加えられるせん断処理の大きさは、配管径及び流量によってコントロールされる。配管の径が大きいほど、せん断力は小さくなり、径が小さいほど、せん断力は強くなる。また、配管内を流れる調合乳の流量は、小さいほど、せん断力は小さくなり、流量が大きいほど、せん断力は強くなる。
【0021】
本願発明の装置の別の態様は、調合乳の温度を制御する熱交換器と、前記熱交換器に調合乳を供給するポンプと、有機酸の温度を制御する熱交換器と、前記熱交換器に有機酸を供給するポンプと、温度制御された調合乳と温度制御された有機酸を混合し、調合乳のpHを制御するタンクと、pH調整された調合乳の温度を制御する熱交換器と、前記熱交換器にpH調整された調合乳を供給するポンプと、pH調整された調合乳を流動させる配管を備え、該配管を通過する際に調合乳のゲル化及びせん断処理が行われることを特徴とする。pH調整された調合乳を流動させる配管は、好ましくは内径が8.5~110mmであり、長さが0.04~15000mである。当該装置の具体例を図2に示す。
【0022】
図2において、製造装置9は、調合乳および有機酸を任意の温度に制御し、調合乳および有機酸をタンクに送液し、タンク内で調合乳を任意のpHに調整した後、pH調整された調合乳の温度を任意の温度に制御し、任意の流量、温度、時間で配管内を滞留させ、容器に充填する装置である。充填後に任意の温度で静置することで、セットタイプもしくはソフトタイプ様の発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルが得られる。
図2において、製造装置9は、タンク10、熱交換器11、ポンプ12、タンク13、熱交換器14、ポンプ15、タンク16、熱交換器17、ポンプ18を備えている。
タンク10は、調合乳を貯蔵する。タンク10の種類、大きさ、形状等は特に限定されない。
熱交換器11は、調合乳の温度を制御する。熱交換器11の種類、大きさ、形状等は特に限定されない。
ポンプ12は、配管51、52を介してタンク10および熱交換器11に接続され、タンク10から熱交換器11に調合乳を供給する。ポンプ12が熱交換器11、配管52、53に供給する調合乳の流量Q4を制御する。ポンプ12としては、例えば、容積ポンプやターボ型ポンプが挙げられるが、特に限定されない。
タンク13は、調合乳のpHを調整するための有機酸を貯蔵する。タンク13の種類、大きさ、形状等は特に限定されない。
熱交換器14は、有機酸の温度を制御する。熱交換器14の種類、大きさ、形状等は特に限定されない。
ポンプ15は、配管54、55を介してタンク13および熱交換器14に接続され、タンク13から熱交換器14に有機酸を必要量供給する(ドージング)。ポンプ15が熱交換器14、配管55、56に供給する有機酸の流量Q5を制御する。ポンプ15としては、例えば、容積ポンプやターボ型ポンプが挙げられるが、特に限定されない。
タンク16は、調合乳と有機酸を混合し、pHを調整する。タンク16の種類、大きさ、形状等は特に限定されない。
熱交換器17は、有機酸によりpHが調整された調合乳の温度を制御する。熱交換器17の種類、大きさ、形状等は特に限定されない。
ポンプ18は、配管57、58を介してタンク16および熱交換器17に接続され、タンク16から熱交換器17に有機酸によりpHが調整された調合乳を供給する。ポンプ18が熱交換器17、配管58、59に供給する有機酸の流量Q6を制御する。ポンプ18としては、例えば、容積ポンプやターボ型ポンプが挙げられるが、特に限定されない。
流量Q4、Q5はタンク16、熱交換器17、ポンプ18、配管57、58、59に供給される調合乳のpHが3.5~5.8となるように制御する。
流量Q6は、50~20000L/hが好ましい。
上記装置において、タンク10内の調合乳とタンク13内の有機酸とは、タンク16内で混合され、等電点付近にpH調整される。そしてpH調整後に熱交換器17により温度制御されることでゲル化が開始され、配管59内を流動するときの配管内の速度勾配によるせん断力によって調合乳のせん断処理が行われることになる。せん断力の制御は、上記と同様に流量と配管径によって行われる。
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0023】
[酸性ゲルの評価方法]
以下の実施例及び比較例で製造された酸性ゲルの評価方法について説明する。
1.硬度の測定方法
セットタイプ様の酸性ゲルの硬度の測定には、テクスチャーアナライザー(TA-XT plus、Stable Micro Systems社製)を使用した。治具には直径16mmの円柱を使用し、治具を速度1mm/secで酸ゲルに10mm貫入させ、酸ゲルにかかる荷重をロードセルにより測定した。
2.みかけ粘度の測定方法
ソフトタイプ様の酸性ゲルの硬度の測定には、B型粘度計(TVB-10、東機産業株式会社社製)を使用した。治具を酸ゲルに貫入させ、治具を30rpmで30秒間回転させたときのみかけ粘度を測定した。
【0024】
各条件で酸性ゲルを作成し、硬度の測定を行った。
[実施例1]
1.酸性ゲルの製造方法
以下の手順で酸性ゲルを製造した。
(i)脱脂粉乳を水に20重量%の濃度で溶解し、タンパク質6.8重量%、固形分20質量%、脂肪分0.2重量%の還元乳(20重量%)を調製し、これを90℃で10分間殺菌して調合乳を準備した。次に、殺菌した調合乳を3℃に冷却して調整した。
(ii)乳酸(20重量%)を用いて、調合乳のpHを4.5に調整した。
(iii)pH調整した調合乳を3℃に調整した。
(iv)pH調整した調合乳を内径18mm、長さ8mの配管に流量240L/hで30秒間送液した。
(v)100g容量のカップ型容器にpH調整した調合乳を50g計量し、10℃で20時間静置した。
2.評価結果
得られた酸ゲルはセットタイプ様にゲル化し、10mm貫入時の硬度は15.8gfであった。
【0025】
[実施例2]
1.酸性ゲルの製造方法
(i)~(iii)は実施例1と同じに行った。
(iv)pH調整した調合乳を内径18mm、長さ32mの配管に流量240L/hで120秒間送液した。
(v)実施例1と同じに行った。
2.評価結果
得られた酸性ゲルはセットタイプ様にゲル化し、10mm貫入時の硬度は10.1gfであり、実施例1よりも軟らかいセットタイプ様の酸ゲルが得られた。したがって、pH調整後のせん断制御により、酸性ゲルの硬度の制御が可能であることがわかった。
【0026】
[実施例3]
1.酸性ゲルの製造方法
(i)実施例1と同じに行った。
(ii)乳酸(20重量%)を用いて、調合乳のpHを4.8に調整した。
(iii)pH調整した調合乳を20℃に調整した。
(iv)実施例2と同じに行った。
(v)実施例1と同じに行った。
2.試験結果
得られた酸ゲルはソフトタイプ様にゲル化し、みかけ粘度は1560cPであった。したがって、操作条件の変更により、セットタイプ、ソフトタイプ様の酸性ゲルを同一の工程で製造が可能であることがわかった。
【0027】
[実施例4]
1.酸性ゲルの製造方法
(i)脱脂粉乳、ホエイタンパク質分離物、カゼイン、クリームを水に溶解し、固形分22.1重量%、タンパク質9.6重量%、脂肪3.0重量%の還元乳を調整し、これを90℃で10分間殺菌して調合乳を準備した。次に、殺菌した調合乳を1.5℃に冷却して調整した。
(ii)乳酸(20重量%)を用いて、調合乳のpHを4.7に調整した。
(iii)実施例1と同じに行った。
(iv)pH調整した調合乳を内径18mm、長さ32mの配管に流量200L/hで150秒間送液した。
(v)実施例1と同じに行った。
2.試験結果
得られた酸ゲルはセットタイプ様にゲル化し、10mm貫入時の硬度は23.6gfであった。
【0028】
[比較例1]
1.酸性ゲルの製造方法
(i)、(ii)実施例1と同じに行った。
(iii)pH調整した調合乳を40℃に調整した。
(iv)~(v)実施例1と同じに行った。
2.評価結果
得られた酸ゲルはセットタイプ様にゲル化したが、離水した。
【0029】
[比較例2]
1.酸性ゲルの製造方法
(i)実施例1と同じに行った。
(ii)乳酸(20重量%)を用いて、pHを6.0に調整した。
(iii)~(v)実施例1と同じに行った。
2.評価結果
静置後も調合乳は液状であり、粘度変化もほとんどなく、ゲル化しなかった。
【0030】
実施例1及び実施例2の対比より、pH調整後のせん断制御により硬度を制御できることがわかった。またこの場合、せん断時間を長くする方が軟らかい硬度の酸性ゲルが得られる傾向になることがわかった。
実施例3より、操作条件の変更により、セットタイプ、ソフトタイプ様の酸性ゲルを同一の工程で製造することが可能であることがわかった。
さらに、比較例1より、40℃では離水することから、本発明の工程(4)の温度範囲としては40℃未満であり、0℃~30℃が好ましいことがわかった。
さらにまた、比較例2より、調合乳のpHを6.0とした場合はゲル化できないことから、本発明の工程(3)で調整するpHの範囲は、等電点付近である必要があり、5.8以下が望ましいことがわかった。また、pHを低下させると、酸味が強くなり、3.5以下では発酵乳および発酵乳様の酸ゲルとして、適していないため、pHの範囲の下限を3.5とした。
また、工程(2)は乳タンパク質の凝集速度を低下させ、等電点付近のpHにおいても直ぐに凝固しないようにする観点から、10℃以下が望ましいこともわかった。
実施例4より、タンパク質9.6%の酸性ゲルにおいて、硬度23.6gfと軟らかい酸性ゲルが得られた。これまで、タンパク質10%程度の酸性ゲルで硬度が30gf以下のものはなく、本願発明の製造方法により新規な物性を有する酸性ゲルが得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の製造方法によれば、乳を等電点付近に調整すること及び前記調整後に所定のせん断処理をすることで、所望の硬度のセットタイプ様の発酵乳及び発酵乳様の酸性ゲル、所望の粘度のソフトタイプ様の発酵乳及び発酵乳様の酸性ゲルを提供することができる。また、等電点の調整に乳酸を利用すれば、発酵乳本来の風味を損なわずに、発酵乳及び発酵乳様の酸性ゲルを提供できる。
図1
図2